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特開2025-15291携帯用加工機とともに使用するための長尺定規用のハンドル装置、および、ハンドル装置を備える長尺定規
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015291
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】携帯用加工機とともに使用するための長尺定規用のハンドル装置、および、ハンドル装置を備える長尺定規
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/02 20060101AFI20250123BHJP
   B23D 45/16 20060101ALI20250123BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20250123BHJP
   B27B 9/04 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23D47/02
B23D45/16
B25F5/00 Z
B27B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118612
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 修司
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
【Fターム(参考)】
3C040GG46
3C040LL05
3C064AA05
3C064AA06
3C064AA20
3C064AB02
3C064AC01
3C064BA02
3C064BA12
3C064BB80
3C064BB84
3C064CB63
3C064CB71
3C064CB84
3C064CB85
3C064CB91
(57)【要約】
【課題】 利便性が改善された携帯用加工機用の長尺定規を提供する。
【解決手段】 携帯用加工機とともに使用するための長尺定規用のハンドル装置は、ハンドル部と、長尺定規本体に取り付けた状態における長尺定規本体に対するハンドル部の相対位置を変更可能な位置変更部と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用加工機とともに使用するための長尺定規用のハンドル装置であって、
ハンドル部と、
長尺定規本体に取り付けた状態における前記長尺定規本体に対する前記ハンドル部の相対位置を変更可能な位置変更部と
を備えるハンドル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドル装置であって、
前記位置変更部は、前記長尺定規本体の長手方向に沿って無段階に前記ハンドル部の位置を変更可能に構成された
ハンドル装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドル装置であって、
前記長尺定規本体の、前記長手方向に延在する溝または突条を利用して、前記長手方向にスライド可能、かつ、前記長尺定規に固定可能に構成された
ハンドル装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハンドル装置であって、
前記長尺定規本体に連結可能な連結部と、
前記連結部に対して前記長尺定規本体と反対側で被加工材の上面に当接させるための当接面を有する支持部と
を備えるハンドル装置。
【請求項5】
請求項4に記載のハンドル装置であって、
使用時に前記被加工材の上面に当接しない位置で前記連結部と前記支持部との間を延在する中間部を備え、
前記ハンドル部は前記中間部上に配置された
ハンドル装置。
【請求項6】
請求項5に記載のハンドル装置であって、
前記中間部は、前記長手方向に離間して配置される第1の中間部および第2の中間部を備え、
前記ハンドル部は、前記第1の中間部と前記第2の中間部との間に架け渡されるように配置された
ハンドル装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載のハンドル装置であって、
前記当接面は弾性部材によって形成された
ハンドル装置。
【請求項8】
携帯用加工機とともに使用するための長尺定規であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか一項のハンドル装置と、
前記長尺定規本体と
を備える長尺定規。
【請求項9】
請求項8に記載の長尺定規であって、
前記長尺定規本体に対する位置を変更不能に前記長尺定規本体の下面から下方に突出する第1の当接部材であって、前記被加工材の側面に当接させるための第1の当接部を有する第1の当接部材と、
前記長尺定規本体の短手方向において前記第1の当接部材と離間して配置され、前記長尺定規本体に対する前記長手方向の位置を変更可能に前記長尺定規本体の前記下面から下方に突出する第2の当接部材であって、前記被加工材の側面に当接させるための第2の当接部を有する第2の当接部材と、
を備え、
前記第2の当接部材は、前記長手方向に延在する溝を利用して、前記長手方向にスライド可能、かつ、前記長尺定規本体に固定可能に構成された
長尺定規。
【請求項10】
請求項9に記載の長尺定規であって、
前記長尺定規本体の前記下面は、前記第1の当接部材と前記第2の当接部材との相対位置によって規定される加工角度を表す目盛りを備え、
前記長尺定規は、前記長手方向にスライド可能に前記長尺定規本体の前記溝内に保持されるスライダと、前記長手方向における前記第2の当接部材の位置に応じて前記目盛りを指し示すためのインジケータと
を備え、
前記スライダは、前記第2の当接部材と前記インジケータとに連結された
長尺定規。
【請求項11】
請求項10に記載の長尺定規であって、
前記スライダは、係合部を備え、
前記長尺定規本体の前記溝は、前記長手方向に沿って配置された複数の被係合部を備え、
前記複数の被係合部の各々は、前記スライダをスライドさせるための操作抵抗が増大するように前記係合部に係合する形状および大きさを有する
長尺定規。
【請求項12】
請求項10に記載の長尺定規であって、
前記第1の当接部材は、前記第1の当接部と、前記携帯用加工機の刃具を覆う可動カバーに当接するための可動カバー当接部と、を備える一体形成品である
長尺定規。
【請求項13】
請求項12に記載の長尺定規であって、
前記第1の当接部材は合成樹脂製である
長尺定規。
【請求項14】
請求項11に記載の長尺定規であって、
前記携帯用加工機によって加工が進行される側を前側とし、その反対側を後側と定義したとき、前記第2の当接部は、前記インジケータよりも前側に配置され、
前記係合部は、前記長手方向において前記第2の当接部と前記インジケータとの間に配置され、
前記複数の被係合部の各々は、前記スライダと反対側に向けて凹んだ凹部の形態であり、
前記係合部は、前記凹部に係合する形状および大きさを有する凸部の形態である
長尺定規。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用加工機とともに使用するための長尺定規用のハンドル装置、および、ハンドル装置を備える長尺定規に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)と称される切断機は、ベースと、本体部と、を備えている。本体部は、電動モータと、電動モータによって回転駆動される略円形の刃具と、を備えている。本体部はベースに対して一方側に配置されるが、刃具の一部は、ベースを超えて他方側に突出する。かかる切断機を使用する際、ユーザは、刃具が回転した状態で、ベースの下面を被切断材に当接させ、切断機を前方へ移動させる。これによって、ベースを超えて突出した刃具が被切断材を切断する。
【0003】
このような切断作業を補助するために、マルノコとともに長尺定規が使用されることがある。例えば、マルノコのベースの底面に、切断方向に延在する直線状の溝部が形成されている場合には、この溝部に嵌合する直線状の突条が長手方向に沿って形成された長尺定規を使用することができる。具体的には、使用者は、長尺定規の突条とベースの溝部とが嵌合するように長尺定規およびマルノコを配置し、この嵌合状態を保ちながらマルノコを切断方向に移動させる。これにより、被切断材を切断開始位置から切断終了位置までまっすぐに切断することが可能である。このような長尺定規は、マルノコに限らず、ベースを有する種々の携帯用加工機とともに使用することができる。
【0004】
このような長尺定規を使用する際には、被切断材に対する長尺定規の位置を固定する必要がある。下記の特許文献1は、被切断材に対する長尺定規の位置を固定するためのカム式クランプ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-46090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の長尺定規は、利便性の面から改善の余地を残している。例えば、クランプ装置による固定作業は、ユーザにとって面倒なものである。特に、長尺定規の位置を変えながら複数回、切断作業を行う場合には、この問題は顕著になる。
【0007】
このようなことから、利便性が改善された携帯用加工機用の長尺定規を提供することが期待される。
【0008】
本明細書は、携帯用加工機とともに使用するための長尺定規用のハンドル装置を開示する。このハンドル装置は、ハンドル部と、長尺定規本体に取り付けた状態における長尺定規本体に対するハンドル部の相対位置を変更可能な位置変更部と、を備えていてもよい。「長尺定規本体」とは、付属品が取り付けられていない状態の長尺定規である。
【0009】
このハンドル装置は、長尺定規本体に取り付けられた状態で使用することができる。具体的には、ユーザは、被加工材の上に長尺定規を配置し、一方の手でハンドル部を握って、ハンドル部(ひいては、長尺定規本体)を被加工材に対して(換言すれば、下方に向けて)押圧する。これによって、被切断材に対する長尺定規本体の位置が固定される。ユーザは、この状態で、他方の手で携帯用加工機を持って加工作業を行うことができる。つまり、クランプ装置などの治具を使用することなく、被切断材に対する長尺定規本体の位置を固定できる。したがって、ユーザの利便性が向上する。しかも、ハンドル装置は、長尺定規本体に対するハンドル部の相対位置を変更可能に構成されるので、ユーザは、ハンドル部を被加工材に対して押圧しやすいようにハンドル部の相対位置を変更できる。したがって、ユーザの利便性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】長尺定規とともに使用するためのマルノコの斜視図である。
図2】一実施形態による長尺定規の斜視図である。
図3】一実施形態による長尺定規の斜視図である。
図4】長尺定規本体の後側縁部付近を示す図2の部分拡大図である。
図5】当接部材および斜め切りアセンブリ付近を示す図3の部分拡大図である。
図6】長尺定規の正面図である。
図7】ハンドル装置の斜視図である。
図8】斜め切りアセンブリの斜視図である。
図9】ハンドル装置の取付状態を示す部分断面図である。
図10】斜め切りアセンブリの取付状態を示す部分断面図である。
図11】長尺定規の使用方法を示す図である。
図12】長尺定規の使用方法を示す図である。
図13】長尺定規の使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された装置、その製造方法および使用方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、または共に用いることができる。
【0012】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記および下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立および従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0013】
本明細書および/または特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態および/または特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲およびグループまたは集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0014】
1つまたはそれ以上の実施形態において、位置変更部は、長尺定規本体の長手方向に沿って無段階にハンドル部の位置を変更可能に構成されてもよい。ハンドル部を下方に向けて押さえ付けやすいハンドル部の長手方向の位置は、ユーザの身長に応じて異なるが、この構成によれば、ハンドル部の位置を任意の所望の位置に細かく調整できる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、長尺定規本体の、長手方向に延在する溝または突条を利用して、長手方向にスライド可能、かつ、長尺定規本体に固定可能に構成されてもよい。汎用的な長尺定規本体は、長手方向に延在する溝または突条を備えているので、この構成によれば、ハンドル装置を使用するにあたり、長尺定規本体の構造的な変更を必要としない。したがって、汎用性が向上する。
【0016】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ハンドル装置は、長尺定規本体に連結可能な連結部と、連結部に対して長尺定規本体と反対側で被加工材の上面に当接させるための当接面を有する支持部と、を備えていてもよい。この構成によれば、ハンドル部を被加工材に対して押圧した際に、長尺定規本体だけでなく、支持部も被加工材に対して押圧される。したがって、被切断材に対する長尺定規本体の位置をより安定的に固定できる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ハンドル装置は、使用時に被加工材の上面に当接しない位置で連結部と支持部との間を延在する中間部を備えていてもよい。ハンドル部は中間部上に配置されてもよい。この構成によれば、ハンドル部を押圧する力を長尺定規本体と支持部とにバランス良く分散できる。しかも、長尺定規本体に押圧力が作用する箇所と、支持部に押圧力が作用する箇所と、の距離が長尺定規本体の短手方向に長くなる。したがって、被切断材に対する長尺定規本体の位置をより安定的に固定できる。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態において、中間部は、長手方向に離間して配置される第1の中間部および第2の中間部を備えていてもよい。ハンドル部は、第1の中間部と第2の中間部との間に架け渡されるように配置されてもよい。この構成によれば、ハンドル装置を軽量化できる。また、ハンドル部の延在方向が、手で握りやすい方向になる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、当接面は弾性部材によって形成されていてもよい。この構成によれば、ハンドル部を押圧した際の当接面と被切断材との密着度が高まる。このことは、当接面と被切断材との相対位置がずれにくくなることを意味する。したがって、被切断材に対する長尺定規の位置をより安定的に固定できる。
【0020】
1つまたはそれ以上の実施形態において、携帯用加工機とともに使用するための長尺定規が提供されてもよい。この長尺定規は、上記の、および/または下記の実施形態のハンドル装置と、長尺定規本体と、を備えていてもよい。この長尺定規によれば、種々の実施形態によるハンドル装置の効果を得ることができる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、長尺定規は、長尺定規本体に対する位置を変更不能に長尺定規本体の下面から下方に突出する第1の当接部材であって、被加工材の側面に当接させるための第1の当接部を有する第1の当接部材と、長尺定規本体の短手方向において第1の当接部材と離間して配置され、長尺定規本体に対する長手方向の位置を変更可能に長尺定規本体の下面から下方に突出する第2の当接部材であって、被加工材の側面に当接させるための第2の当接部を有する第2の当接部材と、を備えていてもよい。第2の当接部材は、長手方向に延在する溝を利用して、長手方向にスライド可能、かつ、長尺定規本体に固定可能に構成されてもよい。この場合、使用時において、長尺定規は、被加工材の側面が第1の当接部と第2の当接部とに当接するように、被加工材に対して位置決めされ得る。この構成によれば、被加工材の側面に対して直交する方向ではなく、斜めの方向に加工を行う場合に、長手方向における第2の当接部材の固定位置を変更することによって、被加工材の側面に対する長尺定規本体の長手方向の角度(つまり、被加工材の側面に対する、加工を進行させる方向の角度)を容易に調整できる。
【0022】
1つまたはそれ以上の実施形態において、長尺定規本体の下面は、第1の当接部材と第2の当接部材との相対位置によって規定される加工角度(つまり、被加工材の側面に対する、加工を進行させる方向の角度)を表す目盛りを備えていてもよい。長尺定規は、長手方向にスライド可能に長尺定規本体の溝内に保持されるスライダと、長手方向における第2の当接部材の位置に応じて目盛りを指し示すためのインジケータと、を備えていてもよい。スライダは、第2の当接部材とインジケータとに連結されていてもよい。この構成によれば、インジケータが目盛りの所望の加工角度を指し示すようにスライダを移動させることによって、第2の当接部材を、所望の加工角度に対応する位置に容易に位置決めできる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、長尺定規本体の溝は、長手方向に沿って配置された複数の第1の係合部を備えていてもよい。スライダは、スライダをスライドさせるための操作抵抗が増大するように複数の第1の係合部に係合する形状および大きさを有する第2の係合部を備えていてもよい。スライダは、係合部を備えていてもよい。長尺定規本体の溝は、長手方向に沿って配置された複数の被係合部を備えていてもよい。複数の被係合部の各々は、スライダをスライドさせるための操作抵抗が増大するように係合部に係合する形状および大きさを有していてもよい。この構成によれば、ユーザがスライダを移動させて第2の当接部材を所望の加工角度に対応する位置に位置決めする際に、係合部と複数の被係合部のいずれかとが係合する箇所で節度感(クリック感)が得られる。したがって、係合箇所に対応する目盛りの位置にインジケータを容易かつ正確に位置決めできる。
【0024】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の当接部材は、第1の当接部と、携帯用加工機の刃具を覆う可動カバーに当接するための可動カバー当接部と、を備える一体形成品であってもよい。この構成によれば、第1の当接部と動カバー当接部とが個別の部材である場合と比べて、部品点数を低減でき、低コスト化できる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、第1の当接部材は合成樹脂製であってもよい。この構成によれば、可動カバーが第2の当接部に当接したときに、加工のために刃具が露出する方向に可動カバーを円滑に変位させることができる。
【0026】
1つまたはそれ以上の実施形態において、携帯用加工機によって加工が進行される側を前側とし、その反対側を後側と定義したとき、第2の当接部は、スライダよりも前側に配置されてもよい。係合部は、長手方向において第2の当接部とインジケータとの間に配置されてもよい。複数の被係合部の各々は、スライダと反対側に向けて凹んだ凹部の形態であってもよい。係合部は、凹部に係合する形状および大きさを有する凸部の形態であってもよい。この構成によれば、長尺定規本体を被加工材上に配置したときに、インジケータが被加工材と干渉することがないので(干渉を避ける特別な構造が必要ないので)、長尺定規の構造を簡素化できる。さらに、係合部および複数の被係合部を簡素な構造とすることができる。さらに、係合部と複数の被係合部のいずれかとの係合箇所が、長手方向において第2の当接部とインジケータとの間に配置されるので、係合解除操作を行うときの操作抵抗が第2の当接部が位置する側と、インジケータが位置する側と、のいずれかに偏ることがない。したがって、ユーザはスライダを円滑に変位させて、係合解除操作を行うことができる。
【0027】
以下、図面を参照して、例示的な一実施形態による長尺定規10についてより詳細に説明する。長尺定規10は、ベースを有する種々の携帯用加工機とともに使用される。そのような携帯用加工機としては、携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)、カッタ、ジグソー、ルータなどとすることができる。本実施形態では、長尺定規10は、マルノコ100とともに使用される。
【0028】
以下の説明では、ユーザがマルノコを手に持って被切断材を切断するときにマルノコを進行させる側(後述する刃具121によって切断が進められる側であり、切断方向とも呼ぶ)を前側とし、その反対方向を後側と定義する。また、このとき、鉛直方向上方に位置する側を上側と定義し、その反対側を下側と定義する。さらに、前後方向と上下方向とに直交する方向を左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側を右側と定義し、その反対側を左側と定義する。
【0029】
マルノコ100の構成は周知であるから、詳しい説明は省略するが、以下に簡単に説明する。図1に示すように、マルノコ100は、ベース110と本体部120とを備えている。ベース110は、平坦な下面を備えている。ベース110は、その左側縁部付近に、前後方向に延在する溝115を備えている。本体部120は、基本的には、ベース110に対して上側に配置される。本体部120は、左右方向に延在する回転軸線を中心として回転可能に構成された刃具121を備えている。刃具121の一部は、ベース110の貫通孔(図示せず)を貫通して、ベース110よりも下側に突出している。刃具121はチップソーと称される丸鋸刃であり、略円板形状である。
【0030】
刃具121のうちのベース110よりも下方に位置する部分は、可動カバー125によって部分的に覆われている。可動カバー125は、刃具121の外周縁部に沿って後退可能に構成されており、通常時は、付勢部材(図示せず)によって図1に示す位置に向けて付勢されている。マルノコ100の使用時には、被切断材に押圧されて後方に向けて後退し、それによって、刃具121のうちのベース110よりも下方に位置する部分が露出される。可動カバー125の前側縁部126は、後側から前側に向かうほどベース110から遠ざかるように角度付けられている。
【0031】
長尺定規10は、定規本体20と、ハンドル装置30と、を備えている。図2および図4に示すように、定規本体20は、上方から見て、略長方形の形状を有している。定規本体20の長手方向は前後方向と一致し、短手方向は左右方向と一致する。定規本体20の後側かつ右側の縁部は、矩形状に切り欠かれており、その結果、段部26が形成されている。
【0032】
図2および図4に示すように、定規本体20は、突条21とガイド溝22とを備えている。定規本体20は、一般的な形状を有する汎用品であり、ガイド溝22は、被切断材と定規本体20との相対位置を固定するためのクランプ装置(図示せず)を挿入するためや、定規本体20を2つ連結するための連結部材を挿入するために形成されている。図2および図4に示すように、ガイド溝22は、定規本体20の左側縁部に位置しており、定規本体20の後端から前端まで前後方向に延在している。ガイド溝22の左右の上側縁部23は、互いに近づくように内側に向けて突出している。これによって、ガイド溝22の上側の開口は狭められている。
【0033】
図2および図4に示すように、突条21は、ガイド溝22よりも右側に位置しており、定規本体20の後端から前端まで前後方向に延在している。突条21は、長尺定規10のベース110の溝115に嵌合可能な形状および大きさを有している。突条21の下面には、突条21の形状に起因して、前後方向に延在する溝24が形成されている。溝24の左右の下側縁部25は、互いに近づくように内側に向けて突出している。これによって、溝24の下側の開口は狭められている。溝24についても、定規本体20を2つ連結するための連結部材を挿入するために用いられる。
【0034】
図2,3,7に示すように、ハンドル装置30は、ハンドル部31と、連結部32と、支持部33と、2つの中間部34とを備えている。ハンドル部31は、ユーザが手で握ることが意図された部分であり、本実施形態では、略円筒形状を有している。連結部32は、長尺定規に連結可能に構成された部分である。後述するように、連結部32は、定規本体20上に載置される。本実施形態では、連結部32は、前後方向に延在する平板の形態であり、上下方向に延在する3つの貫通孔を有している。
【0035】
支持部33は、長尺定規10を被切断材上に配置したときに、ハンドル装置30を支持する部分であり、折れ曲がった板の形態である。支持部33は、連結部32と左右方向に離間して、連結部32に対して長尺定規10と反対側(つまり、左側)に位置している。支持部33は、連結部32と平行に前後方向に延在している。支持部33の左側部分は、上下方向に直交する平板の形態であり、その下面に弾性部材35を備えている。本実施形態では、弾性部材35は、合成樹脂製のシートの形態である。そのような合成樹脂製は、滑り止め効果を期待できる任意の材料から選択することができ、例えば、発泡EPDM(Ethylene Propylene Diene Methylene Linkage)であってもよい。弾性部材35の下面は、被加工材の上面に当接させるための当接面36として機能する。
【0036】
2つの中間部34は、長尺定規10の使用時に被加工材の上面に当接しない位置で連結部32と支持部33との間を延在する。換言すれば、中間部34は、上下方向において、支持部33の当接面36よりも上方に位置している。本実施形態では、2つの中間部34が前後方向に離間して配置されるので(2つの中間部34の間に貫通孔が形成されるので)、ハンドル装置30を軽量化できる。ただし、2つの中間部34に代えて、貫通孔を有しない板状の単一の中間部が採用されてもよい。ハンドル部31は、2つの中間部34の間に架け渡されるように配置される。このため、ハンドル部31は前後方向に延在している。このハンドル部31の延在方向は、後述する切断作業において、ユーザが手で握りやすい方向である。
【0037】
ハンドル装置30は、取り外し可能に定規本体20に取り付けられる。具体的には、図7に示すように、ハンドル装置30は、さらに、位置変更部37を備えている。本実施形態では、位置変更部37は、前後方向に細長く延在する略直方体のブロックの形態である。位置変更部37は、その上側かつ右側の縁部と、上側かつ左側の縁部と、が切り欠かれた形状を有している。換言すれば、左右方向における中央部分が上側に向けて両脇よりも矩形状に突出した形状を有している。この切欠き形状によって、その上側かつ右側の縁部と、上側かつ左側の縁部と、には、上方を向いた2つの係合面38が形成されている。2つの係合面38は、位置変更部37の前後方向の幅全体に亘って延在している。
【0038】
図9に示すように、位置変更部37は、上下方向に延在する3つの貫通孔を有している。この3つの貫通孔は、長手方向において、連結部32の3つの貫通孔に対応する位置に配置されている。位置変更部37の貫通孔の各々は、上側の小径部分と、下側の大径部分と、を有している。図2および図9に示すように、位置変更部37の貫通孔と連結部32の貫通孔とに、上側からネジ39が挿入される。図9に示すように、位置変更部37の大径部分には、回り止め状態でナット40が配置され、ネジ39の先端に取り付けられている。このような構成によって、位置変更部37は、連結部32の下方において、連結部32に取り付けられる。
【0039】
このようなハンドル装置30は、定規本体20に対するハンドル部31の相対位置を変更可能に構成される。本実施形態では、前後方向における定規本体20に対するハンドル装置30(ハンドル部31)の取付位置を無段階に変更可能である。具体的には、図6および図9に示すように、位置変更部37は、ガイド溝22に適合し、かつ、ガイド溝22内に挿入可能な大きさおよび形状を有している。位置変更部37をガイド溝22内に挿入した状態では、位置変更部37の頂部(2つの係合面38の間の部分)は、定規本体20の2つの上側縁部23の間に位置しており、また、位置変更部37の2つの係合面38は、2つの上側縁部23の下側内面と上下方向にオーバラップする位置にある。このため、位置変更部37は、2つの上側縁部23の間から上方に抜け出ることはない。
【0040】
ネジ39を緩めた状態で位置変更部37をガイド溝22内に挿入すると、位置変更部37(ひいては、ハンドル装置30)は、ガイド溝22内を前後方向にスライド可能である。ハンドル装置30を所望の前後方向の位置に配置し、ネジ39を締めると、位置変更部37の係合面38が上側縁部23の上側内面を押圧する。これによって、上側縁部23は、連結部32と係合面38とによって上下方向に締め付けられ、ハンドル装置30の定規本体20に対する前後方向の位置が固定される。
【0041】
長尺定規10は、さらに、被加工材の側面に対して直交する方向ではなく、斜めの方向に切断を進行させる場合に、被加工材の側面に対する定規本体20の長手方向の角度(つまり、被加工材の側面に対する、加工を進行させる方向の角度であり、以下、切断角度とも呼ぶ)を調整するための構成を備えている。以下、そのような構成について説明する。
【0042】
図3および図5に示すように、長尺定規10は、第1の当接部材50と、斜め切りアセンブリ(以下、単にアセンブリと呼ぶ)60と、を備えている。第1の当接部材50は、ネジ止めによって定規本体20の段部26に取り付けられており、定規本体20に対する位置を変更できない。第1の当接部材50は、定規本体20の下面から下方に突出している。
【0043】
第1の当接部材50は、その前側に第1の当接部51を備え、後側に可動カバー当接部52を備えている。第1の当接部51は、前側に凸の円弧形状を有している。第1の当接部51は、図11および図12に示すように長尺定規10を被切断材200上に配置するときに被切断材200の側面210(これは、後側の側面である)に当接させるための部分である。
【0044】
可動カバー当接部52は、マルノコ100による切断を開始するとき(切断のためにマルノコ100を被切断材200に対して前進させるときに、マルノコ100の可動カバー125の前側縁部126(図1参照)に当接させるための部分である。可動カバー当接部52と可動カバー125とが当接した状態でマルノコ100をさらに前進させると、可動カバー125は、可動カバー当接部52に押圧されて、後側へ後退するので、切断のために刃具121を露出させることができる。
【0045】
図5に示すように、可動カバー当接部52は、前側縁部126の傾斜形状に適合する傾斜形状を有している(同じ傾斜角度で形成されている)。このため、可動カバー当接部52は、可動カバー当接部52と前側縁部126とが面接触した状態で、前側縁部126を安定的に円滑に押圧することができる。本実施形態では、第1の当接部材50は合成樹脂製である。したがって、可動カバー125が可動カバー当接部52に当接したときに、可動カバー125をいっそう円滑に後退させることができる。
【0046】
上記の説明から明らかなように、第1の当接部材50は、第1の当接部51と可動カバー当接部52とを備える一体成形品である。このため、第1の当接部51用の部材と、可動カバー当接部52用の部材と、を別々に備える構成と比べて、部品点数を低減でき、低コスト化できる。ただし、長尺定規10は、第1の当接部51用の部材と、可動カバー当接部52用の部材と、を別々に備えていてもよい。
【0047】
図5および図8に示すように、アセンブリ60は、スライダ70と、第2の当接部材80と、インジケータ90と、を備えている。スライダ70の長手方向は、前後方向に細長く延在する略直方体のブロックの形態である。スライダ70は、その下側かつ右側の縁部と、下側かつ左側の縁部と、が切り欠かれた形状を有している換言すれば、前後方向に見て、左右方向における中央部分が両脇よりも下側に向けて矩形状に突出した形状を有している。この切欠き形状によって、その下側かつ右側の縁部と、下側かつ左側の縁部と、には、下方を向いた2つの係合面71が形成されている。右側の係合面71は、スライダ70の前後方向の幅全体に亘って、延在している。左側の係合面71は、部分的に切り欠かれた形状を有する。この切り欠かれた部分には、左側に向けて突出した凸部の形態の係合部72が形成されている。
【0048】
スライダ70は、前後方向にスライド可能に定規本体20の溝24内に保持される。具体的には、図6および図10に示すように、スライダ70は、定規本体20の溝24に適合し、かつ、溝24内に挿入可能な大きさおよび形状を有している。スライダ70を溝24内に挿入した状態では、スライダ70の底部(2つの係合面71の間の部分)は、定規本体20の2つの下側縁部25の間に位置しており、また、位置変更部37の2つの係合面38は、2つの上側縁部23の下側内面と上下方向にオーバラップする位置にある(図6参照)。このため、スライダ70は、2つの下側縁部25の間から下方に抜け出ることはない。
【0049】
図3および図5に示すように、第2の当接部材80は、定規本体20の下面から下方に突出している。第2の当接部材80は、定規本体20の短手方向(左右方向)において第1の当接部材50(第1の当接部51)と離間して配置される。
【0050】
図10に示すように、第2の当接部材80は、ボルト83、ナット84およびワッシャ85を用いてスライダ70に取り付けられる。具体的には、スライダ70および第2の当接部材80は、上下方向に延在する同軸の貫通孔を有している。スライダ70は、上下方向に延在する貫通孔を有している。この貫通孔は、下側の大径部分と、その上側の小径部分と、を有している。スライダ70および第2の当接部材80の各々の貫通孔には、上側からボルト83が挿入される。ボルト83のヘッドは、回り止め状態でスライダ70の貫通孔内に収容されており、また、スライダ70の貫通孔の段差に係合している。第2の当接部材80の貫通孔の大径部分には、回り止め状態でナット84が配置され、ボルト83の先端に取り付けられている。第2の当接部材80と、定規本体20の下側縁部25と、の間には、ワッシャ85が配置されている。このような構成によって、第2の当接部材80は、スライダ70に取り付けられる。
【0051】
第2の当接部材80は、第2の当接部81と操作部82とを備えている。第2の当接部81は、上下方向に延在する円柱形状を有している。第2の当接部81は、図11および図12に示すように長尺定規10を被切断材200上に配置ときに被切断材200の側面210に当接させるための部分である。
【0052】
操作部82は、第2の当接部81の下側に位置している。操作部82は、ユーザが回転操作することが意図される部分であり、ユーザが指で摘まみやすいように2つの切欠きを有している。ボルト83のヘッド、および、ナット84は、回り止め状態で保持されているので、第2の当接部材80(操作部82)を回転操作することによって、ナット84に対してボルト83を緩めたり、締めたりすることができる。つまり、第2の当接部材80は、つまみネジとしても機能する。
【0053】
ボルト83を緩めた状態では、スライダ70は、溝24内を前後方向にスライド可能である。ユーザは、操作部82を指で摘まんで第2の当接部材80を移動させることによって、第2の当接部材80およびスライダ70を所望の前後方向の位置に配置することができる。所望の前後方向の位置で、第2の当接部材80を回転操作してボルト83を締めると、第2の当接部材80の上面がワッシャ85を介して定規本体20の下側縁部25を上側に向けて押圧する。これによって、下側縁部25は、スライダ70と第2の当接部材80とによって上下方向に締め付けられ、スライダ70および第2の当接部材80の定規本体20に対する前後方向の位置が固定される。
【0054】
第2の当接部材80の定規本体20に対する前後方向の位置は、切断角度を規定する。図12に示すように、第2の当接部81および第2の当接部81の各々の前側縁部が、前後方向において同じ位置にある場合には、定規本体20は、その長手方向が被切断材200の側面210に対して直交するように方向付けられる(切断角度は、90度になる)。これに対して、第2の当接部材80を図12に示す位置から前側または後側にオフセットした位置に固定し、第2の当接部81および第2の当接部81の各々に側面210が当接するように被切断材200および長尺定規10を配置した場合には、切断角度を90度よりも大きく、または、小さくなるように、長尺定規10を被切断材200に対して位置決めできる。
【0055】
このようにして長尺定規10を被切断材200に対して位置決めした後、図13に示すように定規本体20上にマルノコ100を配置して(つまり、定規本体20の突条21と、マルノコ100のベース110の溝115と、が嵌合するようにマルノコ100を配置して)、マルノコ100を前進させれば、被切断材200を所望の切断角度で切断できる。
【0056】
図3および図5に示すように、長尺定規10は、さらに、目盛パネル28とインジケータ90とを備えている。目盛パネル28は、定規本体20の下面に貼り付けられている。目盛パネル28の目盛りは、第1の当接部材50(第1の当接部51)と第2の当接部材80(第2の当接部81)との相対位置によって規定される切断角度を表している。インジケータ90は、前後における第2の当接部材80(第2の当接部81)の位置に応じて目盛パネル28の目盛りを指し示すように、目盛パネル28に隣接して配置される。
【0057】
図3および図5に示すように、インジケータ90は、第2の当接部材80(第2の当接部81)よりも後側に配置される。このため、図12に示すように長尺定規10および被切断材200を位置決めしたときに、インジケータ90が被切断材200と干渉することがない。図8に示すように、本実施形態では、インジケータ90は、スライダ70の後側端部にネジ止めによって取り付けられる。このため、インジケータ90は、スライダ70および第2の当接部材80と一体的に前後方向に移動可能である。目盛パネル28、第2の当接部材80およびインジケータ90は、インジケータ90が第2の当接部材80の前後方向の位置に応じた傾斜角度を再示すように、予め位置決めされている。この構成によれば、インジケータ90が所望の切断角度を指し示すようにスライダ70を移動させることによって、第2の当接部材80を、所望の切断角度に対応する位置に容易に位置決めできる。
【0058】
図3および図5に示すように、定規本体20の溝24は、前後方向に沿って配置された複数の被係合部27を備えている。本実施形態では、被係合部27は、スライダ70と反対側(つまり、左側)に向けて凹んだ凹部の形態である。上述したスライダ70の係合部72は、この被係合部27に係合する形状および大きさを有している。ただし、被係合部27および係合部72の形態は、それらが互いに係合可能である限りにおいて、任意の形態に変更可能である。例えば、被係合部27が凸部の形態であり、係合部72が凹部の形態であってもよい。
【0059】
複数の被係合部27の各々の位置は、目盛パネル28の目盛りの位置に対応している。つまり、インジケータ90が目盛パネル28の目盛りのいずれかの数値(切断角度を表す数値)を指し示す位置にあるときに、スライダ70の係合部72が、複数の被係合部27のうちの、指し示された数値に対応する被係合部27に係合するように、複数の被係合部27の前後方向の位置は位置決めされている。
【0060】
係合部72と、複数の被係合部27のいずれかと、が係合している状態では、スライダ70を前側または後側にスライドさせるための操作抵抗が増大する。このため、ユーザが、目盛パネル28を見ながら、スライダ70を移動させて第2の当接部材80を所望の切断角度に対応する位置に位置決めする際に、被係合部27と係合部72とが係合する箇所で節度感(クリック感)が得られる。したがって、係合箇所に対応する目盛りの位置にインジケータ90を容易かつ正確に位置決めできる。
【0061】
図5に示すように。係合部72は、前後方向において第2の当接部材80とインジケータ90との間に配置されている。このため、被係合部27と係合部72とが係合した状態からスライダ70を前後方向に移動させるときに、操作抵抗(係合解除のための抵抗)が第2の当接部材80が位置する側と、インジケータ90が位置する側と、のいずれかに偏ることがない。したがって、ユーザはスライダ70を円滑に変位させて、係合解除操作を行うことができる。
【0062】
上述した長尺定規10によれば、ユーザは、図13に示すようにマルノコ100による被切断材200の切断を行うときに、一方の手でハンドル部31を握って、ハンドル部31(ひいては、定規本体20)を被切断材200に対して(換言すれば、下方に向けて)押圧する。これによって、被切断材200に対する定規本体20の位置が固定される。ユーザは、この状態で、他方の手でマルノコ100を持って切断作業を行うことができる。したがって、クランプ装置などの治具を使用することなく、被切断材200に対する定規本体20の位置を固定でき、ユーザの利便性が向上する。
【0063】
さらに、しかも、定規本体20に対するハンドル部31の相対位置を変更可能に構成されるので、ユーザは、ハンドル部31を被切断材200に対して押圧しやすいようにハンドル部31の相対位置を変更できる。しかも、本実施形態では、定規本体20の長手方向に沿って無段階にハンドル部31の位置を変更できるので、ハンドル部31の位置を任意の所望の位置に細かく調整できる。
【0064】
さらに、ハンドル装置30は、定規本体20のガイド溝22を利用して、前後方向にスライド可能、かつ、定規本体20に固定可能である。ガイド溝22を有する定規本体20は、汎用品であるから、ハンドル装置30を使用するにあたり、定規本体の構造的な変更を必要としない。
【0065】
さらに、ハンドル装置30によれば、ユーザがハンドル部31を被切断材200に対して押圧した際に、連結部32を介して定規本体20が被切断材200に対して押圧されるとともに、支持部33が被切断材200に対して押圧される。したがって、被切断材200に対する定規本体20の位置をより安定的に固定できる。特に、本実施形態では、連結部32と支持部33とを連結する中間部34上に配置される。このため、ユーザがハンドル部31を押圧する力を定規本体20と支持部33とにバランス良く分散できる。しかも、定規本体20に押圧力が作用する箇所と、支持部33に押圧力が作用する箇所と、の距離が左右方向に長くなる。したがって、被切断材200に対する定規本体20の位置をより安定的に固定できる。
【0066】
さらに、ハンドル装置30によれば、被切断材200に対して長尺定規10を支持する
支持部33は、弾性材料によって形成された当接面36を備えている。このため、ハンドル部31を押圧した際の当接面36と被切断材との密着度が高まる。したがって、当接面36と被切断材200との相対位置がずれにくくなり、被切断材200に対する長尺定規10の位置をより安定的に固定できる。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各形態要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0068】
例えば、ハンドル装置30は、定規本体20(または、公知の任意の定規本体)の溝または突条を利用する任意の形態で定規本体20に取り付け可能に構成されてもよい。例えば、ハンドル装置30は、ガイド溝22の外側の上側縁部23上を摺動し、ガイド溝22の左側の内面と左側の外面とを左右方向に締め付けることによって、ハンドル装置30を定規本体に対して固定するように構成された位置変更機構を備えていてもよい。
【0069】
さらに、ハンドル装置30は、定規本体20(または、公知の任意の定規本体)の溝または突条を利用することなく、定規本体に対する前後方向の位置を変更可能に変形されてもよい。例えば、ハンドル装置は、多数の貫通孔が前後方向に沿って形成された定規本体とともに使用されてもよい。具体的には、ハンドル装置は、多数の貫通孔のうちの所望の固定位置に対応する貫通孔を利用して、定規本体に固定されてもよい。
【0070】
さらに、ハンドル部31は、定規本体20(または、公知の任意の定規本体)に対する前後方向の固定位置を変更可能な構成に加えて、または、代えて、任意の方向の固定位置を変更可能に変形されてもよい。例えば、中間部34の各々が、左右方向に配列された複数の貫通孔を有する場合には、ハンドル部31は、所望の固定位置に対応する貫通孔を利用して、定規本体20に固定されてもよい。さらに、ハンドル部31は、定規本体20(または、公知の任意の定規本体)に対する向きを変更可能に構成されてもよい。この場合にも、中間部34の複数の貫通孔が選択的に利用されてもよい。
【0071】
さらに、ハンドル部31は、左右方向の任意の位置に配置され得る。例えば、ハンドル部31は、支持部33上に配置されてもよい。この場合、中間部34は省略されてもよい。さらに、中間部34に加えて支持部33も省略されてもよい。この場合、ハンドル部31は、連結部32上に配置されてもよい。
【0072】
さらに、上述した種々の形態は、マルノコに限らず、ベースに対する本体部の傾斜角度を変更可能に構成された種々の携帯用切断機、例えば、カッタなどに適用可能である。
【0073】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。長尺定規10は「長尺定規」の一例である。定規本体20は、「長尺定規本体」の一例である。ハンドル装置30は、「ハンドル装置」の一例である。ハンドル部31は、「ハンドル部」の一例である。位置変更部37は、「位置変更部」の一例である。ガイド溝22および溝24は、「溝」の一例である。連結部32は「連結部」の一例である。支持部33は「支持部」の一例である。中間部34は「中間部」、「第1の中間部」および「第2の中間部」の一例である。弾性部材35は「弾性部材」の一例である。当接面36は「当接面」の一例である。第1の当接部材50は「第1の当接部材」の一例である。第1の当接部51は「第1の当接部」の一例である。可動カバー当接部52は「可動カバー当接部」の一例である。第2の当接部材80は「第2の当接部材」の一例である。第2の当接部81は「第2の当接部」の一例である。目盛パネル28は、「目盛り」の一例である。インジケータ90は「インジケータ」の一例である。スライダ70は「スライダ」の一例である。被係合部27は「被係合部」の一例である。係合部72は「係合部」の一例である。
【符号の説明】
【0074】
10...長尺定規
20...定規本体
21...突条
22...ガイド溝
23...上側縁部
24...溝
25...下側縁部
26...段部
27...被係合部
28...目盛パネル
30...ハンドル装置
31...ハンドル部
32...連結部
33...支持部
34...中間部
35...弾性部材
36...当接面
37...位置変更部
38...係合面
39...ネジ
40...ナット
50...第1の当接部材
51...第1の当接部
52...可動カバー当接部
60...斜め切りアセンブリ
70...スライダ
71...係合面
72...係合部
80...第2の当接部材
81...第2の当接部
82...操作部
83...ボルト
84...ナット
85...ワッシャ
90...インジケータ
100...マルノコ
110...ベース
115...溝
120...本体部
121...刃具
125...可動カバー
126...前側縁部
200...被切断材
210...側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13