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特開2025-1530車両用カバー装置及びこの車両用カバー装置の基材を成形する樹脂成形用型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001530
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両用カバー装置及びこの車両用カバー装置の基材を成形する樹脂成形用型
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20241225BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20241225BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20241225BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20241225BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B60R19/52 K
B29C33/44
B60R13/04 Z
F16B2/22 C
F16B5/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101163
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】508309887
【氏名又は名称】森六テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】若林 崇史
(72)【発明者】
【氏名】田澤 駿
(72)【発明者】
【氏名】植田 洸
【テーマコード(参考)】
3D023
3J001
3J022
4F202
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AB03
3D023AD06
3D023AD25
3J001FA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA04
3J001HA07
3J001HA09
3J001JA03
3J001KA21
3J001KB01
3J022DA15
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC22
3J022ED26
3J022FA05
3J022FB04
3J022FB08
3J022FB12
3J022HA10
3J022HB06
4F202CA09
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK32
4F202CK54
(57)【要約】
【課題】車両用カバー装置の品質を高めるとともに、樹脂成形用型の耐久性を確保できること。
【解決手段】車両用カバー装置10は、樹脂の一体成形品から成る基材20と、前記基材20に取り付け可能な装飾品30とを備えている。前記基材20は、互いに間隔D1を有して対面し合う板状の一対の板部材41,41と、前記一対の板部材41,41同士を繋ぐ取付座42と、によって断面H字状に構成された固定部40を備えている。前記一対の板部材41,41は、各々の一端41a,41aから互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部43,43を、一体に有している。前記装飾品30は、前記一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込み可能な被固定部31を一体に有している。前記被固定部31は、前記一対の突出部43,43の前記先端43a,43a間に嵌め込まれ、且つ、前記取付座42に締結部材45により締結されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を有して対面し合う板状の一対の板部材と、前記一対の板部材同士を繋ぐ取付座と、によって断面H字状に構成された固定部を備えている樹脂の一体成形品から成る基材と、
前記固定部に取り付け可能な装飾品と、を備え、
前記一対の板部材は、各々の一端から互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部を、一体に有しており、
前記装飾品は、前記一対の突出部の先端間に嵌め込み可能な被固定部を一体に有し、
前記被固定部は、前記一対の突出部の前記先端間に嵌め込まれ、且つ、前記取付座に締結部材によって締結されている、車両用カバー装置。
【請求項2】
前記被固定部は、前記被固定部の側面から突出した係止部を一体に有しており、
前記取付座は、前記被固定部を前記一対の突出部の前記先端間に嵌め込んだ状態で、前記係止部を仮保持することが可能な保持孔を有している、請求項1に記載の車両用カバー装置。
【請求項3】
前記装飾品は、断面U字状の帯状を呈しており、
前記装飾品の一方端は、前記被固定部を有しており、
前記装飾品の他方端は、引っ掛け片を有しており、
前記基材は、前記引っ掛け片を掛け止め可能な掛け止め部を有している、請求項1に記載の車両用カバー装置。
【請求項4】
互いに間隔を有して対面し合う板状の一対の板部材と、前記一対の板部材同士を繋ぐ取付座と、によって断面H字状に構成され、前記一対の板部材の各々の一端から互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部と、前記一対の板部材と前記取付座と前記一対の突出部とによって区画された一対の空間と、前記取付座のうちの前記一対の板部材の板面及び前記取付座の座面に沿う方向の一端から前記一対の突出部側へ延びた延長板と、を含む固定部を備えている、樹脂の一体成形品から成る基材と、
前記基材に取り付け可能な装飾品と、
を含む車両用カバー装置の、前記基材を成形するための樹脂成形用型であって、
前記一対の板部材の板面及び前記取付座の座面に沿う方向へ移動可能であって前記一対の空間を形成するためのスライド型と、前記基材の残りの部分を形成するための固定型及び前記固定型に対して開閉可能な可動型と、を含み、
前記固定型は、前記一対の空間同士を区画する区画面を備えており、
前記スライド型は、スライド基部と、前記スライド基部に設けられて前記一対の空間を形成するための一対の空間成形用突出部と、を有しており、
前記一対の空間成形用突出部は、前記固定型に可動型を型締めした際に前記固定型の前記区画面に当接可能に位置している、樹脂成形用型。
【請求項5】
前記基材の前記延長板は、貫通孔を有しており、
前記スライド型は、前記スライド基部に設けられて前記貫通孔を形成するための孔形成用突出部を有しており、
前記一対の空間成形用突出部は、前記孔形成用突出部よりも長く設定されている、請求項4に記載の樹脂成形用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用カバー装置及びこの車両用カバー装置の基材を成形する樹脂成形用型に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の多くの車両には、各種の車両用カバー装置が設けられている。この車両用カバー装置は車体の外部や内部を覆っている。車両用カバー装置の一例として、ラジエータグリル(基材の一種)にグリルガーニッシュを装着した構成を挙げることができる。車両用カバー装置に関する従来技術として、特許文献1(図2及び図7参照)に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示される車両用カバー装置は、車体の前部に搭載されたラジエータに走行風を取り入れるための樹脂製のラジエータグリル(基材に相当)を備えている。このラジエータグリルの前面には、帯状に形成された樹脂製のグリルガーニッシュ(装飾品に相当)がネジによって取り付けられている。このグリルガーニッシュは、裏面からラジエータグリル側へ突出したボス(被固定部に相当)を有している。
【0004】
ラジエータグリルのなかの、ボスを取り付ける部分(固定部に相当)の断面形状は、概ねM字状である。具体的に述べると、固定部は、互いに間隔を有して対面し合う縦板状の一対の板部材と、これらの板部材の間に位置して各板部材の前端同士を繋いでいる断面略U字状の繋ぎ部材とによって、一体に構成されている。この繋ぎ部材は、各板部材の前端から後端へ向かって互いに近づきつつ延びる縦板状の一対の繋ぎ板と、各々の繋ぎ板の後端同士を繋いでいる横板状の取付座とによって、構成されている。板部材に対する繋ぎ板の傾斜角は、鋭角である。一対の繋ぎ板間に挿入したボスを、取付座にネジによって締結することにより、ラジエータグリルの前面にグリルガーニッシュを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-352136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、特許文献1に示されるような車両用カバー装置の構成では、ラジエータグリルとグリルガーニッシュの関係は、車両全体の意匠性を考慮して設定される。例えば、車両を正面から見て、グリルガーニッシュはラジエータグリルから食み出ない大きさに設定されることが多い。つまり、ラジエータグリルに有している固定部において、一対の板部材の間隔は、ラジエータグリルの機能性や意匠性を考慮して設定される。固定部の一対の板部材の間隔に対して、グリルガーニッシュの幅は同一または小さく設定される。グリルガーニッシュに形成されるボスの形状や大きさは、グリルガーニッシュに合わせて設定される。
【0007】
一対の板部材の間隔に対して、グリルガーニッシュの幅が狭い場合には、車両を正面から見て、各板部材とグリルガーニッシュの縁との間に隙間が生じない工夫が必要である。そうしないと、隙間を通して固定部の取付座が見えてしまう。
【0008】
特許文献1のラジエータグリルは、一対の板部材の各々の前端から後端へ向かって互いに近づきつつ延びる縦板状の一対の繋ぎ板を備えることによって、車両の正面から取付座を目視できない。ところが、板部材に対する繋ぎ板の傾斜角は小さい。そうすると、板部材と繋ぎ板との間の狭い空間(小空間)を樹脂成形するために、この小空間を形成する部分の金型(空間形成部)の厚さを極めて薄くする必要がある。小空間に溶融樹脂を充填するときの金型内の圧力により、空間形成部に大きい負荷がかかる。このままでは、金型の空間形成部の耐久性を確保する上で不利である。
【0009】
これに対し、板部材と繋ぎ板との間の小空間を、樹脂の一体成形によって塞ぐことが考えられる。しかし、これでは無駄な肉厚(駄肉)を設けることになる。駄肉は、成形時の樹脂硬化に伴う収縮によって、ラジエータグリルの意匠面に発生する"ヒケ現象"の要因となり得るので、ラジエータグリルの品質を高める上で不利である。
【0010】
本開示は、車両用カバー装置の品質を高めるとともに、樹脂成形用型の耐久性を確保できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、第1に、互いに間隔を有して対面し合う板状の一対の板部材と、前記一対の板部材同士を繋ぐ取付座と、によって断面H字状に構成された樹脂の一体成形品から成る基材と、前記基材に取り付け可能な装飾品と、を備え、
前記一対の板部材は、各々の一端から互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部を、一体に有しており、
前記装飾品は、前記一対の突出部の先端間に嵌め込み可能な被固定部を一体に有し、
前記被固定部は、前記一対の突出部の前記先端間に嵌め込まれ、且つ、前記取付座に締結部材によって締結されている、車両用カバー装置が提供される。
【0012】
第2に、好ましくは、第1に記載の車両用カバー装置であって、前記被固定部は、前記被固定部の側面から突出した係止部を一体に有しており、前記取付座は、前記被固定部を前記一対の突出部の前記先端間に嵌め込んだ状態で、前記係止部を仮保持することが可能な保持孔を有している。
【0013】
第3に、好ましくは、第1~第2に記載の車両用カバー装置であって、前記装飾品は、断面U字状の帯状を呈しており、前記装飾品の一方端は、前記被固定部を有しており、前記装飾品の他方端は、引っ掛け片を有しており、前記基材は、前記引っ掛け片を掛け止め可能な掛け止め部を有している。
【0014】
本発明によれば、第4に、互いに間隔を有して対面し合う板状の一対の板部材と、前記一対の板部材同士を繋ぐ取付座と、によって断面H字状に構成され、前記一対の板部材の各々の一端から互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部と、前記一対の板部材と前記取付座と前記一対の突出部とによって区画された一対の空間と、前記取付座のうちの前記一対の板部材の板面及び前記取付座の座面に沿う方向の一端から前記一対の突出部側へ延びた延長板と、を含む固定部を備えている、樹脂の一体成形品から成る基材と、
前記基材に取り付け可能な装飾品と、
を含む車両用カバー装置の、前記基材を成形するための樹脂成形用型であって、
前記一対の板部材の板面及び前記取付座の座面に沿う方向へ移動可能であって前記一対の空間を形成するためのスライド型と、前記基材の残りの部分を形成するための固定型及び前記固定型に対して開閉可能な可動型と、を含み、
前記固定型は、前記一対の空間同士を区画する区画面を備えており、
前記スライド型は、スライド基部と、前記スライド基部に設けられて前記一対の空間を形成するための一対の空間成形用突出部と、を有しており、
前記一対の空間成形用突出部は、前記固定型に可動型を型締めした際に前記固定型の前記区画面に当接可能に位置している、樹脂成形用型が提供される。
【0015】
第5に、好ましくは、第4に記載の樹脂成形用型であって、
前記基材の前記延長板は、貫通孔を有しており、
前記スライド型は、前記スライド基部に設けられて前記貫通孔を形成するための孔形成用突出部を有しており、
前記一対の空間成形用突出部は、前記孔形成用突出部よりも長く設定されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両用カバー装置の品質を高めるとともに、樹脂成形用型の耐久性を確保できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例による車両用カバー装置の正面図である。
図2図1の2-2矢視線に沿った断面図である。
図3図1の3-3矢視線に沿った断面図である。
図4図3の4部を拡大した図である。
図5図4の5-5矢視線に沿った断面図である。
図6図5に示されるグリル部材の固定部と装飾品の被固定部とを分解した図である。
図7図7A図4に示されるグリル部材を7A矢視方向から見た図、図7B図4に示されるグリル部材を7B矢視方向から見た図である。
図8図8A図4に示される固定部に対する被固定部の組合せ途中を説明する図、図8B図8Aに示される固定部に対する被固定部の組合せ完了状態を説明する図である。
図9図9A図4に示されるグリル部材を成形する樹脂成形用型のうちの固定部周りを成形する部分の断面図であり、図9B図9Aの9B-9B矢視線に沿った断面図である。
図10図9Aの10-10矢視線に沿った断面図である。
図11図10に示される樹脂成形用型を型開きした状態の断面図である。
図12図11に示される型開き状態の樹脂成形用型の一部を断面した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、左右とは車両に乗車した乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0019】
<実施例>
実施例を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示されるように、車両用カバー装置10は、乗用車等の車両における車体(図示せず)の外部を覆っている。この車両用カバー装置10の一例として、車体の前部を覆う構成について説明する。但し、車両用カバー装置10は、車体の前部を覆う構成に限定されるものではなく、例えば、車体の外部全般や車体の内部(車室を含む)を覆う構成にも適用できる。
【0021】
車両用カバー装置10は、車体の前部に搭載されたラジエータ(図示せず)に走行風を取り入れるための樹脂製のフロントグリル20と、このフロントグリル20の前面20aに配置された複数のガーニッシュ30とを備えている。
【0022】
フロントグリル20は、例えば額縁状の枠21と、この枠21内に配列された複数の縦帯状のグリル部材22とを備えている。図2も参照すると、このグリル部材22は、互いに間隔を有して対面し合う板状の一対の側板23,23と、一対の側板23,23の前端同士を繋ぐ前板24と、によって断面U字状(略U字状を含む)に構成されている。なお、フロントグリル20は、複数の縦帯状のグリル部材22のみの構成に限定されるものではなく、例えば複数の横帯状のグリル部材のみでもよく、また複数の横帯状のバー(図示せず)とを組合せて格子状の構成とすることも可能である。
【0023】
図1図3に示されるように、複数のガーニッシュ30は、例えば各々の縦帯状のグリル部材22の前面22a(前板24の前面24a)に沿って延びる縦帯状の構成であって、前面22aに重なっている。このガーニッシュ30の断面は、グリル部材22の断面と同様にU字状(略U字状を含む)に構成されている。
【0024】
フロントグリル20のことを、適宜「基材20」または「第1カバー体20」ということがある。また、ガーニッシュ30のことを、適宜「装飾品30」または「第2カバー体30」ということがある。
【0025】
次に、基材20に対する装飾品30の取り付け構造について説明する。なお、説明の理解を容易にするために、図5の向きは図2に合わせてある。
【0026】
図4に示されるように、装飾品30は、上部に形成されたボス31を有している。このボス31は、装飾品30の裏面30aから基材20側へ突出している。ボス31の先端面32は平坦面に構成されており、基材20に取り付け可能である。このボス31のことを、適宜「被固定部31」ということがある。
【0027】
図5及び図6に示されるように、基材20の各々のグリル部材22は、各装飾品30の被固定部31を個別に固定するための固定部40を備えている。これらの固定部40は、基材20のグリル部材22に一体に形成されている。詳しく述べると、この固定部40は、互いに間隔D1(図6参照)を有して対面し合う板状の一対の板部材41,41と、一対の板部材41,41同士を繋ぐ板状の取付座42とによって、断面H字状(略H字状を含む)に構成されている。
【0028】
一対の板部材41,41は、例えば図2に示されたグリル部材22を構成している一対の側板23,23によって、兼ねることが可能である。図6に示されるように、各板部材41,41の厚みThは一定(略一定を含む)である。これら一対の板部材41,41は、各々の一端41a,41a(前端41a,41a)から互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部43,43を、一体に有している。各々の突出部43,43の突出量はPaである。一対の突出部43,43の先端43a,43a間(突出面43a,43a間)の離間距離D2は、板部材41,41間の間隔D1と各々の突出部43,43の突出量Pa,Paとの差である。
【0029】
取付座42は、基材20の前面20a(グリル部材22の前面22a)よりも後方に位置している。取付座42の前面42aのことを、適宜「座面42a」ということがある。
【0030】
さらに取付座42は、取付座42の板厚方向に貫通した貫通孔44を有している。この貫通孔44の中心線CLは、取付座42の中央に位置しており、この取付座42の座面42a対して直交している。被固定部31の先端面32は、取付座42の座面42aに重なっている。貫通孔44を挿通したタッピングビス等のネジ部材45(締結部材45)は、被固定部31を取付座42に締結している。
【0031】
さらに固定部40は、一対の板部材41,41と取付座42と一対の突出部43,43とによって区画された一対の空間46,46を有している。
【0032】
固定部40に対する被固定部31の固定手順は、次の通りである(図5参照)。
装飾品30の被固定部31は、固定部40の一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込み可能である。先ず、被固定部31を、基材20の前面20a側から突出部43,43の先端間43a,43aに嵌め込む。次に、被固定部31の先端面32を取付座42の座面42aに重ね合わせる。この結果、装飾品30の基部30aが一対の突出部43,43間に位置するとともに、被固定部31が取付座42の座面42aと一対の突出部43,43との間に位置する。最後に、基材20の裏側からタッピングビス等のネジ部材45(締結部材45)を、取付座42の貫通孔44に挿入して、被固定部31に捩じ込む。これで、固定部40に対する被固定部31の固定作業を完了する。
【0033】
図4図7A及び図7Bに示されるように、固定部40の一対の板部材41,41は、グリル部材22の長手方向(上下方向)に延びている。縦帯状のグリル部材22を裏面側から見て、取付座42は矩形状(略矩形状を含む)に構成されている。矩形状である取付座42は、座面42a(図6参照)の周囲に4つの端42b~42e(縁42b~42e)を有している。
【0034】
矩形状の取付座42の4つの端42b~42eのうち、互いに向かい合う接合用の第1端42b及び第2端42cは、一対の板部材41,41同士を繋いでいる。取付座42の、他の2つの端42d,42e(上側の第3端42d及び下側の第4端42e)は、接合用の第1端42b及び第2端42cに対し交差する方向に位置する。取付座42の、第3端42d及び第4端42eには、グリル部材22の前板24の裏面24bへ向かって各々延びた板状の壁板47,48が、一体に形成されている。一対の壁板47,48は、取付座42の一部を構成している。
【0035】
図4に示されるように基材20を幅方向から見て、取付座42は、前側を開放したU字状に構成されている。これらの壁板47,48は、前板24にも一体化されている。一対の壁板47,48のうち、上側の壁板47を「第1壁板47」といい、下側の壁板48を「第2壁板48」または「延長板48」ということがある。言い換えると、図6及び図7Aに示されるように延長板48は、取付座42のうちの一対の板部材41,41の板面41b,41b(内側面41b,41b)及び取付座42の座面42aに沿う方向(矢印R1方向)の一端42eから一対の突出部43,43側へ延びている。
【0036】
第1壁板47の内壁面47aは、貫通孔44の中心線CLに対して平行(略平行を含む)である。第2壁板48は、取付座42に連なるストレート板51と、このストレート板51の先端に連なる傾斜板52とによって構成されている。ストレート板51の内壁面51aは、第1壁板47の内壁面47aに対して、向かい合い且つ平行(略平行を含む)である。ストレート板51は、板厚を貫通した矩形状の貫通孔53を有している。この貫通孔53のことを、適宜「保持孔53」ということがある。傾斜板52は、ストレート板51の先端から、第1壁板47とは離反する方向へ傾きつつ、前板24の裏面24bへ向かって延びている。
【0037】
第2壁板48(延長板48)についてまとめると、次の通りである。この第2壁板48は、取付座42の4つの端42b~42eのうち、一対の板部材41,41同士を繋いでいる接合用の端42b,42c(第1端42b及び第2端42c)に対し交差する方向の端42e(第4端42e)から一対の突出部43,43側(装飾品30側)へ延びている。この第2壁板48は、貫通孔53(保持孔53)を有している。
【0038】
図4に示されるように、被固定部31は装飾品30の上端部に位置している。この被固定部31が取付座42に締結された状態では、被固定部31の上面31a(一端面31a)は第1壁板47の内壁面47aに接しており、被固定部31の下面31b(他端面31b)は第2壁板48のストレート板51の内壁面51aに対して離間している。
【0039】
さらに被固定部31は、第2壁板48に向かい合う下面31bから突出した係止部33を一体に有している。図5も参照すると、被固定部31を一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込んだ状態で、係止部33の先端部分は保持孔53に嵌っている。被固定部31の上面31aが第1壁板47の内壁面47aに接している状態では、係止部33の先端部分が保持孔53に嵌っている嵌り量(嵌合深さ)は、先端部分が保持孔53から抜け出ない微小な値に設定されている。係止部33の先端部分が保持孔53に嵌っているので、固定部40に対して被固定部31を締結する前に、保持孔53の縁に対して係止部33を仮保持することが可能である。
【0040】
図3に示されるように、装飾品30は、下端30bに形成された引っ掛け片61と、上端30cに形成された挿入片62とを有している。引っ掛け片61は、装飾品30の下端30bから後下方(基材20側)へ延びた断面L字状(略L字状を含む)の構成である。この引っ掛け片61の下端面61aは、段差状(凹状)の構成である。挿入片62は、上端から後方(基材20側)へ水平に延びた横板状の片である。言い換えると、装飾品30の一方端30c(上端30c)は、被固定部31と挿入片62とを有している。装飾品30の他方端30b(下端30b)は、引っ掛け片61を有している。被固定部31は、挿入片62寄りに位置している。
【0041】
一方、基材20は、引っ掛け片61を掛け止め可能な掛け止め部63と、挿入片62を挿入可能な水平な凹部64とを有している。掛け止め部63は、例えば基材20に形成された貫通孔の構成であって、基材20を前後方向に貫通している。この貫通孔63(掛け止め部63)の下側の縁63aは、段差状の構成である。貫通孔63の下側の縁63aと引っ掛け片61の下端面61aの、両方を段差状の構成とすることによって、前後方向への互いの位置ズレを規制することができる。
【0042】
グリル部材22に対して装飾品30を組み付ける手順は、次の通りである(図3参照)。先ず、装飾品30の上端30cを基材20の前方へ傾けつつ、装飾品30の下端30bに有る引っ掛け片61を、基材20の掛け止め部63に掛ける。
【0043】
次に、図8Aに示されるように、装飾品30の上部を基材20側へ起こしつつ、被固定部31を取付座42の座面42a方向(矢印R11方向)に押し込む。このときに、係止部33の先端は、傾斜している傾斜板52の内壁面52aに案内されて、持ち上がる(矢印R12方向へ変位する)。被固定部31が第1壁板47の内壁面47aに当たった後に、さらに被固定部31を押し込むと、その押し込み力によって、係止部33の先端が第2壁板48を下方(矢印R13方向)へ弾性変形させる。この結果、図8Bに示されるように、係止部33の先端が保持孔53に嵌る。これで、係止部33は保持孔53の縁に対して仮保持される。
【0044】
最後に、被固定部31の先端面32を取付座42の座面42aに重ね合わせ、締結部材45によって被固定部31を取付座42に締結する。締結した結果は図4に示される。これで、グリル部材22に対する装飾品30の組み付け作業を完了する。
【0045】
次に、図9A図12を参照しつつ、基材20を樹脂成形するための樹脂成形用型100について説明する。
【0046】
図9A図9B及び図10に示されるように、樹脂成形用型100は、固定型110と、この固定型110に対して開閉可能な可動型120と、この可動型120の開閉方向に対して異なる方向にスライド可能なスライド型130とを含む。
【0047】
固定型110は、雌型(キャビティ)を構成しており、主に図1に示される基材20の前面20aを成形する成形面111を有している。詳しく述べると、この固定型110の成形面111は、主に図11に示される一対の板部材41,41の外側面41c,41c、一対の突出部43,43の外側面43b,43b(下面43b,43b)、取付座42の座面42aを成形するための部位である。成形面111のうちの、底面112は、突出部43,43の外側面43b,43bを成形するための部位である。
【0048】
さらに固定型110は、底面112から開口端面113へ向かって延びた延出部114を備えている。この延出部114の先端面114aは、取付座42の座面42aを成形する面であって、平面視矩形状(略矩形状を含む)の構成である。
【0049】
延出部114の各側面114b~114eのうち、相対する第1側面114b及び第2側面114cは、突出部43,43の突出面43a,43aを成形する面であるとともに、一対の空間46,46同士(図6参照)を区画する区画面である。延出部114の第1側面114b及び第2側面114cのことを、適宜「区画面114b,114c」ということがある。延出部114の各側面114b~114eのうち、第1側面114b及び第2側面114cに交差する第3側面114dは、固定部40の第1壁板47(図4参照)の内側面47aを成形する面である。また、延出部114の各側面114b~114eのうち、第3側面114dに相対する第4側面114eは、固定部40の第2壁板48(図8A参照)の内側面48aを成形する面である。
【0050】
可動型120は、雄型(コア)を構成しており、主に基材20の背面を成形する成形面121を有している。この可動型120は、固定型110の開口端面113に対して開閉可能である。詳しく述べると、この可動型120の成形面121は固定型110と協働して、主に図6及び図11に示される一対の板部材41,41の内側面41b,41bの一部と、取付座42とを成形するための部位である。
【0051】
スライド型130は、主に基材20の内部を成形する成形面131を有しており、固定型110の延出部114の第4側面114eに対して接近、離反する方向(図9Aの矢印R21方向)にスライド可能である。スライド型130の作動方式は、可動型120の動作に対して連動する連動方式、または可動型120の動作に対して独立して動作する独立作動方式を採用している。好ましくは連動方式である。
【0052】
詳しく述べると、スライド型130は、固定部40の第2壁板48の外側面48b(図8A参照)及び貫通孔53(保持孔53)、一対の空間46,46(図6参照)を成形することが可能である。図12に示されるように、例えばスライド型130は、矢印R21方向にスライド可能なスライド基部132と、このスライド基部132に設けられた一対の空間成形用突出部133,133とを有した、いわゆるフォーク状の構成である。
【0053】
スライド基部132は、第2壁板48の外壁面48b(図8A参照)を成形するための基部先端面132aと、第2壁板48に有する貫通孔53(図8A参照)を成形するための孔成形用突出部132bとを備えている。基部先端面132aは、延出部114の第4側面114eに向かい合っている。一対の空間成形用突出部133,133は、一対の空間46,46(図6参照)を成形するための部分であって、基部先端面132aから固定型110へ向かって延びている。孔成形用突出部132bが延出部114の第4側面114eに接することによって、固定型110に対するスライド型130の嵌め込み位置(セット位置)が決まる。延出部114の第4側面114eとスライド基部132の基部先端面132aとの間の空間によって、第2壁板48を樹脂成形することができる。
【0054】
基部先端面132aに対し、一対の空間成形用突出部133,133は、孔成形用突出部132bよりも長く設定されている。図9Bに示されるように、一対の空間成形用突出部133,133の互いに向かい合う対向面133a,133aは、固定型110に対してスライド型130がセットされた際(型締めされた際)に、延出部114の第1側面114b及び第2側面114cに当接可能(密接可能)に位置している。このため、第1側面114b及び第2側面114cと対向面133a,133aとの間には、溶融樹脂の流入が規制される。好ましくは、図9Bに示されるように、第1側面114b及び第2側面114cと対向面133a,133aは、固定型110に対するスライド型130の嵌め込み方向に末広がり状のテーパ面とされる。これにより、溶融樹脂の流入規制の効果を高めることである。
【0055】
このように、固定型110及び可動型120は、基材20のうちの一対の空間46,46及び延長板48(第2壁板48)の内側面48aを除いた残りの部分を成形することが可能である。
【0056】
基材20(固定部40)を成形する方法は、次の通りである。
先ず、図10に示されるように、固定型110に対して可動型120及びスライド型130を型締めする。次に、固定型110と可動型120とスライド型130とによって成形用型に形成された空洞部140に、溶融樹脂を充填する。次に、溶融樹脂が固まった後に、図11に示されるように、固定型110に対して可動型120及びスライド型130を開いて、空洞部140から樹脂成形された基材20(固定部40)を取り出す。これで、基材20の成形作業を完了する。
【0057】
上記実施例の説明をまとめると、次の通りである。
【0058】
図5及び図6に示されるように、車両用カバー装置10は、互いに間隔D1を有して対面し合う板状の一対の板部材41,41と、一対の板部材41,41同士を繋ぐ取付座42と、によって断面H字状に構成された樹脂の一体成形品から成る基材20(第1カバー体20)と、この基材20に取り付け可能な装飾品30(第2カバー体30)と、を備えている。一対の板部材41,41は、各々の一端41a,41aから互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部43,43を、一体に有している。装飾品30は、一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込み可能な被固定部31(ボス31)を一体に有している。被固定部31は、一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込まれ、且つ、取付座42に締結部材45によって締結されている。
【0059】
このように、基材20は、断面H字状の構成であって、一対の板部材41,41の各一端41a,41aから互いに向かい合う方向へ、板状の一対の突出部43,43を突出している。装飾品30の被固定部31は、各突出部43,43の先端43a,43a間(突出面43a,43a間)に嵌め込まれて、取付座42に締結可能である。このため、一対の板部材41,41間の間隔D1に対して、装飾品30の幅Wdが狭いのに、その差を、一対の突出部43,43の突出量Pa,Paによって解消することができる。車両用カバー装置10を正面から見たときに、取付座42を視認できないように各々の突出部43,43によって目隠しをすることができる。しかも、断面H字状の基材20において、一対の板部材の厚みThを一定にすることができるので、基材20に無駄な肉厚(駄肉)を設ける必要もない。樹脂成形のときに、基材20の意匠面に"ヒケ現象"の発生を防止できる。このため、車両用カバー装置10の品質を高めることができる。
【0060】
加えて、基材20は、断面H字状の構成の各一端41a,41aから互いに向かい合う方向へ、板状の一対の突出部43,43を突出する構成なので、狭い空間(小空間)を形成するために、金型(空間形成部)の厚さを極めて薄くする必要はない。このため、取付座42の強度を確保しつつ、樹脂成形用型100の耐久性を確保できる。しかも、一対の板部材41,41間の間隔D1を大きく設定する必要もない。よって、細い装飾品30が設定でき、設計自由度が向上できる。
【0061】
このように、車両用カバー装置10の品質を高めるとともに、樹脂成形用型100の耐久性を確保できる。
【0062】
さらには、図4及び図5に示されるように、被固定部31は、この被固定部31の側面31b(下面31b)から突出した係止部33を一体に有している。取付座42は、被固定部31を一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込んだ状態で、係止部33を仮保持することが可能な保持孔53(貫通孔53)を有している。このため、被固定部31を、一対の突出部43,43の先端43a,43a間に嵌め込んでから取付座42に締結し終わるまで、被固定部31の係止部33を保持孔53に仮保持することができる。従って、被固定部31を取付座42に締結部材45によって締結する、締結作業が容易である。
【0063】
さらには、図2図4に示されるように、装飾品30は、断面U字状の帯状を呈している。装飾品30の一方端30c(上端30c)は、被固定部31を有している。装飾品30の他方端30b(下端30b)は、引っ掛け片61を有している。基材20は、引っ掛け片61を掛け止め可能な掛け止め部63を有している。このため、装飾品30を基材20に組み付けるのに、被固定部31から離れて位置している引っ掛け片61を掛け止め部63に掛け止めるとともに、被固定部31を取付座42に締結部材45によって締結すればよい。被固定部31を取付座42に締結する箇所が少なくてすむので、組み付け作業が容易である。
【0064】
さらには、図3図9A及び図9Bに示されるように、樹脂成形用型100は、樹脂の一体成形品から成る基材20と、この基材20に取り付け可能な装飾品30と、を含む車両用カバー装置10の、基材20を成形するためのものである。
【0065】
図4及び図5に示されるように、基材20は樹脂の一体成形品から成り、固定部40を備えている。この固定部40は、互いに間隔を有して対面し合う板状の一対の板部材41,41と、一対の板部材41,41同士を繋ぐ取付座42と、によって断面H字状に構成されている。さらに固定部40は、一対の板部材41,41の各々の一端41a,41a(前端41a,41a)から互いに向かい合う方向へ突出した板状の一対の突出部43,43と、一対の板部材41,41と取付座42と一対の突出部43,43とによって区画された、一対の空間46,46(図6参照)とを含む。
【0066】
図4及び図7Aに示されるように、さらに固定部40は、取付座42のうちの一対の板部材41,41の板面41b,41b(内側面41b,41b)及び取付座42の座面42aに沿う方向(図7Aに示す矢印R1方向)の一端42e(第4端42e)から一対の突出部43,43側へ延びた延長板48を含む。
【0067】
図4図6図9A及び図9Bに示されるように、樹脂成形用型100は、一対の板部材41,41の板面41b,41b及び取付座42の座面42aに沿う方向(図7Aに示す矢印R1方向)へ移動可能であって一対の空間46,46(図6参照)を形成するためのスライド型130と、基材20の残りの部分を形成するための固定型110及びこの固定型110に対して開閉可能な可動型120と、を含む。固定型110は、一対の空間46,46同士を区画する区画面114b,114c(延出部114の第1側面114b及び第2側面114c)を備えている。スライド型130は、スライド基部132と、このスライド基部132に設けられて一対の空間46,46(図6参照)を形成(成形)するための一対の空間成形用突出部133,133と、を有している。一対の空間成形用突出部133,133は、固定型110に可動型120を型締めした際に固定型110の区画面114b,114cに当接可能に位置している。
【0068】
このように、一対の板部材41,41と取付座42と一対の突出部43,43とによって区画された一対の空間46,46を成形するのに、スライド型130の一対の空間成形用突出部133,133を固定型110内にスライドさせて嵌め込むことによって達成している。固定型110と可動型120とスライド型130とを巧みに組み合わせることによって、断面H字状の基材20における一対の板部材41,41の厚みThを、一定にすることができるので、基材20に無駄な肉厚(駄肉)を設ける必要もない。樹脂成形のときに、基材20の意匠面に"ヒケ現象"の発生を防止できる。このため、車両用カバー装置10の品質を高めることができる。
【0069】
加えて、断面H字状の構成の各一端41a,41aから互いに向かい合う方向へ、板状の一対の突出部43,43を突出するように、固定型110と可動型120とスライド型130とによって区画された一対の空間46,46を成形(形成)している。このため、狭い空間(小空間)を形成するために、金型(空間形成部)の厚さを極めて薄くする必要はない。このため、樹脂成形用型100の耐久性を確保できる。
【0070】
このように、車両用カバー装置10の品質を高めるとともに、樹脂成形用金型100の耐久性を確保できる。
【0071】
さらには、図4及び図7Aに示されるように、基材20の延長板48は、貫通孔53(保持孔53)を有している。さらには、図9A及び図9Bに示されるように、樹脂成形用型100のスライド型130は、スライド基部132に設けられて貫通孔53(図4参照)を形成するための孔成形用突出部132bを有している。一対の空間成形用突出部133,133は、孔成形用突出部132bよりも長く設定されている。
【0072】
上述のように、一対の空間46,46は、取付座42の座面42aの真下(座面42aの投影上)に有している。これに対し、延長板48は、取付座42の座面42aに沿う方向の一端42eに位置している。つまり、空間46,46の位置に対して、延長板48と貫通孔53の位置は、座面42aに沿う方向へ偏っている。
【0073】
本発明のスライド型130は、この偏りを巧みに利用したものである。つまり、スライド基部132に対する、各空間成形用突出部133,133の長さは、孔成形用突出部132bよりも長く設定されている。スライド型130を固定型110内にスライドさせて嵌め込むときに、空間成形用突出部133,133は孔成形用突出部132bよりも先に固定型110内に嵌め込まれる。
【0074】
このため、空間成形用突出部133,133が空間46,46を形成するための位置までスライドしたときには、孔成形用突出部132bが貫通孔53を形成するための位置にスライドし終わるように、両者132b,133の長さを適切に設定することが可能である。従って、空間46,46と貫通孔53とを成形するのに、単一のスライド型130を準備すればよい。樹脂成形用型100の構成を簡略化できる。
【0075】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
例えば、車両用カバー装置10は、車体の前部を覆う構成に限定されるものではなく、他の部位を覆う構成であってもよい。例えば、車両用カバー装置10は、車体の外部全般や車体の内部(車室を含む)を覆う構成にも適用できる。
また、車両用カバー装置10は、乗用車に備える構成を例示したが、乗用車以外の車両にも適用可能であり、これらの形式のものに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の車両用カバー装置10は、乗用車の前部に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0077】
10 車両用カバー装置
20 基材(第1カバー体、フロントグリル)
30 装飾品(第2カバー体、ガーニッシュ)
30b 装飾品の他方端(下端)
30c 装飾品の一方端(上端)
31 被固定部(ボス)
33 係止部
41 板部材
41a 板部材の一端
41b 板部材の板面
42 取付座
42a 取付座の座面
42e 取付座の一端(第4端)
43 突出部
43a 突出部の先端
45 締結部材
46 空間
48 延長板
53 保持孔(貫通孔)
61 引っ掛け片
63 掛け止め部
100 樹脂成形用型
110 固定型
114b 区画面(延出部の第1側面)
114c 区画面(延出部の第2側面)
120 可動型
130 スライド型
132 スライド基部
132b 孔成形用突出部
133 空間成形用突出部
D1 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12