(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015275
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】組み立て品
(51)【国際特許分類】
F16L 9/22 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
F16L9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118586
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治樹
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA15
3H111CA33
3H111CA39
3H111CB02
3H111CB14
3H111CB27
3H111DB11
3H111EA05
(57)【要約】
【課題】分割体が強固に接続された組み立て品を提供する。
【解決手段】組み立て品10は、第1分割体12と第2分割体14との突き合わせ部を接着剤により接続している。組み立て品10は、第1分割体12の突き合わせ部に設けられた凸部22と、第2分割体14の突き合わせ部に設けられ、凸部22が挿入される凹部32と、凹部32における側壁を貫通する貫通孔34と、凸部22において貫通孔34に対向する部位に設けられ、貫通孔34に連通する連通凹部24と、貫通孔34及び連通凹部24に跨がる、硬化した接着剤で形成された接着樹脂部16とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割体同士の突き合わせ部を接着剤により接続する組み立て品であって、
一方の前記分割体の突き合わせ部に設けられた凸部と、
他方の前記分割体の突き合わせ部に設けられ、前記凸部が挿入される凹部と、
前記凹部における側壁を貫通する貫通孔と、
前記凸部において前記貫通孔に対向する部位に設けられ、前記貫通孔に連通する連通凹部と、
前記貫通孔及び前記連通凹部に跨がる、硬化した前記接着剤で形成された接着樹脂部と、を備える、組み立て品。
【請求項2】
前記連通凹部は、前記凸部を貫通する請求項1に記載の組み立て品。
【請求項3】
前記凹部は、前記他方の分割体の突き合わせ部に沿う溝を形成し、
前記凸部は、前記溝に嵌る壁体である請求項1または2に記載の組み立て品。
【請求項4】
前記突き合わせ部は、前記組み立て品の外縁部に設けられ、
前記貫通孔は、前記凹部における外側の側壁に設けられ、
前記凹部における外側の側壁と前記凸部との間は、前記凹部における内側の側壁と前記凸部との間よりも大きい請求項1または2に記載の組み立て品。
【請求項5】
前記連通凹部は、前記一方の分割体の突き合わせ部に沿う溝で形成されている請求項3に記載の組み立て品。
【請求項6】
乗り物に搭載されるダクトである請求項1に記載の組み立て品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組み立て品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの分割体を組み合わせて構成される組み立て品の一例として、例えば特許文献1のクーリングケースがある。特許文献1のクーリングケースは、分割体の端部を接着剤で接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着剤による接合は、十分な接続強度が得られないことがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、分割体が強固に接続された組み立て品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る組み立て品の第1態様は、
分割体同士の突き合わせ部を接着剤により接続する組み立て品であって、
一方の前記分割体の突き合わせ部に設けられた凸部と、
他方の前記分割体の突き合わせ部に設けられ、前記凸部が挿入される凹部と、
前記凹部における側壁を貫通する貫通孔と、
前記凸部において前記貫通孔に対向する部位に設けられ、前記貫通孔に連通する連通凹部と、
前記貫通孔及び前記連通凹部に跨がる、硬化した前記接着剤で形成された接着樹脂部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る組み立て品の第2態様は、前記第1態様において、
前記連通凹部は、前記凸部を貫通するようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る組み立て品の第3態様は、前記第1態様又は前記第2態様において、
前記凹部は、前記他方の分割体の突き合わせ部に沿う溝を形成し、
前記凸部は、前記溝に嵌る壁体であってもよい。
【0009】
本発明に係る組み立て品の第4態様は、前記第1態様、前記第2態様及び前記第3態様の何れか1つにおいて、
前記突き合わせ部は、前記組み立て品の外縁部に設けられ、
前記貫通孔は、前記凹部における外側の側壁に設けられ、
前記凹部における外側の側壁と前記凸部との間は、前記凹部における内側の側壁と前記凸部との間よりも大きくしてもよい。
【0010】
本発明に係る組み立て品の第5態様は、前記第1態様、前記第2態様、前記第3態様及び前記第4態様の何れか1つにおいて、
前記連通凹部は、前記一方の分割体の突き合わせ部に沿う溝で形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係る組み立て品の第6態様は、前記第1態様、前記第2態様、前記第3態様、前記第4態様及び前記第5態様の何れか1つにおいて、
乗り物に搭載されるダクトであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る組み立て品によれば、分割体が強固に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る組み立て品の一部を示す概略斜視図である。
【
図2】実施例の第1分割体の一部を示す概略斜視図である。
【
図3】実施例の第2分割体の一部を示す概略斜視図である。
【
図5】実施例の第1分割体と第2分割体との組み立てを説明する図である。
【
図7】連通凹部の変更例2を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る組み立て品につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一例を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【実施例0015】
図1に示すように、実施例に係る組み立て品10は、第1分割体(一方の分割体)12と、第2分割体(他方の分割体)14とを備えている。組み立て品10は、分割体12,14同士の突き合わせ部20,30が、接着剤により接続されている。言い換えると、組み立て品10は、分割体12,14の外縁部に設けられた突き合わせ部20,30が、硬化した接着剤で形成された接着樹脂部16で接続されているともいえる。組み立て品10は、第1分割体12及び第2分割体14を接続することで、内部に空気流通路が形成される円筒形状のダクトである。このような組み立て品10は、例えば、自動車、二輪車などの乗り物に搭載されるダクトとして使用可能である。組み立て品10の空気流通路において、組み立て品10の一端に設けられた流入口から、組み立て品10の他端に設けられた流出口に向かう流体の流れの向きを空気流通方向という。
【0016】
図2に示すように、第1分割体12は、空気流通方向と交差する方向に切断した断面形状が半円状に形成された第1本体18と、第1本体18の両外縁(半円の端部である両側縁)のそれぞれから外側へ張り出した第1突き合わせ部20と、第1突き合わせ部20に設けられた凸部22とを備えている。第1本体18は、半円状の溝が空気流通方向に延びる軒樋状に形成されている。第1突き合わせ部20は、第1本体18の外縁に沿って鍔状に形成されている。凸部22は、第1突き合わせ部20から第2分割体14の後述する第2突き合わせ部30側に向けて突出している。凸部22は、第1突き合わせ部20の延出方向中央部に配置されて、第1本体18の外縁に沿って連なる壁体である。第1分割体12は、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やABS樹脂などの射出成形品を用いることができる。
【0017】
図2に示すように、凸部22は、凸部22の外側面から凹むように形成された連通凹部24を備えている。連通凹部24は、凸部22の突出方向と交差する方向に凸部22を貫通しないように凹み、外側に開口している。凸部22は、第1本体18の外縁に沿う長さ方向(空気流通方向)に間隔をあけて配置された複数の連通凹部24を備えている。
【0018】
図3に示すように、第2分割体14は、空気流通方向と交差する方向に切断した断面形状が半円状に形成された第2本体28と、第2本体28の両外縁(半円の端部である両側縁)のそれぞれから外側へ張り出した第2突き合わせ部30と、第2突き合わせ部30に設けられ、第1分割体12の凸部22が挿入される凹部32とを備えている。第2本体28は、半円状の溝が空気流通方向に延びる軒樋状に形成されている。第2突き合わせ部30は、第2本体28の外縁に沿って鍔状に形成されている。凹部32は、第2突き合わせ部30における第1突き合わせ部20との突き合わせ面に、第1突き合わせ部20から離れる方向(凸部22の突出方向と同じ方向)に凹んでいる。凹部32は、第2突き合わせ部30の延出方向中央部に配置されて、第2本体28の外縁に沿って延びる溝状に形成されている。凹部32に挿入した凸部22は、凹部32における外側の側壁(以下、単に外壁という。)33aと、凹部32における内側の側壁(以下、単に内壁という。)33bとの間に挟まれる。第2分割体14は、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やABS樹脂などの射出成形品を用いることができる。
【0019】
図3に示すように、第2突き合わせ部30は、凹部32の外壁33aを貫通する貫通孔34を備えている。貫通孔34は、第2突き合わせ部30における第2本体28からの延出方向に外壁33aを貫通し、凹部32の内側から第2分割体14の外面まで通じている。貫通孔34と連通凹部24とが対向して配置され、連通凹部24及び貫通孔34は、凸部22の突出方向と交差する方向に連通している。第2突き合わせ部30は、第2本体28の外縁に沿う長さ方向(空気流通方向)に間隔をあけて配置された複数の貫通孔34を備え、貫通孔34及び連通凹部24が対応して配置されている。
【0020】
図4に示すように、分割体12,14同士の突き合わせ部20,30は、貫通孔34及び連通凹部24に跨がる接着樹脂部16を備えている。接着樹脂部16は、凸部22及び凹部32の間と、第1突き合わせ部20及び第2突き合わせ部30の対向面の間とにも設けられている。凸部22と凹部32との間にはクリアランスが設けられており、凹部32の外壁33aと凸部22との間は、凹部32の内壁33bと凸部22との間よりも大きくなるように設定されている。このため、凹部32の外壁33aと凸部22との間の接着樹脂部16の厚みが、凹部32の内壁33bと凸部22との間の接着樹脂部16の厚みよりも大きくなっている。
【0021】
接着樹脂部16を構成する樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、クロロプレンゴムやニトリルゴム等のゴムなどが挙げられる。接着樹脂部16を形成する接着剤としては、液状から硬化することで固体になるものであればよい。このような接着剤としては、水分散系、溶剤系、無溶剤系、固体系の何れの形態であってもよく、溶剤揮発型、湿気硬化型、加熱硬化型、硬化剤混合型、嫌気硬化型、紫外線硬化型、ホットメルトなどの熱溶融型の何れの硬化方法のものであってもよい。
【0022】
図5Aに示すように、第1分割体12と第2分割体14とを組み立てる場合、接着剤を第2分割体14の凹部32に付与する。
図5Bに示すように、第1分割体12の凸部22を第2分割体14の凹部32に挿入することで、接着剤が凸部22に押されて凸部22と凹部32との間に拡散する。このとき、連通している連通凹部24及び貫通孔34に接着剤が入り込む。そして、接着剤が硬化することで、連通凹部24及び貫通孔34に跨がって接着樹脂部16が形成される。また、凸部22及び凹部32の間と、第1突き合わせ部20及び第2突き合わせ部30の対向面の間にも、接着樹脂部16が形成される。
【0023】
組み立て品10は、第1分割体12における凸部22の連通凹部24と第2分割体14における凹部32の外壁33aを貫通する貫通孔34とに跨がって、硬化した接着剤で形成された接着樹脂部16を備えている。接着樹脂部16が、凸部22が凹部32から外れる方向と交差する方向に延びていることから、連通凹部24及び貫通孔34に跨がる接着樹脂部16により、凸部22を抜け止めすることができる。このように、組み立て品10は、凹部32と凸部22との対向面同士が接着する化学的な作用だけでなく、接着樹脂部16が楔のように機能する物理的な作用により、凸部22と凹部32とがハズレ止めされることから、第1分割体12及び第2分割体14を強固に接続できる。接着剤によって接着し難いポリプロピレンなどの無極性樹脂であっても、楔のように機能する接着樹脂部16により接続強度を確保できるので、第1分割体12と第2分割体14との接続に接着剤を採用できる。
【0024】
組み立て品10は、接着樹脂部16の形成範囲を簡単に調整でき、接着樹脂部16の形成範囲を簡単に調整することで、第1分割体12と第2分割体14との適度な接続強度が得られる。凸部22を凹部32に挿入した際に、液状の接着剤が凸部22と凹部32との間に拡散することから、第1突き合わせ部20と第2突き合わせ部30との間に形成された接着樹脂部16により、第1突き合わせ部20及び第2突き合わせ部30間の封止性を向上できる。また、組み立て品10は、第2分割体14の外面に開口する貫通孔34から接着樹脂部16が見えるので、第1突き合わせ部20と第2突き合わせ部30との間に接着樹脂部16が行き渡っていることを目視で確認できる。また、連通凹部24と貫通孔34とに跨がって形成された接着樹脂部16が少ないと視認した場合、貫通孔34から接着剤を追加することもできる。
【0025】
爪嵌合によって突き合わせ部を接続する構成と比べて、第1突き合わせ部20及び第2突き合わせ部30をコンパクトにすることができることから、組み立て品10を小型化できると共に組み立て品10の見栄えを向上できる。組み立て品10は、爪嵌合によって突き合わせ部を接続する構成と比べて、凸部22を凹部32に挿入し易く、第1分割体12と第2分割体14との接続のための設備を簡素にすることができる。また、爪嵌合によって突き合わせ部を接続する構成と比べて、連通凹部24及び貫通孔34の位置の制約が少ないため、組み立て品10の設計の自由度を向上できる。
【0026】
凹部32が第2分割体14の第2突き合わせ部30に沿う溝を形成し、凸部22が溝状の凹部32に嵌る壁体であることから、接着樹脂部16の形成範囲を広く確保することができる。これにより、第1分割体12及び第2分割体14を強固に接続できる。
【0027】
凹部32における外壁33aと凸部22との間を、凹部32における内壁33bと凸部22との間よりも大きくすることで、接着剤が付与された凹部32に凸部22を挿入したときに、貫通孔34及び連通凹部24に接着剤を誘導することができる。これにより、貫通孔34及び連通凹部24に跨がる接着樹脂部16を適切に形成して、第1分割体12及び第2分割体14を強固に接続できる。
【0028】
組み立て品10は、接着樹脂部16による凸部22と凹部32とのハズレ止め効果により、接着剤による第1突き合わせ部20と第2突き合わせ部30との接続の信頼性を向上できる。接着剤による第1突き合わせ部20と第2突き合わせ部30との接続の信頼性が高いことから、走行時に振動する乗り物に搭載されるダクトに、本開示の組み立て品10を適用できる。
【0029】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)実施例の連通凹部24は、凸部22を貫通していないが、これに限らず、
図6に示すように、連通凹部24が凸部22を貫通していてもよい。このように、連通凹部24が凸部22を貫通していることで、貫通孔34及び連通凹部24に跨がる接着樹脂部16を大きくすることができることから、第1分割体12及び第2分割体14を強固に接続できる。
(2)実施例の連通凹部24は、第1本体18の外縁に沿う方向に間隔をあけて複数設けたが、これに限らず、
図7に示すように、第1分割体12の第1突き合わせ部20に沿う溝で形成されていてもよい。このようにすることで、連通凹部24と貫通孔34とをより確実に連通させることができることから、貫通孔34及び連通凹部24に跨がる接着樹脂部16により、第1分割体12及び第2分割体14を強固に接続できる。
(3)組み立て品としてダクトを例示したが、これに限らず、例えばレゾネータなどのタンク状のものや、複数の分割体を組み合わせて構成されるその他のものであってもよい。