(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152203
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20251002BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
C08G59/40
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053986
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】國澤 優奈
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
【テーマコード(参考)】
4J036
5E316
【Fターム(参考)】
4J036AC08
4J036AD07
4J036DC38
4J036FA05
4J036FB12
4J036GA04
4J036HA12
4J036JA08
4J036JA15
5E316AA12
5E316CC02
5E316CC09
5E316CC32
5E316DD02
5E316GG28
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】絶縁層と金属層との層間剥離を抑えることができ、かつ、硬化物の誘電正接を低くすることができる樹脂材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物(A)と、活性エステル化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含み、樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、20分以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、活性エステル化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含み、
樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、20分以上である、樹脂材料。
【請求項2】
樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、100分以下である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(E)をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%中、前記熱可塑性樹脂(E)の含有量が、10重量%以上である、請求項3に記載の樹脂材料。
【請求項5】
前記硬化促進剤(C)が、リン含有化合物、又はイミダゾール骨格を有さないアミン化合物を含む、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記硬化促進剤(C)が、25℃で液状のリン含有化合物を含む、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項7】
樹脂フィルムである、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項8】
多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項9】
樹脂材料の硬化物であって、
前記樹脂材料が、請求項1又は2に記載の樹脂材料である、硬化物。
【請求項10】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、
複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1又は2に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物を含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物に関する。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、上記絶縁層を形成するために、フィルム状の樹脂材料(樹脂フィルム)が用いられることがある。上記樹脂材料は、ビルドアップフィルムを含む多層プリント配線板用の絶縁材料等として用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、(A)リン含有硬化触媒と、(B)エポキシ樹脂と、(C)活性エステル化合物と、(D)無機充填材とを含む樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物では、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上であり、(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品の絶縁層の材料として用いられる樹脂材料では、該樹脂材料の硬化物の誘電正接が低いことが望ましい。硬化物の誘電正接を低くするために、特許文献1に記載のような活性エステル化合物を含む樹脂材料が用いられることがある。しかしながら、活性エステル化合物を含む従来の樹脂材料では、絶縁層と金属層との層間剥離が発生しやすい。
【0006】
従来の樹脂材料では、絶縁層と金属層との層間剥離を抑えることと、硬化物の誘電正接を低くすることとの双方を達成することが困難である。
【0007】
本発明の目的は、絶縁層と金属層との層間剥離を抑えることができ、かつ、硬化物の誘電正接を低くすることができる樹脂材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物を提供することも目的とする。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、以下の樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板を開示する。
【0009】
項1.エポキシ化合物(A)と、活性エステル化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含み、樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、20分以上である、樹脂材料。
【0010】
項2.樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、100分以下である、項1に記載の樹脂材料。
【0011】
項3.熱可塑性樹脂(E)をさらに含む、項1又は2に記載の樹脂材料。
【0012】
項4.樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%中、前記熱可塑性樹脂(E)の含有量が、10重量%以上である、項3に記載の樹脂材料。
【0013】
項5.前記硬化促進剤(C)が、リン含有化合物、又はイミダゾール骨格を有さないアミン化合物を含む、項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0014】
項6.前記硬化促進剤(C)が、25℃で液状のリン含有化合物を含む、項1~5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0015】
項7.樹脂フィルムである、項1~6のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0016】
項8.多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、項1~7のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0017】
項9.樹脂材料の硬化物であって、前記樹脂材料が、項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料である、硬化物。
【0018】
項10.回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物(A)と、活性エステル化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含む。本発明に係る樹脂材料では、樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、20分以上である。本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、絶縁層と金属層との層間剥離を抑えることができ、かつ、硬化物の誘電正接を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
(樹脂材料)
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物(A)と、活性エステル化合物(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含む。
【0023】
本発明に係る樹脂材料では、樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間が、20分以上である。これは、本発明に係る樹脂材料の硬化反応速度が比較的遅いことを意味する。
【0024】
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、絶縁層と金属層との層間剥離を抑えることができ、かつ、硬化物の誘電正接を低くすることができる。
【0025】
活性エステル化合物を含む従来の樹脂材料では、硬化反応速度が比較的速く、硬化時に樹脂材料が比較的収縮しやすい。硬化時に樹脂材料が収縮すると、金属層と絶縁層(樹脂材料の硬化物層)との界面にて剥離が生じやすい。これに対して、本発明に係る樹脂材料では、硬化反応速度が比較的遅いので、硬化時の樹脂材料の収縮が効果的に抑えられ、絶縁層と金属層との層間剥離を抑えることができる。また、本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、特に、該樹脂材料が活性エステル化合物を含むので、硬化物の誘電正接を低くすることができる。
【0026】
以下、本明細書において、上記「樹脂材料の示差走査熱量測定において、小沢法により算出される160℃での反応率が80%に到達する時間」を「T80%」と記載することがある。
【0027】
上記T80%は、以下のようにして求められる。
【0028】
昇温速度の異なる3条件以上の条件で、樹脂材料の示差走査熱量測定を行い、温度Tの逆数と、昇温速度Bの対数(logB)とをプロットする。なお、例えば、昇温速度3℃/min、6℃/min、及び10℃/minの3条件で、樹脂材料の示差走査熱量測定を行うことができる。得られた直線の傾きから、下記式(1)に基づいて、活性化エネルギーΔEを算出する。算出した活性化エネルギーΔEから、下記式(2)の定温劣化式に基づいて、160℃での反応率が80%に到達する時間を算出する。下記式(2)中、τは定温劣化時間を表す。樹脂材料の示差走査熱量測定及びその解析は、DSC装置(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DSC6220」)及び反応速度解析ソフト(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて行うことができる。小沢法については、例えば、「小澤丈夫,熱測定1,2(1974)」及び「T.Ozawa,Bull.Chem.Soc.Japan 38,1881(1965)」等に記載されている。
【0029】
【0030】
上記T80%は、20分以上であり、好ましくは25分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは35分以上、好ましくは100分以下、より好ましくは80分以下、更に好ましくは70分以下、特に好ましくは65分以下である。上記T80%が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。
【0031】
上記T80%を調整する方法としては、以下の方法等が挙げられる。(1)樹脂材料に単官能又は2官能のエポキシ化合物を含ませることにより、上記T80%が長くなりやすい。(2)樹脂材料に熱可塑性樹脂を含ませることにより、上記T80%が長くなりやすい。(3)樹脂材料にリン含有化合物(硬化促進剤)又はイミダゾール骨格を有さないアミン化合物(硬化促進剤)を含ませることにより、上記T80%が長くなりやすい。(4)樹脂材料にイミダゾール化合物(硬化促進剤)を含ませる場合には、上記T80%が短くなりやすい。上述した方法を適宜組み合わせるなどして、上記T80%を調整することができる。
【0032】
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0033】
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0034】
なお、以下の説明において、「上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料が溶剤を含む場合には、上記樹脂材料中の上記溶剤を除く成分100重量%を意味し、上記樹脂材料が溶剤を含まない場合には、上記樹脂材料100重量%を意味する。「上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料中の不揮発性成分100重量%を意味する。
【0035】
また、以下の説明において、「上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料が無機充填材(D)及び溶剤を含む場合には、上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び上記溶剤を除く成分100重量%を意味する。「上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料が無機充填材(D)を含みかつ溶剤を含まない場合には、上記樹脂材料中の無機充填材(D)を除く成分100重量%を意味する。「上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料中の無機充填材(D)を除く不揮発性成分100重量%を意味する。
【0036】
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
【0037】
[エポキシ化合物(A)]
上記樹脂材料は、エポキシ化合物(A)を含む。エポキシ化合物(A)として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。エポキシ化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
エポキシ化合物(A)としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0039】
エポキシ化合物(A)は、グリシジルエーテル化合物であってもよい。上記グリシジルエーテル化合物とは、グリシジルエーテル基を少なくとも1個有する化合物である。
【0040】
エポキシ化合物(A)は、グリシジルエーテル骨格を有する脂肪族エポキシ化合物を含むことが好ましく、グリシジルエーテル骨格を有する脂肪族エポキシ化合物と、芳香環を有するエポキシ化合物とを含むことがより好ましい。この場合には、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0041】
上記芳香環を有するエポキシ化合物は、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物であることが好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0042】
なお、上記グリシジルエーテル骨格を有する脂肪族エポキシ化合物は、エポキシ基を1個又は2個有するエポキシ化合物を含んでいてもよく、エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を含んでいてもよく、エポキシ基を1個又は2個有するエポキシ化合物と、エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物との双方を含んでいてもよい。また、上記芳香環を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を1個又は2個有するエポキシ化合物を含んでいてもよく、エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を含んでいてもよく、エポキシ基を1個又は2個有するエポキシ化合物と、エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物との双方を含んでいてもよい。
【0043】
エポキシ化合物(A)100重量%中、上記グリシジルエーテル骨格を有する脂肪族エポキシ化合物の含有量は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは18重量%以上、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。上記グリシジルエーテル骨格を有する脂肪族エポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。
【0044】
エポキシ化合物(A)の分子量は、好ましくは1000以下である。上記分子量が上記上限以下であると、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られやすく、ラミネート性を良好にすることができる。また、ラミネート性を良好にすることができるので、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることができる。
【0045】
エポキシ化合物(A)の分子量は、エポキシ化合物(A)が重合体ではない場合、及びエポキシ化合物(A)の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、エポキシ化合物(A)が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0046】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、エポキシ化合物(A)の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。エポキシ化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、エポキシ化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0047】
上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%中、エポキシ化合物(A)の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは40重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下である。エポキシ化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、エポキシ化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0048】
[活性エステル化合物(B)]
上記樹脂材料は、活性エステル化合物(B)を含む。活性エステル化合物(B)を用いることにより、硬化物の誘電正接を低くすることができる。活性エステル化合物(B)は硬化剤である。活性エステル化合物(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
活性エステル化合物(B)とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物(B)は、例えば、カルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。
【0050】
活性エステル化合物(B)としては、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0051】
【0052】
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0053】
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
【0054】
活性エステル化合物(B)は特に限定されない。硬化物の熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、活性エステル化合物(B)は、2個以上の芳香族骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点からは、活性エステル化合物(B)は、主鎖の骨格中にナフタレン環を有することがより好ましい。
【0055】
活性エステル化合物(B)の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「HPC-8000L-65MT」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB9416-70BK」、及び「EXB8100-65T」等が挙げられる。
【0056】
エポキシ化合物(A)100重量部に対する活性エステル化合物(B)の含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは80重量部以上、更に好ましくは85重量部以上、好ましくは150重量部以下、より好ましくは130重量部以下、更に好ましくは120重量部以下である。活性エステル化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性を高めることができ、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。また、活性エステル化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。
【0057】
上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%中、活性エステル化合物(B)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。活性エステル化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性を高めることができ、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。また、活性エステル化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。さらに、活性エステル化合物(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記T80%を長くすることができ、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。
【0058】
[硬化促進剤(C)]
上記樹脂材料は、硬化促進剤(C)を含む。硬化促進剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
硬化促進剤(C)としては、リン含有化合物(25℃で液状のリン含有化合物及び25℃で固体のリン含有化合物)、イミダゾール骨格を有さないアミン化合物、イミダゾール化合物、有機金属化合物、過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。
【0060】
上記リン含有化合物とは、リン原子を含む化合物を意味する。上記リン含有化合物としては、テトラブチルホスホニウムo,o-ジエチルホスホロジチオエート、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、及びアルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン化合物、並びに、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスホニウム塩化合物等が挙げられる。上記リン含有化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記イミダゾール骨格を有さないアミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、m-キシリレンジ(ジメチルアミン)、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルピロリジン、N-メチルハイドロオキシピペリジン、m-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ポリオキシプロピレンポリアミン、及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。上記イミダゾール骨格を有さないアミン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上記イミダゾール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。上記有機金属化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、及びケトンパーオキサイド等が挙げられる。上記過酸化物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
硬化促進剤(C)は、リン含有化合物、又はイミダゾール骨格を有さないアミン化合物を含むことが好ましく、リン含有化合物を含むことがより好ましく、25℃で液状のリン含有化合物を含むことが更に好ましい。この場合には、上記T80%を長くすることができ、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。また、硬化促進剤(C)が25℃で液状のリン含有化合物を含む場合には、硬化物の熱寸法安定性及びガラス転移温度をより一層高めることができる。
【0066】
なお、上記25℃で液状のリン含有化合物における「25℃で液状」とは、B型粘度計を用いて25℃の条件で測定したときの粘度が500Pa・s以下であることを意味する。
【0067】
B型粘度計を用いて25℃の条件で測定したときの上記25℃で液状のリン含有化合物の粘度は、好ましくは0.001Pa・s以上、より好ましくは0.01Pa・s以上、更に好ましくは0.1Pa・s以上、特に好ましくは0.3Pa・s以上、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下である。上記25℃で液状のリン含有化合物の粘度が上記下限以上であると、該25℃で液状のリン含有化合物が樹脂材料中により一層均一に分散しやすくなるため、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、上記25℃で液状のリン含有化合物の粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物のガラス転移温度をより一層高めることができる。
【0068】
上記25℃で液状のリン含有化合物の粘度は、より具体的には、B型粘度計(例えば、応用技研社製「TVE33H」)を用いて、25℃及び20rpmの条件で測定することができる。
【0069】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、硬化促進剤(C)の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.13重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。硬化促進剤(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物における架橋構造が均一になるとともに、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。また、樹脂材料を比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。
【0070】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記イミダゾール骨格を有さないアミン化合物の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。上記イミダゾール骨格を有さないアミン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記T80%を長くすることができ、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。
【0071】
[無機充填材(D)]
上記樹脂材料は、無機充填材(D)を含む。無機充填材(D)の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができ、また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。無機充填材(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
無機充填材(D)としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0073】
無機充填材(D)は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。この場合には、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高めることができ、かつ、絶縁層の表面により一層微細な配線を形成させることができる。無機充填材(D)がシリカである場合には、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることもできる。
【0074】
無機充填材(D)の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。無機充填材(D)の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高めることができる。
【0075】
無機充填材(D)の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0076】
無機充填材(D)は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、絶縁層の表面粗さが効果的に小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高めることができる。無機充填材(D)が球状である場合には、無機充填材(D)のアスペクト比は、好ましくは1以上、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0077】
無機充填材(D)は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。この場合には、粗化硬化物の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、絶縁層の表面により一層微細な配線が形成され、かつ配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を付与することができる。
【0078】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0079】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材(D)の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、より一層好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上、最も好ましくは70重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは83重量%以下、特に好ましくは80重量%以下、最も好ましくは78重量%以下である。無機充填材(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、この無機充填材(D)の含有量であれば、硬化物の線膨張係数を小さくすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。また、無機充填材(D)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の誘電正接が効果的に低くなる。
【0080】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100体積%中、無機充填材(D)の含有量は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、更に好ましくは50体積%以上、好ましくは75体積%以下、より好ましくは73体積%以下、更に好ましくは70体積%以下である。無機充填材(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、この無機充填材(D)の含有量であれば、硬化物の線膨張係数を小さくすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。また、無機充填材(D)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の誘電正接が効果的に低くなる。
【0081】
[熱可塑性樹脂(E)]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂(E)を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂(E)としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
硬化環境によらず、硬化物の誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、熱可塑性樹脂(E)は、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材(D)の不均一化が抑えられる。また、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材(D)の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂材料又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
【0083】
上記ポリイミド樹脂は特に限定されない。上記ポリイミド樹脂として、従来公知のポリイミド樹脂を使用可能である。上記ポリイミド樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0084】
溶解性を良好にする観点からは、上記ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとの反応物であるポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0085】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0086】
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名、BASFジャパン社製、3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
【0087】
なお、上記ポリイミド樹脂は、末端に、酸無水物構造、マレイミド構造、又はシトラコンイミド構造を有していてもよい。この場合には、上記ポリイミド樹脂とエポキシ化合物(A)とを反応させることができる。上記ポリイミド樹脂とエポキシ化合物(A)とを反応させることにより、硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
【0088】
上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0090】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
【0091】
保存安定性により一層優れた樹脂材料を得る観点からは、熱可塑性樹脂(E)の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
【0092】
熱可塑性樹脂(E)の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0093】
熱可塑性樹脂(E)の含有量は特に限定されない。上記樹脂材料中の無機充填材(D)及び溶剤を除く成分100重量%中、熱可塑性樹脂(E)の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、より一層好ましくは10重量%以上、更に好ましくは12重量%以上、特に好ましくは14重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。熱可塑性樹脂(E)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。熱可塑性樹脂(E)の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。熱可塑性樹脂(E)の含有量が上記下限以上であると、上記T80%を長くすることができ、絶縁層と金属層との層間剥離をより一層効果的に抑えることができる。熱可塑性樹脂(E)の含有量が上記上限以下であると、硬化物の線膨張係数がより一層小さくなる。熱可塑性樹脂(E)の含有量が上記上限以下であると、絶縁層の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0094】
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、溶剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、無機充填材(D)を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0096】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0097】
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0098】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、上述した成分(エポキシ化合物(A)、活性エステル化合物(B)、硬化促進剤(C)、無機充填材(D)、熱可塑性樹脂(E)及び溶剤)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、エポキシ化合物とは異なる熱硬化性化合物;活性エステル化合物とは異なる硬化剤、有機充填材;レベリング剤;難燃剤;カップリング剤;着色剤;酸化防止剤;紫外線劣化防止剤;消泡剤;増粘剤;揺変性付与剤等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記エポキシ化合物とは異なる熱硬化性化合物としては、マレイミド化合物等が挙げられる。
【0100】
上記活性エステル化合物とは異なる硬化剤としては、フェノール化合物、シアネートエステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、カルボジイミド化合物、チオール化合物、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、及び酸無水物等が挙げられる。
【0101】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0102】
上記樹脂材料は、ガラスクロスを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂材料は、ガラスクロスを含まないことが好ましい。上記樹脂材料は、プリプレグではないことが好ましい。
【0103】
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0104】
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0105】
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0106】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0107】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
【0108】
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材フィルムの表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0109】
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0110】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0111】
(樹脂材料の他の詳細)
上記樹脂材料は、様々な用途に用いることができる。上記樹脂材料は、例えば、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。また、上記樹脂材料は、液晶ポリマー(LCP)の代替用途、ミリ波アンテナ用途、再配線層用途に好適に用いられる。上記樹脂材料は、上記用途に限られず、配線形成用途全般に好適に用いられる。
【0112】
上記樹脂材料は、接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、例えば、パワーオーバーレイパッケージ用接着材料、プリント配線基板用接着材料、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着材料、半導体接合用接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、接着材料であることが好ましい。
【0113】
上記樹脂材料は、絶縁材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられ、多層プリント配線板において絶縁層を形成するためにより好適に用いられる。上記樹脂材料は、絶縁材料であることが好ましく、層間絶縁材料であることがより好ましい。上記絶縁材料は、接着材料としての役割も備え得る。
【0114】
本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料が硬化された樹脂材料の硬化物である。本発明に係る硬化物は、樹脂材料の硬化物であって、該樹脂材料が上述した樹脂材料である。本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料を硬化させることにより得ることができる。本発明に係る硬化物を得る際の、上記樹脂材料の加熱条件は、樹脂材料が硬化する限り、特に限定されない。
【0115】
(積層構造体及び銅張積層板)
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層することにより、積層構造体を得ることができる。上記積層構造体は、金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である。上記樹脂フィルムと上記積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、上記積層対象部材に積層可能である。
【0116】
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
【0117】
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
【0118】
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である、銅張積層板が挙げられる。
【0119】
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法、公知のプラズマ処理による形成方法、及び公知のUV処理による形成方法等が挙げられる。
【0120】
(絶縁層付き回路基板)
上記樹脂材料は、絶縁層付き回路基板を得るために好適に用いられる。上記絶縁層付き回路基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に配置された絶縁層とを備え、上記絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である絶縁層付き回路基板が挙げられる。
【0121】
上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0122】
上記絶縁層付き回路基板は、従来公知の方法により得ることができる。
【0123】
(多層基板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記多層基板の絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である。上記絶縁層は、回路基板の回路(金属層)が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0124】
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0125】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0126】
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0127】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0128】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0129】
上記樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0130】
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記多層プリント配線板では、上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である。
【0131】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【0132】
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0133】
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0134】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0135】
以下の材料を用意した。
【0136】
(エポキシ化合物(A))
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC-3000」)
アルコール性グリシジルエーテル型エポキシ化合物(ダイセル社製「PB3600」、グリシジルエーテル骨格を有する脂肪族エポキシ化合物)
【0137】
(硬化剤)
活性エステル化合物(B):
活性エステル化合物含有液(DIC社製「HPC-8000L-65MT」、固形分65重量%)
活性エステル化合物とは異なる硬化剤:
フェノール化合物含有液(DIC社製「LA-1356」、固形分60重量%)
【0138】
(硬化促進剤(C))
25℃で液状のリン含有化合物(日本化学工業社製「PX-4ET」、テトラブチルホスホニウムo,o-ジエチルホスホロジチオエート、25℃での粘度:1.29Pa・s)
25℃で固体のリン含有化合物(北興化学工業社製「TBP-3PC」)
25℃で固体のアミン化合物(三井化学ファイン社製「ビスアニリンM」)
25℃で固体のアミン化合物(TCI社製「BAPP」)
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(四国化成工業社製「1B2PZ」)
2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2P4MZ」)
【0139】
(無機充填材(D))
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050-HOA」、平均粒径1.0μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
【0140】
(熱可塑性樹脂(E))
フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954BH30」)
【0141】
(実施例1~7及び比較例1~4)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で撹拌し、樹脂材料を得た。
【0142】
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
【0143】
(評価)
(1)160℃での反応率が80%に到達する時間(T80%)
昇温速度3℃/min、6℃/min、及び10℃/minの3条件で、樹脂材料の示差走査熱量測定を行い、温度Tの逆数と、昇温速度Bの対数(logB)とをプロットした。得られた直線の傾きから、上述した式(1)に基づいて、活性化エネルギーΔEを算出した。算出した活性化エネルギーΔEから、上述した式(2)の定温劣化式に基づいて、160℃での反応率が80%に到達する時間を算出した。なお、樹脂材料の示差走査熱量測定及びその解析は、DSC装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DSC6220」)及び反応速度解析ソフト(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いた。
【0144】
(2)層間剥離
得られた樹脂フィルムを金属層(銅層)にラミネートして、樹脂フィルムと金属層との積層体を得た。ラミネートは、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」を用いて、30秒減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃及び圧力0.7MPaで30秒間ラミネートし、次いで、100℃及びプレス圧力0.8MPaで60秒間プレスすることにより行った。この積層体を130℃で30分間加熱した後、160℃で30分間加熱し、さらに110℃で30分加熱して、絶縁層と金属層とを備える基板を作製した。得られた基板における絶縁層と金属層との界面をFIB-SEMにより観察し、層間剥離が生じている距離を測定した。
【0145】
[層間剥離の判定基準]
〇〇:層間剥離が生じている部分の最大長さが1μm以下
○:層間剥離が生じている部分の最大長さが1μmを超え10μm以下
△:層間剥離が生じている部分の最大長さが10μmを超え15μm以下
×:層間剥離が生じている部分の最大長さが15μmを超える
【0146】
(3)誘電正接(Df)
得られた厚さ40μmの樹脂フィルム(Bステージフィルム)を100℃で30分間加熱した後、180℃で30分間加熱し、さらに200℃で90分間加熱して、硬化物を得た。得られた硬化物を、幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせ、測定サンプルとした。関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)及び周波数5.8GHzにて、硬化物の誘電正接(Df)を測定した。
【0147】
[誘電正接(Df)の判定基準]
〇:誘電正接が4.5×10-3以下
△:誘電正接が4.5×10-3を超え5.0×10-3以下
×:誘電正接が5.0×10-3を超える
【0148】
組成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0149】
【0150】
【符号の説明】
【0151】
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層