(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015250
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ガス化装置およびガス化処理方法
(51)【国際特許分類】
C10J 3/20 20060101AFI20250123BHJP
C10J 3/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C10J3/20
C10J3/02 H
C10J3/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118543
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】306039120
【氏名又は名称】DOWAサーモテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和也
(72)【発明者】
【氏名】皆川 豊
(57)【要約】
【課題】木質チップに供給する燃焼促進ガスの流量調節の精度を向上させる。
【解決手段】木質チップSをガス化するガス化装置1において、木質チップSのガス化処理が行われる反応容器2と、反応容器2の底部に配置された原料供給路13と、原料供給路13から木質チップSが供給される原料貯留容器3と、木質チップSの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを原料貯留容器3内に供給するガス供給機構20と、反応容器2内の雰囲気温度を測定する温度測定部7aと、ガス供給機構20の動作を制御する制御部100と、を設け、制御部100を、温度測定部7aで測定された雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように燃焼促進ガスの流量を調節する制御を実行するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質チップをガス化するガス化装置であって、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、
前記反応容器の内部に設けられ、前記原料供給路から前記木質チップが供給される原料貯留容器と、
前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを前記原料貯留容器内に供給するガス供給機構と、
前記原料貯留容器の上端よりも上方に設けられ、前記反応容器内の雰囲気温度を測定する温度測定部と、
前記ガス供給機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度測定部で測定された前記雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように前記燃焼促進ガスの流量を調節する制御を実行することを特徴とする、ガス化装置。
【請求項2】
前記ガス供給機構は、
周波数の可変制御が可能なインバータと、
前記インバータの設定周波数に応じた風量で前記燃焼促進ガスの送風を行う送風機と、を有し、
前記制御部は、
前記温度測定部で測定された前記雰囲気温度が目標の温度範囲内の温度となるように前記インバータの設定周波数を調節する制御を実行することを特徴とする、請求項1に記載のガス化装置。
【請求項3】
木質チップをガス化するガス化装置を用いたガス化処理方法であって、
前記ガス化装置は、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、
前記反応容器の内部に設けられ、前記原料供給路から前記木質チップが供給される原料貯留容器と、を備え、
前記ガス化処理を行う際に、
前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを前記原料貯留容器内に供給し、
前記原料貯留容器の上端よりも上方で前記反応容器内の雰囲気温度を測定し、測定された前記雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように前記燃焼促進ガスの流量を調節することを特徴とする、ガス化処理方法。
【請求項4】
前記ガス化装置は、
周波数の可変制御が可能なインバータと、
前記インバータの設定周波数に応じた風量で前記燃焼促進ガスの送風を行う送風機と、を有し、
前記ガス化処理を行う際に、前記測定された雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように前記インバータの設定周波数を調節することを特徴とする、請求項3に記載のガス化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質チップをガス化するガス化装置およびガス化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇や地球温暖化、エネルギー源の外国依存リスクなどの問題に対処するため、自然エネルギーや再生可能エネルギーの利用が世界的に進んでいる。再生可能エネルギーの中には、間伐材などの木材を利用して作られる木質バイオマスエネルギーがあり、日本などの森林地帯が多い地域における新エネルギーとして注目されている。また、木質バイオマスエネルギーは、エネルギー自給の観点や、非常時においても安定供給可能なエネルギーという観点でメリットの多いエネルギーである。
【0003】
木質バイオマスエネルギーを高効率に利用するための方法として、間伐材などの木質チップをバイオマス原料として燃焼させ、それによって生じる可燃性ガスを発電用の燃料として用いる木質バイオマス発電が知られている。
【0004】
上述した木質チップを燃焼させて発電などに利用されるガスを発生させる装置として、特願2022-012248(以下、「参考文献1」という)に記載されたガス化装置がある。このガス化装置は、木質チップのガス化処理が行われる反応容器内に、木質チップの熱分解反応が生じる熱分解帯T1と、木質チップから生じたガスの酸化反応が生じる燃焼帯T2と、木質チップから生じたガスの還元反応が生じる還元帯T3とが形成されるように構成されている。なお、参考文献1に記載されたガス化装置は、本願の出願時においては非公知技術である。
【0005】
上述した熱分解反応、酸化反応、還元反応を発生させ易くするためには、熱分解帯T1、燃焼帯T2、還元帯T3の温度を適正温度域内で保持することが望まれる。このため、参考文献1に記載のガス化装置では、木質チップの燃焼を促進するための燃焼促進ガスを燃焼帯T2に供給し、燃焼帯T2の温度に基づいて燃焼促進ガスの流量を調節している。これにより、燃焼帯T2を適正温度に保持し、燃焼帯T2で発生した熱が伝達される熱分解帯T1と還元帯T3の温度を適正温度に保持する試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス化装置の反応容器内に供給された木質チップの堆積層においては、ガス化処理の進行に伴い昇温、乾燥、熱分解反応、酸化反応、還元反応によって木質チップの状態が変化する。また、木質チップのガス化と、反応容器内への未処理木質チップの供給により、反応容器内における木質チップの堆積層の高さが増減する。ガス化処理時においては、それらの要因によって燃焼帯T2の温度が不安定に推移する。
【0007】
このため、不安定に推移する燃焼帯T2の温度を指標として燃焼促進ガスの流量制御を行うと、燃焼促進ガスの流量を適切な流量に調節することが困難である。また、適切な流量の燃焼促進ガスを供給できないことは、燃焼帯T2で生じる反応をさらに不安定にさせる外的要因となり、ガス化処理中の燃焼帯T2の温度がさらに不安定となる。これにより、燃焼帯T2の温度を指標とした燃焼促進ガスの流量制御がさらに困難となり、燃焼促進ガスの適切な流量への調節を精度良く行うことが困難である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、木質チップに供給する燃焼促進ガスの流量調節の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様を以下に例示する。
(1)木質チップをガス化するガス化装置であって、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、
前記反応容器の内部に設けられ、前記原料供給路から前記木質チップが供給される原料貯留容器と、
前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを前記原料貯留容器内に供給するガス供給機構と、
前記原料貯留容器の上端よりも上方に設けられ、前記反応容器内の雰囲気温度を測定する温度測定部と、
前記ガス供給機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度測定部で測定された前記雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように前記燃焼促進ガスの流量を調節する制御を実行することを特徴とする、ガス化装置。
(2)前記ガス供給機構は、
周波数の可変制御が可能なインバータと、
前記インバータの設定周波数に応じた風量で前記燃焼促進ガスの送風を行う送風機と、を有し、
前記制御部は、
前記温度測定部で測定された前記雰囲気温度が目標の温度範囲内の温度となるように前記インバータの設定周波数を調節する制御を実行することを特徴とする、(1)に記載のガス化装置。
(3)木質チップをガス化するガス化装置を用いたガス化処理方法であって、
前記ガス化装置は、
前記木質チップのガス化処理が行われる反応容器と、
前記反応容器の底部に配置された原料供給路と、
前記反応容器の内部に設けられ、前記原料供給路から前記木質チップが供給される原料貯留容器と、を備え、
前記ガス化処理を行う際に、
前記木質チップの燃焼を促進させる燃焼促進ガスを前記原料貯留容器内に供給し、
前記原料貯留容器の上端よりも上方で前記反応容器内の雰囲気温度を測定し、測定された前記雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように前記燃焼促進ガスの流量を調節することを特徴とする、ガス化処理方法。
(4)前記ガス化装置は、
周波数の可変制御が可能なインバータと、
前記インバータの設定周波数に応じた風量で前記燃焼促進ガスの送風を行う送風機と、を有し、
前記ガス化処理を行う際に、前記測定された雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように前記インバータの設定周波数を調節することを特徴とする、(3)に記載のガス化処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、木質チップに供給する燃焼促進ガスの流量調節の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス化装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】燃焼実験で使用されたガス化装置の概略構成を示す説明図である。
【
図3】温度センサで測定された温度の経時変化を示すグラフである。
【
図4】ON/OFF制御でブロワを作動させたときの温度センサで測定された温度とブロワへの入力周波数の経時変化を示すグラフである。
【
図5】ON/OFF制御でブロワを作動させたときの生成ガスの発熱量の経時変化を示すグラフである。
【
図6】周波数制御でブロワを作動させたときの温度センサで測定された温度とブロワへの入力周波数の経時変化を示すグラフである。
【
図7】周波数制御でブロワを作動させたときの生成ガスの発熱量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るガス化装置の概略構成を示す説明図である。ガス化装置1は、バイオマス原料として用いる木質チップSの熱分解反応、酸化反応、還元反応を生じさせて木質チップSをガス化させ、発生した生成ガス(例えば一酸化炭素や水素など)を上方から回収するアップドラフト方式の装置である。本明細書における熱分解反応、酸化反応および還元反応は、以下の反応式で示される反応である。
【0014】
【0015】
なお、ガス化処理によって得られる生成ガスの生産効率を高める観点では、木質チップSは、予め半炭化処理されていることが好ましい。木質チップSの半炭化処理とは、酸素の供給量を制限した状態、または遮断した状態の容器に水蒸気を供給した雰囲気下において例えば200~350℃で木質チップSを加熱し、木質チップSの水分含有量を調整する処理である。半炭化処理された木質チップSの水分含有量は、例えば4~12質量%、好ましくは6~10質量%、さらに好ましくは7~9質量%である。
【0016】
以下、ガス化装置1の構成の概略について説明するが、公知のアップドラフト方式の装置構成を適用可能である部分については、装置構成の説明を省略することがある。
【0017】
ガス化装置1は、木質チップSのガス化処理が行われる反応容器2と、反応容器2の内方に設けられた原料貯留容器としてのテーパ容器3を備えている。
【0018】
反応容器2は、略円筒状の縦型容器である。この反応容器2の内部においては、木質チップSをガス化させる際に、熱分解帯T1と、燃焼帯T2と、還元帯T3の3つの層が下方から上方に向かってこの順で形成される。
【0019】
熱分解帯T1は、燃焼帯T2から熱を受け取ることで木質チップSの熱分解反応が生じる層である。燃焼帯T2は、木質チップSに酸化反応を生じさせて熱分解帯T1と還元帯T3に熱を与える層である。還元帯T3は、燃焼帯T2から熱を受け取ることで木質チップSから発生したガスの還元反応が生じ、一酸化炭素や水素ガスなどの生成ガスが生じる層である。
【0020】
なお、ガス化処理中の熱分解帯T1の温度は、例えば300~500℃であり、燃焼帯T2の温度は、例えば500~650℃であり、還元帯T3の温度は、例えば650℃以上である。還元帯T3で生じる生成ガスの生産効率を高める観点においては、ガス化処理中の還元帯T3の温度は、850℃以下であることが好ましい。
【0021】
テーパ容器3は、円錐台状のテーパ部3aを有する容器であって、テーパ容器3の上端と下端は開口している。テーパ容器3のテーパ部3aは、テーパ部3aの下端から上端に向かって拡径するように形成されている。換言すると、テーパ部3aは、テーパ部3aの下端から上端に向かって横断面積(水平に切断したときの面積)が増加するように形成されている。
【0022】
テーパ部3aの上端には、環状平面部3bが形成されている。環状平面部3bの周縁には、上方に延びた筒状壁面部3cが形成されている。テーパ部3aの下端は、反応容器2の底面2cから下方に突出し、後述する原料供給路13の上端に接続されている。これにより、原料供給路13から供給される木質チップSがテーパ部3aの下端から供給され、テーパ容器3の内側が木質チップSで満たされる。
【0023】
なお、テーパ部3aの形状は、円錐台状に限定されず、例えば四角錐台などの角錐台状であってもよい。
【0024】
テーパ部3aの上端部には、外周面から内周面に貫通する開口部4が形成されており、開口部4は、テーパ部3aの周方向に間隔を空けて複数設けられている。各々の開口部4は、テーパ容器3に貯留する木質チップSが開口部4から落下しない形状を有した貫通孔であればよく、例えばスリットや丸穴、角穴等の貫通孔である。
【0025】
上記の開口部4は、木質チップSのガス化処理時に形成される燃焼帯T2に対応する領域の高さに位置しており、木質チップSの燃焼を促進する後述の燃焼促進ガスが開口部4を通過して燃焼帯T2内の木質チップSに供給される。
【0026】
なお、前述の熱分解帯T1、燃焼帯T2および還元帯T3の各層の領域の大きさは、反応容器2の形状やテーパ容器3の形状などの装置構成に応じて異なるが、当業者であれば、ガス化装置の構成から各層の領域の大きさを推定することが可能である。すなわち、当業者であれば、開口部が形成されたテーパ容器を有するガス化装置において、その開口部が燃焼帯T2に対応する領域の高さに形成されているか否かを判別することができる。
【0027】
以上で説明した反応容器2および後述するテーパ容器3の形状や材質、大きさ等は、木質チップSのガス化処理を実施可能であれば特に限定されない。例えば反応容器2の形状は、円筒状に限定されず、角筒状であってもよい。また、反応容器2の大きさは、例えば全長(鉛直方向の長さ)が1200~1800mm、直径が500~1800mmである。
【0028】
また、テーパ容器3の材質は、例えばステンレス鋼、炭素鋼、炭化ケイ素(SiC)、レンガ等が採用され得るが、形状加工の容易性および耐熱性の観点からは、ステンレス鋼を用いることが好ましい。加えて、テーパ容器3は、例えば内側表面にカロライジング処理などのコーティングが施されてもよい。
【0029】
図1に示すように、反応容器2の内面には、断熱材5が設けられている。断熱材5は、反応容器2やテーパ容器3の形状等によって必要に応じて設けられる。本実施形態では、反応容器2内の天井面2aおよび側面2bの全体と、底面2cの一部領域に配置されている。
【0030】
上記の断熱材5の下部においては、テーパ容器3のテーパ部3aに対向する部分に傾斜部5aが形成されていて、この断熱材5の傾斜部5aとテーパ容器3のテーパ部3aは略平行な状態にある。これらの傾斜部5aとテーパ部3aは、互いに接触しておらず、間隔が空いている。断熱材5の傾斜部5aの上端には、テーパ容器3の環状平面部3bが載る平面部5bが形成されている。また、反応容器2の側壁の内側にある断熱材5の内面には、テーパ容器3の筒状壁面部3cの外周面が接している。
【0031】
図1に示すように、反応容器2の内方には、ヒータ6が設けられている。ヒータ6は、木質チップSのガス化処理を開始する際に、反応容器2の内部温度を高め、燃焼帯T2の温度を所定の温度(例えば450~600℃)まで昇温させる装置である。ガス化処理を行う際には、ヒータ6は、燃焼帯T2が所定の温度に到達した後に停止する。ヒータ6の停止後のガス化処理の熱源は、燃焼帯T2の酸化反応で発生する燃焼熱となり、この燃焼熱が熱分解帯T1および還元帯T3に伝達される。これにより、反応容器2に供給される木質チップSの熱分解反応、および木質チップSから生じたガスの酸化反応と還元反応が自動的に進む。
【0032】
なお、ヒータ6は、燃焼帯T2を昇温させるための手段の一例である。このため、公知の昇温手段などの他の手段で燃焼帯T2を昇温させることができれば、ヒータ6を設けなくてもよい。例えばヒータ6に代えて、燃焼帯T2にある木質チップSの点火を行う点火装置(図示せず)を設けてもよい。
【0033】
(温度センサ)
反応容器2の側壁上部には、反応容器2内の雰囲気温度を測定する温度センサ7が設けられている。温度センサ7は、例えば熱電対式のセンサであり、温度測定部7aは、反応容器2の内側に配置された断熱材5の内方、かつテーパ容器3の上端よりも上方に位置している。換言すると、温度測定部7aは、還元帯T3内の木質チップSの上方に位置している。
【0034】
木質チップSのガス化処理中においては、上記の温度センサ7によって反応容器2内の雰囲気温度が測定され、測定された反応容器2内の雰囲気温度の情報は、後述する制御部100に向けて出力される。なお、図示はされていないが、ガス化装置1は、熱分解帯T1や燃焼帯T2の温度を測定するための温度センサや、テーパ容器3に貯留する木質チップSの貯留量を測定するセンサなどの各種センサも設けられている。
【0035】
反応容器2の側壁上部には、放出管8が設けられている。放出管8は、反応容器2の内部で発生した生成ガス(例えば一酸化炭素や水素など)を外部に放出するための管である。放出管8から放出された生成ガスは、生成ガス貯留部(図示せず)に送られ、例えばバイオマス発電用の燃料として用いられる。
【0036】
次に、反応容器2に木質チップSを供給する原料供給機構10について説明する。原料供給機構10は、木質チップSが投入される投入部11と、投入部11に投入された木質チップSを搬送する搬送路12と、搬送路12で搬送された木質チップSを反応容器2の底部に供給するための原料供給路13を有する。
【0037】
投入部11は、ホッパー14と、ホッパー14の下端に接続された投入路15を有する。投入路15は、反応容器2の高さ方向に延伸した形状であり、投入路15の内部にはホッパー14に投入された木質チップSが貯留する。
【0038】
搬送路12は、水平方向に延伸した形状であり、搬送路12の外周面には、上記の投入路15の下端が接続され、搬送路12の先端部は、原料供給路13に接続されている。
【0039】
原料供給路13は、反応容器2の高さ方向に延伸した形状であり、原料供給路13の上面には、反応容器2に向けて木質チップSを供給するための供給口(図示せず)が形成されている。搬送路12および原料供給路13の内部には、それぞれスクリュー16、17が設けられ、例えばモータなどの回転駆動源(図示せず)によって回転する。
【0040】
上記構成を有した原料供給機構10によれば、投入部11に投入された木質チップSが搬送路12を介して原料供給路13に搬送され、原料供給路13の内部のスクリュー17によって木質チップSが上方に押し出される。これによって、原料貯留容器としてのテーパ容器3の内方に木質チップSの堆積層が形成され、ガス化処理が行われる。なお、ガス化処理中は、スクリュー16、17が一定のサイクルで回転動作を行い、テーパ容器3内に単位時間あたり一定量の木質チップSが供給され続ける。
【0041】
(ガス供給機構)
次に、燃焼帯T2に燃焼促進ガスを供給するガス供給機構20について説明する。燃焼促進ガスとは、燃焼帯T2内の木質チップSの燃焼を促進させるためのガス(例えば空気)である。
【0042】
ガス供給機構20は、反応容器2内に燃焼促進ガスを供給する送風機としてのブロワ21と、ブロワ21から送られる燃焼促進ガスが流れる配管22と、配管22から分岐したガス供給管23を備えている。
【0043】
ガス供給管23は、反応容器2の底部に接続されていて、反応容器2の周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。これらのガス供給管23から供給される燃焼促進ガスは、反応容器2の内側、かつ、テーパ容器3の外側に供給される。本実施形態においては、断熱材5の傾斜部5aとテーパ容器3のテーパ部3aとの間に隙間が形成されていて、この隙間が燃焼促進ガスのガス流路24となる。
【0044】
ガス流路24は、反応容器2とガス供給管23の接続位置から、開口部4の形成位置まで延びている。このガス流路24は、テーパ部3aの外周面に沿って形成された環状空間であって、ガス供給管23から供給された燃焼促進ガスは、その空間内を流れる。そして、その空間から開口部4を介してテーパ容器3の外側から内側に向けて燃焼促進ガスが供給される。前述のように開口部4は、テーパ容器3の燃焼帯T2に対応する領域に形成されていることから、開口部4を通る燃焼促進ガスは、燃焼帯T2に貯留する木質チップSに供給される。
【0045】
なお、ガス供給管23は、例えば反応容器2の側壁部に接続されてもよい。この場合であっても、ガス供給管23からガス流路24への燃焼促進ガスが可能であれば、開口部4を介して燃焼帯T2に燃焼促進ガスを供給できる。
【0046】
上記構成を有するガス供給機構20の動作は、例えば後述する制御部100によって制御される。具体的には、例えばガス供給機構20のブロワ21が温度センサ7で測定された反応容器2内の雰囲気温度に基づいてON状態とOFF状態が切り替わり、これによって反応容器2内に供給される燃焼促進ガスの流量が調節される。
【0047】
また、反応容器2内の雰囲気温度の急激な変動を抑制しながら燃焼促進ガスの流量調節を行う観点では、周波数の可変制御が可能なインバータ25を設け、反応容器2内の雰囲気温度に基づいてインバータ25の設定周波数を変更可能であることが好ましい。このような構成を有するガス供給機構20によれば、インバータ25の設定周波数に応じてブロワ21の風量を滑らかに変化させることができるため、後述の実施例で示すように、反応容器2内の雰囲気温度の急激な変動を抑制できる。なお、インバータ25は、ブロワ21に内蔵されてもよいし、ブロワ21の外部に設置されてもよい。
【0048】
(制御部)
ガス化装置1は、原料供給機構10やガス供給機構20などの動作を制御する制御部100を備えている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ガス化装置1に設置された各種センサから得られた情報に基づいてガス化処理を制御する各種のプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0049】
上記の制御部100は、温度センサ7の温度測定部7aで測定された反応容器2内の雰囲気温度が目標とする温度範囲内(例えば650~850℃)の温度となるように燃焼促進ガスの流量を調節する制御を行う。なお、「目標とする温度範囲」は、ガス化装置1の構成に応じて当業者が適宜設定される。
【0050】
例えば温度測定部7aで測定された温度が目標とする温度範囲の下限よりも低い場合には、制御部100から出力される制御信号に基づきブロワ21がONとなり、燃焼帯T2への燃焼促進ガスの供給が開始される。これにより、燃焼帯T2内の木質チップSの酸化反応が進行し易くなり、燃焼帯T2の温度が上昇する。その結果、燃焼帯T2から伝達される熱によって還元帯T3内の木質チップSの温度が上昇し、反応容器2内の雰囲気温度も上昇する。
【0051】
一方、例えば温度測定部7aで測定された温度が目標とする温度範囲の上限よりも高い場合には、制御部100から出力される制御信号に基づきブロワ21がOFFとなり、燃焼帯T2への燃焼促進ガスの供給が停止する。これにより、燃焼帯T2内の木質チップSの酸化反応が鈍化し、燃焼帯T2の温度上昇が抑制される。その結果、還元帯T3内の木質チップSの温度上昇が抑制され、反応容器2内の雰囲気温度が漸減する。
【0052】
また、
図1に示すようにインバータ25が設けられている場合、制御部100は、例えば温度測定部7aで測定された反応容器2内の雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるようにインバータ25の設定周波数を変更する制御を行う。
【0053】
例えば温度測定部7aで測定された温度が目標とする温度範囲の下限よりも低い場合、制御部100は、測定温度が目標とする温度範囲内の温度となるようにインバータ25の設定周波数を連続的または段階的に上げる制御を行う。これによって、ブロワ21への入力周波数も連続的または段階的に上がり、ブロワ21の風量および燃焼帯T2に供給される燃焼促進ガスの流量が、連続的または段階的に増加する。
【0054】
一方、例えば温度測定部7aで測定された温度が目標とする温度範囲の上限よりも高い場合、制御部100は、測定温度が目標とする温度範囲内の温度となるようにインバータ25の設定周波数を連続的または段階的に下げる制御を行う。これによって、ブロワ21への入力周波数も連続的または段階的に下がり、ブロワ21の風量および燃焼帯T2に供給される燃焼促進ガスの流量が、連続的または段階的に減少する。
【0055】
また例えば、温度測定部7aで測定された温度が目標とする温度範囲内にある場合、制御部100は、測定温度が目標とする温度範囲内にある状態を保持するために、インバータ25の設定周波数を変更せずに維持する制御を行う。これによって、ガス化処理を行う間、熱分解帯T1、燃焼帯T2、還元帯T3の温度が適正温度から外れ難くなり、生成ガス(例えば一酸化炭素や水素など)の発生量を安定させることができる。
【0056】
以上、本実施形態に係るガス化装置1の概略構成について説明した。このガス化装置1においては、反応容器2内のテーパ容器3の上端よりも上方に温度測定部7aが設けられており、温度測定部7aによって反応容器2内の雰囲気温度が測定される。そして、温度測定部7aによって測定された反応容器2内の雰囲気温度が目標とする温度範囲内の温度となるように燃焼促進ガスの流量が調節される。
【0057】
すなわち、本実施形態に係るガス化装置1によれば、ガス化処理中に不安定な温度推移となり易い燃焼帯T2と比較して安定した温度推移となる反応容器2内の雰囲気温度に基づいて燃焼促進ガスの流量制御を行うことができる。これにより、ガス化処理中における燃焼促進ガスの流量調節の精度を向上させることができ、反応容器2内における熱分解帯T1、燃焼帯T2および還元帯T3を適正温度に保持するための適切な流量の燃焼促進ガスを供給し易くなる。
【0058】
特に、本実施形態に係るガス化装置1においては、インバータ25を用いたブロワ21の周波数制御によってブロワ21の風量を変更できる。これにより、燃焼帯T2に供給する燃焼促進ガスの流量を滑らかに変化させることができ、後述の実施例でも示すように、ブロワ21のON/OFF制御を行う場合と比較して雰囲気温度と生成ガスの発熱量の急激な変動を抑えることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について例示したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【実施例0061】
ガス化装置による木質チップの燃焼実験を実施した。
図2は、燃焼実験で使用されたガス化装置1Aの概略構成を示す説明図である。ガス化装置1Aにおいては、反応容器2の側壁部に熱電対式の温度センサTR1、TR2が設置されている。
【0062】
温度センサTR1は、テーパ容器3の上部と同等の高さに配置されており、温度センサTR1の温度測定部は、燃焼帯T2内の木質チップSの堆積層の内部に位置している。この温度センサTR1によって燃焼帯T2の温度が測定される。
【0063】
温度センサTR2は、テーパ容器3の上端よりも上方に配置されており、温度センサTR2の温度測定部は、還元帯T3内の木質チップSの堆積層の上方に位置している。この温度センサTR2によって反応容器2内の雰囲気温度が測定される。
【0064】
なお、ガス化装置1Aのその他の構成については、
図1に示したガス化装置1と同様の構成である。
【0065】
(燃焼実験1)
ガス化装置1を用いた燃焼実験として、まず、原料供給路13から木質チップSを100kg/hの速度で供給しながら、ガス供給管23から燃焼促進ガスとして一定量の空気を供給して木質チップのガス化処理を実施した。そして、このときの温度センサTR1、TR2で測定される温度を監視した。
【0066】
図3は、温度センサTR1、TR2で測定された温度の経時変化を示すグラフである。
図3に示すように、温度センサTR1の測定温度、すなわち燃焼帯T2の温度は不安定に推移する一方で、温度センサTR2の測定温度、すなわち反応容器2内の雰囲気温度は安定して推移した。また、反応容器2内の雰囲気温度が約800℃で一定であることに鑑みれば、還元帯T3の温度は適正温度であると判断でき、これに伴い燃焼帯T2および熱分解帯T1の温度も適正温度にあることを推定できる。
【0067】
したがって、そのような反応容器2内の雰囲気温度に基づいて燃焼促進ガスの流量調節を行うことで、燃焼帯T2の温度に基づいて流量調節を行う場合と比較して適切な流量調節が可能となる。
【0068】
(燃焼実験2)
次に、ガス供給管23から燃焼促進ガスとして空気を供給し、温度センサTR2の測定温度、すなわち反応容器2内の雰囲気温度に基づいて空気の流量を制御した燃焼実験を実施した。具体的には、
図2に示したインバータ25を用いずにブロワ21のON/OFF制御によって空気流量を調節した燃焼実験と、インバータ25を用いてブロワ21の周波数制御によって空気流量を調節した燃焼実験を実施した。いずれの燃焼実験においても、温度センサTR2の測定温度が730~820℃の範囲内に収まるようにブロワ21の動作を制御した。
【0069】
図4は、ON/OFF制御でブロワを作動させたときの温度センサTR2で測定された温度とブロワへの入力周波数の経時変化を示すグラフである。
図5は、ON/OFF制御でブロワを作動させたときの生成ガスの発熱量の経時変化を示すグラフである。
図5中の「生成ガスの発熱量」は、ガス分析計(図示せず)によって測定された生成ガス中の一酸化炭素ガス、メタンガスおよび水素ガスの各ガス濃度(%)と、各ガス固有の単位発熱量(MJ/m
3)とをそれぞれ乗算したときに算出される各値の合計値である。
【0070】
図4に示すように、ブロワのON/OFF制御によって空気の流量を調節した場合には、温度センサTR2の測定温度が目標の温度範囲(725~825℃)に対してオーバーシュートし易く、反応容器2内の雰囲気温度の変動が大きい。また、
図5に示すように、生成ガスの発熱量も変動が大きく、発熱量が安定しない結果となった。
【0071】
一方、
図6は、周波数制御でブロワを作動させたときの温度センサTR2で測定された温度とブロワへの入力周波数の経時変化を示すグラフである。
図7は、周波数制御でブロワを作動させたときの生成ガスの発熱量の経時変化を示すグラフである。
図7中の「生成ガスの発熱量」の算出方法は、
図5と同様である。
【0072】
図6に示すように、ブロワの周波数制御によって空気の流量を調節した場合には、温度センサTR2の測定温度が目標の温度範囲(725~825℃)に対してオーバーシュートし難くなり、雰囲気温度の急激な変動が抑制された。また、
図7に示すように、生成ガスの発熱量についても急激な変動が抑制された。すなわち、周波数制御によってブロワを作動させることで、ON/OFF制御の場合よりも反応容器内の雰囲気温度と生成ガスの発熱量の急激な変動を抑制することができる。
【0073】
したがって、反応容器内の雰囲気温度と生成ガスの発熱量の急激な変動を抑えながら、反応容器内の温度状態を適正な温度状態に保持し易くする観点では、ブロワの周波数制御によって燃焼帯T2に供給する燃焼促進ガスの流量を調節することが好ましい。
【0074】
以上、本発明の実施例について説明した。本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。