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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153119
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】熱交換器および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20251002BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20251002BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20251002BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28F1/02 B
F28D1/053 A
F25B39/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024055423
(22)【出願日】2024-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政利
(72)【発明者】
【氏名】土畠 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 紘平
(72)【発明者】
【氏名】岡 孝多郎
(72)【発明者】
【氏名】田下 奈穂
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
(57)【要約】
【課題】蒸発器として機能する熱交換器の蒸発性能を向上させる。
【解決手段】室外熱交換器1の膨張弁側ヘッダ21は、ヘッダ長手方向25における一端部41の側から他端部42の側へと冷媒を流す第1流路57と、他端部42の側から一端部41の側へと冷媒を流す第2流路58と、他端部42の側において第1流路57から第2流路58へと冷媒を流す第1折返し流路51と、一端部41の側において第2流路58から第1流路57へと冷媒を流す第2折返し流路52と、冷媒が流入する流入空間43から第1流路57の一端部41の側に冷媒を流入させる流入口61とを有し、第1流路57は、複数の伝熱管23を介して圧縮機側ヘッダ22に連通し、第1流路57は、室外熱交換器1が蒸発器として機能するときに、複数の伝熱管23のうち流入空間43から最も遠い位置にある伝熱管から圧縮機側ヘッダ22に流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管と、
第1ヘッダと、
第2ヘッダとを備え、
前記第1ヘッダは、
前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、
前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、
前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、
前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、
冷媒が流入する流入空間と、
前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、
前記第1流路は、前記複数の伝熱管を介して前記第2ヘッダに連通している熱交換器であって、
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに前記複数の伝熱管のうち前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成される
熱交換器。
【請求項2】
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに冷媒が前記流入空間から前記第1流路に単位時間あたりに流入する流量の最小値に基づいて、前記第1流路の流路断面積が決定される
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記複数の伝熱管より前記流入空間に近い位置にある流入空間側伝熱管をさらに備え、
前記第1ヘッダは、
前記流入空間側伝熱管の一端が配置される流入空間側差込空間と、
前記流入空間を前記流入空間側差込空間に連通させる流入空間側導入流路とをさらに有し、
前記流入空間から前記流入空間側導入流路を介して前記流入空間側差込空間に流入した冷媒は、前記流入空間側伝熱管を介して前記第2ヘッダに流れ、
前記流入空間側差込空間は、前記流入空間側差込空間を流れる冷媒が前記流入空間側差込空間から受ける第1流路抵抗に前記複数の伝熱管の本数を乗算して算出される目標抵抗に、前記第1流路を流れる冷媒が前記第1流路から受ける第2流路抵抗が等しくなるように、形成される
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1流路抵抗を調整する抵抗調整部
をさらに備える請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
熱交換器により熱交換された冷媒を圧縮機が圧縮することにより冷媒回路に冷媒を循環させる冷凍サイクル装置であり、
前記熱交換器は、
複数の伝熱管と、
第1ヘッダと、
第2ヘッダとを備え、
前記第1ヘッダは、
前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、
前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、
前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、
前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、
冷媒が流入する流入空間と、
前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するとき、かつ、前記冷媒回路を流れる冷媒量が最小量であるときに、前記複数の伝熱管のうちの前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成される
冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機は、圧縮機回転数に対応する流量の冷媒を前記冷媒回路に循環させ、
前記第1流路は、前記圧縮機回転数が最小回転数であるときに前記過熱度が0度になるように、形成される
請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、熱交換器および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気と冷媒を熱交換する熱交換器として、気液二相冷媒を複数の伝熱管に分流させるヘッダを備える熱交換器が知られている(特許文献1)。ヘッダの内部では、複数の伝熱管の一端がそれぞれ配置される複数の差込空間に循環流路が連通されている。循環流路は、第1流路と、第2流路と、第1流路の上端を第2流路の上端に連通させる第1折返し流路と、第2流路の下端を第1流路の下端に連通させる第2折返し流路とを含んでいる。ヘッダに流入した気液二相冷媒は、第1流路を上昇し、第1折返し流路を介して第1流路の上端から第2流路の上端に流入し、第2流路を下降し、第2折返し流路を介して第2流路の下端から第1流路の下端に流入するように、循環流路を循環する。このような熱交換器は、ヘッダに流入した気液二相冷媒を循環流路に循環させることにより、第1流路の上部に冷媒が滞留することを防止することができ、複数の伝熱管にそれぞれ流れる冷媒の流量が互いに等しくなるように、気液二相冷媒を複数の伝熱管に適切に分流することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-056544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような熱交換器では、気液二相冷媒が循環流路を循環する流量が小さいときに、液冷媒が第1流路を上昇できずに、複数の伝熱管のうちの上方の伝熱管に流入する液冷媒の割合が低下することがある。複数の伝熱管に流入する液冷媒の量にばらつきが生じている場合に、流れる液冷媒が少ない上方の伝熱管では、伝熱管を流れる途中で液冷媒の全部が蒸発してしまう。一方、流れる液冷媒が多い下方の伝熱管では、伝熱管を流れる間に液冷媒が全て蒸発せずに液冷媒が伝熱管から流出する。このように途中で全ての液冷媒が蒸発する伝熱管や蒸発しきらない液冷媒が流出する伝熱管がある状態では、蒸発器として熱交換器が機能する際の蒸発性能が低下するという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、蒸発器として機能する熱交換器の蒸発性能を向上させる熱交換器および冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による熱交換器は、複数の伝熱管と、第1ヘッダと、第2ヘッダとを備え、前記第1ヘッダは、前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、冷媒が流入する流入空間と、前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、前記第1流路は、前記複数の伝熱管を介して前記第2ヘッダに連通している熱交換器であって、前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに前記複数の伝熱管のうち前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の熱交換器および冷凍サイクル装置は、蒸発器として機能する熱交換器の蒸発性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例の熱交換器が設けられている空気調和機を示す冷媒回路図である。
図2図2は、実施例の熱交換器を示す正面図である。
図3図3は、実施例の熱交換器を示す上面図である。
図4図4は、実施例の熱交換器の伝熱管を示す断面図である。
図5図5は、実施例の熱交換器の膨張弁側ヘッダの内部構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる熱交換器および冷凍サイクル装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
実施例の熱交換器は、図1に示されているように、空気調和機10に設けられている室外熱交換器1である。図1は、実施例の室外熱交換器1が設けられている空気調和機10の冷媒回路図である。空気調和機10は、室外機2と室内機3とを備えている。室外機2は、屋外に設置されている。室内機3は、屋内の部屋の内部に設置されている。
【0011】
空気調和機10は、冷媒回路4(冷凍サイクル装置)を備えている。冷媒回路4は、圧縮機5と四方弁6と室内熱交換器7と膨張弁8と室外熱交換器1を備えている。圧縮機5は、室外機2の内部に配置されている。圧縮機5には、吸入管11と吐出管12とが接続されている。圧縮機5は、吸入管11に供給される冷媒を圧縮し、圧縮機回転数に対応する流量の冷媒を吐出管12に吐出する。単位時間あたりに圧縮機5が吐出管12に吐出する冷媒の流量は、圧縮機回転数が大きいほど大きい。
【0012】
四方弁6は、室外機2の内部に配置されている。四方弁6は、吸入管11と吐出管12とに接続され、冷媒配管14を介して室外熱交換器1に接続され、冷媒配管15を介して室内熱交換器7に接続されている。四方弁6は、冷媒回路4を暖房サイクルまたは冷房サイクルに切り替える。冷媒回路4が暖房サイクルに切り替えられているときは、吐出管12は四方弁6を介して室内熱交換器7に接続され、吸入管11は四方弁6を介して室外熱交換器1に接続される。冷媒回路4が冷房サイクルに切り替えられているときは、吐出管12は四方弁6を介して室外熱交換器1に接続され、吸入管11は四方弁6を介して室内熱交換器7に接続される。
【0013】
室内熱交換器7は、室内機3の内部に配置されている。室内熱交換器7は、一方の冷媒出入口が冷媒配管16を介して膨張弁8に接続され、他方の冷媒出入口が上述したように冷媒配管15を介して四方弁6に接続されている。室内機3は、図示しないファンを回転させることで、室内機3が設置された部屋の空気を室内熱交換器7に通過させて冷媒と熱交換を行わせ、冷媒と熱交換した空気を部屋に吹き出す。膨張弁8は、室外機2の内部に配置されている。膨張弁8は、冷媒配管17を介して室外熱交換器1に接続されている。空気調和機10は、膨張弁8の開度を調整することで、室内機3で要求される空調能力に応じて室内熱交換器7を流れる冷媒量を調整する。
【0014】
室外機2は、室外ファン18を備えている。室外ファン18は、室外機2の内部に配置されている。室外ファン18は、室外機2の内部のうちの通風空間19に空気が流れるように、屋外の空気を送風する。室外ファン18により空気が流れる通風方向20は、室外機2が適切に設置されているときに、概ね水平である。室外熱交換器1は、通風空間19を流れる空気が室外熱交換器1を通過するように室外機2の内部に配置され、室外機2に固定されている。室外熱交換器1は、室外熱交換器1を流れる冷媒と、通風空間19を流れる空気とを熱交換する。
【0015】
図2は、実施例の室外熱交換器1を示す正面図である。室外熱交換器1は、膨張弁側ヘッダ21(第1ヘッダ)と圧縮機側ヘッダ22(第2ヘッダ)と複数の伝熱管23と複数のフィン24とを備えている。膨張弁側ヘッダ21は柱体状に形成されており、膨張弁側ヘッダ21の延在方向であるヘッダ長手方向25(長手方向)が図示しない室外機2の底面に対し垂直となるように配置され、室外機2に固定されている。膨張弁側ヘッダ21には、冷媒配管17が接続され、冷媒配管17を介して膨張弁8が接続されている。
【0016】
圧縮機側ヘッダ22は、柱体状に形成され、圧縮機側ヘッダ22の延在方向がヘッダ長手方向25に平行となるように配置され、室外機2に固定されている。圧縮機側ヘッダ22の内部には、分流空間が形成されている。圧縮機側ヘッダ22には、冷媒配管14を介して四方弁6が分流空間に接続されるように、冷媒配管14が接続されている。
【0017】
複数の伝熱管23は、図2および図3に示すように伝熱管の延在方向である伝熱管長手方向26がヘッダ長手方向25と直交するように配置され、ヘッダ長手方向25に等間隔に並んでいる。複数の伝熱管23のそれぞれの一端は、膨張弁側ヘッダ21に接続されている。複数の伝熱管23のそれぞれの他端は、圧縮機側ヘッダ22に接続されている。複数の伝熱管23は、複数の伝熱管23の両端が膨張弁側ヘッダ21と圧縮機側ヘッダ22とにそれぞれ接続されることにより、膨張弁側ヘッダ21と圧縮機側ヘッダ22とに固定され、室外熱交換器1は膨張弁側ヘッダ21と圧縮機側ヘッダ22により室外機2に固定されている。
【0018】
複数のフィン24は、それぞれ、平板状に形成されている。図3は、実施例の室外熱交換器1を示す上面図である。複数のフィン24は、伝熱管長手方向26に垂直(通風方向20に平行)となるように配置され、伝熱管長手方向26に等間隔に並んでいる。複数のフィン24は複数の伝熱管23に熱的に接続されるように固定されている。
【0019】
複数の伝熱管23の各々は、図4に示されているように、扁平形状に形成されている。図4は、実施例の室外熱交換器1の伝熱管23の断面図である。伝熱管23の内部には、通風方向20に並ぶ複数の流路33が形成されている。複数の流路33は、複数の伝熱管23の他端が圧縮機側ヘッダ22に接続されることにより、圧縮機側ヘッダ22の分流空間に接続されている。
【0020】
図5は、実施例の室外熱交換器1の膨張弁側ヘッダ21の内部構造を示す分解斜視図である。膨張弁側ヘッダ21は、形状が同じ長方形状とされた複数の板状部材71~76を備えている。複数の板状部材71~76は、積層されて互いに接合されており、積層方向は伝熱管長手方向26に概ね平行である。複数の板状部材71~76は、冷媒配管側板状部材71と伝熱管側板状部材72と複数の循環流路用板状部材73と複数の折返流路用板状部材74と複数の差込空間用板状部材75と導入孔用板状部材76とを含んでいる。図5に示すように、各板状部材は導入方向48(室外熱交換器1が蒸発器として機能する際に室外熱交換器1において冷媒が流れる方向)の上流側から下流側に向かって、冷媒配管側板状部材71、複数の折返流路用板状部材74、複数の循環流路用板状部材73、導入孔用板状部材76、複数の差込空間用板状部材75、伝熱管側板状部材72の順に重ねられている。なお、以下の説明では、複数の板状部材71~76で形成される複数の折返流路用板状部材74と複数の循環流路用板状部材73と複数の差込空間用板状部材75について、複数の板状部材71~76が接合されたものを示す際は「複数の」を省略して記載する場合がある。
【0021】
各循環流路用板状部材73は、形状が互いに等しくなるように(本実施例では、図5に示す3枚の循環流路用板状部材73が同じ形状となるように)形成されている。折返流路用板状部材74は、循環流路用板状部材73と冷媒配管側板状部材71との間に配置されている。各差込空間用板状部材75は、形状が互いに等しくなるように(本実施例では、図5に示す3枚の差込空間用板状部材75が同じ形状となるように)、形成されている。差込空間用板状部材75は、導入孔用板状部材76と伝熱管側板状部材72との間に配置されている。導入孔用板状部材76は、循環流路用板状部材73と差込空間用板状部材75の間に配置されている。
【0022】
なお、以下の説明では、膨張弁側ヘッダ21のうちのヘッダ長手方向25における下端部の端面を一端部41とし、膨張弁側ヘッダ21のうちの一端部41の反対側である上端部の端面を他端部42とする。
【0023】
以上に説明した各板状部材を導入方向48の上流側から下流側に向かって、冷媒配管側板状部材71、折返流路用板状部材74、循環流路用板状部材73、導入孔用板状部材76、差込空間用板状部材75、伝熱管側板状部材72の順に積層して膨張弁側ヘッダ21を形成することで、膨張弁側ヘッダ21の内部に、流入空間43と冷媒配管貫通孔44と循環流路45と流入口61と複数の差込空間46と複数の伝熱管貫通孔47と複数の導入孔62とが形成される。流入空間43は、膨張弁側ヘッダ21の内部のうちの一端部41に近い領域に配置されている。流入空間43は、各循環流路用板状部材73に形成されている流入空間用孔83から形成されている。
【0024】
冷媒配管貫通孔44は、冷媒配管側板状部材71に形成される冷媒配管用孔77と、折返流路用板状部材74に形成される冷媒配管用孔78とから形成されている。このため、冷媒配管貫通孔44は、流入空間43の導入方向48の上流側に配置されている。冷媒配管17は、冷媒配管貫通孔44を貫通しており、流入空間43が冷媒配管17を介して膨張弁8に接続されている。
【0025】
循環流路45は循環流路用板状部材73と折返流路用板状部材74とで形成され、第1流路57と第2流路58と第1折返し流路51と第2折返し流路52とを備えている。第1流路57は、複数の循環流路用板状部材73に形成されている第1流路用孔84から形成されている。第2流路58は、複数の循環流路用板状部材73に形成されている第2流路用孔85から形成されている。このため、第1流路57と第2流路58とは、流入空間43とヘッダ長手方向25に並び、流入空間43の上側に配置されている。第1流路57は、ヘッダ長手方向25に平行である直線に沿って形成されている。第2流路58は、通風方向20において第1流路57の風上側に配置され、ヘッダ長手方向25に平行である他の直線に沿って形成されている。
【0026】
第1折返し流路51は、複数の折返流路用板状部材74に形成されている第1折返し流路用孔81から形成されており、第1流路57を流れる冷媒を第2流路58へと折り返す、すなわち、第1折返し流路51を冷媒が流れる方向は、導入方向48に垂直であり、通風方向20に平行である。第2折返し流路52は、複数の折返流路用板状部材74に形成されている第2折返し流路用孔82から形成されており、第2流路58を流れる冷媒を第1流路57に折り返す、すなわち、第2折返し流路52を冷媒が流れる方向は、導入方向48に垂直であり、通風方向20に平行である。このため、第1折返し流路51と第2折返し流路52とは、ヘッダ長手方向25に並び、第1流路57と第2流路58との導入方向48の上流側に配置されている。第1折返し流路51は、他端部42に近い領域に形成され、第1流路57の上端部と第2流路58の上端部とに接続されている。第2折返し流路52は、一端部41に近い下側領域に形成され、第1流路57の下端部と第2流路58の下端部とに接続されている。
【0027】
流入口61は、複数の循環流路用板状部材73に形成されている流入口用孔86から形成されている。このため、流入口61は、流入空間43と第1流路57との間に配置されており、流入口61に流入した冷媒が流入口61を介して第1流路57へと流れる。
【0028】
複数の差込空間46は、複数の差込空間用板状部材75に形成される複数の差込空間用孔87が連通されることで形成されている。このため、複数の差込空間46は、流入空間43と循環流路45とが配置される領域から見て導入方向48の下流側に配置され、ヘッダ長手方向25に並んでいる。複数の差込空間46の容積は、互いに概ね等しい。
【0029】
複数の導入孔62は、導入孔用板状部材76に形成されている。このため、複数の導入孔62は、ヘッダ長手方向25に並び、第1流路57と複数の差込空間46との間にそれぞれ配置されている。複数の差込空間46と第1流路57とが複数の導入孔62によって接続されている。
【0030】
複数の伝熱管貫通孔47は、伝熱管側板状部材72に形成されている。このため、複数の伝熱管貫通孔47は、複数の差込空間46から見て導入方向48の下流側に配置され、等間隔にヘッダ長手方向25に並んでいる。複数の差込空間46は、複数の伝熱管貫通孔47をそれぞれ介して各伝熱管23に接続されている。
【0031】
膨張弁側ヘッダ21は、流入空間側差込空間53と流入空間側導入流路64と流入空間側貫通孔54とを有している。流入空間側差込空間53は、各差込空間用板状部材75のヘッダ長手方向25における最下段に形成される最下段差込空間用孔から形成されている。このため、流入空間側差込空間53は複数の差込空間46のうちのヘッダ長手方向25における最下段となり、かつ、導入方向48における流入空間43の下流側に配置される。流入空間側導入流路64は、複数の導入孔62のうちヘッダ長手方向25における最下方に形成され、かつ、導入方向48において流入空間43と流入空間側差込空間53との間に配置される。流入空間側差込空間53と流入空間43とは、流入空間側導入流路64を介して連通している。流入空間側貫通孔54は、複数の伝熱管貫通孔47うちヘッダ長手方向25における最下方に形成され、かつ、導入方向48において流入空間側差込空間53の下流側に配置されている。流入空間側差込空間53は、流入空間側貫通孔54に接続される伝熱管23と連通している。
【0032】
複数の板状部材71~76は各々の表面にロウ材が塗布されており、各板状部材を重ね、炉中で加熱されることによりロウ材が溶融して互いに接合され、膨張弁側ヘッダ21が形成される。このように膨張弁側ヘッダ21は、複数の板状部材71~76が外周部を揃えて重ねられて膨張弁側ヘッダ21が形成されるため、例えば、板状部材とコの字形状の部材を組み合わせて箱状に形成されるヘッダと比べて、膨張弁側ヘッダ21の強度と耐久性とを向上させることができる。さらには、複数の板状部材71~76が重ねられて膨張弁側ヘッダ21が形成されることにより、膨張弁側ヘッダ21における冷媒の流路の変更や接合する伝熱管23の本数変更に対して、いずれかの板状部材を変更するのみで対応できる。このため、膨張弁側ヘッダ21を含めた室外熱交換器1の設計自由度の向上や開発・製造コストを低減することができる。
【0033】
複数の伝熱管23は、複数の伝熱管貫通孔47と流入空間側貫通孔54とをそれぞれ貫通し、膨張弁側ヘッダ21に接合されている。具体的には、複数の伝熱管23のうちの最も下側に配置される流入空間側伝熱管は、流入空間側貫通孔54を貫通し、膨張弁側ヘッダ21に接合されている。また、複数の伝熱管23のうちの流入空間側伝熱管と異なる残りの伝熱管は、複数の伝熱管貫通孔47をそれぞれ貫通し、膨張弁側ヘッダ21に接合されている。
【0034】
空気調和機10は、以下に説明する暖房運転と冷房運転とが行える。
[暖房運転]
暖房運転は、たとえば、空気調和機10がユーザにより暖房運転を実行するように操作されたときに実行される。四方弁6は、空気調和機10が暖房運転を実行するときに、冷媒回路4を暖房サイクルに切り替える。圧縮機5は、四方弁6から吸入管11に流入する低圧気相冷媒を圧縮する。低圧気相冷媒は、圧縮機5により圧縮され、高圧気相冷媒になる。圧縮機5は、高圧気相冷媒を吐出管12に吐出する。吐出管12に吐出された高圧気相冷媒は、冷媒回路4が暖房サイクルに切り替えられていることにより、四方弁6を介して室内熱交換器7に流入する。
【0035】
室内機3は、室内機3が設置された部屋の空気を室内熱交換器7に通過させる。室内熱交換器7は、室内熱交換器7に流入した高圧気相冷媒と、室内熱交換器7を通過する空気とを熱交換し、室内熱交換器7に流入した高圧気相冷媒を冷却し、室内熱交換器7を通過する空気を加熱する。室内機3は、室内熱交換器7により加熱された空気を、室内機3が設置されている部屋に吹き出し、その部屋を暖房する。高圧気相冷媒は、室内熱交換器7で冷却されて凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒になる。すなわち、室内熱交換器7は、空気調和機10が暖房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。高圧液相冷媒は、室内熱交換器7から流出し、膨張弁8に流入する。
【0036】
膨張弁8は、膨張弁8に流入した高圧液相冷媒を減圧する。高圧液相冷媒は、膨張弁8により減圧され、低圧気液二相冷媒になる。低圧気液二相冷媒は、膨張弁8から流出し、冷媒配管17に流入する。室外ファン18は、通風空間19に屋外の空気を流す。
【0037】
冷媒配管17を流れる低圧気液二相冷媒は、冷媒配管貫通孔44を介して膨張弁側ヘッダ21の流入空間43に流入する。流入空間43に流入した低圧気液二相冷媒は、さらに、流入口61を介して第1流路57の下端領域59に流入する。流入口61を介して下端領域59に流入した低圧気液二相冷媒は、ヘッダ長手方向25の他端部42に向かって第1流路57を流れる。このとき、第1流路57から各導入孔62へと冷媒が分流する。第1流路57を流れて第1流路57の上端領域60に到達した残り(各導入孔62へ分流したもの以外)の気液二相冷媒は、第1折返し流路51を介して第2流路58に流入する。第2流路58に流入した低圧気液二相冷媒は、第2流路58を一端部41の側へと流れる。第2流路58を流れる低圧気液二相冷媒は、第2流路58から第2折返し流路52を介して第1流路57の下端領域59に流入して第1流路57を他端部42に向かって流れる。このように、膨張弁側ヘッダ21は、第1流路57→第1折返し流路51→第2流路58→第2折返し流路52→第1流路57と循環流路45に低圧気液二相冷媒を循環させつつ各導入孔62へと冷媒を分流させる。
【0038】
冷媒回路4を循環する冷媒量が少なくて膨張弁側ヘッダ21に流入する気液二相冷媒の量が少ないときは、第1流路57を流れる気液二相冷媒の流速が遅くなる。このとき、ガス冷媒と比べて比重の大きい(ためにガス冷媒と比べて重い)液冷媒が上端領域60まで到達できない、あるいは、到達する液冷媒の量が少なくなり、上方の伝熱管23に流れる液冷媒量が下方の伝熱管23に流れる液冷媒量よりも少なくなる。このように、複数の伝熱管23に流入する液冷媒の量にばらつきが生じている場合に、流れる液冷媒が少ない上方の伝熱管23では、当該伝熱管の途中で液冷媒の全部が潜熱変化により蒸発しこれ以降伝熱管23の冷媒出口側(圧縮機側ヘッダ22との接続部)まではガス冷媒が加熱されて顕熱変化により過熱ガスとなる。つまり、流れる液冷媒が少ない上方の伝熱管23では、ガス冷媒が過熱されている領域でまだ液冷媒を蒸発させることができるにも関わらず液冷媒量が少ないことによって上記領域が有効に使えていない。一方、流れる液冷媒が多い下方の伝熱管23では、当該伝熱管を流れる間に潜熱変化によって液冷媒を全て蒸発させることができずに液冷媒が伝熱管から流出する。室外熱交換器1が蒸発器として機能する際は、各伝熱管23において冷媒出口側で液冷媒が全て蒸発すると蒸発性能が十分に発揮される状態であるが、上記のように途中で全ての液冷媒が蒸発する伝熱管23や蒸発しきらない液冷媒が流出する伝熱管23がある状態では、室外熱交換器1の蒸発性能が低下するという問題がある。
【0039】
上記の問題点を解決するために、本実施形態では、第1流路57の形状を調整することで、冷媒回路4を循環する冷媒量が少ない場合であっても膨張弁側ヘッダ21に流入した低圧気液二相冷媒のうちの液冷媒が、第1流路57の上端領域60まで到達するようにしている。具体的には、第1流路57の流路断面積を調整することで、第1流路57を流れる液冷媒の流速が上端領域60に到達するのに十分な流速となるように、第1流路57の形状とする。
【0040】
上記のように第1流路57の形状を調整することによって、冷媒回路4における冷媒循環量が少ない場合であっても、第1流路57を流れる液冷媒の流速を確保することによって液冷媒を上端領域60まで到達させることができるので、上方の伝熱管23における液冷媒の流量の減少を抑制できる。なお、伝熱管23の本数が多い、つまり、膨張弁側ヘッダ21の高さ寸法が大きいことにより、第1流路57の形状を調整しても液冷媒を上端領域60まで到達させることができる液冷媒の流速を確保できない場合が考えられる。このような場合は、流入口61の口径を調整して第1流路57の下端領域59における液冷媒の初速を大きくすればよい。初速が大きくなることで第1流路57を流れる液冷媒の流速を確保でき、液冷媒を第1流路57の上端領域60まで到達させることができる。
【0041】
冷媒回路4を循環する冷媒量が多くて膨張弁側ヘッダ21に流入する気液二相冷媒の量が多いときは、冷媒循環量が少なく膨張弁側ヘッダ21に流入する冷媒量が少ないときと比べて第1流路57を流れる低圧気液二相冷媒の量が多くなる。このとき、第1流路57を流れる低圧気液二相冷媒の流速は、冷媒回路4を循環する冷媒量が多い場合の方が少ない場合と比べて圧縮機5の回転数が高いことに起因して速くなる。このとき、低圧気液二相冷媒のうちの液冷媒は、ガス冷媒と比べて密度が高く単位体積あたりの質量が大きいため、液冷媒の流速が単位体積あたりの質量が軽いガス冷媒の流速より遅くなる。このため、ガス冷媒の流れによって液冷媒が第1流路57の上端領域60に押しやられて滞留しやすくなる。このように、第1流路57の上端領域60に液冷媒が滞留すると、第1流路57の上端領域60から伝熱管23に流れる液冷媒の量が、第1流路57の上端領域60より下方から伝熱管23に流れる液冷媒の量より多くなり、伝熱管23の間で液冷媒の流量に偏りが生じる。
【0042】
上記の問題を解決するため、本実施形態では、第1流路57に沿って上方へと流れる気液二相冷媒を第2流路58へと流して再び第1流路57に戻す循環流路45を設けている。循環流路45を設けることで、第1流路57の上端領域60に滞留する液冷媒を第2流路58を介して第1流路57に戻すことができる。液冷媒が上端領域60に滞留していると上方の伝熱管23における液冷媒の流量が他の伝熱管23と比べて多くなるが、上端領域60に滞留する液冷媒を循環流路45に回流させることによって上端領域60における液冷媒の滞留量が減少しその減少分が各差込空間46に分流するので、各伝熱管23における液冷媒量の偏りを抑制することができる。
【0043】
流入空間43に流入した低圧気液二相冷媒は、流入口61を介して第1流路57へと流れるとともに、流入空間43に対して導入方向48で隣り合う流入空間側差込空間53に流入空間側導入流路64を介して流れる。流入口61から第1流路57へと気液二相冷媒が流れる際は、流れる方向が流入空間43において水平方向から鉛直方向に直角に曲がるとともに、鉛直方向となった後は重力に逆らって上方へと流れる。一方で、流入口61から流入空間側導入流路64を介して流入空間側差込空間53へと気液二相冷媒が流れる際は、流れる方向が水平方向のままであり、重力に逆らって流れることもない。以上のことから、流入空間側差込空間53へと流れる気液二相冷媒が受ける抵抗(流入空間43と流入空間側導入流路64と流入空間側差込空間53の各々における圧力損失のみ。以降、第1流路抵抗と記載する)は、第1流路57へと流れる気液二相冷媒が受ける抵抗(流入空間43と流入口61と第1流路57の各々における圧力損失、流路が曲がることによる圧力損失、および重力の影響。以降、第2流路抵抗と記載する)より小さい。このように、第1流路抵抗が第2流路抵抗より小さいと、流入空間43に流入した気液二相冷媒のうちの液冷媒の多くが流入空間側差込空間53へと流れる反面、第1流路57へと流れる液冷媒量が少なくなるため、流入空間側差込空間53に接続されている伝熱管23に流れる液冷媒量が、他の伝熱管23(第1流路57と連通する複数の差込空間46に接続される伝熱管)の各々に流れる液冷媒量より多くなってしまう。
【0044】
上記の問題を解決するため、本実施形態では、流入空間側差込空間53の形状を調整することで、第1流路抵抗を調整して流入空間側差込空間53に接続されている伝熱管23に流れる液冷媒量を減少させて、他の伝熱管23における液冷媒の流量とのばらつきを抑制している。具体的には、第1流路57から液冷媒が分流する伝熱管23の本数を第1流路抵抗に乗じた値が第2流路抵抗と等しくなるように、流入空間側差込空間53の形状(大きさや断面積)を調整する。例えば、流入空間側差込空間53に接続されている伝熱管23が1本あり、第1流路57から液冷媒が分流する伝熱管23が8本あり、全ての伝熱管23に等しい量Aの液冷媒を流したい場合、第1流路抵抗に第1流路57から液冷媒が分流する伝熱管23の本数:8本を乗じた値が第2流路抵抗と等しくなるように、流入空間側差込空間53の形状を調整する。これにより、伝熱管23の1本当たりの流路抵抗が等しくなるので、各伝熱管23に流れる液冷媒量の偏りを是正できる。
【0045】
なお、流入空間側差込空間53は伝熱管23を接続する都合上、形状の調整に限界がある。例えば、流入空間側差込空間53の通風方向20における寸法は、挿入される伝熱管23の通風方向20における寸法に応じた寸法とする必要があり、例えば伝熱管23の通風方向20における寸法より小さくすることはできない。また、流入空間側差込空間53の導入方向48における寸法は、流入空間側差込空間53の先端部と流入空間側導入流路64との距離を一定寸法離す必要がある(流入空間側差込空間53の先端部と流入空間側導入流路64とが近すぎると、流入空間側導入流路64に近い流路33に多くの冷媒が流れる)。これらの制約を満たしつつ形状を調整しても、第1流路57から液冷媒が分流する伝熱管23の本数を第1流路抵抗に乗じた値が第2流路抵抗と等しくなる第1流路抵抗とできない場合がある。
【0046】
上記のように流入空間側差込空間53の形状調整のみで第1流路抵抗を調整できない場合は、流入空間側導入流路64の口径を調整することで第1流路抵抗を調整してもよく、また、流入空間43において冷媒配管貫通孔44に差し込まれている冷媒配管17の先端部と流入空間側導入流路64の間に冷媒の流れを妨げる構造物、例えば、三角柱や四角柱のような構造物を配置して第1流路抵抗を調整してもよい。なお、上記の流入空間側導入流路64や冷媒の流れを妨げる構造物が、本発明の抵抗調整器に相当する。
【0047】
複数の差込空間46と流入空間側差込空間53とに流入した低圧気液二相冷媒は、複数の伝熱管23の内部に形成される複数の流路33に流入して圧縮機側ヘッダ22へと向かって流れる。このとき、ここまでに説明した第1流路57の形状調整や流入空間側差込空間53の形状調整によって、複数の流路33を流れる液冷媒の流量の偏りは抑制されている、すなわち、複数の伝熱管23への液冷媒の分流性は向上されている。複数の伝熱管23を流れる液冷媒は、通風空間19を流れる空気と熱交換を行って蒸発して低圧気相(ガス)冷媒になり、複数の伝熱管23から圧縮機側ヘッダ22に流出する。
【0048】
上述したように、各伝熱管23における液冷媒の偏流が抑制されていることから、複数の伝熱管23には過不足のない量の液冷媒が流れている。このとき、各伝熱管23における冷媒出口側、つまり、圧縮機側ヘッダ22に各伝熱管23が接続されている箇所における冷媒の状態は、当該箇所でちょうど液冷媒が蒸発しきりガス冷媒となる、もしくは、ガス冷媒に蒸発しきらなかった液冷媒が混ざっている状態となり、室外熱交換器1の熱交換性能が十分に発揮される状態となっている。なお、各伝熱管23における冷媒出口側においてちょうど液冷媒が蒸発しきりガス冷媒となる、もしくは、ガス冷媒に蒸発しきらなかった液冷媒が混ざっている状態であれば、当該箇所における冷媒過熱度が0度となるこのため本発明の効果を検証する際は、各伝熱管23における冷媒出口側における冷媒過熱度を検出してその値を確認すればよい。例えば、冷媒回路4における冷媒循環量が最小値であるときに、最上段の伝熱管23の冷媒出口側の冷媒過熱度を確認しこの値が0度であれば、冷媒循環量が最小であるときに液冷媒が一番流れにくい最上段の伝熱管23において十分な量の液冷媒が流れていることが確認でき、これ以外の伝熱管23には少なくとも最上段の伝熱管23を流れる液冷媒と同等以上の冷媒が流れていると考えられるため、全ての伝熱管23に液冷媒が過不足なく流れていて室外熱交換器1の熱交換性能が十分に発揮される状態であると考えられる。
【0049】
複数の伝熱管23から流出した低圧気相冷媒は、圧縮機側ヘッダ22で合流し、圧縮機側ヘッダ22から流出する。圧縮機側ヘッダ22から流出した低圧気相冷媒は、冷媒配管14を介して四方弁6に流入し、冷媒回路4が暖房サイクルに切り替えられていることにより、四方弁6を介して圧縮機5の吸入管11に流入する。
【0050】
[冷房運転]
空気調和機10がユーザにより冷房運転を実行するように操作されると、四方弁6は、冷媒回路4が冷房サイクルとなるように切り替えられる。圧縮機5は、四方弁6から吸入管11を介して吸入した低圧気相冷媒を圧縮する。低圧気相冷媒は、圧縮機5により圧縮されて高圧気相冷媒となり吐出管12に吐出される。吐出管12に吐出された高圧気相冷媒は、冷媒回路4が冷房サイクルに切り替えられていることにより、四方弁6および冷媒配管14を介して室外熱交換器1に流入する。
【0051】
室外熱交換器1に流入した高圧気相冷媒は、圧縮機側ヘッダ22に流入して複数の伝熱管23に分流する。複数の伝熱管23に分流した高圧気相冷媒は、室外ファン18の回転によって通風空間19を流れる空気と熱交換されて凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒となる。すなわち、室外熱交換器1は、空気調和機10が冷房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。高圧液相冷媒は、複数の伝熱管23から流出して膨張弁側ヘッダ21の複数の差込空間46と流入空間側差込空間53とに流入する。複数の差込空間46に流入した高圧液相冷媒は、複数の導入孔62を介して循環流路45の第1流路57に流入して合流する。第1流路57で合流した高圧液相冷媒は、流入口61を介して流入空間43に流入する。流入空間側差込空間53に流入した高圧液相冷媒は、複数の導入孔62を介して循環流路45の第1流路57に流入し、流入口61を介して流入空間43に流入した高圧液相冷媒と流入空間43で合流する。流入空間43で合流した高圧液相冷媒は、冷媒配管貫通孔44を介して冷媒配管17に流入し、冷媒配管17を流れて膨張弁8に流入する。
【0052】
膨張弁8に流入した高圧液相冷媒は減圧されて低圧気液二相冷媒になり、膨張弁8から流出し冷媒配管16を流れて室内熱交換器7に流入する。室内熱交換器7に流入した低圧気液二相冷媒は、図示しない室内ファンの回転によって室内機3の内部に取り込まれた部屋の空気と熱交換する。これにより、室内熱交換器7に流入した低圧気液二相冷媒によって室内熱交換器7を通過する空気が冷却され、冷却された空気を室内機3が設置されている部屋に吹き出そことで部屋を冷房する。一方、室内熱交換器7に流入した低圧気液二相冷媒は、室内熱交換器7で加熱されて蒸発して低圧気相冷媒になる。すなわち、室内熱交換器7は、空気調和機10が冷房運転を実行するときに、蒸発器として機能する。室内熱交換器7から流出した低圧気相冷媒は、冷媒配管15、四方弁6、吸入管11の順に流れて圧縮機5に吸入されて再び圧縮される。
【0053】
[実施例の熱交換器の効果]
実施例の熱交換器は、複数の伝熱管23と膨張弁側ヘッダ21と圧縮機側ヘッダ22とを備えている。膨張弁側ヘッダ21は、第1流路57と第2流路58と第1折返し流路51と第2折返し流路52と流入空間43と流入口61とを有している。第1流路57は、膨張弁側ヘッダ21のヘッダ長手方向25における一端部41の側から他端部42の側へと冷媒を流す。第2流路58は、他端部42の側から一端部41の側へと冷媒を流す。第1折返し流路51は、他端部42の側において第1流路57から第2流路58へと冷媒を流す。第2折返し流路52は、一端部41の側において第2流路58から第1流路57へと冷媒を流す。流入空間43には、冷媒が流入する。流入口61は、流入空間43から第1流路57の一端部41の側の端に冷媒を流入させる。第1流路57は、複数の伝熱管23を介して圧縮機側ヘッダ22に連通している。第1流路57は、実施例の熱交換器が蒸発器として機能するときに、複数の伝熱管23のうち流入空間43から最も遠い位置にある最上段伝熱管から圧縮機側ヘッダ22に流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成されている。
【0054】
すなわち、実施例の熱交換器は、最上段の伝熱管23に液冷媒が最も流れにくい状態であっても、第1流路57の形状を調整することで、当該伝熱管23の冷媒出口側における冷媒過熱度が0度となるように、つまり、冷媒出口側まで液冷媒が到達する程度に液冷媒が流れるようにできる。このため、実施例の熱交換器は、複数の伝熱管23への液冷媒の偏流が抑制できるので、蒸発器として機能するときの蒸発性能を向上させることができる。
【0055】
また、実施例の熱交換器の第1流路57の形状は、実施例の熱交換器が蒸発器として機能するときに、冷媒が流入空間43から第1流路57に単位時間あたりに流入する流量の最小値に基づいて形成される。冷媒回路4において冷媒循環量が最小量であるときに、上記のように第1流路57に流入する冷媒量が最小値となるが、このような場合を想定して第1流路57の形状を調整するので、冷媒回路4を循環する冷媒の循環量が最小であるときでも、複数の伝熱管23への液冷媒の偏流が抑制でき、蒸発器として機能するときの蒸発性能を向上させることができる。
【0056】
また、実施例の熱交換器の複数の伝熱管23は、第1流路抵抗が他の伝熱管23の本数を乗じた値が第2流路抵抗と等しくなるように流入空間側差込空間53の形状を調整することによって、流入空間側差込空間53に接続されている伝熱管23に流れる液冷媒量が他の伝熱管23に流れる液冷媒量と比べて多くならないようにしている。これにより、各伝熱管23への液冷媒の偏流が抑制でき、蒸発器として機能するときの蒸発性能を向上させることができる。
【0057】
ところで、既述の実施例の熱交換器において、流入空間側差込空間53は伝熱管23を接続する都合上、形状の調整に限界があり、可能な範囲で形状を調整しても第1流路抵抗が他の伝熱管23の本数を乗じた値が第2流路抵抗と等しくならない場合(例えば、他の伝熱管23の本数が多くて第2流路抵抗が大きな値となる場合)がある。このような場合は、膨張弁側ヘッダ21に第1流路抵抗を調整する抵抗調整部がさらに設けられてもよい。たとえば、流入空間側導入流路64の口径を調整することで第1流路抵抗を調整してもよく、また、流入空間43において冷媒配管貫通孔44に差し込まれている冷媒配管17の先端部と流入空間側導入流路64の間に冷媒の流れを妨げる構造物、例えば、三角柱や四角柱のような構造物を配置して第1流路抵抗を調整してもよい。
【0058】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :室外熱交換器(熱交換器)
4 :冷媒回路(冷凍サイクル装置)
5 :圧縮機
21:膨張弁側ヘッダ(第1ヘッダ)
22:圧縮機側ヘッダ(第2ヘッダ)
23:複数の伝熱管
25:ヘッダ長手方向(長手方向)
41:一端部
42:他端部
43:流入空間
44:冷媒配管貫通孔
46:差込空間
47:複数の伝熱管貫通孔
48:導入方向
51:第1折返し流路
52:第2折返し流路
53:流入空間側差込空間
54:流入空間側貫通孔
57:第1流路
58:第2流路
61:流入口
62:導入孔
64:流入空間側導入流路
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2025-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管と、
第1ヘッダと、
第2ヘッダとを備え、
前記第1ヘッダは、
前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、
前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、
前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、
前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、
冷媒が流入する流入空間と、
前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、
前記第1流路は、前記複数の伝熱管を介して前記第2ヘッダに連通している熱交換器であって、
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに前記複数の伝熱管のうち前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成され
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに冷媒が前記流入空間から前記第1流路に単位時間あたりに流入する流量の最小値に基づいて、前記第1流路の流路断面積が決定され
熱交換器。
【請求項2】
複数の伝熱管と、
第1ヘッダと、
第2ヘッダとを備え、
前記第1ヘッダは、
前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、
前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、
前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、
前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、
冷媒が流入する流入空間と、
前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、
前記第1流路は、前記複数の伝熱管を介して前記第2ヘッダに連通している熱交換器であって、
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに前記複数の伝熱管のうち前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成され、
前記複数の伝熱管より前記流入空間に近い位置にある流入空間側伝熱管をさらに備え、
前記第1ヘッダは、
前記流入空間側伝熱管の一端が配置される流入空間側差込空間と、
前記流入空間を前記流入空間側差込空間に連通させる流入空間側導入流路とをさらに有し、
前記流入空間から前記流入空間側導入流路を介して前記流入空間側差込空間に流入した冷媒は、前記流入空間側伝熱管を介して前記第2ヘッダに流れ、
前記流入空間側差込空間は、前記流入空間側差込空間を流れる冷媒が前記流入空間側差込空間から受ける第1流路抵抗に前記複数の伝熱管の本数を乗算して算出される目標抵抗に、前記第1流路を流れる冷媒が前記第1流路から受ける第2流路抵抗が等しくなるように、形成される
交換器。
【請求項3】
前記第1流路抵抗を調整する抵抗調整部
をさらに備える請求項に記載の熱交換器。
【請求項4】
熱交換器により熱交換された冷媒を圧縮機が圧縮することにより冷媒回路に冷媒を循環させる冷凍サイクル装置であり、
前記熱交換器は、
複数の伝熱管と、
第1ヘッダと、
第2ヘッダとを備え、
前記第1ヘッダは、
前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、
前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、
前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、
前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、
冷媒が流入する流入空間と、
前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するとき、かつ、前記冷媒回路を流れる冷媒量が最小量であるときに、前記複数の伝熱管のうちの前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成され
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに冷媒が前記流入空間から前記第1流路に単位時間あたりに流入する流量の最小値に基づいて、前記第1流路の流路断面積が決定され
冷凍サイクル装置。
【請求項5】
熱交換器により熱交換された冷媒を圧縮機が圧縮することにより冷媒回路に冷媒を循環させる冷凍サイクル装置であり、
前記熱交換器は、
複数の伝熱管と、
第1ヘッダと、
第2ヘッダとを備え、
前記第1ヘッダは、
前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、
前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、
前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、
前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、
冷媒が流入する流入空間と、
前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、
前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するとき、かつ、前記冷媒回路を流れる冷媒量が最小量であるときに、前記複数の伝熱管のうちの前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成され、
前記熱交換器は、前記複数の伝熱管より前記流入空間に近い位置にある流入空間側伝熱管をさらに備え、
前記第1ヘッダは、
前記流入空間側伝熱管の一端が配置される流入空間側差込空間と、
前記流入空間を前記流入空間側差込空間に連通させる流入空間側導入流路とをさらに有し、
前記流入空間から前記流入空間側導入流路を介して前記流入空間側差込空間に流入した冷媒は、前記流入空間側伝熱管を介して前記第2ヘッダに流れ、
前記流入空間側差込空間は、前記流入空間側差込空間を流れる冷媒が前記流入空間側差込空間から受ける第1流路抵抗に前記複数の伝熱管の本数を乗算して算出される目標抵抗に、前記第1流路を流れる冷媒が前記第1流路から受ける第2流路抵抗が等しくなるように、形成される
冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機は、圧縮機回転数に対応する流量の冷媒を前記冷媒回路に循環させ、
前記第1流路は、前記圧縮機回転数が最小回転数であるときに前記過熱度が0度になるように、形成される
請求項4または請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一態様による熱交換器は、複数の伝熱管と、第1ヘッダと、第2ヘッダとを備え、前記第1ヘッダは、前記第1ヘッダの長手方向における一端部の側から他端部の側へと冷媒を流す第1流路と、前記他端部の側から前記一端部の側へと冷媒を流す第2流路と、前記他端部の側において前記第1流路から前記第2流路へと冷媒を流す第1折返し流路と、前記一端部の側において前記第2流路から前記第1流路へと冷媒を流す第2折返し流路と、冷媒が流入する流入空間と、前記流入空間から前記第1流路の前記一端部の側の端に冷媒を流入させる流入口とを有し、前記第1流路は、前記複数の伝熱管を介して前記第2ヘッダに連通している熱交換器であって、前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに前記複数の伝熱管のうち前記流入空間から最も遠い位置にある伝熱管から前記第2ヘッダに流入する冷媒の過熱度が0度になるように、形成され、前記第1流路は、前記熱交換器が蒸発器として機能するときに冷媒が前記流入空間から前記第1流路に単位時間あたりに流入する流量の最小値に基づいて、前記第1流路の流路断面積が決定されている。