(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152616
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20251002BHJP
A23B 70/00 20250101ALI20251002BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20251002BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20251002BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20251002BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L2/00 N
A23L2/38 C
A21D2/36
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054590
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇典
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B117
【Fターム(参考)】
4B023LC08
4B023LE26
4B023LK01
4B023LP14
4B032DB05
4B032DB21
4B032DG02
4B032DG04
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4B117LC01
4B117LE08
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4B117LG18
4B117LK01
4B117LL09
4B117LP03
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】飲食品原料に添加することで、緑色が良好に保持され、呈味に優れた飲食品が得られる組成物を提供すること。
【解決手段】緑色野菜、銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる1以上の金属イオン、並びに、水を含有する組成物であり、銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が100質量ppm超である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色野菜、銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる1以上の金属イオン、並びに、水を含有し、
前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が100質量ppm超であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物を含有することを特徴とする容器詰飲料。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を飲食品原料に添加することを特徴とする飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色野菜を含有する組成物、並びにかかる組成物を含有する飲食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜不足を手軽に解消するために、大麦若葉、ケール等の緑色野菜を利用したいわゆる青汁飲料が用いられている。これら青汁飲料等の緑色野菜飲料は、緑色が経時的に劣化し、緑色野菜の特徴である緑色を長期間保持することが難しい。
【0003】
これまで、これら緑色野菜飲料の退色防止に関する研究が行われており、例えば、緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有し、緑色保持率=(殺菌後の-a/b)÷(殺菌前の-a/b)で定義される緑色保持率が0.8以上である飲料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、緑色野菜に含まれるクロロフィル中のマグネシウムを銅や亜鉛で置換して安定化する退色防止方法が知られているが、このような銅や亜鉛を用いた退色防止方法においては、金属イオン濃度が増大するにつれて金属味も増大する。そのため、緑色の退色防止と共に、金属味を感じにくい呈味の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、緑色野菜の緑色が良好に保持され、呈味に優れる飲食品を得るための組成物及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを高濃度で含有する緑色野菜含有組成物を調製し、その後、当該組成物を飲食品原料に添加し希釈して銅イオン又は亜鉛イオンを低濃度で含有する飲食品とすることにより、緑色が良好に保持されると共に呈味に優れた飲食品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1] 緑色野菜、銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる1以上の金属イオン、並びに、水を含有し、前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が100質量ppm超であることを特徴とする組成物。
[2] 前記銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が170~500質量ppmであることを特徴とする[1]に記載の組成物。
【0009】
[3] 緑色野菜が大麦若葉、ケール、明日葉、ヨモギ、桑葉、長命草及び甘藷若葉、クマザサの中から選ばれる1以上の青汁素材であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 緑色野菜が大麦若葉及びケールの中から選ばれる1以上の青汁素材であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 緑色野菜が大麦若葉であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 緑色野菜の含有量が8質量%以上であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 緑色野菜の含有量が25質量%以下であることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
【0010】
[8] 上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする飲食品。
[9] 上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする容器詰飲料。
[10] 上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物を飲食品原料に添加することを特徴とする飲食品の製造方法。
【0011】
[11] 緑色野菜、銅イオン、並びに、水を含有し、前記銅イオンの濃度が100質量ppm超であることを特徴とする組成物。
[12] 前記銅イオンの濃度が170~500質量ppmであることを特徴とする上記[11]に記載の組成物。
【0012】
[13] 緑色野菜が大麦若葉、ケール、明日葉、ヨモギ、桑葉、長命草及び甘藷若葉、クマザサの中から選ばれる1以上の青汁素材であることを特徴とする上記[11]又は[12]に記載の組成物。
[14] 緑色野菜が大麦若葉及びケールの中から選ばれる1以上の青汁素材であることを特徴とする上記[11]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[15] 緑色野菜が大麦若葉であることを特徴とする上記[11]~[14]のいずれかに記載の組成物。
[16] 緑色野菜の含有量が8質量%以上であることを特徴とする上記[11]~[15]のいずれかに記載の組成物。
[17] 緑色野菜の含有量が25質量%以下であることを特徴とする上記[11]~[16]のいずれかに記載の組成物。
【0013】
[18] 上記[11]~[17]のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする飲食品。
[19] 上記[11]~[17]のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする容器詰飲料。
[20] 上記[11]~[17]のいずれかに記載の組成物を飲食品原料に添加することを特徴とする飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、緑色野菜の緑色が良好に保持され、呈味に優れる飲食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物は、緑色野菜、銅イオン及び亜鉛イオンの中から選ばれる1以上の金属イオン、並びに、水を含有し、銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度が100質量ppm超であることを特徴とする。
【0016】
本発明の組成物を飲食品原料に添加することにより得られる飲食品は、緑色野菜の緑色が良好に保持され、呈味に優れる。具体的には、本発明の組成物を水等の液体で希釈して得られる青汁飲料などの緑色野菜飲料は、金属味を感じにくい。
【0017】
[緑色野菜]
本発明の緑色野菜は、クロロフィルを含み、一般に緑色を呈する野菜類である。具体的には、大麦若葉、ケール、明日葉、ヨモギ、桑葉、長命草、甘藷若葉、クマザサ、茶、ゴーヤ、ほうれん草、セロリ、ブロッコリー、キャベツ、小松菜、レタス、パセリ、モロヘイヤ、クレソン、ピーマン等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明の効果をより享受できる点から、青汁素材が好ましく、例えば、大麦若葉、ケール、明日葉、ヨモギ、桑葉、長命草、甘藷若葉、クマザサ等を挙げることができ、大麦若葉、ケールが好ましく、大麦若葉が特に好ましい。
【0018】
緑色野菜は、例えば、粉砕物、搾汁、抽出物等として配合することができる。粉砕物としては、乾燥粉末、顆粒等を挙げることができる。搾汁や抽出物は、液状であってもよいが、乾燥粉末(搾汁末、エキス末)として用いることもできる。抽出物は、適当な溶媒を用いて抽出することで得ることができ、溶媒としては、例えば、水(温水、熱水)、エタノール、含水エタノールを用いることができる。本発明においては、緑色野菜に含まれるクロロフィル中のマグネシウムを銅や亜鉛で置換して安定化することで退色防止効果を奏することから、緑色野菜がクロロフィルを高含有する剤形の場合に、緑色保持の効果をより享受できる。したがって、本発明の効果をより享受できる点から、緑色野菜としては、緑色野菜の乾燥粉末(緑色野菜粉砕末)を用いることが特に好ましい。
【0019】
本発明の組成物中における緑色野菜の含有量に特に制限はないが、飲食品中における緑色野菜の含有量を多くして栄養素の摂取を促進するという点から、組成物中の緑色野菜の含有量はある程度高いことが好ましい。本発明の組成物中の緑色野菜の含有量としては、栄養素摂取の点から、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましく、12質量%以上が最も好ましい。一方で、組成物中の緑色野菜の含有量があまりに高いと、組成物の粘度が高くなり過ぎるため、飲食品原料に添加して希釈する際に他の飲食品原料と均一に混合しにくくなる。飲食品原料として用いる場合の取扱いやすさの点から、本発明の組成物中の緑色野菜の含有量としては、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、22質量%以下が特に好ましく、20質量%以下が最も好ましい。なお、本発明の組成物に複数の緑色野菜を配合する場合には、本発明の組成物中における緑色野菜の含有量とは、配合した緑色野菜の合計量を意味する。
【0020】
[銅イオン・亜鉛イオン]
本発明の銅イオン及び亜鉛イオンは、緑色野菜に含まれるクロロフィル中のマグネシウムを置換し、クロロフィルを安定化する。銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度は、本発明の組成物中、100質量ppm超であり、110~900質量ppmが好ましく、150~700質量ppmがより好ましく、170~500質量ppmがさらに好ましく、180~350質量ppmが特に好ましい。なお、この銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度は、両金属イオンが含まれている場合は、両金属イオンの合計の濃度であり、一方の金属イオンのみが含まれている場合は、その含まれている金属イオンの濃度である。銅イオン及び亜鉛イオンの濃度は、ICP発光分光分析法等の公知の測定方法により測定することができ、例えば、ICP発光分光分析装置として、アジレントテクノロジー株式会社「Agilent 5900 ICP-OES」を用いることにより測定することができる。
【0021】
銅イオン及び亜鉛イオンを本発明の組成物に含有させる方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、銅や亜鉛を含有する添加物を配合する方法や、特開昭60-075249号公報に記載されるように銅製や亜鉛製の鍋を用いて液体原料(水、緑色野菜含有水等)を加熱することにより鍋から銅イオンや亜鉛イオンを溶出させて含有させる方法、特開2011-147347号公報に記載されるように銅イオン水又は亜鉛イオン水を用いる方法を挙げることができる。銅や亜鉛を含有する添加物を配合する方法としては、銅又は亜鉛のグルコン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩等の水溶性塩を添加し含有させる方法や、亜鉛酵母や銅酵母などの銅イオンや亜鉛イオンを高濃度で含有する素材を添加し含有させる方法等を挙げることができる。
【0022】
本発明の組成物の形態としては、液状、ペースト状、固形状等を挙げることができるが、取り扱いの点や本発明の効果をより有効に享受できる点から、ペースト状が好ましい。ペースト状組成物の場合、飲食品原料として用いる場合の取扱いやすさの点から、組成物中に水が75~92質量%含まれていることが好ましく、78~90質量%含まれていることがより好ましく、80~88質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の組成物は、例えば、緑色野菜と、銅イオン又は亜鉛イオンを含有する物質と、水とを混合することにより製造することができる。また、銅製又は亜鉛製の鍋で緑色野菜含有水を加熱して銅イオン又は亜鉛イオンを溶出させることにより製造することができる。さらに、銅製又は亜鉛製の鍋で水を加熱して銅イオン又は亜鉛イオンを溶出させ、これに緑色野菜を混合することにより製造することができる。なお、適宜、通常食品分野で用いられる添加剤を配合してもよい。
【0024】
本発明の組成物は、経口可能な組成物(経口組成物)であり、他の飲食品原料に配合する飲食品原料として用いることができる。本発明の組成物を配合する飲食品原料は、飲食品の製造に用いられる経口可能な材料であり、そのまま食することができるもの(一般的に飲食品と称されるもの)であってもよい。また、飲食品原料には、水が含まれる。
【0025】
[飲食品]
本発明の飲食品は、上記本発明の組成物を含有する。
本発明の飲食品としては、例えば、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、スムージー、青汁飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子(クッキー、ケーキ等)、パン等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及びその加工食品;ソース、醤油等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、牛丼、ハヤシライス、オムライス、おでん、マーボドーフ、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール、各種ソース、各種スープ等のレトルトパウチ食品などを挙げることができる。
【0026】
本発明の飲食品としては、飲料が好ましく、青汁飲料が特に好ましい。飲料の形態としては、ペットボトル、缶、瓶等に充填された容器詰飲料を挙げることができる。容器詰飲料は、例えば、大麦若葉等の緑色野菜を含有する上記本発明の組成物(大麦若葉ペースト等)と、水とを混合し、容器に充填することにより製造することができる。この際、別途、大麦若葉末等の青汁素材粉末を配合してもよい。本発明の組成物とは別に青汁素材粉末を飲食品に配合する場合、青汁素材粉末の配合量としては、本発明の組成物に含まれる青汁素材の10~500質量%程度が好ましく、50~200質量%程度がより好ましい。
【0027】
本発明の飲食品においては、上記組成物に含まれる銅イオン及び亜鉛イオンが希釈される。飲食品中の銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度としては、0.1~100質量ppmであることが好ましく、1~50質量ppmであることがより好ましく、3~40質量ppmであることがさらに好ましい。本発明の飲食品が飲料の場合には、飲料中の銅イオン及び/又は亜鉛イオンの濃度としては、緑色退色防止、及び金属味抑制の点から、1~50質量ppmであることが好ましく、2~40質量ppmであることがより好ましく、2.5~30質量ppmであることがさらに好ましく、3~20質量ppmであることが特に好ましい。
【0028】
本発明の組成物を飲食品原料に添加して希釈することにより得られる飲食品は、本発明の組成物を製造する工程を経ずに、銅及び/又は亜鉛を含有する原料を直接添加することによって得られる飲食品に比べて、飲食品中における銅イオンや亜鉛イオンの濃度が同じであっても、金属味を感じにくく、呈味に優れている。この理由は定かではないが、緑色野菜を銅イオンや亜鉛イオンが高濃度の状態におくことで、中心金属がマグネシウムから銅や亜鉛に置換されるクロロフィルの割合が増加する可能性がある。その結果、飲食品中において遊離した状態で存在する銅イオンや亜鉛イオンの量が減ることで、銅や亜鉛の金属味を感じにくくなっていることが可能性として考えられる。また、本発明の組成物を添加して希釈することにより得られる飲食品は、銅及び/又は亜鉛を含有する原料を直接添加することによって得られる飲食品に比べて、飲食品中における銅イオンや亜鉛イオンの濃度が同じであっても長期間にわたって緑色が良好に保持されるが、これも同様の理由であることが推測される。
【0029】
本発明の組成物を飲食品原料に添加して希釈することにより飲食品を得る場合には、銅及び/又は亜鉛を含有する原料を直接添加することによって飲食品を得る場合に比べて、製造コストが高くなるというデメリットがある。製造コストの削減はあらゆる飲食品において共通する課題であるため、銅又は亜鉛イオンを高濃度で含有する組成物を製造し、その後にそれを希釈して飲食品を製造するという手間のかかる方法をあえて行う当業者はこれまでいなかった。製造の工程数が増えることにより、製造コストが増加するためである。本発明者らも以前にはそのように考えていたが、緑色が良好に保持され、かつ、呈味に優れた飲食品を製造するために試行錯誤を繰り返す中で、本発明の組成物を飲食品原料に添加して希釈することで、金属味を感じにくく、呈味に優れた飲食品を得られることを偶然に見出した。本発明はそのようにして完成されたものであり、飲食品分野における技術常識からすれば通常は行わない方法をあえて試したことによって見出すことができた発明である。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例において、%、ppm等の濃度は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0031】
<大麦若葉ペースト(本発明の組成物)の製造>
大麦若葉として、背丈が約30cmで刈り取った大麦の地上部(葉及び茎)を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5-10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した大麦若葉を、90-100℃の熱湯で90秒間-120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた大麦若葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間-180分間、80℃-130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した大麦若葉を約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦若葉を微粉砕処理することにより、メディアン径20μmの大麦若葉末を製造した。メディアン径についてはレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(LMS-300;株式会社セイシン企業)により測定した。
【0032】
得られた大麦若葉末、グルコン酸銅及び水を、それぞれ所定の濃度となるように混合して攪拌した後、殺菌処理(100℃、10分間)を行い、実施例に係る大麦若葉ペーストA~Dをそれぞれ1000gずつ得た。なお、比較として、同様に、銅イオン90ppmの大麦若葉ペーストXを1000g製造した。
【0033】
【0034】
<容器詰青汁飲料の製造>
(コントロール)
大麦若葉末の濃度が1質量%となるように大麦若葉末を水と混合した。その後、ペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に200mLを充填し、キャップを閉めて、コントロールの容器詰青汁飲料を製造した。
【0035】
(比較例1)
表2の濃度になるように、大麦若葉末、グルコン酸銅及び水を混合し、殺菌処理(100℃、10分間)を行った。その後、ペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に200mLを充填し、キャップを閉めて比較例1の容器詰青汁飲料を製造した。
(比較例2,実施例1~4)
表2の濃度になるように、上記製造した大麦若葉ペーストX及びA~Dを水と混合した。その後、ペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に200mLを充填し、キャップを閉めて、比較例2の容器詰青汁飲料及び実施例1~4の容器詰青汁飲料を製造した。
【0036】
上記の製造した容器詰青汁飲料を、55℃の環境下にて7日間保管して下記の評価を実施した。なお、55℃とは、自動販売機にてホット飲料が加温される一般的な温度である。
【0037】
<評価>
製造した容器詰青汁飲料について、青汁の開発業務に従事する官能試験の専門パネラーにより、外観(緑色)及び金属味を評価した。
【0038】
容器詰青汁飲料の外観(緑色)の評価は、コントロールと比較による以下の基準にて行った。
【0039】
[評価基準]
◎ :緑色の鮮やかさがコントロールよりも優れている。
〇 :緑色の鮮やかさがコントロールよりもやや優れている。
△ :緑色の鮮やかさがコントロールと同等。
× :緑色の鮮やかさがコントロールよりもやや劣る。
××:緑色の鮮やかさがコントロールよりも劣る。
【0040】
容器詰青汁飲料の金属味の評価は、比較例1との比較による以下の基準にて行った。
【0041】
[評価基準]
〇:比較例1よりも金属味が弱い。
△:比較例1と同等に金属味を感じる。
×:比較例1よりも金属味が強い。
【0042】
表2に、評価結果を示す。
【0043】
【0044】
表2に示すように、銅イオンを高濃度で含有する大麦若葉ペーストを希釈することにより得られた実施例1-4の容器詰青汁飲料は、大麦若葉ペーストを用いずに大麦若葉末を用いて調製した比較例1の容器詰青汁飲料に比べて、金属味が弱く、飲みやすいものであった。特に、実施例3及び4の容器詰青汁飲料では、比較例1の容器詰青汁飲料よりも銅イオンの濃度が高いにもかかわらず、金属味は比較例1の容器詰青汁飲料よりも弱かった。また、実施例1-4の容器詰青汁飲料は、比較例1の容器詰青汁飲料と同様に鮮やかな緑色を呈しており、青汁飲料の緑色が保持されていた。このことから、銅イオンを高含有する組成物を青汁飲料の原料として用いることにより、銅イオンを配合した従来の青汁飲料と同等の緑色保持作用を示し、かつ、金属味が弱く飲みやすい青汁飲料を得られることが分かった。
【0045】
(実施例5~45)
青汁素材と、銅又は亜鉛及び水を、それぞれ所定の濃度となるように混合して攪拌した後、殺菌処理(100℃、10分間)を行い、表3~5の濃度となるように調製した青汁ペーストを100gずつ作成した。なお、銅としてはグルコン酸銅又は銅含有酵母(銅含有量1質量%)、亜鉛としてはグルコン酸亜鉛又は亜鉛含有酵母(亜鉛含有量5質量%)を用いた。その後、製造した青汁ペーストを水と混合し、ペットボトル容器(容量200mL、直径54mm×高さ132mm、口径28mm)に200mLを充填し、キャップを閉めて、実施例5~45の容器詰青汁飲料を製造した。得られた容器詰青汁飲料は、いずれも緑色野菜の緑色が良好に保持され、金属味が弱く飲みやすい青汁飲料であった。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
<クッキーの製造>
(実施例46)
下記成分からなるクッキーを製造した。本クッキーは、緑色野菜の緑色が良好に保持され、金属味が弱く美味しいものであった。
大麦若葉ペースト(大麦若葉末20質量%含有) 7.41質量%
薄力粉 37.04質量%
バター 15.43質量%
砂糖 18.52質量%
ベーキングパウダー 1.54質量%
卵 20.06質量%
【0050】
<シフォンケーキの製造>
(実施例47)
下記成分からなるシフォンケーキを製造した。本シフォンケーキは、緑色野菜の緑色が良好に保持され、金属味が弱く美味しいものであった。
小麦粉 100g
砂糖 120g
卵 6個
大麦若葉ペースト(大麦若葉15質量%含有) 180g
ごま油 80g