(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152476
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】シートカバーの固定方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20251002BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20251002BHJP
B68G 7/06 20060101ALI20251002BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
A47C27/14 A
B60N2/58
B68G7/06 A
B29C39/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054390
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】折戸 洋之
【テーマコード(参考)】
3B087
3B096
4F204
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B096AD07
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD05
4F204AD08
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH26
4F204AR07
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
(57)【要約】
【課題】シートパッドにシートカバーを取り付ける作業を簡略化することができるシートカバーの固定方法を得る。
【解決手段】シートバックカバー18に設けられた溝部18Aに下型28の固定面28Aに設けられた突条部28A1が係止されるようにシートバックカバー18を固定面28Aに対して固定し、下型28と型合わせ可能とされた上型30の固定面に対して下型28と上型30との型合わせ方向から見てシートバックパッド16におけるシートバックカバー18の取付面16Aに設けられた溝部16Bが突条部28A1と重なるようにシートバックパッド16を固定し、上型30と下型28とを型合わせしてシートバックカバー18とシートバックパッド16とが密着した状態でシートバックパッド16に設けられると共に溝部16Bと連通された貫通部24に上型30側から挿入された注入ノズル32から発泡原液を溝部16Bに注入する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートカバーに設けられた第1溝部に下型の第1固定面に設けられた突条部が係止されるように当該シートカバーを当該第1固定面に対して固定し、
前記下型と型合わせ可能とされた上型の第2固定面に対して当該下型と当該上型との型合わせ方向から見てシートパッドにおける前記シートカバーの取付面に設けられた第2溝部が前記突条部と重なるように当該シートパッドを固定し、
前記上型と前記下型とを型合わせして前記シートカバーと前記シートパッドとが密着した状態で当該シートパッドに設けられると共に前記第2溝部と連通された貫通部に当該上型側から挿入された注入ノズルから発泡原液を当該第2溝部に注入する、
シートカバーの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートカバーの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートの製造方法に関する発明が開示されている。この車両用シートの製造方法では、モールドパッド(シートパッド)に設けられた溝内に接着剤を付加して、この溝内にトリムカバー(シートカバー)を押し込み、モールドパッドのトリムカバーで覆う反対面からモールドパッドに蒸気ノズルを挿入して、蒸気ノズルからの加熱によって溝内の接着剤を溶融させて溝にトリムカバーを接着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術による場合、作業者が特殊な治具を用いてトリムカバーの一部をモールドパッドの溝に押し込む必要がある。このため、シートパッドにトリムカバーを取り付ける作業が煩雑なものとなることが考えられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートパッドにシートカバーを取り付ける作業を簡略化することができるシートカバーの固定方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るシートカバーの固定方法は、シートカバーに設けられた第1溝部に下型の第1固定面に設けられた突条部が係止されるように当該シートカバーを当該第1固定面に対して固定し、前記下型と型合わせ可能とされた上型の第2固定面に対し当該下型と当該上型との型合わせ方向から見てシートパッドにおける前記シートカバーの取付面に設けられた第2溝部が前記突条部と重なるように当該シートパッドを固定し、前記上型と前記下型とを型合わせして前記シートカバーと前記シートパッドとが密着した状態で当該シートパッドに設けられると共に前記第2溝部と連通された貫通部に当該上型側から挿入された注入ノズルから発泡原液を当該第2溝部に注入する。
【0007】
第1の態様に係るシートカバーの固定方法によれば、シートカバーに設けられた第1溝部に下型の第1固定面に設けられた突条部が係止されるように、シートカバーを第1固定面に対して固定する。また、下型と型合わせ可能とされた上型の第2固定面に対して、下型と上型との型合わせ方向から見てシートパッドにおけるシートカバーの取付面に設けられた第2溝部が第1固定面の突条部と重なるように、シートパッドを固定する。
【0008】
ところで、シートカバーとシートパッドとを固定するには、シートパッドの第2溝部に接着剤を流し込み、シートカバーの第1溝部を第2溝部側に押し込んでシートカバーとシートパッドとを接着するような方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、このような方法を採用すると、作業者が特殊な治具を用いてシートカバーの第1溝部をシートパッドの第2溝部に押し込む必要があり、シートパッドにシートカバーを取り付ける作業が煩雑なものとなることが考えられる。
【0010】
ここで、本態様では、上型と下型とを型合わせしてシートカバーとシートパッドとが密着した状態で、シートパッドに設けられると共に第2溝部と連通された貫通部に上型側から挿入された注入ノズルから発泡原液を第2溝部に注入する。
【0011】
その結果、第2溝部に注入された発泡原液が膨張することで、第2溝部内が発泡体で充填されると共に、この発泡体で第2溝部とシートカバーの第1溝部とが接着され、ひいては、シートパッドとシートカバーとが接着される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係るシートカバーの固定方法は、シートパッドにシートカバーを取り付ける作業を簡略化することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るシートカバーの固定方法によって製造されたシートの構成を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るシートカバーの固定方法に用いられる固定装置、シートカバー及びシートパッドの関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1及び
図2を用いて、本発明に係るシートカバーの固定方法の実施形態の一例について説明する。まず、
図1を用いて、本実施形態に係るシートカバーの固定方法を用いて製造される車両用シート10(以下、シート10と称する)の構成について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRはシート10の前方向を、矢印UPはシート10の上方向を、矢印LHはシート10の左方向をそれぞれ示している。
【0015】
シート10は、乗員の背部を支持するシートバック12と、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14とを備えている。
【0016】
シートバック12は、
図2にも示されるように、その主な部分を構成すると共にポリウレタンフォームで構成されたシートパッドとしての「シートバックパッド16」と、シートバックパッド16を被覆するシートカバーとしての「シートバックカバー18」とを備えている。
【0017】
詳しくは、シートバックカバー18には、シート後側に凹む第1溝部としての「溝部18A」が設けられている。一方、シートバックパッド16には、シートバックカバー18の「取付面16A」に、シート前後方向から見て溝部18Aと重なると共にシート後側に凹む第2溝部としての「溝部16B」が設けられている。
【0018】
そして、溝部18Aと溝部16Bとの間には、ポリウレタンフォームで構成された接合部20が介在しており、接合部20によってシートバックカバー18がシートバックパッド16に対して固定されている。
【0019】
また、シートバックパッド16には、溝部16Bと連通しかつシート前後方向に貫通された「貫通部24」が形成されている。
【0020】
一方、シートクッション14は、その主な部分を構成すると共にポリウレタンフォームで構成された図示しないシートパッドとしてのシートクッションパッドと、シートクッションパッドを被覆するシートカバーとしての「シートクッションカバー22」とを備えている。なお、シートクッション14は、基本的にシートバック12と同様の構成とされており、シートクッションカバー22は、ポリウレタンフォームで構成された接合部23を介してシートクッションパッドに固定されている。
【0021】
次に、本実施形態に係るシートカバーの固定方法に用いられる固定装置26(以下、装置26と称する)の構成について説明する。また、以下では、装置26が、シートバックパッド16とシートバックカバー18との固定に用いられることを前提として説明を続けることとする。
【0022】
装置26は、
図2に示されるように、シートバックカバー18を固定可能な「下型28」と、シートバックパッド16を固定可能な「上型30」と、複数の「注入ノズル32」とを備えている。
【0023】
下型28は、シートバックカバー18が固定される第1固定面としての「固定面28A」を備えており、この固定面28Aには、シートバックカバー18の溝部18Aと同形状とされると共に溝部18Aに係止可能な「突条部28A1」が形成されている。
【0024】
一方、上型30は、装置26の高さ方向(以下、装置高さ方向と称する)に下型28と型合わせ可能とされており、シートバックパッド16が固定される第2固定面としての「固定面30A」を備えている。なお、装置高さ方向は、
図2においてZ方向で示されている。
【0025】
また、固定面30Aにおける装置高さ方向から見て突条部28A1と重なる複数箇所には、注入ノズル32が配置されている。この注入ノズル32は、固定面30Aから装置高さ方向下側に延出されると共に、シートバックパッド16の貫通部24に挿入可能とされている。なお、注入ノズル32からは、発泡原液が吐出されるようになっている。
【0026】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0027】
以下、シートバックパッド16とシートバックカバー18との固定を例に挙げて、本実施形態に係る装置26によるシートカバーの固定方法について説明する。本実施形態に係るシートカバーの固定方法では、
図2に示されるように、まず、シートバックカバー18に設けられた溝部18Aに下型28の固定面28Aに設けられた突条部28A1が係止されるように、シートバックカバー18を固定面28Aに対して固定する。
【0028】
次に、下型28と型合わせ可能とされた上型30の固定面30Aに対して、装置高さ方向から見てシートバックパッド16におけるシートバックカバー18の取付面16Aに設けられた溝部16Bが、固定面28Aの突条部28A1と重なるように、シートバックパッド16を固定する。
【0029】
そして、上型30と下型28とを型合わせしてシートバックカバー18とシートバックパッド16とが密着した状態で、シートバックパッド16に設けられると共に溝部16Bと連通された貫通部24に上型30側から挿入された注入ノズル32から発泡原液を溝部16Bに注入する。
【0030】
その結果、溝部16Bに注入された発泡原液が膨張することで、溝部16B内が発泡体で充填されると共に、この発泡体で溝部16Bとシートバックカバー18の溝部18Aとが接着され、ひいては、シートバックパッド16とシートバックカバー18とが接着される。
【0031】
以上、説明したように、本実施形態に係るシートカバーの固定方法は、シートバックパッド16にシートバックカバー18を取り付ける作業を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0032】
16 シートバックパッド(シートパッド)
16A 取付面
16B 溝部(第2溝部)
18 シートバックカバー(シートカバー)
18A 溝部(第1溝部)
22 シートクッションカバー(シートカバー)
24 貫通部
28 下型
28A 固定面(第1固定面)
28A1 突条部
30 上型
30A 固定面(第2固定面)
32 注入ノズル