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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015248
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20250123BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20250123BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20250123BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20250123BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20250123BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
E03F5/22
F04D15/00 H
F04B49/06 311
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118539
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森下 力
(72)【発明者】
【氏名】本宮 靖識
【テーマコード(参考)】
2D063
3H020
3H145
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2D063AA07
2D063DC06
3H020AA05
3H020BA08
3H020CA07
3H020DA01
3H020DA22
3H020EA04
3H020EA12
3H145AA06
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA25
3H145CA14
3H145CA16
3H145DA01
3H145DA32
3H145DA47
3H145EA04
3H145EA15
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】適切な排水ポンプの運転計画を案内することが可能な運転支援システムを提供する。
【解決手段】支川K2の水を、支川K2が合流する本川K1へ排出可能な排水機場1の排水ポンプ3の運転を支援する運転支援システム10であって、支川K2の水位である内水位を予測する水位予測処理を実行すると共に、当該予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて排水ポンプ3の運転計画を作成する水位予測部22と、運転計画を通知する通知部23と、を具備し、稼働に関する通知には、排水ポンプ3の起動台数及び起動タイミングの少なくとも一方が含まれる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の河川の水を、前記第1の河川が合流する第2の河川へ排出可能な排水機場の排水ポンプの運転を支援する運転支援システムであって、
前記第1の河川の水位である内水位を予測する水位予測処理を実行すると共に、前記水位予測処理の予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて前記排水ポンプの運転計画を作成する演算部と、
前記運転計画を通知する通知部と、
を具備する、
運転支援システム。
【請求項2】
前記運転計画には、
前記排水ポンプの起動台数及び起動タイミングの少なくとも一方が含まれる、
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記水位予測処理には、
前記内水位が第1の水位まで上昇すると、複数の前記排水ポンプのうち、1台以上の第1排水ポンプを起動し、前記内水位が前記第1の水位よりも高い第2の水位まで上昇すると、複数の前記排水ポンプのうち、1台以上の第2排水ポンプを起動する第1運転を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第1水位予測処理が含まれる、
請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記水位予測処理には、
前記第1排水ポンプの起動台数を、前記第1運転よりも増やした第2運転を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第2水位予測処理が含まれ、
前記演算部は、
前記第1水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記第2水位予測処理の結果における前記上昇速度に基づいて前記排水ポンプの起動台数を算出する、
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記演算部は、
前記第2水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記排水ポンプの起動タイミングを前記第2運転よりも早めた運転計画を作成する、
請求項4に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記水位予測処理には、
前記排水ポンプの起動タイミングを前記第1運転よりも早めた第3運転を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第3水位予測処理が含まれ、
前記演算部は、
前記第1水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記第3水位予測処理の結果における前記上昇速度に基づいて前記排水ポンプの起動タイミングを算出する、
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記演算部は、
前記第3水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記第1排水ポンプの起動台数を増やした運転計画を作成する、
請求項6に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記起動タイミングは、
前記第1の水位又は前記第2の水位の少なくとも一方を所定値下げる第1設定変更、又は、前記内水位が前記第1の水位まで上昇した時間から所定時間早めた時間を前記排水ポンプの起動時間とする第2設定変更の少なくともいずれかにより、早められる、
請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記演算部は、
前記第1水位予測処理の予測結果のうち、前記内水位が前記第1の水位まで上昇した後の時間帯を対象として、前記上昇速度を算出する、
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記演算部は、
前記第2の河川の水位を予測可能であると共に、当該予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて、前記第2の河川と前記第1の河川との間に設けられるゲートの開閉計画を作成し、
前記通知部は、
前記開閉計画を通知する、
前記通知部は、
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項11】
前記運転計画に沿って前記排水ポンプを制御する制御部をさらに具備する、
請求項1に記載の運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水機場の排水ポンプの運転を支援するための運転支援システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水機場の排水ポンプの運転を支援するための運転支援システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のコンピュータシステムは、雨水を雨水排出施設へと集める管渠の水位等に基づいて、管渠の水を排出する雨水ポンプの運転台数を算出する。またコンピュータシステムは、当該算出結果を出力する。操作者は、コンピュータシステムから出力された内容をベースにして雨水ポンプの運転計画(起動時間等)を決定することができる。このようにしてコンピュータシステムは、雨水ポンプの運転を支援することができる。
【0004】
しかし、近年の異常気象(ゲリラ豪雨等)の影響で、管渠の水位に基づいて雨水ポンプの運転台数を算出したとしても、管渠の排水が間に合わないことが懸念される。そこで、適切なポンプの運転計画を案内可能な技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2864818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、適切な排水ポンプの運転計画を案内することが可能な運転支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、第1の河川の水を、前記第1の河川が合流する第2の河川へ排出可能な排水機場の排水ポンプの運転を支援する運転支援システムであって、前記第1の河川の水位である内水位を予測する水位予測処理を実行すると共に、前記水位予測処理の予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて前記排水ポンプの運転計画を作成する演算部と、前記運転計画を通知する通知部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、適切な排水ポンプの運転計画を案内することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記運転計画には、前記排水ポンプの起動台数及び起動タイミングの少なくとも一方が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、排水ポンプの適切な起動台数や起動タイミングを案内することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記水位予測処理には、前記内水位が第1の水位まで上昇すると、複数の前記排水ポンプのうち、1台以上の第1排水ポンプを起動し、前記内水位が前記第1の水位よりも高い第2の水位まで上昇すると、複数の前記排水ポンプのうち、1台以上の第2排水ポンプを起動する第1運転を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第1水位予測処理が含まれるものである。
本開示の一態様によれば、第1運転を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプの運転計画を案内することができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記水位予測処理には、前記第1排水ポンプの起動台数を、前記第1運転よりも増やした第2運転を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第2水位予測処理が含まれ、前記演算部は、前記第1水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記第2水位予測処理の結果における前記上昇速度に基づいて前記排水ポンプの起動台数を算出するものである。
本開示の一態様によれば、第2運転を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプの起動台数を案内することができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記演算部は、前記第2水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記排水ポンプの起動タイミングを前記第2運転よりも早めた運転計画を作成するものである。
本開示の一態様によれば、より適切な排水ポンプの起動タイミングを案内することができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記水位予測処理には、前記排水ポンプの起動タイミングを前記第1運転よりも早めた第3運転を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第3水位予測処理が含まれ、前記演算部は、前記第1水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記第3水位予測処理の結果における前記上昇速度に基づいて前記排水ポンプの起動タイミングを算出するものである。
本開示の一態様によれば、第3運転を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプの起動タイミングを案内することができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記演算部は、前記第3水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記第1排水ポンプの起動台数を増やした運転計画を作成するものである。
本開示の一態様によれば、第3運転を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプの起動台数を案内することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記起動タイミングは、前記第1の水位又は前記第2の水位の少なくとも一方を所定値下げる第1設定変更、又は、前記内水位が前記第1の水位まで上昇した時間から所定時間早めた時間を前記排水ポンプの起動時間とする第2設定変更の少なくともいずれかにより、早められるものである。
本開示の一態様によれば、排水ポンプの起動タイミングを簡単に早めることができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記演算部は、前記第1水位予測処理の予測結果のうち、前記内水位が前記第1の水位まで上昇した後の時間帯を対象として、前記上昇速度を算出するものである。
本開示の一態様によれば、より適切な排水ポンプの運転計画を案内することができる。
【0017】
本開示の一態様においては、前記演算部は、前記第2の河川の水位を予測可能であると共に、当該予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて、前記第2の河川と前記第1の河川との間に設けられるゲートの開閉計画を作成し、前記通知部は、前記開閉計画を通知するものである。
本開示の一態様によれば、適切なゲートの開閉タイミングを案内することができる。
【0018】
本開示の一態様においては、前記運転計画に沿って前記排水ポンプを制御する制御部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、操作者の作業負担を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一態様によれば、適切な排水ポンプの運転計画を案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本川、支川及び排水機場を示した模式図。
図2】本発明の第一実施形態に係る運転支援システムを示したブロック図。
図3】情報表示画面を示した図。
図4】水位の予測結果を示した図。
図5】設定変更画面を示した図。
図6】運転判断処理を示したフローチャート。
図7】水位が急上昇する場合の水位の予測結果を示した図。
図8】排水ポンプが4台同時起動される場合の水位の予測結果を示した図。
図9】追加判断処理を示したフローチャート。
図10】排水ポンプの起動タイミングが早められた場合の水位の予測結果を示した図。
図11】第二実施形態に係る運転判断処理を示したフローチャート。
図12】第二実施形態において、排水ポンプの起動タイミングが早められた場合の水位の予測結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の第一実施形態に係る運転支援システム10について説明する。
【0022】
運転支援システム10は、排水機場1の排水ポンプ3の運転を支援するためのものである。まず排水機場1について説明する。
【0023】
図1に示すように、本川K1には支川K2が合流している。大雨等によって本川K1の水位が上昇した場合、本川K1から支川K2へと水が逆流したり、支川K2が氾濫したりするおそれがある。排水機場1は、本川K1と支川K2との合流部分に設置され、支川K2流域における水害の発生を防止するためのものである。排水機場1は、水路を介して支川K2の水が本川K1へ流入可能に構成される。排水機場1は、ゲート2及び複数の排水ポンプ3を具備する。
【0024】
ゲート2は、本川K1と支川K2との間での水の流通状態を切り替えるためのものである。ゲート2は、支川K2の下流側(本川K1側)に設けられる。ゲート2は、開閉可能に構成される。ゲート2は、大雨等によって本川K1の水位(以下、「外水位」と称する)が上昇した場合に閉じられる。これによって本川K1から支川K2への水の逆流を防止することができる。
【0025】
複数の排水ポンプ3は、支川K2から排水機場1内へ流入した水を汲み上げて本川K1へ排出するためのものである。複数の排水ポンプ3は、それぞれ独立して稼働することができる。排水機場1は、ゲート2が閉じられた状態で排水ポンプ3が稼働することにより、本川K1から支川K2への水の逆流を防止すると共に、支川K2側の水を本川K1側へ強制的に排出させることで内水位の上昇を抑制することができる。
【0026】
なお本実施形態では、排水ポンプ3の台数は4台であるものとしているが、排水ポンプ3の台数は、特に限定されるものではない。また本実施形態では、排水機場1のゲート2及び排水ポンプ3が操作員によって手動で操作されるものとしている。
【0027】
次に、排水ポンプ3の基本的な運転計画について説明する。排水ポンプ3は、基本的には、内水位の上昇に伴って1台ずつ順番に起動される。より詳細には、内水位が第1閾値まで上昇すると1台目の排水ポンプ3が起動される。また、内水位が第1閾値よりも大きい第2閾値まで上昇すると2台目の排水ポンプ3が起動される。3台目及び4台目の排水ポンプ3についても、1台目及び2台目と同様に、内水位と閾値との比較により順番に起動される。また排水ポンプ3は、内水位の下降に伴って、1台ずつ順番に停止される。
【0028】
本実施形態では、上述したような排水ポンプ3の基本的な運転を、「基本運転」と称する。なお基本運転により排水ポンプ3が操作される場合、ゲート2が閉じられてから速やかに1台目の排水ポンプ3が起動されるように、第1閾値が適宜設定されている。
【0029】
以下では、基本運転で1台目の排水ポンプ3が起動される際の内水位(第1閾値)を「1台目起動水位」と称する。また2台目の排水ポンプ3が起動される際の内水位を「2台目起動水位」と称する。また3台目及び4台目の排水ポンプ3が起動される際の内水位についても同様に、「3台目起動水位」及び「4台目起動水位」と称する。
【0030】
ここで近年の異常気象(例えばゲリラ豪雨等)の影響で、基本運転に従って排水ポンプ3を操作したとしても、排水ポンプ3での排水が追い付かないことが懸念されている。また、操作員の経験や勘によって排水が追い付くように排水ポンプ3を操作する場合、操作員の作業負担が増大してしまう。
【0031】
本実施形態の運転支援システム10は、気象状況に応じて基本運転とは異なる運転で排水ポンプ3を操作するように、操作員に通知する。例えば運転支援システム10は、ゲリラ豪雨等の影響で水位の急上昇が予測される場合に、ゲート2を閉じてから基本運転よりも早いタイミングで複数台同時に排水ポンプ3を起動するように、操作員に通知する。これによって排水ポンプ3の適切な操作と、操作員の作業負担の低減との両立を図ることができる。
【0032】
次に図2を参照し、運転支援システム10の構成について説明する。運転支援システム10は、運転支援サーバ20及び操作員端末30を具備する。
【0033】
運転支援サーバ20は、外部の機器からの要求に応じて適宜処理を行うものである。本実施形態の運転支援サーバ20は、クラウドサーバ上に構築された仮想サーバにより構成される。運転支援サーバ20は、取得部21、水位予測部22及び通知部23を具備する。
【0034】
取得部21は、外部の機器と通信することで、各種情報を取得するためのものである。本実施形態では、取得部21は、インターネット回線を介して気象情報提供サーバS1及び水位情報提供サーバS2と通信可能に構成される。なお取得部21が気象情報提供サーバS1等と通信する方法は、特に限定されるものではなく、専用回線又は閉域網(VPN等)により、気象情報提供サーバS1等と適宜通信可能である。
【0035】
気象情報提供サーバS1は、雨量データを提供可能に構成される。なお雨量データは、現在から所定時間後までの単位時間毎の予測雨量を示すものである。取得部21は、気象情報提供サーバS1と通信することで、降雨により外水位及び内水位に影響を与えると考えられる地域の雨量データを取得することができる。
【0036】
水位情報提供サーバS2は、河川の水位(例えば、水位観測局での水位の観測結果)を提供可能に構成される。取得部21は、水位情報提供サーバS2と通信することで、外水位及び内水位を適宜取得することができる。例えば取得部21は、外水位等を10分毎に取得することができる。
【0037】
水位予測部22は、外水位及び内水位を予測するためのものである。水位予測部22は、外水位及び内水位の変化に関係する各種情報を用いて適宜計算処理を行うことにより、現在から所定時間後までの単位時間毎の外水位及び内水位を予測することができる。本実施形態では、水位予測部22は、外水位、内水位、雨量データ、標高等のパラメータをRRIモデル(降雨流出氾濫モデル)に入力することにより、外水位及び内水位を予測可能に構成される。
【0038】
なおRRIモデルに入力される外水位及び内水位は、現在(最新)の外水位及び内水位であり、取得部21により取得される。またRRIモデルに入力される雨量データは、降雨により外水位及び内水位に影響を与えると考えられる地域の雨量データであり、取得部21により取得される。またRRIモデルに入力される標高は、本川K1及び支川K2を含む地域を区画したメッシュ毎の標高であり、運転支援システム10に予め登録されている。なお、上述したRRIモデルに入力されるパラメータは一例であり、特に限定されるものではない。
【0039】
また水位予測部22は、ゲート2の開閉状態及び排水ポンプ3の稼働状態を考慮して、水位を予測可能に構成される。例えば水位予測部22は、ゲート2が閉じられると予測される時間帯については、本川K1と支川K2との間での水の流通がないものとして外水位及び内水位を予測する。また水位予測部22は、排水ポンプ3が稼働されると予測される時間帯については、当該排水ポンプ3の吐出量を考慮して外水位及び内水位を予測する。これによって水位予測部22は、例えば、基本運転に従って排水ポンプ3が操作された場合の外水位及び内水位を予測することができる。
【0040】
なお、水位を予測する方法は、RRIモデルに限定されるものではなく、RRIモデルとは異なる方法により水位を予測することも可能である。
【0041】
通知部23は、外部の機器に各種情報を通知するためのものである。本実施形態では、通知部23は、インターネット回線を介して操作員端末30と通信可能に構成される。通知部23は、操作員端末30と通信することで、操作員端末30にWEBコンテンツを提供することができる。
【0042】
操作員端末30は、操作員が使用する通信可能な機器である。操作員端末30としては、例えば、ノートパソコン、デスクトップパソコン、スマートフォン、タブレット等を用いることが可能である。操作員端末30は、各種情報を入力可能な入力装置(キーボード、タッチパネル等)、各種情報を表示可能な表示装置(ディスプレイ、タッチパネル等)、記憶装置(RAM等)、演算処理装置(CPU等)等を具備する。操作員端末30には予めWEBコンテンツを表示可能なアプリ(ブラウザ等)がインストールされており、通知部23から提供されるWEBコンテンツを表示装置で表示可能に構成される。
【0043】
以下では、図3から図5を参照し、運転支援サーバ20から操作員端末30に提供されるWEBコンテンツの一例について説明する。図3及び図5に示すように、WEBコンテンツには、情報表示画面40及び設定画面50が含まれる。
【0044】
図3に示す情報表示画面40は、各種情報を表示するためのものである。情報表示画面40には、本川K1、支川K2、ゲート2及び排水ポンプ3等が模式的に表示される。また情報表示画面40には、水位、ゲート2及び排水ポンプ3の情報が状況表示部41及び予測結果表示部42に表示される。
【0045】
状況表示部41は、ゲート2の開閉状態を表示する部分である。予測結果表示部42は、水位予測部22による外水位等の予測結果を表示する部分である。水位予測部22による水位の予測では、外水位及び内水位が予測され、当該水位の高さに応じてゲート2及び排水ポンプ3を動作させたと仮定して、所定時間後までの水位が算出される。予測結果表示部42には、当該算出結果(予測結果)を表示する部分として、水位表示部42a及び運転状況表示部42bが含まれる。
【0046】
水位表示部42aには、外水位及び内水位の予測結果を示すグラフ、所定時間後(図3では1時間後、2時間後等)の水位の一覧等が表示される。予測結果のグラフは、図4に示すように、縦軸に水位、横軸に時間をとったグラフである。予測結果のグラフには、現在の時間が強調して表示される(図4に示す直線L参照)。また予測結果のグラフには、過去の外水位及び内水位の実測値がプロットされる。また予測結果のグラフには、現在から所定時間(図4では6時間)後までの外水位及び内水位の予測結果が示される。
【0047】
また予測結果のグラフには、水位の予測においてゲート2を閉じたと仮定した時間、排水ポンプ3を起動させたと仮定した時間が表示される。具体的には、前記時間が予測結果のグラフにプロットされる。
【0048】
図3に示す運転状況表示部42bは、水位予測部22の水位予測において、起動すると仮定(予測)された排水ポンプ3の情報が表示される。例えば運転状況表示部42bには、水位予測における排水ポンプ3の起動時間が表示される。操作員は、水位表示部42a及び運転状況表示部42bを確認することで、運転支援サーバ20から案内されたゲート2及び排水ポンプ3の運転計画を把握することができる。例えばゲート2を閉じる時間、排水ポンプ3の起動時間、起動台数等を把握することができる。
【0049】
図5に示す設定画面50は、水位予測部22の水位予測で用いられるパラメータ(計算条件)を設定するためのものである。設定画面50では、ゲート2を開閉する条件(「開放水位」、「閉鎖水位」)を設定することができる。
【0050】
また設定画面50では、排水ポンプ3の運転条件を設定することができる。具体的には、排水ポンプ3を起動する条件である1台目起動水位から4台起動目水位(「運転開始水位」)と、排水ポンプ3を停止する条件(「運転停止水位」)と、を設定することができる。また設定画面50では、排水ポンプ3の単位時間当たりの吐出量(「ポンプ排水能力」)を調整可能であれば、排水ポンプ3の単位時間当たりの吐出量を入力することができるようにしてもよい。
【0051】
運転支援サーバ20は、図6に示す運転判断処理を実行することによって、ゲート2及び排水ポンプ3の運転計画を作成(判断)可能に構成される。以下、運転判断処理の内容を説明する。運転判断処理は、適宜のタイミングで実行される。例えば運転判断処理は、水位情報提供サーバS2等から取得部21が情報を取得した場合等に実行される。なお運転判断処理の実行条件は、特に限定されるものではない。
【0052】
運転支援サーバ20は、運転判断処理を実行すると、ステップS10へ移行する。ステップS10において水位予測部22は、外水位及び内水位を予測する。上述の如く、水位予測部22による水位の予測では、外水位及び内水位が予測され、当該水位の高さに応じてゲート2及び排水ポンプ3を動作させたと仮定して、所定時間後までの水位が算出される。ステップS10において水位予測部22は、基本運転に従って排水ポンプ3を動作させたと仮定して(すなわち、排水ポンプ3を1台ずつ順番に起動させると仮定して)、水位の予測を実行する。こうして図4に示すように、内水位の上昇に応じて段階的に排水ポンプ3が起動された場合の、ゲート2を閉じる時間、排水ポンプ3の起動時間、所定時間後までの水位が予測される。図6に示すように、ステップS10の処理が終了すると、水位予測部22は、ステップS20へ移行する。
【0053】
ステップS20において水位予測部22は、ステップS10での外水位の予測結果が、ゲート2を閉じる水位(閉鎖水位)に達する場合(ステップS20:YES)、ステップS30へ移行する。
【0054】
一方水位予測部22は、前記外水位の予測結果が、閉鎖水位に達しない場合(ステップS20:NO)、ステップS30以降の処理は行わない。この状態で図3に示す情報表示画面40が表示された場合、予測結果表示部42には、ゲート2を閉じる時間及び排水ポンプ3の起動時間が表示されることはない。
【0055】
図6に示すステップS30において水位予測部22は、ステップS10での内水位の予測結果が、1台目起動水位に達する場合(ステップS30:YES)、ステップS40へ移行する。
【0056】
一方水位予測部22は、内水位の予測結果が、1台目起動水位に達しない場合(ステップS30:NO)、ステップS40以降の処理は行わない。この状態で図3に示す情報表示画面40が表示された場合、予測結果表示部42には、ゲート2を閉じる時間及び排水ポンプ3の起動時間のうち、ゲート2を閉じる時間のみが表示される。
【0057】
図6に示すステップS40において水位予測部22は、ステップS10での内水位の予測結果(図4のグラフ)において、水位の急な上昇があるか否かを判定する。例えば水位予測部22は、内水位の予測結果における所定期間の水位の上昇速度を算出し、当該算出結果が所定の閾値を超えるか否かを判定する。一例として、本実施形態の所定期間は、10分から1時間の間で適宜設定される。また前記閾値は、基本運転では支川K2の排水が間に合わない程度に大きな速度が適宜設定される。例えば前記閾値は、ゲリラ豪雨発生時の内水位の上昇速度等を想定して設定される。
【0058】
水位予測部22は、内水位の予測結果(図4のグラフ)の中で、時間帯を変更しながら前記上昇速度を算出し、当該算出結果が1つでも前記所定の閾値を超えた場合(ステップS40:YES)、ステップS80へ移行する。一方水位予測部22は、全ての上昇速度の算出結果が前記所定の閾値を超えなかった場合(ステップS40:NO)、ステップS50へ移行する。
【0059】
ステップS50において水位予測部22は、1台目の排水ポンプ3の運転を操作者に案内する。より詳細には水位予測部22は、1台目の排水ポンプ3を起動させる必要があることと、その起動時間とを操作者が把握できるように、通知部23から操作員端末30に情報を送信させる。
【0060】
本実施形態では、通知部23は、図4に示すようなステップS10での予測結果を示すグラフを、図3に示す情報表示画面40に表示させる。当該グラフには、ステップS10での水位予測においてゲート2を閉じると予測(仮定)した時間、1台目の排水ポンプ3を起動させると予測した時間がプロットされている(図4参照)。また通知部23は、情報表示画面40の運転状況表示部42bに排水ポンプ3の起動予測時間を表示させる。図6に示すように、ステップS50の処理が終了すると、水位予測部22は、ステップS60へ移行する。
【0061】
ステップS60において水位予測部22は、ステップS10での内水位の予測結果が、2台目起動水位に達する場合(ステップS60:YES)、ステップS70へ移行する。
【0062】
一方水位予測部22は、内水位の予測結果が、2台目起動水位に達しない場合(ステップS60:NO)、ステップS70以降の処理は行わない。この状態で図3に示す情報表示画面40が表示された場合、予測結果表示部42には、4台の排水ポンプ3のうち、1台目の排水ポンプ3の起動時間のみが表示される。
【0063】
図6に示すステップS70において水位予測部22は、ステップS50の処理と同様に、2台目の排水ポンプ3の運転を操作者に案内する。ステップS70の処理が終了すると、水位予測部22は、ステップS90へ移行する。
【0064】
ステップS40で水位の急な上昇がある場合に移行するステップS80において、水位予測部22は、排水ポンプ3を2台同時に起動するように、排水ポンプ3の運転を操作者に案内する。
【0065】
より詳細には、ステップS10では、内水位の上昇に応じて排水ポンプ3を段階的に起動させる基本運転を行った場合の水位が予測される(図4参照)。基本運転では、短時間に大量の雨が降った場合に内水位が急上昇する可能性があるため、この場合には基本運転よりも多くの水を排出するように、排水ポンプ3を操作することが望ましい。そこでステップS80において水位予測部22は、内水位が2台目起動水位に達する前に、排水ポンプ3を2台同時に起動すると仮定した場合の水位を予測する。具体的には図7に示すように、内水位が1台目起動水位に達した場合に排水ポンプ3を2台同時に起動すると仮定した場合の水位を予測する。
【0066】
以下では、排水ポンプ3を複数台同時に起動する運転を「同時運転」と称する。同時運転によると、内水位が1台目起動水位に達した場合の排水ポンプ3の運転台数を基本運転よりも増やすことができるため、内水位の上昇を抑制することができる。
【0067】
またステップS80において水位予測部22は、上述した同時運転における水位の予測結果を、図3に示す情報表示画面40に表示させる。ステップS80では、このようにして同時運転を行うことが操作員に通知される。図6に示すように、ステップS80の処理が終了すると、水位予測部22は、ステップS90へ移行する。
【0068】
ステップS90において水位予測部22は、直近の内水位の予測結果が、3台目起動水位に達するか否か判定する。なお直近の内水位の予測結果は、ステップS70からステップS90へ移行した場合、ステップS10(基本運転)での予測結果となり、ステップS80からステップS90へ移行した場合、ステップS80(同時運転)での予測結果となる。
【0069】
水位予測部22は、内水位の予測結果が3台目起動水位に達する場合(ステップS90:YES)、ステップS100へ移行する。
【0070】
一方水位予測部22は、内水位の予測結果が3台目起動水位に達しない場合(ステップS90:NO)、ステップS100以降の処理は行わない。この状態で図3に示す情報表示画面40が表示された場合、予測結果表示部42には、4台の排水ポンプ3のうち、2台目までの排水ポンプ3の起動時間が表示される。
【0071】
ステップS100において水位予測部22は、ステップS40と同様の処理により、直近(基本運転又は同時運転)の内水位の予測結果の中で、水位の急な上昇があるか否かを判定する。水位予測部22は、水位の急な上昇があると判定した場合(ステップS100:YES)、ステップS140へ移行する。一方水位予測部22は、水位の急な上昇がないと判定した場合(ステップS100:NO)、ステップS110へ移行する。
【0072】
ステップS110~S130において水位予測部22は、直近(基本運転又は同時運転)での内水位の予測結果が3台目起動水位及び4台目起動水位に達するか否かを判定し、当該判定結果に応じて3台目及び4台目の排水ポンプ3の運転を案内する。なお、水位の判定方法及び運転の案内方法はステップS50~S70と同様である。
【0073】
ステップS140において水位予測部22は、排水ポンプ3を4台同時に起動するように、排水ポンプ3の運転を操作者に案内する。この際水位予測部22は、少なくとも基本運転で4台目の排水ポンプ3を起動させるよりも前の時間に、4台同時に排水ポンプ3を起動すると仮定した場合の水位を予測する。例えば図8に示すように、水位予測部22は、基本運転で1台目の排水ポンプ3を起動させる時間に、排水ポンプ3を4台同時に起動させると仮定した場合の水位を予測する。
【0074】
そして水位予測部22は、当該予測結果を、図3に示す情報表示画面40に表示させる。なお、図8以降の水位の予測結果のグラフは、説明の便宜上、図7のグラフと同じものとしているが、実際には排水ポンプ3の同時起動台数や起動時間に応じて、外水位及び内水位は変化する。図6に示すステップS140の処理が終了すると運転支援サーバ20は、運転判断処理を終了する。なお上述した運転判断処理の説明では、説明の便宜上、排水ポンプ3の運転を案内する処理(ステップS50・S70等)が行われるたびに、情報表示画面40に情報を表示させるものとしているが、最終的な運転計画が決定してから(運転判断処理の終了後に)、その運転計画を情報表示画面40に表示させてもよい。
【0075】
こうして運転判断処理が実行されることにより、通知部23は、排水ポンプ3の起動台数及び起動タイミング(排水ポンプ3の運転計画)を、図3に示す情報表示画面40を介して操作者に通知することができる。操作員は当該通知を確認することで、経験や勘で排水ポンプ3の運転計画を1から作成することなく排水ポンプ3を操作することができるため、操作員の作業負担を低減することができる。
【0076】
また本実施形態では、内水位そのものだけではなく、内水位の上昇速度に基づいて、排水ポンプ3の起動台数及び起動タイミングを案内している(ステップS40~S140)。当該構成によると、水位予測部22は、適切な排水ポンプ3の運転計画を案内することができる。例えば水位予測部22は図7及び図8の範囲Rに示すように、ゲリラ豪雨等の影響で内水位が急上昇する可能性ある場合に、排水ポンプ3を複数台同時に起動するように操作員に案内することができる(ステップS40:YES、ステップS80)。操作員は、当該案内に沿って排水ポンプ3を操作することで、支川K2から本川K1へより多くの水を排出することができる。
【0077】
また本実施形態では、運転判断処理において多数のパターンを試すのではなく、基本運転では内水位が急上昇すると予測される場合に限り(ステップS40:YES)、水位の上昇速度を抑制可能な運転(同時運転)で内水位を予測するようにしている(ステップS80)。これによって、水位の予測回数が増大するのを抑制し、運転支援サーバ20にかかる負荷を低減することができる。
【0078】
また水位予測部22は、基本運転を行った場合(ステップS10)の水位の上昇速度に基づいて、排水ポンプ3の起動台数等を算出している(ステップS40~S130)。当該構成によると、基本運転で排水ポンプ3の排水が間に合うか否かを考慮して、より適切な運転計画を案内可能となる。
【0079】
ここで、排水ポンプ3を4台同時に起動させたとしても、予測雨量によっては、内水位が依然として急上昇することも想定される。そこで水位予測部22は、図6に示す運転判断処理のステップS140の後で、図9に示す追加判断処理を実行し、内水位の急上昇が予測される場合に排水ポンプ3の起動タイミングを早めることを操作員に通知してもよい。以下、追加判断処理の内容を説明する。
【0080】
水位予測部22は、追加判断処理を開始するとステップS150へ移行し、ステップS40と同様の処理により、直近(同時運転)の内水位の予測結果の中で、水位の急な上昇があるか否かを判定する。水位予測部22は、水位の急な上昇があると判定した場合(ステップS150:YES)、ステップS160へ移行する。一方水位予測部22は、水位の急な上昇がないと判定した場合(ステップS150:NO)、追加判断処理を終了する。
【0081】
ステップS160において水位予測部22は、排水ポンプ3の起動タイミングを早めることを操作員に案内する。なお操作者への案内方法(通知方法)は、ステップS80と同様である。すなわち水位予測部22は、図10に示すように、排水ポンプ3の起動タイミングを早めた場合の内水位を予測し、当該予測結果を図3に示す情報表示画面40に表示させる。なお図10では、各排水ポンプ3の起動タイミング(起動時間)をそれぞれ所定時間だけ早めた例を示している。また、図10に2点鎖線で示す排水ポンプ3の起動時間は、起動タイミングを早める前の起動時間を示すものである。
【0082】
また排水ポンプ3の起動タイミングを早める方法としては、1台目起動水位(排水ポンプ3を4台同時に起動させる水位)をステップS140よりも所定値下げる第1方法、内水位の予測結果が1台目起動水位まで上昇した時間から所定時間早めた時間を排水ポンプ3の起動時間とする第2方法等がある。
【0083】
第1方法では、図5に示す設定画面50で設定された1台目起動水位(図5における「第1排水ポンプ内水位」)を下げることで、起動タイミングを早めることができる。また第2方法では、内水位の予測結果が1台目起動水位まで上昇した時間(図10に2点鎖線で示す排水ポンプ3の起動時間)から所定時間を減算することで、起動タイミングを早めることができる。
【0084】
図9に示すステップS160の処理が終了すると、水位予測部22は、追加判断処理を終了する。追加判断処理で算出された起動タイミングに応じて排水ポンプ3が操作されることで、例えば、水位の上昇速度が比較的速いと予測される場合に、早めに排水ポンプ3を複数台同時に起動させ、内水位の上昇を抑制することができる。
【0085】
なお図10では、全ての排水ポンプ3の起動タイミングを早めた例を示したが、これは一例であり、一部の排水ポンプ3の起動タイミングを早めることも可能である。例えば4台の排水ポンプ3のうち、1台目及び2台目の排水ポンプ3の起動タイミングのみを早めることも可能である。
【0086】
以上の如く、本実施形態に係る運転支援システム10は、支川K2(第1の河川)の水を、前記支川K2が合流する本川K1(第2の河川)へ排出可能な排水機場1の排水ポンプ3の運転を支援する運転支援システム10であって、前記支川K2の水位である内水位を予測する水位予測処理を実行すると共に、当該予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて前記排水ポンプ3の運転計画を作成する水位予測部22(演算部)と、前記運転計画を通知する通知部23と、を具備するものである。
【0087】
このように構成することにより、適切な排水ポンプ3の運転計画を案内することができる。
【0088】
また、前記運転計画には、前記排水ポンプ3の起動台数及び起動タイミングの少なくとも一方が含まれるものである。
【0089】
このように構成することにより、排水ポンプ3の適切な起動台数や起動タイミングを案内することができる。
【0090】
また、前記水位予測処理には、前記内水位が第1の水位(例えば1台目起動水位)まで上昇すると、複数の前記排水ポンプ3のうち、1台以上の第1排水ポンプ3を起動し、前記内水位が前記第1の水位よりも高い第2の水位(例えば2台目起動水位から第4起動水位)まで上昇すると、複数の前記排水ポンプ3のうち、1台以上の第2排水ポンプ3を起動する第1運転(基本運転)を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第1水位予測処理(ステップS10で行われる予測の処理)が含まれるものである(図4参照)。
【0091】
このように構成することにより、第1運転(基本運転)を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプ3の運転計画を案内することができる。
【0092】
また、前記水位予測処理には、前記第1排水ポンプ3の起動台数を、前記第1運転(基本運転)よりも増やした第2運転(同時運転)を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第2水位予測処理(ステップS80・S140で行われる予測の処理)を実行可能であり、前記水位予測部22は、前記第1水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合(ステップS40:YES)、前記第2水位予測処理の結果における前記上昇速度に基づいて前記排水ポンプ3の起動台数を算出するのである(ステップS80~S140)。
なお第2水位予測処理は、一度実行された水位を予測する処理(第1水位予測処理又は第2水位予測処理)の計算条件を変更し(排水ポンプ3の起動台数を増やし)、再度行われる水位の予測処理である。
【0093】
このように構成することにより、第2運転(同時運転)を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプ3の起動台数を案内することができる。例えば、第1運転(基本運転)では水位の上昇速度が比較的速いと予測される場合に(ステップS40:YES)、排水ポンプ3を同時に起動するように案内することができる。
【0094】
また、前記水位予測部22は、前記第2水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合、前記排水ポンプ3の起動タイミングを前記第2運転(同時運転)よりも早めた運転計画を作成するものである。
【0095】
このように構成することにより、より適切な排水ポンプ3の起動タイミングを案内することができる。例えば、水位の上昇速度が比較的速いと予測される場合に、速やかに排水ポンプ3を起動するように案内可能となる。
【0096】
また、前記起動タイミングは、前記第1の水位(例えば1台目起動水位)又は前記第2の水位(例えば2台目起動水位から第4起動水位)の少なくとも一方を所定値下げる第1設定変更、又は、前記内水位が前記第1の水位まで上昇した時間から所定時間早めた時間を前記排水ポンプ3の起動時間とする第2設定変更の少なくともいずれかにより、早められるものである。
【0097】
このように構成することにより、排水ポンプ3の起動タイミングを簡単に早めることができる。
【0098】
なお、本実施形態に係る水位予測部22は、本発明に係る演算部の実施の一形態である。
【0099】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0100】
例えば本実施形態の排水機場1は、本川K1と支川K2との合流部分に設置されるものとしたが、排水機場1は2つの河川の合流部分に設置されるものであればよく、必ずしも本川K1と支川K2との合流部分に設置される必要はない。例えば、二次支川と一次支川との合流部分に設置することも可能である。
【0101】
また本実施形態では、第1水位予測処理(ステップS10での予測の処理)に基づく基本運転では、排水ポンプ3が1台ずつ段階的に起動される例を示したが、例えば各段階で2台以上同時に排水ポンプ3を起動させることも可能である。
【0102】
また本実施形態では、図4に示すように、ゲート2や排水ポンプ3の動作を考慮した水位の予測をまず行い(ステップS10、基本運転時の予測)、この結果に基づいて同時運転(排水ポンプ3の同時起動)を行うかどうか判断したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ゲート2や排水ポンプ3の動作を考慮することなく、排水ポンプ3等が作動しないと仮定した場合の水位をまず予測し、その水位に基づいて同時運転の実行を判断することも可能である。このように、基本運転を想定した予測処理を省略することで、水位を予測する処理を簡略化し、運転支援サーバ20にかかる負荷を低減することができる。
【0103】
また水位予測部22はステップS40・S100において、水位の予測結果の全ての時間帯を対象として、水位の急な上昇があるか否かを判定するものとしたが、前記予測結果のうち、一部の時間帯のみを対象として、水位の急な上昇があるか否かを確認することも可能である。例えば、内水位が比較的高い時間帯において、水位の急な上昇があるか否かを判定することも可能である。当該時間帯としては、例えば、内水位の予測結果が1台目起動水位に達した時間よりも後の時間帯、ゲート2が閉じられた時間よりも後の時間帯等が考えられる。当該構成により、排水ポンプ3をより適切に操作することができる。
【0104】
以上の如く、運転支援システム10において、前記水位予測部22は、前記第1水位予測の予測結果のうち、前記内水位が前記第1の水位まで上昇した後の時間帯を対象として、前記上昇速度を算出するものである。
【0105】
このように構成することにより、より適切な排水ポンプ3の運転計画を案内することができる。例えば、支川K2の増水時に限って排水ポンプ3を複数台同時に起動するように案内することができる。
【0106】
また水位予測部22は、排水ポンプ3の起動台数及び起動タイミング等を案内するものとしたが、その他の情報を案内することも可能である。例えば、排水ポンプ3の停止タイミング等を案内することも可能である。この場合、図5に示す運転停止水位に基づいて、排水ポンプ3の停止タイミングを決定することが可能である。
【0107】
また本実施形態では、図6に示す運転判断処理において、排水ポンプ3の運転計画を作成するものとしたが、これに加えて、ゲート2の運転計画を作成することも可能である。またゲート2の運転計画は、外水位(ステップS10での予測結果)の上昇速度に応じて作成可能である。例えば水位予測部22は、外水位の上昇速度が所定の閾値を超える場合に、ゲート2を閉じるタイミングを早めるように案内することができる。例えば図5に示す設定画面50で設定されたゲート2の閉鎖水位を下げるように通知することができる。
【0108】
以上の如く、運転支援システム10において、前記水位予測部22は、前記本川K1の水位(外水位)を予測可能であると共に、当該予測結果における所定期間の水位の上昇速度に基づいて、前記本川K1と前記支川K2との間に設けられるゲート2の開閉計画を作成し、前記通知部23は、前記開閉計画を通知するものである。
なお、ゲート2の開閉計画としては、上述したゲート2の閉鎖水位に加えて、ゲート2を閉じる時間、ゲート2の開放水位等がある。
【0109】
このように構成することにより、適切なゲート2の開閉タイミングを案内することができるため、本川K1から支川K2への水の逆流を効果的に抑制することができる。
【0110】
また本実施形態では、操作員が手動でゲート2及び排水ポンプ3を操作するものとしたが、ゲート2及び排水ポンプ3は、システム側で自動的に制御されるものでもよい。例えば運転支援サーバ20やその他のサーバがゲート2及び排水ポンプ3と通信可能に構成され、運転支援サーバ20等が図6に示す運転判断処理の結果に応じてゲート2を開閉したり、排水ポンプ3を起動させたりすることで、ゲート2等が自動的に制御されるものでもよい。
【0111】
このように、運転支援システム10は、前記運転計画報に沿って前記排水ポンプ3を制御する制御部(ゲート2及び排水ポンプ3と通信可能なサーバ)をさらに具備するものである。
【0112】
このように構成することにより、操作員の作業負担を低減することができる。
【0113】
また通知部23は、WEBコンテンツを操作員端末30に表示させることで、各種情報を通知するものとしたが、情報を通知するための方法は、WEBコンテンツに限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば通知部23は、メール、メッセージアプリ等により、情報を通知することも可能である。
【0114】
また本実施形態では4台の排水ポンプ3を用いることを想定したため、図6の例では、内水位の上昇速度に応じて同時起動する排水ポンプ3の台数を4台まで増やすことが可能なものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、排水ポンプ3の設置台数に応じて図6で同時起動させる排水ポンプ3の台数を任意に設定することが可能である。
【0115】
また図6の例では、2台、若しくは4台の排水ポンプ3を同時起動させる例を示したが、同時起動させる台数は任意に変更可能である。例えば水位の上昇速度の大小に応じて、同時起動させる排水ポンプ3の台数を2台から4台の間で決定することも可能である。また例えば、水位の急な上昇がある場合、同時起動する排水ポンプ3の台数を1台ずつ増やすごとに水位の予測を行い、水位の急上昇が防止できる排水ポンプ3の起動台数を決定することも可能である。すなわち、水位の急上昇が解消されるまで(若しくは、排水ポンプ3の設置台数に達するまで)、排水ポンプ3の同時起動台数の増加と水位の再予測とを繰り返し、同時起動する排水ポンプ3の台数を決定することが可能である。
【0116】
以下では、第二実施形態に係る運転支援システム10について説明する。
【0117】
なお、以下において第一実施形態に係る運転支援システム10と同様に構成される機器については、第一実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0118】
第二実施形態に係る運転支援システム10は、運転判断処理の内容が第一実施形態と相違する。このため以下では本実施形態の運転判断処理の内容を説明する。
【0119】
図11に示すように、水位予測部22は、ステップS40において水位の急な上昇がない場合(ステップS40:NO)、ステップS230へ移行する。一方水位予測部22は、水位の急な上昇がある場合(ステップS40:YES)、ステップS210へ移行する。
【0120】
ステップS210において水位予測部22は、図12に示すように、排水ポンプ3の起動タイミングを基本運転よりも早めた場合の水位を予測する。以下では、排水ポンプ3の起動タイミングを基本運転よりも早めた運転を、「早期運転」と称する。なお、起動タイミングを早める方法は、第1実施形態と同様である。例えば水位予測部22は、1台目起動水位から4台目起動水位(図5に示す第1~第4排水ポンプ内水位)を所定値下げることで、起動タイミングを早めることができる。なお図12では、各排水ポンプ3の起動タイミング(起動時間)をそれぞれ所定時間だけ早めた例を示している。また、図12に2点鎖線で示す排水ポンプ3の起動時間は、起動タイミングを早める前の起動時間を示すものである。図11に示すように、ステップS210の処理が終了すると水位予測部22は、ステップS220へ移行する。
【0121】
ステップS220において水位予測部22は、ステップS210(早期運転)での内水位の予測結果において、水位の急な上昇があるか否かを判定する。水位予測部22は、水位の急な上昇がない場合(ステップS220:NO)、ステップS230へ移行する。一方水位予測部22は、水位の急な上昇がある場合(ステップS220:YES)、ステップS240へ移行する。
【0122】
ステップS230において水位予測部22は、図6に示すステップS50~S70・S110~S130と同様の処理により、直近(ステップS10又はステップS210)の内水位の予測結果に応じて1~4台の排水ポンプ3の運転を案内する。ステップS230の処理が終了すると水位予測部22は、運転判断処理を終了する。
【0123】
ステップS240において水位予測部22は、排水ポンプ3の複数台同時運転を案内する。この際水位予測部22は、図6に示すステップS80~S140と同様の処理により、複数台同時運転を案内する。ステップS240の処理が終了すると水位予測部22は、運転判断処理を終了する。
【0124】
本実施形態の運転判断処理によると、内水位の上昇速度が速いと予測される場合に(ステップS40:YES)、排水ポンプ3の起動を早めるように操作員に通知することができる(図12参照)。操作員は当該通知に基づいて排水ポンプ3を起動することで、内水位の上昇を効果的に抑制することができる。
【0125】
このように、運転支援システム10は、排水ポンプ3の起動タイミングを排水ポンプ3の起動台数よりも優先的に変更し、その結果(排水ポンプ3の運転計画)を操作者に通知することも可能である。
【0126】
なお図12では、全ての排水ポンプ3の起動タイミングを早めた一例を示したが、水位予測部22は、必ずしも全ての排水ポンプ3の起動タイミングを早める必要はなく、一部の排水ポンプ3の起動タイミングのみを早めることも可能である。例えば水位の急な上昇があると考えられる時間帯や、その時間帯の直前、又は直後に起動される排水ポンプ3のみ、起動タイミングを早めることも可能である。
【0127】
以上の如く、本実施形態に係る運転支援システム10において、前記水位予測処理には、前記排水ポンプ3の起動タイミングを前記第1運転(基本運転)よりも早めた第3運転(早期運転)を行ったと仮定した場合の前記内水位を予測する第3水位予測処理が含まれ(ステップS210)、前記水位予測部22は、前記第1水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合(ステップS40:YES)、前記第3水位予測処理の結果における前記上昇速度に基づいて前記排水ポンプ3の起動タイミングを算出するものである(ステップS230・S240)。
【0128】
このように構成することにより、第3運転(早期運転)を行った場合の水位の上昇速度に応じて、適切な排水ポンプ3の起動タイミングを案内することができる。例えば、ゲリラ豪雨等によって水位の急上昇が予測される場合に(ステップS40:YES)、排水ポンプ3を速やかに起動するように案内することができる。
【0129】
また、前記水位予測部22は、前記第3水位予測処理の結果における前記上昇速度が所定値を超える場合(ステップS220:YES)、前記第1排水ポンプ(内水位が第1起動水位に達した際の排水ポンプ3)の起動台数を増やした運転計画を作成するものである(ステップS240)。
【0130】
このように構成することにより、より適切な排水ポンプ3の起動台数を案内することができる。
【0131】
なお、上述の実施形態では、水位予測部22が予測した内水位の上昇速度に応じて運転計画を作成する例を説明したが、内水位の上昇速度に加えて、内水位に上限値を設定し、この上限値も考慮して運転計画を作成してもよい。例えば、予測される内水位が上限値を超える場合に、排水ポンプ3の起動台数を増やしたり(同時運転)、起動タイミングを早めるなどして、運転計画を作成することも可能である。またこの場合、内水位の上昇速度よりも、内水位の上限値を優先して運転計画を作成することが可能である。例えば、内水位の上昇速度が所定の閾値を超えない場合であっても、内水位が上限値を超えるような場合には、排水ポンプ3の起動台数を増やしたり、起動タイミングを早めたりするように運転計画を作成してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 排水機場
3 排水ポンプ
10 運転支援システム
22 水位予測部
23 通知部
K1 本川
K2 支川
図1
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