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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152078
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/021 20120101AFI20251002BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20251002BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20251002BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20251002BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
F16H57/021
F16C35/067
F16C19/54
F16C19/06
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053808
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋田 裕規
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 洋輔
【テーマコード(参考)】
3J063
3J117
3J701
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA09
3J063BB23
3J063CB57
3J063CD02
3J063CD06
3J063CD09
3J063CD45
3J117AA01
3J117AA05
3J117DA01
3J117DB07
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701AA81
3J701BA77
3J701FA01
3J701FA60
3J701GA11
3J701GA24
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607EE33
(57)【要約】
【課題】回転軸から遊星歯車減速機に対して駆動力をスムーズに伝える。
【解決手段】回転軸41を回転自在に支持する第1ボールベアリング23と、回転軸41の端部に装着され、かつ第1遊星歯車減速機70の中心に配置される第1サンギヤ71と、を有し、モータケース21には、回転軸41に対して同軸上に配置される軸受支持筒22aが設けられ、ギヤケース61には、第1サンギヤ71に対して同軸上に配置される閉塞部材63の貫通孔63bが設けられ、軸受支持筒22aおよび貫通孔63bに、第1ボールベアリング23の軸方向両側がそれぞれ装着されている。これにより、モータケース21の成形精度に拠らず、第1ボールベアリング23を基準に、回転軸41および第1遊星歯車減速機70の回転中心を互いに精度良く一致させることができる。よって、製品毎にモータ特性がばらつくことを抑制できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転自在に収容するモータケースと、
遊星歯車減速機を回転自在に収容するギヤケースと、
を備え、
前記モータケースおよび前記ギヤケースを、前記回転軸の軸方向に並べてなるモータ装置であって、
前記回転軸を回転自在に支持するベアリングと、
前記回転軸の端部に装着され、かつ前記遊星歯車減速機の中心に配置されるサンギヤと、
を有し、
前記モータケースには、前記回転軸に対して同軸上に配置される第1ベアリング装着部が設けられ、
前記ギヤケースには、前記サンギヤに対して同軸上に配置される第2ベアリング装着部が設けられ、
前記第1ベアリング装着部および前記第2ベアリング装着部に、前記ベアリングの軸方向両側がそれぞれ装着されている、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記ベアリングは、
径方向外側に配置されるアウターレースと、
径方向内側に配置されるインナーレースと、
前記アウターレースと前記インナーレースとの間に配置されるボールと、
を備えたボールベアリングであり、
前記第1ベアリング装着部および前記第2ベアリング装着部に、前記アウターレースの軸方向両側がそれぞれ固定されている、
モータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ装置において、
前記ギヤケースは、径方向内側にインターナルギヤを有するケース本体を備え、
前記インターナルギヤと前記サンギヤとの間に、キャリアにより回転自在に支持された複数のプラネタリギヤが配置される、
モータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車減速機を有するモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、回転軸を有するモータと、回転軸の回転を減速する遊星歯車機構と、を備えたギアドモータが記載されている。回転軸はハウジングに固定された軸受により回転自在に支持され、回転軸にはサンギアが固定されている。サンギアはケースの内側に設けられたリングギアおよびピニオンギアと共に、遊星歯車減速機を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-121742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、回転軸は、ハウジングの凸部の径方向内側に固定された軸受により回転自在に支持されている。また、回転軸に固定されたサンギアは、ハウジングの凸部の径方向外側に固定されたケースのリングギアに対し、ピニオンギアを介して回転自在に支持されている。
【0005】
したがって、回転軸の回転中心とサンギヤを含む遊星歯車減速機の回転中心との一致または不一致は、ハウジングの凸部の成形精度に左右される。ハウジングの凸部の成形精度が低いと、回転軸の回転中心と遊星歯車減速機の回転軸心とが互いにずれてしまい、回転軸から遊星歯車減速機に対して駆動力がスムーズに伝わらず、製品毎にモータ特性がばらつくという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、回転軸から遊星歯車減速機に対して駆動力をスムーズに伝えることができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
モータ装置の一態様では、回転軸を回転自在に収容するモータケースと、遊星歯車減速機を回転自在に収容するギヤケースと、を備え、前記モータケースおよび前記ギヤケースを、前記回転軸の軸方向に並べてなるモータ装置であって、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングと、前記回転軸の端部に装着され、かつ前記遊星歯車減速機の中心に配置されるサンギヤと、を有し、前記モータケースには、前記回転軸に対して同軸上に配置される第1ベアリング装着部が設けられ、前記ギヤケースには、前記サンギヤに対して同軸上に配置される第2ベアリング装着部が設けられ、前記第1ベアリング装着部および前記第2ベアリング装着部に、前記ベアリングの軸方向両側がそれぞれ装着されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転軸から遊星歯車減速機に対して駆動力をスムーズに伝えることが可能なモータ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両に搭載されるシート用モータを示す斜視図である。
図2図1のシート用モータの回転軸の軸方向に沿う断面図である。
図3】第1ボールベアリングの周辺を示す拡大断面図である。
図4】第2ボールベアリングの周辺を示す拡大断面図である。
図5】ギヤケース単体を小径部側から見た斜視図である。
図6】ギヤケース単体をケース開口側から見た斜視図である。
図7】閉塞部材単体をギヤケース側から見た斜視図である。
図8】閉塞部材単体を電動モータ部側から見た斜視図である。
図9】ロータおよび第1,第2遊星歯車減速機を示す分解斜視図である。
図10】<ロータコア装着工程>を説明する図である。
図11】<第1対向部材装着工程>を説明する図である。
図12】<接着剤塗布工程>を説明する図である。
図13】<リングマグネット装着工程>を説明する図である。
図14】<第2対向部材突き当て工程>を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は車両に搭載されるシート用モータを示す斜視図を、図2図1のシート用モータの回転軸の軸方向に沿う断面図を、図3は第1ボールベアリングの周辺を示す拡大断面図を、図4は第2ボールベアリングの周辺を示す拡大断面図を、図5はギヤケース単体を小径部側から見た斜視図を、図6はギヤケース単体をケース開口側から見た斜視図を、図7は閉塞部材単体をギヤケース側から見た斜視図を、図8は閉塞部材単体を電動モータ部側から見た斜視図を、図9はロータおよび第1,第2遊星歯車減速機を示す分解斜視図をそれぞれ示している。
【0012】
<電動シートの概要>
図1に示されるシート用モータ10は、自動車等の車両に搭載される電動シートに内蔵される駆動源である。具体的には、シート用モータ10は、背もたれのリクライニング機構,電動シートを前後に移動させる移動機構および座部を上下に昇降させる昇降機構等を駆動する。これにより、運転者が電動シートの横等に配置された操作スイッチを操作することで、電動シートの姿勢や位置を運転者の好みのドライビングポジションに合わせることができる。
【0013】
なお、シート用モータ10は、本発明におけるモータ装置に相当する。
【0014】
シート用モータ10は、コネクタCNを備えており、当該コネクタCNは、車載コントローラCUに電気的に接続されている。そして、シート用モータ10を形成する電動モータ部20とコネクタCNとの間には、電動モータ部20に駆動電流を供給する電源線PLと、電動モータ部20の回転状態を車載コントローラCUに送出するセンサ線SWとが配置されている。
【0015】
これにより、車載コントローラCUは、例えば、体格の異なる運転者に対応させて複数のドライビングポジション(電動シートの姿勢)を記憶可能となっている。そして、必要に応じて運転者が希望するドライビングポジションに設定可能となっている。
【0016】
<シート用モータ>
図1ないし図4に示されるように、シート用モータ10は、電動モータ部20および減速機構部50を備えている。これらの電動モータ部20および減速機構部50は、それぞれ同軸上に配置されており、シート用モータ10の全体の形状は、短尺かつ角形の略棒状となっている。このように、シート用モータ10は、電動モータ部20および減速機構部50を、回転軸41の軸方向に並べて形成されている。
【0017】
<電動モータ部>
電動モータ部20は、モータケース21を備えている。モータケース21は、鋼板を深絞り加工等することで有底筒状に形成され、その長手方向と直交する方向に沿う断面形状は略正方形となっている。
【0018】
また、図2および図3に示されるように、モータケース21の軸方向一側(図中左側)には、底壁部22が設けられている。底壁部22の中央部には、軸受支持筒22aが一体に設けられ、当該軸受支持筒22aには、第1ボールベアリング23の径方向外側に配置される外輪(アウターレース)23aが、圧入固定されている。
【0019】
なお、軸受支持筒22aは、回転軸41に対して同軸上に配置されており、本発明における第1ベアリング装着部に相当する。
【0020】
ここで、外輪23aの軸方向他側(図中右側)の略2/3の部分が軸受支持筒22aに圧入固定されている。また、外輪23aの軸方向一側の略1/3の部分が軸受支持筒22aからその軸方向一側に露出(突出)されている。
【0021】
また、第1ボールベアリング23は、回転軸41の軸方向一側を回転自在に支持しており、回転軸41の軸方向一側に、第1ボールベアリング23の径方向内側に配置される内輪(インナーレース)23bが装着されている。なお、回転軸41の軸方向において、シート用モータ10の減速機構部50が配置される側を「軸方向一側」と定義し、シート用モータ10のコネクタCNが配置される側を「軸方向他側」と定義する。
【0022】
さらに、底壁部22には、一対のねじ孔22b(図2および図3では1つのみを示す)が設けられている。具体的には、一対のねじ孔22bは、軸受支持筒22aを中心に、互いに対向配置されている。そして、それぞれのねじ孔22bには、減速機構部50を電動モータ部20に固定するための固定ねじSがねじ止めされている。
【0023】
図2および図4に示されるように、モータケース21の軸方向他側、つまり底壁部22側とは反対側には、開口部24が設けられている。この開口部24を介して、モータケース21の内側に、ステータ30やロータ40が組み込まれる。つまり、回転軸41は、モータケース21の内部に回転自在に収容されている。
【0024】
開口部24には、プラスチック等の樹脂材料からなるカバー部材25が装着されている。カバー部材25は、開口部24を閉塞しており、これによりモータケース21の内側に埃等が進入することが防止される。ここで、カバー部材25の外周部には、複数の係合凹部25aが設けられ、これらの係合凹部25aに、モータケース21の係合爪21aが係合されている。これにより、カバー部材25は、モータケース21に対して、がたつくことなく抜け止めされた状態となる。
【0025】
カバー部材25の中央部には、軸受支持孔25bが設けられ、当該軸受支持孔25bには、第2ボールベアリング26の外輪26aが圧入固定されている。第2ボールベアリング26は、回転軸41の軸方向他側を回転自在に支持しており、回転軸41の軸方向他側に、第2ボールベアリング26の内輪26bが装着されている。
【0026】
また、カバー部材25の軸方向他側には、導電部材保持板27が装着されている。導電部材保持板27のカバー部材25側(図中左側)には、U相,V相,W相(三相)に対応した3つの導電部材28(図示では1つのみを示す)が装着されている。さらに、導電部材保持板27のコネクタCN側(図中右側)には、電源線PLおよびセンサ線SWが配置されている。
【0027】
そして、3つの導電部材28の一端部には、U相,V相,W相に対応した3本の電源線PLが、それぞれ電気的に接続されている。これに対し、3つの導電部材28の他端部には、U相,V相,W相に対応したコイル34が、それぞれ電気的に接続されている。
【0028】
また、カバー部材25の軸方向一側には、環状のセンサ基板29が装着されている。そして、センサ基板29のコネクタCN側(図中右側)には、合計5本のセンサ線SW(図示では4本のみを示す)が、それぞれ電気的に接続されている。さらに、センサ基板29のステータ30側(図中左側)には、U相,V相,W相に対応した3つのホール素子29a(図示では1つのみを示す)が、それぞれ装着されている。
【0029】
ここで、3つのホール素子29aは、ロータ40(回転軸41)の回転状態を検出する回転センサを形成しており、回転軸41の軸方向において、リングマグネット43と対向している。これにより、それぞれのホール素子29aは、リングマグネット43の回転に伴う磁極の変化に応じて矩形信号を発生する。ホール素子29aが発生する矩形信号は、車載コントローラCU(図1参照)に送出され、これにより車載コントローラCUは、ロータ40の回転状態を把握して、ロータ40の回転数や回転方向、さらにはロータ40の停止位置を制御可能となっている。
【0030】
図2ないし図4に示されるように、モータケース21の内側には、強磁性体からなるステータ(固定子)30が固定されている。ステータ30は、略筒状に形成されたステータ本体31と、当該ステータ本体31の径方向内側に突出された複数のティース32と、を備えている。なお、本実施の形態では、ティース32の数(スロット数に等しい)は6個に設定されている。もちろん、ティース32の数は、電動モータ部20の仕様に合わせて任意に設定可能である。
【0031】
また、それぞれのティース32には、プラスチック等の樹脂材料からなるインシュレータ(絶縁体)33が装着されている。そして、これらのインシュレータ33を介して、それぞれのティース32にコイル34が巻装されている。ここで、ロータ40を中心に対向配置された一対のティース32に、同相のコイル34がそれぞれ巻装されている。すなわち、ステータ30の周方向に向けて、U相,V相,W相,U相,V相,W相の順で、コイル34が等間隔(60度間隔)で並んでいる。
【0032】
なお、ステータ30は、モータケース21の内壁に対して、ステータ本体31の外周部の一部を圧入することで固定されている。よって、ステータ30は、モータケース21に対して、軸方向にも周方向にもがたつくことがない。また、U相,V相,W相に対応したコイル34のそれぞれには、U相,V相,W相に対応した導電部材28が、それぞれ電気的に接続されている。
【0033】
<ロータ>
図2ないし図4に示されるように、ステータ30の径方向内側には、微小隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)40が回転自在に設けられている。ロータ40は、段付きの丸鋼棒からなる回転軸41を備えている。具体的には、回転軸41の軸方向一側には、小径部41aが一体に設けられており、当該小径部41aには、減速機構部50の第1遊星歯車減速機70を形成する第1サンギヤ71が固定されている。
【0034】
このように、第1サンギヤ71は、回転軸41の端部に装着されており、当該第1サンギヤ71は、本発明におけるサンギヤに相当する。つまり、小径部41aは、第1サンギヤ71を含む第1遊星歯車減速機70を駆動する。また、小径部41aにより駆動される第1遊星歯車減速機70を含む遊星歯車減速機構60は、駆動対象物であるリクライニング機構等(図示せず)を駆動する。
【0035】
そして、回転軸41の軸方向一側は、第1ボールベアリング23により回転自在に支持され、回転軸41の軸方向他側は、第2ボールベアリング26により回転自在に支持されている。
【0036】
ここで、第1ボールベアリング23の外輪23aと内輪23bとの間には、複数の鋼球(ボール)23cが配置されている。なお、第1ボールベアリング23は、本発明におけるベアリングおよびボールベアリングに相当する。
【0037】
また、回転軸41の外周部には、強磁性体からなる複数の鋼板を積層してなるロータコア42が装着されている。具体的には、回転軸41に対して、ロータコア42の固定孔42aを圧入することで、回転軸41の軸方向における規定位置に、ロータコア42は強固に固定されている。
【0038】
さらに、ロータコア42の外周部には、接着剤G(図12および図13参照)を介してリングマグネット43が固定されている。リングマグネット43は、例えば、ネオジウム磁石であり略筒状に形成されている。また、リングマグネット43は、その周方向にS極,N極,S極,N極(合計4極)が交互に並ぶように着磁されている。すなわち、電動モータ部20は、4極6スロット型のブラシレスモータとなっている。もちろん、リングマグネット43の極数は、電動モータ部20の仕様に合わせて任意に設定可能である。
【0039】
さらに、回転軸41の軸方向と直交する方向において、リングマグネット43とロータコア42との間には、接着剤Gが介在される微小隙間(図示せず)が形成されている。これにより、リングマグネット43をロータコア42の外周部に装着する際に、リングマグネット43はロータコア42に対して強く擦れるようなことはない。
【0040】
また、図3に示されるように、リングマグネット43の軸方向一側には、第1端部43aが設けられ、当該第1端部43aの径方向内側には、第1内周角部43bが設けられている。そして、第1内周角部43bには、第1対向部材44の第1テーパ部44eが突き当てられている。具体的には、第1内周角部43bは、第1テーパ部44eに対して線接触されている。
【0041】
さらに、図4に示されるように、リングマグネット43の軸方向他側には、第2端部43cが設けられ、当該第2端部43cの径方向内側には、第2内周角部43dが設けられている。そして、第2内周角部43dには、第2対向部材45の第2テーパ部45eが突き当てられている。具体的には、第2内周角部43dは、第2テーパ部45eに対して線接触されている。
【0042】
ここで、図2に示されるように、リングマグネット43の軸方向長さL1は、ロータコア42の軸方向長さL2よりも長くなっている(L1>L2)。そして、回転軸41の軸方向において、第1対向部材44はロータコア42に突き当てられており、第2対向部材45はロータコア42から離れている。
【0043】
<第1対向部材>
図2および図3に示されるように、回転軸41の軸方向一側、つまり小径部41a側には、第1対向部材44が配置されている。第1対向部材44は、ガラス繊維を含有するPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)からなり、回転軸41の軸方向においてリングマグネット43と対向している。
【0044】
第1対向部材44は、回転軸41に対して圧入により固定される第1固定筒部44aを備えている。そして、第1固定筒部44aの軸方向一側には、回転軸41の軸方向において第1ボールベアリング23の内輪23bに突き当てられる環状の第1突当部44bが設けられている。これにより、第1対向部材44が固定された回転軸41は、第1ボールベアリング23によりその軸方向位置が規定される。
【0045】
また、第1対向部材44は、第1環状平板部44cを備えている。第1環状平板部44cは、第1固定筒部44aよりも大径で、かつ略板状に形成されている。そして、第1環状平板部44cは、回転軸41の軸方向において、第1固定筒部44aの軸方向他側に一体に設けられている。
【0046】
そして、第1環状平板部44cの軸方向他側には、ロータコア42の軸方向一側の第1端面EF1(図3参照)に突き当てられる環状の第2突当部44dが設けられている。つまり、第1対向部材44は、回転軸41の軸方向において、ロータコア42に突き当てられている。
【0047】
第2突当部44dは、第1環状平板部44cからその軸方向他側に突出されており、当該第2突当部44dは、ロータコア42の第1端面EF1に対して面接触されている。これにより、第1対向部材44が突き当てられたロータコア42は、第1対向部材44を介して第1ボールベアリング23によりその軸方向位置が規定される。
【0048】
なお、図3に示されるように、第1環状平板部44cの軸方向一側には、凹凸等が何も形成されていない。すなわち、第1環状平板部44cの軸方向一側は、環状の平坦面となっている。
【0049】
さらに、図3に示されるように、第2突当部44dの外周部には、環状の第1テーパ部44eが設けられている。第1テーパ部44eは、回転軸41の軸方向に対して、略45度の傾斜角度で傾斜された傾斜面となっている。具体的には、図3に示されるように、第1テーパ部44eは、第2突当部44dからその径方向外側に向かうに連れて、第1環状平板部44cに徐々に近付くように傾斜されている。
【0050】
そして、図3に示されるように、第1テーパ部44eには、回転軸41の軸方向他側から、リングマグネット43の軸方向一側に設けられた第1端部43aの第1内周角部43bが線接触されている。すなわち、リングマグネット43を軸方向他側から軸方向一側に押し付けることで、リングマグネット43は、第1対向部材44により自動調心され、これによりリングマグネット43の軸心と、回転軸41に固定されたロータコア42の軸心とが、互いにずれないように一致される。
【0051】
このように、第1対向部材44は、リングマグネット43の芯出しを行う自動調心機能を有するものである。
【0052】
<第2対向部材>
図2および図4に示されるように、回転軸41の軸方向他側、つまり小径部41a側とは反対側には、第2対向部材45が配置されている。第2対向部材45においても、第1対向部材44と同様にガラス繊維を含有するPPS樹脂からなり、回転軸41の軸方向においてリングマグネット43と対向している。
【0053】
第2対向部材45は、回転軸41に対して圧入により固定される第2固定筒部45aを備えている。そして、第2固定筒部45aの軸方向他側には、ガタツキ抑制スプリングSPの軸方向一側を支持する環状のスプリング支持部45bが設けられている。
【0054】
ここで、ガタツキ抑制スプリングSPの軸方向他側は、第2ボールベアリング26の内輪26bに支持されている。また、ガタツキ抑制スプリングSPは、スプリング支持部45bと内輪26bとの間に、初期荷重が与えられた状態で配置されている。これにより、ロータ40およびガタツキ抑制スプリングSPは、第1ボールベアリング23の内輪23bと第2ボールベアリング26の内輪26bとの間に突っ張るようにして配置される。
【0055】
したがって、第1,第2ボールベアリング23,26の内輪23b,26bが、外輪23a,26aに対し、それぞれ軸方向にがたつくことが抑制される。よって、ロータ40を高速で安定して回転させることが可能となり、メカノイズの発生も抑えられる。
【0056】
また、第2対向部材45は、第2環状平板部45cを備えている。第2環状平板部45cは、第2固定筒部45aよりも大径で、かつ略板状に形成されている。そして、第2環状平板部45cは、回転軸41の軸方向において、第2固定筒部45aの軸方向一側に一体に設けられている。
【0057】
さらに、第2環状平板部45cの軸方向一側には、ロータコア42に向けて所定の高さで突出された環状凸部45dが設けられている。そして、回転軸41の軸方向において、ロータコア42の軸方向他側の第2端面EF2と、環状凸部45dとの間には、環状の空間である接着剤溜まりSCが形成されている。つまり、第2対向部材45は、回転軸41の軸方向において、ロータコア42から離れている。
【0058】
なお、図4に示されるように、第2環状平板部45cの軸方向他側には、凹凸等が何も形成されていない。すなわち、第2環状平板部45cの軸方向他側は、環状の平坦面となっている。
【0059】
また、図4に示されるように、環状凸部45dの外周部には、環状の第2テーパ部45eが設けられている。第2テーパ部45eは、回転軸41の軸方向に対して、略45度の傾斜角度で傾斜された傾斜面となっている。具体的には、図4に示されるように、第2テーパ部45eは、環状凸部45dからその径方向外側に向かうに連れて、第2環状平板部45cに徐々に近付くように傾斜されている。
【0060】
そして、図4に示されるように、第2テーパ部45eには、回転軸41の軸方向一側から、リングマグネット43の軸方向他側に設けられた第2端部43cの第2内周角部43dが線接触されている。すなわち、第2対向部材45を、リングマグネット43の軸方向他側に押し付けることで、リングマグネット43は、第2対向部材45により自動調心され、これによりリングマグネット43の軸心と、回転軸41に固定されたロータコア42の軸心とが、互いにずれないように一致される。
【0061】
すなわち、第2対向部材45においても、第1対向部材44と同様に、リングマグネット43の芯出しを行う自動心機能を有するものである。
【0062】
このように、本実施の形態では、リングマグネット43の軸方向両側に、第1,第2対向部材44,45をそれぞれ設けることで、リングマグネット43の軸心および回転軸41に固定されたロータコア42の軸心が、互いにずれないように一致させている。なお、第1,第2対向部材44,45による自動調心のメカニズム(作用)については、後で詳述する。
【0063】
<減速機構部>
図2および図3に示されるように、減速機構部50は、減速機ハウジング51を備えている。減速機ハウジング51は、鋼板を深絞り加工等することで有底筒状に形成され、その長手方向と直交する方向に沿う断面形状は略正方形となっている。
【0064】
減速機ハウジング51の軸方向他側には、回転軸41の軸方向においてモータケース21の底壁部22に突き当てられる環状底壁52が設けられている。環状底壁52の中央部には、モータケース21の軸受支持筒22aが嵌合される嵌合筒52aが一体に設けられている。これにより、減速機ハウジング51は、モータケース21に対して同軸上に配置される。
【0065】
なお、環状底壁52には、減速機構部50を電動モータ部20に固定するための固定ねじSが挿通される一対のねじ挿通孔(図示せず)が設けられている。具体的には、一対のねじ挿通孔は、回転軸41の軸方向において、モータケース21の底壁部22に設けられた一対のねじ孔22bとそれぞれ対向している。
【0066】
また、減速機ハウジング51の軸方向一側、つまり環状底壁52側とは反対側には、開口53が設けられている。この開口53を介して、減速機ハウジング51の内側に、遊星歯車減速機構60が組み込まれる。なお、遊星歯車減速機構60の軸方向一側には、係合肩部SHが設けられ、当該係合肩部SHに、減速機ハウジング51の係合爪51aが係合されている。これにより、遊星歯車減速機構60は、減速機ハウジング51に対して、がたつくことなく抜け止めされた状態となる。
【0067】
遊星歯車減速機構60は、図5ないし図8に示されるように、ケース本体CBおよび閉塞部材63からなり、略箱形状に形成されたギヤケース61を備えている。つまり、ギヤケース61とモータケース21とは、回転軸41の軸方向に並べられている。ケース本体CBの径方向内側には、インターナルギヤ61aが形成されており、ケース本体CBのケース開口61dは、閉塞部材63により閉塞されている。
【0068】
ケース本体CBは、プラスチック等の樹脂材料からなり、大径部61bおよび小径部61cを備えている。具体的には、大径部61bはケース本体CBの軸方向他側に配置され、小径部61cはケース本体CBの軸方向一側に配置されている。そして、大径部61bの軸方向全域に亘り、インターナルギヤ61aが設けられている。
【0069】
これに対し、小径部61cの径方向内側には、外輪62aおよび内輪62bを有する第3ボールベアリング62が収容されている(図3参照)。具体的には、第3ボールベアリング62の外輪62aが、小径部61cの径方向内側に圧入固定され、第3ボールベアリング62の内輪62bは、第2遊星歯車減速機80を形成する出力軸84を回転自在に支持している。なお、第2遊星歯車減速機80の出力軸84は、リクライニング機構等(図示せず)に動力伝達可能に接続される。
【0070】
ここで、図5および図6に示されるように、ケース本体CBの軸方向における大径部61bと小径部61cとの間には、軸方向視で略正方形に形成され、かつ角部が径方向外側に膨出されたフランジ部FLが一体に設けられている。そして、フランジ部FLには、大径部61bおよび小径部61cを中心として対向配置された一対の係合肩部SHが設けられている。
【0071】
また、図6に示されるように、ケース本体CBの軸方向他側には、ケース開口61dが設けられている。このケース開口61dを介して、ギヤケース61の内側に、第1遊星歯車減速機70および第2遊星歯車減速機80(図9参照)が組み込まれる。
【0072】
ケース本体CBのケース開口61dには、環状の閉塞部材63(図7および図8参照)が装着されている。ここで、閉塞部材63は、ケース開口61dに対して、治具等を用いて精度良く軸心を合わせた状態で圧入固定されている。つまり、ケース本体CBの中心軸および閉塞部材63の中心軸は互いに一致されている。
【0073】
具体的には、閉塞部材63は、環状本体63aを備えており、当該環状本体63aの中央部には、貫通孔63bが設けられている。そして、貫通孔63bは、第1ボールベアリング23の外輪23a軸方向一側の略1/3の部分に、嵌合固定されている。
【0074】
すなわち、第1ボールベアリング23の軸方向両側、すなわち外輪23aの軸方向両側は、モータケース21の軸受支持筒22aおよび閉塞部材63の貫通孔63bのそれぞれに装着(固定)されている。
【0075】
なお、閉塞部材63の貫通孔63bは、第1遊星歯車減速機70の第1サンギヤ71に対して同軸上に配置されており、本発明における第2ベアリング装着部に相当する。
【0076】
これにより、閉塞部材63(遊星歯車減速機構60)の中心軸および第1ボールベアリング23の中心軸が、互いにずれることなく一致される。したがって、第1ボールベアリング23に回転自在に支持される回転軸41の駆動力は、遊星歯車減速機構60に対して効率良く伝達される。
【0077】
そして、ギヤケース61の内部には、入力側(電動モータ部20側)に配置される第1遊星歯車減速機70と、出力側(リクライニング機構等が設けられる側)に配置される第2遊星歯車減速機80とが収容されている。すなわち、第1遊星歯車減速機70および第2遊星歯車減速機80は、回転軸41の軸方向に動力伝達可能に並べられ、遊星歯車減速機構60は2段減速を行う。これにより、遊星歯車減速機構60の小径化を実現している。
【0078】
また、図7および図8に示されるように、環状本体63aの外周部には、合計8個の嵌合突起63cが設けられ、これらの嵌合突起63cが、ケース開口61dに圧入により固定される。なお、嵌合突起63cは、環状本体63aの径方向外側に微小高さで突出されており、ケース開口61dへの圧入に伴い、比較的容易に押し潰される。よって、ケース開口61dに対して、閉塞部材63を、精度良く軸心を合わせた状態で固定可能となっている。
【0079】
さらに、図7に示されるように、環状本体63aの軸方向一側には、小径環状支持部63dおよび大径環状支持部63eが設けられている。これらの小径環状支持部63dおよび大径環状支持部63eは、環状本体63aから軸方向一側に所定の高さで突出されている。そして、小径環状支持部63dおよび大径環状支持部63eには、第1プラネタリギヤ72(図3参照)の軸方向他側が摺接可能となっている。よって、第1プラネタリギヤ72は、スムーズに転動可能となっている。
【0080】
また、図8に示されるように、環状本体63aの軸方向他側には、合計4つの突当脚部63fが設けられている。これらの突当脚部63fは、環状本体63aの周方向に等間隔(90度間隔)で配置されており、回転軸41の軸方向において、減速機ハウジング51の環状底壁52に突き当てられる。なお、環状本体63aの周方向において、隣り合う突当脚部63fの間には、90度間隔で凹状スペースSEが設けられている。これらの凹状スペースSEのうちの180度間隔で対向配置された一対の凹状スペースSEには、固定ねじS(図2および図3参照)のねじ頭(図示せず)が収容される。
【0081】
<第1遊星歯車減速機>
図3および図9に示されるように、第1遊星歯車減速機70は、回転軸41の小径部41aに装着され、かつ第1遊星歯車減速機70の入力部として機能する第1サンギヤ71を有している。第1サンギヤ71は、第1遊星歯車減速機70の中心に配置され、回転軸41により回転されるものである。そして、第1サンギヤ71は、小径部41aに対して圧入固定されると共に、小径部41aに対して精度良く同軸上に配置されている。
【0082】
また、第1遊星歯車減速機70は、ケース本体CBに設けられたインターナルギヤ61aおよび第1サンギヤ71の双方に噛み合わされて、第1サンギヤ71の回りを転動する3つの第1プラネタリギヤ72(図示では2つのみを示す)を備えている。これらの第1プラネタリギヤ72は、第1遊星歯車減速機70を形成する第1キャリア73により、それぞれ回転自在に支持されている。具体的には、3つの第1プラネタリギヤ72は、第1キャリア73の周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。
【0083】
つまり、第1キャリア73により回転自在に支持された複数の第1プラネタリギヤ72は、インターナルギヤ61aと第1サンギヤ71との間に配置されている。なお、第1キャリア73は、本発明におけるキャリアに相当し、第1プラネタリギヤ72は、本発明におけるプラネタリギヤに相当する。
【0084】
また、第1プラネタリギヤ72の軸方向一側は、第1キャリア73に対して回転自在に突き当てられ、第1プラネタリギヤ72の軸方向他側は、閉塞部材63の小径環状支持部63dおよび大径環状支持部63eに対して回転自在に突き当てられている。したがって、3つの第1プラネタリギヤ72は、スムーズに回転しつつも回転軸41の軸方向にがたつくことがない。
【0085】
ここで、第1対向部材44の第1突当部44bが、第1ボールベアリング23の内輪23bに突き当てられているため、第1サンギヤ71の軸方向一側は、内輪23bの軸方向一側から距離L3の分だけ離れた規定位置に配置されている。よって、第1サンギヤ71は、回転軸41の軸方向において第1キャリア73に接触することがなく、かつそれぞれの第1プラネタリギヤ72に適正に噛み合わされる。
【0086】
なお、遊星歯車減速機構60は、閉塞部材63(ギヤケース61)を介して、第1ボールベアリング23により芯出しされている。さらに、ロータ40の回転軸41においても、第1ボールベアリング23により芯出しされている。これにより、遊星歯車減速機構60の回転中心および第1サンギヤ71を含むロータ40の回転中心は、第1ボールベアリング23により互いに精度良く一致される。よって、遊星歯車減速機構60もロータ40と同様に、高速で安定して回転可能であり、メカノイズの発生も抑えられる。
【0087】
また、第1キャリア73の軸方向一側には、第1遊星歯車減速機70の出力部として機能し、かつ第2遊星歯車減速機80の入力部として機能する第2サンギヤ81が設けられている。第2サンギヤ81は中空となっており、第1キャリア73の軸心に配置されている。
【0088】
<第2遊星歯車減速機>
図3および図9に示されるように、第2遊星歯車減速機80は、第1遊星歯車減速機70の第1キャリア73に一体に設けられた第2サンギヤ81を有している。
【0089】
また、第2遊星歯車減速機80は、ケース本体CBに設けられたインターナルギヤ61aおよび第2サンギヤ81の双方に噛み合わされて、第2サンギヤ81の回りを転動する3つの第2プラネタリギヤ82(図示では2つのみを示す)を備えている。これらの第2プラネタリギヤ82は、第2遊星歯車減速機80を形成する第2キャリア83により、それぞれ回転自在に支持されている。具体的には、3つの第2プラネタリギヤ82は、第2キャリア83の周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。
【0090】
つまり、第2キャリア83により回転自在に支持された複数の第2プラネタリギヤ82は、インターナルギヤ61aと第2サンギヤ81との間に配置されている。
【0091】
なお、第2プラネタリギヤ82の軸方向一側は、第2キャリア83に対して回転自在に突き当てられ、第2プラネタリギヤ82の軸方向他側は、シート部材STを介して第1キャリア73に対して回転自在に突き当てられている。したがって、3つの第2プラネタリギヤ82においても、スムーズに回転しつつ、回転軸41の軸方向にがたつくことがない。
【0092】
また、第2キャリア83の軸方向一側には、第2遊星歯車減速機80の出力部として機能する出力軸84が一体に設けられている。ここで、出力軸84は、第3ボールベアリング62の内輪62bに回転自在に支持されており、出力軸84には、リクライニング機構等(図示せず)が動力伝達可能に接続される。
【0093】
ここで、第2キャリア83の軸心にはピン孔83aが設けられ、当該ピン孔83aには、支持ピンPNの軸方向一側が装着されている。また、第2サンギヤ81に設けられる中空部81aには、支持ピンPNの軸方向他側が装着されている。なお、支持ピンPNは、第1キャリア73(第2サンギヤ81)の中心軸と、第2キャリア83(出力軸84)の中心軸とを互いに一致させ、かつ両者を互いに相対回転可能に支持する機能を有している。
【0094】
このように、遊星歯車減速機構60は、第1,第2遊星歯車減速機70,80により2段減速を行うものであり、高速で回転されるロータ40(回転軸41)の回転速度が所定の回転速度にまで減速され、減速されて高トルク化された回転力が出力軸84からリクライニング機構等(図示せず)に出力される。
【0095】
<ロータの組み立て手順>
次に、ロータ40の組み立て手順、つまりロータ40の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0096】
図10は<ロータコア装着工程>を説明する図を、図11は<第1対向部材装着工程>を説明する図を、図12は<接着剤塗布工程>を説明する図を、図13は<リングマグネット装着工程>を説明する図を、図14は<第2対向部材突き当て工程>を説明する図をそれぞれ示している。
【0097】
<ロータコア装着工程>
図10に示されるように、まず、別の製造工程を経て製造された回転軸41およびロータコア42を準備する。次いで、回転軸41を、第1ワーク台100にセットする。具体的には、回転軸41の軸方向他側、つまり回転軸41の軸方向における小径部41a側とは反対側を、第1ワーク台100の差込穴101に差し込む。これにより、回転軸41の第1ワーク台100へのセットが完了する。
【0098】
その後、第1ワーク台100に対して昇降可能な一対の昇降アーム102により、二点鎖線矢印M1に示されるようにロータコア42を把持させる。次いで、一対の昇降アーム102を、実線矢印M2に示されるように下降させ、ロータコア42の軸方向他側を回転軸41の軸方向一側に臨ませる。そして、一対の昇降アーム102を継続して下降させ、回転軸41の小径部41a側からロータコア42の固定孔42aを圧入していく。
【0099】
その後、さらに昇降アーム102を継続して下降させ、図10に示される回転軸41の軸方向の規定位置にロータコア42を位置決めする。具体的には、ロータコア42の第1端面EF1と小径部41aの軸方向一側の端部との距離がL4となるように、一対の昇降アーム102を下降させる。なお、規定位置となる距離L4は、一対の昇降アーム102を制御するコントローラ(図示せず)により、高精度で管理されている。
【0100】
これにより、ロータコア42の回転軸41に対する圧入作業(装着作業)が終了し、<ロータコア装着工程>が完了する。
【0101】
<第1対向部材装着工程>
次に、図11に示されるように、別の製造工程を経て製造された第1対向部材44を準備する。そして、一対の昇降アーム102により、二点鎖線矢印M3に示されるように第1対向部材44を把持させる。このとき、一対の昇降アーム102には、第1対向部材44の第1固定筒部44aを把持させる。
【0102】
その後、一対の昇降アーム102を、実線矢印M4に示されるように下降させ、第1対向部材44の軸方向他側(第1環状平板部44c側)を回転軸41の軸方向一側に臨ませる。そして、一対の昇降アーム102を継続して下降させ、回転軸41の軸方向における小径部41a側から、第1対向部材44の第1固定筒部44aを回転軸41に圧入していく。
【0103】
次いで、さらに昇降アーム102を継続して下降させ、図11に示される回転軸41の軸方向の規定位置に第1対向部材44を位置決めする。具体的には、ロータコア42の第1端面EF1に対して、第1対向部材44の第2突当部44dを突き当てる。これにより、第1対向部材44の第1突当部44bと小径部41aの軸方向一側の端部との距離がL3(図3参照)となるように、第1対向部材44は回転軸41およびロータコア42に対して、精度良く位置決めされる。
【0104】
これにより、第1対向部材44がロータコア42に突き当てられて、第1対向部材44の回転軸41に対する圧入作業(装着作業)が終了し、<第1対向部材装着工程>が完了する。
【0105】
<接着剤塗布工程>
次に、図12の実線矢印M5に示されるように、ロータコア42および第1対向部材44が装着された回転軸41の上下を反転させる。そして、第1対向部材44の第1固定筒部44aを、第2ワーク台103の差込穴104に差し込む。これにより、ロータコア42および第1対向部材44が装着された回転軸41の第2ワーク台103へのセットが完了する。
【0106】
次いで、ロータコア42の軸方向他側(図中上側)の外周部に、接着剤供給ノズル105を臨ませる。そして、接着剤供給ノズル105から接着剤Gを吐出させ、ロータコア42の外周部に接着剤Gを塗布していく。具体的には、接着剤供給ノズル105から接着剤Gを吐出させた状態で、実線矢印M6に示されるように、接着剤供給ノズル105を、ロータコア42の軸方向他側から軸方向一側(図中下側)に向けて螺旋状に移動させる(破線参照)。
【0107】
これにより、ロータコア42の外周部に、規定量の接着剤Gが螺旋状に塗布されて、<接着剤塗布工程>が完了する。
【0108】
<リングマグネット装着工程>
次に、図13に示されるように、別の製造工程を経て製造されたリングマグネット43を準備する。そして、一対の昇降アーム102により、二点鎖線矢印M7に示されるようにリングマグネット43を把持させる。
【0109】
その後、一対の昇降アーム102を、実線矢印M8に示されるように下降させ、リングマグネット43の軸方向一側(第1端部43a側)を回転軸41の軸方向他側に臨ませる。そして、一対の昇降アーム102を継続して下降させ、回転軸41の軸方向における小径部41a側とは反対側から、リングマグネット43をロータコア42の外周部に装着していく。このとき、ロータコア42の外周部とリングマグネット43の内周部との間には、接着剤Gが介在される微小隙間(図示せず)があるため、リングマグネット43はロータコア42に対して、比較的小さな荷重で容易に装着可能となっている。
【0110】
次いで、一対の昇降アーム102をさらに下降させて、リングマグネット43の第1端部43aにおける第1内周角部43bを、所定の押圧力で第1対向部材44の第1テーパ部44eに突き当てる。つまり、第1テーパ部44eと第1内周角部43bとを互いに突き当てる。これにより、回転軸の軸方向においてリングマグネット43および第1対向部材44が対向され、かつリングマグネット43が第1対向部材44により自動調心される。よって、リングマグネット43の軸心とロータコア42の軸心とが互いに一致される。
【0111】
このとき、接着剤Gは、ロータコア42の外周部とリングマグネット43の内周部との間の微小隙間に満遍なく行き渡り、当該微小隙間を埋める。ここで、余剰の接着剤Gは、ロータコア42の軸方向両側にはみ出るが、接着剤Gの塗布量は、予め余剰分が発生することを考慮して決められている。したがって、余剰の接着剤Gは、必要最小限に抑えられている。
【0112】
具体的には、ロータコア42の軸方向一側にはみ出た接着剤Gは、実線矢印M9に示されるように、ロータコア42の外周部とリングマグネット43の内周部との間の微小隙間から、リングマグネット43の第1端部43aと、第1対向部材44の第1環状平板部44cとの間に到達する。なお、第1端部43aと第1環状平板部44cとの間に到達した余剰の接着剤Gは、リングマグネット43および第1環状平板部44cよりも径方向外側にはみ出ることはない。
【0113】
また、ロータコア42の軸方向他側にはみ出た接着剤Gは、実線矢印M10に示されるように、ロータコア42の外周部とリングマグネット43の内周部との間の微小隙間から、接着剤溜まりSC(図4参照)に到達する。なお、接着剤溜まりSCに到達した余剰の接着剤Gは、接着剤溜まりSCの外部にはみ出ることはない。
【0114】
このように、余剰の接着剤Gは、リングマグネット43および第1環状平板部44cよりも径方向外側にはみ出ることがなく、かつ接着剤溜まりSCの外部にはみ出ることもない。したがって、ロータ40を組み立てた後に、はみ出た接着剤Gを取り除く等の作業が不要となり、ロータ40の組み立て工程を簡素化可能としている。
【0115】
これにより、リングマグネット43がロータコア42の外周部に装着され、<リングマグネット装着工程>が完了する。
【0116】
<第2対向部材突き当て工程>
次に、図14に示されるように、別の製造工程を経て製造された第2対向部材45を準備する。そして、一対の昇降アーム102により、二点鎖線矢印M11に示されるように第2対向部材45を把持させる。このとき、一対の昇降アーム102には、第2対向部材45の第2固定筒部45aを把持させる。
【0117】
その後、一対の昇降アーム102を、実線矢印M12に示されるように下降させ、第2対向部材45の軸方向一側(第2環状平板部45c側)を回転軸41の軸方向他側に臨ませる。そして、一対の昇降アーム102を継続して下降させ、回転軸41の軸方向における小径部41a側とは反対側から、第2対向部材45の第2固定筒部45aを回転軸41に圧入していく。
【0118】
次いで、さらに昇降アーム102を継続して下降させ、第2対向部材45に設けられる第2テーパ部45eを、リングマグネット43に設けられる第2内周角部43dに突き当てる。これにより、回転軸41の軸方向においてリングマグネット43および第2対向部材45が対向され、かつリングマグネット43が第2対向部材45により自動調心される。よって、リングマグネット43の軸心とロータコア42の軸心とが互いに一致される。
【0119】
ここで、リングマグネット43の軸方向両側に、第1,第2対向部材44,45を設けることで、リングマグネット43の長手方向全域に亘り、その軸心をロータコア42の軸心に対して一致させることを可能としている。ただし、第1,第2対向部材44,45によるリングマグネット43の自動調心作業は、接着剤Gが硬化する前に実施する。なお、接着剤Gとしては、例えば、熱を加えることで硬化される熱硬化性の接着剤等を用いることができる。
【0120】
以上のように、第2対向部材45がリングマグネット43に突き当てられて、第1対向部材44と第2対向部材45との間に、リングマグネット43ががたつくことなく保持される。これにより、<第2対向部材突き当て工程>が完了すると共に、ロータ40の組み立て作業が終了する。
【0121】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、回転軸41を回転自在に支持する第1ボールベアリング23と、回転軸41の端部に装着され、かつ第1遊星歯車減速機70の中心に配置される第1サンギヤ71と、を有し、モータケース21には、回転軸41に対して同軸上に配置される軸受支持筒22aが設けられ、ギヤケース61には、第1サンギヤ71に対して同軸上に配置される閉塞部材63の貫通孔63bが設けられ、軸受支持筒22aおよび貫通孔63bに、第1ボールベアリング23の軸方向両側がそれぞれ装着されている。
【0122】
これにより、モータケース21の成形精度に拠らず、第1ボールベアリング23を基準として、回転軸41(電動モータ部20)の回転中心と、第1遊星歯車減速機70(減速機構部50)の回転中心と、を互いに精度良く一致させることができる。これにより、回転軸41から第1,第2遊星歯車減速機70,80に対して駆動力をスムーズに伝えることが可能となり、製品毎にモータ特性がばらつくことを抑制できる。
【0123】
また、本実施の形態によれば、第1ボールベアリング23は、径方向外側に配置される外輪23aと、径方向内側に配置される内輪23bと、外輪23aと内輪23bとの間に配置される鋼球23cと、を備えており、軸受支持筒22aおよび貫通孔63bに、外輪23aの軸方向両側がそれぞれ固定されている。
【0124】
これにより、外輪23aに対するモータケース21の軸受支持筒22aおよび閉塞部材63の貫通孔63bの固定強度を高めることができ、かつ回転軸41を内輪23bによりスムーズに回転可能に支持させることができる。また、汎用のボールベアリングを用いることができ、コスト低減を図ることが可能となる。
【0125】
さらに、本実施の形態によれば、ギヤケース61は、径方向内側にインターナルギヤ61aを有するケース本体CBを備え、インターナルギヤ61aと第1サンギヤ71との間に、第1キャリア73により回転自在に支持された3つの第1プラネタリギヤ72が配置される。
【0126】
これにより、ギヤケース61の外径が大きくなることを抑えつつ、ギヤケース61の軸方向に、複数の遊星歯車減速機(本実施の形態では一対の第1,第2遊星歯車減速機70,80)を並べて配置することができる。よって、外郭が棒状のモータ装置として、大きな減速比を得ることが可能となる。
【0127】
また、本実施の形態によれば、製品毎にシート用モータ10のモータ特性がばらつくことを防止できるので、シート用モータ10の組み立て直し等の手間を省くことができる。よって、製造エネルギーの低減を図ることが可能となり、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を達成することができる。
【0128】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、第1,第2対向部材44,45に第1,第2テーパ部44e,45eを設け、リングマグネット43の軸方向両側に第1,第2内周角部43b,43dを設け、これらを自動調心機能として利用したものを示した。本発明はこれに限らず、上記とは逆に、リングマグネットの軸方向両側にテーパ部を設け、第1,第2対向部材のそれぞれにテーパ部に突き当てられる突当部を設けることもできる。さらには、第1対向部材にテーパ部を設け、リングマグネットの軸方向一側に突当部を設け、リングマグネットの軸方向他側にテーパ部を設け、第2対向部材に突当部を設けたりしても良い。
【0129】
また、上記実施の形態では、モータ装置の一例として、シート用モータ10であるものを示したが、本発明はこれに限らず、他の車載機器、例えば、パワーウィンドウ装置やサンルーフ装置等の駆動源にも適用することができる。
【0130】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0131】
10:シート用モータ(モータ装置),20:電動モータ部,21:モータケース,21a:係合爪,22:底壁部,22a:軸受支持筒(第1ベアリング装着部),22b:ねじ孔,23:第1ボールベアリング(ベアリング,ボールベアリング),23a:外輪(アウターレース),23b:内輪(インナーレース),23C:鋼球(ボール),24:開口部,25:カバー部材,25a:係合凹部,25b:軸受支持孔,26:第2ボールベアリング,26a:外輪,26b:内輪,27:導電部材保持板,28:導電部材,29:センサ基板,29a:ホール素子,30:ステータ,31:ステータ本体,32:ティース,33:インシュレータ,34:コイル,40:ロータ,41:回転軸,41a:小径部,42:ロータコア,42a:固定孔,43:リングマグネット,43a:第1端部,43b:第1内周角部,43c:第2端部,43d:第2内周角部,44:第1対向部材,44a:第1固定筒部,44b:第1突当部,44c:第1環状平板部,44d:第2突当部,44e:第1テーパ部,45:第2対向部材,45a:第2固定筒部,45b:スプリング支持部,45c:第2環状平板部,45d:環状凸部,45e:第2テーパ部,50:減速機構部,51:減速機ハウジング,51a:係合爪,52:環状底壁,52a:嵌合筒,53:開口,60:遊星歯車減速機構,61:ギヤケース,61a:インターナルギヤ,61b:大径部,61c:小径部,61d:ケース開口,62:第3ボールベアリング,62a:外輪,62b:内輪,63:閉塞部材(ギヤケース),63a:環状本体,63b:貫通孔(第2ベアリング装着部),63c:嵌合突起,63d:小径環状支持部,63e:大径環状支持部,63f:突当脚部,70:第1遊星歯車減速機(遊星歯車減速機),71:第1サンギヤ(サンギヤ),72:第1プラネタリギヤ(プラネタリギヤ),73:第1キャリア(キャリア),80:第2遊星歯車減速機,81:第2サンギヤ,81a:中空部,82:第2プラネタリギヤ,83:第2キャリア,83a:ピン孔,84:出力軸,100:第1ワーク台,101:差込穴,102:昇降アーム,103:第2ワーク台,104:差込穴,105:接着剤供給ノズル,CB:ケース本体(ギヤケース),CN:コネクタ,CU:車載コントローラ,EF1:第1端面,EF2:第2端面,FL:フランジ部,G:接着剤,PL:電源線,PN:支持ピン,S:固定ねじ,SC:接着剤溜まり,SE:凹状スペース,SH:係合肩部,SP:ガタツキ抑制スプリング,ST:シート部材,SW:センサ線
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