(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152877
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】車載エンジンのCO2回収システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20251002BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20251002BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
F01N3/08 A ZAB
B01D53/92 352
B01D53/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024055046
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】内田 健司
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB08
3G091BA01
3G091BA13
3G091BA36
3G091CA08
3G091CA26
3G091EA01
3G091EA07
3G091EA17
3G091EA19
3G091EA32
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA13
4D002DA45
4D002EA01
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB03
4D002GB04
4D002GB11
4D002HA08
(57)【要約】
【課題】CO
2の貯蔵効率を向上させる。
【解決手段】CO
2回収システムSは、排気触媒23の下流に配置された第1吸着装置27Aと、第1吸着装置27Aと並列に接続された第2吸着装置27Bと、第1及び第2吸着装置27A,27Bの下流に配置されたガス貯蔵タンク51と、第1及び第2吸着装置27A,27Bをそれぞれ吸着状態と脱離状態とに切り替える流路切替装置5と、を備え、ガス貯蔵タンク51は、該ガス貯蔵タンク51に流入したCO
2含有ガスを外部へ放出させる放出口51bを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載エンジンのシリンダと、排気管の下流端との間に配置され、前記シリンダから排出された排気ガスを流通させるとともに、該排気ガス中のCO2を回収する車載エンジンのCO2回収システムであって、
排気触媒の下流に配置され、高圧時及び低温時の少なくとも一方に際しては排気ガス中のCO2を吸着し、低圧時及び高温時の少なくとも一方に際しては吸着したCO2を脱離するCO2吸着材を含んで構成された第1吸着装置と、
排気ガスの流れ方向において前記第1吸着装置と並列に接続され、前記CO2吸着材を含んで構成された第2吸着装置と、
前記第1及び第2吸着装置の下流に配置され、該第1及び第2吸着装置の一方から脱離させたCO2を含んだCO2含有ガスを流入させるとともに、前記CO2吸着材が内蔵されたガス貯蔵タンクと、
前記第1及び第2吸着装置を、それぞれ、前記排気触媒と前記下流端との間に接続した吸着状態と、前記排気触媒から切り離されかつ前記ガス貯蔵タンクに接続された脱離状態と、に切り替える流路切替装置と、を備え、
前記ガス貯蔵タンクは、該ガス貯蔵タンクに流入したCO2含有ガスを、該ガス貯蔵タンクの外部へ放出させる放出口を有する
ことを特徴とする車載エンジンのCO2回収システムであって、
【請求項2】
請求項1に記載された車載エンジンのCO2回収システムにおいて、
前記放出口に接続され、前記ガス貯蔵タンクから流出するCO2含有ガスが流れる第1流通管と、
前記第1流通管に配置され、該第1流通管を通じて流出するCO2含有ガスの量を調整するガス量調整部と、
前記ガス量調整部を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記ガス量調整部を制御することで、前記第1及び第2吸着装置のうち、前記脱離状態とした吸着装置から前記ガス貯蔵タンクに流入したCO2含有ガスのうちの所定量を、該ガス貯蔵タンクの外部へと流出させる
ことを特徴とする車載エンジンのCO2回収システム。
【請求項3】
請求項2に記載された車載エンジンのCO2回収システムにおいて、
前記コントローラは、前記第1及び第2吸着装置の一方からのCO2の脱離に際し、
前記排気管のうち、前記吸着状態と前記脱着状態とで共通となる排気管の容積と、前記第1及び第2吸着装置のうち、前記脱着状態にある一方の容積と、の合算値を算出し、
前記所定量が前記合算値となるように、前記ガス量調整部を制御する
ことを特徴とする車載エンジンのCO2回収システム。
【請求項4】
請求項2に記載された車載エンジンのCO2回収システムにおいて、
前記第1流通管は、前記ガス貯蔵タンクを、前記第1及び第2吸着装置上流の前記排気管に接続し、
前記コントローラは、前記ガス量調整部を制御することで、前記ガス貯蔵タンクの外部へと流出させたガスを、前記第1流通管を介して前記第1及び第2吸着装置の上流に循環させる
ことを特徴とする車載エンジンのCO2回収システム。
【請求項5】
請求項4に記載された車載エンジンのCO2回収システムにおいて、
前記コントローラは、前記第1及び第2吸着装置の一方からのCO2の脱離に際し、
前記一方の吸着装置から、所定の脱離期間にわたってCO2を脱離させ、
前記脱離期間と同じ期間にわたって、前記第1流通管を介してCO2含有ガスを放出させるとともに、該放出時におけるCO2含有ガスの流量が一定になるように、前記ガス量調整部を制御する
ことを特徴とする車載エンジンのCO2回収システム。
【請求項6】
請求項4に記載された車載エンジンのCO2回収システムにおいて、
前記コントローラは、前記第1及び第2吸着装置の一方からのCO2の脱離に際し、
前記一方の吸着装置からのCO2の脱離期間中、前記排気管における排気ガスの圧力が所定圧力以下となるように、前記ガス量調整部を制御し、
前記コントローラは、前記車載エンジンの運転状態に基づいて、前記所定圧力を決定する
ことを特徴とする車載エンジンのCO2回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載エンジンのCO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、内燃機関のCO2分離装置が開示されている。この分離装置は、第1及び第2CO2吸着器と、第1及び第2CO2吸着器の下流に配置されたガス貯蔵タンクと、上流側切替バルブ及び下流側切替バルブと、を備えている。
【0003】
ここで、CO2吸着器には、温度に応じてCO2を吸着及び脱離可能な所定の吸着材が設けられている。上流側切替バルブ及び下流側切替バルブは、第1及び第2CO2吸着器と、ガス貯蔵タンクとを結んだ流路構造を切り替える。上流側切替バルブ及び下流側切替バルブを制御することで、第1及び第2CO2吸着器のうち、排気ガスからCO2を吸着する一方と、ガス貯蔵タンクに接続されて脱離したCO2を貯蔵させる他方と、を互い違いに切り替えることができる。
【0004】
また、特許文献2には、二酸化炭素回収装置の一例が開示されている。この装置は、第1吸着材が収容された吸着タンクを備えている。ここで、第1吸着材は、排気ガスに含まれる二酸化炭素を吸着するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-118528号公報
【特許文献2】特開2016-131921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に記載されているように流路構造を切り替えるように構成した場合、排気ガスを流通させて、その排気ガスからCO2を吸着するCO2吸着器と、排気ガスの流通から切り離されて、ガス貯蔵タンクへと脱離したCO2を送り込むCO2吸着器と、がそれぞれ交互に切り替わることになる。
【0007】
この場合、脱離したCO2を送り込む側のCO2吸着器も、それ以前は排気ガスが流通していたことになる。その場合、CO2吸着器からガス貯蔵タンクへと通じる排気管の一部には、窒素等、CO2以外の排気ガス含有物が残存することになる。
【0008】
そのため、ガス貯蔵タンクには、CO2吸着器から脱離したCO2に加えて、排気管の一部に残存した窒素等の含有物も送り込まれることになる。ガス貯蔵タンクは、窒素等の含有物が送られた分だけ高圧になる。ガス貯蔵タンクの最大圧力には限度があるため、その限度内に収めるためには、ガス貯蔵タンクにおけるCO2の貯蔵量を犠牲にする必要がある。このことは、CO2の貯蔵効率を確保する上で不都合である。
【0009】
こうした問題に対し、特許文献2に記載されているような第1吸着材の代わりに、窒素ガスを吸着可能な吸着材をガス貯蔵タンクに内蔵させることが考えられる。しかしながら、そのような方策は、ガス貯蔵タンクの製造コスト、吸着材のレイアウト等の観点で不都合である。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、CO2の貯蔵効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様は、車載エンジンのシリンダと、排気管の下流端との間に配置され、前記シリンダから排出された排気ガスを流通させるとともに、該排気ガス中のCO2を回収する車載エンジンのCO2回収システムに係る。
【0012】
そして、前記第1の態様によれば、前記CO2回収システムは、排気触媒の下流に配置され、高圧時及び低温時の少なくとも一方に際しては排気ガス中のCO2を吸着し、低圧時及び高温時の少なくとも一方に際しては吸着したCO2を脱離するCO2吸着材を含んで構成された第1吸着装置と、排気ガスの流れ方向において前記第1吸着装置と並列に接続され、前記CO2吸着材を含んで構成された第2吸着装置と、前記第1及び第2吸着装置の下流に配置され、該第1及び第2吸着装置の一方から脱離させたCO2を含んだCO2含有ガスを流入させるとともに、前記CO2吸着材が内蔵されたガス貯蔵タンクと、前記第1及び第2吸着装置を、それぞれ、前記排気触媒と前記下流端との間に接続した吸着状態と、前記排気触媒から切り離されかつ前記ガス貯蔵タンクに接続された脱離状態と、に切り替える流路切替装置と、を備え、前記ガス貯蔵タンクは、該ガス貯蔵タンクに流入したCO2含有ガスを、該ガス貯蔵タンクの外部へ放出させる放出口を有する。
【0013】
前記第1の態様によると、ガス貯蔵タンクから、CO2含有ガスを適宜放出させる。これにより、CO2含有ガス中のCO2については、ガス貯蔵タンクに内蔵されたCO2吸着材に吸着させる一方、CO2含有ガス中の他の成分については、ガス貯蔵タンクから放出させることができる。CO2については、CO2吸着材に吸着させることになるため、タンク内の圧力を低く維持することができる。一方、他の成分を放出させることで、タンク内の圧力を可能な限り抑制することができる。
【0014】
かくして、CO2をCO2吸着材に吸着させたことと、タンク内の圧力を可能な限り抑制したこととが相まって、CO2の貯蔵効率を向上させることができる。
【0015】
また、本開示の第2の態様によれば、前記CO2回収システムは、前記放出口に接続され、前記ガス貯蔵タンクから流出するCO2含有ガスが流れる第1流通管と、前記第1流通管に配置され、該第1流通管を通じて流出するCO2含有ガスの量を調整するガス量調整部と、前記ガス量調整部を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ガス量調整部を制御することで、前記第1及び第2吸着装置のうち、前記脱離状態とした吸着装置から前記ガス貯蔵タンクに流入したCO2含有ガスのうちの所定量を、該ガス貯蔵タンクの外部へと流出させる、としてもよい。
【0016】
前記第2の態様によると、ガス量調整部を介してCO2含有ガスを能動的にタンク外に流出させたことで、タンク内の圧力を、可能な限り抑制することができる。そのことで、CO2の貯蔵効率を向上させることができる。
【0017】
また、本開示の第3の態様によれば、前記コントローラは、前記第1及び第2吸着装置の一方からのCO2の脱離に際し、前記排気管のうち、前記吸着状態と前記脱着状態とで共通となる排気管の容積と、前記第1及び第2吸着装置のうち、前記脱着状態にある一方の容積と、の合算値を算出し、前記所定量が前記合算値となるように、前記ガス量調整部を制御する、としてもよい。
【0018】
前記第3の態様によると、前記吸着状態と前記脱着状態とで共通となる排気管と、その排気管に連通する吸着装置には、吸着状態時に通過した排気ガスに起因した、窒素等の成分が残存しているものと考えられる。そこで、前記第3の態様の如くガス量調整部を制御することで、そうした残存成分を的確に除去することができる。
【0019】
また、本開示の第4の態様によれば、前記第1流通管は、前記ガス貯蔵タンクを、前記第1及び第2吸着装置上流の前記排気管に接続し、前記コントローラは、前記ガス量調整部を制御することで、前記ガス貯蔵タンクの外部へと流出させたガスを、前記第1流通管を介して前記第1及び第2吸着装置の上流に循環させる、としてもよい。
【0020】
前記第4の態様によると、CO2含有ガスを大気に放出する代わりに、CO2回収システム内を繰り返し循環させる。これにより、CO2を大気に放出させるような構成と比較して、CO2の回収量を可能な限り多く確保することができる。
【0021】
また、本開示の第5の態様によれば、前記コントローラは、前記第1及び第2吸着装置の一方からのCO2の脱離に際し、前記一方の吸着装置から、所定の脱離期間にわたってCO2を脱離させ、前記脱離期間と同じ期間にわたって、前記第1流通管を介してCO2含有ガスを放出させるとともに、該放出時におけるCO2含有ガスの流量が一定になるように、前記ガス量調整部を制御する、としてもよい。
【0022】
前記第5の態様によると、CO2の脱離期間とCO2含有ガスの放出期間を同期させることで、排気圧力の急増を抑制することができる。そのことと、CO2含有ガスの流量を一定にすることによる排気圧力の急変抑制とが相まって、排気圧力の急増を可能な限り抑制することができる。これにより、車載エンジンの運転に与える影響(特に、仕事のロス)を、可能な限り抑制することができる。
【0023】
また、本開示の第6の態様によれば、前記コントローラは、前記第1及び第2吸着装置の一方からのCO2の脱離に際し、前記一方の吸着装置からのCO2の脱離期間中、前記排気管における排気ガスの圧力が所定圧力以下となるように、前記ガス量調整部を制御し、前記コントローラは、前記車載エンジンの運転状態に基づいて、前記所定圧力を決定する、としてもよい。
【0024】
一般に、車載エンジンが低回転になるほど、排圧を上昇可能な余地は大きくなり、車載エンジンが低負荷になるほど、排圧を上昇可能な余地は大きくなる。排圧を上昇可能な余地に応じて脱離させるCO2の量又は流量を制御することで、排圧を、車載エンジンの運転状態に見合った範囲内に抑えることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本開示によれば、CO2の貯蔵効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、車載エンジンのCO
2回収システムの全体構成を例示する概略図である。
【
図2】
図2は、回収システムの構成を例示するシステム図である。
【
図3】
図3は、ガス貯蔵タンクの構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、コントローラの構成を例示するブロック図である。
【
図5A】
図5Aは、流路切替装置が果たす機能について説明する図である。
【
図5B】
図5Bは、流路切替装置が果たす機能について説明する図である。
【
図6】
図6は、吸着制御の具体例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、脱離制御の具体例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、放出制御の具体例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、回収システムの第2実施形態を示す
図2対応図である。
【
図10】
図10は、放出制御の別例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、CO
2吸着材におけるCO
2吸着量の圧力及び温度依存性を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0028】
<1.全体構成>
図1は、車載エンジン1のCO
2回収システムSの全体構成を例示する概略図である。以下、「CO
2回収システムS」を、単に「回収システムS」ともいう。この回収システムSは、車載エンジン1のシリンダ11と、排気管2の下流端(テールパイプ20)との間に接続される。
【0029】
車載エンジン1は、自動車に搭載される内燃機関である。車載エンジン1は、燃焼室12を形成するシリンダ11を備えている。シリンダ11には、外部から燃焼室12に空気を供給する吸気管13と、燃焼室12から排気を排出する排気管2とが接続されている。
【0030】
排気管2は、その下流端にテールパイプ20が配置されている。本実施形態に係る回収システムSは、シリンダ11からテールパイプ20に至る途中の排気管2に配置されている。
【0031】
<2.回収システム>
図2は、回収システムSの構成を例示するシステム図である。
図2において、排気ガスが流れる通路、つまり排気管2は、線の太い実線で示されている。同図において、第1及び第2吸着装置27A,27Bから脱離されたガス(CO
2を含有し得るガスであり、以下、これを「CO
2含有ガス」という)専用の通路は、線の細い実線で示されている。排気管2は、CO
2含有ガスの通路を兼用している。また、
図2において、排気ガスを冷却するための熱交換媒体が流れる通路は、同図において鎖線で示されている。
図2に示すように、排気管2は、シリンダ11とテールパイプ20を結んでいる。
【0032】
排気管2における中途の部位には、分岐部2aと、合流部2bとが配置されている。分岐部2aにおいて、排気管2は、1本の配管から第1分岐管21と第2分岐管22とによって構成される2本の排気管2に分岐する。合流部2bにおいて、第1分岐管21と第2分岐管22は、1本の配管に再び合流する。テールパイプ20は、合流後の排気管2に接続されている。
【0033】
以下、「上流」とは、排気管2における排気ガス又はCO
2含有ガスの流れ方向を基準とした「上流」をいう。同様に、「下流」とは、排気管2における排気ガス又はCO
2含有ガスの流れ方向を基準とした「下流」をいう。例えば、前述した分岐部2aは、
図2に示すように、合流部2bよりも上流側に配置されている。
【0034】
排気管2において、シリンダ11から分岐部2aに至るまでの部位には、上流側から順に、排気触媒23と、第1熱交換器24と、第1気水分離器25と、が配置されている。
【0035】
排気触媒23は、排気ガスを浄化する。排気触媒23は、排気ガスに含まれる有害成分を浄化し、無害ガスを排出する。有害成分は、NOx、CO及びHCを含む。無害ガスは、窒素(N2)、CO2及びH2O等を含んで構成されるガスである。排気触媒23は、例えば三元触媒である。
【0036】
第1熱交換器24は、排気触媒23の下流に配置されている。第1熱交換器24は、排気触媒23を通過した後の排気ガスから受熱するように、該排気ガスと熱交換媒体との間で熱交換を行う。熱交換媒体は、例えば冷却用の液体である。熱交換媒体は、例えば水である。第1熱交換器24は、排気ガスを通過させるとともに、通過させた排ガスから受熱するように構成されている。熱交換媒体は、排気管2とは独立した流路系(熱交換システム4)を通じて循環する。
【0037】
熱交換システム4は、熱交換媒体を循環させるためのシステムである。熱交換システム4を循環する熱交換媒体は、第1熱交換器24において受熱した後、後述する第2熱交換器38を通過して、その第2熱交換器38においてさらに受熱する。第2熱交換器38において受熱した熱交換媒体は、第3熱交換器41によって冷却された後、第1熱交換器24を再び通過する。
【0038】
こうして、熱交換媒体は、第1熱交換器24、第2熱交換器38及び第3熱交換器41の順で、熱交換システム4を循環するようになっている。第3熱交換器41は、電気駆動式の冷却装置であり、該第3熱交換器41を通過する熱交換媒体を冷却した上で、冷却後の熱交換媒体を第1熱交換器24に送り出すように構成されている。第3熱交換器41は、電力によってポンプを駆動させるとともに、その駆動によって循環する循環液によって熱交換媒体(被冷却媒体)を冷却する「チラー」によって構成してもよい。
【0039】
第1気水分離器25は、第1熱交換器24の下流に配置されている。第1気水分離器25は、排気ガス中に生じた凝縮水を、該排気ガスから分離させる。すなわち、第1熱交換器24を通過した排気ガスは、第1熱交換器24によって熱を奪われた分、温度低下することになる。その温度低下によって、排気ガス中に含まれる水分は、液化して凝縮水となる。第1気水分離器25は、排気ガスを通過させるとともに、通過させた排ガスから凝縮水を捕集するように構成されている。
【0040】
また、排気管2において、分岐部2aから第1分岐管21を介して合流部2bに至るまでの部位には、上流側から順に、第1上流側制御弁26Aと、第1吸着装置27Aと、第1下流側制御弁28Aと、が配置されている。
【0041】
第1上流側制御弁26Aは、第1吸着装置27Aの上流側の第1分岐管21を開閉する。第1上流側制御弁26Aは、後述のコントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて開閉する。
【0042】
第1吸着装置27Aは、排気触媒23、第1熱交換器24、第1気水分離器25、分岐部2a及び第1上流側制御弁26Aの下流に配置されている。第1吸着装置27Aは、CO2吸着材271を含んで構成されている。CO2吸着材271は、高圧時及び/又は低温時には排気ガス中のCO2を吸着し、低圧時及び/又は高温時には吸着したCO2を脱離する。
【0043】
詳しくは、本実施形態に係るCO
2吸着材271は、
図11に例示するように、同一の温度条件下(温度が等しい条件下)では、低圧になるほどCO
2を吸着し、同一の圧力条件下(圧力が等しい条件下)では、大気圧に近づくほどCO
2を吸着する。CO
2吸着材271は、所定の温度下では、大気圧付近でCO
2吸着量が最大となる。
【0044】
さらに詳しくは、CO2吸着材271は、大気圧以上の排圧(排気圧)作用時、つまり、CO2吸着量が最大となる圧力下においては、排気ガス中のCO2を吸着する。また、このCO2吸着材271は、大気圧より低圧となる負圧作用時(具体的には、後述の真空ポンプ36作動時)には、吸着していたCO2を脱離する。CO2吸着材271は、例えばゼオライト製の吸着材である。
【0045】
第1吸着装置27Aにおけるこれらの性質は、第2吸着装置27BのCO2吸着材271においても共通である。第1吸着装置27Aにおけるこれらの性質は、本実施形態ではガス貯蔵タンク51のCO2吸着材272においても共通であるが、共通とすることは必須ではない。
【0046】
本実施形態のCO2吸着材271は、主に、真空ポンプ36を用いた圧力スイング法によって、CO2を脱離させるように構成されている。また、本実施形態の第1熱交換器24は、排気ガスから凝縮水を分離させるとともに、CO2吸着材271によるCO2の吸着を増進させるように構成されている。すなわち、本実施形態では、圧力スイング法を主体としつつも、CO2吸着材271におけるCO2吸着量の温度依存性も、一部併用されるようになっている。
【0047】
第1下流側制御弁28Aは、第1吸着装置27Aの下流側の第1分岐管21を開閉する。第1下流側制御弁28Aは、後述のコントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて開閉する。
【0048】
また、排気管2において、分岐部2aから第2分岐管22を介して合流部2bに至るまでの部位には、上流側から順に、第2上流側制御弁26Bと、第2吸着装置27Bと、第2下流側制御弁28Bと、が配置されている。
【0049】
第2上流側制御弁26Bは、第2吸着装置27Bの上流側の第2分岐管22を開閉する。第2上流側制御弁26Bは、後述のコントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて開閉する。
【0050】
第2吸着装置27Bは、排気触媒23、第1熱交換器24、第1気水分離器25、分岐部2a及び第2上流側制御弁26Bの下流に配置されている。第2吸着装置27Bは、CO2吸着材271を含んで構成されている。CO2吸着材271は、高圧時及び/又は低温時には排気ガス中のCO2を吸着し、低圧時及び/又は高温時には吸着したCO2を脱離する。
【0051】
詳しくは、本実施形態に係るCO
2吸着材271は、
図11に例示するように、同一の温度条件下(温度が等しい条件下)では、低圧になるほどCO
2を吸着し、同一の圧力条件下(圧力が等しい条件下)では、大気圧に近づくほどCO
2を吸着する。CO
2吸着材271は、所定の温度下では、大気圧付近でCO
2吸着量が最大となる。
【0052】
さらに詳しくは、CO2吸着材271は、大気圧以上の排圧(排気圧)作用時、つまり、CO2吸着量が最大となる圧力下においては、排気ガス中のCO2を吸着する。また、このCO2吸着材271は、大気圧より低圧となる負圧作用時(具体的には、後述の真空ポンプ36作動時)には、吸着していたCO2を脱離する。CO2吸着材271は、例えばゼオライト製の吸着材である。
【0053】
図2に示すように、第2吸着装置27Bは、排気ガスの流れ方向において第1吸着装置27Aと並列に接続されているものとみなすことができる。
【0054】
第2下流側制御弁28Bは、第2吸着装置27Bの下流側の第2分岐管22を開閉する。第2下流側制御弁28Bは、後述のコントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて開閉する。
【0055】
また、第1及び第2分岐管21,22には、第1及び第2吸着装置27A,27Bから脱離されたCO2含有ガスを流通させる脱離ガス流通系3が接続されている。本実施形態に係る脱離ガス流通系3は、回収システムSの一要素として構成されている。
【0056】
具体的に、第1分岐管21における、第1上流側制御弁26Aと第1吸着装置27Aの間の部位には、第1脱離分岐部2cが設けられている。第1脱離分岐部2cには、第1吸着装置27Aから脱離したCO2含有ガスが流れる第3分岐管31が接続されている。
【0057】
同様に、第2分岐管22における、第2上流側制御弁26Bと第2吸着装置27Bの間の部位には、第2脱離分岐部2dが設けられている。第2脱離分岐部2dには、第2吸着装置27Bから脱離したCO2含有ガスが流れる第4分岐管32が接続されている。
【0058】
第3分岐管31には、該第3分岐管31を開閉する第1脱離制御弁33が配置されている。第4分岐管32には、該第4分岐管32を開閉する第2脱離制御弁34が配置されている。第1及び第2脱離制御弁33,34は、それぞれコントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて開閉する。
【0059】
第3分岐管31と第4分岐管32は、脱離ガス合流部2eにて合流し、一体の脱離ガス管35をなす。脱離ガス管35には、脱離ガス(CO2含有ガス)の流れ方向に関して上流側から順に、真空ポンプ36と、コンプレッサ37と、第2熱交換器38と、第2気水分離器39と、ガス貯蔵タンク51と、が配置されている。
【0060】
真空ポンプ36は、大気圧未満の空気圧(負圧)を生成する。真空ポンプ36は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて作動する。真空ポンプ36が負圧を生成することで、第1及び第2吸着装置27A,27BからのCO2の脱離を促すことができる。真空ポンプ36の代わりに、第1及び第2吸着装置27A,27Bをそれぞれ加熱するヒータを用いてもよい。
【0061】
コンプレッサ37は、真空ポンプ36に吸引されかつ該真空ポンプ36を通過したCO2含有ガスを圧縮する。コンプレッサ37は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて作動する。
【0062】
第2熱交換器38は、コンプレッサ37の下流に配置されている。より一般的には、本実施形態に係る第2熱交換器38は、第1及び第2吸着装置27A,27BのCO2吸着材271から、ガス貯蔵タンク51に至る途中に配置されている。第2熱交換器38は、コンプレッサ37を通過した後のCO2含有ガスから受熱するように、該排気ガスと熱交換媒体との間で熱交換を行う。
【0063】
第2気水分離器39は、第2熱交換器38の下流かつガス貯蔵タンク51の上流に配置され、CO2含有ガス中に生じた凝縮水を、該CO2含有ガスから分離させる。すなわち、第2熱交換器38を通過したCO2含有ガスは、第2熱交換器38によって熱を奪われた分、温度低下することになる。その温度低下によって、CO2含有ガス中に含まれる水分は、液化して凝縮水となる。第2気水分離器39は、CO2含有ガスを通過させるとともに、通過させたCO2含有ガスから凝縮水を捕集するように構成されている。
【0064】
図3は、ガス貯蔵タンク51の構成を例示する図である。ガス貯蔵タンク51は、第2気水分離器39の下流に配置されている。より一般的には、本実施形態に係るガス貯蔵タンク51は、第1及び第2吸着装置27A,27B、並びにそれらに設けられたCO
2吸着材271の下流に配置されている。ガス貯蔵タンク51は、第1及び第2吸着装置27A,27Bの一方からのCO
2含有ガスを流入させる。
【0065】
また、
図3に示すように、ガス貯蔵タンク51には、CO
2吸着材272が内蔵されている。ガス貯蔵タンク51に内蔵されるCO
2吸着材272は、第1及び第2吸着装置に含まれるゼオライト製のCO
2吸着材271と同じものであってもよいし、別のものであってもよい。
【0066】
ガス貯蔵タンク51は、流入口51aと、放出口51bとを有している。放出口51bは、ガス貯蔵タンク51に流入したガスを、該ガス貯蔵タンク51の外部へ流出させるように開口している。
【0067】
放出口51bには、第1流通管52が接続されている。第1流通管52は、ガス貯蔵タンク51から流出するガスが流れる管路を構成している。本実施形態では、第1流通管52は、ガス貯蔵タンク51を、第1及び第2吸着装置27A,27B上流の排気管2に接続している。
【0068】
具体的に、第1流通管52の上流端部は、ガス貯蔵タンク51の放出口51bに接続されている。第1流通管52の下流端部は、第1気水分離器25と分岐部2aとの間の排気管2に接続されている。後述の第2実施形態に示すように、第1流通管52の下流端部は、大気開放してもよい。
【0069】
第1流通管52には、上流側から順に、ガス量調整部53と、逆止弁54とが配置されている。ガス量調整部53は、第1流通管52を通じて流出するCO2含有ガスの量(特に流量)を調整する。本実施形態では、ガス量調整部53は、全開状態と全閉状態との間で開度調整可能な制御弁によって構成されている。ガス量調整部53は、コントローラ100と電気的に接続されており、該コントローラ100から制御信号を受けて開度を変更する。
【0070】
<3.コントローラ>
図4は、コントローラ100の構成を例示するブロック図である。コントローラ100は、プロセッサ100a、メモリ100b及び入出力バス100c等のハードウェアと、データベース、制御プログラム等のソフトウェアと、を備えている。コントローラ100は、いわゆるECU(Engine Control Unit)によって構成されている。
【0071】
コントローラ100には、種々のセンサ類が接続されている。具体的に、コントローラ100には、アクセルペダルセンサSw1と、エンジン回転数センサSw2と、排気温度センサSw3と、排気圧力センサSw4と、吸着層温度センサSw5と、タンク圧力センサSw6と、が電気信号を受信可能に接続されている。コントローラ100には、これらのセンサによって生成された電気信号が入力される。
【0072】
アクセルペダルセンサSw1は、車両のアクセルペダルの開度を検出し、その検出開度を示す電気信号を生成する。エンジン回転数センサSw2は、車載エンジン1の回転数を検出し、その検出回転数を示す電気信号を生成する。排気温度センサSw3は、排気管2を流れる排気ガスの温度を検出し、その検出温度を示す電気信号を生成する。排気圧力センサSw4は、排気管2を流れる排気ガスの圧力を検出し、その検出圧力を示す電気信号を生成する。吸着層温度センサSw5は、第1吸着装置27A及び第2吸着装置27BそれぞれのCO2吸着材271の温度を検出し、各検出温度を示す電気信号を生成する。タンク圧力センサSw6は、ガス貯蔵タンク51内の空気の圧力を検出し、その検出圧力を示す電気信号を生成する。
【0073】
コントローラ100には、種々のアクチュエータが接続されている。具体的に、コントローラ100には、第1上流側制御弁26Aと、第1下流側制御弁28Aと、第2上流側制御弁26Bと、第2下流側制御弁28Bと、第1及び第2脱離制御弁33,34と、真空ポンプ36と、コンプレッサ37と、ガス量調整部53と、が電気信号を送信可能に接続されている。
【0074】
以下、これらのアクチュエータのうち、第1上流側制御弁26Aと、第1下流側制御弁28Aと、第2上流側制御弁26Bと、第2下流側制御弁28Bと、第1及び第2脱離制御弁33,34と、を総称して流路切替装置5という。流路切替装置5が果たす機能については、後述する。
【0075】
コントローラ100は、前述したセンサ類から入力される電気信号等に基づいて制御信号を生成し、それをコントローラ100と電気的に接続された種々のアクチュエータに入力する。
【0076】
例えば、コントローラ100は、アクセルペダルセンサSw1による検出開度に基づいて、車載エンジン1の目標負荷を算出することができる。この目標負荷は、燃料噴射量の調整等、車載エンジンの運転に用いたり、後述の如きガス量調整部53の制御に用いたりすることができる。
【0077】
図5A及び
図5Bは、流路切替装置5が果たす機能について説明する図である。これらの図において、熱交換システム4については、図面の明瞭化のため、その大部分を省略した状態で示す。
【0078】
図5A及び
図5Bにおいて制御弁を示す回路記号のうち、白抜きの回路記号は、開弁状態にあることを示す。同様に、
図5A及び
図5Bにおいて制御弁を示す回路記号のうち、黒塗の回路記号は、閉弁状態にあることを示す。また、
図5A及び
図5Bの実践、破線等の意味するところは、各図の凡例に示すとおりである。
【0079】
本実施形態に係る流路切替装置5は、第1及び第2吸着装置27A,27Bを、それぞれ、排気触媒23とテールパイプ20の間に接続された状態と、排気触媒23から切り離されかつガス貯蔵タンク51に接続された状態と、に交互に切り替えることができる。この切替は、コントローラ100から流路切替装置5に入力される電気信号に基づいて行うことができる。
【0080】
前者の状態(吸着状態)は、排気ガスからのCO2の吸着と、CO2を吸着した排気ガスの排出とに寄与する。後者の状態(脱離状態)は、その吸着装置に吸着しているCO2の脱離と、ガス貯蔵タンク51へのCO2含有ガスの供給とに寄与する。以下、第1及び第2吸着装置27A,27Bのそれぞれについて、流路構造を吸着状態にするための処理を「吸着制御」と呼称する。同様に、第1及び第2吸着装置27A,27Bのそれぞれについて、流路構造を脱離状態とした上で、真空ポンプ36を作動させる処理を「脱離制御」と呼称する。
【0081】
図5Aの例の場合、第1上流側制御弁26Aと第1下流側制御弁28Aとが開弁状態にされ、第2上流側制御弁26Bと第2下流側制御弁28Bとが閉弁状態にされる。それと同時に、第1脱離制御弁33が閉弁状態にされ、第2脱離制御弁34が開弁状態にされる。この場合、第1吸着装置27Aは吸着状態となり、第2吸着装置27Bは脱離状態となる。
【0082】
図5Bの例の場合、第1上流側制御弁26Aと第1下流側制御弁28Aとが閉弁状態にされ、第2上流側制御弁26Bと第2下流側制御弁28Bとが開弁状態にされる。それと同時に、第1脱離制御弁33が開弁状態にされ、第2脱離制御弁34が閉弁状態にされる。この場合、第1吸着装置27Aは脱離状態となり、第2吸着装置27Bは吸着状態となる。
【0083】
コントローラ100は、第1及び第2吸着装置27A,27Bを、それぞれ、「吸着状態」と、「脱離状態」とに交互に入れ替える。これにより、2つの吸着装置によって、CO2の吸着・脱離をバランスよく行うことができる。第1及び第2吸着装置27A,27Bの一方が「吸着状態」にあるとき、他方は「脱離状態」にある。第1吸着装置27Aが、「吸着状態」、「脱離状態」及び「吸着状態」の順番で遷移したとき、第2吸着装置27Bは、「脱離状態」、「吸着状態」及び「脱離状態」の順番で遷移することになる。
【0084】
コントローラ100は、前述の如き吸着制御及び脱離制御に加えて、ガス貯蔵タンク51が過度の圧力にならぬよう、当該タンク51に貯留しているガスを適宜放出させる処理(放出制御)を実行するように構成されている。以下、放出制御をはじめとする処理の具体例について、フローチャートを参照して説明する。
【0085】
<4.コントローラによる処理の具体例>
(4-1.吸着制御)
図6は、吸着制御の具体例を示すフローチャートである。ここでは、第1吸着装置27Aに対する吸着制御について説明するが、第2吸着装置27Bに対する吸着制御についても、同様に行われるようになっている。
【0086】
まず、
図6のステップS101において、コントローラ100は、
図4に例示した各センサによる検出信号を読み込む。以降の処理は、第1吸着装置27Aが吸着状態にある場合を行われる処理である。
【0087】
続くステップS102において、コントローラ100は、アクセルペダルセンサSw1に基づいて算出されたエンジン1の目標負荷と、エンジン回転数と、排気の検出温度と、CO2吸着材271の検出温度と、に基づいて、第1吸着装置27AにおけるCO2吸着材271について、その時点におけるCO2吸着量を推定する。
【0088】
続くステップS103において、コントローラ100は、ステップS102で得られたCO
2吸着量の推定値(推定吸着量)が、第1吸着装置27AにおけるCO
2吸着材271の吸着限度付近の値(所定値)以上に達しているか否かを判定する。この判定がNOの場合、コントローラ100は、続くステップS104をスキップしてリターンする。この場合は、第1吸着装置27Aは吸着状態に維持されるとともに、第2吸着装置27Bは脱離状態に維持される。なお、ここでいう所定値とは、大気圧又はアイドリング時の排圧で吸着可能な最大値である。本開示におけるCO
2吸着材271は、大気圧又はアイドリング時に、そのCO
2吸着量が最大となるような特性(
図11参照)を具備していれば好都合である。
【0089】
一方、ステップS103の判定がYESの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS104に進める。このステップS103において、コントローラ100は、流路切替装置5を制御することで、第1吸着装置27Aを吸着状態から脱離状態に変更するとともに、第2吸着装置27Bを脱離状態から吸着状態に変更する。第1吸着装置27Aが脱離状態に変更された場合、コントローラ100は、その第1吸着装置27Aに対し、吸着制御の代わりに後述の脱離制御を実行する。
【0090】
(4-2.脱離制御)
図7は、脱離制御の具体例を示すフローチャートである。ここでは、第1吸着装置27Aに対する脱離制御について説明するが、第2吸着装置27Bに対する脱離制御についても、同様に行われるようになっている。
【0091】
まず、
図6のステップS201において、コントローラ100は、
図4に例示した各センサによる検出信号を読み込む。以降の処理は、第1吸着装置27Aが脱離状態にある場合に行われる処理である。
【0092】
続くステップS202において、コントローラ100は、アクセルペダルセンサSw1に基づいて算出されたエンジン1の目標負荷と、エンジン回転数と、排気の検出温度と、CO2吸着材271の検出温度と、に基づいて、第1吸着装置27AにおけるCO2吸着材271からのCO2の脱離に要する期間(脱離期間)を予測する。
【0093】
続くステップS203において、コントローラ100は、ステップS202で予測した脱離期間に応じて、単位時間あたりに第1吸着装置27Aから流出するCO2含有ガスの流量(導入流量)を決定する。脱離期間が長くなるほど、CO2含有ガスの流量は小さくなる。脱離期間又は導入流量の決定に際し、吸着制御で計算した推定吸着量を用いてもよい。
【0094】
続くステップS204において、コントローラ100は、ステップS203で決定した導入流量と、ガス貯蔵タンク51内の検出圧力とに基づいて、真空ポンプ36を制御する。
【0095】
続くステップS205において、コントローラ100は、ステップS203で決定した導入流量と、第1吸着装置27Aを脱離状態にしてからの経過時間とに基づいて、第1吸着装置27AのCO2吸着材271からの、その時点におけるCO2脱離量を推定する。
【0096】
続くステップS206において、コントローラ100は、ステップS205で得られたCO2脱離量の推定値(推定脱離量)が、第1吸着装置27AにおけるCO2吸着材271の脱離限度付近の値(所定値)以上に達しているか否かを判定する。この判定がNOの場合、コントローラ100は、ステップS204に戻る。この場合、第1吸着装置27Aは脱離状態に維持されるとともに、第2吸着装置27Bは吸着状態に維持される。
【0097】
一方、ステップS206の判定がYESの場合、コントローラ100は、制御プロセスをステップS207に進める。このステップS207において、コントローラ100は、流路切替装置5を制御することで、第1吸着装置27Aを脱離状態から吸着状態に変更するとともに、第2吸着装置27Bを吸着状態から脱離状態に変更する。第1吸着装置27Aが吸着状態に変更された場合、コントローラ100は、その第1吸着装置27Aに対し、脱離制御の代わりに前述の吸着制御を実行する。
【0098】
なお、前述のように、第1及び第2吸着装置27A,27Bを、それぞれ、「吸着状態」と、「脱離状態」とに交互に入れ替わるようになっている。つまり、第1及び第2吸着装置27A,27Bの一方が「吸着状態」にあるとき、第1及び第2吸着装置27A,27Bの他方は「脱離状態」にある。吸着状態にある一方では、
図6に例示した吸着制御が実行され、脱離状態にある他方では、
図7に例示した脱離制御が実行されることになる。
【0099】
この場合、第1及び第2吸着装置27A,27Bのうち、「吸着状態」にある一方での吸着制御と、「脱離状態」にある他方での脱離制御と、が同時に実行されることになる。コントローラ100は、吸着制御におけるステップS103の判定と、脱離制御におけるステップS206の判定とのうち、一方の判定が先にYESになった場合には、他方の判定がYESになるのを待たずして、「吸着状態」と「脱離状態」との入替を強制的に実行する。
【0100】
具体的に、コントローラ100は、吸着制御におけるステップS103の判定と、脱離制御におけるステップS206の判定のうち、前者の判定が先にYESになった場合には、後者の判定がYESになるのを待たずして、ステップS104の処理を実行する。第1及び第2吸着装置27A,27Bのうち、吸着制御を実行していた一方は、「吸着状態」から「脱離状態」へと遷移した後、
図7の脱離制御を開始する。第1及び第2吸着装置27A,27Bのうち、脱離制御を実行していた他方は、その脱離制御を強制的に中止した上で、「脱離状態」から「吸着状態」へと強制的に遷移した後、
図6の吸着制御を開始する。
【0101】
同様に、コントローラ100は、吸着制御におけるステップS103の判定と、脱離制御におけるステップS206の判定のうち、後者の判定が先にYESになった場合には、前者の判定がYESになるのを待たずして、ステップS207の処理を実行する。第1及び第2吸着装置27A,27Bのうち、脱離制御を実行していた一方は、「脱離状態」から「吸着状態」へと遷移した後、
図6の吸着制御を開始する。第1及び第2吸着装置27A,27Bのうち、吸着制御を実行していた他方は、その吸着制御を強制的に中止した上で、「吸着状態」から「脱離状態」へと強制的に遷移した後、
図7の脱離制御を開始する。
【0102】
(4-3.放出制御)
図8は、放出制御の具体例を示すフローチャートである。放出制御は、前述した吸着制御及び脱離制御と並行して行われるようになっている。まず、
図8のステップS301において、コントローラ100は、脱離制御のステップS202と同様に脱離期間を予測し、その脱離期間と同じ期間となるように、ガス貯蔵タンク51からのCO
2含有ガスの放出期間を設定する。
【0103】
続くステップS302において、コントローラ100は、ステップS301で予測した脱離期間(放出期間)に基づいて、単位時間あたりにガス貯蔵タンク51から放出されるCO2含有ガスの流量(放出流量)を決定する。放出期間が長くなるほど、放出流量は小さくなる。
【0104】
コントローラ100は、第1及び第2吸着装置27A,27Bの一方からのCO
2の脱離に際し、排気管2のうち、吸着状態と脱着状態とで共通となる排気管2の容積(
図5A及び
図5Bの破線部を参照)と、第1及び第2吸着装置27A、27Bのうち、脱着状態にある一方の容積と、の合算値を算出する。この合算値に対応した所定量のCO
2を、脱離制御によって脱離させる。前述した放出流量は、この所定量に対応した流量となるように決定される。
【0105】
続くステップS303において、コントローラ100は、ステップS302で決定した放出流量と、ガス貯蔵タンク51内の検出圧力と、排気ガスの検出圧力とに基づいて、一定の流量が維持されるように、ガス量調整部53を制御する。これにより、ガス貯蔵タンク51からのCO2含有ガスの放出が開始される。コントローラ100がガス量調整部53を制御することで、ガス貯蔵タンク51の外部へとCO2含有ガスが流出する。ガス貯蔵タンク51の外部へと流出したCO2含有ガスは、第1流通管52を介して第1及び第2吸着装置27A,27Bの上流に循環する。
【0106】
続くステップS304において、コントローラ100は、ステップS303においてガス貯蔵タンク51からのCO
2含有ガスの放出を開始してからの経過時間が、ステップS301で設定した放出期間に達した否かを判定する。この判定がNOの場合、コントローラ100は、ステップS304の判定に戻る。この判定がYESの場合、コントローラ100は、ステップS304の判定を終了し、
図7に例示したフローを終了する。
【0107】
このように、コントローラ100は、ガス量調整部53を制御することで、第1及び第2吸着装置のうち、脱離状態とした吸着装置27A.27Bからガス貯蔵タンク51に流入したCO2含有ガスのうちの所定量を、該ガス貯蔵タンク51の外部へと流出させる。
【0108】
特に、第1の具体例においては、コントローラ100は、脱離状態とした吸着装置27からのCO2の脱離に際し、その吸着装置27から、所定の放出期間(脱離期間)にわたってCO2を脱離させる。コントローラ100は、その放出期間と同じ期間にわたって、第1流通管52を介してCO2含有ガスを放出させるとともに、該放出時におけるCO2含有ガスの流量(放出流量)が一定の所定量になるように、ガス量調整部53を制御する。
【0109】
<5.本実施形態の意義>
以上説明したように、前記実施形態によれば、
図2に例示したように、ガス貯蔵タンク51から、CO
2含有ガスを適宜放出させる。これにより、CO
2含有ガス中のCO
2については、ガス貯蔵タンク51に内蔵されたCO
2吸着材272に吸着させる一方、CO
2含有ガス中の他の成分については、ガス貯蔵タンク51から放出させることができる。CO
2については、CO
2吸着材272に吸着させることになるため、ガス貯蔵タンク51内の圧力を低く維持することができる。一方、他の成分を放出させることで、ガス貯蔵タンク51内の圧力を可能な限り抑制することができる。
【0110】
かくして、CO2をCO2吸着材272に吸着させたことと、ガス貯蔵タンク51内の圧力を可能な限り抑制したこととが相まって、CO2の貯蔵効率を向上させることができる。
【0111】
また、
図2及び
図8等を用いて説明したように、ガス量調整部53を介してCO
2含有ガスを能動的にガス貯蔵タンク51外に流出させたことで、ガス貯蔵タンク51内の圧力を、可能な限り抑制することができる。そのことで、CO
2の貯蔵効率を向上させることができる。
【0112】
また、
図5A及び
図5B等に例示したように、前記吸着状態と前記脱着状態とで共通となる排気管2と、その排気管2に連通する吸着装置27A,27Bには、吸着状態時に通過した排気ガスに起因した、窒素等の成分が残存しているものと考えられる。そこで、その部分の容積に見合った量のガスが排出されるようにガス量調整部53を制御することで、そうした残存成分を的確に除去することができる。
【0113】
また、
図2に例示したように、CO
2含有ガスを大気に放出する代わりに、CO
2回収システムS内を繰り返し循環させる。これにより、CO
2を大気に放出させるような構成と比較して、CO
2の回収量を可能な限り多く確保することができる。
【0114】
また、
図8等を参照して説明したように、CO
2の脱離期間とCO
2含有ガスの放出期間を同期させる(両者を一致させるように設定する)ことで、排気圧力の急増を抑制することができる。そのことと、CO
2含有ガスの流量を一定にすることによる排気圧力の急変抑制とが相まって、排気圧力の急増を可能な限り抑制することができる。これにより、車載エンジン1の運転に与える影響(特に、仕事のロス)を、可能な限り抑制することができる。
【0115】
<他の実施形態>
前記実施形態では、排気管2の容積に対応したガス量が排出されるように、ガス量調整部53を制御することが開示されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。車載エンジン1の運転状態に応じた制御を行ってもよい。
【0116】
具体的に、放出制御の別例に際し、コントローラ100は、第1及び第2吸着装置27A,27Bの一方からのCO2の脱離に際し、一方の吸着装置からのCO2の脱離期間中、排気管2における排気ガスの圧力が所定圧力以下となるように、ガス量調整部53を制御する。そうした別例の実行に際し、コントローラ100は、車載エンジン1の運転状態に基づいて、その所定圧力を決定する。
【0117】
一般に、車載エンジン1が低回転になるほど、排圧を上昇可能な余地は大きくなり、車載エンジンが低回転になるほど、排圧を上昇可能な余地は大きくなる。排圧を上昇可能な余地に応じて脱離させるCO2の量又は流量を制御することで、排圧を、車載エンジン1の運転状態に見合った範囲内に抑えることができる。
【0118】
より詳細には、
図101に例示するように、コントローラ100は、
図7のステップS201等と同様にセンサ検出値を読み込んだ後、現在の排気圧力が所定圧力以下であるか否かを判定する(ステップS401、ステップS402)。その判定がYESの場合、コントローラ100は、CO
2含有ガスの循環時に、前記所定圧力付近に達するような流速を設定する(ステップS403)。コントローラ100は、その流速を実現するように真空ポンプ36の制御を開始する(ステップS404)。そして、放出制御を開始してからの経過時間が、所定の吸着期間に達したことを条件(ステップS405)に、真空ポンプ36の制御を終了し(ステップS406)、放出制御を終了する。
【0119】
また、前記実施形態では、真空ポンプ36の下流にコンプレッサ37が配置されていたが、コンプレッサ37は必須ではない。また、真空ポンプ36の代わりに、又は、真空ポンプ36に加えて第1及び第2吸着装置27A,27Bを個別に加熱可能なヒータを用いてもよい。
【0120】
その場合、CO2の吸着と脱離は、本実施形態では排圧と真空ポンプ36による圧力スイング法が支配的なものであったが、真空ポンプ36とヒータの両方を用いた場合には、吸着時と脱離時との双方において、排圧と真空ポンプ36による圧力スイング法と熱交換器とヒータによる温度スイング法とを併用したものとなる。さらに、真空ポンプ36を用いることなく、その真空ポンプ36の代わりにヒータを用いた場合には、熱交換器とヒータによる温度スイング法が支配的なものとなる。また、コンプレッサ37を廃した場合、制御弁の代わりに、ポンプによってガス量調整部53を構成してもよい。
【0121】
またそもそも、CO
2含有ガスを還流させる構成は、本開示において必須ではない。例えば
図9に示すCO
2回収システムS’のように、第1流通管52を大気に開放してもよい。
図9の構成例においても、前述のようにコンプレッサ37を排することができる。その場合、制御弁等からなるガス量調整部53を排してもよい。
【0122】
その他、脱離制御及び吸着制御の詳細も、
図6及び
図7の例示には限定されない。例えば、テールパイプ20にCO
2濃度センサを配置して、CO
2濃度の検出値が所定値以上となったときに、第1又は第2吸着装置27A,27Bの接続構造を切り替えて、CO
2の脱離を開始させるようにしてもよい。また、真空ポンプ36の上流側のガス配管に圧力センサを配置して、圧力の検出値が所定値未満となったときに、第1又は第2吸着装置27A,27Bの接続構造を切り替えて、CO
2の吸着を開始させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0123】
S CO2回収システム
1 車載エンジン
11 シリンダ
2 排気管
20 テールパイプ(下流端)
23 排気触媒
24 第1熱交換器
25 第1気水分離器
27A 第1吸着装置
27B 第2吸着装置
271 CO2吸着材
5 流路切替装置
26A 第1上流側制御弁(流路切替装置)
26B 第1下流側制御弁(流路切替装置)
28A 第1下流側制御弁(流路切替装置)
28B 第2下流側制御弁(流路切替装置)
33 第1脱離制御弁(流路切替装置)
34 第2脱離制御弁(流路切替装置)
36 真空ポンプ
38 第2熱交換器
39 第2気水分離器
51 ガス貯蔵タンク
51b 放出口
52 第1流通管
53 ガス量調整部
100 コントローラ