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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015320
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20250123BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20250123BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/536
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118651
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池沼 達也
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043EA02
5H043EA16
5H043EA32
5H043EA35
5H043EA38
5H043EA39
5H043HA17E
5H043JA03E
5H043JA07E
5H043KA08E
5H043KA09E
(57)【要約】
【課題】生産性への影響を抑えつつ、集電端子の溶接時に集電端子が接合されるタブ部に生じる引張応力を緩和することができる二次電池及び二次電池の製造方法を得る。
【解決手段】正極の端子接合部34Aにおいてタブ接続部22Aの幅方向及び厚み方向と直交する方向の端22U、22Zが接する部位のうち、電極本体部32の捲回軸周りの外周面の平坦面32Aと湾曲端面32B、32Cとの二つの境界B1、B2のうちで正極の端子接合部34Aにより近い一方の境界B1に対して最も近い部位である第一部位P1と、第一部位P1を備えた正極の電極シート40において合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界B1に対応する部位のうち第一部位P1に対して最も近い部位である第二部位P2と、を結ぶ仮想線VLを横切るようにタブ群34の表層側に切込み38が形成されている。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の正負極の集電体のそれぞれの表面の一部に合材層が形成された正負極の電極シートがセパレータを挟んで積層された状態で捲回軸周りに扁平状に捲回される電極体と、
前記電極体の一部を構成し、前記集電体の一部であって、前記集電体と前記合材層と前記セパレータとが積層された電極本体部から前記捲回軸の軸線方向に沿って突出したタブ部を前記積層の方向に複数備え、複数の前記タブ部の突出先端側の部分同士が束ねられて積層される集箔部を有すると共に前記軸線方向の一方側及び他方側に配置される正負極のタブ群と、
タブ接続部が前記正負極のタブ群の前記集箔部の表面の端子接合部にそれぞれ溶接により接合される正負極の集電端子と、
を有する二次電池であって、
前記端子接合部において前記タブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、前記電極本体部の前記捲回軸周りの外周面の平坦面と湾曲端面との二つの境界のうちで前記端子接合部により近い一方の境界に対して最も近い部位である第一部位と、前記第一部位を備えた前記電極シートにおいて前記合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界に対応する部位のうち前記第一部位に対して最も近い部位である第二部位と、を結ぶ仮想線を横切るように前記タブ群の表層側に切込みが形成されている、二次電池。
【請求項2】
前記切込みは、前記第一部位側が開放された形状に形成されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記切込みが前記仮想線を横切る位置は、前記第一部位と前記第二部位との間の中央点よりも前記第一部位側に設定されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
シート状の正負極の集電体のそれぞれの表面の一部に合材層が形成された正負極の電極シートがセパレータを挟んで積層された状態で捲回軸周りに扁平状に捲回される電極体と、前記電極体の一部を構成し、前記集電体の一部であって、前記集電体と前記合材層と前記セパレータとが積層された電極本体部から前記捲回軸の軸線方向に沿って突出したタブ部を前記積層の方向に複数備え、複数の前記タブ部の突出先端側の部分同士が束ねられて積層される集箔部を有すると共に前記軸線方向の一方側及び他方側に配置される正負極のタブ群と、タブ接続部が前記正負極のタブ群の前記集箔部の表面の端子接合部にそれぞれ溶接により接合される正負極の集電端子と、を有する二次電池を製造する方法であって、
前記端子接合部において前記タブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、前記電極本体部の前記捲回軸周りの外周面の平坦面と湾曲端面との二つの境界のうちで前記端子接合部により近い一方の境界に対して最も近い部位である第一部位と、前記第一部位を備えた前記電極シートにおいて前記合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界に対応する部位のうち前記第一部位に対して最も近い部位である第二部位と、を結ぶ仮想線を横切るように前記タブ群の表層側に切込みを形成する切込み工程と、
前記切込み工程の後、複数の前記タブ部の突出先端側の部分同士を束ねた状態で前記集箔部の前記端子接合部に前記集電端子の前記タブ接続部を溶接により接合する溶接工程と、
を有する二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記切込み工程においては、前記切込みを前記第一部位側が開放された形状となるように形成する、請求項4に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記切込み工程においては、前記溶接工程で用いられる溶接機に取り付けられた切刃が前記切込みを形成し、
前記溶接工程においては、前記切込み工程が実行された時の前記溶接機の位置を変えないで前記溶接機により溶接を行う、請求項4に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記切込み工程において前記切込みが前記仮想線を横切る位置は、前記第一部位と前記第二部位との間の中央点よりも前記第一部位側に設定されている、請求項6に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、正負の電極シートを平坦部とその両側のターン部とを有する扁平状に捲回した電極捲回体(電極体)と、正負の電極シートにそれぞれ接続された正負の集電部材(集電端子)と、を有する電池に関する技術が開示されている。
【0003】
簡単に説明すると、この先行技術では、電極捲回体には,捲回軸方向の両端側に、集電箔上に電極活物質層が形成されていない非塗工部(タブ部)が突出しており,この非塗工部に正負の集電部材が接合されている。また、非塗工部の少なくとも一方には、平坦部内の少なくとも2箇所に端部側から切り込みが入れられると共に、切り込み間の集電箔が捲回軸方向と交差する方向の折り目により折り返された折り返し部が形成されている。
【0004】
このような構成では、電極捲回体のうち捲回軸方向の中間部を構成する発電部(電極本体部)と、複数の非塗工部の突出先端部側が束ねられた部分との厚み差を減らせるため、複数の非塗工部の突出先端部側を束ねて集電部材を溶接する場合に非塗工部に生じる引張応力(テンション)を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-186151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術の場合、工程が煩雑になるだけでなく、折り返し部によって厚みが増しかつ位置ずれが生じ易くなることで、非塗工部に集電部材を溶接するうえで不利になるので、生産性の点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、生産性への影響を抑えつつ、集電端子の溶接時に集電端子が接合されるタブ部に生じる引張応力を緩和することができる二次電池及び二次電池の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様の二次電池は、シート状の正負極の集電体のそれぞれの表面の一部に合材層が形成された正負極の電極シートがセパレータを挟んで積層された状態で捲回軸周りに扁平状に捲回される電極体と、前記電極体の一部を構成し、前記集電体の一部であって、前記集電体と前記合材層と前記セパレータとが積層された電極本体部から前記捲回軸の軸線方向に沿って突出したタブ部を前記積層の方向に複数備え、複数の前記タブ部の突出先端側の部分同士が束ねられて積層される集箔部を有すると共に前記軸線方向の一方側及び他方側に配置される正負極のタブ群と、タブ接続部が前記正負極のタブ群の前記集箔部の表面の端子接合部にそれぞれ溶接により接合される正負極の集電端子と、を有する二次電池であって、前記端子接合部において前記タブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、前記電極本体部の前記捲回軸周りの外周面の平坦面と湾曲端面との二つの境界のうちで前記端子接合部により近い一方の境界に対して最も近い部位である第一部位と、前記第一部位を備えた前記電極シートにおいて前記合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界に対応する部位のうち前記第一部位に対して最も近い部位である第二部位と、を結ぶ仮想線を横切るように前記タブ群の表層側に切込みが形成されている。
【0009】
本発明の第2態様の二次電池は、本発明の第1態様の二次電池において、前記切込みは、前記第一部位側が開放された形状に形成されている。
【0010】
本発明の第3態様の二次電池は、本発明の第1態様又は第2態様の二次電池において、前記切込みが前記仮想線を横切る位置は、前記第一部位と前記第二部位との間の中央点よりも前記第一部位側に設定されている。
【0011】
本発明の第4態様の二次電池の製造方法は、シート状の正負極の集電体のそれぞれの表面の一部に合材層が形成された正負極の電極シートがセパレータを挟んで積層された状態で捲回軸周りに扁平状に捲回される電極体と、前記電極体の一部を構成し、前記集電体の一部であって、前記集電体と前記合材層と前記セパレータとが積層された電極本体部から前記捲回軸の軸線方向に沿って突出したタブ部を前記積層の方向に複数備え、複数の前記タブ部の突出先端側の部分同士が束ねられて積層される集箔部を有すると共に前記軸線方向の一方側及び他方側に配置される正負極のタブ群と、タブ接続部が前記正負極のタブ群の前記集箔部の表面の端子接合部にそれぞれ溶接により接合される正負極の集電端子と、を有する二次電池を製造する方法であって、前記端子接合部において前記タブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、前記電極本体部の前記捲回軸周りの外周面の平坦面と湾曲端面との二つの境界のうちで前記端子接合部により近い一方の境界に対して最も近い部位である第一部位と、前記第一部位を備えた前記電極シートにおいて前記合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界に対応する部位のうち前記第一部位に対して最も近い部位である第二部位と、を結ぶ仮想線を横切るように前記タブ群の表層側に切込みを形成する切込み工程と、前記切込み工程の後、複数の前記タブ部の突出先端側の部分同士を束ねた状態で前記集箔部の前記端子接合部に前記集電端子の前記タブ接続部を溶接により接合する溶接工程と、を有する。
【0012】
本発明の第5態様の二次電池の製造方法は、本発明の第4態様の二次電池の製造方法において、前記切込み工程においては、前記切込みを前記第一部位側が開放された形状となるように形成する。
【0013】
本発明の第6態様の二次電池の製造方法は、本発明の第4態様又は第5態様の二次電池の製造方法において、前記切込み工程においては、前記溶接工程で用いられる溶接機に取り付けられた切刃が前記切込みを形成し、前記溶接工程においては、前記切込み工程が実行された時の前記溶接機の位置を変えないで前記溶接機により溶接を行う。
【0014】
本発明の第7態様の二次電池の製造方法は、本発明の第6態様の二次電池の製造方法において、前記切込み工程において前記切込みが前記仮想線を横切る位置は、前記第一部位と前記第二部位との間の中央点よりも前記第一部位側に設定されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1態様の二次電池では、タブ群の表層側には切込みが形成されており、この切込みは、端子接合部においてタブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、電極本体部の捲回軸周りの外周面の平坦面と湾曲端面との二つの境界のうちで端子接合部により近い一方の境界に対して最も近い部位である第一部位と、第一部位を備えた電極シートにおいて合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界に対応する部位のうち第一部位に対して最も近い部位である第二部位と、を結ぶ仮想線を横切るように形成されている。このため、生産性への影響を抑えつつ、集電端子の溶接時に集電端子が接合されるタブ部に生じる引張応力を切込みによって緩和することができる。
【0016】
本発明の第2態様の二次電池では、例えば、前記仮想線と直交する方向に延在するような直線状の切込み等と比べ、切込みの形成後に、集電体において表面に合材層が形成される部分まで切れ広がり生じるのを抑えられる。よって、切込みが形成されても、性能への影響を最小限に抑えることができる。
【0017】
本発明の第3態様の二次電池では、例えば、製造時に溶接機に切刃を取り付ければ、切込みの長さが短く設定されても第一部位と第二部位とを結ぶ仮想線を精度良く横切ることができる。
【0018】
本発明の第4態様の二次電池の製造方法では、端子接合部においてタブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、電極本体部の捲回軸周りの外周面の平坦面と湾曲端面との二つの境界のうちで端子接合部により近い一方の境界に対して最も近い部位である第一部位と、第一部位を備えた電極シートにおいて合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界に対応する部位のうち第一部位に対して最も近い部位である第二部位と、を結ぶ仮想線を横切るようにタブ群の表層側に切込みを形成する。その後、複数のタブ部の突出先端側の部分同士を束ねた状態で集箔部の端子接合部に集電端子のタブ接続部を溶接により接合する。この集電端子の溶接時に、集電端子が接合されるタブ部に生じる引張応力を切込みによって緩和することができる。また、タブ群の表層側に切込みを形成するのみであるので、生産性への影響を抑えられる。
【0019】
本発明の第5態様の二次電池の製造方法では、例えば前記仮想線と直交する方向に延在するような直線状の切込み等と比べ、切込み工程後に、集電体において表面に合材層が形成される部分まで切れ広がり生じるのを抑えられる。よって、切込みが形成されても、性能への影響を最小限に抑えることができる。
【0020】
本発明の第6態様の二次電池の製造方法では、タブ群における集箔部の端子接合部に対する集電端子のタブ接続部の溶接位置と、タブ群の表層側における切込みの形成位置との相対位置精度を高めることができる。
【0021】
本発明の第7態様の二次電池の製造方法では、切込みの長さが短く設定されても第一部位と第二部位とを結ぶ仮想線を精度良く横切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る二次電池を一部分解して示す斜視図である。
図2】実施形態に係る電極体の電極本体部を一部破断して簡略化して示す概略構成図である。
図3図1の3L-3L線に沿って切断した状態の厚み方向及び幅方向の一部を模式的に示す断面図である。
図4図1の正極のタブ群の上下方向中央部を水平方向に沿って切断して模式的に示す断面図である。
図5A図1の電極体と集電端子とを分解した状態で簡略化して示す正面図である。
図5B図5Aの切込み及びその周囲部を拡大して示す図である。
図5C図5Aの電極体に集電端子が接合された状態を簡略化して示す正面図である。
図6図1の正極の集電端子を簡略化して示す側面図である。
図7図1の電極体の側面上部の外形を模式的に示す側面図である。
図8】電極体に集電端子を溶接するための溶接機に切刃が取り付けられた構成を示す模式的な図である。
図9】従来技術の電極体の外周側の断面の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態に係る二次電池及び二次電池の製造方法について図1図9を用いて説明する。実施形態に係る二次電池は、例えば、電気自動車等の車載用電源として使用される電池モジュールを構成するリチウムイオン二次電池とされる。なお、図面に適宜示される矢印Xは、電極体30が捲回される捲回軸30L(図2参照)の軸線方向を示し、矢印Yは、電極体30の捲回軸周りの捲回方向を示し、矢印Zは、電極体30の厚み方向を示している。また、矢印Xの示す方向は、二次電池10の幅方向である電池幅方向と一致する方向であり、矢印Zの示す方向は、二次電池10の厚み方向と一致する方向である。また、以下の説明においては、正極側及び負極側の構成をまとめて示す場合には、「正負極」と表現する場合がある。
【0024】
[二次電池10の構成]
図1には、実施形態に係る二次電池10が一部分解された状態の斜視図で示されている。図1に示されるように、二次電池10は、蓋アセンブリ20と、電極体30と、電池ケース70と、を有している。なお、図1においては、蓋アセンブリ20と電極体30とは接合された状態で示されている。
【0025】
(電池ケース70)
電池ケース70は、上方側が開放されて電池幅方向に長い矩形の箱状に形成されている。電池ケース70には、電極体30及び電解液が収容される。
【0026】
(蓋アセンブリ20)
蓋アセンブリ20は、蓋部材21と、電極体30から電力を出入力するための正負極の集電端子22、24と、外部接続用の外部端子26、28と、を有する。一対の集電端子22、24のうち電池幅方向の一方の集電端子22は、正極の集電端子とされ、この集電端子22に電気的に接続された外部端子26は、正極の外部端子とされる。また、一対の集電端子22、24のうち電池幅方向の他方の集電端子24は、負極の集電端子とされ、この集電端子24に電気的に接続された外部端子28は、負極の外部端子とされる。
【0027】
蓋部材21は、電池幅方向に長い矩形の板状に形成されている。蓋部材21は、電池ケース70の開口を塞ぐように取り付けられる。蓋部材21には、安全弁21Aと、注入口21Bを塞ぐキャップ29と、が設けられている。安全弁21Aは、電池ケース70の内部圧力の値が所定圧力に到達した場合に開弁し、電池ケース70の内部に発生したガスを排出するように構成されている。注入口21Bは、蓋部材21の板厚方向に貫通形成された貫通孔とされ、電池ケース70内に電解液を注入する際に用いられる。
【0028】
正極の集電端子22及び正極の外部端子26は、例えばアルミニウム合金製等とされ負極の集電端子24及び負極の外部端子28は、例えば銅合金製等とされる。正負極の集電端子22、24は、それぞれクランク状(略Z字状)に曲げられた部分を備えた板状部材とされる。正負極の集電端子22、24は電極体30に接合されている。この点の詳細については後述する。正負極の外部端子26、28は、蓋部材21の外部に露出している。正極の外部端子26は、電池幅方向において正極の集電端子22と同じ側に配置され、負極の外部端子28は、電池幅方向において負極の集電端子24と同じ側に配置されている。
【0029】
(電極体30)
電極体30は、その幅方向中間部を構成する電極本体部32と、幅方向の両サイドに設けられた正負極のタブ群34、36と、を有する。図2には、電極本体部32を一部破断して簡略化した概略構成図が示されている。図3には、図1の3L-3L線に沿って切断した状態の厚み方向及び幅方向の一部が模式的な断面図で示されている。
【0030】
電極体30は、図3に示されるシート状の正負極の集電体42、52のそれぞれの表面の一部に合材層44、54が形成された正負極の電極シート40、50がセパレータ60を挟んで積層された状態で図2に示されるように捲回軸30L周りに扁平状に捲回される。なお、図2では、便宜上、図3に示される8つの層の詳細図示を省略している。電極本体部32は、集電体42、52と合材層44、54とセパレータ60とが積層されて構成されている。セパレータ60は、例えば、ポリプロピレン等の絶縁性のある材料で形成されている。
【0031】
図3に示される正極の集電体42は、例えば、アルミニウム合金等の箔により構成されている。この集電体42の両面においてその幅方向の一方の縁に沿った部分を除いた部分に合材層44が塗工されている。合材層44は、少なくとも正極を構成する活物質を含んで構成されている。負極の集電体52は、例えば、銅合金の箔により構成されている。この集電体52の両面においてその幅方向の他方の縁に沿った部分を除いた部分に合材層54が塗工されている。合材層54は、少なくとも負極を構成する活物質を含んで構成されている。
【0032】
図4には、図1の正極のタブ群34の上下方向中央部を水平方向に沿って切断した模式的な断面図が示されている。正極のタブ群34は、図3に示される正極の集電体42の一部であって、電極本体部32から捲回軸の軸線方向に沿って突出したタブ部42Tを図3に示す8層の積層の方向に複数備え、図4に示される複数のタブ部42Tの突出先端側の部分同士が束ねられて積層される集箔部34Xを有すると共に捲回軸の軸線方向の一方側に配置される。タブ部42Tは、その突出先端部側が電極体30の厚み方向中央位置(一点鎖線CL参照)側に寄せられるため、引っ張られた状態で曲げられている。タブ部42Tは外周側に配置されるものほど曲げ量が大きくなっている。
【0033】
図1に示される負極のタブ群36は、詳細図示は省略するが、図3に示される負極の集電体52の一部であって、電極本体部32から捲回軸の軸線方向に沿って突出したタブ部52Tを図3に示す8層の積層の方向に複数備え、複数のタブ部52T(図3では一個のタブ部52Tのみを図示)の突出先端側の部分同士が束ねられて積層される集箔部36X(図1参照)を有すると共に捲回軸の軸線方向の他方側に配置される。補足すると、図1に示される負極のタブ群36は、図4に示される正極のタブ群34を左右反転させたものとほぼ同様の状態で配置される。
【0034】
図5Aに示される正極のタブ群34の集箔部34Xの表面の端子接合部34A(二点鎖線で囲まれる部分)には、図5A及び図5Cに示される正極の集電端子22のタブ接続部22Aが溶接により接合される。なお、各図において、正極の集電端子22のタブ接続部22Aが接合されるタブ部42Tについては、符号42Tの後に括弧書きで「42T1」を付す。図5Aに示される負極のタブ群36の集箔部36Xの表面の端子接合部36Aには、図5A及び図5Cに示される負極の集電端子24のタブ接続部24Aが溶接により接合される。
【0035】
図6には、正極の集電端子22の側面図が簡略化されて示されている。図6に示されるように、集電端子22のタブ接続部22Aは平坦状に形成されている。タブ接続部22Aの先端側の端22Zとは反対側の端(ここでは上端)22Uには、幅方向(図6の紙面に垂直な方向)に延在する稜線が形成されている。なお、負極の集電端子24(図1参照)については、簡略化した側面図の図示を省略するが、集電端子24(図1参照)の形状は、一例として、正極の集電端子22と実質的に同様の形状になっている。
【0036】
図5Aに示されるように、正極の端子接合部34Aにおいてタブ接続部22Aの幅方向及び厚み方向と直交する方向の端22U、22Zが接する部位のうち、電極本体部32の捲回軸周りの外周面の平坦面32Aと湾曲端面32B、32Cとの二つの境界B1、B2のうちで正極の端子接合部34Aにより近い一方の境界B1に対して最も近い部位である第一部位P1と、第一部位P1を備えた正極の電極シート40において合材層44(図3参照)が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界B1に対応する部位のうち第一部位P1に対して最も近い部位である第二部位P2と、を結ぶ仮想線VLを横切るようにタブ群34の表層側(1層程度)に切込み38が形成されている。なお、図5Aでは、図を見易くするために、便宜上、第二部位P2の位置を一方の境界B1の図中右端の位置と同じ位置として示している(図5B及び図5Cも同様)。
【0037】
切込み38は、第一部位P1側が開放された形状(一例として半円状)に形成されている。図5Bには、切込み38及びその周囲部を拡大した図が示されている。図5Bに示されるように、切込み38が仮想線VLを横切る位置は、第一部位P1と第二部位P2との間の中央点P3よりも第一部位P1側に設定されている。
【0038】
なお、本実施形態では、図5Aに示される電極本体部32の捲回軸周りの外周面の湾曲端面32B、32Cは、一例として、半円弧面状に形成されている。よって、本実施形態では、電極本体部32の捲回軸周りの外周面の平坦面32Aと上側の湾曲端面32Bとの境界B1の上下方向位置は、図7に模式的に示されるように、上側の湾曲端面32Bの頂点32Tから、電極本体部32の厚みtに1/2を乗じた長さ分だけ下方側に下がった位置と一致する。
【0039】
[二次電池10の製造に用いられる溶接機100]
次に、図1に示される二次電池10を製造するために用いられる溶接機に関して説明する。図8には、電極体30(図中では二点鎖線(想像線)で図示)に集電端子22、24(図1参照)を溶接するための溶接機100が模式的に示されている。
【0040】
溶接機100は、溶接対象(図中では電極体30の集箔部34X及び集電端子22のタブ接続部22A)を挟むアンビル102と超音波ホーン104とを備え、溶接対象を加圧しつつ超音波溶接することができるようになっている。溶接機100には、切刃106(図中ではブロック化して図示)が取り付けられており、この切刃106は、電動工具とされ、図5C等に示されるタブ群34の表層側に切込み38を形成することが可能になっている。
【0041】
[二次電池10の製造方法]
次に、二次電池10の製造方法について説明する。
【0042】
まず、図3に示される正負極の電極シート40、50がセパレータ60を挟んで積層されたものを捲回軸周りに扁平状に捲回して、電極体30を形成する(電極体形成工程)。
【0043】
次に、図5Aに示される正極の端子接合部34Aにおいてタブ接続部22Aの幅方向及び厚み方向と直交する方向の端22U、22Zが接する部位のうち、電極本体部32の捲回軸周りの外周面の平坦面32Aと湾曲端面32B、32Cとの二つの境界B1、B2のうちで正極の端子接合部34Aにより近い一方の境界B1に対して最も近い部位である第一部位P1と、第一部位P1を備えた正極の電極シート40において合材層44(図3参照)が形成された部分の最外周部の一部でかつ前記一方の境界B1に対応する部位のうち第一部位P1に対して最も近い部位である第二部位P2と、を結ぶ仮想線VLを横切るようにタブ群34の表層側に切込み38を形成する(切込み工程)。
【0044】
この切込み工程においては、切込み38を第一部位P1側が開放された形状となるように形成する。このため、例えば仮想線VLと直交する方向に延在するような直線状の切込み等と比べ、切込み工程後に正極の集電体42において表面に合材層44(図3参照)が形成される部分まで切れ広がり生じるのを抑えられる。よって、切込み38が形成されても、性能への影響(例えば電流遮断の影響)を最小限に抑えることができる。
【0045】
また、この切込み工程においては、後述する溶接工程で用いられる図8に示す溶接機100に取り付けられた切刃106が、図5Cに示される切込み38を形成する。この切込み38の形成は、集電端子22、24の設置と同時に行う。さらに、切込み工程において切込み38が仮想線VLを横切る位置は、図5Bに示されるように、第一部位P1と第二部位P2との間の中央点P3よりも第一部位P1側に設定されている。このため、切込み38の長さが短く設定されても第一部位P1と第二部位P2とを結ぶ仮想線VLを精度良く横切ることができる。
【0046】
切込み工程の後、図4に示されるように、複数のタブ部42T、52T(タブ部52Tについては図3参照)の突出先端側の部分同士を束ねた状態で図5Aに示される集箔部34X、36Xの端子接合部34A、36Aに集電端子22、24のタブ接続部22A、24Aを溶接により接合する(溶接工程)。このとき、図5C等に示される正極の集電端子22のタブ接続部22Aが接合されるタブ部42T(42T1)に生じる引張応力を、切込み38によって、緩和することができる。
【0047】
ここで、内部短絡の発生について、図9を参照しながら、補足説明する。図9には、従来技術の電極体130の外周側かつ本実施形態の第二部位P2(図5C参照)に相当する部分付近の断面の一部が示されている。なお、図9では、電極体130が捲回される捲回軸の軸線方向、正負極の電極シート及びその構成部、並びにセパレータについては、便宜上、本実施形態と同一の符号を付す。
【0048】
従来技術の電極体130において、複数のタブ部42Tを束ねて溶接機により加圧すると、最外周部の正極のタブ部42Tに大きな引張応力(テンション)が生じ、これによって、最外周部の正極のタブ部42Tの一部には積層方向の内側に向かって反るように変形したえくぼ140が発生し得る。前記引張応力は、本実施形態の仮想線VL(図5C参照)に相当する線上で最も大きく、当該線上にえくぼ140が発生する。
【0049】
このえくぼ140が発生すると、最外周部の正極のタブ部42Tとその内周側の負極の電極シート50との間にセパレータ60が挟まれ、セパレータ60が破損する可能性がある。さらに、この状態で集電端子(図示省略)とタブ部42Tとの超音波溶接が行われると、えくぼ140に対して接合時の振動が伝播するので、セパレータ60は破損しやすくなる。仮にセパレータ60が破損してしまうと、正極の電極シート40と負極の電極シート50との接触、すなわち内部短絡が発生する可能性がある。
【0050】
これに対して、本実施形態では、図4に示される複数のタブ部42Tのうち最外周部に配置されて図5C等に示される正極の集電端子22のタブ接続部22Aが接合されるタブ部42T(42T1)に生じる引張応力が、切込み38によって、緩和されるので、えくぼの発生を防止又は効果的に抑制することができる。このため、超音波溶接時に内部短絡が発生するのを防止又は効果的に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の溶接工程においては、切込み工程が実行された時の図8に示される溶接機100の位置を変えないで、溶接機100により、図5Aに示される正極のタブ群34における集箔部34Xの端子接合部34Aと集電端子22のタブ接続部22Aとの溶接を行う。これにより、正極のタブ群34における集箔部34Xの端子接合部34Aに対する集電端子22のタブ接続部22Aの溶接位置と、正極のタブ群34の表層側における切込み38の形成位置との相対位置精度を高めることができる。
【0052】
溶接工程の後は、図1に示される電極体30を電池ケース70に挿入して、蓋部材21を電池ケース70の開口に接合する。その後、蓋部材21に形成された注入口21Bから電解液を注液し、注入口21Bにキャップ29を取り付けて封止する。以上により、充電可能な二次電池10が製造される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、生産性への影響を抑えつつ、正極の集電端子22の溶接時に正極の集電端子22が接合されるタブ部42T(42T1)に生じる引張応力を緩和することができる。
【0054】
[実施形態の補足説明]
なお、図1図8に示される上記実施形態では、材質的に変形が生じやすい正極のタブ群34の表層側に切込み38が形成されているが、負極のタブ群36の表層側に同様の切込みが形成されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、図5C等に示されるように、正面視で集電端子22、24のタブ接続部22A、24Aがタブ群34、36の上部側に配置されているが、上記実施形態の変形例として、正面視で集電端子のタブ接続部がタブ群の下部側に配置されてもよい。なお、このような変形例の場合、第一部位は、端子接合部においてタブ接続部の幅方向及び厚み方向と直交する方向の端が接する部位のうち、正面視で下側の境界(B2)に対して最も近い部位になり、第二部位は、第一部位を備えた電極シートにおいて合材層が形成された部分の最外周部の一部でかつ正面視で下側の境界(B2)に対応する部位のうち前記第一部位に対して最も近い部位になる。
【0056】
また、上記実施形態では、図5B等に示されるように、切込み38は、第一部位P1側が開放された半円状になっているが、上記実施形態の変形例として、切込みは、第一部位(P1)側が開放された略V字状(好ましくは鋭角のV字状)又は略U字状にしてもよい。また、他の上記実施形態の変形例として、切込みは、第一部位(P1)側が開放された形状でない、という構成を採ることも可能である。
【0057】
また、上記実施形態では、切込み38が仮想線VLを横切る位置は、第一部位P1と第二部位P2との間の中央点P3よりも第一部位P1側に設定されているが、切込みが仮想線(VL)を横切る位置が、第一部位(P1)と第二部位(P2)との間の中央点(P3)上又は中央点P3よりも第二部位P2側に設定されている、という構成も採り得る。
【0058】
また、上記実施形態の切込み工程においては、図8に示される溶接工程で用いられる溶接機100に取り付けられた切刃106が図5B等に示される切込み38を形成しているが、上記実施形態の変形例として、切込み工程において、溶接機(100)に取り付けられていない切刃が切込みを形成してもよい。
【0059】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0060】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 二次電池
22 集電端子
22A タブ接続部
24 集電端子
24A タブ接続部
30 電極体
30L 捲回軸
32 電極本体部
32A 平坦面
32B 湾曲端面
32C 湾曲端面
34 タブ群
34A 端子接合部
34X 集箔部
36 タブ群
36A 端子接合部
36X 集箔部
38 切込み
40 電極シート
42 集電体
42T タブ部
44 合材層
50 電極シート
52 集電体
52T タブ部
54 合材層
60 セパレータ
100 溶接機
106 切刃
B1 境界(一方の境界)
B2 境界
P1 第一部位
P2 第二部位
P3 中央点
VL 仮想線
X 捲回軸の軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9