(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152820
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】フェライト焼結磁石
(51)【国際特許分類】
H01F 1/10 20060101AFI20251002BHJP
C04B 35/40 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
H01F1/10
C04B35/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054940
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 建一郎
(72)【発明者】
【氏名】大槻 史朗
【テーマコード(参考)】
5E040
【Fターム(参考)】
5E040AB04
5E040AB09
5E040BD01
5E040CA01
5E040NN02
5E040NN06
(57)【要約】
【課題】保磁力に優れた新規なフェライト焼結磁石を提供することを目的とする。
【解決手段】フェライト焼結磁石は、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒と、3つ以上の前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒に囲まれた粒界多重点と、を備える。マグネトプランバイト型フェライト結晶粒及び粒界多重点は、それぞれ、金属元素A、La、Co、及び、Feを含有する。金属元素Aは、Sr、Ba、および、Caからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。粒界多重点における金属元素AのLaに対する原子比(A/La)が3.5~11.0である。マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)が、0.008~0.100である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒と、
3つ以上の前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒に囲まれた粒界多重点と、を備えるフェライト焼結磁石であって、
前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒及び前記粒界多重点は、それぞれ、金属元素A、La、Co、及び、Feを含有し、
金属元素Aは、Sr、Ba、および、Caからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
前記粒界多重点における金属元素AのLaに対する原子比(A/La)が3.5~11.0であり、
前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)が、0.008~0.100である、フェライト焼結磁石。
【請求項2】
前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒の金属組成は、以下の一般式(5)で表現され、
A1-x-yLaxRy(Fe12-e-fCoeMf)a (5)
上式(5)中、Rは、Bi及び希土類元素(ただしLaを除く)からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素であり、Mは、Zn、Cu、Mn、Al、Ni、及びCrからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、
x>0,
0≦y<x、
e>0,
0≦f<e、及び、
0.800≦a≦1.200を満たす、請求項1に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項3】
x≧0.05、及び、e≧0.05を満たす、請求項2に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項4】
前記粒界多重点における金属元素及びSiの全量に対するLaの原子濃度が9.0モル%以下である、請求項1又は2に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項5】
前記粒界多重点におけるSrの金属元素Aに対する比(Sr/A)が、0.30~0.85である、請求項1又は2に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項6】
前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒のうち、積層欠陥をもつ結晶粒の割合が、100個中8個以下である、請求項1又は2に記載のフェライト焼結磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェライト焼結磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトプランバイト型(M型)構造のフェライトの化学式は、AFe12O19で表される。Aはアルカリ土類金属で2価、Feは3価、Oは-2価のイオンとなり、AFe12O19でチャージバランスが取れた結晶を形成している。
【0003】
AFe12O19に対して、AサイトをLaで、FeサイトをCoで置換することで、磁気特性が向上することが知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-156310公報
【特許文献2】特開2023-90400号公報
【特許文献3】特開2002-313617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフェライト焼結磁石でも保磁力に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、保磁力に優れた新規なフェライト焼結磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]マグネトプランバイト型フェライト結晶粒と、
3つ以上の前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒に囲まれた粒界多重点と、を備えるフェライト焼結磁石であって、
前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒及び前記粒界多重点は、それぞれ、金属元素A、La、Co、及び、Feを含有し、
金属元素Aは、Sr、Ba、および、Caからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
前記粒界多重点における金属元素AのLaに対する原子比(A/La)が3.5~11.0であり、
前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)が、0.008~0.100である、フェライト焼結磁石。
【0008】
[2]前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒の金属組成は、以下の一般式(5)で表現され、
A1-x-yLaxRy(Fe12-e-fCoeMf)a (5)
上式(5)中、Rは、Bi及び希土類元素(ただしLaを除く)からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素であり、Mは、Zn、Cu、Mn、Al、Ni、及びCrからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、
x>0,
0≦y<x、
e>0,
0≦f<e、及び、
0.800≦a≦1.200を満たす、[1]に記載のフェライト焼結磁石。
【0009】
[3]x≧0.05、及び、e≧0.05を満たす、[2]に記載のフェライト焼結磁石。
【0010】
[4]前記粒界多重点における金属元素及びSiの全量に対するLaの原子濃度が9.0モル%以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のフェライト焼結磁石。
【0011】
[5]前記粒界多重点におけるSrの金属元素Aに対する比(Sr/A)が、0.30~0.85である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のフェライト焼結磁石。
【0012】
[6]前記マグネトプランバイト型フェライト結晶粒のうち、積層欠陥をもつ結晶粒の割合が、100個中8個以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のフェライト焼結磁石。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保磁力を高くすることのできる新規なフェライト焼結磁石が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、フェライト焼結磁石の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。
【0016】
(フェライト焼結磁石)
本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石100は、
図1に示すように、マグネトプランバイト型(M型)の結晶構造を有する複数のマグネトプランバイト型フェライト結晶粒4と、3つ以上のマグネトプランバイト型フェライト結晶粒4間に囲まれた粒界多重点6とを有する。2つのマグネトプランバイト型フェライト結晶粒4間には粒界5が形成されている。
【0017】
(マグネトプランバイト型フェライト結晶粒)
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒は、金属元素A、La、Co、及び、Feを含有する酸化物である。金属元素Aは、Sr、Ba、および、Caからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
【0018】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒の金属組成は、以下の一般式(5)で表現されることができる。
【0019】
A1-x-yLaxRy(Fe12-e-fCoeMf)a (5)
上式(5)中、Aは、Sr、Ba、および、Caからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0020】
Rは、Bi及び希土類元素(ただしLaを除く)からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を示す。Laを除く希土類元素とは、Sc,Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Luである。
【0021】
Mは、Zn、Cu、Mn、Al、Ni、及びCrからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素である。
【0022】
xは、0を超えればよく、例えば、0.01以上でもよく、0.05以上でもよく、0.10以上でもよく、0.20以上でもよく、0.25以上でもよく、0.50以下でもよく、0.45以下でもよく、0.40以下でもよく、0.35以下でもよい。
【0023】
yは、xよりも小さく、x/2より小さくてよく、x/3より小さくてよく、x/5より小さくてよく、x/10より小さくてよく、0.1以下でもよく、0.05以下でもよく、0.02以下でもよく、0.01以下でもよく、0.005以下でもよく、0.001以下でもよく、0でもよい。yは以下式を満たすことができる。
【0024】
0≦y<x
【0025】
eは、0を超えればよく、例えば、0.01以上でもよく、0.02以上でもよく、0.05以上でもよく、0.1以上でもよく、0.2以上でもよく、0.9以下でもよく、0.8以下でもよく、0.7以下でもよく、0.6以下でもよく、0.5以下でもよく、0.4以下でもよい。
【0026】
fは、eより小さく、例えば、e/2より小さくてよく、e/3より小さくてよく、e/5より小さくてよく、e/10より小さくてよく、0.1以下でもよく、0.05以下でもよく、0.02以下でもよく、0.01以下でもよく、0.005以下でもよく、0.0001以下でもよく、0でもよい。fは以下式を満たすことができる。
【0027】
0≦f<e
【0028】
aは、0.800~1.200であり、例えば、1.100以下でもよく、1.000以下でもよく、0.999以下でもよく、0.997以下でもよく、0.995以下でもよく、0.993以下でもよく、0.850以上でもよく、0.900以上でもよい。
【0029】
金属元素Aの34at%以上をSrが占めてもよく、金属元素Aの34at%以上をBaが占めてもよく、金属元素Aの34at%以上をCaが占めてもよい。中でも、金属元素Aの34at%以上をSrが占めるいわゆるSrフェライトであることが好ましく、金属元素Aに占めるSrの原子比は、50at%以上でもよく、60at%以上でもよく、70at%以上でもよく、80at%以上でもよく、90at%以上でもよく、95at%以上でもよく、97at%以上でもよく、99at%以上でもよく、100at%でもよい。本明細書において、原子比とは、原子数の比のことであり、モル比と同じである。
【0030】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)は0.008~0.100である。原子比(Co/Fe)は、0.010以上でもよく、0.020以上でもよく、0.030以上でもよく、0.090以下でもよく、0.080以下でもよく、0.070以下でもよく、0.066以下でもよい。
【0031】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのLaに対する原子比(e/x)は、0.80以上であってよく、0.85以上であってよく、0.90以上であってよく、0.95以上であってよく、0.97以上であってよく、0.98以上であってよく、0.99以上であってよく、1.20以下であってよく、1.15以下であってよく、1.10以下であってよく、1.05以下であってよく、1.03以下であってよく、1.02以下であってよく、1.01以下であってよい。
【0032】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒における金属元素AのLaに対する原子比(A/La)は、2.5~11.0であってもよい。マグネトプランバイト型フェライト結晶粒における原子比(A/La)は、4.0以上でもよく、10以下でもよく、9以下でもよい。
【0033】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるマグネトプランバイト型フェライトの質量分率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
【0034】
フェライト焼結磁石における全結晶粒に占めるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒(主相)の質量比率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。このように、マグネトプランバイト型フェライト相とは異なる結晶相(異相)の質量比率を低減することによって、磁気特性を一層高くすることができる。フェライト焼結磁石の全結晶粒におけるM型フェライト相の質量比率(%)は、X線回折により、マグネトプランバイト型フェライト相の存在比率(モル%)を求めることで確認することができる。マグネトプランバイト型フェライト相の存在比率は、マグネトプランバイト型フェライト、オルソフェライト、ヘマタイト、スピネル、W型フェライト、それぞれの粉末試料を所定比率で混合し、それらのX線回折強度から比較算定することにより算出される。
【0035】
マグネトプランバイト型フェライトの結晶構造は、以下の式(III)で表すことができる。
【0036】
QX12O19 (III)
Qは2価陽イオンのサイト(Aサイト)であり、金属元素A、La、及び、金属元素Rを含む。Xは3価陽イオンのサイト(Bサイト)であり、Fe、Co、及び、金属元素Mを含む。Oは2価陰イオンであり、(III)式において電荷がバランスすることができる。
【0037】
なお、上式(III)におけるQ(Aサイト)及びX(Bサイト)のOに対する原子比率は、実際には上記範囲から多少偏った値を示すことから、上記の数値から若干例えば10%程度ずれていてもよい。
【0038】
フェライト焼結磁石におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒の平均粒径は、例えば5μm以下であってもよく、4.0μm以下であってもよく、0.5~3.0μmであってもよい。このような平均粒径を有することで、保磁力を高くすることができる。フェライト結晶粒の平均粒径は、TEM又はSEMによる断面の観察画像を用いて求めることができる。具体的には、数百個のフェライト結晶粒を含むSEM又はTEMの断面における各結晶粒の断面積を画像解析により求めたうえで、該断面積を有する円の直径(円相当径)を、その断面における該結晶粒の粒径と定義して粒径分布を測定する。測定した個数基準の粒径分布から、フェライト結晶粒の粒径の個数基準の平均値を算出する。このようにして測定される平均値を、フェライト結晶粒の平均粒径とする。
【0039】
(マグネトプランバイト型フェライト結晶粒の積層欠陥)
複数のマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のうち、積層欠陥をもつ結晶粒の割合が、100個中8個以下であることが好適である。6個以下がより好適であり、5個以下がより好適であり、4個以下がより好適であり、3個以下がより好適である。
【0040】
(粒界多重点)
粒界多重点6は、3つ以上のマグネトプランバイト型フェライト結晶粒4間に囲まれた領域である。粒界多重点の組成は、少なくとも、金属元素A、La、Co、及び、Feを含有する酸化物である。
【0041】
フェライト焼結磁石100は、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒4と、3つ以上のマグネトプランバイト型フェライト結晶粒4間に囲まれた粒界多重点6の他に、1又は複数の異相を有してもよい。異相は、α-Fe2O3やLaFeO3であってよい。
【0042】
(金属元素A)
粒界多重点の金属元素Aは、Sr、Ba、および、Caからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
【0043】
ここで、粒界多重点の金属元素Aを構成する元素の組み合わせと、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒の金属元素Aを構成する元素の組み合わせとは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
粒界多重点6の全金属元素及びSi中の金属元素Aの原子比率に限定はない。
【0045】
粒界多重点6は、全金属元素及びSi中で、金属元素Aを1モル%以上含むことができ、2モル%以上含むことができ、3モル%以上含むことができ、4モル%以上含むことができ、5モル%以上含むことができ、6モル%以上含むことができ、30モル%以下含むことができ、25モル%以下含むことができ、20モル%以下含むことができ、15モル%以下含むことができ、12モル%以下含むことができ、10モル%以下含むことができる。
【0046】
粒界多重点6に含まれる金属元素AはSrを含むことが好適である。具体的には、粒界多重点に含まれる金属元素Aに対するSrの原子比(Sr/A)が0.30~0.85であることが好適である。
【0047】
粒界多重点の金属元素Aのうちの一定割合をSrが占めると、焼結時の固相反応において、粒界多重点からマグネトプランバイト型フェライト結晶粒にLaとCoが粒界拡散されやすく、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒のLa,Co置換量が大きくなるためHcjがさらに向上しやすくなる。
【0048】
粒界多重点6は、全金属元素及びSi中で、Srを0.5モル%以上含むことができ、1.0モル%以上含むことができ、1.5モル%以上含むことができ、2.0モル%以上含むことができ、2.5モル%以上含むことができ、3.0モル%以上含むことができ、15モル%以下含むことができ、13モル%以下含むことができ、12モル%以下含むことができ、11モル%以下含むことができ、10モル%以下含むことができ、9モル%以下含むことができる。
【0049】
粒界多重点6は、全金属元素及びSi中で、Caを0.5モル%以上含むことができ、1.0モル%以上含むことができ、1.5モル%以上含むことができ、2.0モル%以上含むことができ、2.5モル%以上含むことができ、3.0モル%以上含むことができ、15モル%以下含むことができ、13モル%以下含むことができ、12モル%以下含むことができ、11モル%以下含むことができ、10モル%以下含むことができ、9モル%以下含むことができ、8モル%以下含むことができ、7モル%以下含むことができる。
【0050】
(La)
本実施形態では、粒界多重点6における金属元素AのLaに対する原子比(A/La)が3.5~11.0である。この原子比(A/La)は、4.0以上でもよく、10以下でもよく、9以下でもよい。
【0051】
粒界多重点6において、全金属元素及びSi中のLaを原子濃度は、0.1モル%以上でもよく、0.2モル%以上でもよく、0.3モル%以上でもよく、0.4モル%以上でもよく、0.5モル%以上でもよく、0.6モル%以上でもよく、0.7モル%以上でもよく、0.8モル%以上でもよく、0.9モル%以上でもよく、1.0モル%以上でもよく、15モル%以下でもよく、13モル%以下でもよく、12モル%以下でもよく、11モル%以下でもよく、10モル%以下でもよく、9.0モル%以下でもよく、8.0モル%以下でもよく、7.0モル%以下でもよく、6.0モル%以下でもよい。
【0052】
(金属元素R)
粒界多重点6は、La以外に、Yを含む希土類元素及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素Rを含有してもよい。粒界多重点6において、全金属元素及びSi中の金属元素Rの原子濃度は、Laの濃度未満であってよく、Laの原子濃度の1/2以下であってよく、Laの原子濃度の1/5以下であってよく、Laの原子濃度の1/10以下であってよく、Laの原子濃度の1/20以下であってよく、0であってよい。
【0053】
(金属元素Co)
粒界多重点6において、全金属元素及びSi中のCoの原子濃度は、0を超えればよく、0.1モル%以上でもよく、0.2モル%以上でもよく、0.5モル%以上でもよく、0.7モル%以上でもよく、1.0モル%以上でもよく、1.2モル%以上でもよく、1.5モル%以上でもよく、10モル%以下でもよく、9.0モル%以下でもよく、8.0モル%以下でもよく、7.0モル%以下でもよく、6.0モル%以下でもよく、5.0モル%以下でもよく、4.0モル%以下でもよく、3.0モル%以下でもよい。
【0054】
(金属元素Fe)
粒界多重点6において、全金属元素及びSi中のFeの原子濃度は、0を超えればよく、5モル%以上でもよく、10モル%以上でもよく、15モル%以上でもよく、20モル%以上でもよく、25モル%以上でもよく、30モル%以上でもよく、35モル%以上でもよく、80モル%以下でもよく、75モル%以下でもよく、70モル%以下でもよく、65モル%以下でもよく、60モル%以下でもよく、55モル%以下でもよく、50モル%以下でもよい。
【0055】
(Co/Fe比)
粒界多重点におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)に特に限定はないが、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)と同程度であってよく、0.008~0.100であってよい。原子比(Co/Fe)は、0.010以上でもよく、0.020以上でもよく、0.030以上でもよく、0.090以下でもよく、0.080以下でもよく、0.070以下でもよく、0.066以下でもよい。
【0056】
(金属元素M)
粒界多重点は、Co以外に、Mn、Mg,Ni,Cu,及び、Znからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素Mを含んでいてもよい。粒界多重点6において、全金属元素及びSi中の金属元素Mの原子濃度は、Coの濃度未満であってよく、Coの原子濃度の1/2以下であってよく、Coの原子濃度の1/5以下であってよく、Coの原子濃度の1/10以下であってよく、Coの原子濃度の1/20以下であってよく、0であってよい。
【0057】
粒界多重点6の全金属元素及びSiの原子数に対して、金属元素Aの割合は6~14モル%、Laの割合は0.5~4.0モル%、Feの割合は5~80モル%、Coの割合は0.5~2.0モル%とすることができる。
【0058】
粒界多重点6は、上記の元素以外に、Siを含んでもよい。Siの含有量は、全金属元素及びSiの原子数に対して、5モル%以上でよく、10モル%以上でもよく、50モル%以下でもよく、40モル%以下でもよい。
粒界多重点6は、さらにBを含むことができる。
【0059】
フェライト焼結磁石の断面において、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒4及び粒界多重点6の合計に占める粒界多重点6の面積比率は0.01~5%とすることができる。
【0060】
フェライト焼結磁石の形状に特に限定はなく、たとえば、端面が円弧状となるように湾曲したアークセグメント(C型)形状、平板形状等、種々の形状をとることができる。
【0061】
フェライト結晶粒及び粒界相における金属元素及びSiの含有比率はSTEM-EDXで測定することができ、焼結磁石全体の金属元素の含有比率は蛍光X線分析、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP発光分光分析)等で測定することができる。
【0062】
フェライト結晶粒及び粒界相における金属元素の含有比率はSTEM-EDXで測定することができ、焼結磁石全体の金属元素の含有比率は蛍光X線分析、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP発光分光分析)等で測定することができる。
【0063】
フェライト焼結磁石の形状に特に限定は無く、たとえば、端面が円弧状となるように湾曲したアークセグメント(C型)形状、平板形状等、種々の形状をとることができる。
【0064】
フェライト焼結磁石は、モータ及び発電機など回転電気機械、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD-ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネトラッチ、又はアイソレータ等の磁場発生部材として用いることができる。また、磁気記録媒体の磁性層を蒸着法又はスパッタ法等で形成する際のターゲット(ペレット)として用いることもできる。
【0065】
(フェライト焼結磁石の製造方法)
次に、上記のフェライト焼結磁石の製造方法の一例を説明する。以下に説明する製造方法は、第一原料調製工程、第一仮焼工程、粉砕及びCo添加工程、第二仮焼工程、焼結用言量調製工程、成形工程、及び焼結工程を含む。各工程の詳細を以下に説明する。
【0066】
(第一原料調製工程)
第一原料は、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒の構成元素のうちのCo以外の元素を含む粉末である。すなわち、第一原料は、金属元素A、La、及び、Feを含み、必要に応じて金属元素M及びRを含む粉末である。この工程では、各元素を含む粉末の混合物を、アトライタ、又はボールミル等で1~20時間程度混合するとともに粉砕処理を行って第一原料を得ることが好適である。第一原料は、Coを含まない。
【0067】
各元素を含む粉末の例は、各元素の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、有機金属化合物である。一つの粉末が、2以上の金属元素を含んでいてもよいし、一つの粉末が実質的に一つの金属元素のみを含有してもよい。
【0068】
Caを含む粉末の例は、CaCO3である。Srを含む粉末の例は、SrCO3である。Baを含む粉末の例は、BaCO3である。Laを含む粉末の例は、La2O3、La(OH)3である。Feを含む粉末の例は、Fe2O3である。
【0069】
第一原料における各金属元素の比率は、目標とするフェライト結晶粒の組成に準じて適宜設定できる。Feを含む粉末は、本工程で全量添加してもよく、本工程と後述するCo添加工程とに分けて添加してもよい。
【0070】
第一原料の粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば0.1~2.0μmである。
【0071】
配合工程の後、必要に応じて、第一原料を乾燥させ、篩により粗粒を除去することが好適である。
【0072】
(第一仮焼工程)
第一仮焼工程では、得られた第一原料を仮焼して第一仮焼体を得る。第一仮焼は、例えば、空気等の酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。第一仮焼の温度は、800~950℃であることが好ましい。Coを含まない第一原料を比較的低温で仮焼することで、第一仮焼体として、AFe12O19(マグネトプランバイト型)相、Fe2O3相、及び、LaFeO3(オルソフェライト)相を含む混相化合物を得る。
【0073】
仮焼の時間は、例えば1分間~10時間であってもよく、1分間~3時間であってもよい。
【0074】
(粉砕及びCo添加工程)
この工程では、第一仮焼体を粉砕し、及び、第一仮焼体にCoを含む粉末を添加して、第二仮焼用の第二原料の調製を行う。第一仮焼体の粉砕及びCoを含む粉末の添加の順番に限定はなく、第一仮焼体の粉砕後にCoを含む粉体を配合してもよく、第一仮焼体の粉砕前又は粉砕中にCoを含む粉体を配合してもよい。
【0075】
Coを含む粉体の例は、CoFe2O4、Co(OH)2、及び、Co3O4の粉体である。Coを含む粉体は、Feなど、Co以外のマグネトプランバイト型フェライト結晶粒を構成する金属元素を1部含んでいてもよい。例えば、Co(OH)2、及び、Co3O4などを添加する場合には、Fe2O3などのFeを添加することが好適である。
【0076】
(第二仮焼工程)
第二仮焼工程では、得られた第二原料を仮焼して第二仮焼体を得る。第二仮焼は、例えば、空気等の酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。第二仮焼の温度は、1100~1200℃であることが好ましい。第二仮焼の時間は、例えば1分間~10時間であってもよく、1分間~3時間であってもよい。
【0077】
これにより、第二仮焼体としてマグネトプランバイト相の単相のフェライトを得る。この工程では、第二仮焼の初期で、第二原料中のCo及びFe2O3などのFeによりCoFe2O4(コバルトフェライト)相が生成され、その後、AFe12O19(マグネトプランバイトフェライト)相、LaFeO3(オルソフェライト)相、及び、CoFe2O4(コバルトフェライト)相が反応する。この反応では、LaFeO3(オルソフェライト)相からLaが、CoFe2O4La相からCoが、それぞれ、AFe12O19(マグネトプランバイトフェライト)相に拡散していき、La及びCo固溶したマグネトプランバイト型フェライト(AFe12O19)が形成される。マグネトプランバイト型フェライト結晶粒中において、Laは金属元素Aと置換し、CoはFeと置換する。
【0078】
本実施形態では、あらかじめCoが固溶したAFe12O19(マグネトプランバイトフェライト)相に後からLaが固溶するのでなく、Coが固溶していないAFe12O19(マグネトプランバイトフェライト)相にLa及びCoが共に固溶するので、La及びCoがそれぞれミクロレベルで同数すなわちこれらの原子のモル比がほぼ同程度で均一に固溶しやすくなり、AFe12O19のフェライトのチャージバランスが取れやすくなり、積層欠陥が少なくなると考えられる。また、このような製法では、焼結体の粒界多重点において元素AとLaの比(A/La)が3.5~11.0となる。
【0079】
(焼結用原料調製工程)
この工程では、第二仮焼工程により顆粒状や塊状となった第二仮焼体を粉砕してマグネトプランバイト型フェライト微粉を得ると共に、必要に応じて焼結助剤を添加し、成形用原料を得る。
【0080】
粉砕は、例えば、第二仮焼体を粗い粉末となるように粉砕(粗粉砕工程)した後、これを更に微細に粉砕する(微粉砕工程)、2段階の工程に分けて行ってもよい。
【0081】
粗粉砕は、例えば、振動ミル等を用いて、仮焼体の平均粒径が0.1~5.0μmとなるまで行うことができる。
【0082】
微粉砕では、粗粉砕で得られた粗粉を、さらに湿式アトライタ、ボールミル、ジェットミル等によって粉砕する。微粉砕では、得られる粒子の平均粒径が、例えば0.08~2.0μm程度となるように粉砕を行うことができる。微粉の比表面積(例えばBET法により求められる。)は、例えば7~12m2/g程度とする。好適な粉砕時間は、粉砕方法によって異なり、例えば湿式アトライタの場合、30分間~10時間であり、ボールミルによる湿式粉砕では10~50時間である。得られる粉体の比表面積は、市販のBET比表面積測定装置(Mountech製、商品名:HM Model-1210)を用いて測定することができる。
【0083】
微粉砕工程では、焼成後に得られる焼結体の磁気的配向度を高めるため、例えば一般式Cn(OH)nHn+2で示される多価アルコールを添加してもよい。一般式におけるnは、例えば4~100であってもよく、4~30であってもよい。多価アルコールとしては、例えばソルビトールが挙げられる。また、2種類以上の多価アルコールを併用してもよい。さらに、多価アルコールに加えて、他の公知の分散剤を併用してもよい。
【0084】
多価アルコールを添加する場合、その添加量は、添加対象物(例えば粗粉)に対して、例えば0.05~5.0質量%であってもよく、0.1~3.0質量%であってもよい。なお、微粉砕工程で添加した多価アルコールは、後述する焼成工程で熱分解して除去される。
【0085】
焼結助剤は、粉砕後のフェライト粉体に混合してもよいが、粉砕前又は粉砕中の粉体に焼結助剤を添加して、第二仮焼体の粉砕と同時にフェライト粉体と焼結助剤との混合を行うことが好適である。
【0086】
焼結助剤の例は、Caを含む粉体、Si,B等の半金属元素を含む粉体である。焼結助剤の具体的は、CaCO3、SiO2、B2O3の粉末である。
【0087】
焼結助剤の量は、フェライト粉体の質量に対して、0.1~7質量%とすることが好適である。
【0088】
第二仮焼体の粉砕を2段階で行う場合、粗粉砕工程の前又は後のいずれにおいて焼結助剤を添加してもよく、焼結助剤を2つに分けて粗粉砕の前及び後にそれぞれ添加してもよい。
【0089】
(成形工程)
成形工程では、得られた成形用原料を、磁場中で成形して、成形体を得る。成形は、乾式成形及び湿式成形のいずれの方法でも行うことができる。磁気的配向度を高くする観点からは、湿式成形で行うことが好ましい。
【0090】
湿式成形により成形する場合は、例えば上述した微粉砕工程を湿式で行うことでスラリーを得た後、このスラリーを所定の濃度に濃縮して、湿式成形用スラリーを得る。この湿式成形用スラリーを用いて成形を行うことができる。スラリーの濃縮は、遠心分離又はフィルタープレス等によって行うことができる。湿式成形用スラリーにおけるフェライト結晶粒の含有量は、例えば30~80質量%である。スラリーにおいて、フェライト結晶粒を分散する分散媒としては例えば水が挙げられる。スラリーには、グルコン酸、グルコン酸塩、ソルビトール等の界面活性剤を添加してもよい。分散媒としては非水系溶媒を使用してもよい。非水系溶媒としては、トルエンやキシレン等の有機溶媒を使用することができる。この場合には、オレイン酸等の界面活性剤を添加してもよい。なお、湿式成形用スラリーは、微粉砕後の乾燥状態のフェライト結晶粒に、分散媒等を添加することによって調製してもよい。
【0091】
湿式成形では、次いで、この湿式成形用スラリーに対し、磁場中成形を行う。その場合、成形圧力は、例えば9.8~196MPa(0.1~2.0ton/cm2)である。印加する磁場は、例えば398~1194kA/m(5~15kOe)である。
【0092】
(焼成工程)
焼成(本焼成)工程では、成形工程で得られた成形体を焼成してフェライト焼結磁石を得る。成形体の焼成は、大気中等の酸化性雰囲気中で行うことができる。焼成温度は、例えば1050~1300℃であってもよく、1080~1290℃であってもよい。また、焼成時間(焼成温度に保持する時間)は、例えば0.5~3時間である。
【0093】
焼成工程では、焼結温度まで到達させる前に、例えば室温から100℃程度まで、0.5℃/分程度の昇温速度で加熱してもよい。これによって、焼結が進行する前に成形体を十分に乾燥することができる。また、成形工程で添加した界面活性剤を十分に除去することができる。なお、これらの処理は、焼成工程のはじめに行ってもよく、焼成工程よりも前に別途行っておいてもよい。
【0094】
このようにして上記のフェライト焼結磁石を製造することができる。
【0095】
(作用)
本実施形態にかかるフェライト焼結磁石によれば、保磁力を高くすることができる。その理由は明らかではないが以下のような事情が考えられる。
【0096】
粒界多重点における金属元素AのLaに対する原子比(A/La)が3.5~11.0であり、マグネトプランバイト型フェライト結晶粒におけるCoのFeに対する原子比(Co/Fe)が、0.008~0.100であると、置換元素としてのCo及びLaを主相に導入しても積層欠陥が増えないことを突き止めた。
【0097】
このメカニズムは不明であるが、粒界多重点における原子比(A/La)が特定の範囲で、フェライト結晶粒の原子比(Co/Fe)がこの範囲であるとき、LaとCoが互いに同数に近い比率で、フェライト結晶粒内に均一に固溶しやすく、ミクロなレベルでフェライト結晶粒のチャージバランスがとれているため、フェライト結晶粒内に積層欠陥が少ないと考えられる。
【0098】
マグネトプランバイト型フェライト結晶粒中において、Laは金属元素Aと置換し、CoはFeと置換する。この際、La及びCoが同数置換することで、フェライトのチャージバランスが取れ、積層欠陥が少なくなる。
【0099】
A2+ -> La3+
Fe3+ -> Co2+
フェライト結晶粒内の積層欠陥が少なく、主相のLa,Co置換量が大きいとより保磁力が向上する。このような磁石は電気自動車のトラクションモータにも利用することができる。
【0100】
また、フェライト結晶粒中のCo添加量を増やしてFe3+サイトをより多くのCo2+で置換してもチャージバランスが崩れにくく、フェライト結晶粒のCo置換量(フェライト結晶粒ののCo/Fe比)が大きい組成であっても、LaとCoを一様にフェライト結晶粒に拡散することができる。
【実施例0101】
本発明の内容を実施例及び比較例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
(実施例1~7及び比較例1~3)
原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、水酸化ランタン(La(OH)3)、酸化鉄(Fe2O3)、コバルトフェライト(CoFe2O4)の粉末を準備した。
【0103】
これらの原材料粉末を、金属原子比が、表1の主相の欄の金属組成(ただし、Coフェライトは添加しない)となるように混合し、湿式アトライタ及びボールミルを用いて混合及び粉砕を行ってスラリーを得た。このスラリーを乾燥し、粗粒を除去して第一原料を得た(第一原料調製工程)。
【0104】
第一原料に対して、大気中、900℃で1hrの第一仮焼を行って第一仮焼体を得た(第一仮焼工程)。第一仮焼体は、SrFe12O19(M相)、Fe2O3相、LaFeO3相の混相物となり、LaはM相に固溶しなかった。
【0105】
【0106】
得られた第一仮焼体を、小型ロッド振動ミルで粗粉砕して粗粉を得た。この粗粉に対して、表1の通りの金属組成となるようにCoFe2O4粉を配合して混合粉体を得た。混合粉体を湿式ボールミルを用いて微粉砕しスラリーを得た。このスラリーを乾燥し、粗粒を除去して、第二原料を得た(粉砕及びCo添加工程)。
【0107】
第二原料を大気中、1150℃で1hrの仮焼きをして第二仮焼体を得た。この工程では、第二仮焼体は、La,Co固溶SrFe12O19(M相)の単相物となった。
【0108】
得られた第二仮焼体を、小型ロッド振動ミルで粗粉砕して粗粉を得た。この粗粉に対して、表1の通りの全体重量組成となるようにSiO2,CaCO3粉を配合して混合粉体を得た。混合粉体を湿式ボールミルを用いて40時間微粉砕し、焼結用原料を含むスラリーを得た。微粉砕後に得られたスラリーの水分量を調節して焼結用原料を含む湿式成形用スラリーを得た(焼結用原料調製工程)。
【0109】
この湿式成形用スラリーを、湿式磁場成型機を使用して、796kA/m(10kOe)の印加磁場中で成形し、直径30mm×厚み15mmの円柱状を有する成形体を得た(成形工程)。
【0110】
得られた成形体を、大気中、室温にて乾燥し、次いで大気中、1180℃で焼成を行った(焼成(本焼成)工程)。このようにして円柱状のフェライト焼結磁石を得た。
【0111】
(比較例1)
第一仮焼の温度を1300℃とする以外は実施例5と同様とした。第一仮焼の段階で、La固溶Srフェライト(マグネトプランバイト型Sr1-XLaXFe12O19相の単相物が形成し、最終焼結磁石において、粒界多重点のLa濃度が低くなり、A/Laが高くなった。
【0112】
(比較例2)
第一原料の調製及び第一仮焼を行わず、酸化鉄及び炭酸ストロンチウムをすべて含み、水酸化ランタン及びコバルトフェライトを含まない第二原料を第二仮焼きし、その後焼結用原料に水酸化ランタン及びコバルトフェライトを添加する以外は実施例5と同様とした。この場合、粒界多重点のLa濃度が高くなった。
【0113】
(比較例3)
第一原料の調製及び第一仮焼を行わず、第二原料でCo,Fe,Sr,Laのすべてを配合した以外は実施例5と同様とした。
【0114】
条件、得られた粒界多重点について表2に、主相の組成および磁石の評価について表3に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
<磁気特性の評価>
フェライト焼結磁石の上下面を加工した後、最大印加磁場29kOeのB-Hトレーサを用いて、20℃におけるBr及びHcJをそれぞれ測定した。
【0118】
<組成分析>
フェライト焼結磁石から集束イオンビーム装置を用いたFIB(Focused Ion Beam)法により加工して、厚さ100nmの薄片を得た。STEM-EDSを用いて、当該薄片に対して、3つ以上のM相に囲まれたた粒界多重点の組成を分析し、粒界多重点の金属元素濃度を得た。この測定を4つの粒界多重点でおこない、平均することで、粒界多重点金属元素濃度を得て、原子比を求めた。同様に、4つのM相の組成をSTEM-EDSを用いて分析し、平均することでM相の金属元素濃度を得た。
【0119】
<積層欠陥>
積層欠陥はTEM等により比較的容易に識別することができるが、この場合、全体の結晶粒子の数を測定することは現実的でない。このため、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)で異方性焼結磁石のc軸に平行な面(a面)を観察したときのある視野内の結晶数を計測し、この結晶粒の全数をNとしたとき、その結晶粒中に見出される欠陥を有する結晶粒の数をnとし、上記数として推定する。ここで、観察するTEMの倍率としては1000~100000倍、特に10000~20000倍が好ましく、観察する視野としては、2視野以上が好ましく、特に2~10視野とし、Nを20~500程度とする。なお、結晶粒中に存在する欠陥は、通常1つまたは2つ程度であるが、3つ以上である場合もある。具体的には、TEMで異方性焼結磁石のc軸に平行な面(a面)を観察したときのある視野内の100個の結晶粒に対して、その結晶粒中に見出される欠陥を有する結晶粒を計測した。