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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152452
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】車両のパワートレイン構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20251002BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20251002BHJP
【FI】
B60K1/00
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054355
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 学
(72)【発明者】
【氏名】池田 英里加
(72)【発明者】
【氏名】月下 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】内勢 英明
【テーマコード(参考)】
3D235
5H770
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB04
3D235BB06
3D235CC13
3D235DD17
3D235DD19
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH22
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770KA01W
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA13
5H770QA21
5H770QA27
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】車両衝突時における安全性を確保することができる車両のパワートレイン構造を提供する。
【解決手段】車両は、モータMおよびモータハウジングを有する駆動装置と、バッテリと、モータMとバッテリとの間で電力変換するインバータと、を備える。インバータのインバータハウジングは、モータハウジングに対して密に接合されており、モータハウジングにおける後壁部には、バッテリから延びる配線が接続されるDCコネクタCN1が配設されている。DCコネクタCN1とインバータの回路部との間を接続するDCバスバLN2は、モータハウジング内を配策されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるとともに、前記車両の走行用の駆動源としてのモータと、少なくとも前記モータを収容する駆動装置ハウジングとを有する駆動装置と、
前記モータの電力源としてのバッテリと、
前記車両に搭載されるとともに、前記モータと前記バッテリとの間で電力変換する回路部と、前記回路部を収容する変換装置ハウジングとを有する電力変換装置と、
を備え、
前記変換装置ハウジングは、前記駆動装置ハウジングに対して密に接合、または、前記駆動装置ハウジングと一体に設けられており、
前記駆動装置ハウジングにおける周壁部には、前記バッテリから延びる配線が接続される電源接続部が配設されており、
前記電源接続部と前記回路部との間を接続する導電部材は、前記駆動装置ハウジング内を配策されている、
車両のパワートレイン構造。
【請求項2】
前記変換装置ハウジングは、前記駆動装置ハウジングとは別体で設けられており、
前記駆動装置ハウジングおよび前記変換装置ハウジングは、ともに導電性材料を用いて形成されており、
前記回路部は、前記導電部材との接続部分から延びる回路配線を有するとともに、前記回路配線に介挿されたノイズフィルタ部品を有する、
請求項1に記載の車両のパワートレイン構造。
【請求項3】
前記変換装置ハウジングは、前記駆動装置ハウジングの上に載置されているとともに、下方の前記駆動装置ハウジングに向けて突出するように形成された下方突出部を有し、
前記駆動装置ハウジングは、前記下方突出部が侵入する窪み部を有し、
前記回路部における前記回路配線は、前記下方突出部内に収容され、
前記導電部材は、前記窪み部から下方に向けて延びるように形成されている、
請求項2に記載の車両のパワートレイン構造。
【請求項4】
前記駆動装置ハウジング内には、走行用の駆動力を車輪に伝達する出力軸に対して接続されたデファレンシャルギアが収容されており、
前記導電部材は、前記デファレンシャルギアの周囲を囲むように設けられた弧状部を有する、
請求項3に記載の車両のパワートレイン構造。
【請求項5】
前記ノイズフィルタ部品は、少なくとも筒状のフェライトコアを含み、
前記フェライトコアは、筒軸が上下方向に沿う状態で、前記下方突出部内に収容されている、
請求項3に記載の車両のパワートレイン構造。
【請求項6】
前記回路配線は、前記フェライトコアの筒内を挿通する挿通部分と、前記挿通部分に接続され、前記導電部材との前記接続部分とは前記フェライトコアを挟んで反対側に向けて延びる延伸部分と、を有し、
前記挿通部分と前記延伸部分とは、前記フェライトコアの上方で接続されている、
請求項5に記載の車両のパワートレイン構造。
【請求項7】
前記駆動装置および前記電力変換装置は、前記車両の前部に搭載されており、
前記電源接続部は、前記駆動装置ハウジングにおける前記モータよりも後方に配された後壁部に配設されている、
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両のパワートレイン構造。
【請求項8】
前記車両には、前記バッテリからの電力によって作動する補機が搭載されており、
前記駆動装置ハウジング内には、前記導電部材から分岐されるとともに、前記電源接続部と前記補機との間を接続する補機配線が収容されている、
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両のパワートレイン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワートレイン構造に関し、特に走行用のモータおよび電力変換装置を含むパワートレイン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、モータを走行用の駆動源として備える車両が増加している。このような車両には、モータに電力供給するためのバッテリが搭載されている。モータを走行用の駆動源として備える車両の駆動装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の車両用駆動装置は、走行用の駆動源としてのモータと、当該モータに接続される変速機構と、モータおよび変速機構を収容する駆動装置ケースとを備える。駆動装置ケースは、駆動装置ケースにおけるモータを収容した部分に隣接する箇所において、外壁の一部が内方に向けて直方体形状に凹入されることで形成された槽状部を有する。槽状部は、モータや変速機構などが収容された部分から隔離されている。
【0004】
また、車両用駆動装置は、バッテリとモータとの間に介挿され、素子ユニットおよびコンデンサ部を有するインバータ装置も備える。インバータ装置は、外殻を構成するインバータケースも有し、素子ユニットおよびコンデンサ部は、インバータケース内に収容されている。車両用駆動装置では、駆動装置ケースに設けられた槽状部にインバータケースの一部(コンデンサ部が収容された部分)が収容されている。特許文献1に開示の車両用駆動装置では、槽状部にインバータケースの一部を収容することにより、該車両用駆動装置の小型化を図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-113915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術を含む従来技術では、車両衝突時における安全性の確保が難しいと考えられる。具体的に、上記特許文献1には、インバータ装置とバッテリとを接続するDC配線は明示されていないが、インバータケースにDC配線が接続されるコネクタが設けられている。このため、上記特許文献1に開示の車両用駆動装置では、インバータ装置とバッテリとを接続するDC配線は駆動装置ケースの外方を配策されるものと考えられる。よって、車両衝突時における駆動装置と車体や周辺部材との間の相対変位によっては、DC配線が損傷することが懸念され、DC配線の周辺に車両衝突時の相対変位を許容する空間を確保するなどの対策が必要となる。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、車両衝突時における安全性を確保することができる車両のパワートレイン構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両のパワートレイン構造は、車両に搭載されるとともに、前記車両の走行用の駆動源としてのモータと、少なくとも前記モータを収容する駆動装置ハウジングとを有する駆動装置と、前記モータの電力源としてのバッテリと、前記車両に搭載されるとともに、前記モータと前記バッテリとの間で電力変換する回路部と、前記回路部を収容する変換装置ハウジングとを有する電力変換装置と、を備える。本態様に係る車両のパワートレイン構造では、前記変換装置ハウジングは、前記駆動装置ハウジングに対して密に接合、または、前記駆動装置ハウジングと一体に設けられており、前記駆動装置ハウジングにおける周壁部には、前記バッテリから延びる配線が接続される電源接続部が配設されており、前記電源接続部と前記回路部との間を接続する導電部材は、前記駆動装置ハウジング内を配策されている。
【0009】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、電源接続部と回路部との間を接続する導電部材が駆動装置ハウジング内を配策されているので、車両衝突時においても駆動装置ハウジングで導電部材が保護される。よって、車両衝突時などにおいても、導電配線が損傷するのが抑制される。
【0010】
なお、上記における「密に接合」とは、仮に駆動装置ハウジングと変換装置ハウジングとの接合部分に微細な隙間が生じた場合にも、当該隙間を通して電磁波が出入りしないことを示す。
【0011】
また、電力変換装置の回路部が実行する「電力変換」とは、電力の変数としての電圧、電流、周波数、位相、相数などの少なくとも1つの変数を別の形態に変換することを示す。例えば、直流電力と交流電力とを変換、電圧を昇降圧する変換などのことを示す。
【0012】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記変換装置ハウジングは、前記駆動装置ハウジングとは別体で設けられており、前記駆動装置ハウジングおよび前記変換装置ハウジングは、ともに導電性材料を用いて形成されており、前記回路部は、前記導電部材との接続部分から延びる回路配線を有するとともに、前記回路配線に介挿されたノイズフィルタ部品を有してもよい。
【0013】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、回路配線にノイズフィルタ部品が介挿されているので、電力変換装置で発生するノイズが回路配線におけるノイズフィルタ部品が介挿された部分よりも電源接続部側、および電源接続部よりもバッテリ側の配線へと漏出するのが防がれる(EMI(Electro Magnetic Interference)対策)。また、仮にバッテリから電源接続部までの間の配線に他の機器からのノイズがのった場合においても、当該ノイズが電力変換装置の駆動に干渉するのが防がれる(EMS(Electro Magnetic Susceptibility)対策)。
【0014】
また、上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、駆動装置ハウジングおよび変換装置ハウジングがともに導電性材料で構成され、それらの内方に回路配線および導電部材が収容されている。このため、回路配線におけるノイズフィルタ部品が介挿された部分よりも電源接続部とは反対側の部分から変換装置ハウジング外にノイズが漏出したり、駆動装置ハウジングや変換装置ハウジングの外方から内方へとノイズが侵入したりするが防がれる。これより、EMS(Electro Magnetic Compatibility)対策がなされる。
【0015】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記変換装置ハウジングは、前記駆動装置ハウジングの上に載置されているとともに、下方の前記駆動装置ハウジングに向けて突出するように形成された下方突出部を有し、前記駆動装置ハウジングは、前記下方突出部が侵入する窪み部を有し、前記回路部における前記回路配線は、前記下方突出部内に収容され、前記導電部材は、前記窪み部から下方に向けて延びるように形成されていてもよい。
【0016】
モータは、回転軸の軸芯方向から見る場合に円形のステータおよびロータを有する。このため、駆動装置ハウジング内におけるモータの収容領域は円柱形状の領域となる。上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、駆動装置ハウジングにおける上記のようなモータの収容領域の形状に鑑み、モータの収容領域に対して干渉しない部分に窪み部を設け、当該窪み部に変換装置ハウジングの下方突出部が侵入するように構成されている。これにより、上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、駆動装置ハウジングおよび変換装置ハウジングの大型化を抑制して、車両衝突時におけるパワートレインおよびその周辺部の損傷を抑制することができる。また、駆動装置ハウジングおよび変換装置ハウジングの大型化を抑制することで、車両の設計における高い自由度を確保することができる。
【0017】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記駆動装置ハウジング内には、走行用の駆動力を車輪に伝達する出力軸に対して接続されたデファレンシャルギアが収容されており、前記導電部材は、前記デファレンシャルギアの周囲を囲むように設けられた弧状部を有してもよい。
【0018】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、導電部材が弧状部を有するので、デファレンシャルギアおよびその周囲の壁部と導電部材との干渉を避けつつ、可能な限り、導電部材とデファレンシャルギアとの間の隙間を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、駆動装置ハウジングの大型化を抑制することができ、車両衝突時における駆動装置ハウジングや周辺部の損傷を抑制し、設計における高い自由度を確保することができる。
【0019】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記ノイズフィルタ部品は、少なくとも筒状のフェライトコアを含み、前記フェライトコアは、筒軸が上下方向に沿う状態で、前記下方突出部内に収容されていてもよい。
【0020】
フェライトコアは、ノイズフィルタとしての機能を考慮する場合に、内径が小さく、肉厚が厚く、かつ、筒軸方向に長い形状を有することが望ましい。上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、上記のようなノイズフィルタとしてのフェライトコアの機能を考慮しながら、変換装置ハウジングが車両前後方向や車幅方向に長くなるのを防ぐことができる。即ち、フェライトコアの筒軸を上下方向に配することにより、変換装置ハウジングにおけるフェライトコアが収容された部分の前後方向および車幅方向への膨出を抑制することができる。これより、変換装置ハウジングおよび駆動装置ハウジングを平面視する場合に、変換装置ハウジングが駆動装置ハウジングの外形ラインからはみ出さないようにすることが可能となる。よって、車両衝突時においても、フェライトコアの筒内を挿通する回路配線が損傷するのが抑制され、高い安全性を確保するのに優位である。
【0021】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記回路配線は、前記フェライトコアの筒内を挿通する挿通部分と、前記挿通部分に接続され、前記導電部材との前記接続部分とは前記フェライトコアを挟んで反対側に向けて延びる延伸部分と、を有し、前記挿通部分と前記延伸部分とは、前記フェライトコアの上方で接続されていてもよい。
【0022】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造は、回路配線における挿通部分と延伸部分との接続箇所がフェライトコアの上方に配置されている。このため、上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、回路配線における挿通部分と延伸部分との接続箇所をフェライトコアの上方から外れた箇所(外側)に配置する場合に比べて、変換装置ハウジングにおける車両前後方向および車幅方向でのサイズが大型化するのを抑制することができる。よって、変換装置ハウジングにおけるフェライトコアが収容された部分の前後方向および車幅方向への膨出を抑制することができ、車両衝突時に変換装置ハウジングが損傷するのを抑制することができる。
【0023】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記駆動装置および前記電力変換装置は、前記車両の前部に搭載されており、前記電源接続部は、前記駆動装置ハウジングにおける前記モータよりも後方に配された後壁部に配設されていてもよい。
【0024】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、駆動装置および電力変換装置が車両の前部に搭載されるとともに、電源接続部が駆動装置ハウジングの後壁部に配設されている。このため、上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、車両が前突し、車両の前部における駆動装置および電力変換装置が配置された部分に障害物が進入してきた場合においても、当該障害物やそれに押されて後方に移動する車両の部材などによって電源接続部が損傷するのが抑制される。即ち、モータを収容する駆動装置ハウジングは、比較的高い剛性を有するので、前突時において電源接続部を保護する保護部材として機能することになる。
【0025】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造において、前記車両には、前記バッテリからの電力によって作動する補機が搭載されており、前記駆動装置ハウジング内には、前記導電部材から分岐されるとともに、前記電源接続部と前記補機との間を接続する補機配線が収容されていてもよい。
【0026】
上記態様に係る車両のパワートレイン構造では、導電部材から分岐される補機配線が駆動装置ハウジング内に収容されているので、車両衝突時において補機配線も保護される。よって、導電部材から分岐した補機配線により補機に電力供給を可能としつつ、車両衝突時における高い安全性を確保するのに優位である。
【発明の効果】
【0027】
上記の各態様に係る車両のパワートレイン構造では、車両衝突時における安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係るパワートレインが搭載されてなる車両の概略構成を示す図である。
図2】バッテリとモータとの間の電力供給経路を示す図である。
図3】パワートレインを後方から見た背面図である。
図4】モータハウジングの一部とインバータとを示す右側面図である。
図5】インバータを上方から見た平面図である。
図6】インバータにおけるDC入出力部の構成を示す断面図である。
図7】モータハウジング内におけるDCバスバの配策構造を示す斜視図である。
図8】モータハウジング内におけるDCバスバの配策構造を示す図であって、(a)は右側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0030】
なお、以下の説明で用いる図面において、「FR」は車両前方、「RR」は車両後方、「LH」は車両左方、「RH」は車両右方、「UP」は車両上方、「LO」は車両下方をそれぞれ示す。
【0031】
1.車両Vの構成
本発明の実施形態に係る車両Vの構成について、図1を用いて説明する。
【0032】
図1に示すように、車両Vでは、インバータ(電力変換装置)100を含むパワートレインPTが前部のパワートレインルームR1に搭載されている。
【0033】
車両Vは、所謂、ハイブリッド電気自動車(HEV)である。車両Vには、走行用の駆動源(即ち、車輪Wの駆動源)としてのエンジンEおよびモータMが搭載されている。即ち、車両Vでは、エンジンEとモータMとで駆動装置が構成されている。また、パワートレインPTは、エンジンEとモータMとを含むとともに、これらに加えて、変速機TMも含む。
【0034】
駆動装置を構成するモータMは、3相交流電力の供給を受けて回転する3相3線式の交流モータであって、回転軸と、回転軸の周囲にはいされた永久磁石を有するロータと、ロータの外周に配設され、複数のティースのそれぞれにコイルが巻回されてなるステータとを備える。複数のコイルは、U相コイル、V相コイル、W相コイルで構成されており、各相のコイルに対して互いに異なる位相の電流が供給される。
【0035】
変速機TMは、モータMに接続されており、モータMから入力された回転を減速する。変速機TMは、デファレンシャルFIADFと一体に構成されている。これにより、変速機TMに入力された回転は、デファレンシャルギアDFを介してドライブシャフトSに出力されて車輪Wに伝達される。
【0036】
本実施形態に係る車両Vは、一例としてパラレル式のハイブリッド電気自動車であって、モータMのみの駆動力による走行、モータMとエンジンEの双方の駆動力による走行、およびエンジンEのみの駆動力による走行が可能である。なお、車両Vは減速回生が可能であって、モータMは車両Vの減速時に車輪Wからの伝達力によって発電する。
【0037】
バッテリ200は、パワートレインPTよりも後方、具体的には車室R2の床下に搭載されている。バッテリ200は、モータMとの間で電力の授受を行う。モータMが走行用の駆動源として駆動する場合、バッテリ200はモータMに給電する。なお、この場合には、バッテリ200とモータMとの間の給電路中に設けられたDC-DCコンバータ300を介して直流電力が給電される。
【0038】
一方、車両Vの減速時にモータMが発電機として駆動する場合、バッテリ200はモータMによって生成された電力を蓄電する。
【0039】
インバータ100は、3相3線式のモータMに接続される。インバータ100は、バッテリ200からの直流電力を交流電力に変換してモータMに給電する電力変換装置である。具体的に、インバータ100は、バッテリ200からDC-DCコンバータ300を含む直流回路を経て供給された直流電力を3相交流電力に変換してモータMに給電する。
【0040】
また、インバータ100は、車両Vの減速時にモータMが発電機として駆動する場合、モータMによって生成された交流電力を直流電力に変換して、DC-DCコンバータ300を含む直流回路を経てバッテリ200に供給する。
【0041】
なお、図1では図示を省略するが、車両Vは、当該車両Vの各部に設けられた電装品に給電するための低電圧バッテリも備える。低電圧バッテリは、バッテリ200よりも公称電圧が低いバッテリである。
【0042】
ここで、バッテリ200は、例えば、公称電圧が24V以上のリチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリであり、低電圧バッテリは、例えば、公称電圧が12V、あるいは24Vの鉛バッテリやリチウムイオンバッテリである。
【0043】
車両Vには、モータMおよびエンジンEを含むパワートレインPTを統括的に制御するコントローラであるPCM(Powertrain Control Module)400も搭載されている。
【0044】
また、車両Vには、エアーコンディショナの電動コンプレッサ(補機)CもパワートレインルームR1に搭載されている。電動コンプレッサCは、バッテリ200からの直流電力の供給を受けて駆動する。
【0045】
2.バッテリ200と、パワートレインPTおよび電動コンプレッサCとの電気的接続
バッテリ200と、パワートレインPTおよび電動コンプレッサCとの電気的接続について、図2を用いて説明する。
【0046】
図2に示すように、バッテリ200は、DC-DCコンバータ300を介してパワートレインPTに接続されている。パワートレインPTは、モータMを有する。モータMは、インバータ100にACバスバLN6により接続されている。インバータ100は、DC-DCコンバータ300を介してバッテリ200に対して電力線ハーネスLN1により接続されている。
【0047】
モータMを収容するモータハウジング(駆動装置ハウジング510)の周壁部には、DCコネクタ(電源接続部)CN1が配設されている。DCコネクタCN1に対しては、電力線ハーネスLN1が接続されている。モータハウジング510内には、DCコネクタCN1に接続されるDCバスバ(導電部材)LN2が配策されている。DCバスバLN2は、DCコネクタCN1とインバータ100とを接続する。
【0048】
モータハウジング510の周壁部には、DCコネクタCN2も配設されている。DCコネクタCN2には、電動コンプレッサCに接続された補機配線ハーネスLN3が接続されている。
【0049】
モータハウジング510内において、DCコネクタCN2には、DCバスバLN2から分岐されたDC配線(DCバスバ)LN7が接続されている。
【0050】
バッテリ200からの直流電力は、DC-DCコンバータ300を介してインバータ100に供給され、交流電力へと変換されてモータMに給電される。車両Vの減速時には、モータMで生成された交流電力がインバータ100で直流電力に変換されて、DC-DCコンバータ300を介してバッテリ200に供給される。
【0051】
一方、電動コンプレッサCには、バッテリ200からDC-DCコンバータ300を介して供給された直流電力が、DCバスバLN7および補機配線ハーネスLN3を経て給電される。
【0052】
3.パワートレインPTにおける各部の配置
パワートレインPTにおける各部の配置について、図3を用いて説明する。図3は、パワートレインPTを車両Vの後方から見た背面図である。
【0053】
図3に示すように、パワートレインルームR1内において、エンジンE、モータM、変速機TMの順に右方から左方へと配置されている。エンジンEは、一例として多気筒のレシプロエンジンである。
【0054】
モータMは、エンジンEの下部(シリンダブロック)に対して左側に隣接して配されており、第1モータハウジング511と第2モータハウジング512とで構成されるモータハウジング(駆動装置ハウジング)510内に収容されている。第1モータハウジング511および第2モータハウジング512は、それぞれが皿形状(浅皿形状または深皿形状)を有し、互いの開口縁部同士が突き合わされた状態で接合されている。
【0055】
ここで、図3ではモータハウジング510内に収容されているモータMの図示を省略するが、モータMの回転軸は車幅方向に沿って延びるように配されている。
【0056】
第1モータハウジング511および第2モータハウジング512は、ともに導電性材料(例えば、金属材料や炭素繊維強化樹脂)を用いて形成されている。
【0057】
第1モータハウジング511の後壁部511aには、電力線ハーネスLN1が接続されるDCコネクタCN1が配設されている。第2モータハウジング512の後壁部512bには、補機配線ハーネスLN3が接続されるDCコネクタCN2が配設されている。即ち、モータハウジング510の周壁部の一部である後壁部510bには、DCコネクタCN1,CN2が配設されている。
【0058】
モータハウジング510における第2モータハウジング512の後側上部には、下方に向けて窪んだ窪み部512aが設けられている。窪み部512aは、内方に収容されたモータMに対して干渉しない形状およびサイズで形成されている。
【0059】
変速機TMは、外殻としてのアクスルハウジング520を有する。アクスルハウジング520は、モータハウジング510における第2モータハウジング512の左側に隙見なく接合(緊結)されている。アクスルハウジング520の内方には、変速機TMを構成する変速機構と、デファレンシャルギアDFを構成するギア機構とが収容されている。アクスルハウジング520は、導電性材料(例えば、金属材料や炭素繊維強化樹脂)を用いて形成されている。
【0060】
インバータ100は、車両Vの車幅方向において、第2モータハウジング512の上方からアクスルハウジング520の上方にかけての部分に配置されている。
【0061】
インバータ100は、外殻を構成するインバータハウジング(変換装置ハウジング)101を有する。インバータハウジング101は、ハウジング本体部102と、蓋103と、カバー104と、の組み合わせで構成される。ハウジング本体部102は、上部に開口を有するとともに、第2モータハウジング512の窪み部512aに侵入する下方突出部102aを有する。ハウジング本体部102の下方突出部102aには、後ろ向き(図3の紙面手前側)に開口する開口部102bが設けられている。開口部102bは、所謂、サービスホールであって、電気的な接続などの作業を行う際に工具を挿入するための部分である。開口部102bは、カバー104によって閉じられる。
【0062】
蓋103は、ハウジング本体部102の開口部を塞ぐ。蓋103には、上方に向けて突出するように複数(本実施形態では、一例として2つ)のPCMコネクタCN3が設けられている。PCMコネクタCN3は、インバータ100に対してPCM400を接続するコネクタである。
【0063】
なお、ハウジング本体部102、蓋103、およびカバー104は、ともに導電性材料(例えば、金属材料や炭素繊維強化樹脂)を用いて形成されている。
【0064】
4.インバータ100の構造と配置
インバータ100の構造と配置について、図4および図5を用いて説明する。
【0065】
図4に示すように、車両Vの前後方向において、インバータ100のインバータハウジング101は、後端がモータハウジング510の後端よりも前方側に配置されている。なお、図4では、第1モータハウジング511の図示を省略しているが、インバータハウジング101の後端は、第1モータハウジング511の後端よりも前方側に配置されている。また、インバータハウジング101の前端は、第1モータハウジング511の前端と面一か、あるいは第1モータハウジング511の前端よりも後方に配置されている。
【0066】
上述のように、インバータハウジング101のハウジング本体部102は、後端部において下方に向けて突出する下方突出部102aを有する。下方突出部102aは、第2モータハウジング512の窪み部512aに侵入し、下面が窪み部512aの上面に対して接合されている。図4のA部に示すように、第2モータハウジング512における窪み部512aに設けられた開口部からは、DCバスバLN2が上方に向けて突出している。DCバスバLN2は、インバータ100におけるDC配線と接合される。そして、当該接合の際に上記開口部102bが用いられる。
【0067】
図5に示すように、インバータ100は、インバータハウジング101内において、後端側から前端側に向けた方向に順に配置された、DC入出力部106、平滑部107、パワーモジュール部108、およびAC入出力部109を備える。なお、インバータハウジング101におけるDC入出力部106が収容された部分(下方突出部102a)は、他の部分に対して車幅方向の幅が狭く形成されているとともに、右方側に偏った位置に配されている。即ち、DC入出力部106が収容された下方突出部102aは、インバータハウジング101における他の部分よりも車幅方向の内側に偏在して配されている。
【0068】
平滑部107は、フィルムコンデンサ、あるいは電解コンデンサなどの平滑コンデンサを含み構成されている。なお、平滑部107には、Xコンデンサが配設されていてもよい。
【0069】
パワーモジュール部108は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)から構成されている。ただし、パワーモジュール部108は、必ずしもIGBTから構成されている必要はなく、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等、既知のパワーモジュールから構成されていてもよい。
【0070】
AC入出力部109は、モータMとの接続のためのACバスバLN5を備える。ACバスバLN5は、インバータハウジング101におけるハウジング本体部102の底壁に設けられた開口部102cを通じてモータMから延びるACバスバLN6(図2を参照。)と接続される。
【0071】
ここで、蓋103におけるAC入出力部109の上方部分には、開口部103aが設けられている。開口部103aは、所謂、サービスホールであって、ACバスバLN5とACバスバLN6との接続作業を行う際に工具を挿入するための部分である。開口部103aは、導電性材料(例えば、金属材料や炭素繊維強化樹脂)で形成されたカバー105によって閉じられる。
【0072】
なお、詳細な図示を省略するが、インバータハウジング101には、平滑部107およびパワーモジュール部108の冷却を行うための冷媒循環路も設けられている。
【0073】
5.インバータ100におけるDC入出力部106の構成
インバータ100におけるDC入出力部106の構成について、図6を用いて説明する。
【0074】
図6に示すように、DC入出力部106は、ノイズフィルタ部品であるフェライトコア1061およびYコンデンサ1062、DCバスバ(回路配線)LN4、および樹脂モールド1063を備え、インバータハウジング101における下方突出部102aに収容されている。
【0075】
フェライトコア1061は、角筒形状を有する部材であって、筒軸が上下方向に沿う状態で配され、周囲のフランジ部分でハウジング本体部102に固定されている。フェライトコア1061の下端は、下方突出部102aの後方部分に設けられた開口部102bの上縁と同位置あるいはそれよりも上側に位置する。
【0076】
DCバスバLN4は、フェライトコア1061の筒内を挿通する挿通部分LN41と、挿通部分LN41に接続され、フェライトコア1061の上方から平滑部107に向けて延びる延伸部分LN42とで構成されている。本実施形態において、挿通部分LN41と延伸部分LN42との接続箇所PT1,PT2は、フェライトコア1061の上方に配置されている。より詳細には、接続箇所PT1,PT2を上方から平面視する場合に、当該接続箇所PT1,PT2は、フェライトコア1061の筒穴と重複する位置に配されている。
【0077】
正負一対の挿通部分LN41は、電気絶縁性を有する樹脂モールド1063によりフェライトコア1061の筒内を通る部分が被覆されている。これにより、インバータ100の製造時において、部品のハンドリングに要する手間を削減することができる。
【0078】
Yコンデンサ1062は、DCバスバLN4の挿通部分LN41における樹脂モールド1063で被覆された部分よりも下方の部分に一端が接続されている。なお、図6では、一対の挿通部分LN41の内の一方だけを図示し、これに伴ってYコンデンサ1062についても1つだけ図示しているが、Yコンデンサ1062は、一対の挿通部分LN41のそれぞれに接続されている。Yコンデンサ1062の他端は、グランドに接続(接地)されている。本実施形態では、導電性のハウジング本体部102に接続(接地)されている。
【0079】
図4のA部にも示したように、第2モータハウジング512の窪み部512aからは、上方に向けてDCバスバLN2が突出されている。DCバスバLN2は、その先端部がハウジング本体部102の下方突出部102a内において、挿通部分LN41におけるYコンデンサ1062が接続された部分よりも先端側の部分に対して重なるように設けられている。そして、DCバスバLN4の挿通部分LN41とDCバスバLN2とは、下方突出部102aに設けられた開口部102bから挿入した工具を用いて接続される。そして、DCバスバLN4の挿通部分LN41とDCバスバLN2との接続後において、開口部102bは、カバー104で閉じられる。
【0080】
ここで、インバータハウジング101の下方突出部102a、およびDCバスバLN2は、モータハウジング510におけるモータMのステータ513やロータが収容された部分に対して干渉しないように配置されている。
【0081】
6.モータハウジング510内におけるDCバスバLN2,LN7の配策形態
モータハウジング510の内部空間510aにおけるDCバスバLN2,LN7の配策形態について、図7および図8を用いて説明する。
【0082】
上述のように、第1モータハウジング511の後壁部511aには電力線ハーネスLN1が接続されるDCコネクタCN1が配設され、第2モータハウジング512の後壁部512bには補機配線ハーネスLN3が接続されるDCコネクタCN2が配設されている。また、モータハウジング510内には、窪み部512aの開口部から上方に向けて突出するDCバスバLN2が配策されている。
【0083】
図7および図8(a)、(b)に示すように、モータハウジング510の内部空間510aには、DCバスバLN2から分岐され、DCコネクタCN2に接続されるDCバスバLN7も配策されている。また、モータハウジング510の内部空間510aには、DCバスバLN7中に介挿されるヒューズ514が収容されている。
【0084】
ここで、図7に示すように、モータハウジング510の内部空間510aに対しては、変速機TMの側から円錐台形状にデファレンシャルギアDFの一部が張り出している。また、デファレンシャルギアDFからは、ドライブシャフトSが右方に向けて延びている。モータハウジング510の内部空間510aにおいて、DCバスバLN2,LN7は、デファレンシャルギアDFが張り出した部分およびドライブシャフトSに対して干渉しないように配されている。
【0085】
インバータ100とDCコネクタCN1との間を接続するDCバスバLN2は、DCバスバLN21~LN24を含む。DCバスバLN2から分岐され、DCコネクタCN2に接続されるDCバスバLN7は、DCバスバLN71,LN72を含む。
【0086】
DCバスバLN21およびDCバスバLN22は、窪み部512aの開口部から上方に突出する部分を有する配線である。DCバスバLN21は、その下端部分(接続箇所BR1)でDCバスバLN23に接続されている。図8(b)に示すように、DCバスバLN23は、正面視で略U字形状を有する。DCバスバLN23は、一端が端子TE1を介してDCコネクタCN1に接続されている。DCバスバLN23は、その上側部分(接続箇所BR2)でヒューズ514に接続されている。DCバスバLN21,LN23は、DCバスバ2を構成する複数のバスバLN21~LN24の内の一方の極(正極または負極の一方)のバスバである。
【0087】
ヒューズ514には、当該ヒューズ514から下方に延びるDCバスバLN71が接続箇所BR3で接続されている。DCバスバLN71は、DCバスバLN7を構成する一対のバスバの一方の極(正極または負極の一方)のバスバである。DCバスバLN71は、下端部分でDCバコネクタCN2に接続されている。
【0088】
DCバスバLN22は、その下端部分(接続箇所BR4)でDCバスバLN72に接続されている。DCバスバLN72は、下端部分でDCコネクタCN2に接続されている。DCバスバLN72は、DCバスバLN7を構成する一対のバスバの他方の極(正極または負極の他方)のバスバである。
【0089】
DCバスバLN72には、接続箇所BR4の下方の接続箇所BR5でDCバスバLN24が接続されている。DCバスバLN24は、端子TE2を介してDCコネクタCN1に接続されている。DCバスバLN22,LN24は、DCバスバ2を構成する複数のバスバLN21~LN24の内の他方の極(正極または負極の他方)のバスバである。
【0090】
ここで、図8(a)に示すように、DCバスバLN24およびDCバスバLN72は、ともに円弧形状を有する。即ち、DCバスバLN24およびDCバスバLN72は、デファレンシャルギアDF(図8(a)では、図示を省略。)、ドライブシャフトS、およびその周囲の壁部と導電部材との干渉を避ける弧状部である。
【0091】
DCバスバLN24およびDCバスバLN72が円弧形状を有するように形成されているのは、モータハウジング510の内部空間510aに張り出すデファレンシャルギアDFや、内部空間510a内を挿通するドライブシャフトSとの干渉を避けるためである。即ち、モータハウジング510の内部空間510aでは、デファレンシャルギアDFやドライブシャフトSとの干渉を避けながら、DCバスバLN21~LN24,LN71,LN72が配策されている。
【0092】
7.効果
本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、DCコネクタ(電源接続部)CN1とインバータ(電力変換装置)100の平滑部(回路部)107との間を接続するDCバスバ(導電部材)LN2がモータハウジング(駆動装置ハウジング)510の内部空間510aを配策されているので、車両衝突時においてもモータハウジング510でDCバスバLN2が保護される。よって、車両衝突時などにおいても、DCバスバLN2が損傷するのが抑制される。よって、DCバスバLN2のような導電部材をモータハウジング510の外側に設ける場合に比べて、導電部材が衝突時に周辺部材や車体に衝突して損傷することを防ぐために、導電部材の変位を許容する空間、または導電部材用のプロテクタを配置するための空間を確保する必要がなくなる。
【0093】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、インバータハウジング101内において、DCバスバ(回路配線)LN4にフェライトコア(ノイズフィルタ部品)1061が介挿されているとともに、Yコンデンサ1062が接続されているので、インバータ100のパワーモジュール部108等で発生するノイズがDCバスバLN4におけるフェライトコア1061が介挿された部分よりもDCコネクタCN1側、およびDCコネクタCN1に接続される電力線ハーネスLN1へと漏出するのが防がれる(EMI対策)。また、仮に電力線ハーネスLN1に他の機器からのノイズがのった(重畳した)場合においても、当該ノイズがインバータ100の駆動に干渉するのが防がれる(EMS対策)。
【0094】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、モータハウジング510およびインバータハウジング101がともに導電性材料で構成され、それらの内方にDCバスバLN4およびDCバスバLN2が収容されている。このため、DCバスバLN4におけるフェライトコア1061が介挿された部分よりも平滑部107側からインバータハウジング101外にノイズが漏出したり、モータハウジング510やインバータハウジング101の外方から内方へとノイズが侵入したりするが防がれる。これより、EMS対策がなされる。
【0095】
モータMは、回転軸の軸芯方向から見る場合に円形のステータ513およびロータを有する。このため、モータハウジング510の内部空間510aにおけるモータMの収容領域は円柱形状の領域となる。車両VのパワートレインPTでは、モータハウジング510の内部空間510aにおけるモータMの収容領域の形状に鑑み、モータMの収容領域に対して干渉しない部分に窪み部512aを設け、当該窪み部512aにインバータハウジング101(ハウジング本体部102)の下方突出部102aが侵入するように構成されている。これより、車両VのパワートレインPTに採用される構造では、モータハウジング510およびインバータハウジング101の大型化を抑制して、車両衝突時におけるパワートレインPTおよびその周辺部の損傷を抑制することができる。また、モータハウジング510およびインバータハウジング101の大型化を抑制することで、車両Vの設計における高い自由度を確保することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、DCバスバLN2を構成するDCバスバLN24が円弧形状の部分を有するので、デファレンシャルギアDFやドライブシャフトSとその周囲の壁部とDCバスバLN2との干渉を避けつつ、可能な限り、DCバスバLN2とデファレンシャルギアDFやドライブシャフトSとの間の隙間を小さく抑えることができる。よって、車両VのパワートレインPTでは、モータハウジング510の大型化を抑制することができ、車両衝突時におけるモータハウジング510や周辺部の損傷を抑制し、設計における高い自由度を確保することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、フェライトコア1061の筒軸を上下方向に配することにより、インバータハウジング101におけるフェライトコア1061が収容された部分(下方突出部102a)の前後方向および車幅方向への膨出を抑制することができる。これより、インバータハウジング101およびモータハウジング510を平面視する場合に、インバータハウジング101がモータハウジング510の外形ラインからはみ出さないようにすることが可能となる。よって、車両衝突時においても、フェライトコア1061の筒内を挿通するDCバスバLN4の挿通部分LN41が損傷するのが抑制され、高い安全性を確保するのに優位である。
【0098】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造は、DCバスバLN4における挿通部分LN41と延伸部分LNN42との接続箇所PT1,PT2がフェライトコア1061の上方に配置されている。このため、車両VのパワートレインPTでは、DCバスバLN4における挿通部分LN41と延伸部分LN42との接続箇所PT1,PT2をフェライトコア1061の上方領域から前後方向や車幅方向に外れた箇所(外側)に配置する場合に比べて、インバータハウジング101における前後方向および車幅方向でのサイズが大型化するのを抑制することができる。よって、インバータハウジング101におけるフェライトコア1061が収容された部分(下方突出部102a)の前後方向および車幅方向への膨出を抑制することができ、車両衝突時にインバータハウジング101が損傷するのを抑制することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、モータMを含む駆動装置およびインバータ100が車両Vの前部に設けられたパワートレインルームR1に搭載されるとともに、DCコネクタCN1がモータハウジング510における第1モータハウジング511の後壁部511aに配設されている。このため、車両VのパワートレインPTでは、車両Vが前突し、車両VのパワートレインルームR1におけるモータMおよびインバータ100が配置された部分に障害物が進入してきた場合においても、当該障害物やそれに押されて後方に移動する車両Vの部材などによってDCコネクタCN1が損傷するのが抑制される。即ち、モータMを収容するモータハウジング510は、比較的高い剛性を有するので、前突時においてDCコネクタCN1を保護する保護部材として機能することになる。
【0100】
また、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、DCバスバLN2から分岐されるDCバスバ(補機配線)LN7がモータハウジング510の内部空間510aに収容されているので、車両衝突時においてDCバスバLN7も保護される。よって、DCバスバLN2から分岐したDCバスバLN7により電動コンプレッサ(補機)Cに電力供給を可能としつつ、車両衝突時における高い安全性を確保するのに優位である。
【0101】
以上説明のように、本実施形態に係る車両VのパワートレインPTに採用される構造では、車両衝突時における安全性を確保することができる。
【0102】
[変形例]
上記実施形態では、モータハウジング510とインバータハウジング101とが別体であって、互いに密に接合されてなる構成が採用されることとしたが、本発明では、モータハウジング510を含む駆動装置ハウジングとインバータハウジング101とが一体である構成を採用することも可能である。即ち、本発明では、変換装置ハウジングが駆動装置ハウジングと別体で設けられておらず、駆動装置ハウジングの一部が外方に膨出された部分を有するとっともに、当該膨出された部分の内方に電力変換装置の構成(回路部)が収容されてなる構成を採用することとしてもよい。この場合に、電力変換装置の回路部が、駆動装置ハウジング内の空間において、密集配置されていることは必ずしも必要なく、ハウジング内の空間において分散配置されてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、電力変換装置の一例としてインバータ100を採用することとしたが、本発明では、電力変換装置としてインバータ以外の装置を採用することも可能である。例えば、電力変換装置としてDC-DCコンバータを採用することなども可能である。
【0104】
また、上記実施形態では、インバータ100とDCコネクタCN1とを接続する導電部材としてバスバLN2を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、被覆線を採用することも可能である。
【0105】
また、上記実施形態では、電力線ハーネスLN1の接続先としてDCコネクタCN1を採用することとしたが、本発明では、これに限定を受けるものではない。例えば、電力線ハーネスの先端部分と導電部材の先端部分とにそれぞれ端子を接続しておき、端子同士をボルトとナットなどで接合することとしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、モータハウジング510の内部空間510aにデファレンシャルギアDFが張り出し、ドライブシャフトSが通過する構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。デファレンシャルギアはモータハウジング510側に張り出していなくてもよいし、ドライブシャフトは内部空間510aを通過しなくてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、バッテリ200が車室R2の床下に搭載されてなる構成を採用したが、本発明は、バッテリの配置について、これに限定を受けるものではない。例えば、パワートレインルームにバッテリを搭載してもよいし、車室よりも後方の荷室の床下にバッテリを搭載してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、モータハウジング510およびインバータハウジング101が導電性材料から形成されることとしたが、本発明は、これに限定を受けない。例えば、ハウジング自体は導電性を有さない材料から構成しておき、周囲を電磁的にシールドすることとしてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、ノイズフィルタ部品の一例としてフェライトコア1061およびYコンデンサ1062を採用することとしたが、本発明では、フェライトコア以外のノイズフィルタ部品を採用することも可能である。例えば、チョークコイルなどをノイズフィルタ部品として採用することも可能である。
【0110】
また、上記実施形態では、モータハウジング510に窪み部512aを設け、インバータハウジング101に下方突出部102aを設けることとしたが、本発明では、窪み部や下方突出部を設けることは必ずしも必要ではない。
【0111】
また、上記実施形態では、補機としてエアーコンディショナの電動コンプレッサCを一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、パワートレインPTを冷却するための冷媒を循環させる冷媒ポンプを補機とすることも可能である。
【0112】
また、上記実施形態では、DCバスバLN4における挿通部分LN41と延伸部分LN42との接続箇所PT1,PT2をフェライトコア1061の上方に配置することとしたが、本発明では、挿通部分と延伸部分との接続箇所をフェライトコアの上方から前後方向や車幅方向にずれた外側に配置することも可能である。
【0113】
また、上記実施形態では、DCバスバLN4の挿通部分Ln41について、正負両極のバスバを樹脂モールド1063で被覆することとしたが、本発明では、樹脂モールドでの被覆は必ずしも必要ない。
【0114】
また、上記実施形態では、パワートレインPTにエンジンEを含むこととしたが、本発明では、必ずしもパワートレインにエンジンを含んでいなくてもよい。即ち、本発明では、車両の走行用の駆動源としてモータのみを備える電気自動車(BEV)に上記のパワートレインPTの構造を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0115】
100 インバータ(電力変換装置)
101 インバータハウジング(変換装置ハウジング)
102a 下方突出部
106 DC入出力部
107 平滑部(回路部)
108 パワーモジュール部(回路部)
200 バッテリ
510 モータハウジング(駆動装置ハウジング)
510a 窪み部
510b 後壁部(周壁部)
1061 フェライトコア(ノイズフィルタ部品)
1062 Yコンデンサ(ノイズフィルタ部品)
BR1,BR2 分岐部
C 電動コンプレッサ(補機)
CN1 DCコネクタ(電源接続部)
DF デファレンシャルギア
LN1 電力線ハーネス
LN2 DCバスバ(導電部材)
LN3 補機配線ハーネス
LN4 DCバスバ(回路配線)
S ドライブシャフト(出力軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8