(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152655
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
H02M3/28 E
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054657
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】角田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】永吉 謙一
(72)【発明者】
【氏名】川畑 良尚
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA14
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF09
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】DC/DCコンバータの高調波成分を低減できる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】制御部30は、スイッチングにより生じる高調波を低減するように、トランスTRの一次側の両端に第1電圧波形vaを印加し、及びトランスTRの二次側の両端に第2電圧波形vbを印加する。第1電圧波形vaは、一次側ブリッジ回路B1のスイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングを第1基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内で5回以上の電圧変化を有する。第2電圧波形vbは、二次側ブリッジ回路B2のスイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングを第2基準を中心とした点対称の波形であって、第2所定期間内で5回以上の電圧変化を有する。第1電圧波形vaと、第2電圧波形vbとは、電力変換装置10の動作に伴う所定の位相差が生じた波形であって、同一の時間間隔において変化する波形である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電源に接続され、複数のレグを有する一次側ブリッジ回路と、
第2直流電源に接続され、前記一次側ブリッジ回路と同数のレグを有する二次側ブリッジ回路と、
一次側巻線と、二次側巻線と、前記一次側巻線、又は前記二次側巻線の少なくとも一方に接続されたリアクトルとを有するトランスと、を備えるDAB方式のDC/DCコンバータと、
前記一次側ブリッジ回路と、前記二次側ブリッジ回路とを制御する制御部と、を備え、
前記一次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記一次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記一次側巻線が接続され、又は前記二次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記二次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記二次側巻線が接続され、
前記制御部は、スイッチングにより生じる高調波を低減するように、前記トランスの一次の両端に第1電圧波形を印加し、及び前記トランスの二次の両端に第2電圧波形を印加し、
前記第1電圧波形は、前記一次側ブリッジ回路の前記スイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第1基準とした第1所定期間において、前記第1基準を中心とした点対称の波形であって、前記第1所定期間内で5回以上の電圧変化を有し、
前記第2電圧波形は、前記二次側ブリッジ回路の前記スイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第2基準とした第2所定期間において、前記第2基準を中心とした点対称の波形であって、前記第2所定期間内で5回以上の電圧変化を有し、
前記第1電圧波形と、前記第2電圧波形とは、前記DC/DCコンバータの動作に伴う所定の位相差が生じた波形であって、同一の時間間隔において変化する波形である、
電力変換装置。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータは、車両に搭載され、
前記スイッチングは、数kHzから数十kHzのスイッチング周波数により実行され、
前記第1電圧波形、及び前記第2電圧波形は、前記スイッチングにより生じる高調波のうち、3次の高調波を低減するように設定される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータは、車両に搭載され、
前記スイッチングは、数kHzから数十kHzのスイッチング周波数により実行され、
前記第1電圧波形、及び前記第2電圧波形は、前記スイッチングにより生じる高調波のうち、5次の高調波を低減するように設定される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
第1直流電源に接続され、複数のレグを有する一次側ブリッジ回路と、
第2直流電源に接続され、前記一次側ブリッジ回路と同数のレグを有する二次側ブリッジ回路と、
一次側巻線と、二次側巻線と、前記一次側巻線、又は前記二次側巻線の少なくとも一方に接続されたリアクトルとを有するトランスを備えるDAB方式のDC/DCコンバータと、
前記一次側ブリッジ回路と、前記二次側ブリッジ回路とを制御しつつ、前記トランスの各レグの一次側端子間に印加する一次側電圧波形と、二次側端子間に印加する二次側電圧波形とを、所定の周波数で位相をずらすように前記一次側ブリッジ回路、及び前記二次側ブリッジ回路が有するスイッチング素子を制御する制御部、とを備え、
前記一次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記一次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記一次側巻線が接続され、又は前記二次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記二次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記二次側巻線が接続され、
前記制御部は、前記一次側電圧波形と前記二次側電圧波形それぞれの電圧波形が、180度矩形波に対して、前記180度矩形波の正負の切り替わりにタイミングを基準とした所定の位相であって、第1位相、第2位相、第3位相、及び第4位相について、その大きさが、前記第4位相の値が最も大きく、前記第4位相、前記第3位相、前記第2位相、及び前記第1位相の順に小さくなる場合であって、かつ前記第1位相が0である場合、前記タイミングを基準とした正側の前記第3位相から前記第4位相までの範囲、及び負側の前記第4位相から前記第3位相までの範囲について、正負逆の電圧とした電圧波形となる様に制御しつつ、
前記タイミングを基準とした正側の前記第1位相から前記第2位相までの範囲、及び負側の前記第2位相から前記第1位相までの範囲について、正負逆の電圧とした電圧波形となる様に制御する、
電力変換装置。
【請求項5】
前記第4位相から前記第3位相を差し引いた値と、前記第3位相から前記第2位相を差し引いた値とは、等しい、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
第1直流電源に接続され、複数のレグを有する一次側ブリッジ回路と、
第2直流電源に接続され、前記一次側ブリッジ回路と同数のレグを有する二次側ブリッジ回路と、
一次側巻線と、二次側巻線と、前記一次側巻線、又は前記二次側巻線の少なくとも一方に接続されたリアクトルとを有するトランスを備えるDAB方式のDC/DCコンバータと、
前記一次側ブリッジ回路と、前記二次側ブリッジ回路とを制御しつつ、前記トランスの各レグの一次側端子間に印加する一次側電圧波形と、二次側端子間に印加する二次側電圧波形とを、所定の周波数で位相をずらすように前記一次側ブリッジ回路、及び前記二次側ブリッジ回路が有するスイッチング素子を制御する制御部、とを備え、
前記一次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記一次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記一次側巻線が接続され、又は前記二次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記二次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記二次側巻線が接続され、
前記制御部は、前記一次側電圧波形と前記二次側電圧波形それぞれの電圧波形が、180度矩形波に対して、前記180度矩形波の正負の切り替わりにタイミングを基準とした所定の位相であって、第1位相、第2位相、及び第3位相について、その大きさが、前記第3位相の値が最も大きく、前記第3位相、前記第2位相、及び前記第1位相の順に小さくなる場合であって、かつ前記第1位相が0である場合、前記タイミングを基準とした正側の前記第2位相から前記第3位相までの範囲、及び負側の前記第3位相から前記第2位相までの範囲について、正負逆の電圧とした電圧波形となる様に制御する、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DAB方式のDC/DCコンバータにおいて、制御に用いる電流検出信号にローパスフィルタを入れることで、信号の高調波成分を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、制御に用いる信号において、高調波成分を除去することができても、主回路部分の高調波成分を除去することまでは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する電力変換装置は、第1直流電源に接続され、複数のレグを有する一次側ブリッジ回路と、第2直流電源に接続され、前記一次側ブリッジ回路と同数のレグを有する二次側ブリッジ回路と、一次側巻線と、二次側巻線と、前記一次側巻線、又は前記二次側巻線の少なくとも一方に接続されたリアクトルとを有するトランスと、を備えるDAB方式のDC/DCコンバータと、前記一次側ブリッジ回路と、前記二次側ブリッジ回路とを制御する制御部と、を備え、前記一次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記一次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記一次側巻線が接続され、又は前記二次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記二次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記二次側巻線が接続され、前記制御部は、スイッチングにより生じる高調波を低減するように、前記トランスの一次の両端に第1電圧波形を印加し、及び前記トランスの二次の両端に第2電圧波形を印加し、前記第1電圧波形は、前記一次側ブリッジ回路の前記スイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第1基準とした第1所定期間において、前記第1基準を中心とした点対称の波形であって、前記第1所定期間内で5回以上の電圧変化を有し、前記第2電圧波形は、前記二次側ブリッジ回路の前記スイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第2基準とした第2所定期間において、前記第2基準を中心とした点対称の波形であって、前記第2所定期間内で5回以上の電圧変化を有し、前記第1電圧波形と、前記第2電圧波形とは、前記DC/DCコンバータの動作に伴う所定の位相差が生じた波形であって、同一の時間間隔において変化する波形である。
【0006】
かかる構成によれば、DC/DCコンバータの高調波成分を低減できる。
上記目的を達成する電力変換装置において、前記DC/DCコンバータは、車両に搭載され、前記スイッチングは、数kHzから数十kHzのスイッチング周波数により実行され、前記第1電圧波形、及び前記第2電圧波形は、前記スイッチングにより生じる高調波のうち、3次の高調波を低減するように設定されてもよい。
【0007】
かかる構成によれば、DC/DCコンバータの低次高調波のうち、3次高調波を低減できる。
上記目的を達成する電力変換装置において、前記DC/DCコンバータは、車両に搭載され、前記スイッチングは、数kHzから数十kHzのスイッチング周波数により実行され、前記第1電圧波形、及び前記第2電圧波形は、前記スイッチングにより生じる高調波のうち、5次の高調波を低減するように設定されてもよい。
【0008】
かかる構成によれば、DC/DCコンバータの低次高調波のうち、5次高調波を低減できる。
上記目的を達成する電力変換装置は、第1直流電源に接続され、複数のレグを有する一次側ブリッジ回路と、第2直流電源に接続され、前記一次側ブリッジ回路と同数のレグを有する二次側ブリッジ回路と、一次側巻線と、二次側巻線と、前記一次側巻線、又は前記二次側巻線の少なくとも一方に接続されたリアクトルとを有するトランスを備えるDAB方式のDC/DCコンバータと、前記一次側ブリッジ回路と、前記二次側ブリッジ回路とを制御しつつ、前記トランスの各レグの一次側端子間に印加する一次側電圧波形と、二次側端子間に印加する二次側電圧波形とを、所定の周波数で位相をずらすように前記一次側ブリッジ回路、及び前記二次側ブリッジ回路が有するスイッチング素子を制御する制御部、とを備え、前記一次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記一次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記一次側巻線が接続され、又は前記二次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記二次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記二次側巻線が接続され、前記制御部は、前記一次側電圧波形と前記二次側電圧波形それぞれの電圧波形が、180度矩形波に対して、前記180度矩形波の正負の切り替わりにタイミングを基準とした所定の位相であって、第1位相、第2位相、第3位相、及び第4位相について、その大きさが、前記第4位相の値が最も大きく、前記第4位相、前記第3位相、前記第2位相、及び前記第1位相の順に小さくなる場合であって、かつ前記第1位相が0である場合、前記タイミングを基準とした正側の前記第3位相から前記第4位相までの範囲、及び負側の前記第4位相から前記第3位相までの範囲について、正負逆の電圧とした電圧波形となる様に制御しつつ、前記タイミングを基準とした正側の前記第1位相から前記第2位相までの範囲、及び負側の前記第2位相から前記第1位相までの範囲について、正負逆の電圧とした電圧波形となる様に制御する。
【0009】
かかる構成によれば、DC/DCコンバータの高調波成分を低減できる。
上記目的を達成する電力変換装置において、前記第4位相から前記第3位相を差し引いた値と、前記第3位相から前記第2位相を差し引いた値とは、等しくてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、所定の位相を特定する演算を簡便に行うことができる。
上記目的を達成する電力変換装置は、第1直流電源に接続され、複数のレグを有する一次側ブリッジ回路と、第2直流電源に接続され、前記一次側ブリッジ回路と同数のレグを有する二次側ブリッジ回路と、一次側巻線と、二次側巻線と、前記一次側巻線、又は前記二次側巻線の少なくとも一方に接続されたリアクトルとを有するトランスを備えるDAB方式のDC/DCコンバータと、前記一次側ブリッジ回路と、前記二次側ブリッジ回路とを制御しつつ、前記トランスの各レグの一次側端子間に印加する一次側電圧波形と、二次側端子間に印加する二次側電圧波形とを、所定の周波数で位相をずらすように前記一次側ブリッジ回路、及び前記二次側ブリッジ回路が有するスイッチング素子を制御する制御部、とを備え、前記一次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記一次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記一次側巻線が接続され、又は前記二次側巻線に接続されたリアクトルは、それぞれが、一端に前記二次側ブリッジ回路が接続され、他端に前記二次側巻線が接続され、前記制御部は、前記一次側電圧波形と前記二次側電圧波形それぞれの電圧波形が、180度矩形波に対して、前記180度矩形波の正負の切り替わりにタイミングを基準とした所定の位相であって、第1位相、第2位相、及び第3位相について、その大きさが、前記第3位相の値が最も大きく、前記第3位相、前記第2位相、及び前記第1位相の順に小さくなる場合であって、かつ前記第1位相が0である場合、前記タイミングを基準とした正側の前記第2位相から前記第3位相までの範囲、及び負側の前記第3位相から前記第2位相までの範囲について、正負逆の電圧とした電圧波形となる様に制御する。
【0011】
かかる構成によれば、DC/DCコンバータの高調波成分を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、DC/DCコンバータの高調波成分を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、電力変換装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1電圧波形、及び第2電圧波形の説明に用いられる図である。
【
図3】
図3は、第1電圧波形、及び第2電圧波形の形状の説明に用いられる図である。
【
図4】
図4は、第1電圧波形、及び第2電圧波形の形状の説明に用いられる図である。
【
図5】
図5は、電力変換装置の構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照し電力変換装置を具体化した実施形態について説明する。
[全体構成]
本実施形態の電力変換装置10は、DAB方式の双方向DC/DCコンバータを備えている。電力変換装置10は、例えば、車両に搭載され、車両内の各種構成に対して変換した電力を供給する。なお、電力変換装置10は、車両以外の場所において用いられるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、電力変換装置10は、例えば、第1直流電源E1と、第2直流電源E2との間で双方向の電力変換を行うものとして構成されている。以降の説明において、第1直流電源E1の両端には、電圧Edaが生じるものであって、第2直流電源E2の両端には、電圧Edbが生じるものとする。電力変換装置10は、制御部30と、トランスTRと、一次側ブリッジ回路B1と、二次側ブリッジ回路B2と、一次側平滑コンデンサC1と、二次側平滑コンデンサC2とを備える。トランスTRは、一次側巻線N1と、二次側巻線N2と、一次側リアクトルL1と、二次側リアクトルL2とを有した絶縁型トランスである。
【0016】
本実施形態では、電力変換装置10が単相交流に変換することでトランス絶縁して電力変換を行う場合について説明する。したがって、一次側ブリッジ回路B1、及び二次側ブリッジ回路B2は、単相交流に対応する分の回路を有する。具体的には、一次側ブリッジ回路B1は、互いに並列に接続された第1レグと、第2レグとを有する。第1レグは、互いに直列に接続された第1スイッチング素子Q1aと、第2スイッチング素子Q2aとを有する。第1スイッチング素子Q1aと、第2スイッチング素子Q2aとの接続点P1aは、一次側リアクトルL1を介して、トランスTRの一次側巻線N1の一端に接続されている。第2レグは、直列に接続された第3スイッチング素子Q3aと、第4スイッチング素子Q4aとを有する。第3スイッチング素子Q3aと、第4スイッチング素子Q4aとの接続点P2aは、トランスTRの一次側巻線N1の他端に接続されている。また、一次側平滑コンデンサC1は、一次側ブリッジ回路B1における第1レグ、及び第2レグと、互いに並列に接続されている。
【0017】
二次側ブリッジ回路B2は、互いに並列に接続された第1レグと、第2レグとを有する。第1レグは、互いに直列に接続された第1スイッチング素子Q1bと、第2スイッチング素子Q2bとを有する。第1スイッチング素子Q1bと、第2スイッチング素子Q2bとの接続点P1bは、トランスTRの二次側巻線N2の一端に接続されている。第2レグは、互いに直列に接続された第3スイッチング素子Q3bと、第4スイッチング素子Q4bとを有する。第3スイッチング素子Q3bと、第4スイッチング素子Q4bとの接続点P2bは、二次側リアクトルL2を介してトランスTRの二次側巻線N2の他端に接続されている。また、二次側平滑コンデンサC2は、二次側ブリッジ回路B2における第1レグ、及び第2レグと、互いに並列に接続されている。なお、電力変換装置10は、一次側リアクトルL1、又は二次側リアクトルL2の少なくとも一方を備えるものであってもよい。
【0018】
各スイッチング素子Q1a~Q4a,Q1b~Q4bは、それぞれ、ダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等が用いられる。なお、電力変換装置10では、一次側平滑コンデンサC1や二次側平滑コンデンサC2がそれぞれ、リアクトルを介さずに、一次側ブリッジ回路B1や二次側ブリッジ回路B2に接続されている。また、電力変換装置10では、一次側巻線N1と一次側ブリッジ回路B1との間に設けられる一次側リアクトルL1、及び二次側巻線N2と二次側ブリッジ回路B2との間に設けられる二次側リアクトルL2には、一般に、大きいリアクタンスを持たせる必要はない。そのため、電力変換装置10では、トランスTRの漏れリアクトルンスを、一次側リアクトルL1,二次側リアクトルL2として用いることも可能である。
【0019】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め電力変換装置10が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの非一過性の記憶媒体を備える記憶装置(不図示)に格納されていてもよい。
【0020】
制御部30は、各スイッチング素子Q1a~Q4a,Q1b~Q4bのそれぞれ対して、ドライブしたパルス状のスイッチング制御信号を出力することで、各スイッチング素子Q1a~Q4a,Q1b~Q4bをスイッチングしている。スイッチング周波数は、例えば、数kHzから数十kHz程度である。また、制御部30は、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbを出力するように制御する。第1電圧波形vaは、トランスTRの一次側の両端に印加される。また、第2電圧波形vbは、トランスTRの二次側の両端に印加される。トランスTRの一次側の両端とは、例えば、接続点P1aと、接続点P2aとの間である。また、トランスTRの二次側の両端とは、例えば、接続点P1bと、接続点P2bとの間である。電力変換装置10は、本発明を適用した第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbが印加されることに伴い、各スイッチング素子Q1a~Q4a,Q1b~Q4bのスイッチングにより生じる高調波が低減される。第1電圧波形vaは、「一次側電圧波形」の一例であり、第2電圧波形vbは、「二次側電圧波形」の一例である。トランスTRの一次側の両端は、「一次側端子間」の一例であり、トランスTRの二次側の両端は、「二次側端子間」の一例である。以下、制御部30による第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの生成方法について説明する。
【0021】
[第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの生成方法]
図2には、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの一例が示されている。
図2に示す各グラフの横軸は、位相xを示し、縦軸は、波形の大きさを示す。
図2に示す波形W1は、一次側ブリッジ回路B1の各スイッチング素子Q1a~Q4aのスイッチング制御信号の生成に用いられるキャリアを示す波形であって、周期が2πの正弦波である。波形W2は、二次側ブリッジ回路B2の各スイッチング素子Q1b~Q4bのスイッチング制御信号の生成に用いられるキャリアを示す波形であって、周期が2πの正弦波である。
図2では、位相x=0を中心とした、-πからπまでの範囲の波形W1,W2を示している。また、波形W1と、波形W2とには、電力変換装置10の伝送電力に応じた位相差θを設ける。
【0022】
波形W3は、第1電圧波形vaを示す。波形W4は、第2電圧波形vbを示す。波形W3が示すように、第1電圧波形vaは、0[V]を中心として、正側の電圧Eda(図示では、+Eda)と、負側の電圧Eda(図示では、-Eda)との間で、変化する矩形波である。また、波形W4が示すように、第2電圧波形vbは、0[V]を中心として、正側の電圧Edb(図示では、+Edb)と、負側の電圧Edb(図示では、-Edb)との間で、変化する矩形波である。以降の説明において、正側の電圧Edaを、電位+Edaと記載し、負側の電圧Edaを電位-Edaと記載する。また、正側の電圧Edbを、電位+Edbと記載し、負側の電圧Edbを電位-Edbと記載する。
【0023】
なお、制御部30は、正側の電位+Edaを発生させる時は第1スイッチング素子Q1aと、第4スイッチング素子Q4aとがオンで、第2スイッチング素子Q2aと第3スイッチング素子Q3aとをオフにする。また、制御部30は、負側の電位-Edaを発生させる時は、正側の電位+Edaを発生させる時とは逆になる様にスイッチング制御信号を生成する。具体的には、制御部30は、正側の電位+Edbを発生させる時は、第2スイッチング素子Q2bと、第3スイッチング素子Q3bとがオンで、第1スイッチング素子Q1bと、第4スイッチング素子Q4bとをオフにする。また、制御部30は、負側の電位-Edbを発生させる時は、正側の電位+Edbを発生させる時とは逆になる様にスイッチング制御信号を生成する。
【0024】
以下の説明および数式では、Eda=Edb=1として規格化して扱う。まず、制御部30は、波形W1,W2に対して、閾値A,B,C,-A,-B,-C,0の七つの閾値を設定し、それぞれの閾値と波形W1,W2が交わる位相をa,b,c,-a,-b,-c,0とする。第1電圧波形vaは、波形W1と、各閾値とが交わるタイミングにおいて、矩形波の正負が切り替わる。この場合、第1電圧波形vaのフーリエ級数展開は、式(1)によって示される。波形W1と、各閾値とが交わるタイミングのうち、閾値=0と、波形W1とが交わるタイミングは、「第1基準」の一例である。
【0025】
【0026】
また、第2電圧波形vbは、波形W2と、各閾値とが交わるタイミングにおいて、矩形波の正負が切り替わる。この場合、第2電圧波形vbのフーリエ級数展開は、式(2)によって示される。波形W2と、各閾値とが交わるタイミングのうち、閾値=0と、波形W2とが交わるタイミングは、「第2基準」の一例である。
【0027】
【0028】
式(1),(2)より、第1電圧波形vaから第2電圧波形vbを差し引いたva(x)-vb(x)のフーリエ級数展開は、式(3)によって示される。
【0029】
【0030】
ここで、各位相を導出するために、位相bが、位相aと所定値γとを足し合わせたb=a+γであって、かつ位相cが、位相aと、2倍の所定値γとを足し合わせたc=a+2γである場合、va(x)-vb(x)のフーリエ級数展開は、式(4)によって示される。
【0031】
【0032】
式(4)中の第1項と、第2項とには、式(5)の左辺に示す共通部分が存在する。このため、式(5)の左辺が0となれば、電力変換装置10のスイッチングに伴う第n次高調波成分(nは正の整数)が除去されることとなる。以下、nを次数nとも記載する。
【0033】
【0034】
式(5)を、位相aについて解くと、式(6)となる。また、式(6)と、b=a+γとに基づいて、位相bについて解くと、式(7)となる。また、式(6)と、c=a+2γとに基づいて、位相cについて解くと、式(8)となる。
【0035】
【0036】
また、式(6)~(8)の各位相を用いて、各閾値は、式(9)~式(11)のように表すこともできる。
【0037】
【0038】
なお、式(6)から、所定値γの設定可能な範囲は式(12)のように表され、式(12)を所定値γについて解くと、式(13)のように表される。
【0039】
【0040】
制御部30は、式(13)に基づいて、第n次高調波成分のうち、除去したい高調波の次数nを代入すると、所定値γを特定することができる。また、制御部30は、特定した所定値γと、次数nと、式(6)~(8)とに基づいて、位相a,b,cが演算でき、閾値A,B,C,-A,-B,-Cを特定することができる。
【0041】
図2には、3次の高調波を除去する場合の第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbが示されている。
図2に示す一例において、第1電圧波形vaは、波形W3が示すように、角度が-πからπまでの範囲において、波形W1と、各閾値とが交わるタイミングにおいて、正負が入れ替わる。具体的には、第1電圧波形vaは、閾値=0と交わる時刻ta0において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値-Aと交わる時刻ta1において、電位-Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値-Bと交わる時刻ta2において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値-Cと交わる時刻ta3において、電位-Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値-Cと交わる時刻ta4において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値-Bと交わる時刻ta5において、電位-Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値-Aと交わる時刻ta6において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値=0と交わる時刻ta7において、電位-Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値Aと交わる時刻ta8において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値Bと交わる時刻ta9において、電位-Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値Cと交わる時刻ta10において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値Cと交わる時刻ta11において、電位-Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値Bと交わる時刻ta12において、電位+Edaとなる。第1電圧波形vaは、閾値Aと交わる時刻ta13において、電位-Edaとなる。以降の第1電圧波形vaの変化は、繰り返しである。
【0042】
図2に示す一例において、第2電圧波形vbは、波形W4が示すように、角度が-πからπまでの範囲において、波形W2と、各閾値とが交わるタイミングにおいて、正負が入れ替わる。具体的には、上述した第1電圧波形vaの変化と同様である。換言すると、第1電圧波形vaと、第2電圧波形vbとは、所定の位相差θが生じた波形であって、同一の時間間隔において変化する波形である。したがって、第2電圧波形vbの経時変化については、上述した第1電圧波形vaを第2電圧波形vbと読み替え、電位+Edaを電位+Edbと読み替え、電位-Edaを電位-Edbと読み替え、時刻ta0~ta13を時刻tb0~tb13と読み替えればよい。
【0043】
[第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの形状について]
図3を用いて、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの形状について詳述する。波形W10は、通常のDAB方式のDC/DCコンバータに用いられ、基準となる電圧波形である180度矩形波の一部を示す。波形W11は本実施形態における、第1電圧波形va、又は第2電圧波形vbの一部を示す。上述した処理によって生成された、第1電圧波形vaは、第1基準(つまり、閾値=0と、波形W1とが交わるタイミングであって、波形W10の180度矩形波が変化するタイミング)を中心とした第1所定期間内において、第1基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内において、7回の電圧変化を有する。第1所定期間とは、波形W1と、閾値-Cとが交わる位相xから、波形W1と、閾値Cとが交わる位相xまでの範囲である。また、第2電圧波形vbは、第2基準(つまり、閾値=0と、波形W2とが交わるタイミングであって、波形W10の180度矩形波が変化するタイミング)を中心とした第2所定期間内において、第2基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内において、7回の電圧変化を有する。第2所定期間とは、波形W2と、閾値-Cとが交わる位相xから、波形W2と、閾値Cとが交わる位相xまでの範囲である。
【0044】
以下、位相x=0を第1位相θ0とし、波形W1と、閾値-A、又は閾値Aとが交わる位相xと、第1位相θ0との差を、第2位相θ1とし、波形W1と、閾値-B、又は閾値Bとが交わる位相xと、第1位相θ0との差を、第3位相θ2とし、波形W1と、閾値-C、又は閾値Cとが交わる位相xと、第1位相θ0との差を、第4位相θ3とする。第1位相θ0~第4位相θ3の大きさは、第4位相θ3が最も大きく、その関係は第4位相θ3>第3位相θ2>第2位相θ1>第1位相θ0の順に小さくなる。上述したように、位相bが、位相aと所定値γとを足し合わせたb=a+γであって、かつ位相cが、位相aと、2倍の所定値γとを足し合わせたc=a+2γである。したがって、第4位相θ3から第3位相θ2を差し引いた値と、第3位相θ2から第2位相θ1を差し引いた値とは、等しくなる。なお、
図2、3から明らかなように位相a=第2位相θ1、位相b=第3位相θ2、位相c=第4位相θ3である。
【0045】
波形W11が示すように、第1電圧波形vaは、第1基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。また、第1電圧波形vaは、第1基準から正側の第1位相θ0から第2位相θ1までの範囲、及び負側の第2位相θ1から第1位相θ0までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。同様に、波形W11が示すように、第2電圧波形vbは、第2基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。また、第2電圧波形vbは、第2基準から正側の第1位相θ0から第2位相θ1までの範囲、及び負側の第2位相θ1から第1位相θ0までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。
【0046】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)制御部30は、スイッチングにより生じる高調波を低減するように、一次側巻線N1の両端に第1電圧波形vaを印加し、及び二次側巻線N2の両端に第2電圧波形vbを印加する。第1電圧波形vaは、一次側ブリッジ回路B1のスイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第1基準とした第1所定期間において、第1基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内で7回の電圧変化を有する。第2電圧波形vbは、二次側ブリッジ回路B2のスイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第2基準とした第2所定期間において、第2基準を中心とした点対称の波形であって、第2所定期間内で7回の電圧変化を有する。第1電圧波形vaと、第2電圧波形vbとは、電力変換装置10の動作に伴う所定の位相差θが生じた波形であって、同一の時間間隔において変化する波形である。
【0047】
上述したように、第1電圧波形vaは、波形W1と、各閾値とが交わるタイミングにおいて、正負が入れ替わる。また、第2電圧波形vbは、波形W2と、各閾値とが交わるタイミングにおいて、正負が入れ替わる。かかる構成によれば、電力変換装置10は、これらのスイッチング制御信号に対して、第1電圧波形vaが一次側巻線N1の両端に印加されつつ、かつ第2電圧波形vbが二次側巻線N2の両端に印加することで、第n次高調波成分を除去することができる。また、制御部30は、所定値γがb=a+γ、及びc=a+2γを満たすことにより、簡便な演算によって第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbを導出することができる。
【0048】
(2)電力変換装置10は、式(13)に基づいて、第n次高調波成分のうち、除去したい高調波の次数nを代入すると、所定値γを特定することができる。また、制御部30は、特定した所定値γと、次数nと、式(6)~(8)とに基づいて、位相a,b,c,-a,-b,-cを演算し、閾値A,B,C(,-A,-B,-C)を特定することができる。ここで、電力変換装置10が、車両において用いられる場合がある。車載部品として用いられるDAB方式のDC/DCコンバータでは、スイッチング周波数が10[kHz]から50[kHz]程度の範囲において、3次高調波や5次高調波の成分が、EMC(Electro-Magnetic Compatibility)規格に影響する場合がある。かかる構成によれば、電力変換装置10は、次数nに3を代入することによって生成した第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbによって、第3次高調波成分を除去することができる。また、電力変換装置10は、次数nに5を代入することによって生成した第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbによって、第5次高調波成分を除去することができる。
【0049】
(3)第1電圧波形vaは、第1基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。また、第1電圧波形vaは、第1基準から正側の第1位相θ0から第2位相θ1までの範囲、及び負側の第2位相θ1から第1位相θ0までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。また、第2電圧波形vbは、第2基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。また、第2電圧波形vbは、第2基準から正側の第1位相θ0から第2位相θ1までの範囲、及び負側の第2位相θ1から第1位相θ0までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした波形となる。また、第4位相θ3から第3位相θ2を差し引いた値と、第3位相θ2から第2位相θ1を差し引いた値とは、等しくなる。
【0050】
かかる構成によれば、電力変換装置10は、上述と同様に、第n次高調波成分を除去することができる。また、電力変換装置10は、第4位相θ3から第3位相θ2を差し引いた値と、第3位相θ2から第2位相θ1を差し引いた値とが等しいことにより、簡便な演算によって第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbを導出することができる。
【0051】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態および以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
[変形例]
上述では、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbを生成するため、波形W1,W2に対して、七つの位相a,b,c,-a,-b,-c、0、及び閾値A,B,C,-A,-B,-C、0を設定する場合について説明した。変形例では、波形W1,W2に対して、五つの閾値B,C,-B,-C、0を設定する場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
第1電圧波形vaは、
図2に示す波形W1と、五つの閾値とが交わるタイミングにおいて、矩形波の正負が切り替わる。同様に、第2電圧波形vbは、
図2に示す波形W2と、五つの閾値とが交わるタイミングにおいて、矩形波の正負が切り替わる。七つの閾値を用いた場合の、位相aを無くすことによって、五つの閾値を用いる場合、式(3)においてa=0とする。この場合、五つの閾値を用いる第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbは、第1電圧波形vaから第2電圧波形vbを差し引いたva(x)-vb(x)のフーリエ級数展開が、式(14)によって示される。
【0053】
【0054】
式(14)中の第1項と、第2項とには、式(15)の左辺に示す共通部分が存在する。このため、式(15)の左辺が0となれば、電力変換装置10のスイッチングに伴う第n次高調波成分が除去されることとなる。
【0055】
【0056】
式(15)について、上述した実施形態と同様に、位相bと、位相cとの差が所定値γであるとすると、c=b+γとなり、式(15)は、式(16)となる。
【0057】
【0058】
式(16)を、位相bについて解くと、式(6)となる。
【0059】
【0060】
上述したように、a=0であるため、位相aは、式(18)の通りである。また、c=b+γであるため、位相bについて解くと、式(19)となる。また、式(6)と、c=a+2γとに基づいて、位相cについて解くと、式(20)となる。
【0061】
【0062】
また、式(18)~(20)は、式(9)~式(11)のように表すこともできる。
【0063】
【0064】
式(17)から、所定値γの設定可能な範囲は式(24)のように表され、式(24)を所定値γについて解くと、式(25)のように表される。
【0065】
【0066】
式(25)に基づいて、第n次高調波成分のうち、除去したい高調波の次数nを代入すると、所定値γを特定することができる。また、特定した所定値γと、次数nと、式(18)~(20)とに基づいて、位相b,cが演算でき、閾値B,C,-B,-Cを特定することができる。
【0067】
[第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの形状について]
図4を用いて、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbの形状について詳述する。波形W12は、第1電圧波形va、又は第2電圧波形vbの一部を示す。変形例の第1電圧波形vaは、第1基準を中心とした第1所定期間内において、第1基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内において、5回の電圧変化を有する。また、変形例の第2電圧波形vbは、第2基準を中心とした第2所定期間内において、第2基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内において、5回の電圧変化を有する。
【0068】
波形W12が示すように、第1電圧波形vaは、第1基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした電圧波形となる。同様に、波形W12が示すように、第2電圧波形vbは、第2基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした電圧波形となる。
【0069】
[変形例の効果]
制御部30は、スイッチングにより生じる高調波を低減するように、一次側巻線N1の両端に第1電圧波形vaを印加し、及び二次側巻線N2の両端に第2電圧波形vbを印加する。第1電圧波形vaは、一次側ブリッジ回路B1のスイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第1基準とした第1所定期間において、第1基準を中心とした点対称の波形であって、第1所定期間内で5回の電圧変化を有する。第2電圧波形vbは、二次側ブリッジ回路B2のスイッチングに伴う矩形波の正負の切り替えタイミングのうち、いずれかのタイミングを第2基準とした第2所定期間において、第2基準を中心とした点対称の波形であって、第2所定期間内で5回の電圧変化を有する。第1電圧波形vaと、第2電圧波形vbとは、電力変換装置10の動作に伴う所定の位相差θが生じた波形であって、同一の時間間隔において変化する波形である。
【0070】
かかる構成によれば、電力変換装置10は、これらのスイッチング制御信号に対して、第1電圧波形vaが一次側巻線N1の両端に印加されつつ、かつ第2電圧波形vbが二次側巻線N2の両端に印加することで、第n次高調波成分を除去することができる。
【0071】
また、第1電圧波形vaは、第1基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした電圧波形となる。また、第2電圧波形vbは、第2基準から正側の第3位相θ2から第4位相θ3までの範囲、及び負側の第4位相θ3から第3位相θ2までの範囲について、波形W10と正負逆の電圧とした電圧波形となる。
【0072】
かかる構成によれば、電力変換装置10は、上述と同様に、第n次高調波成分を除去することができる。
○電力変換装置10は、単相以上の電力変換を行うものであってもよい。具体的には、電力変換装置10は、単相より多い相の電力変換を行うものであってもよい。この場合、一次側ブリッジ回路B1、及び二次側ブリッジ回路B2は、変換する相の数に応じた数のレグをそれぞれ有する。
【0073】
図5には、三相の電力変換を行う電力変換装置11の構成の一例が示されている。電力変換装置11は、電力変換装置10が備えるトランスTRに代えて、トランスTRaを備える。トランスTRaは、一次側巻線N1a,N1b,N1cと、二次側巻線N2a,N2b,N2cと、一次側リアクトルL1a,L1b,L1cと、二次側リアクトルL2a,L2b,L2cとを備える。
【0074】
電力変換装置11は、一次側ブリッジ回路B1に代えて、一次側ブリッジ回路B1aを備える。一次側ブリッジ回路B1aは、一次側ブリッジ回路B1が備える構成に加えて、第3レグを有する。第3レグは、第1レグ、及び第2レグに互いに並列に接続されている。第3レグは、第5スイッチング素子Q5aと、第6スイッチング素子Q6aとを有する。第5スイッチング素子Q5aと、第6スイッチング素子Q6aとは、互いに直列に接続されている。第1スイッチング素子Q1aと、第2スイッチング素子Q2aとの接続点P1aは、一次側リアクトルL1aを介して、トランスTRaの一次側巻線N1aの一端に接続されている。第3スイッチング素子Q3aと、第4スイッチング素子Q4aとの接続点P2aは、一次側リアクトルL1bを介して、トランスTRaの一次側巻線N1bの一端に接続されている。第5スイッチング素子Q5aと、第6スイッチング素子Q6aとの接続点P3aは、一次側リアクトルL1cを介して、トランスTRaの一次側巻線N1cの一端に接続されている。トランスTRaにおける一次側巻線N1aの他端、一次側巻線N1bの他端、及び一次側巻線N1cの他端は、互いに接続されている。一次側平滑コンデンサC1は、一次側ブリッジ回路B1aにおける第1レグ、第2レグ、及び第3レグと、互いに並列に接続されている。
【0075】
電力変換装置11は、二次側ブリッジ回路B2に代えて、二次側ブリッジ回路B2aを備える。二次側ブリッジ回路B2aは、二次側ブリッジ回路B2が備える構成に加えて、第3レグを有する。第3レグは、第1レグ、及び第2レグに互いに並列に接続されている。第3レグは、第5スイッチング素子Q5bと、第6スイッチング素子Q6bとを有する。第5スイッチング素子Q5bと、第6スイッチング素子Q6bとは、互いに直列に接続されている。第1スイッチング素子Q1bと、第2スイッチング素子Q2bとの接続点P1bは、二次側リアクトルL2cを介して、トランスTRaの二次側巻線N2cの一端に接続されている。第3スイッチング素子Q3bと、第4スイッチング素子Q4bとの接続点P2bは、二次側リアクトルL2bを介して、トランスTRaの二次側巻線N2bの一端に接続されている。第5スイッチング素子Q5bと、第6スイッチング素子Q6bとの接続点P3bは、二次側リアクトルL2aを介して、トランスTRaの二次側巻線N2aの一端に接続されている。トランスTRaにおける二次側巻線N2aの他端、二次側巻線N2bの他端、及び二次側巻線N2cの他端は、互いに接続されている。二次側平滑コンデンサC2は、二次側ブリッジ回路B2aにおける第1レグ、第2レグ、及び第3レグと、互いに並列に接続されている。
【0076】
電力変換装置11が備える制御部30は、上述した電力変換装置10の制御部30と基本的には同様の処理によって、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbを出力するように制御する。第1電圧波形vaは、トランスTRaの一次側の両端に印加される。すなわち一次側巻線N1a,N1b,N1cのうち、いずれかの2つの巻線とその巻線に接続される一次側リアクトルL1a,L1b,L1cの直列接続体の両端に印加される。また第2電圧波形vbは、トランスTRaの二次側の両端に印加される。すなわち二次側巻線N2a,N2b,N2cのうち、いずれかの2つの巻線とその巻線に接続される二次側リアクトルL2a,L2b,L2cの直列接続体の両端に印加される。一次側巻線N1a,N1b,N1cのうち、いずれかの2つの巻線とその巻線に接続される一次側リアクトルL1a,L1b,L1cの直列接続体の両端は、「トランスTRの一次側の両端」、及び「一次側端子間」の一例であり、接続点P1aと、接続点P2aとの間、又は接続点P2aと、接続点P3aとの間の一例である。また、二次側巻線N2a,N2b,N2cのうち、いずれかの2つの巻線とその巻線に接続される二次側リアクトルL2a,L2b,L2cの直列接続体の両端は、「トランスTRの二次側の両端」、及び「二次側端子間」の一例であり、接続点P1bと、接続点P2bとの間、又は接続点P2bと、接続点P3bとの間の一例である。なお、電力変換装置11は、一次側リアクトルL1a,L1b,L1c、又は二次側リアクトルL2a,L2b,L2cの少なくとも一方を備えるものであってもよい。
【0077】
上述したように、波形W1と、波形W2とには、電力変換装置10の伝送電力に応じた位相差θを設ける。また、一次側巻線N1aと一次側巻線N1bとの直列接続体の波形W1と、一次側巻線N1bと一次側巻線N1cとの直列体の波形W1とは、2π/m(mは、相の数)だけ位相差を設ける。この場合、一次側巻線N1aと一次側巻線N1bとの直列接続体の波形W1と、一次側巻線N1bと一次側巻線N1cとの直列体の波形W1とには、2π/3だけ位相差を設ける。同様に、一次側巻線N1bと一次側巻線N1cとの直列接続体の波形W1と一次側巻線N1cと一次側巻線N1aとの直列接続体の波形W1とには、2π/3だけ位相差を設ける。以降の処理は、上述した実施形態、及び変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
かかる構成によれば、電力変換装置11は、これらのスイッチング制御信号に対して、第1電圧波形vaが一次側巻線N1の両端に印加されつつ、かつ第2電圧波形vbが二次側巻線N2の両端に印加することで、三相変換を行う場合であっても、第n次高調波成分を除去することができる。
【0079】
○上述では、第4位相θ3から第3位相θ2を差し引いた値と、第3位相θ2から第2位相θ1を差し引いた値とは、等しくなる場合について説明したが、これに限られない。制御部30は、第4位相θ3から第3位相θ2を差し引いた値と、第3位相θ2から第2位相θ1を差し引いた値とは、等しくない場合において、式(5)を満たす位相a,b,c,-a,-b,cを特定してもよい。また、式(15)を満たす位相b,c,-b,cを特定してもよい。この場合、所定値γは、b=a+γ、及びc=a+2γを満たしていなくてもよい。
【0080】
○閾値は、7つ以上であってもよい。用いる閾値が多いほど、波形が滑らかになる。これにより、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbは、次数nによりピンポイントで除去する高調波成分以外にも、全体的な高調波成分を低減する効果が高くなる。一方で、第1電圧波形va、及び第2電圧波形vbを生成するためのスイッチング回数が増えるため、電力変換に伴う損失が大きくなる。
【0081】
○波形W1,W2は、第1基準や第2基準に対して線対称の波形であれば、正弦波以外の波形であってもよい。具体的には、波形W1,W2は、三角波であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10,11…電力変換装置、30…制御部、B1,B1a…一次側ブリッジ回路、B2,B2a…二次側ブリッジ回路、C1…一次側平滑コンデンサ、C2…二次側平滑コンデンサ、E1…第1直流電源、E2…第2直流電源、L1,L1a,L1b,L1c…一次側リアクトル、L2,L2a,L2b,L2c…二次側リアクトル、N1,N1a,N1b,N1c…一次側巻線、N2,N2a,N2b,N2c…二次側巻線、Q1a,Q1b…第1スイッチング素子、Q2a,Q2b…第2スイッチング素子、Q3a,Q3b…第3スイッチング素子、Q4a,Q4b…第4スイッチング素子、Q5a,Q5b…第5スイッチング素子、Q6a,Q6b…第6スイッチング素子、TR,TRa…トランス、va…第1電圧波形、vb…第2電圧波形、θ…位相差、θ0…第1位相、θ1…第2位相、θ2…第3位相、θ3…第4位相。