(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152292
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20251002BHJP
C04B 18/167 20230101ALI20251002BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20251002BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20251002BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
C04B28/08 ZAB
C04B18/167
C04B22/14 B
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C08F220/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054118
(22)【出願日】2024-03-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発/革新的カーボンネガティブコンクリートの材料・施工および利用技術の開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】辻 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 康平
(72)【発明者】
【氏名】朝井 達也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅至
(72)【発明者】
【氏名】池尾 陽作
(72)【発明者】
【氏名】川尻 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 邦生
(72)【発明者】
【氏名】大石 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直紀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 陽
(72)【発明者】
【氏名】田中 善將
(72)【発明者】
【氏名】玉木 伸二
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
【テーマコード(参考)】
4G112
4J100
【Fターム(参考)】
4G112MB23
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PA30
4G112PB11
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
4G112PC03
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100AL09R
4J100AP01R
4J100BA03P
4J100BA08P
4J100BA56R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA38
4J100FA19
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減することができる水硬性組成物を提供する。
【解決手段】水と、細骨材及び粗骨材から選ばれる少なくとも1つの骨材と、結合材を含有する粉体と、混和剤と、を含み、粉体がCO2固定微粉を含有するものであること、細骨材がCO2固定改質再生細骨材を含有するものであること、及び、粗骨材がCO2固定改質再生粗骨材を含有するものであることから選ばれる少なくとも1つの条件を満たし、水と粉体に含有される結合材との質量比(水/結合材)が、0.3~0.9であり、混和剤の含有量が、結合材100質量部に対して0.02~1.0質量部であることを特徴とする、水硬性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、細骨材及び粗骨材から選ばれる少なくとも1つの骨材と、下記結合材を含有する粉体と、下記混和剤と、を含み、
前記粉体が下記CO
2固定微粉を含有するものであること、前記細骨材が下記CO
2固定改質再生細骨材を含有するものであること、及び、前記粗骨材が下記CO
2固定改質再生粗骨材を含有するものであることから選ばれる少なくとも1つの条件を満たし、
前記水と前記粉体に含有される前記結合材との質量比(水/結合材)が、0.3~0.9であり、
前記混和剤の含有量が、前記結合材100質量部に対して0.02~1.0質量部であることを特徴とする、水硬性組成物。
結合材:
水硬性及び潜在水硬性を有する粉体であり、結合材の全質量中に、ポルトランドセメントを5~70質量%、高炉スラグ微粉末を30~95質量%、及び石膏を0~10質量%の割合で含有するものである。
CO
2固定微粉:
50%粒径が100μm以下であって、コンクリート硬化体から得られる再生コンクリート粉末と、炭酸ガスとの反応生成物である改質コンクリート粉末を含み、
前記改質コンクリート粉末が、炭酸カルシウムとケイ酸質とを含むものである。
CO
2固定改質再生細骨材:
炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が3.0%を超え10%以下の再生細骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生細骨材を含み、前記改質再生細骨材は、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を含むものである。
CO
2固定改質再生粗骨材:
炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が2.0%を超え7.0%以下の再生粗骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生粗骨材を含み、
前記改質再生粗骨材が、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含むものである。
混和剤:
下記一般式(1)で示される化合物から形成された構成単位1、下記一般式(2)で示される化合物から形成された構成単位2、及びその他の共重合可能な単量体から形成された構成単位3の含有割合の合計を100質量%とすると、
前記構成単位1を50~99質量%、前記構成単位2を1~50質量%、及び前記構成単位3を0~10質量%の割合で含有する水溶性ビニル共重合体を含むものである。
【化1】
(一般式(1)において、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。R
4は、水素原子、又は炭素数1~20の炭化水素基である。R
5Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、R
5Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。xは0~5の整数である。yは0又は1の整数である。)
【化2】
(一般式(2)において、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は[-(CH
2)
pCOOM
2](但し、[-(CH
2)
pCOOM
2]は、COOM
1又は他のCOOM
2と無水物を形成してもよい。この場合には当該基においてM
1、M
2は存在しない。M
1、M
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、又は有機アミンである。pは、0~2の整数である)である。)
【請求項2】
前記粉体が、前記CO2固定微粉を含有するものであり、
前記CO2固定微粉の含有量が、前記結合材100質量部に対して、1~100質量部である、請求項1に記載の水硬性組成物。
【請求項3】
前記細骨材が、前記CO2固定改質再生細骨材を含有するものであり、
前記細骨材の全容積中に、前記CO2固定改質再生細骨材を1~100容積%の割合で含有する、請求項1に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
前記粗骨材が、前記CO2固定改質再生粗骨材を含有するものであり、
前記粗骨材の全容積中に、前記CO2固定改質再生粗骨材を1~100容積%の割合で含有する、請求項1に記載の水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物に関する。更に詳しくは、流動性、流動保持性、及び強度発現性を有し、二酸化炭素収支を削減する水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルまたはカーボンネガティブのような脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界中で加速している。例えば、日本では、2020年に「2050年カーボンニュートラル」の実現を宣言し、2021年には、2030年度の温室効果ガスを46%削減(2013年度対比)と目標を設定している。
【0003】
そこで、例えば建設業界でも、二酸化炭素(CO2)の排出量削減に取り組んでいる。
【0004】
具体的には、コンクリートは、製造時に二酸化炭素を多量に排出するセメントを用いるため、二酸化炭素の排出量が非常に多い材料である。そこで、二酸化炭素の排出量を削減するために、高炉スラグ微粉末やフライアッシュ等の産業副産物等を用いてセメント使用量を減らした低炭素セメント及び低炭素コンクリートが知られている。
【0005】
また、γ-2CaO・SiO2などの非水硬性化合物と所定割合のイーリマイトを含むセメント混和剤を用いることで、コンクリートの初期強度を確保しつつ炭酸化養生によって強度再現性を付与できることが報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のセメント混和剤を用いたものであっても、二酸化炭素収支の削減(即ち、コンクリート製品などの水硬性組成物硬化体を製造する工程の全体を通して排出される二酸化炭素の合計量を低減すること)には未だ改善の余地がある。更に、得られる水硬性組成物における流動性及び流動保持性についても未だに改善する余地があり、この水硬性組成物によって作製した水硬性組成物硬化体の強度発現性についても未だ改善の余地があった。
【0008】
そこで、二酸化炭素収支の削減量を向上させ、更に、流動性、流動保持性、及び強度発現性が向上された水硬性組成物の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み、流動性、流動保持性、及び強度発現性が向上され、二酸化炭素収支の削減量が向上される水硬性組成物を提供することを課題とするものである。
【0010】
なお、「二酸化炭素収支の削減量が向上される」とは、コンクリート製品などの水硬性組成物硬化体を製造する工程の全体を通して排出される二酸化炭素の合計量を低減させたり、二酸化炭素を吸収させた材料(CO2固定微粉などのCCU(Carbon Capture and Utilization)材料)を用いることなどによって達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、CO2固定微粉またはCO2固定改質再生骨材及び所定の結合材を含有するとともに所定割合の所定の混和剤を含有することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物が提供される。
【0012】
[1] 水と、細骨材及び粗骨材から選ばれる少なくとも1つの骨材と、下記結合材を含有する粉体と、下記混和剤と、を含み、
前記粉体が下記CO2固定微粉を含有するものであること、前記細骨材が下記CO2固定改質再生細骨材を含有するものであること、及び、前記粗骨材が下記CO2固定改質再生粗骨材を含有するものであることから選ばれる少なくとも1つの条件を満たし、
前記水と前記粉体に含有される前記結合材との質量比(水/結合材)が、0.3~0.9であり、
前記混和剤の含有量が、前記結合材100質量部に対して0.02~1.0質量部であることを特徴とする、水硬性組成物。
結合材:
水硬性及び潜在水硬性を有する粉体であり、結合材の全質量中に、ポルトランドセメントを5~70質量%、高炉スラグ微粉末を30~95質量%、及び石膏を0~10質量%の割合で含有するものである。
CO2固定微粉:
50%粒径が100μm以下であって、コンクリート硬化体から得られる再生コンクリート粉末と、炭酸ガスとの反応生成物である改質コンクリート粉末を含み、
前記改質コンクリート粉末が、炭酸カルシウムとケイ酸質とを含むものである。
CO2固定改質再生細骨材:
炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が3.0%を超え10%以下の再生細骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生細骨材を含み、前記改質再生細骨材は、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を含むものである。
CO2固定改質再生粗骨材:
炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が2.0%を超え7.0%以下の再生粗骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生粗骨材を含み、
前記改質再生粗骨材が、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含むものである。
混和剤:
下記一般式(1)で示される化合物から形成された構成単位1、下記一般式(2)で示される化合物から形成された構成単位2、及びその他の共重合可能な単量体から形成された構成単位3の含有割合の合計を100質量%とすると、
前記構成単位1を50~99質量%、前記構成単位2を1~50質量%、及び前記構成単位3を0~10質量%の割合で含有する水溶性ビニル共重合体を含むものである。
【0013】
【化1】
(一般式(1)において、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。R
4は、水素原子、又は炭素数1~20の炭化水素基である。R
5Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、R
5Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。xは0~5の整数である。yは0又は1の整数である。)
【0014】
【化2】
(一般式(2)において、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は[-(CH
2)
pCOOM
2](但し、[-(CH
2)
pCOOM
2]は、COOM
1又は他のCOOM
2と無水物を形成してもよい。この場合には当該基においてM
1、M
2は存在しない。M
1、M
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、又は有機アミンである。pは、0~2の整数である)である。)
【0015】
[2] 前記粉体が、前記CO2固定微粉を含有するものであり、
前記CO2固定微粉の含有量が、前記結合材100質量部に対して、1~100質量部である、前記[1]に記載の水硬性組成物。
【0016】
[3] 前記細骨材が、前記CO2固定改質再生細骨材を含有するものであり、
前記細骨材の全容積中に、前記CO2固定改質再生細骨材を1~100容積%の割合で含有する、前記[1]に記載の水硬性組成物。
【0017】
[4] 前記粗骨材が、前記CO2固定改質再生粗骨材を含有するものであり、
前記粗骨材の全容積中に、前記CO2固定改質再生粗骨材を1~100容積%の割合で含有する、前記[1]に記載の水硬性組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水硬性組成物は、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0020】
(1)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、水と、細骨材及び粗骨材から選ばれる少なくとも1つの骨材と、下記結合材を含有する粉体と、下記混和剤と、を含み、粉体が下記CO2固定微粉を含有するものであること、細骨材が下記CO2固定改質再生細骨材を含有するものであること、及び、粗骨材が下記CO2固定改質再生粗骨材を含有するものであることから選ばれる少なくとも1つの条件を満たし、水と粉体に含有される結合材との質量比(水/結合材)が、0.3~0.9であり、混和剤の含有量が、結合材100質量部に対して0.02~1.0質量部のものである。
【0021】
このような水硬性組成物は、CO2固定微粉またはCO2固定改質再生骨材及び所定の結合材を含有するとともに所定割合の所定の混和剤を含有することによって、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減することができる。
【0022】
結合材:
水硬性及び潜在水硬性を有する粉体であり、結合材の全質量中に、ポルトランドセメントを5~70質量%、高炉スラグ微粉末を30~95質量%、及び石膏を0~10質量%の割合で含有するものである。
CO2固定微粉:
50%粒径が100μm以下であって、コンクリート硬化体から得られる再生コンクリート粉末と、炭酸ガスとの反応生成物である改質コンクリート粉末を含み、改質コンクリート粉末が、炭酸カルシウムとケイ酸質とを含むものである。
CO2固定改質再生細骨材:
炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が3.0%を超え10%以下の再生細骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生細骨材を含み、改質再生細骨材は、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を含むものである。
CO2固定改質再生粗骨材:
炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が2.0%を超え7.0%以下の再生粗骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生粗骨材を含み、改質再生粗骨材が、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含むものである。
混和剤:
下記一般式(1)で示される化合物から形成された構成単位1、下記一般式(2)で示される化合物から形成された構成単位2、及びその他の共重合可能な単量体から形成された構成単位3の含有割合の合計を100質量%とすると、構成単位1を50~99質量%、構成単位2を1~50質量%、及び構成単位3を0~10質量%の割合で含有する水溶性ビニル共重合体を含むものである。
【0023】
【化3】
(一般式(1)において、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。R
4は、水素原子、又は炭素数1~20の炭化水素基である。R
5Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、R
5Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。xは0~5の整数である。yは0又は1の整数である。)
【0024】
【化4】
(一般式(2)において、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は[-(CH
2)
pCOOM
2](但し、[-(CH
2)
pCOOM
2]は、COOM
1又は他のCOOM
2と無水物を形成してもよい。この場合には当該基においてM
1、M
2は存在しない。M
1、M
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、又は有機アミンである。pは、0~2の整数である)である。)
【0025】
本発明の水硬性組成物は、上述の通り、(i)粉体がCO2固定微粉を含有するものであること、(ii)細骨材がCO2固定改質再生細骨材を含有するものであること、及び、(iii)粗骨材がCO2固定改質再生粗骨材を含有するものであることから選ばれる少なくとも1つの条件を満たすことが必要である。つまり、本発明の水硬性組成物は、上記(i)~(iii)のいずれか1つの条件を満たせばよく、上記(i)~(iii)のうちの複数の条件を満たすことでもよい。上記(i)~(iii)のうちの複数の条件を満たす場合、これらの条件の組み合わせについては特に制限はなく適宜選択することができる。好ましくは、上記(i)と(ii)を組み合わせることであり、このような組み合わせの場合、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、二酸化炭素収支を更に削減することができる。
【0026】
更に、上記(i)の条件を満たす場合、つまり、粉体が、CO2固定微粉を含有するものである場合、CO2固定微粉の含有量は、結合材100質量部に対して、1~100質量部とすることが好ましく、10~100質量部とすることが更に好ましく、20~100質量部とすることが特に好ましい。このような所定の含有割合とすることによって、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、二酸化炭素収支を更に削減することができる。
【0027】
また、上記(ii)の条件を満たす場合、つまり、細骨材が、CO2固定改質再生細骨材を含有するものである場合、細骨材の全容積(より具体的には元配合の天然骨材を使用した細骨材容積)中に、CO2固定改質再生細骨材を1~100容積%の割合で含有することが好ましく、25~100容積%の割合で含有することが更に好ましく、50~100容積%の割合で含有することが特に好ましい。このような所定の含有割合とすることによって、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、二酸化炭素収支を更に削減することができる。
【0028】
また、上記(iii)の条件を満たす場合、つまり、粗骨材が、CO2固定改質再生粗骨材を含有するものである場合、粗骨材の全容積(より具体的には元配合の天然骨材を使用した粗骨材容積)中に、CO2固定改質再生粗骨材を1~100容積%の割合で含有するが好ましく、25~100容積%の割合で含有することが好ましく、50~100容積%の割合で含有することが特に好ましい。このような所定の含有割合とすることによって、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、二酸化炭素収支を更に削減することができる。
【0029】
ここで、「元配合」とは、CO2固定改質再生細骨材及びCO2固定改質再生粗骨材を使用していない配合のことである。また、天然骨材とは、CO2固定化処理を施していない骨材のことであり、例えば、細骨材であれば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材、各種再生細骨材等のことであり、粗骨材であれば、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材、各種再生粗骨材等のことである。即ち、「元配合の天然骨材を使用した細骨材容積(または粗骨材容量)に対して」は、従来の通りの川砂等の天然骨材の容積に対して、との意味である。つまり、従来、骨材として使用していたものに代えてCO2固定改質再生細骨材及びCO2固定改質再生粗骨材を用いても良いし(即ち、100容積%使用)、例えば1/5(即ち、20容積%使用)程度を置き換えてもよい。
【0030】
(1-1)骨材:
骨材は、細骨材及び粗骨材から選ばれる少なくとも1つである。
【0031】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材、各種再生細骨材等が挙げられ、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0032】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材、各種再生粗骨材等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、上記(ii)及び(iii)の条件のように、細骨材にはCO2固定改質再生細骨材を含有することができ、粗骨材にはCO2固定改質再生粗骨材を含有することができる。
【0034】
これらのCO2固定改質再生細骨材、CO2固定改質再生粗骨材(これらをまとめて「CO2固定改質再生骨材」と記す場合がある)は、廃コンクリート等の廃棄物由来のカルシウム分に予めCO2を反応させて製造された骨材である。
【0035】
CO2固定改質再生細骨材は、より具体的には、炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が3.0%を超え10%以下の再生細骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生細骨材を含み、改質再生細骨材は、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を含むものである。
【0036】
CO2固定改質再生細骨材は、粒径が0.10~10mmのものとすることができ、より好ましくは、粒径が0.10~5.0mmである。更に上記粒径を満たすもののうち、85%以上が5mm以下であることがよい。このCO2固定改質再生細骨材の粒径は、篩分けによって適宜調整することができる。
【0037】
CO2固定改質再生細骨材は、具体的には以下のように製造することができる。
【0038】
まず、コンクリート塊に対して、粉砕又は摩砕を行って再生骨材を得る。なお、この粉砕又は摩砕を行う方法については、特に制限はなく、ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、加熱を行わない機械擦りもみ方式などの摩砕装置等の公知の破砕装置または摩砕装置などを用いることができる。その後、粒子径が10mm以下となる粒子を分級し、その中で、吸水率が3.0%を超え10%以下の粒子を再生細骨材とする。吸水率は、例えば、ショットブラストの繰り返し回数等の破砕装置、磨砕装置の処理方法によって制御することができる。なお、細骨材は10mm以下で分級しているが、実際には細骨材は複数のサイズの混合物であり、個々の粒子として10mm以上の細骨材(粒子)が存在しても、その含有量が5質量%以下であれば許容される。次に、再生細骨材を体積濃度5%以上の炭酸ガスと反応させて、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含むCO2固定改質再生細骨材とする。再生骨材と炭酸ガスとの反応は、乾式法を採用してもよいし、湿式法を採用してもよい。このようにしてCO2固定改質再生細骨材を製造することができる。
【0039】
CO2固定改質再生粗骨材は、より具体的には、炭酸ガスと、コンクリート硬化体から得られる吸水率が2.0%を超え7.0%以下の再生粗骨材と、の乾式または湿式での反応生成物である改質再生粗骨材を含み、改質再生粗骨材が、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含むものである。
【0040】
CO2固定改質再生粗骨材は、粒径が5.0~100mmのものが好ましく、粒径が5.0~60mmのものが更に好ましく、粒径が5.0~40mmのものが特に好ましい。更に上記粒径を満たすもののうち、85%以上が5.0mm以上であることがよい。この粒径は、篩分けによって適宜調整することができる。
【0041】
CO2固定改質再生粗骨材は、再生骨材を粒子径5mm以上に分級し、吸水率2.0%を超え7.0%以下である粒子を選択したこと以外は、CO2固定改質再生細骨材と同様に製造することができる。なお、上記のように粒子径が5mm以上となるように分級しているが、実際には粗骨材は複数のサイズの混合物であり、個々の粒子として5.0mm以下の粗骨材(粒子)が存在しても、その含有量が10質量%以下であれば許容される。
【0042】
(1-2)粉体:
粉体は、水硬性及び潜在水硬性を有する粉体である結合材を含有するものである。この粉体は、上記(i)の条件で示すようにCO2固定微粉を含有するものであってもよい。
【0043】
(1-2a)結合材:
結合材は、水硬性及び潜在水硬性を有する粉体であり、この結合材には、その全質量中に、ポルトランドセメント(「水硬性」の粉体)を5~70質量%、高炉スラグ微粉末(「潜在水硬性」の粉体)を30~95質量%、及び石膏(「水硬性」の粉体)を0~10質量%の割合で含有するものである。このような結合材を含有することによって、水硬性組成物について流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減することができる。
【0044】
なお、「潜在水硬性」とは、水に混ぜただけでは硬化せず、アルカリ刺激剤が共存したときに硬化し始める性質のことであり、「潜在水硬性を有する粉体」は、このような性質を発揮する粉体のことである。
【0045】
ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等を挙げることができる。
【0046】
石膏としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏等を挙げることができる。
【0047】
結合材は、上記ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末及び石膏以外に、従来公知のその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、石粉、石灰石微粉末、膨張剤などを挙げることができる。
【0048】
ポルトランドセメントは、結合材の全質量中に、上記のように5~70の割合で質量%含有するものであり、5~67質量%の割合で含有することが好ましい。
【0049】
高炉スラグ微粉末は、結合材の全質量中に、上記のように30~95質量%の割合で含有するものであり、30~92質量%の割合で含有することが好ましい。
【0050】
石膏は、結合材の全質量中に、上記のように0~10質量%の割合で含有するものであり、3~8質量%の割合で含有することが好ましい。
【0051】
なお、結合材の全質量中におけるポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末及び石膏の総量の割合としては、50~100質量%とすることができる。
【0052】
本発明の水硬性組成物は、水と、粉体に含有される結合材との質量比(水/結合材)が、0.3~0.9であることが好ましい。このような範囲とすることによって、水硬性組成物について流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減することができる。
【0053】
(1-2b)CO2固定微粉:
粉体は、上述した(i)の条件で示すように、CO2固定微粉を含有することができ、このCO2固定微粉を含有することによって、水硬性組成物における二酸化炭素収支を更に削減することができる。
【0054】
CO2固定微粉は、50%粒径が100μm以下であって、コンクリート硬化体から得られる再生コンクリート粉末と、炭酸ガスとの反応生成物である改質コンクリート粉末を含み、この改質コンクリート粉末が、炭酸カルシウムとケイ酸質とを含むものである。
【0055】
このCO2固定微粉は、以下のように製造することができる。
【0056】
まず、コンクリート塊を破砕又は摩砕し、50%粒径100μm以下の再生コンクリート粉末を回収する。なお、この粉砕又は摩砕を行う方法については、特に制限はなく、ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、加熱を行わない機械擦りもみ方式などの摩砕装置等の公知の破砕装置または摩砕装置などを用いることができる。次に、回収した再生コンクリート粉末を、体積濃度5%以上の炭酸ガスと反応させて再生コンクリート粉末に含まれるセメント由来成分にCO2を固定させる。なお、炭酸ガスとの反応は、気体状の炭酸ガスを接触させる乾式法であってもよいし、水などの溶液に再生コンクリート粉末を浸漬した後、この液体(分散液)に炭酸ガスを吹き込んで接触させる湿式法のいずれであってもよい。このようにして、CO2固定微粉を製造することができる。
【0057】
再生コンクリート粉末及びCO2固定微粉の50%粒径は、以下のようにして測定することができる。
【0058】
再生コンクリート粉末、CO2固定微粉0.05gを溶媒にエタノールを用いて180秒間超音波分散させ、その後、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3300EXII:マイクロトラックベル社製)を用いて、室温(25℃)にて測定することができる。
【0059】
(1-2c)非水硬性粉体:
粉体は、更に、非水硬性粉体を含有することができる。この非水硬性粉体は、水硬性を有しない粉体であり且つ二酸化炭素と反応して硬化する粉体である。なお、「水硬性を有しない粉体」とは、「水と混合しても硬化することがないか、或いは、ほとんど硬化しない粉体」のことを意味する。
【0060】
非水硬性粉体としては、例えば、γ-2CaO・SiO2、3CaO・2SiO2、3CaO・2SiO2・CaF2、3CaO・MgO・2SiO2、α-CaO・SiO2、カルシウムマグネシウムシリケートなどを挙げることができる。具体的には、γ-2CaO・SiO2、3CaO・2SiO2、α-CaO・SiO2、カルシウムマグネシウムシリケートからなる群より選択される少なくとも一つとすることができる。
【0061】
非水硬性粉体の含有量は、結合材100質量部に対して1~100質量部とすることができ、5~90質量部であることが好ましく、10~80質量部であることが更に好ましい。このような範囲とすることによって、水硬性組成物における二酸化炭素収支を削減できる。
【0062】
(1-3)混和剤:
混和剤は、所定の構成単位1~3を有する水溶性ビニル共重合体を含むものである。
【0063】
このような所定の混和剤を所定の割合で採用することによって、上述したように(i)~(iii)の条件を満たす場合にも、得られる水硬性組成物は、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減することができる。
【0064】
つまり、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの下、CO2固定微粉やCO2固定改質再生骨材などを採用したコンクリート製品などの水硬性組成物硬化体が報告されているが、CO2固定微粉やCO2固定改質再生骨材を採用することによって水硬性組成物の物性(流動性、流動保持性など)が変化し、作業性が低下する傾向もある。また、二酸化炭素収支の更なる削減も要求されている。このような状況において、本発明の水硬性組成物は、所定の混和剤を所定割合で採用することによって、CO2固定微粉やCO2固定改質再生骨材を含有した場合にも、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更には、二酸化炭素収支を削減できるものである。
【0065】
(1-3-1)水溶性ビニル共重合体:
水溶性ビニル共重合体は、下記一般式(1)で示される化合物から形成された構成単位1、下記一般式(2)で示される化合物から形成された構成単位2、及びその他の共重合可能な単量体から形成された構成単位3を含有するものである。そして、構成単位1~3の配合割合の合計を100質量%とすると、構成単位1を50~99質量%、構成単位2を1~50質量%、及び構成単位3を0~10質量%の割合で含有する。更に、構成単位1の含有割合が70~99質量%、構成単位2の含有割合が1~30質量%、及び構成単位3の含有割合が0~10質量%であることが好ましい。
【0066】
(1-3-1a)構成単位1:
構成単位1は、下記一般式(1)で示される化合物から形成された構成単位である。
【0067】
【化5】
(一般式(1)において、R
1,R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。R
4は、水素原子、又は炭素数1~20の炭化水素基である。R
5Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、R
5Oの平均付加モル数であり、1~150の数である。xは0~5の整数である。yは0又は1の整数である。)
【0068】
一般式(1)中におけるR1,R2,R3は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基であり、これらのうち、R1,R3はそれぞれ水素原子であることが好ましい。
【0069】
(1-3-1b)構成単位2:
構成単位2は、下記一般式(2)で示される化合物から形成された構成単位である。
【0070】
【化6】
(一般式(2)において、R
6、R
7、R
8は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は[-(CH
2)
pCOOM
2](但し、[-(CH
2)
pCOOM
2]は、COOM
1又は他のCOOM
2と無水物を形成してもよい。この場合には当該基においてM
1、M
2は存在しない。M
1、M
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、又は有機アミンである。pは、0~2の整数である)である。)
【0071】
M1、M2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、又は有機アミンであり、これらのうち、水素原子、ナトリウム、カリウムが好ましい。なお、アルカリ土類金属は、2価のため、アルカリ土類金属(1/2)は、M1又はM2において1/2モル付加されることを示す。
【0072】
一般式(2)で示される化合物としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸など、及び、これら化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(1/2)、有機アミン塩などを挙げることができる。これらの中でも、一般式(2)で示される化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(1/2)、及び有機アミン塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0073】
(1-3-1c)構成単位3:
構成単位3は、その他の共重合可能な単量体から形成された構成単位である。つまり、一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物と共重合可能な化合物から形成された構成単位である。
【0074】
この構成単位3を形成する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのエステル類、上記不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのモノエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのジエステル類、ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類、スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N,N―ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミドなどを挙げることができる。
【0075】
水溶性ビニル共重合体は、その質量平均分子量について特に制限はないが、質量平均分子量5,000~500,000とすることができ、7,500~400,000とすることが好ましく、10,000~300,000とすることが更に好ましい。このような範囲とすることによって、水硬性組成物について流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減できる。
【0076】
なお、水溶性ビニル共重合体においてより具体的なものとしては、一般式(1)中のnの数が1~150であり、一般式(2)で示される化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(1/2)、及び有機アミン塩から選ばれる少なくとも1つであり、更に、構成単位1の含有割合が、70~99質量%、構成単位2の含有割合が1~30質量%、及び構成単位3の含有割合が0~10質量%であって、質量平均分子量5,000~500,000であるものとすることができる。
【0077】
水溶性ビニル共重合体は、一種を用いてもよいし、複数種を採用してもよい。
【0078】
混和剤の含有量(添加量)は、結合材100質量部に対して0.02~1.0質量部であることが好ましい。
【0079】
混和剤は、上記水溶性ビニル共重合体以外に、リグニンスルホン酸塩等の分散成分、グルコン酸塩などのオキシカルボン酸塩やスクロースなどの糖類からなる遅延成分、硬化促進成分、消泡成分、空気連行成分、防腐成分などの水溶性ビニル共重合体以外の成分を含んでいてもよい。
【0080】
(1-4)水:
水は水硬性組成物(モルタルまたはコンクリート)の練混ぜ水として使用できるものであれば、特に制限はなく、上水道水、地下水、回収水などを適宜採用することができる。
【0081】
(1-5)その他の添加剤:
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の添加剤を更に含有していてもよい。このようなその他の添加剤としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0082】
その他の添加剤の含有割合としては、例えば、結合材100質量部に対して、0~10質量部とすることができる。
【0083】
(2)水硬性組成物硬化体:
本発明の水硬性組成物は、コンクリート製品などの水硬性組成物硬化体の原料であり、水硬性組成物を従来公知の方法を採用して水硬性組成物硬化体を製造することができる。
【0084】
なお、水硬性組成物は非水硬性粉体を含有することもできるが、その場合、水硬性組成物硬化体を製造する工程として炭酸化養生工程を採用してもよい。ここで、非水硬性粉体を含有する場合、炭酸化養生工程において二酸化炭素を固定化するだけでなく、水硬性組成物硬化体(コンクリート製品)として所定の場所に設置された際に、長期的に大気中の二酸化炭素を固定化することもできる。
【0085】
水硬性組成物が非水硬性粉体を含有する場合には、水硬性組成物硬化体を製造する工程としては、具体的には、本発明の水硬性組成物を硬化させて水硬性組成物硬化体を得る硬化工程と、得られた水硬性組成物硬化体をCO2濃度5%以上の環境で養生する養生工程(炭酸化養生工程)と、を有する方法を採用することができる。この製造方法によれば、本発明の水硬性組成物(非水硬性粉体を含有するもの)を用いる硬化工程と所定の養生工程を有するため、水硬性組成物硬化体において強度発現性を有し、二酸化炭素収支を更に削減することができる。
【0086】
(2-1)硬化工程:
硬化工程は、本発明の水硬性組成物を硬化させて水硬性組成物硬化体を得る工程である。水硬性組成物を硬化させる方法は、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0087】
なお、本発明の水硬性組成物は、従来公知の方法によって調製することができる。
【0088】
(2-2)養生工程(炭酸化養生工程):
養生工程は、特に水硬性組成物が非水硬性粉体を含有する場合には、硬化工程で得られた水硬性組成物硬化体を、CO2濃度5%以上(即ち、二酸化炭素の体積濃度5%以上)の環境下で養生(炭酸化養生)することができる。このようにすると、水硬性組成物硬化体に効率よく二酸化炭素を吸収させ、固定化させることができる。
【0089】
上記の場合、二酸化炭素濃度(CO2濃度)は、5%以上である限り特に制限はなく、例えば5~100%とすることができる。
【0090】
なお、炭酸化養生を行う場合、二酸化炭素の濃度(体積濃度)が5%未満であると、吸収される二酸化炭素の存在量が少な過ぎるため、所望の二酸化炭素削減量となるまでの炭酸化養生期間が長期化する傾向がある。
【実施例0091】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(水溶性ビニル共重合体)
混和剤に含まれる水溶性ビニル共重合体P-1~P-13、rP-1~rP-2について表1に以下に示す。
【0093】
【0094】
表1中、水溶性ビニル共重合体P-1~P-13、rP-1~rP-2を構成する各構成単位1~3を形成する各化合物は以下の通りである。
X-1:α-メタクリロイル-ω-メトキシポリ(n=130)オキシエチレン
X-2:α-メタクリロイル-ω-メトキシポリ(n=45)オキシエチレン
X-3:α-メタクリロイル-ω-メトキシポリ(n=23)オキシエチレン
X-4:α-メタクリロイル-ω-メトキシポリ(n=9)オキシエチレン
X-5:α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシポリ(n=68)オキシエチレン
X-6:α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-オキシプロピレンポリ(n=45)オキシエチレン
X-7:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシポリ(n=53)オキシエチレン
X-8:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシポリ(n=10)オキシエチレン
X-9:α-メタリル-ω-ヒドロキシポリ(n=113)オキシエチレン
X-10:α-アリル-ω-メチル-ポリ(n=33)オキシエチレン
X-11:ヒドロキシエチルアクリレート
Y-1:メタクリル酸
Y-2:アクリル酸
Y-3:無水マレイン酸
Z-1:メタリルスルホン酸ナトリウム
Z-2:メチルアクリレート
【0095】
水溶性ビニル共重合体P-1~P-13、rP-1~rP-2の製造方法について以下の製造例1~15で説明する。
【0096】
(製造例1)水溶性ビニル共重合体P-1の合成:
撹拌機、窒素導入管および滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水296.9g、α-メタクリロイル-ω-メトキシポリ(n=130)オキシエチレン324.0g、メタクリル酸36.0g、3-メルカプトプロピオン酸2.9gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。
【0097】
次に、3.5%過酸化水素水42.8gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を65℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、3.5%過酸化水素水14.3gを反応系に更に加え、反応系の温度を65℃に保持して2時間、重合反応を行った。
【0098】
反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7とし、さらにイオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0099】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量65000であった。この反応物を水溶性ビニル共重合体P-1とした。
【0100】
(製造例2~9、14~15)水溶性ビニル共重合体P-2~P-9、rP-1~rP-2の合成:
水溶性ビニル共重合体P-2~P-9、rP-1~rP-2は、表1に示したように、各構成単位の種類及び仕込み量を変更し且つ所定の質量平均分子量となるように、3-メルカプトプロピオン酸量を変更したこと以外は、上記製造例1と同様にして合成を行い、水溶性ビニル共重合体P-2~P-9、rP-1~rP-2を得た。
【0101】
ただし、水溶性ビニル共重合体P-5については、pH調整後にイオン交換水にて濃度を20%に調整した。
【0102】
(製造例10)水溶性ビニル共重合体P-10の合成:
撹拌機、窒素導入管および滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水137.3g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53モル)オキシエチレン449.1gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃に保持した。
【0103】
次に、3.5%過酸化水素水溶液27.6gを3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水93.5gにアクリル酸31.2gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水45.0gにL-アスコルビン酸1.6gと3-メルカプトプロピオン酸3.4gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。
【0104】
その後、2時間、反応系の温度を60℃に維持し、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7とし、イオン交換水にて濃度を50%に調整して反応混合物を得た。
【0105】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量71000であった。この反応物を水溶性ビニル共重合体P-10とした。
【0106】
(製造例11~12)水溶性ビニル共重合体P-11~P-12の合成:
水溶性ビニル共重合体P-11~P-12は、表1に示したように、各構成単位の種類及び仕込み量を変更し、且つ所定の質量平均分子量となるように、3-メルカプトプロピオン酸量を変更したこと以外は、上記製造例10と同様にして合成を行い、水溶性ビニル共重合体P-11~P-12を得た。
【0107】
(製造例13)水溶性ビニル共重合体P-13の合成:
撹拌機、窒素導入管および滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにα-アリル-ω-メチル-ポリ(n=33)オキシエチレン353.9g、無水マレイン酸35.0gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて80℃に保持した。
【0108】
次に、アゾビスイソブチロニトリル7.7gを反応系に加え、ラジカル重合反応を開始した。1時間継続攪拌後、アゾビスイソブチロニトリル3.8gを反応系に更に加え、4時間ラジカル重合反応を行った。
【0109】
得られた共重合体に水を加えて加水分解して水溶性ビニル共重合体の40%水溶液を得た。
【0110】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量29000であった。この反応物を水溶性ビニル共重合体P-13とした。
【0111】
(質量平均分子量)
各水溶性ビニル共重合体P-1~P-13、rP-1~rP-2の質量平均分子量は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
<測定条件>
装置:Shodex GPC-101(昭和電工社製)
カラム:OHpak SB-806M HQ+SB-806M HQ(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40度
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド(アジレント社製)
【0112】
(混和剤)
次に、混和剤AD-1~AD-10、rAD-1~rAD-5について、その構成成分及び含有割合(質量%)について以下の表2に示す。
【0113】
【0114】
表2中、混和剤を構成する水溶性ビニル共重合体以外の成分Q-1~Q-4は以下の通りである。
Q-1:グルコン酸ナトリウム(キシダ化学製試薬)
Q-2:スクロース(キシダ化学製、試薬)
Q-3:リグニンスルホン酸ナトリウム(Borregarrd製、製品名:Borresperse NA)
Q-4:メラミン系分散剤(竹本油脂製、製品名:ポールファインMF)
【0115】
混和剤(AD-1~AD-10、rAD-1~rAD-2)の調製:
作製した各水溶性ビニル共重合体、及び、水溶性ビニル共重合体以外の成分を表2に示す種類について有効成分換算で表2に示す割合にて配合し、更に、イオン交換水を加えた。このようにして、混和剤AD-1~AD-10、rAD-1~rAD-2の20%水溶液のそれぞれを調製した。
【0116】
混和剤(rAD-3~rAD-5)の調製:
表2に示す「水溶性ビニル共重合体以外の成分」を用いて、表2に示す割合にて配合し、更に、イオン交換水を加えた。このようにして、混和剤rAD-3~rAD-5の20%水溶液のそれぞれを調製した。
【0117】
(実施例1~39、比較例1~20)
(1)水硬性組成物:
まず、20℃、湿度80%の恒温室にて、表3、表4に示した配合条件で公称容量50Lの強制2軸ミキサーに、普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm3)、または早強ポルトランドセメント(密度3.14g/cm3)、高炉スラグ微粉末#4000(密度2.89g/cm3)または高炉スラグ微粉末#6000(密度2.89g/cm3)、無水石膏または二水石膏、非水硬性粉体である炭酸化混和剤LEAF(デンカ株式会社製、密度3.09g/cm3)、CO2固定微粉(密度2.59g/cm3)、CO2固定改質再生細骨材(密度2.37g/cm3)、CO2固定改質再生粗骨材(密度2.55g/cm3)、細骨材(大井川水系陸砂、密度2.59g/cm3)、粗骨材(岡崎産砕石、密度2.68g/cm3)を順次投入し、その後、10秒間空練りした。
【0118】
次いで、表2に示す混和剤と、AE剤(竹本油脂株式会社製のAE-200(商品名))、消泡剤(竹本油脂株式会社製のAFK-2(商品名))とを練混ぜ水に加え(但し、混和剤、AE剤及び消泡剤を練混ぜ水の一部とみなし、消泡剤の添加量は結合材100質量部に対して0.0005質量部とした)、この練混ぜ水をミキサーに投入し、90秒練り混ぜた。このようにして30Lのコンクリート組成物を調製した。
【0119】
このとき、目標空気量が4.5%±1.0%、目標スランプが18cm±2.5cmとなるように混和剤、AE剤の量を調整した(但し、AE剤の添加量は結合材100質量部に対して0.002~0.200質量部とした)。また、練りあがりのコンクリート組成物の温度がいずれも20℃±2℃の範囲内となるように、調製前に各材料を温調した。なお、上記練上がりのコンクリート組成物の温度は、JIS-A1156に準拠して測定した。
【0120】
なお、CO2固定微粉、CO2固定改質再生細骨材、CO2固定改質再生粗骨材は、具体的には以下のものであった。
【0121】
(CO2固定微粉)
まず、CO2固定微粉は、50%粒径が100μm以下であって、コンクリート硬化体から得られる再生コンクリート粉末と炭酸ガスとの反応生成物である改質コンクリート粉末を含み、炭酸カルシウムとケイ酸質とを含むものであった。
【0122】
(CO2固定微粉の製造方法)
コンクリート塊を、公知の粉砕機「ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、過熱を行わない機械擦りもみ方式などの摩砕装置等の公知の粉砕機」を使用して破砕・摩砕して破砕・摩砕物を得た。破砕・摩砕後、容量2m3の容器に、1.8tの水及び上記破砕・摩砕物を50%粒径100μm以下の粒子に分級して得られた再生微粉末(再生コンクリート粉末)200kgを投入し、攪拌した。
【0123】
攪拌中は、上記容器の底部から炭酸ガスを150L/分の速度で注入した。そして、pHメータでpHを測定しつつpHが8.6以下になるまで、再生微粉末を炭酸ガスと反応させて、CO2固定微粉を含む反応物を得た。
【0124】
上記反応後、CO2固定微粉を含む反応物を取り出し、ポリプロピレン製の綾織フィルターで余剰水分を除去した。その後、反応物を更に風乾し、これをCO2固定微粉とした。なお、上記綾織フィルターは、厚さ1.06mm、透気度500cc/cm2/分、強度がタテ300kgf/cm3、ヨコ200kgf/cm3であるものを用いた。
【0125】
(CO2固定改質再生細骨材)
次に、CO2固定改質再生細骨材は、粒子径が0.10mm~10mmの粒子であり、そのうち85%以上の粒子が5mm以下であって、炭酸ガスと、吸水率が3.0%を超え10%以下のコンクリート硬化体から得られる再生骨材との乾式または湿式での反応生成物である改質再生骨材と、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を含むものである。
【0126】
(CO2固定改質再生細骨材の製造方法)
コンクリート塊を、「ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、過熱を行わない機械擦りもみ方式などの摩砕装置等の公知の粉砕機」を使用して破砕・摩砕して再生骨材を得た。破砕・摩砕後、容量2m3の容器に、1.8tの水及び粒子径が10mm以下である粒子に分級した再生骨材(再生細骨材)200kgを投入し、攪拌した。
【0127】
攪拌中は、上記容器の底部から炭酸ガスを150L/分の速度で注入した。そして、pHメータでpHを測定しつつpHが8.6以下になるまで、再生細骨材を炭酸ガスと反応させ、CO2固定改質再生細骨材を含む反応物を得た。
【0128】
上記反応後、CO2固定改質再生細骨材を含む反応物を取り出し、公称目開き0.1mmのふるいで余剰水分を除去した。その後、反応物を更に風乾し、これをCO2固定改質再生細骨材とした。
【0129】
(CO2固定改質再生粗骨材)
次に、CO2固定改質再生粗骨材は、粒子径が5.0mm~100mmの粒子であり、そのうち85%以上の粒子が5.0mm以上であって、炭酸ガスと、吸水率が2.0%を超え7.0%以下のコンクリート硬化体から得られる再生骨材との乾式または湿式での反応生成物である改質再生骨材と、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を含むものである。
【0130】
(CO2固定改質再生粗骨材の製造方法)
コンクリート塊を、「ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、過熱を行わない機械擦りもみ方式などの摩砕装置等の公知の粉砕機」を使用して破砕・摩砕して再生骨材を得た。破砕・摩砕後、容量2m3の容器に、1.8tの水及び粒子径が5mm以上である粒子に分級した再生骨材(再生粗骨材)200kgを投入し、攪拌した。
【0131】
攪拌中は、上記容器の底部から炭酸ガスを150L/分の速度で注入した。そして、pHメータでpHを測定しつつpHが8.6以下になるまで、再生粗骨材を炭酸ガスと反応させ、CO2固定改質再生粗骨材を含む反応物を得た。
【0132】
上記反応後、CO2固定改質再生粗骨材を含む反応物を取り出し、公称目開き5.0mmのふるいで余剰水分を除去した。その後、反応物を更に風乾し、これをCO2固定改質再生粗骨材とした。
【0133】
【0134】
【0135】
表3、表4中、pc-1、pc-2、sr-1、sr-2、se-1、及びse-2は、以下の通りである。
pc-1:普通ポルトランドセメント
pc-2:早強ポルトランドセメント
sr-1:粉末度が4100cm2/gの高炉スラグ微粉末
sr-2:粉末度が5900cm2/gの高炉スラグ微粉末
se-1:無水石膏(富士フィルムWAKO社製)
se-2:2水石膏(富士フィルムWAKO社製)
【0136】
また、表3、表4中、「材料由来の二酸化炭素排出量」は各材料のCO2原単位から算出した。この各材料のCO2原単位(材料由来の二酸化炭素排出量)を下記表5に示す。
【0137】
【0138】
下記表6、表7には、結合材中のセメント、高炉スラグ微粉末、及び石膏の含有割合(質量%)を示すとともに、CO2固定微粉の含有量(結合材100質量部に対するCO2固定微粉の含有量)(質量部)、細骨材中のCO2固定改質再生細骨材の含有割合(容積%)及び、粗骨材中のCO2固定改質再生粗骨材の含有割合(容積%)を示している。
【0139】
【0140】
【0141】
得られた水硬性組成物(コンクリート組成物)について、スランプ(cm)、空気量、圧縮強度(28日強度)などについて、以下のようにして測定し、各評価(強度評価、保持性評価、CO2収支削減率評価)を行った。評価結果を表8、表9に示す。
【0142】
スランプ(cm)、空気量、圧縮強度(28日強度)の測定方法(算出方法)について以下に示す。
【0143】
(スランプ)
練り混ぜ直後のコンクリート組成物及び練り混ぜ直後から30分間練り船に静置したコンクリート組成物についてJIS-A1101に準拠して測定した。
【0144】
(空気量)
練り混ぜ直後のコンクリート組成物についてJIS-A1128に準拠して測定した。
【0145】
(CO2収支削減量の差)
「CO2収支削減量の差」は各実施例および比較例と基準となる比較例の材料由来の二酸化炭素排出量(表3、表4参照)との差より算出した。
【0146】
なお、実施例1~15,比較例1~3は、比較例4のCO2収支を基準CO2収支(材料由来の二酸化炭素排出量)としている。実施例16~20,比較例5~6は、比較例7のCO2収支を基準CO2収支としている。実施例21~23,比較例8~9は、比較例10のCO2収支を基準CO2収支としている。実施例25~30,比較例11~13は、比較例14のCO2収支を基準CO2収支としている。実施例31~35,比較例15~16は、比較例17のCO2収支を基準CO2収支としている。実施例36~39,比較例18~19は、比較例20のCO2収支を基準CO2収支としている。
【0147】
(圧縮強度(28日強度))
円柱型樹脂製のコンクリート供試体成形型枠(商品名「プラモールド」、フローリック社、型枠の底面の直径100mm、型枠の高さ200mm)の型枠を用意し、この型枠内に二層詰め方式によってコンクリート組成物(水硬性組成物)を充填した。その後、20℃の室内にて気中養生を行った。そして、コンクリート組成物の調製から2時間後に、上記型枠内に充填したコンクリート組成物の表面をならし、水分が蒸発しないように上記表面にポリエチレン製のラップをかけ、材齢2日まで封緘養生を行った。封緘養生後、供試体を型枠から脱型し、20℃の水中にてさらに26日養生して、打設面を平滑になるよう研磨し、材齢28日の水硬性組成物硬化体を得た。得られた水硬性組成物硬化体について、以下のようにして圧縮強度を測定した。
【0148】
供試体の圧縮強度(28日強度)は、JIS-A1108に準拠して測定した。
【0149】
(強度比)
測定した圧縮強度(28日強度)について、基準強度に対する各圧縮強度の割合(%)を、式:各圧縮強度/基準強度×100によって算出し、強度比とした。実施例1~15,比較例1~3では、比較例4の圧縮強度(28日強度)を基準強度としている。実施例16~20,比較例5、6は、比較例7の圧縮強度(28日強度)を基準強度としている。実施例21~23,比較例8、9は、比較例10の圧縮強度(28日強度)を基準強度としている。実施例25~30,比較例11~13は、比較例14の圧縮強度(28日強度)を基準強度としている。実施例31~35,比較例15、16は、比較例17の圧縮強度(28日強度)を基準強度としている。実施例36~39,比較例18,19は、比較例20の圧縮強度(28日強度)を基準強度としている。
【0150】
(強度評価)
上記強度比の結果に基づいて、強度評価を行った。以下の評価基準を以下に示す。なお、混和剤の添加量をC×1.00%以上としても0分時のスランプが18±2.5cmの範囲内に入らなかった場合は「D」とした(保持性評価についても同様とした)。
S:強度比が103%以上である場合
A:強度比が103%未満で100%超である場合
C:強度比が100%以下である場合
【0151】
(保持性評価)
保持性評価については、以下の評価基準によって評価を行った。即ち、練混ぜ直後から30分経過後のスランプについて以下の評価基準によって評価した。
S:30分経過後のスランプが15.5cm以上である場合
C:30分経過後のスランプが15.5cm未満である場合
【0152】
(CO2収支削減率評価)
CO2収支削減量の差の値に基づいて以下の評価基準にて、CO2収支削減率の評価を行った。
S:CO2収支削減量の差の値が25kg/m3以上である場合
A:CO2収支削減量の差の値が25kg/m3未満で5kg/m3以上である場合
B:CO2収支削減量の差の値が5kg/m3未満で0kg/m3超である場合
C:CO2収支削減量の差の値が0kg/m3以下である場合
【0153】
なお、表8、表9中、混和剤の添加量は、混和剤中の水を除いた成分量を示している。
【0154】
【0155】
【0156】
(結果)
表8、表9に示すように、本実施例の水硬性組成物は、流動性、流動保持性、強度発現性を有し、更に、二酸化炭素収支を削減できることが分かる。