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特開2025-152364版取外しシステムおよび方法並びに印刷機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152364
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】版取外しシステムおよび方法並びに印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20251002BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B41F27/12 E
B41F7/02 414
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054217
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森尾 充成
(72)【発明者】
【氏名】西山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰彦
【テーマコード(参考)】
2C020
2C034
【Fターム(参考)】
2C020DA03
2C020DA13
2C034AA16
2C034AA44
(57)【要約】
【課題】版取外しシステムおよび方法において、刷版取外し作業における作業性の向上を図る。
【解決手段】版胴が駆動装置により駆動回転自在に支持され、版胴の外周部に軸方向に沿うと共に版胴の外周面の接線方向および法線方向に対して傾斜するスリットが設けられ、版胴の外周面に刷版が巻き付けられ、刷版の一端部および他端部がスリットに挿入されて係止され、刷版の端部をスリットから抜き取って取外す版取外しシステムにおいて、刷版の他端部側を保持する保持装置と、保持装置を法線方向に沿って移動する移動装置と、移動装置により保持装置を移動すると共に駆動装置により版胴を回転する指令信号を出力する制御装置と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴が駆動装置により駆動回転自在に支持され、
前記版胴の外周部に軸方向に沿うと共に前記版胴の外周面の接線方向および法線方向に対して傾斜するスリットが設けられ、
前記版胴の外周面に刷版が巻き付けられ、前記刷版の一端部および他端部が前記スリットに挿入されて係止され、
前記刷版の端部を前記スリットから抜き取って取外す版取外しシステムにおいて、
前記刷版の他端部側を保持する保持装置と、
前記保持装置を前記法線方向に沿って移動する移動装置と、
前記移動装置により前記保持装置を移動すると共に前記駆動装置により前記版胴を回転する指令信号を出力する制御装置と、
を備える版取外しシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記移動装置により前記保持装置を前記版胴の外周面に接近するように前進させる前進指令信号を出力し、予め設定された所定時間が経過すると前記移動装置により前記保持装置を前記版胴の外周面から離間するように後退させる後退指令信号を出力する、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記後退指令信号を出力すると同時または前記後退指令信号を出力した後、前記駆動装置により前記版胴を回転させる回転指令信号を出力する、
請求項2に記載の版取外しシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回転指令信号を出力し、前記版胴が予め設定された所定角度回転すると前記駆動装置による前記版胴の回転を停止させる停止指令信号を出力すると同時または前記停止指令信号を出力した後、前記保持装置による前記刷版の他端部側の保持を解除する保持解除指令信号を出力する、
請求項3に記載の版取外しシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記移動装置により前記保持装置を前記版胴の外周面に接近するように前進させる前進指令信号を出力する前または出力した後、保持部材を前記版胴の外周面に接近するように前進させて前記刷版の外周面を前記版胴に保持させる保持指令信号を出力する、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項6】
前記移動装置は、前記保持装置が保持した前記刷版の他端部側を前記法線方向における外側方向へ移動させることで前記刷版の他端部側に第1作用力を作用させ、前記駆動装置は、前記版胴を回転させて前記刷版の他端部側を前記接線方向へ移動させることで前記刷版の他端部側に第2作用力を作用させ、前記第1作用力と前記第2作用力の合力により前記刷版の他端部を前記スリットから抜き取る、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項7】
前記保持装置は、前記版胴の軸方向に間隔を空けて複数配置される、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項8】
前記版胴は、前記刷版が軸方向に複数並んで装着可能であり、前記制御装置は、複数の前記刷版に対応して設けられる複数の前記移動装置に対して個別に作動させる指令信号を出力する、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項9】
前記版胴は、前記刷版が軸方向に複数並んで装着可能であり、前記制御装置は、複数の前記刷版に対応して設けられる複数の前記移動装置に対して同時に作動させる指令信号を出力する、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項10】
前記移動装置の移動速度、作動停止時期、作動時間および前記版胴の回転速度、回転停止時期、回転時間は、個別に調整可能である、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項11】
前記保持装置を前記刷版に対向する保持可能位置と、前記刷版から退避する退避位置とに移動させる退避装置が設けられる、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項12】
前記保持装置による前記刷版の他端部側の保持を検出する保持検出器を有し、前記制御装置は、前記保持検出器の検出結果に基づいて前記移動装置を制御する、
請求項1に記載の版取外しシステム。
【請求項13】
版胴が駆動装置により駆動回転自在に支持され、
前記版胴の外周部に軸方向に沿うと共に前記版胴の外周面の接線方向および法線方向に対して傾斜するスリットが設けられ、
前記版胴の外周面に刷版が巻き付けられ、前記刷版の一端部および他端部が前記スリットに挿入されて係止され、
前記刷版の端部を前記スリットから抜き取って取外す版取外し方法において、
保持装置を前記法線方向に沿って前記版胴の外周面に接近するように前進させて前記刷版の他端部側を保持するステップと、
前記保持装置を前記法線方向に沿って前記版胴の外周面から離間するように後退させて保持した前記刷版の他端部側を前記版胴の外側へ移動させるステップと、
前記版胴を前記刷版が取外される方向に回転させるステップと、
を有する版取外し方法。
【請求項14】
インキを供給するインキ供給装置と、
前記インキ供給装置から外周部に装着された刷版にインキが供給される版胴と、
前記版胴から受け取ったインキの画像をウェブに転写するブランケット胴と、
請求項1に記載の版取外しシステムと、
を備えることを特徴とする印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、版取外しシステムおよび方法並びに印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新聞用オフセット輪転印刷機は、給紙装置と印刷装置とウェブパス装置と折機とを備える。印刷装置は、複数の印刷ユニットを有し、各印刷ユニットは、対応するウェブに対して印刷を行う。印刷ユニットは、インキ供給源と、複数のローラを用いてインキを供給するインキ供給装置と、刷版が装着される版胴と、インキ(画像)をウェブに転写するブランケット胴を備える。
【0003】
印刷ユニットにて、作業者は、版胴に対して刷版を取付けたり、取外したりする作業を行う。版胴は、外周部に軸方向に沿うスリットが設けられる。刷版の取付作業は、作業者が刷版の一端部をスリットに挿入した後、版胴を回転することで刷版を版胴の外周部に巻き付け、他端部をスリットに挿入する。また、刷版の取外し作業は、作業者が刷版の他端部をスリットから抜き取り、版胴を回転することで刷版を版胴の外周部から離脱させ、一端部をスリットから抜き取る。このような版交換装置としては、例えば、下記特許文献1,2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-84738号公報
【特許文献2】特許第5291172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刷版は、アルミ材を版胴の円周面に沿って屈曲させて形成することから、反り返りの力が円周方向に作用する。また、刷版は、版胴がブランケット胴やインキ着けローラと接触して高速回転することから、遠心力と円周方向の回転抵抗およびブランケット胴やインキ着けローラとの粘着力等の複合した作用力に対抗する十分な保持力が必要である。版胴は、刷版の保持力を発生させるため、版胴に刷版を挿入するための傾斜面からなるスリットが形成され、刷版は、一端部と他端部がスリットに挿入され、刷版の一端部と他端部との接触による摩擦抵抗および刷版とスリットとの接触による摩擦抵抗によりスリットの内部に係止される構造が用いられる。一方、作業者が刷版の他端部を版胴のスリットから抜き取るとき、従来は、吸盤を使用して版を外していたが、上記の理由から法線方向に版を引っ張るだけでは刷版を版胴から外すことが困難であり、オペレータの腕力やスキル、慣れを要する作業であった。また、新聞オフセット輪転機では、1回の印刷につき版交換枚数が100枚程度必要な場合もあるため、オペレータ人数や作業負担が大きいという課題があった。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、刷版取外し作業における作業性の向上を図る版取外しシステムおよび方法並びに印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の版取外しシステムは、版胴が駆動装置により駆動回転自在に支持され、前記版胴の外周部に軸方向に沿うと共に前記版胴の外周面の接線方向および法線方向に対して傾斜するスリットが設けられ、前記版胴の外周面に刷版が巻き付けられ、前記刷版の一端部および他端部が前記スリットに挿入されて係止され、前記刷版の端部を前記スリットから抜き取って取外す版取外しシステムにおいて、前記刷版の他端部側を保持する保持装置と、前記保持装置を前記法線方向に沿って移動する移動装置と、前記移動装置により前記保持装置を移動すると共に前記駆動装置により前記版胴を回転する指令信号を出力する制御装置と、を備える。
【0008】
また、本開示の版取外し方法は、版胴が駆動装置により駆動回転自在に支持され、前記版胴の外周部に軸方向に沿うと共に前記版胴の外周面の接線方向および法線方向に対して傾斜するスリットが設けられ、前記版胴の外周面に刷版が巻き付けられ、前記刷版の一端部および他端部が前記スリットに挿入されて係止され、前記刷版の端部を前記スリットから抜き取って取外す版取外し方法において、保持装置を前記法線方向に沿って前記版胴の外周面に接近するように前進させて前記刷版の他端部側を保持するステップと、前記保持装置を前記法線方向に沿って前記版胴の外周面から離間するように後退させて保持した前記刷版の他端部側を前記版胴の外側へ移動させるステップと、前記版胴を前記刷版が取外される方向に回転させるステップと、を有する。
【0009】
また、本開示の印刷機は、インキを供給するインキ供給装置と、前記インキ供給装置から外周部に装着された刷版にインキが供給される版胴と、前記版胴から受け取ったインキの画像をウェブに転写するブランケット胴と、前記版取外しシステムと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の版取外しシステムおよび方法並びに印刷機によれば、刷版取外し作業における作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。
図2図2は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。
図3図3は、本実施形態の版取外しシステムを表す概略側面図である。
図4図4は、版取外しシステムを表す概略正面図である。
図5図5は、版取外しシステムの変形例を表す概略図である。
図6図6は、版取外しシステムの変形例の退避状態を表す概略図である。
図7図7は、版取外しシステムによる版取外し方法を表すフローチャートである。
図8図8は、版取外しシステムによる版取外し方法を説明するための説明図である。
図9図9は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図10図10は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図11図11は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図12図12は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図13図13は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図14図14は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図15図15は、版取外し動作を説明するための説明図である。
図16図16は、版取外しシステムによる版取外し方法の変形例を表すフローチャートである。
図17図17は、版取外しシステムによる版取外し方法を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0013】
<新聞用オフセット輪転印刷機>
図1は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機は、印刷装置の版胴のサイズが4頁幅×1頁周長に設定された4×1輪転印刷機であるが、版胴のサイズが4頁幅×2頁周長に設定された4×2輪転印刷機であってもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の印刷機は、新聞用オフセット輪転印刷機Pである。新聞用オフセット輪転印刷機Pは、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとを備える。
【0015】
給紙装置Rは、複数(本実施形態では、5台)の給紙ユニットR1~R5を有する。インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、5台)のインフィードユニットI1~I5を有する。印刷装置Uは、複数(本実施形態では、5台)の印刷ユニットU1~U5を有する。ウェブパス装置Dは、1台のウェブパスユニットD1を有する。折機Fは、1台の折ユニットF1を有する。
【0016】
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1~R5は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アームを有する。保持アームを回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1~I5は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1~U5に送り込むウェブWの張力を調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWの張力を適正値に安定して維持する。なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWの張力は、給紙ユニットR1~R5に設けられた図示しないブレーキ装置により行われる。
【0017】
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1~U5は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1~U5は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11~U52とすることができる。印刷ユニットU11~U52は、ほぼ同様の構成をなし、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有する。
【0018】
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1~U5に対して設けられる。ウェブパスユニットD1は、ウェブWを縦方向(ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断(縦裁断)するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における絵柄位置を調整するコンペンセータなどを有する。印刷ユニットU1~U5で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより絵柄位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
【0019】
折機Fにて、折ユニットF1は、ウェブパスユニットD1から複数のウェブWが重ねられて導入されたウェブWを縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。
【0020】
<印刷ユニット>
図2は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。以下では、印刷ユニットU1についてのみ説明するが、他の印刷ユニットU2~U5もほぼ同様の構成である。
【0021】
図2に示すように、印刷ユニットU1は、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットをなす。印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向が鉛直方向の下方から上方に向かう方向である。印刷ユニットU1は、下方から上方に向けて墨、藍、紅、黄に対応する4個のスタック21,22,23,24が配置されて構成される。各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列をなす。
【0022】
スタック21,22,23,24は、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで左右に対接するように配置される。ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bは、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接する。スタック21,22,23,24は、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられる。また、スタック21,22,23,24は、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられる。
【0023】
<版取外しシステム>
図3は、本実施形態の版取外しシステムを表す概略側面図、図4は、版取外しシステムを表す概略正面図である。以下では、印刷ユニットU1のスタック21に対して適用された版取外しシステムについて説明するが、他のスタック22,23,24もほぼ同様の構成である。また、以下では、スタック21における裏面印刷側の版取外しシステムについて説明するが、表面印刷側の版取外しシステムもほぼ同様の構成である。
【0024】
図3および図4に示すように、スタック21は、ウェブWの搬送方向最上流側に配置される。スタック21は、ブランケット胴31bと、版胴41bと、インキ供給装置51bと、湿し装置61bとを有する。インキ供給装置51bは、少なくともインキ往復ローラ71と、2つのインキ着けローラ72とを有する。湿し装置61bは、少なくとも水着けローラ73を有する。なお、各種ローラの構成や配置、本数などは、上述したものに限定されることはなく、必要に応じて変更してもよい。そして、版胴41bに対してインキ往復ローラ71側に梁74が配置され、梁74にインキ着けローラ72の上方を被覆するカバー75が設けられる。
【0025】
なお、図3は、版胴41bに対して、ブランケット胴31bとインキ着けローラ72が離間した胴抜き状態を表している。
【0026】
版胴41bは、駆動装置81により駆動回転可能である。駆動装置81は、印刷ユニットU1のスタック21の版胴41bだけを駆動する、いわゆる、シャフトレスモータを有する。駆動装置81は、版胴41bを時計回り方向に回転することができる。版胴41bは、軸方向に複数(本実施形態では、4枚)の刷版91を並べて装着可能である。版胴41bは、外周部にスリット82が設けられる。スリット82は、版胴41bの外周部に軸方向に沿って設けられる。また、スリット82は、版胴41bの外周面の接線方向および法線方向に対して所定角度だけ傾斜して設けられる。
【0027】
刷版91は、版胴41bに対する巻き付け方向の一端部に咥え側端部92が設けられ、版胴41bに対する巻き付け方向の他端部に咥え尻側端部93が設けられる。咥え側端部92は、刷版91に対して鋭角に屈曲されて形成され、咥え尻側端部93は、刷版91に対して鈍角に屈曲されて形成される。刷版91は、版胴41bの外周面に巻き付けられ、咥え側端部92と咥え尻側端部93が版胴41bのスリット82に挿入されることで固定される。すなわち、刷版91は、咥え側端部92がスリット82に挿入された後、版胴41bの外周面に巻き付けられ、咥え尻側端部93がスリット82に挿入されて係止される。
【0028】
一方、版胴41bから刷版91を取外す場合、咥え尻側端部93をスリット82から抜き取った後、刷版91を版胴41bの外周面から取外し、咥え側端部92をスリット82から抜き取る。版取外しシステム100は、版胴41bのスリット82から刷版91の咥え尻側端部93を抜き取って取外す作業を自動的に行うものである。
【0029】
印刷ユニットU1(スタック21)は、版取外しシステム100を有する。版取外しシステム100は、保持装置101と、移動装置102と、制御装置103とを備える。
【0030】
保持装置101は、吸盤を有する吸着装置である。吸盤を刷版91の表面に押し付けることで、刷版91を吸着保持することができる。なお、保持装置101は、図示しないが、吸盤の吸着面に対して空気を供給および/または排出する空気給排装置が設けられる。吸盤を刷版91の表面に押し付けたとき、吸盤の吸着面から空気を排出して吸引力を作用させることで、吸盤による刷版91の吸着力を高めることができる。また、吸盤の吸着面に空気を供給して吸引力を減少させることで、吸盤による刷版91の吸着を解除することができる。なお、保持装置101は、吸盤を有する吸着装置に限定されるものではなく、例えば、粘着部材などを有するものであってもよい。
【0031】
移動装置102は、保持装置101を版胴41bの外周面の法線方向(版胴41bの径方向)に沿って移動可能である。すなわち、移動装置102は、保持装置101を版胴41bの外周面に接近するように前進させることができると共に、保持装置101を版胴41bの外周面から離間するように後退させることができる。移動装置102は、アクチュエータである。アクチュエータは、流体(例えば、空気)を供給および排出することで作動する流体圧シリンダ機構である。但し、移動装置(アクチュエータ)102は、流体圧シリンダ機構に限定されるものではなく、例えば、モータおよびねじ軸などにより構成されるものであってもよい。移動装置102は、駆動ロッド102aの先端部に保持装置101が装着される。
【0032】
移動装置102は、保持装置101を版胴41bの法線方向に沿って移動可能である。但し、移動装置102は、保持装置101を版胴41bの法線方向に対して所定角度だけ傾斜した方向に沿って移動可能としてもよい。移動装置102は、駆動ロッド102aの前進作動時、保持装置101を刷版91(版胴41b)に向けて接近する方向に移動し、保持装置101を刷版91の表面に押し付けて保持する。移動装置102は、駆動ロッド102aの後退作動時、保持装置101を刷版91(版胴41b)から離間する方向に移動し、保持装置101が保持した刷版91の咥え尻側端部93をスリット82から抜き取る。
【0033】
保持装置101および移動装置102は、版胴41bの軸方向に間隔を空けて複数配置される。複数の移動装置102は、版胴41bの軸方向に沿って配置されるフレーム76に支持される。版胴41bは、軸方向に複数の刷版91が装着される。保持装置101および移動装置102は、版胴41bに装着された1枚の刷版91に対して複数(本実施形態では、3個)配置される。3個の保持装置101および移動装置102は、刷版91の幅方向(版胴41bの軸方向)に等間隔をもって配置される。この場合、中央部に配置される保持装置101および移動装置102は、刷版91の切欠に係止するレジスターピン41b1に対向して配置されることが好ましい。なお、保持装置101および移動装置102の個数は、3個に限定されるものではなく、2個以下でも4個以上であってもよい。
【0034】
制御装置103は、移動装置102により保持装置101を移動すると共に、駆動装置81により版胴41bを回転させる指令信号を出力する。制御装置103は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0035】
具体的に説明すると、制御装置103は、移動装置102により保持装置101を前進させる前進指令信号を出力し、予め設定された所定時間が経過すると移動装置102により保持装置101を後退させる後退指令信号を出力する。移動装置102は、前進指令信号を受けて駆動ロッド102aにより保持装置101を前進させ、刷版91の咥え尻側端部93側を保持する。移動装置102は、所定時間の経過後、後退指令信号を受けて駆動ロッド102aにより保持装置101を後退させ、保持した刷版91の咥え尻側端部93をスリット82から抜き取る。
【0036】
なお、保持装置101による刷版91の咥え尻側端部93側の保持を検出する保持検出器104を設けてもよい。保持検出器104は、位置検出器、圧力検出器、カメラなどを用いることが好ましい。制御装置103は、前進指令信号を出力した後に所定時間が経過すると、後退指令信号を出力したが、保持検出器104が保持装置101による咥え尻側端部93側の保持を検出すると、後退指令信号を出力してもよい。保持検出器104が保持装置101による咥え尻側端部93側の保持を検出すると、アラーム(表示部やスピーカなど)を発してもよい。
【0037】
制御装置103は、後退指令信号を出力すると同時または後退指令信号を出力した後、駆動装置81により版胴41bを回転させる回転指令信号を出力する。駆動装置81は、移動装置102が駆動ロッド102aにより保持装置101を後退させて咥え尻側端部93をスリット82から抜き取るのと同時または抜き取った後、版胴41bを回転させる。
【0038】
すなわち、移動装置102は、保持装置101が保持した刷版91の咥え尻側端部93側を版胴41bの法線方向における外側方向へ移動させることで刷版91の咥え尻側端部93側に第1作用力を作用させる。また、駆動装置81は、版胴41bを図3の時計回り方向に回転させて刷版91の咥え尻側端部93側を接線方向へ移動させることで刷版91の咥え尻側端部93側に第2作用力を作用させる。すると、第1作用力と第2作用力の合力により刷版91の咥え尻側端部93がスリット82からスムースに抜き取られる。
【0039】
制御装置103は、回転指令信号を出力し、版胴41bが予め設定された所定角度回転すると、駆動装置81による版胴41bの回転を停止させる停止指令信号を出力すると同時または停止指令信号を出力した後、保持装置101による刷版91の咥え尻側端部93の保持を解除する保持解除指令信号を出力する。駆動装置81は、停止指令信号を受けて版胴41bの回転を停止させると同時または停止指令信号を受けた後、保持装置101は、刷版91の咥え尻側端部93の保持を解除する。この場合、版胴41bの回転速度が所定速度に設定されていることから、所定角度を所定時間としてもよい。
【0040】
制御装置103は、移動装置102により保持装置101を前進させる前進指令信号を出力する前または出力した後、保持部材を前進させて刷版91の外周面を保持させる保持指令信号を出力する。ここで、保持部材は、例えば、水着けローラ73であるが、別途保持ローラを設けてもよい。
【0041】
前述したように、版胴41bは、軸方向に複数の刷版91が装着され、1枚の刷版91に対して複数の保持装置101および移動装置102が配置される。制御装置103は、各刷版91に対応して設けられる各移動装置102を個別に作動させる指令信号を出力する。なお、制御装置103は、各刷版91に対応して設けられる各移動装置102を同時に作動させる指令信号を出力してもよい。
【0042】
なお、移動装置102の移動速度、作動停止時期、作動時間および版胴41bの回転速度、回転停止時期、回転時間は、個別に調整可能である。すなわち、刷版91の種類(製造メーカ、大きさ、厚さなど)に応じて、移動装置102の移動速度、作動停止時期、作動時間および版胴41bの回転速度、回転停止時期、回転時間を調整可能となっている。
【0043】
<版取外しシステムの変形例>
図5は、版取外しシステムの変形例を表す概略図、図6は、版取外しシステムの変形例の退避状態を表す概略図である。
【0044】
図5および図6に示すように、版取外しシステム100は、保持装置101を版胴41b(刷版91)に対向する保持可能位置(図5の状態)と、版胴41b(刷版91)から退避する退避位置(図6の状態)とに移動させる退避装置110を有する。
【0045】
移動装置102は、先端部に保持装置101が装着される。移動装置102は、支持軸111が固定され、支持軸111がフレーム76(図4参照)に回動自在に支持される。支持軸111は、版胴41bの軸方向に平行をなす。揺動シリンダ112は、駆動ロッド112aを有し、基端部が支持軸113によりフレーム76(図4参照)に回動自在に支持される。支持軸113は、版胴41bの軸方向に平行をなす。回動リンク114は、一端部が支持軸111に連結され、他端部が連結軸115により駆動ロッド112aの先端部に連結される。
【0046】
図5に示すように、揺動シリンダ112は、駆動ロッド112aを収縮させると、移動装置102が版胴41bの法線方向に沿った位置となり、保持装置101が刷版91の表面に対向する保持可能位置に位置する。揺動シリンダ112は、駆動ロッド112aを伸長させると、移動装置102が支持軸111を中心に、図5の反時計回り方向に回動し、図6に示すように、版胴41bの法線方向に対して傾斜した位置となり、保持装置101が刷版91の表面から離間して退避する退避位置に位置する。保持可能位置は、版取外しシステム100の運転位置であり、退避位置は、版取外しシステム100のメンテナンス位置である。
【0047】
<版取外し方法>
図7は、版取外しシステムによる版取外し方法を表すフローチャート、図8は、版取外しシステムによる版取外し方法を説明するための説明図、図9から図15は、版取外し動作を説明するための説明図である。
【0048】
図8に示すように、スタック21の裏面印刷側のユニットにて、ブランケット胴31bおよび版胴41bは、一部が露出し、インキ着けローラ72は、カバー75により被覆される。版胴41bは、外周部に刷版91が装着される。版胴41bから刷版91を取外すとき、版胴41bのスリット82に挿入された刷版91の咥え尻側端部93(咥え側端部92)を所定の位置に配置させる必要がある。刷版91を取外すときの咥え尻側端部93(スリット82)の位置は、作業者が作業しやすい位置であり、例えば、版胴41bが露出する作業範囲θである。そして、作業範囲θの上方に保持装置101と移動装置102が配置される。
【0049】
また、インキ着けローラ72と水着けローラ73は、図8に二点鎖線で表すように、版胴41bに接触した位置が運転位置であり、版取外し作業時には、図8に実線で表すように、版胴41bから離間した脱位置へ移動した胴抜き状態となる。なお、水着けローラ73は、版胴41bの回転に同期して回転するが、自由回転状態としてもよい。また、版胴41bは、カム機構などの装置により版胴41bに対する着位置と脱位置に移動可能である。
【0050】
図7および図9に示すように、ステップS11にて、制御装置103(図3参照)は、刷版脱信号が入力したか否かを判定する。刷版脱信号は、刷版91の取外し作業を自動で実施するための信号であり、作業者が操作装置(図示略)を用いて入力可能である。制御装置103は、刷版脱信号が入力していないと判定(No)すると、版取外しシステム100を作動しない。一方、制御装置103は、刷版脱信号が入力したと判定(Yes)すると、ステップS12にて、版取外しシステム100により刷版91を自動的に取外すための自動脱モードを開始する。
【0051】
自動脱モードが開始されると、図7および図10に示すように、ステップS13にて、制御装置103は、駆動装置81(図3参照)により版胴41bを時計回り方向に回転し、刷版91の咥え尻側端部93(スリット82)を作業範囲θ(図8参照)に位置させる。ステップS14にて、制御装置103は、咥え尻側端部93が作業範囲θにある状態で、移動装置102を作動して保持装置101を前進させる前進指令信号を出力する。すると、移動装置102は、前進指令信号を受けて保持装置101を前進させ、刷版91の咥え尻側端部93側に押し付ける。図7および図11に示すように、ステップS15にて、保持装置101の吸盤に吸引力を作用(空気の排出)させることで、保持装置101が適切に刷版91の咥え尻側端部93側を保持することができる。
【0052】
図7および図12に示すように、ステップS16にて、制御装置103は、前進指令信号を出力してから所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間とは、移動装置102が保持装置101を前進させて刷版91に接触するまでの時間であり、予め設定される。ここで、制御装置103は、前進指令信号を出力してから所定時間が経過していないと判定(No)すると、この状態を継続する。一方、制御装置103は、前進指令信号を出力してから所定時間が経過したと判定(Yes)すると、ステップS17にて、制御装置103は、移動装置102を作動して保持装置101を後退させる後退指令信号を出力する。すると、図7および図12に示すように、移動装置102は、後退指令信号を受けて保持装置101を後退させる。このとき、保持装置101が刷版91の咥え尻側端部93側を保持していることから、刷版91の咥え尻側端部93をスリット82から抜き取ることができる。この場合、制御装置103は、保持検出器104の検出結果に基づいて後退指令信号を出力してもよい。
【0053】
図7および図13に示すように、ステップS18にて、制御装置103は、駆動装置81により版胴41bを回転させる回転指令信号を出力する。すると、駆動装置81は、回転指令信号を受けて版胴41bを回転させる。版胴41bの回転方向は、図13の時計回り方向であり、版胴41bから刷版91が離間して取外される方向である。
【0054】
なお、ステップS17,S18の処理にて、移動装置102が保持装置101を後退させてから駆動装置81が版胴41bを回転させたが、この処理に限定されるものではない。例えば、移動装置102による保持装置101の後退と駆動装置81による版胴41bの回転を同時に行ってもよい。つまり、移動装置102が保持装置101を後退させると同時に駆動装置81が版胴41bを回転させる。また、移動装置102が保持装置101を後退させているときに駆動装置81が版胴41bを回転させてもよい。つまり、移動装置102が保持装置101を後退させている間に駆動装置81が版胴41bを回転させる。
【0055】
図7および図14に示すように、版胴41bは、スリット82が傾斜して設けられ、刷版91は、スリット82に合わせて、咥え尻側端部93が鈍角に折曲されて設けられている。そのため、刷版91の咥え尻側端部93が版胴41bの法線方向の外側に移動するときに、版胴41bを回転することで、咥え尻側端部93が傾斜するスリット82に沿って移動することとなり、咥え尻側端部93をスリット82からスムースに抜き取ることができる。
【0056】
ステップS19にて、制御装置103は、回転指令信号を出力してから版胴41bが予め設定された所定角度回転したか否かを判定する。所定角度は、刷版91の咥え尻側端部93が版胴41bのスリット82から完全の抜け出る角度であり、事前に設定しておく。なお、所定角度は、所定時間であってもよい。ここで、制御装置103は、版胴41bが所定角度回転していないと判定(No)すると、版胴41bの回転を継続する。一方、制御装置103は、版胴41bが所定角度回転したと判定(Yes)すると、ステップS20にて、駆動装置81による版胴41bの回転を停止させる停止指令信号を出力する。すると、駆動装置81は、停止指令信号を受けて版胴41bの回転を停止する。
【0057】
ステップS21にて、制御装置103は、保持装置101による刷版91の咥え尻側端部93の保持を解除する保持解除指令信号を出力する。すると、保持装置101は、刷版91の咥え尻側端部93の保持を解除する。すなわち、保持装置101の吸盤に作用される吸引力を解除(空気の供給)させることで、刷版91の咥え尻側端部93側の保持を解除する。
【0058】
なお、ステップS20,S21の処理にて、駆動装置81が版胴41bの回転を停止させてから保持装置101が刷版91の咥え尻側端部93の保持を解除したが、この処理に限定されるものではない。例えば、駆動装置81による版胴41bの回転停止と保持装置101による刷版91の咥え尻側端部93の保持解除を同時に行ってもよい。
【0059】
ステップS22にて、制御装置103は、駆動装置81により版胴41bを回転させる回転指令信号を出力する。すると、駆動装置81は、回転指令信号を受けて版胴41bを再び回転させる。版胴41bの回転方向は、図15の時計回り方向であり、版胴41bから刷版91が取外される方向である。
【0060】
ステップS23にて、制御装置103は、回転指令信号を出力してから版胴41bが予め設定された所定角度回転したか否かを判定する。所定角度は、刷版91がインキ着けローラ72から完全に抜け出る角度であり、事前に設定しておく。なお、所定角度は、所定時間であってもよい。ここで、制御装置103は、版胴41bが所定角度回転していないと判定(No)すると、版胴41bの回転を継続する。一方、制御装置103は、版胴41bが所定角度回転したと判定(Yes)すると、ステップS24にて、制御装置103は、駆動装置81による版胴41bの回転を停止させる停止指令信号を出力する。すると、駆動装置81は、停止指令信号を受けて版胴41bの回転を停止させる。そして、ステップS25にて、自動脱モードが終了する。
【0061】
図16に示すように、ステップS26にて、作業者は、版胴41bから刷版91を取外す。
【0062】
<版取外し方法の変形例>
図16は、版取外しシステムによる版取外し方法の変形例を表すフローチャートである。なお、ステップS11からステップS26までの処理は、前述した実施形態と同様であり、新たなステップS31,S32が追加されており、重複した処理は省略する。
【0063】
図10に二点鎖線で示すように、自動脱モードが開始されると、ステップS13にて、制御装置103は、駆動装置81(図3参照)により版胴41bを回転し、刷版91の咥え尻側端部93(スリット82)を作業範囲θ(図8参照)に位置させる。このとき、ステップS31にて、制御装置103は、水着けローラ73を移動させて刷版91の外周面を保持させる保持指令信号を出力する。すると、水着けローラ73は、版胴41bに装着された刷版91の外周面に接触し、刷版91を保持する。そのため、ステップS14からステップS23までの処理の間、図11から図15に二点鎖線で示すように、水着けローラ73は、刷版91を保持することとなる。
【0064】
そして、ステップS23にて、制御装置103は、回転指令信号を出力してから版胴41bが予め設定された所定角度回転したか否かを判定する。ここで、制御装置103は、版胴41bが所定角度回転したと判定(Yes)すると、水着けローラ73を移動させて刷版91の外周面から離間させる保持解除指令信号を出力する。すると、水着けローラ73は、版胴41bに装着された刷版91の外周面から離間し、刷版91の保持を解除する。
【0065】
<版取外し動作>
図17は、版取外しシステムによる版取外し方法を表すタイムチャートである。
【0066】
図3および図17に示すように、時間t1にて、版取外しシステム100による刷版91の自動脱モードが開始(ON)される。時間t2にて、駆動装置(シャフトレスモータ)81の回転がロックされる。時間t3にて、移動装置102が保持装置101を前進させ、刷版91の咥え尻側端部93側に押し付け、保持する。時間t4にて、駆動装置(シャフトレスモータ)81の回転のロックが解除される。また、水着けローラ73が移動して版胴41bに装着された刷版91の外周面に接触し、刷版91を保持する。なな、水着けローラ73による刷版91の保持は、保持装置101による咥え尻側端部93側の保持の前に実行してもよい。
【0067】
時間t5にて、移動装置102が保持装置101を後退させ、刷版91の咥え尻側端部93をスリット82から抜き取る。そして、時間t6にて、駆動装置81が版胴41bを回転させる。なお、移動装置102による保持装置101の後退と駆動装置81による版胴41bの回転を同時に行ってもよい。
【0068】
時間t7にて、駆動装置81が版胴41bの回転を停止させる。時間t8から時間t9の間に、保持装置101が刷版91の咥え尻側端部93の保持を解除する。時間t10にて、駆動装置81が版胴41bを再び回転させ、時間t11にて、版胴41bの回転を停止し、自動脱モードが終了する。そして、時間t12にて、水着けローラ73が移動して刷版91の保持を解除する。
【0069】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る版取外しシステムは、版胴41bが駆動装置81により駆動回転自在に支持され、版胴41bの外周部に軸方向に沿うと共に版胴41bの外周面の接線方向および法線方向に対して傾斜するスリット82が設けられ、版胴41bの外周面に刷版91が巻き付けられ、刷版91の一端部および他端部がスリット82に挿入されて係止され、刷版91の端部をスリット82から抜き取って取外す版取外しシステム100において、刷版91の他端部側を保持する保持装置101と、保持装置101を版胴41bの法線方向に沿って移動する移動装置102と、移動装置102により保持装置101を移動すると共に駆動装置81により版胴41bを回転する指令信号を出力する制御装置103とを備える。
【0070】
第1の態様に係る版取外しシステムによれば、制御装置103は、移動装置102により保持装置101を移動すると共に駆動装置81により版胴41bを回転する指令信号を出力することから、保持装置101が保持した刷版91の他端部を法線方向の外側に移動すると共に、版胴41bから刷版91の他端部を周方向に離間させることができる。そのため、スリット82が傾斜して設けられていても、刷版91の他端部をスリット82からスムースに抜き取ることができ、刷版取外し作業における作業性の向上を図ることができる。
【0071】
第2の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様に係る版取外しシステムであって、さらに、制御装置103は、移動装置102により保持装置101を版胴41bの外周面に接近するように前進させる前進指令信号を出力し、予め設定された所定時間が経過すると移動装置102により保持装置101を版胴41bの外周面から離間するように後退させる後退指令信号を出力する。これにより、保持装置101が保持した刷版91の他端部をスリット82から抜き取ることができる。
【0072】
第3の態様に係る版取外しシステムは、第2の態様に係る版取外しシステムであって、さらに、制御装置103は、後退指令信号を出力すると同時または後退指令信号を出力した後、駆動装置81により版胴41bを回転させる回転指令信号を出力する。これにより、スリット82が傾斜して設けられていても、刷版91の他端部をスリット82からスムースに抜き取ることができる。
【0073】
第4の態様に係る版取外しシステムは、第3の態様に係る版取外しシステムであって、さらに、制御装置103は、回転指令信号を出力し、版胴41bが予め設定された所定角度回転すると駆動装置81による版胴41bの回転を停止させる停止指令信号を出力すると同時または停止指令信号を出力した後、保持装置101による刷版91の他端部側の保持を解除する保持解除指令信号を出力する。これにより、スリット82から抜き取った刷版91の他端部を開放することができる。
【0074】
第5の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、制御装置103は、移動装置102により保持装置101を版胴41bの外周面に接近するように前進させる前進指令信号を出力する前または出力した後、水着けローラ(保持部材)73を版胴41bの外周面に接近するように前進させて刷版91の外周面を版胴41bに保持させる保持指令信号を出力する。これにより、刷版91の他端部をスリット82から抜き取るとき、刷版91を安定して保持することができる。
【0075】
第6の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、移動装置102は、保持装置101が保持した刷版91の他端部側を法線方向における外側方向へ移動させることで刷版91の他端部側に第1作用力を作用させ、駆動装置81は、版胴41bを回転させて刷版91の他端部側を接線方向へ移動させることで刷版91の他端部側に第2作用力を作用させ、第1作用力と第2作用力の合力により刷版91の他端部をスリットから抜き取る。これにより、スリット82が傾斜して設けられていても、刷版91の他端部をスリット82からスムースに抜き取ることができ、刷版取外し作業における作業性の向上を図ることができる。
【0076】
第7の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、保持装置101は、版胴41bの軸方向に間隔を空けて複数配置される。これにより、刷版91の他端部が複数の保持装置101により保持されることとなり、刷版91の他端部を安定して保持することができる。なお、この場合、複数の保持装置101に対して1個または複数の移動装置102が配置される。
【0077】
第8の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、版胴41bは、刷版91が軸方向に複数並んで装着可能であり、制御装置103は、複数の刷版91に対応して設けられる複数の移動装置102に対して個別に作動させる指令信号を出力する。これにより、複数の刷版91を個別に取外すことができる。
【0078】
第9の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、版胴41bは、刷版91が軸方向に複数並んで装着可能であり、制御装置103は、複数の刷版91に対応して設けられる複数の移動装置102に対して同時に作動させる指令信号を出力する。これにより、複数の刷版91を同時に取は取外すことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0079】
第10の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第9の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、移動装置102の移動速度、作動停止時期、作動時間および版胴41bの回転速度、回転停止時期、回転時間は、個別に調整可能である。これにより、異なる種類の刷版91に対して対応することが可能となる。
【0080】
第11の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第10の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、保持装置101を刷版91に対向する保持可能位置と、刷版から退避する退避位置とに移動させる退避装置110が設けられる。これにより、保持装置101が邪魔にならずに、版胴41bなどのメンテナンス作業を円滑に行うことができる。
【0081】
第12の態様に係る版取外しシステムは、第1の態様から第11の態様のいずれか一つに係る版取外しシステムであって、さらに、保持装置101による刷版91の他端部側の保持を検出する保持検出器104を有し、制御装置103は、保持検出器104の検出結果に基づいて移動装置102を制御する。これにより、保持装置101による刷版91の他端部側の保持を適切に検出することができる。
【0082】
第13の態様に係る版取外し方法は、保持装置101を版胴41bの法線方向に沿って版胴41bの外周面に接近するように前進させて刷版91の他端部側を保持するステップと、保持装置101を版胴41bの法線方向に沿って版胴41bの外周面から離間するように前進させて保持した刷版91の他端部側を版胴41bの外側へ移動させるステップと、版胴41bを刷版91が取外される方向に回転させるステップとを有する。これにより、スリット82が傾斜して設けられていても、刷版91の他端部をスリット82からスムースに抜き取ることができ、刷版取外し作業における作業性の向上を図ることができる。
【0083】
第14の態様に係る印刷機は、インキを供給するインキ供給装置51bと、インキ供給装置51bから外周部に装着された刷版にインキが供給される版胴41bと、版胴41bから受け取ったインキの画像をウェブWに転写するブランケット胴31bと、版取外しシステム100とを備える。これにより、版取外しシステム100を用いることで、スリット82が傾斜して設けられていても、刷版91の他端部をスリット82からスムースに抜き取ることができ、刷版取外し作業における作業性の向上を図ることができる。
【0084】
なお、上述した実施形態では、印刷機として新聞用オフセット輪転印刷機Pを適用したが、商業用オフセット輪転印刷機やオフセット枚葉印刷機などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0085】
21,22,23,24 スタック
31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b ブランケット胴
41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b 版胴
51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b インキ供給装置
61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64b 湿し装置
71 インキ往復ローラ
72 インキ着けローラ
73 水着けローラ
74 梁
75 カバー
76 フレーム
81 駆動装置
82 スリット
91 刷版
92 咥え側端部(一端部)
93 咥え尻側端部(他端部)
100 版取外しシステム
101 保持装置
102 移動装置
103 制御装置
104 保持検出器
110 退避装置
111 支持軸
112 揺動シリンダ
113 支持軸
114 回動リンク
115 連結軸
P 新聞用オフセット輪転印刷機(印刷機)
R 給紙装置
R1~R5 給紙ユニット
I インフィード装置
I1~I5 インフィードユニット
U 印刷装置
U1~U5,U11~U52 印刷ユニット
D ウェブパス装置
D1 ウェブパスユニット
F 折機
F1 折ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17