(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152661
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】反射材硬化物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20251002BHJP
H10H 20/856 20250101ALI20251002BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20251002BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20251002BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20251002BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G02B5/08 A
H01L33/60
C09D17/00
C09C1/00
C09C3/06
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054665
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 沙佑美
(72)【発明者】
【氏名】田家 史佳
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕章
【テーマコード(参考)】
2H042
4J037
5F142
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA20
4J037AA22
4J037CA12
4J037CA24
4J037CC16
4J037DD05
4J037DD07
4J037FF03
5F142AA04
5F142AA64
5F142AA76
5F142BA32
5F142CE06
5F142CE16
5F142CE18
(57)【要約】
【課題】可視光の反射効率に優れ、変色抑制に優れる反射材硬化物を提供すること。
【解決手段】硬化性樹脂を主成分とする樹脂成分および白色無機フィラーを含有する樹脂組成物を硬化させた反射材硬化物である。前記反射材硬化物の表面を走査型電子顕微鏡で撮像して得られる反射電子像を観察し、前記樹脂成分からなる第1相と、前記白色無機フィラーからなる第2相に分類した場合に、前記第2相の平均径が、0.13μm以上0.3μm以下であり、前記第2相のうち、前記白色無機フィラーの二次粒子からなる凝集相の比率が、25%以下であり、前記第2相の占有面積率が、前記第1相および前記第2相の合計100面積%に対して、10面積%以上50面積%以下である。前記凝集相は、前記反射電子像において、2個以上の白色無機フィラー微粒子が凝集しているものからなる相である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を主成分とする樹脂成分および白色無機フィラーを含有する樹脂組成物を硬化させた反射材硬化物であって、
前記反射材硬化物の表面を走査型電子顕微鏡で撮像して得られる反射電子像を観察し、前記樹脂成分からなる第1相と、前記白色無機フィラーからなる第2相に分類した場合に、
前記第2相の平均径が、0.13μm以上0.3μm以下であり、
前記第2相のうち、前記白色無機フィラーの二次粒子からなる凝集相の比率が、25%以下であり、
前記第2相の占有面積率が、前記第1相および前記第2相の合計100面積%に対して、10面積%以上50面積%以下であり、
前記凝集相は、前記反射電子像において、2個以上の白色無機フィラー微粒子が凝集しているものからなる相であり、
前記凝集相の比率は、前記反射電子像において、4.5μm×6.0μmの矩形の測定視野を設定し、前記測定視野において、全ての第2相を観察し、前記凝集相と前記凝集相以外の単粒子相とに分類した場合に、全ての第2相の個数に対する前記凝集相の個数の比率を算出することにより得られる、
反射材硬化物。
【請求項2】
請求項1に記載の反射材硬化物において、
前記白色無機フィラーが、チタニア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、アルミナ、およびシリカからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含有する、
反射材硬化物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の反射材硬化物において、
前記白色無機フィラーが、コア層とシェル層とを備えるコアシェル型のフィラーであり、
前記コア層が、チタニアからなり、
前記シェル層が、ジルコニア、アルミナ、およびシリカからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物からなる、
反射材硬化物。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の反射材硬化物において、
前記白色無機フィラーが、有機系表面処理が施されたものである、
反射材硬化物。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の反射材硬化物において、
前記反射材硬化物の厚みを30μmとした場合に、
前記反射材硬化物の450nmの波長の反射率が、SCI(Specular Component Include:正反射光を含む)方式で、92%以上であり、
窒素雰囲気下(酸素濃度:2000ppm)にて、ピーク温度260℃以上で6秒間、及び溶融温度240℃以上で60秒間の条件でリフロー処理した後の反射材硬化物の450nmの波長の反射率が、SCI方式で、91.5%以上である、
反射材硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射材硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)などの光半導体素子は、高効率で発光するとともに、駆動特性または点灯繰り返し特性に優れる。そのため、光半導体素子は、インジケーターまたは光源として幅広く利用されている。特に、白色LEDは、表示装置のバックライトまたはカメラのフラッシュとして広く応用されており、更には、次世代の照明装置としても期待されている。このような照明装置には、照射方向の可視光の取り出し効率を高めるため、発せられた可視光を反射する反射材が設けられている。また、白色LEDの小型化または軽量化に伴い、薄膜での高反射化が求められている。現在、反射材に用いる材料として、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂といった光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂に、白色の無機フィラーを併用した組成物が幅広く利用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の反射材においては、可視光の反射効率を高めるために、大量の白色の無機フィラーを併用したり、硬化膜を厚くしなければならなかった。そのため、塗膜の剥離、または機械強度低下の問題、或いは、硬化膜が厚くなることに伴う微細加工の寸法精度の問題、或いは、軽量化または小型化などに対する問題を生じ、特許文献1に記載の反射材を、近年の高出力発光素子に適用することは困難であった。
【0005】
本発明は、可視光の反射効率に優れ、変色抑制に優れる反射材硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す反射材硬化物が提供される。
[1] 硬化性樹脂を主成分とする樹脂成分および白色無機フィラーを含有する樹脂組成物を硬化させた反射材硬化物であって、
前記反射材硬化物の表面を走査型電子顕微鏡で撮像して得られる反射電子像を観察し、前記樹脂成分からなる第1相と、前記白色無機フィラーからなる第2相に分類した場合に、
前記第2相の平均径が、0.13μm以上0.3μm以下であり、
前記第2相のうち、前記白色無機フィラーの二次粒子からなる凝集相の比率が、25%以下であり、
前記第2相の占有面積率が、前記第1相および前記第2相の合計100面積%に対して、10面積%以上50面積%以下であり、
前記凝集相は、前記反射電子像において、2個以上の白色無機フィラー微粒子が凝集しているものからなる相であり、
前記凝集相の比率は、前記反射電子像において、4.5μm×6.0μmの矩形の測定視野を設定し、前記測定視野において、全ての第2相を観察し、前記凝集相と前記凝集相以外の単粒子相とに分類した場合に、全ての第2相の個数に対する前記凝集相の個数の比率を算出することにより得られる、
反射材硬化物。
[2] [1]に記載の反射材硬化物において、
前記白色無機フィラーが、チタニア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、アルミナ、およびシリカからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物を含有する、
反射材硬化物。
[3] [1]または[2]に記載の反射材硬化物において、
前記白色無機フィラーが、コア層とシェル層とを備えるコアシェル型のフィラーであり、
前記コア層が、チタニアからなり、
前記シェル層が、ジルコニア、アルミナ、およびシリカからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物からなる、
反射材硬化物。
[4] [1]から[3]のいずれかに記載の反射材硬化物において、
前記白色無機フィラーが、有機系表面処理が施されたものである、
反射材硬化物。
[5] [1]から[4]のいずれかの反射材硬化物において、
前記反射材硬化物の厚みを30μmとした場合に、
前記反射材硬化物の450nmの波長の反射率が、SCI(Specular Component Include:正反射光を含む)方式で、92%以上であり、
窒素雰囲気下(酸素濃度:2000ppm)にて、ピーク温度260℃以上で6秒間、及び溶融温度240℃以上で60秒間の条件でリフロー処理した後の反射材硬化物の450nmの波長の反射率が、SCI方式で、91.5%以上である、
反射材硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、可視光の反射効率に優れ、変色抑制に優れる反射材硬化物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1および比較例1で得られた反射材硬化物の表面を走査型電子顕微鏡で撮像して得られる反射電子像である。
【
図2】実施例1および比較例1で得られた反射材硬化物における、第2相を構成する粒子の個数と、その比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る反射材硬化物は、硬化性樹脂を主成分とする樹脂成分および白色無機フィラーを含有する樹脂組成物を硬化させた反射材硬化物である。そして、この反射材硬化物の表面を走査型電子顕微鏡で撮像して得られる反射電子像を観察し、樹脂成分からなる第1相と、白色無機フィラーからなる第2相に分類した場合に、第2相の平均径が、0.13μm以上0.3μm以下であり、第2相のうち、白色無機フィラーの二次粒子からなる凝集相の比率が、25%以下であり、第2相の占有面積率が、第1相および第2相の合計100面積%に対して、10面積%以上50面積%以下である。
【0010】
第2相の平均径は、0.13μm以上0.3μm以下であることが必要である。第2相の平均径が前記範囲外である場合には、可視光の反射効率が不十分となる。同様の観点から、第2相の平均径は、0.16μm以上0.25μm以下であることが好ましい。
なお、第2相の平均径を前記範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、第2相の平均径は、白色無機フィラーの平均粒子径を変更することで調整できる。
【0011】
第2相のうち、白色無機フィラーの二次粒子からなる凝集相の比率は、25%以下であることが必要である。凝集相の比率が前記上限を超えると、可視光の反射効率が不十分となり、また、変色抑制が不十分となる。同様の観点から、凝集相の比率は、1%以上20%以下であることが好ましく、2%以上15%以下であることがより好ましく、3%以上12%以下であることが特に好ましい。
また、可視光の反射効率および変色抑制の観点から、第2相を構成する白色無機フィラーの個数の平均値(以下、平均凝集粒子数とも称する)は、1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
なお、凝集相の比率または平均凝集粒子数を前記範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、凝集相の比率または平均凝集粒子数は、樹脂成分の種類、並びに、白色無機フィラーの種類、表面処理、および分散方法を変更することで調整できる。
【0012】
第2相の占有面積率は、第1相および第2相の合計100面積%に対して、10面積%以上50面積%以下であることが必要である。第2相の占有面積率が前記下限未満では、可視光の反射効率が不十分となる。他方、第2相の占有面積率が前記上限を超えると、反射材硬化物が剥離しやすくなる問題が発生する。同様の観点から、第2相の占有面積率は、第1相および第2相の合計100面積%に対して、20面積%以上40面積%以下であることが好ましい。
なお、第2相の占有面積率を前記範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。例えば、第2相の占有面積率は、白色無機フィラーの配合量を変更することで調整できる。
【0013】
本実施形態において、反射電子像、凝集相の比率、および平均凝集粒子数は、次のようにして得られる。
反射電子像は、反射材硬化物の表面を走査型電子顕微鏡で撮像して得られる。走査型電子顕微鏡としては、適宜公知のものを使用できる。なお、第2相の平均径、凝集相の比率および占有面積率を算出するために、反射電子像に二値化処理を行ってもよい。二値化処理は、例えば、画像解析計測システム(製品名「WinROOF2021」、三谷商事社製)により行うことができる。
凝集相は、反射電子像において、2個以上の白色無機フィラー微粒子が凝集しているものからなる相である。一方で、1個の白色無機フィラー微粒子からなる相は、単粒子相である。
凝集相の比率は、反射電子像において、4.5μm×6.0μmの矩形の測定視野を設定し、この測定視野において、全ての第2相を観察し、凝集相と単粒子相とに分類した場合に、全ての第2相の個数(単粒子相の個数と凝集相の個数の合計)に対する凝集相の個数の比率((凝集相の個数/全ての第2相の個数)×100(%))を算出することにより得られる。
また、平均凝集粒子数は、反射電子像において、4.5μm×6.0μmの矩形の測定視野を設定し、この測定視野において、全ての第2相を観察し、第2相を構成する白色無機フィラーの個数をカウントし、その平均値を算出することにより得られる。
【0014】
(樹脂組成物)
本実施形態に用いる樹脂組成物は、樹脂成分および白色無機フィラーを含有するものである。例えば、この樹脂組成物を、塗布し、塗膜を形成した後に、硬化させることで、反射材硬化物を得られる。硬化条件については、樹脂成分の種類に応じて、適宜設定できる。
【0015】
(樹脂成分)
本実施形態に用いる樹脂成分(固形分)は、硬化性樹脂を主成分とする。硬化性樹脂により硬化させることができ、反射材硬化物が得られる。
硬化性樹脂は、光硬化性および熱硬化性のうちの少なくともいずれかの硬化性を有する樹脂である。硬化性樹脂は、光硬化性および熱硬化性の両方を有する樹脂であってもよい。
【0016】
硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、およびメラミン樹脂などが挙げられる。
また、硬化性樹脂は、例えば、カルボキシル基と、感光性を有する基とを有する樹脂であってもよい。カルボキシル基は、エポキシ化合物と反応し、熱硬化性を有する。
このような硬化性樹脂としては、(i)不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、エポキシ基含有不飽和化合物を部分的に反応させて得られる樹脂、並びに、(ii)エポキシ基含有不飽和化合物と、エポキシ基含有不飽和化合物以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体のエポキシ基に、カルボキシル基含有化合物を付加反応させ、生成した水酸基に飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0017】
前記(i)の硬化性樹脂の合成に使用する、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、およびビニル酢酸などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、またはメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
また、不飽和カルボン酸以外の不飽和二重結合を有する化合物としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシメチルメタクリレート、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
また、エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、および4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0018】
前記(ii)の硬化性樹脂の合成に使用する、エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、および4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。
また、エポキシ基含有不飽和化合物以外の不飽和二重結合を有する化合物としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシメチルメタクリレート、および2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
また、カルボキシル基含有化合物としては、アクリル酸、またはメタクリル酸などが挙げられる。
また、飽和または不飽和多塩基酸無水物としては、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、およびテトラヒドロフタル酸などの酸無水物が挙げられる。
【0019】
本実施形態に用いる樹脂成分は、エポキシ化合物を含有してもよい。エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。このエポキシ化合物により、樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げることができる。
エポキシ化合物としては、適宜公知のものを使用できる。
【0020】
本実施形態に用いる樹脂成分は、光重合開始剤を含有してもよい。この光重合開始剤により、樹脂組成物の感光性を向上できる。
光重合開始剤としては、適宜公知のものを使用できる。
【0021】
本実施形態に用いる樹脂成分は、反応性希釈剤を含有してもよい。反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つの重合性二重結合を有する化合物である。この反応性希釈剤により、樹脂組成物の光硬化性を向上できる。
反応性希釈剤としては、適宜公知のものを使用できる。
【0022】
(白色無機フィラー)
本実施形態に用いる白色無機フィラーは、白色の無機フィラーである。この白色無機フィラーにより、反射材硬化物に可視光の反射性を付与できる。
白色無機フィラーとしては、無機フィラーが、チタニア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、アルミナ、およびシリカなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
白色無機フィラーの樹脂成分への分散性の観点から、白色無機フィラーは、コア層とシェル層とを備えるコアシェル型のフィラーであることが好ましい。ここで、コア層は、チタニアからなることが好ましい。また、シェル層は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカからなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物からなることが好ましい。
また、白色無機フィラーの分散性の更なる向上という観点から、白色無機フィラーは、有機系表面処理が施されたものであることが好ましい。
有機系表面処理としては、シランカップリング剤などによる表面処理が挙げられる。
【0024】
(他の成分)
本実施形態に用いる樹脂組成物は、樹脂成分および白色無機フィラーの他に、必要に応じて、他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、消泡剤、増粘剤、チキソ性付与剤、難燃剤、硬化触媒、および非反応性希釈剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に用いる樹脂組成物の製造方法は、白色無機フィラーの分散性を確保できる方法であれば、特定の方法に限定されない。例えば、前記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、またはサンドミルなどの混練手段、或いは、スーパーミキサー、またはプラネタリーミキサーなどの攪拌手段により混練または混合して製造することができる。これらの中でも、三本ロールを使用することが好ましい。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0026】
(反射材硬化物の作製方法)
本実施形態に係る反射材硬化物は、前述した本実施形態に用いる樹脂組成物を用いて、基板上に反射材硬化物を形成することによって作製できる。
基板としては、LEDなどの基板などが挙げられる。
【0027】
具体的には、先ず、基板上に本実施形態に用いる樹脂組成物を塗布し、その後予備乾燥をして、塗膜を形成する。
ここで、塗膜の塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコータ法、アプリケータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法、およびスプレーコータ法などが挙げられる。
予備乾燥の条件は、樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されないが、例えば、60℃以上80℃以下の範囲の温度で、15分間以上60分間以下の範囲で加熱すればよい。このような予備乾燥により、樹脂組成物中の溶剤などを揮散させて、タックフリーな塗膜を形成できる。
塗膜の厚み(DRY膜厚)は、特に限定されないが、通常、5μm以上200μm以下であり、好ましくは、10μm以上70μm以下である。
【0028】
樹脂組成物として、写真現像型の樹脂組成物を使用する場合には、塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射し、次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより、露光後の塗膜を現像してもよい。これにより、塗膜に回路パターンに対応した開口部を設けることができる。
【0029】
次いで、基板に熱処理(以下場合により、ポストキュアともいう)を行う。これにより、基板上に反射材硬化物を形成させることができる。
熱処理条件としては、樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されない。例えば、熱処理炉としては、熱風循環式の乾燥機、および遠赤外線炉などを採用できる。また、熱風循環式の乾燥機を用いる場合、熱処理温度は、130℃以上170℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、30分間以上120分間以下であることが好ましい。さらに、遠赤外線炉を用いる場合、熱処理温度は、200℃以上250℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、3分間以上10分間以下であることが好ましい。
【0030】
(反射材硬化物の物性)
本実施形態に係る反射材硬化物は、前述のとおり、可視光の反射効率に優れ、変色抑制に優れるものである。そして、本実施形態に係る反射材硬化物は、従来の反射材と比較して、反射材硬化物の厚みを薄くしても、十分な反射効率を保つことができる。そのため、従来の反射材硬化物の厚みは、通常、100μm以上500μm以下であったが、本実施形態に係る反射材硬化物は、従来よりも薄くすることができる。
本実施形態に係る反射材硬化物は、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上70μm以下であることが特に好ましい。
【0031】
本実施形態に係る反射材硬化物は、反射材硬化物の厚みを30μmとした場合に、次の条件を満たすことが好ましい。
反射材硬化物の450nmの波長の反射率は、SCI(Specular Component Include:正反射光を含む)方式で、92%以上であることが好ましい。この反射率が前記下限以上であれば、可視光の反射効率に優れるといえる。
また、窒素雰囲気下(酸素濃度:2000ppm)にて、ピーク温度260℃以上で6秒間、及び溶融温度240℃以上で60秒間の条件でリフロー処理した後の反射材硬化物の450nmの波長の反射率は、SCI方式で、91.5%以上であることが好ましい。この反射率が前記下限以上であれば、リフロー処理のような加熱処理などによる反射効率低下が抑制されていると判断できる。
【実施例0032】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0033】
(樹脂成分)
硬化性樹脂:アクリレート共重合樹脂(タムラ製作所社製)、エポキシ化合物、および反応性希釈剤を含有する混合物
(白色無機フィラー)
白色無機フィラーA:酸化チタン(シリカ・アルミナ・シロキサン処理)、商品名「PF-728」、石原産業社製
白色無機フィラーB:酸化チタン(シリカ・アルミナ処理)、商品名「PF-726」、石原産業社製
(他の成分)
増粘剤:親水性ヒュームドシリカ、商品名「レオロシールDM-20S」、トクヤマ社製
消泡剤:シリコーン系消泡剤、商品名「X-50-1095C」、信越化学工業社製
【0034】
[実施例1]
硬化性樹脂56.8質量%、白色無機フィラーA39.7質量%、増粘剤1.6質量%、および消泡剤1.9質量%を容器に投入し、攪拌機にて予備混合した後、三本ロールを用いて室温にて混合し分散させて、樹脂組成物を得た。
そして、銅箔ベタ基板(銅箔厚:35μm、基板厚:1.6mm)を、バフ研磨により表面処理後、スクリーン印刷法にて、得られた樹脂組成物を、所定のDRY膜厚となるように塗布して、塗工基板を得た。塗布後、BOX炉にて80℃で20分間の予備乾燥を行った。予備乾燥後、BOX炉にて150℃で60分間のポストキュアを行い、基板上に反射材硬化物を形成して、評価用基板を作製した。なお、評価用基板は、反射材硬化物の厚みが20μm、45μm、および70μmと異なる3つを作製した。
【0035】
[比較例1]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物および評価用基板を得た。
【0036】
[反射材硬化物の評価]
反射材硬化物の評価(反射電子像の観察、反射率、リフロー処理後反射率、b値保持率、95%反射換算膜厚)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)反射電子像の観察
反射材硬化物の厚みが20μmの評価用基板を試料として、この塗膜表面を走査型電子顕微鏡で2万倍の倍率で撮像し、得られた4.5μm×6.0μmの反射電子像を、画像解析計測システム(商品名「WinROOF2021」、三谷商事社製)を用い、第2相を抽出し、二値化処理を行った。得られた反射電子像を
図1に示す。また、得られた反射電子像から、第2相の平均径、凝集相の比率、平均凝集粒子数、および第2相の占有面積率を算出した。さらに、第2相を構成する粒子の個数と、その比率との関係を
図2に示す。
(2)反射率
反射材硬化物の厚みが異なる3つの評価用基板について、それぞれ、分光測色計(商品名「CM-700d」、コニカミノルタ社製)を用いて、450nmにおけるSCIを測定した。得られた反射率をプロットし、近似曲線から、厚み30μmに換算した反射率を算出した。
(3)リフロー処理後反射率
反射材硬化物の厚みが異なる3つの評価用基板について、それぞれ、窒素雰囲気下(酸素濃度:2000ppm)にて、ピーク温度260℃以上で6秒間、及び溶融温度240℃以上で60秒間の条件でリフロー処理した。これらのリフロー処理後の評価用基板について、それぞれ、分光測色計(商品名「CM-700d」、コニカミノルタ社製)を用いて、450nmにおけるSCIを測定した。得られた反射率をプロットし、近似曲線から、厚み30μmに換算した反射率を算出した。
(4)b値保持率
反射材硬化物の厚みが異なる3つの評価用基板について、それぞれ、分光測色計(商品名「CM-700d」、コニカミノルタ社製)を用いて、JIS Z 8781-4 「測色-第4部:CIE1976 L*a*b*色空間」に準拠し、b値を測定した。得られたb値をプロットし、近似曲線から、厚み30μmに換算したb値(初期b値)を算出した。
次に、反射材硬化物の厚みが異なる3つの評価用基板について、それぞれ、窒素雰囲気下(酸素濃度:2000ppm)にて、ピーク温度260℃以上で6秒間、及び溶融温度240℃以上で60秒間の条件でリフロー処理した。これらのリフロー処理後の評価用基板について、それぞれ、上記と同様にして、厚み30μmに換算したb値(リフロー処理後b値)を算出した。
そして、下記の数式より、b値保持率(単位:%)を算出した。なお、b値保持率が高いほど、変色抑制に優れているといえる。
b値保持率=(リフロー処理後b値/初期b値)×100
(5)95%反射換算膜厚
反射材硬化物の厚みが異なる3つの評価用基板について、それぞれ、分光測色計(商品名「CM-700d」、コニカミノルタ社製)を用いて、450nmにおけるSCIを測定した。得られた反射率をプロットし、近似曲線から、450nmの反射率が95%となる換算膜厚を算出した。
【0037】
【0038】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の反射材硬化物(実施例1)は、反射率、リフロー処理後反射率、b値保持率、および95%反射換算膜厚の全ての結果が良好であることが確認された。そのため、本発明の反射材硬化物は、可視光の反射効率に優れ、変色抑制に優れることが確認された。