IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特開2025-15259情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム
<>
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図1
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図2
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図3
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図4
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図5
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図6
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図7
  • 特開-情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015259
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/396 20190101AFI20250123BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250123BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20250123BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20250123BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20250123BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
G01R31/396
H01M10/48 P
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118558
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜久森 南
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BB01
2G216CB11
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】複数の計測データを用いた処理に適した技術を提供する。
【解決手段】情報処理方法は、複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得し、取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する処理をコンピュータが実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得し、
取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
生成した前記圧縮データに基づいて前記蓄電素子における異常を検知する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
生成した前記圧縮データの分布を可視化した分布情報を出力する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
クラスタリング手法により前記圧縮データを正常なクラスタと異常なクラスタとに分類し、
分類結果に基づいて前記蓄電素子における異常を検知する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記圧縮データの分布を可視化した分布情報上に、前記正常なクラスタと異常なクラスタとを視覚的に識別可能な形で重畳して出力する
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記基準計測データとしての同一時点における前記複数の蓄電素子の計測データの平均値又は中央値と、各蓄電素子の計測データとの差分を算出することにより、前記差分データを生成する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
主成分分析、UMAP、t-SNE又はオートエンコーダを用いて前記圧縮処理を行う
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記計測データは蓄電素子の電圧、温度及びSOCの少なくとも1つを含む
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項9】
蓄電素子の内部状態に基づいて前記蓄電素子の計測データを推定する蓄電素子シミュレータを用いて、前記蓄電素子における異常をさらに検知する
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項10】
複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得する取得部と、
取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する生成部とを備える
情報処理システム。
【請求項11】
複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得し、
取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子は、無停電電源装置、直流電源装置等に広く使用されている。また、再生可能エネルギー又は既存の発電システムにて発電された電力を蓄電しておく大規模なシステムでの蓄電素子の利用が拡大している。大規模なシステムでは複数の蓄電素子が使用されている。
【0003】
蓄電素子を使用したシステムの安定運用には、蓄電素子の状態や寿命を把握することが重要である。蓄電素子の状態診断、寿命予測等の方法については、蓄電素子の充放電時に観測される電圧、電流、温度等の計測データを用いる方法等が種々提案され、精度向上が図られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-003115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大規模な蓄電システムは多数の蓄電素子を用いて構成される。例えば、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電システムでは、数100万個といった非常に多くの蓄電素子が設置されており、その数は例えば車両の動力用又は補機用等に使用される蓄電素子数よりもはるかに多い。このような大規模蓄電システムにおいて、蓄電素子毎に所定間隔でデータを計測した場合、得られる計測データの量は膨大となる。膨大な計測データをまとめて正確に把握することは容易ではなく、また、膨大な計測データの全体に対して各種処理を実行すると、相当な処理時間を要する。複数の計測データを用いた処理に適した技術が望まれる。
【0006】
本開示の目的は、複数の計測データを用いた処理に適した技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得し、取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の計測データを用いた処理に適した技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態の遠隔監視システムの概要を示す図である。
図2】発電システムの構成例を示すブロック図である。
図3】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】端末装置の構成例を示すブロック図である。
図5】情報処理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図6】圧縮データの一例を示す図である。
図7】端末装置の表示部に表示される画面の一例を示す模式図である。
図8】情報処理装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本開示の一態様に係る情報処理方法は、複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得し、取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する処理をコンピュータが実行する。
【0011】
上記(1)に記載の情報処理方法によれば、大規模蓄電システムに備えられる複数の蓄電素子から取得された計測データを、圧縮された圧縮データに変換できる。本明細書において、圧縮処理とは、いわゆる圧縮及び解凍が可能な可逆圧縮ではなく、非可逆圧縮を意味する。計測データの圧縮により元のデータの情報を減らすことで、膨大な計測データを取り扱いやすい形に変換し、その後の処理に適したデータとして提供できる。圧縮データを生成することで、余分なノイズを低減し、その後のデータ解析の精度を向上できる。計測データそのものを圧縮するのではなく、計測データと基準計測データとの差分データを圧縮することで、基準状態とのずれを圧縮データに反映でき、集団の中における各蓄電素子の挙動を好適に把握できる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の情報処理方法において、生成した前記圧縮データに基づいて前記蓄電素子における異常を検知してもよい。
【0013】
上記(2)に記載の情報処理方法によれば、計測データを圧縮した圧縮データを用いることで、異常検知の説明性を向上できる。基準状態に対する相対値としての計測データに基づいて異常検知を行うことで、誤検知を低減し、精度よく異常を検知できる。圧縮データを用いることにより、大規模な蓄電システムに係る処理負荷の増大を抑制し、効率的な異常検知の実行につながる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)に記載の情報処理方法において、生成した前記圧縮データの分布を可視化した分布情報を出力してもよい。
【0015】
上記(3)に記載の情報処理方法によれば、圧縮データの分布状況を可視化して提示することができ、ユーザが視覚的に明確に圧縮データの分布を認識できる。圧縮された情報が提示されることで、各蓄電素子の状態を一見して容易に把握できる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、クラスタリング手法により前記圧縮データを正常なクラスタと異常なクラスタとに分類し、分類結果に基づいて前記蓄電素子における異常を検知してもよい。
【0017】
上記(4)に記載の情報処理方法によれば、クラスタリング手法を用いて、容易且つ精度よく異常検知を実行できる。機械学習手法の1種であるクラスタリング手法を用いることで、得られた計測データに基づく特徴量から異常を検知することができるため、異常検知における属人性を低減できる。圧縮データを用いることで、計測データそのものを用いる場合よりも、クラスタリングの負荷低減及び精度向上を図ることができる。教師なし学習アルゴリズムを用いることで、訓練データの用意が不要となり、未知の異常を精度よく認識できる。
【0018】
(5)上記(4)に記載の情報処理方法において、前記圧縮データの分布を可視化した分布情報上に、前記正常なクラスタと異常なクラスタとを視覚的に識別可能な形で重畳して出力してもよい。
【0019】
上記(5)に記載の情報処理方法によれば、圧縮データの分布状況と、異常検知結果とを対応付けて提示することができ、ユーザが視覚的に明確にそれらの情報を認識できる。異常検知結果を可視化して提示することで、異常検知の説明性が高まる。
【0020】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、前記基準計測データとしての同一時点における前記複数の蓄電素子の計測データの平均値又は中央値と、各蓄電素子の計測データとの差分を算出することにより、前記差分データを生成してもよい。
【0021】
上記(6)に記載の情報処理方法によれば、複数の蓄電素子の計測データに基づいて基準計測データを算出できる。実際の複数の蓄電素子の状態を考慮した基準計測データに対する相対値を用いることで、その後に行われる異常検知といった処理の精度を向上できる。集団から外れた挙動を示す異質な蓄電素子を精度よく検知できる。
【0022】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、主成分分析、UMAP、t-SNE又はオートエンコーダを用いて前記圧縮処理を行ってもよい。
【0023】
上記(7)に記載の情報処理方法によれば、機械学習手法を用いて容易且つ精度よく計測データの次元を削減できる。元の特徴量を保持したままデータを圧縮することができるため、各蓄電素子の挙動を好適に反映した圧縮データを生成できる。教師なし学習アルゴリズムを用いることで、訓練データの用意が不要となり、多様に変化する計測データの特徴を精度よく認識できる。
【0024】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、前記計測データは蓄電素子の電圧、温度及びSOC(State of Charge)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0025】
上記(8)に記載の情報処理方法によれば、計測データの中でも、変化に対する感度がよく、蓄電素子の内部状態を良好に反映する電圧、温度、SOC又はそれらの組み合わせのデータを用いることで、蓄電素子の状態を適正に表すデータを提供できる。
【0026】
(9)上記(2)から(8)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、蓄電素子の内部状態に基づいて前記蓄電素子の計測データを推定する蓄電素子シミュレータを用いて、前記蓄電素子における異常をさらに検知してもよい。
【0027】
上記(9)に記載の情報処理方法によれば、上述の手法による異常検知に加えて、蓄電素子シミュレータを用いた異常検知を行うことができるため、多面的な判定が可能となる。蓄電素子の計測データは蓄電素子の内部状態量に依存するため、異常検知において、蓄電素子の内部状態を加味できるシミュレータを用いることで、誤検知が低減される。ただし、一般的に、技術者が想定していない内部状態はシミュレータでは対応が困難のため、機械学習手法を用いた異常検知処理により、検知対象となる計測データ自体の特徴量に着目して異常を検知する方法と併用することで、想定・未知両方の異常に対する異常検知の信頼性がより高まる。
【0028】
(10)本開示の一態様に係る情報処理システムは、複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得する取得部と、取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する生成部とを備える。
【0029】
(11)本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、複数の蓄電素子における時系列の計測データを取得し、取得した各蓄電素子の計測データと基準計測データとの差分データに対し、圧縮処理を行うことで圧縮データを生成する処理をコンピュータに実行させる。
【0030】
以下、本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1に、本実施の形態の遠隔監視システム100の概要を示す。遠隔監視システム100にある発電システム200に含まれる蓄電素子に関する情報は、遠隔でアクセス可能である。遠隔監視システム100は、情報処理システムの一例である。遠隔監視システム100は、情報処理装置50を主たる装置として備える。情報処理装置50は、遠隔監視の対象となる発電システム200から情報を収集する。情報処理装置50は、インターネットなどのネットワークN1に接続されている。またネットワークN1には、端末装置60及び発電システム200が接続されている。
【0032】
情報処理装置50と端末装置60とは別個の装置に限られず、例えば情報処理装置50と端末装置60とが共通する1台の処理装置であってもよい。情報処理装置50及び端末装置60又はそれらの一方を、いずれかの発電システム200に統合してもよい。発電システム200の数は1又は3以上でもよい。
【0033】
図2は、発電システム200の構成例を示すブロック図である。太陽光発電システムや風力発電システムなどの発電装置の図示は省略する。発電システム200は、通信デバイス10、ドメイン管理装置30、蓄電ユニット(ドメイン)40を備える。サーバ装置20は、ネットワークN2を介して通信デバイス10と接続されている。蓄電ユニット40は、複数のバンク41を含んでもよい。蓄電ユニット40は、例えば、電池盤に収容されて、火力発電システム、メガソーラー発電システム、風力発電システム、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)、鉄道用の安定化電源システムなどに使用される。通信デバイス10、ドメイン管理装置30及び蓄電ユニット40を含む構成は、蓄電システムと呼ばれる。蓄電システムは、図示しないパワーコンディショナを含んでもよい。蓄電ユニット40は産業用途に限らず、家庭用のものであってもよい。
【0034】
事業者は、通信デバイス10、ドメイン管理装置30、蓄電ユニット40を含む蓄電システムの設計、導入、運用及び保守する事業を行い、蓄電システムを遠隔監視システム100により遠隔監視できる。
【0035】
通信デバイス10は、制御部11、記憶部12、第1通信部13及び第2通信部14を備える。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などで構成され、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、通信デバイス10全体を制御する。
【0036】
記憶部12は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置を備える。記憶部12は、所要の情報を記憶することができ、例えば、制御部11の処理によって得られた情報を記憶することができる。
【0037】
第1通信部13は、ドメイン管理装置30又は電池管理装置44との通信を実現する通信インタフェースを備える。制御部11は、第1通信部13を通してドメイン管理装置30との間で通信を行うことができる。
【0038】
第2通信部14は、ネットワークN2を介した通信を実現する通信インタフェースを備える。制御部11は、第2通信部14を通してサーバ装置20との間で通信を行うことができる。
【0039】
ドメイン管理装置30は、所定の通信インタフェースを用いて各バンク41との間で情報の送受信を行う。記憶部12は、ドメイン管理装置30を介して取得した計測データを記憶することができる。
【0040】
サーバ装置20は、通信デバイス10から蓄電システムの計測データを収集することができる。計測データは、蓄電システム内の各蓄電素子の電流、電圧、温度などの計測値を含む。サーバ装置20は、収集された計測データを、蓄電素子毎に区分して記憶してもよい。サーバ装置20は、ネットワークN2、N1を介して計測データを情報処理装置50に送信することができる。なお、ネットワークN1、N2は、1つの通信ネットワークであってもよい。
【0041】
バンク41は、蓄電モジュールを複数直列に接続したものであり、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)44、複数の蓄電モジュール42、及び各蓄電モジュール42に設けられた計測基板(CMU:Cell Management Unit)43などを備える。
【0042】
蓄電モジュール42は、複数の蓄電セルが直列に接続されている。発電システム200は、例えば100万個以上のような多数の蓄電セルを備える大規模蓄電システムである。蓄電セルは、蓄電素子の一例である。蓄電素子は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。蓄電素子は、蓄電モジュール42、バンク41、又はバンク41を並列に接続したドメインを意味してもよい。
【0043】
計測基板43は、蓄電モジュール42の各蓄電セルに関する計測データを取得する。計測データは、例えば、0.1秒、0.5秒、1秒などの適宜の周期で繰り返し取得することができる。
【0044】
電池管理装置44は、通信機能付きの計測基板43とシリアル通信によって通信を行うことができ、計測基板43が検出した計測データを取得することができる。電池管理装置44は、ドメイン管理装置30との間で情報の送受信を行うことができる。ドメイン管理装置30は、ドメインに所属するバンクの電池管理装置44からの計測データを集約する。ドメイン管理装置30は、集約された計測データを通信デバイス10へ出力する。このように、通信デバイス10は、ドメイン管理装置30を介して、蓄電ユニット40の計測データを取得し、記憶することができる。
【0045】
通信デバイス10は、所定タイミング(例えば一定周期、又はデータ量が所定条件を満たした場合等)で、前回のタイミング以降に記憶しておいた計測データをサーバ装置20へ送信する。通信デバイス10は、計測データに蓄電セルの識別情報(例えばセルID)を対応付けて送信する。通信デバイス10は、ドメイン管理装置30を介して得られる全ての計測データを送信してもよいし、所定の割合で間引きした計測データを送信してもよい。
【0046】
情報処理装置50は、サーバ装置20を通じて発電システム200内に設けられた蓄電セルの計測データを取得し、取得した計測データに基づいて発電システム200の状態を監視する。情報処理装置50は、機械学習の手法を用いて、取得した計測データを取り扱いやすい形式に変換し、変換後のデータを用いて蓄電セルの異常検知を行う。情報処理装置50は、端末装置60を通じて、各種解析処理の結果をユーザへ提示する。本明細書において機械学習とは、クラスタリング、主成分分析等の多変量解析を含む広義の機械学習を意味する。
【0047】
図3は、情報処理装置50の構成例を示すブロック図である。情報処理装置50は、種々の情報処理、情報の送受信が可能なコンピュータであり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、量子コンピュータ等である。情報処理装置50は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであってもよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。情報処理装置50は、制御部51、記憶部52、及び通信部53を備える。
【0048】
制御部51は、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM、RAM等を備える演算回路である。制御部51が備えるCPU又はGPUは、ROMや記憶部52に格納された各種コンピュータプログラムを実行し、上述したハードウェア各部の動作を制御する。制御部51は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えていてもよい。
【0049】
記憶部52は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性記憶装置を備える。記憶部52は、制御部51が参照する各種コンピュータプログラム及びデータ等を記憶する。記憶部52は、情報処理装置50に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0050】
本実施形態の記憶部52は、計測データを用いた処理をコンピュータに実行させるためのプログラム521と、このプログラム521の実行に必要なデータとしての計測DB(Data Base)522とを記憶している。
【0051】
計測DB522は、発電システム200から受け付けた計測データを記憶するデータベースである。計測データは、上述の通り、発電システム200内の蓄電セルの電流、電圧、温度等の計測値を含む。計測データは、蓄電セルの充電時又は放電時のデータを含む。計測データは、電流、電圧、温度等、計測基板43による計測値に加えて、それら計測値を用いて算出される計算値(例えばSOC)を含んでもよい。計測DB522には、例えば、計測データを識別するためのIDをキーに、蓄電セルの識別情報、計測日時及び計測値等の情報を紐付けたレコードが格納されている。計測DB522にはさらに、異常検知の結果等が記憶されてもよい。制御部51は、サーバ装置20から送信される計測データを受信する度、受信した計測データを時系列順に計測DB522に記憶する。
【0052】
プログラム521を含むコンピュータプログラム(プログラム製品)は、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体5Aにより提供されてもよい。記録媒体5Aは、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カード等の可搬型メモリである。制御部51は、図示しない読取装置を用いて、記録媒体5Aから所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部52に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。プログラム521は、単一のコンピュータプログラムでも複数のコンピュータプログラムにより構成されるものでもよく、また、単一のコンピュータ上で実行されても通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。
【0053】
通信部53は、ネットワークN1を介した通信を実現する通信インタフェースを備える。制御部51は、通信部53を通じて、発電システム200から送信された計測データを受信する。制御部51は、通信部53を通じて、各種処理結果を端末装置60等の外部装置へ送信する。
【0054】
情報処理装置50は、各種情報を表示する表示部やユーザの操作を受け付ける操作部等を備えてもよい。
【0055】
図4は、端末装置60の構成例を示すブロック図である。端末装置60は、種々の情報処理、情報の送受信が可能なコンピュータであり、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレット型端末等である。端末装置60は、例えば発電システム200の蓄電池システムの管理者、保守担当者、オペレータ等のユーザにより使用される。端末装置60は、制御部61、記憶部62、通信部63、表示部64及び操作部65等を備える。
【0056】
制御部61は、CPU、ROM、RAM等を備える演算回路である。制御部61が備えるCPU又はGPUは、ROMや記憶部62に格納された各種コンピュータプログラムを実行し、上述したハードウェア各部の動作を制御する。
【0057】
記憶部62は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性記憶装置を備える。記憶部62は、制御部61が参照する各種コンピュータプログラム及びデータ等を記憶する。制御部61は、記憶部62に記憶されているコンピュータプログラムに基づき、情報処理装置50により提供される各種処理結果を表示部64に表示させる。
【0058】
通信部63は、ネットワークN1を介した通信を実現する通信インタフェースを備える。制御部61は、通信部63を通じて、情報処理装置50との間で情報の送受信を行う。
【0059】
表示部64は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescent Display)等のディスプレイ装置を備える。表示部64は、制御部61からの指示に従ってユーザに報知すべき情報を表示する。表示部64は通知部と読み替えて、音声等の他の手段でユーザに報知する手段であってもよい。
【0060】
操作部65は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースである。操作部65は、例えばキーボード、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を備える。操作部65は、ユーザからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部61へ送出する。
【0061】
図5は、情報処理装置50の構成例を示す機能ブロック図である。情報処理装置50の制御部51は、記憶部52に記憶されたプログラム521を読み出して実行することにより、取得部511、第1生成部512、第2生成部513、異常検知部514、及び出力部515の各機能を実現する。情報処理装置50の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよく、ハードウェア的に実現してもよく、それらの組合せによって実現してもよい。
【0062】
取得部511は、発電システム200内における複数の蓄電セルについて、予め設定される所定期間における時系列の計測データを取得する。計測データには、蓄電セルの識別情報が対応付けられている。取得部511は、通信部53を介してサーバ装置20から送信される計測データを取得してもよく、計測DB522に格納された計測データを読み出すことにより、計測データを取得してもよい。上記所定期間は、例えば1時間、1日、1か月等であってもよい。
【0063】
計測データは、蓄電セルの電圧、温度、SOC、電流及び電力から選択される1又は複数のデータを含む。計測データとしては、異常検知精度向上の観点から、電圧、温度及びSOCの少なくとも1つを含むことが好ましく、電圧を含むことがより好ましい。本実施形態では、計測データとして蓄電セルの電圧データを取得する。
【0064】
取得部511は、発電システム200内における全ての蓄電セルを計測データの取得対象としてもよいが、全ての蓄電セルのうち所定数の蓄電セルを、計測データの取得対象として選択することで、処理負荷を低減できる。取得対象となる蓄電セルは、予め所定ルールに従い又は人手により選択されてもよい。取得対象となる蓄電セルは、例えば、発電システム200を特定単位(例えばバンク毎)に分割した場合の各単位における、負荷又は温度を代表する蓄電セルであることが好ましい。取得対象となる蓄電セルの数は、発電システム200内における蓄電セルの総数を考慮して決定できる。
【0065】
第1生成部512は、取得部511で取得した各蓄電セルの電圧データに基づき、各蓄電セルの電圧値と、基準電圧値との差分を表す差分データを生成する。第1生成部512は、同一時点(同一計測時刻)における蓄電セルの電圧値と、基準電圧値との差分を計測時刻毎に算出することにより、時系列の差分データを求める。基準電圧値は、例えば同一計測時刻における全ての蓄電セルの電圧値の平均値又中央値を用いる。差分データは、電圧値の計測回数に応じたデータ数を有する高次元のデータである。
【0066】
第2生成部513は、所定の圧縮手法を用いて、第1生成部512により生成された差分データを圧縮し、圧縮データを生成する。圧縮手法としては、次元圧縮手法が挙げられ、例えば主成分分析(Principal Component Analysis:PCA)、UMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection )、t-SNE(t-distributed Stochastic Neighbor Embedding)、オートエンコーダ等を用いることができる。次元圧縮手法としては主成分分析が好ましい。第2生成部513は、圧縮処理により、差分データの次元を削減した低次元のデータを生成する。後述する分布情報などにより圧縮データをユーザに提示する場合、圧縮データは、2次元又は3次元まで削減したデータが好ましい。
【0067】
図6は、圧縮データの一例を示す図である。図6は、各蓄電セルにおける所定期間の計測データを、主成分分析を用いて2次元に圧縮処理した例を示す。図6では、横軸を第1主成分、縦軸を第2主成分とする二次元座標上に、各蓄電セルの圧縮データをマッピングしている。図6に概念的に示すように、ある蓄電セルに対応する所定期間分の電圧データが、1つのプロットで示される圧縮データに変換される。
【0068】
主成分分析により次元圧縮する場合、第2生成部513は、各成分の累積寄与率に基づいて用いる主成分を決定してもよい。第2生成部513は、累積寄与率の高い順に予め設定された数の主成分を取り出すことで、差分データを所定の次元数まで圧縮してもよい。第2生成部513は、累積寄与率が予め設定された閾値以上である主成分を取り出してもよい。
【0069】
計測データの取得単位となる所定期間の差分データに基づいて、1つの圧縮データが生成されることが好ましいが、上記所定期間が比較的長い場合には、所定期間を予め設定される時間単位で区切り、時間単位毎に圧縮データが生成されてもよい。圧縮データの生成単位は、計測データを用いた解析処理の目的に応じて適宜設定されてよい。
【0070】
第2生成部513は、複数の圧縮手法を組み合わせて圧縮処理を行ってもよい。第2生成部513は、例えば、主成分分析を行った後、さらにUMAPにより次元を圧縮してもよい。
【0071】
異常検知部514は、第2生成部513で生成した各蓄電セルの圧縮データに基づき、蓄電セルにおける異常を検知する。本実施形態の異常検知部514は、クラスタリング手法の1つであるk-meansを用いて異常検知を行う。
【0072】
k-meansは、教師なし機械学習の1つであり、各圧縮データを、事前に指定されたクラスタ数の個数分だけ自動分類する。本実施形態では、図6に示すように、3つのクラスタ数を指定することにより、各圧縮データを、1つの正常なクラスタと、残り(2つ)の異常なクラスタとに分類する。図6中、実線で囲むクラスタが正常なクラスタであり、破線で囲むクラスタが異常なクラスタである。
【0073】
k-meansでは、圧縮データの各クラスタ中心との距離(例えばユークリッド距離、マハラノビス距離等)を算出し、算出された距離が最小であったクラスタに圧縮データを分類する。異常検知部514は、生成した複数のクラスタのうち、所属する圧縮データの数が最も多いクラスタを正常なクラスタとみなし、残りのクラスタを異常なクラスタとみなすことができる。異常検知部514は、各蓄電セルの圧縮データのクラスタリング結果に基づいて、異常な蓄電セルを特定する。
【0074】
上記ではk-meansを用いて異常検知を行うものとしたが、各蓄電セルの圧縮データに対し異常の有無を識別可能であれば異常検知手法はこれに限らない。異常検知部514は、階層型クラスタリング、k近傍法、自己回帰モデル、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等の手法を用いてもよい。異常検知部514は、複数の異常検知方法を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
出力部515は、第2生成部513で生成した圧縮データ及び異常検知部514による異常検知結果を示す画面情報を端末装置60へ出力する。端末装置60の制御部61は、出力部515を通じて送信された画面情報に基づいて、圧縮データ及び異常検知結果を示す画面を表示部64に表示する。
【0076】
図7は、端末装置60の表示部64に表示される画面640の一例を示す模式図である。画面640には、異常と検知された蓄電セルに関する情報を表示する結果表示部641と、各蓄電セルの圧縮データを表示するデータ表示部642とが含まれる。
【0077】
出力部515は、異常検知部514による異常検知結果を受け付け、異常と検知された蓄電セルを視覚的に判別可能な形で結果表示部641に表示させる。図7では、結果表示部641は、異常と検知された蓄電セルのセルIDと、発電システム200内における配置位置を示すイラストとを表示する。
【0078】
出力部515は、第2生成部513から圧縮データを受け付け、受け付けた圧縮データの分布を可視化した分布情報を生成する。出力部515は、生成した分布情報をデータ表示部642に表示させる。分布情報は、例えば、第1軸(横軸)を第1主成分、第2軸(縦軸)を第2主成分、第n軸を第n主成分…、とするn次元座標上に、各蓄電セルの圧縮データをマッピングした分布図である。図7では、2次元の分布図を示す。
【0079】
分布図上には、異常検知部514によるクラスタリング結果又は異常検知の結果を視認可能に示す情報が重畳されていてもよい。図7では、クラスタ毎に異なる色や濃淡(図7では異なる濃淡)を付したマーカにより分布図上に圧縮データを表示することで、クラスタリング結果を可視化して示す。また、正常なクラスタの領域と、異常なクラスタの領域とを切り分ける実線を分布図上に表示することで、異常検知の結果を視覚的に識別可能に示す。
【0080】
分布図上の各圧縮データを示すマーカは選択可能に構成されてもよい。出力部515は、例えば、端末装置60を通じて分布図上におけるいずれかのマーカの選択を受け付けた場合、記憶部52に記憶する情報に基づいて、受け付けたマーカに対応する蓄電セルの識別情報や、圧縮前の計測データ等を読み出す。出力部515は、図7に示すように、読み出した識別情報や計測データをポップアップ形式又は別ウインドウで表示させる。
【0081】
情報処理装置50は、異常検知部514を備えず、圧縮データの生成までを行う構成であってもよい。この場合、処理結果として圧縮データのみが出力される。端末装置60を通じて提供された圧縮データに基づいて、ユーザにより異常検知が行われてもよい。
【0082】
図8は、情報処理装置50が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の各フローチャートにおける処理は、情報処理装置50の記憶部52に記憶するプログラム521に従って制御部51により実行される。制御部51は、以下に示す処理手順を周期的に実行する。
【0083】
情報処理装置50の制御部51は、発電システム200に含まれる複数の蓄電セルそれぞれの、所定期間における時系列の計測データを取得する(ステップS11)。計測データは、例えば電圧データである。
【0084】
制御部51は、取得した各蓄電セルの電圧データに基づき、各蓄電セルの電圧値と、基準電圧値との差分を算出することにより、各蓄電セルの差分データを生成する(ステップS12)。差分データは、電圧差分の時系列データである。制御部51は、例えば、同一計測時刻における全ての蓄電セルの電圧値の平均値又中央値を算出することにより、計測時刻毎の基準電圧値を求める。制御部51は、各計測時刻における基準電圧値と、差分データの生成対象となる対象蓄電セルの電圧値との差分を算出することにより、対象蓄電セルの差分データを生成する。差分データは、複数の蓄電セルそれぞれについて生成される。
【0085】
上記では、基準値(本実施例では基準電圧値)の一例として、全ての蓄電セルの計測データに関する平均値又中央値を用いる場合を説明した。しかし、それに限る必要は無く、予め基準を設ける(別途の実験値を用いる)、基準値を適宜学習させて更新させた更新基準値を用いる、定義式を用いて基準値を補正した値、コンピュータが無作為に複数選択した蓄電セルからの計測データの平均値又中央値、予め複数選択した代表蓄電セルの平均値又中央値を用いても良い。或いは、基準値をシミュレーションで計算させた理想基準値を用いても良い。状況、場面に応じて、これらの基準値を選択してもよい。
【0086】
制御部51は、生成した差分データに対し主成分分析による圧縮処理を行い、各蓄電セルの圧縮データを生成する(ステップS13)。制御部51は、例えば主成分分析により2次元まで次元圧縮した圧縮データを生成する。
【0087】
制御部51は、第2生成部513で生成した各蓄電セルの圧縮データに基づき、クラスタリング手法を用いて異常検知を行う(ステップS14)。制御部51は、各蓄電セルの圧縮データを正常なクラスタと異常なクラスタとに分類する。制御部51は、分類結果に基づいて、異常なクラスタに所属する圧縮データに対応する蓄電セルを、異常な蓄電セルとして検知する。
【0088】
制御部51は、各蓄電セルの圧縮データの分布を表す分布図及び異常検知結果を含む画面を生成する(ステップS15)。制御部51は、2次元座標上に、各蓄電セルの圧縮データをマッピングした分布図と、異常と検知された蓄電素子を示す情報とを含む画面を生成する。分布図の生成は、圧縮データの生成又はクラスタリング処理と同時に行われてもよい。制御部51は、分布図上に、クラスタリング結果を視認可能に示すとともに、正常なクラスタと異常なクラスタとを識別可能に表示する。
【0089】
制御部51は、生成した分布図及び異常検知結果を含む画面を端末装置60へ出力し(ステップS16)、端末装置60の表示部64を通じて表示させる。制御部51は、一連の処理を終了する。
【0090】
(第2実施形態)
第2実施形態の情報処理装置50は、異常検知処理として、第1実施形態で説明した機械学習手法による異常検知に加えて、蓄電セル(蓄電素子)シミュレータを用いた異常検知を行う。以下では主に上記相違点を説明する。
【0091】
蓄電セルシミュレータとは、蓄電セルの挙動を模擬するよう構築されたシミュレータを意味する。蓄電セルシミュレータは、蓄電セルの内部状態量に基づき蓄電セルの計測データを出力することができる。蓄電セルシミュレータに与える内部状態量は、例えば蓄電セルのSOC、内部温度、正極容量、負極容量、容量バランスのずれ等を含んでもよい。容量バランスのずれとは、蓄電セルの正極と負極とにおける、可逆的に電荷イオンが電極から出入りできる容量の相違を意味する。
【0092】
蓄電セルシミュレータは、蓄電セルの使用履歴をさらに入力要素に含んでもよい。使用履歴とは、蓄電セルの使用パターン(使われ方)を示す情報を意味する。使用履歴は、例えば所定期間に亘る蓄電セルの電力又は電流(負荷)の推移を表す情報、所定期間に亘る環境温度の推移を表す情報等を含んでもよい。
【0093】
以下では、説明の便宜のため、異常検知処理の対象となる蓄電セルを対象セルと記載し、異常検知を行う際の比較基準となるセルを代表セルと記載する。代表セルは、例えば、発電システム200における配置や、電圧、電流、温度等の計測データを考慮して、発電システム200内における蓄電セルの中から選択される。
【0094】
第2実施形態の情報処理装置50は、第1実施形態のステップS14において、機械学習手法による異常検知とともに、蓄電セルシミュレータを用いた異常検知を実行する。
【0095】
蓄電セルシミュレータを用いた異常検知手法は限定的ではないが、以下に一例を示す。情報処理装置50は、代表セル及び対象セルの電圧、電流及び温度を含む計測データに基づいて、代表セル及び対象セルそれぞれの使用履歴を求める。情報処理装置50は、代表セル及び対象セルそれぞれについて、取得した計測データ及び使用履歴に対応する内部状態量を、蓄電セルシミュレータを用いて求める。情報処理装置50は、内部状態量の仮値を設定し、設定した内部状態量の仮値及び特定した使用履歴に基づいて、蓄電セルシミュレータから出力される計測データが、実際の計測データに近似するよう、内部状態量の最適値を探索する。情報処理装置50は、例えば遺伝的アルゴリズム、Nelder-mead法、勾配法等の公知の最適化手法を用いて、内部状態量の最適値を探索する。
【0096】
情報処理装置50は、得られた代表セルの内部状態量と、対象セルの内部状態量との差分が、予め設定されている閾値未満であるか否かを判定することにより、対象セルの異常を検知する。情報処理装置50は、内部状態量の差分が閾値未満である場合、対象セルを正常と判定し、内部状態量の差分が閾値以上である場合、対象セルを異常と判定する。
【0097】
上述した実施の形態では、上記フローチャートにおける各処理を情報処理装置50が実行する例を説明した。代替的に、上述の処理の一部又は全部は、例えばドメイン管理装置30、サーバ装置20、端末装置60等、他の処理主体により実行されてもよい。
【0098】
上述した実施の形態では、図1のような遠隔監視システムにて説明したが、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムは、移動体(自動車、鉄道、飛行機、船舶など)に適用されてもよい。また、例えば、図1のような遠隔的なシステム以外に、全てのシステムを搭載(例えば、移動体に全てのシステムを搭載)して完結する様態であってもよい。
【0099】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。
【0100】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0101】
100 遠隔監視システム(情報処理システム)
200 発電システム
10 通信デバイス
11 制御部
12 記憶部
13 第1通信部
14 第2通信部
20 サーバ装置
30 ドメイン管理装置
40 蓄電ユニット
41 バンク
42 蓄電モジュール
43 計測基板
44 電池管理装置
50 情報処理装置
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
521 プログラム
522 計測DB
5A 記録媒体
60 端末装置
61 制御部
62 記憶部
63 通信部
64 表示部
65 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8