(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015347
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20250123BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20250123BHJP
F15B 11/17 20060101ALI20250123BHJP
F15B 11/16 20060101ALI20250123BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F15B11/00 H
F15B11/02 C
F15B11/17
F15B11/16 Z
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118707
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】520196553
【氏名又は名称】ダンフォス・スコットランド・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DANFOSS SCOTLAND LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏政
(72)【発明者】
【氏名】石田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン, クリストファー
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003BA05
2D003CA04
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
3H089AA05
3H089AA72
3H089BB15
3H089BB30
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB43
3H089DB55
3H089EE36
3H089JJ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アクチュエータの必要速度を確保しつつ複合操作時の分流ロスを低減することを可能とした建設機械を提供する。
【解決手段】第1アクチュエータ1用の方向切換弁23,27は、第1バイパスライン51を共有する第1バルブグループ20aに属し、第2アクチュエータ3用の方向切換弁24,26は、第2バイパスライン52を共有する第2バルブグループ20bに属し、建設機械は、第1バルブグループ20aの下流で第1バイパスライン51を開閉可能な第1カット弁31と、第2バルブグループ20bの下流で第2バイパスライン52を開閉可能な第2カット弁32と、ポンプ装置11,12が有する複数の吐出ポートの各接続先を第1バイパスライン51または第2バイパスライン52に切換可能な複数の切換弁41a~41d,42a~42dとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
吐出流量を個別に制御可能な複数の吐出ポートを有し、前記原動機によって駆動されるポンプ装置と、
複数のアクチュエータと、
前記ポンプ装置から前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁と、
前記複数のアクチュエータを駆動するための操作信号を生成する複数の操作装置と、
前記複数の操作装置の入力に応じて前記ポンプ装置および前記複数の方向切換弁を制御するコントローラとを備え、
前記複数の方向切換弁は、それぞれ、第1バイパスラインまたは第2バイパスライン上に配置され、
前記複数の方向切換弁のうち前記第1バイパスライン上に配置された方向切換弁が第1バルブグループを構成し、
前記複数の方向切換弁のうち前記第2バイパスライン上に配置された方向切換弁が第2バルブグループを構成する建設機械において、
前記複数のアクチュエータは、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを含み、
前記複数の方向切換弁のうち前記第1アクチュエータ用の方向切換弁は前記第1バルブグループに属し、
前記複数の方向切換弁のうち前記第2アクチュエータ用の方向切換弁は前記第2バルブグループに属し、
前記建設機械は、
前記第1バルブグループの下流で前記第1バイパスラインを開閉可能な第1カット弁と、
前記第2バルブグループの下流で前記第2バイパスラインを開閉可能な第2カット弁と、
前記複数の吐出ポートの各接続先を前記第1バイパスラインまたは前記第2バイパスラインに切換可能な複数の切換弁とを備え、
前記コントローラは、前記複数の操作装置の入力に応じて、前記第1カット弁、前記第2カット弁、および前記複数の切換弁を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記コントローラは、前記第1カット弁、前記第2カット弁、前記複数の切換弁、および前記ポンプ装置から前記第1バイパスラインおよび前記第2バイパスラインのそれぞれへの圧油の流れを、前記複数の操作装置の入力に応じて協調して制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械において、
前記コントローラは、
前記ポンプ装置が前記第1バルブグループに圧油を供給するように制御される前に、前記第1バルブグループの下流側の前記第1バイパスラインを閉じるように前記第1カット弁を制御する、および/または、
前記ポンプ装置が前記第2バルブグループに圧油を供給するように制御される前に、前記第2バルブグループの下流側の前記第2バイパスラインを閉じるように前記第2カット弁を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記コントローラは、
前記第1アクチュエータに対する前記複数の操作装置の入力量である第1操作信号量が第1閾値を超えた場合に前記第1カット弁を閉じ、
前記第1操作信号量が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合に、前記複数の吐出ポートのうち前記第1バルブグループに接続された1つ以上の吐出ポートの吐出流量と前記第1操作信号量に応じて設定された前記第1アクチュエータの必要流量とが一致するように前記ポンプ装置を制御し、
前記第2アクチュエータに対する前記複数の操作装置の入力量である第2操作信号量が前記第1閾値を超えた場合に前記第2カット弁を閉じ、
前記第2操作信号量が前記第2閾値を超えた場合に、前記複数の吐出ポートのうち前記第2バルブグループに接続された1つ以上の吐出ポートの吐出流量と前記第2操作信号量に応じて設定された前記第2アクチュエータの必要流量とが一致するように前記ポンプ装置を制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記複数の方向切換弁は、複数のオープンセンタ方式の方向切換弁である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記第1バイパスラインおよび前記第2バイパスラインは、それぞれ、センタバイパスラインで構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記第1カット弁および前記第2カット弁は、それぞれ、比例流量弁またはオンオフ弁で構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記ポンプ装置を制御するポンプコントローラを備え、
前記ポンプ装置は、ポンプシャフトと、前記ポンプシャフトの回転に伴って周期的に作動容積が変化する作動室を3つ以上有し、
前記作動室は、前記作動室と低圧マニホールドとの間の作動油の流れを制御する低圧弁と、前記作動室と高圧マニホールドとの間の作動油の流れを制御する高圧弁とを有し、
前記作動室は、複数のポンプ要素に形成され、
前記複数のポンプ要素は、それぞれ、前記作動室を1つ以上内包し、内包している前記作動室に共通しかつ吐出ポートに連通している前記高圧マニホールドに接続されており、
前記ポンプコントローラは、前記高圧マニホールドを経由して前記吐出ポートに至るまでの前記作動容積の変化が、前記吐出ポートから吐出される作動油の要求流量に応じて制御されるように、前記作動容積の各サイクルにおいて、前記作動室が、前記低圧マニホールドと前記高圧マニホールドとの間の作動油の移動を伴う有効サイクル、または、前記低圧マニホールドと前記高圧マニホールドとの間の作動油の移動を伴わない無効サイクルのいずれを経るかを決定するために、前記作動容積のサイクルと位相的に相関して、前記作動室の少なくとも前記低圧弁を能動的に制御するように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル向けの油圧回路装置として、2台の油圧ポンプと、2つのバルブグループからなるコントロールバルブとを備えた2ポンプ2バルブの油圧回路装置が広く普及している。また、油圧回路装置は、コントロールバルブの構造に由来し、オープンセンタ方式とクローズドセンタ方式とに分類される。
【0003】
2ポンプ2バルブのオープンセンタ方式の油圧回路装置を開示する先行技術文献として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1には、ブーム、アーム、バケットの3複合動作において円滑にブームを上げられるようにした構成が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の油圧回路装置では、ブーム用方向切換弁とアーム用の方向切換弁が各々2個設けられており、第1ポンプに接続される第1のバルブグループと、第2ポンプに接続される第2のバルブグループの両方にブーム用方向切換弁とアーム用方向切換弁が配置されている。これにより、ブームシリンダとアームシリンダにはいずれも最大でポンプ2台分の流量を供給することができるため高速動作が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の油圧回路装置では、ブームとアームを複合動作させる場合に、第1の油圧ポンプの吐出油が第1のブーム用方向切換弁を経由してブームシリンダに供給されると同時に、第1のアーム用方向切換弁を経由してアームシリンダに供給され、第2の油圧ポンプの吐出油が第2のブーム用方向切換弁を経由してブームシリンダに供給されると同時に、第2のアーム用方向切換弁を経由してアームシリンダに供給される。ここで、ブームシリンダの負荷圧力を20MPa、アームシリンダの負荷圧を5MPaとすると、第1及び第2の油圧ポンプはいずれも高い方の負荷圧力に合わせて20MPa以上で作動油を吐出する必要があり、アームシリンダに供給される圧油はアーム用方向切換弁のメータイン通路を絞ることで20MPa以上から5MPaまで減圧される。この絞りによるエネルギロスが分流ロスであり、油圧ショベルの省エネ性を阻害する要因となっている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータの必要速度を確保しつつ複合操作時の分流ロスを低減することを可能とした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、原動機と、吐出流量を個別に制御可能な複数の吐出ポートを有し、前記原動機によって駆動されるポンプ装置と、複数のアクチュエータと、前記ポンプ装置から前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁と、前記複数のアクチュエータを駆動するための操作信号を生成する複数の操作装置と、前記複数の操作装置の入力に応じて前記ポンプ装置および前記複数の方向切換弁を制御するコントローラとを備え、前記複数の方向切換弁は、それぞれ、第1バイパスラインまたは第2バイパスライン上に配置され、前記複数の方向切換弁のうち前記第1バイパスライン上に配置された方向切換弁が第1バルブグループを構成し、前記複数の方向切換弁のうち前記第2バイパスライン上に配置された方向切換弁が第2バルブグループを構成する建設機械において、前記複数のアクチュエータは、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを含み、前記複数の方向切換弁のうち前記第1アクチュエータ用の方向切換弁は前記第1バルブグループに属し、前記複数の方向切換弁のうち前記第2アクチュエータ用の方向切換弁は前記第2バルブグループに属し、前記建設機械は、前記第1バルブグループの下流で前記第1バイパスラインを開閉可能な第1カット弁と、前記第2バルブグループの下流で前記第2バイパスラインを開閉可能な第2カット弁と、前記複数の吐出ポートの各接続先を前記第1バイパスラインまたは前記第2バイパスラインに切換可能な複数の切換弁とを備え、前記コントローラは、前記複数の操作装置の入力に応じて、前記第1カット弁、前記第2カット弁、および前記複数の切換弁を制御するものとする。
【0009】
以上のように構成した本発明によれば、ポンプ装置の各吐出ポートから吐出される圧油を複数の切換弁を介して第1バイパスラインまたは第2バイパスラインに合流させることにより、各アクチュエータの必要速度を確保することができる。また、第1アクチュエータ1用の方向切換弁を第1バルブグループに集約し、第2アクチュエータ用の方向切換弁を第2バルブグループに集約したことにより、1つの吐出ポートから吐出される圧油が第1アクチュエータ1と第2アクチュエータ3とで分配されることがないため、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを同時に駆動する複合操作時の分流ロスを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建設機械において、アクチュエータの必要速度を確保しつつ複合操作時の分流ロスを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における油圧ショベルを示す図
【
図2】従来技術における油圧ショベルに搭載された、2ポンプ2バルブのオープンセンタ方式の油圧回路装置を示す図
【
図3】本発明の実施形態における油圧ショベルに搭載された油圧回路装置を示す図
【
図4】本発明の実施形態におけるポンプ装置、方向切換弁、およびカット弁の動作特性を示す図
【
図5】ポンプ要素を実装した電子整流式のポンプ装置の一部を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る油圧ショベルを示す図である。油圧ショベル100は、クローラ式の走行装置7を有する下部走行体101と、下部走行体101上に旋回装置(図示せず)を介して旋回可能に搭載された上部旋回体102とを備えている。走行装置7は走行用油圧モータ8によって駆動され、上部旋回体102は旋回用油圧モータ(図示せず)によって駆動される。
【0014】
上部旋回体102の前部左側には、オペレータが搭乗するキャブ9が設けられている。上部旋回体102の前部右側にはブーム2が回動可能に接続されている。ブーム2は片ロッド式油圧シリンダからなるブームシリンダ1によって駆動される。ブーム2の先端にはアーム4が回動可能に接続されている。アーム4は片ロッド式油圧シリンダからなるアームシリンダ3によって駆動される。アーム4の先端にはバケット6が回動可能に接続されている。バケット6は片ロッド式油圧シリンダからなるバケットシリンダ5によって駆動される。
【0015】
図2は、従来技術における油圧ショベルに搭載された、2ポンプ2バルブのオープンセンタ方式の油圧回路装置を示す図である。
【0016】
第1油圧ポンプ18および第2油圧ポンプ19は、レギュレータ18a,19aを有する可変容量ポンプであり、原動機であるエンジン10によって駆動される。レギュレータ18a,19aは、コントローラ57からの指令に応じて油圧ポンプ18,19の容量(1回転当たりの吐出量)を変化させることにより、油圧ポンプ18,19の吐出流量を変化させる。
【0017】
第1油圧ポンプ18の吐出ポートは、例えばセンタバイパスラインからなる第1バイパスライン51に接続されている。第1バイパスライン51には、上流側から順に、走行右用方向切換弁21、バケット用方向切換弁22、第1ブーム用方向切換弁23、および第2アーム用方向切換弁24が配置されている。第1バイパスライン51を共有する方向切換弁21~24は第1バルブグループ20aを形成している。
【0018】
第2油圧ポンプ19の吐出ポートは、例えばセンタバイパスラインからなる第2バイパスライン52に接続されている。第2バイパスライン52には、上流側から順に、旋回用方向切換弁25、第1アーム用方向切換弁26、第2ブーム用方向切換弁27、予備用方向切換弁28、および走行左用方向切換弁29が配置されている。第2バイパスライン52を共有する方向切換弁25~29は第2バルブグループ20bを形成している。
【0019】
方向切換弁21~29には、それぞれ、センタバイパス通路、メータイン通路、およびメータアウト通路が形成されている。方向切換弁21~24が中立位置にあるときは、センタバイパス通路が開くことで第2バイパスラインが解放され、第1油圧ポンプ18の吐出油がタンク55に流れ込む。同様に、方向切換弁25~29が中立位置にあるときは、センタバイパス通路が開くことで第2バイパスライン52が解放され、第2油圧ポンプ19の吐出油がタンク55に流れ込む。方向切換弁21~29が中立位置から左右いずれかの位置に切り換わると、センタバイパス通路が絞られるとともにメータイン通路が開き、油圧ポンプ18,19の吐出油がメータイン通路を経由してアクチュエータ1,3,5,8に供給され、アクチュエータ1,3,5,8から排出された作動油がメータアウト通路を経由してタンク55に流れ込む。
【0020】
コントローラ57は、複数の操作レバー(ブーム操作レバー56aおよびアーム操作レバー56bのみ図示)からの入力とセンサ情報(エンジン回転数や各部の圧力など)とに応じてコントロールバルブ20に指令を出力する。
【0021】
図2に示す油圧回路装置では、2つの油圧ポンプ18,19の吐出油を合流させてアクチュエータ1,3に供給することでアクチュエータ1,3の必要速度を確保することができる。その一方で、ブーム2とアーム4を複合動作させる場合に、アーム用方向切換弁24,26のメータイン通路の絞りによる分流ロスが生じる。また、油圧ポンプ18,19の摺動部を潤滑保護するためと、アクチュエータ1,3,5,8の応答性を確保するため、ブリードオフ流量によるエネルギロスも生じる。
【0022】
図3は、本実施形態における油圧ショベル100に搭載された油圧回路装置を示す図である。以下、従来技術における油圧回路装置(
図2に示す)との相違点を中心に説明する。
【0023】
図3において、コントロールバルブ20Aは、従来技術のコントロールバルブ20に対し、第2アーム用方向切換弁24と第2ブーム用方向切換弁27との配置が入れ替わっており、第1バルブグループ20aに2つのブーム用方向切換弁23,27が集結し、第2バルブグループ20bに2つのアーム用方向切換弁24,26が集結している。また、第1バルブグループ20aの下流には、第1バイパスライン51を開閉可能な第1カット弁31が設けられており、第2バルブグループ20bの下流には、第2バイパスライン52を開閉可能な第2カット弁32が設けられている。
【0024】
第1ポンプ装置11および第2ポンプ装置12は、図示しない電磁弁のオンオフ制御によって吐出流量を変化させることが可能なデジタルポンプで構成されている。第1ポンプ装置11は4つの吐出ポートを有し、内包された4つのポンプ要素11a~11dにより各吐出ポートの吐出流量を個別に制御することができる。同様に、第2ポンプ装置12は4つの吐出ポートを有し、内包された4つのポンプ要素12a~12dにより各吐出ポートの吐出流量を個別に制御することができる。各ポンプ要素は、それぞれに対応する電磁オンオフ弁(図示せず)がオフのときは圧油を吐出せず、当該電磁オンオフ弁がオンのときはポンプ回転数に応じた流量の圧油を吐出するように構成されており。したがって、これら電磁弁オンオフをオンにする頻度やタイミングを変更することにより、各吐出ポートから吐出される圧油の流量を個別に制御することができる。一般的な可変容量ポンプである斜板式ポンプや斜軸式ポンプの場合は、慣性が大きい傾転機構を駆動するため応答時間は数百msオーダーであるのに対し、デジタルポンプの応答時間は電磁オンオフ弁の応答時間と同程度であり、数ms~数十msオーダーである。したがって、ポンプ装置11,12をデジタルポンプで構成することにより、一般的な可変容量ポンプよりも高い応答性能を得ることができる。また、デジタルポンプは高速で摺動する部分が少ないため、潤滑のための待機時のブリードオフ流量を一般的な可変容量ポンプよりも低減することができる。
【0025】
ポンプ要素11a~11d,12a~12dの各吐出ポートは切換弁ブロック40に接続されている。切換弁ブロック40は切換弁41a~41d,42a~42を有する。ポンプ要素11a~11d,12a~12dの各吐出ポートの接続先は、切換弁41a~41d,42a~42dを介して第1バイパスライン51または第1バイパスライン51に切換可能である。これにより、ポンプ要素11a~11d,12a~12dの吐出油の供給先を個別に切り換えることが可能となる。
【0026】
本実施形態における切換弁ブロック40の油圧回路構成では、第1ポンプ装置11の吐出油は、切換弁41a~41dへの指令が出力されていないときは第1バイパスライン51に供給され、切換弁41a~41dへの指令が出力されているときは第2バイパスライン52に供給される。一方、第2ポンプ装置12の吐出油は、切換弁42a~42dへの指令が出力されていないときは第2バイパスライン52に供給され、切換弁42a~42への指令が出力されているときは第1バイパスライン51に供給される。
【0027】
コントローラ57は、複数の操作装置(ブーム操作レバー56aおよびアーム操作レバー56bのみ図示)からの入力とセンサ情報(エンジン回転数や各部の圧力など)とに応じてポンプコントローラ58,59、切換弁41a~41d,42a~42d、およびコントロールバルブ20Aに指令を出力する。ポンプコントローラ58,59はデジタルポンプ専用のコントローラであり、コントローラ57からの指令に応じてポンプ装置11,12の電磁オンオフ弁に指令を出力し、吐出流量を制御する。
【0028】
図4は、ポンプ装置11,12、方向切換弁21~29、およびカット弁31,32の動作特性を示す図である。横軸のレバー操作量に対し、上図はバルブ開口面積、下図は流量を示している。
【0029】
上図において、実線は方向切換弁21~29におけるバイパスライン開口面積の特性である。バイパスライン開口面積は、レバー操作量の増加に応じて方向切換弁21~29が中立位置から変位すると徐々に減少し、レバー操作量がX3以上でゼロとなる。一点鎖線はアクチュエータへのメータイン開口面積である。アクチュエータへのメータイン開口面積は、レバー操作量がX2以下でゼロとなり、レバー操作量がX2を超えると徐々に増加する。
【0030】
下図において、一点鎖線は従来の油圧回路装置におけるポンプ流量である。従来のポンプ流量は、レバー入力の無い待機時(レバー操作量がX1以下)でも一定の最小流量Q1を吐出している。これはポンプの摺動部を潤滑保護するためと、アクチュエータの動き始めの応答性を確保するためである。ポンプ流量は、レバー操作量がある値を超えると増加を開始し、レバー操作量に応じて徐々に増加する。これはポジティブコントロールと呼ばれる制御方式である。太い実線はアクチュエータへのメータイン流量の特性の一例である。バイパスラインが閉じていない間(レバー操作量が0~X3の間)はポンプの吐出油の一部がバイパスライン経由でタンク55へも流れるため、ポンプ流量をアクチュエータへのメータイン流量よりも大きくする必要がある。その結果、ハッチングで示す部分がブリードオフ流量となり、省エネ性を阻害することになる。
【0031】
そこで本実施形態では、上図に破線で示すようにレバー操作量がX1を超えるとカット弁31,32を閉じ、下図に太線で示すようにレバー操作量がX2に達するまでポンプ流量を最小流量Q1よりも小さい微小流量Q0とし、レバー操作量がX2以上でアクチュエータのメータイン流量(必要流量)と同じ流量としている。これにより、待機時のブリードオフ流量を低減するとともに、ハーフレバー操作時およびフルレバー操作時のブリードオフ流量をゼロにすることができる。また、前述したように本実施形態では数ms~数十msオーダーの高応答が得られるデジタルポンプを用いているため、待機時のポンプ吐出流量が微小であってもレバー操作に瞬時に応答して必要流量を吐出することができるため、アクチュエータの動き始めの応答性を確保することができる。
【0032】
次に、ブーム2とアーム4を複合動作させる場合の油圧回路装置の動作を
図3を参照して説明する。ブーム操作レバー56aが操作されると、カット弁31が閉じ、第1ブーム用方向切換弁23および第2ブーム用方向切換弁27が中立位置から変位し、第1ポンプ装置11からの圧油によりブームシリンダ1が駆動される。アーム操作レバー56bが操作されると、カット弁32が閉じ、第1アーム用方向切換弁26および第2アーム用方向切換弁24が中立位置から変位し、第2ポンプ装置12からの圧油によりアームシリンダ3が駆動される。ブーム操作レバー56aとアーム操作レバー56bが同時に操作された場合はこれらの動作が同時に行われる。
【0033】
ブームシリンダ1とアームシリンダ3は互いに重複しないポンプ要素11a~11d,12a~12dによって駆動されるため、各ポンプ要素11a~11d,12a~12dは接続された各アクチュエータ1,3の負荷に応じた最低限の圧力で作動油を吐出すればよい。例えばブームシリンダ1の負荷圧力を20MPa、アームシリンダ3の負荷圧を5MPaとすると、配管やバルブで1MPa程度の圧損があるとして、第1ポンプ装置11は21MPa程度の圧力、第2ポンプ装置12は6MPa程度の圧力を供給すればよい。このように負荷圧力が大きく異なる複数のアクチュエータ1,3を互いに重複しないポンプ要素11a~11d,12a~12dで駆動することにより、従来の油圧回路装置のように方向切換弁のメータイン通路を極端に絞ってポンプ吐出圧を大きく減圧する必要が無くなるため、分流ロスを低減することが可能となる。
【0034】
また、例えばブームシリンダ1の必要流量が第1ポンプ装置11だけでは賄えない場合は、例えば切換弁42aを切り換えることにより、第2ポンプ装置12のポンプ要素12aの流量をブームシリンダ1に合流させることができる。さらに、切換弁42a~42dを切り換えることにより、第2ポンプ装置12の全流量をブームシリンダ1に合流させることができる。このように、本実施形態では、8個の吐出ポートの全てをブームシリンダ1またはアームシリンダ3に接続することができるため、従来の2ポンプ方式と合計ポンプ容量が同程度であれば同等のアクチュエータ速度を確保することが可能となる。
【0035】
以下、ポンプ装置11,12の構成について詳しく説明する。ポンプ装置11,12はそれぞれ、ポンプシャフトと、ポンプシャフトの回転に伴って周期的に作動容積202が変化する少なくとも3つの作動室とを備える。ポンプ装置11,12の各作動室は、作動室と低圧マニホールドとの間の作動油の流れを制御する低圧弁と、作動室と吐出ポートに延びる高圧マニホールドとの間の作動油の流れを制御する高圧弁とを有する。作動室は、複数のポンプ要素に形成される。各ポンプ要素は、1つ以上の作動室(典型的には2つ以上の作動室)を内包し、ポンプ要素内の各作動室に共通でかつ吐出ポートに連通している高圧マニホールド213に接続されている。ポンプコントローラ58(59)は、各高圧マニホールドを経由して各吐出ポートに至るまでの各ポンプ要素の作動容積202の変化が作動油の各需要に応じて制御されるように、作動容積202の各サイクルにおいて、各作動室が、作動室の低圧マニホールドと高圧マニホールドとの間の作動油の移動を伴う有効サイクル、または、作動室の低圧マニホールドと高圧マニホールドとの間の作動油の移動を伴わない無効サイクルのいずれを経るかを決定するために、作動容積202のサイクルと位相的に相関して、作動室の少なくとも低圧弁209を能動的に制御するように構成されている。
【0036】
図5は、ポンプ要素を実装した電子整流式のポンプ装置11,12の一部を示す模式図である。ポンプ装置11(12)は、シリンダの内面によって区画された作動容積202を有するシリンダ201を備えた複数の作動室と、偏心カム205によってポンプシャフト204に対して駆動され、シリンダ内で往復してシリンダの作動容積202を周期的に変化させるピストン203とを備えている。シャフト位置及び/又は速度センサ206は、ポンプシャフト204の瞬時の角度位置及び/又は回転速度を決定し、これを信号ライン208を介してポンプコントローラ58(59)に送信する。これにより、ポンプコントローラ58(59)は、各シリンダのサイクルの瞬時の位相を決定することができる。
【0037】
作動室はそれぞれ、電気駆動式の面封止ポペット弁からなる低圧弁209と連携している。低圧弁209は、1つの作動室と連携しており、作動室から低圧マニホールド210に延びる通路を選択的に封鎖するように動作可能である。低圧マニホールド210は、1または複数の作動室、あるいは実際にはここで図示するようにポンプ要素の全ての作動室をタンク55(
図3に示す)に接続しても良い。低圧弁209は、常開型の電磁作動弁であり、作動室内の圧力が低圧マニホールド210内の圧力以下であるとき(すなわち吸入ストローク中)に受動的に開いて作動室と低圧マニホールド210とを連通状態にするが、ポンプコントローラ58(59)の能動的制御下で低圧弁制御ライン211を介して選択的に閉じて作動室と低圧マニホールド210とを非連通状態にすることができる。なお、低圧弁209は常閉弁であっても良い。
【0038】
作動室はそれぞれ、圧力作動式吐出バルブからなる高圧弁212とさらに連携している。高圧弁212は、それぞれの作動室から外側に開くように構成されており、作動室から高圧マニホールド213に延びるそれぞれの流路を封鎖するように動作可能である。高圧マニホールド213は、ポンプ要素内の作動室を接続し、ポンプ要素内の作動室から吐出ポート214に作動油を導く。高圧弁212は、弁内のバイアス部材の力を加味した弁の前後差圧により受動的に開く常閉型圧力開放逆止弁として機能する。いくつかの実施形態では、高圧弁212はまた、連携している作動室内の圧力によって開かれると、ポンプコントローラ58(59)が高圧弁制御ライン215を介して選択的に開いたままにすることができる常閉型電磁作動逆止弁として機能する。通常、高圧弁212は、ポンプコントローラ58(59)によって高圧マニホールド213内の圧力に抗して開放させることはできない。高圧弁212は、さらに、高圧マニホールド213内に圧力が立っているが作動室内に圧力が立っていない場合に、ポンプコントローラ58(59)の制御下で開放可能としてもよく、部分的に開放可能としても良い。
【0039】
ポンプモードでは、ポンプコントローラ58(59)は、1または複数の低圧弁209を、通常は、連携している作動室のサイクルにおける最大容積点の近くで能動的に閉じ、低圧マニホールド210への経路を閉じ、それによって後続の収縮ストロークで、連携している高圧弁212を介して作動油を外に導き(ただし高圧弁212を積極的には開放せず)、作動油の移動を伴う有効サイクルを生じさせることによって、ポンプ装置11,12による作動室から高圧マニホールド213への作動油の流量を選択する。あるいは、低圧弁209を作動室のサイクル全体を通して開いたままにし(または、作動室をサイクル全体を通して密閉し)、作動油の移動を伴わない無効サイクルを生じさせても良い。ポンプコントローラ58(59)は、ポンプ要素からの流量に対する要求を満たすために、同一の高圧マニホールド213及び吐出ポート214に接続されているポンプ要素の作動室により、選択された作動油の流量を満たすような流れを生成するか又は軸トルクもしくは動力を生成するように、有効サイクルおよび無効サイクルの数および順序を選択する。
【0040】
ポンプコントローラ58(59)は、低圧弁209を閉じるか開いたままにするかをサイクルごとに決定して有効サイクルと無効サイクルのどちらかを選択するだけでなく、変化する作動容積202に対して低圧弁209及び/又は高圧弁212の閉鎖の正確な位相を変化させ、それによって高圧マニホールド213から低圧マニホールド210への(又はその逆の)作動油の流量を選択するように動作可能である。
【0041】
低圧マニホールド210および高圧マニホールド213上の矢印は、モーターモードでの作動油の流れを示しており、ポンプモードでは流れが逆になる。
【0042】
図5に示す例では、全ての作動室が同一の高圧マニホールド213及び吐出ポート214に接続されているが、典型的には、ポンプ装置11,12は、それぞれの高圧マニホールド213、吐出ポート214、及び要求信号を有する1または複数の別個のポンプ要素を形成する作動室をさらに備える。要求信号には、任意の好適な単位を使用して良い。1つの既知の例では、要求信号は、ポンプシャフト204の1回転あたりの最大可能容積変化量である容積変化率F
dとして表される。目標流量は、体積換算で、容積変化率F
dとポンプシャフト204の回転速度との積となる。
【0043】
(まとめ)
本実施形態では、原動機10と、吐出流量を個別に制御可能な複数の吐出ポートを有し、原動機10によって駆動されるポンプ装置11,12と、複数のアクチュエータ1,3,5,8と、ポンプ装置11,12から複数のアクチュエータ1,3,5,8に供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁21~29と、複数のアクチュエータ1,3,5,8を駆動するための操作信号を生成する複数の操作装置56a,56bと、複数の操作装置56a,56bの入力に応じてポンプ装置11,12および複数の方向切換弁21~29を制御するコントローラ57とを備え、複数の方向切換弁21~29は、それぞれ、第1バイパスライン51または第2バイパスライン52上に配置され、複数の方向切換弁21~29のうち第1バイパスライン51上に配置された方向切換弁21~23,27が第1バルブグループを構成し、複数の方向切換弁21~29のうち第2バイパスライン52上に配置された方向切換弁24~26,28,29が第2バルブグループを構成する建設機械100において、複数のアクチュエータ1,3,5,8は、第1アクチュエータ1と第2アクチュエータ3とを含み、複数の方向切換弁21~29のうち第1アクチュエータ1用の方向切換弁23,27は第1バルブグループ20aに属し、複数の方向切換弁21~29のうち第2アクチュエータ3用の方向切換弁24,26は第2バルブグループ20bに属し、建設機械100は、第1バルブグループ20aの下流で第1バイパスライン51を開閉可能な第1カット弁31と、第2バルブグループ20bの下流で第2バイパスライン52を開閉可能な第2カット弁32と、前記複数の吐出ポートの各接続先を第1バイパスライン51または第2バイパスライン52に切換可能な複数の切換弁41a~41d,42a~42dとを備え、コントローラ57は、複数の操作装置56a,56bの入力に応じて、第1カット弁31、第2カット弁32、および複数の切換弁41a~41d,42a~42dを制御する。
【0044】
以上のように構成した本実施形態によれば、ポンプ装置11,12の各吐出ポートから吐出される圧油を複数の切換弁41a~41d,42a~42dを介して第1バイパスライン51または第2バイパスライン52に合流させることにより、各アクチュエータ1,3,5,8の必要速度を確保することができる。また、第1アクチュエータ1用の方向切換弁23,27を第1バルブグループ20aに集約し、第2アクチュエータ3用の方向切換弁24,26を第2バルブグループ20bに集約したことにより、1つの吐出ポートから吐出される圧油が第1アクチュエータ1と第2アクチュエータ3とで分配されることがないため、第1アクチュエータ1と第2アクチュエータ3とを同時に駆動する複合操作時の分流ロスを防ぐことができる。なお、本実施形態では、ポンプ装置11,12を複数の吐出ポートを有するデジタルポンプで構成したが、複数の吐出ポートを有する可変容量ポンプ、または1つの吐出ポートを有する複数の可変容量ポンプで構成しても良い。
【0045】
また、本実施形態におけるコントローラ57は、第1カット弁31、第2カット弁32、複数の切換弁41a~41d,42a~42d、およびポンプ装置11,12から第1バイパスライン51および第2バイパスライン52のそれぞれへの圧油の流れを、複数の操作装置56a,56bの入力に応じて協調して制御する。これにより、オペレータの意図に応じた建設機械100の動作を実現させることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態におけるコントローラ57は、ポンプ装置11,12が第1バルブグループ20aに圧油を供給するように制御される前に、第1バルブグループ20aの下流側の第1バイパスライン51を閉じるように第1カット弁31を制御する、および/または、ポンプ装置11,12が第2バルブグループ20bに圧油を供給するように制御される前に、第2バルブグループ20bの下流側の第2バイパスライン52を閉じるように第2カット弁32を制御する。これにより、アクチュエータ1,3,5,8を駆動しているときのブリードオフ流量がゼロになるため、省エネ性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態におけるコントローラ57は、第1アクチュエータ1に対する複数の操作装置56a,56bの入力量である第1操作信号量が第1閾値X1を超えた場合に第1カット弁31を閉じ、前記第1操作信号量が第1閾値X1よりも大きい第2閾値X2を超えた場合に、前記複数の吐出ポートのうち第1バルブグループ20aに接続された1つ以上の吐出ポートの吐出流量と前記第1操作信号量に応じて設定された第1アクチュエータ1の必要流量とが一致するようにポンプ装置11,12を制御し、第2アクチュエータ3に対する複数の操作装置56a,56bの入力量である第2操作信号量が第1閾値X1を超えた場合に第2カット弁32を閉じ、前記第2操作信号量が第2閾値X2を超えた場合に、前記複数の吐出ポートのうち第2バルブグループ20bに接続された1つ以上の吐出ポートの吐出流量と前記第2操作信号量に応じて設定された第2アクチュエータ3の必要流量とが一致するようにポンプ装置11,12を制御する。これにより、アクチュエータ1,3を駆動しているときのブリードオフ流量がゼロになるため、省エネ性をさらに向上させることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態における複数の方向切換弁21~29は、複数のオープンセンタ方式の方向切換弁21~29である。これにより、オープンセンタ方式の方向切換弁21~29を備える油圧回路装置が搭載された建設機械100において、アクチュエータ1,3の必要速度を確保しつつ複合操作時の分流ロスを低減することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態における第1バイパスライン51および第2バイパスライン52は、それぞれ、センタバイパスラインで構成されている。これにより、複数の方向切換弁21~29がセンタバイパスライン上に配置される油圧回路装置が搭載された建設機械100において、アクチュエータ1,3の必要速度を確保しつつ複合操作時の分流ロスを低減することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態における第1カット弁31および第2カット弁32は、それぞれ、比例流量弁またはオンオフ弁で構成されている。これにより、比例流量弁またはオンオフ弁で構成された第1カット弁31および第2カット弁32により、ブリードオフ流量を低減することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態における建設機械100は、ポンプ装置11(12)を制御するポンプコントローラ58(59)を備え、ポンプ装置11(12)は、ポンプシャフト204と、ポンプシャフト204の回転に伴って周期的に作動容積202が変化する作動室を3つ以上有し、前記作動室は、前記作動室と低圧マニホールド210との間の作動油の流れを制御する低圧弁と、前記作動室と高圧マニホールド213との間の作動油の流れを制御する高圧弁とを有し、前記作動室は、複数のポンプ要素に形成され、前記複数のポンプ要素は、それぞれ、前記作動室を1つ以上内包し、内包している前記作動室に共通しかつ吐出ポート214に連通している高圧マニホールド213に接続されており、ポンプコントローラ58(59)は、高圧マニホールド213を経由して吐出ポート214に至るまでの作動容積202の変化が、吐出ポート214から吐出される作動油の各要求流量に応じて制御されるように、作動容積202の各サイクルにおいて、前記作動室が、低圧マニホールド210と高圧マニホールド213との間の作動油の移動を伴う有効サイクル、または、低圧マニホールド210と高圧マニホールド213との間の作動油の移動を伴わない無効サイクルのいずれを経るかを決定するために、作動容積202のサイクルと位相的に相関して、前記作動室の少なくとも低圧弁209を能動的に制御するように構成されている。これにより、待機時のブリードオフ流量を低減して省エネ性を向上させるとともに、各アクチュエータ1,3,5,8の応答性を向上させることが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1…ブームシリンダ(第1アクチュエータ)、2…ブーム、3…アームシリンダ(第2アクチュエータ)、4…アーム、5…バケットシリンダ(アクチュエータ)、6…バケット、7…走行装置、8…走行用油圧モータ(アクチュエータ)、9…キャブ、10…エンジン(原動機)、11…第1ポンプ装置、11a~11d…ポンプ要素、12…第2ポンプ装置、12a~12d…ポンプ要素、18…第1油圧ポンプ、18a…レギュレータ、19…第2油圧ポンプ、19a…レギュレータ、20,20A…コントロールバルブ、20a…第1バルブグループ、20b…第2バルブグループ、21…走行右用方向切換弁、22…バケット用方向切換弁、23…第1ブーム用方向切換弁、24…第2アーム用方向切換弁、25…旋回用方向切換弁、26…第1アーム用方向切換弁、27…第2ブーム用方向切換弁、28…予備用方向切換弁、29…走行左用方向切換弁、31…第1カット弁、32…第2カット弁、40…切換弁ブロック、41a~41d…切換弁、42…切換弁、42a~42d…切換弁、51…第1バイパスライン(センタバイパスライン)、52…第2バイパスライン(センタバイパスライン)、55…タンク、56a…ブーム操作レバー(操作装置)、56b…アーム操作レバー(操作装置)、57…コントローラ、58,59…ポンプコントローラ、100…油圧ショベル(建設機械)、101…下部走行体、102…上部旋回体、201…シリンダ、202…作動容積、203…ピストン、204…ポンプシャフト、205…偏心カム、206…シャフト位置及び/又は速度センサ、208…信号ライン、209…低圧弁、210…低圧マニホールド、211…低圧弁制御ライン、212…高圧弁、213…高圧マニホールド、214…吐出ポート、215…高圧弁制御ライン。