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特開2025-15350建設機械の油圧回路システム及びポンプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015350
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】建設機械の油圧回路システム及びポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/17 20060101AFI20250123BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20250123BHJP
   F04B 1/0452 20200101ALI20250123BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20250123BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
F15B11/17
F15B11/02 M
F04B1/0452
F15B11/00 D
E02F9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118712
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】520196553
【氏名又は名称】ダンフォス・スコットランド・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DANFOSS SCOTLAND LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏政
【テーマコード(参考)】
2D003
3H070
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AB05
2D003CA04
2D003DA04
3H070AA01
3H070BB02
3H070BB15
3H070BB23
3H070CC34
3H070DD64
3H089AA21
3H089AA72
3H089AA74
3H089BB15
3H089BB27
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB43
3H089EE36
3H089GG02
3H089HH01
3H089HH05
3H089JJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の吐出ポートの流量を独立して制御可能な2台の油圧ポンプを配置したタンデムポンプと複数の切換弁を用いた油圧回路システム及びポンプ装置において,操作性を向上し,かつポンプ装置の小型化と油圧ホースの削減により搭載性を向上できるようにする。
【解決手段】吐出ポートから吐出される圧油の流量を独立に制御可能な4つのポンプ要素を内包し,シャフト14の軸方向に並置してタンデムポンプ30を構成する第1及び第2油圧ポンプ11,12は,共有部品であるポートブロック13のブロック表面に吐出ポートを開口させ,ブロック表面に,切換弁41a~41d,42a~42dを搭載し,サービスポート43,44を形成したマニホールドブロック40が結合されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と,
前記原動機により駆動されるポンプ装置と,
前記ポンプ装置から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと,
前記ポンプ装置から前記複数のアクチュエータへ供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁とを備え,
前記ポンプ装置は,
前記原動機により駆動されて回転するシャフトの軸方向に間隔をあけて配置された第1及び第2油圧ポンプを有するタンデムポンプとを備えた建設機械の油圧回路システムであって,
複数の第1切換弁及び複数の第2切換弁を搭載し,複数のサービスポートを形成したマニホールドブロックを更に備え,
前記第1油圧ポンプは,複数の第1吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な複数の第1ポンプ要素を内包し,
前記第2油圧ポンプは,複数の第2吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な複数の第2ポンプ要素を内包し,
前記第1及び第2油圧ポンプは,前記第1及び第2油圧ポンプの共有部品として構成され,前記複数の第1吐出ポートと前記複数の第2吐出ポートを側部に開口させたポートブロックを有し,
前記マニホールドブロックは,前記ポートブロックの前記複数の第1及び第2吐出ポートから流入した圧油の流れ方向を前記複数の第1及び第2切換弁によって切り換え,当該圧油を前記複数のサービスポートのいずれかに導くように構成され,
前記マニホールドブロックは,前記複数の第1及び第2吐出ポートが開口する前記ポートブロックの前記側部に結合され,
前記マニホールドブロックの複数のサービスポートは,前記複数の方向制御弁をバルブハウジング内に納めたコントロールバルブに複数の配管を介して接続されていることを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記マニホールドブロックの複数のサービスポートは前記コントロールバルブに設けられた複数のポンプポートに前記複数の配管を介して接続され,
前記複数のサービスポートと前記複数のポンプポートの数が前記タンデムポンプの第1及び第2油圧ポンプの数と同じであることを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記複数のアクチュエータは操作される頻度が比較的高い特定の第1アクチュエータと特定の第2アクチュエータを含み,
前記複数の方向制御弁は,前記コントロールバルブ内において,前記特定の第1アクチュエータ用の2つの方向制御弁を含む第1バルブグループと,前記特定の第2アクチュエータ用の2つの方向制御弁を含む第2バルブグループとに分けられ,
前記複数のサービスポートは第1及び第2サービスポートを含み,前記複数の配管は第1及び第2配管を含み,
前記コントロールバルブは,前記第1及び第2バルブグループにそれぞれ接続された第1及び第2ポンプポートを有し,前記第1及び第2ポンプポートは前記第1及び第2配管を介して前記第1及び第2サービスポートに接続されていることを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記複数のサービスポートは第1及び第2サービスポートを含み,
前記複数の第1及び第2切換弁は,初期位置である第1位置と非初期位置である第2位置とに切り換え可能であり,
前記複数の第1切換弁は,前記第1位置において,前記複数の第1吐出ポートを前記第1サービスポートに連通させ,前記第2位置において,前記複数の第1吐出ポートを前記第2サービスポートに連通させ,
前記複数の第2切換弁は,前記第1位置において,前記複数の第2吐出ポートを前記第2サービスポートに連通させ,前記第2位置において,前記複数の第2吐出ポートを前記第1サービスポートに連通させることを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記第1及び第2油圧ポンプの前記複数の第1及び第2ポンプ要素は,それぞれ,4つの第1及び第2ポンプ要素であり,前記複数の第1及び第2吐出ポートは,それぞれ,4つの第1及び第2吐出ポートであり,
前記マニホールドブロックの前記複数の第1及び第2切換弁は,それぞれ,4つの第1及び第2切換弁であることを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記第1油圧ポンプは,前記シャフトの軸方向に間隔をあけて配置された複数の第1ラジアルピストンポンプを有し,
前記2つの第1ラジアルピストンポンプは,それぞれ,前記シャフトに対して放射状に配置された複数のピストンポンプを有し,前記複数のピストンポンプの前記複数のピストンポンプは複数のグループに分けられ,グループ毎にグループ内の各ピストンポンプから吐出された圧油を合流して前記第1油圧ポンプの前記複数のポンプ要素の1つを構成し,
前記第2油圧ポンプは,前記シャフトの軸方向に間隔をあけて配置された複数の第2ラジアルピストンポンプを有し,
前記2つの第2ラジアルピストンポンプは,それぞれ,前記シャフトに対して放射状に配置された複数のピストンポンプを有し,前記複数のピストンポンプの前記複数のピストンポンプは複数のグループに分けられ,グループ毎にグループ内の各ピストンポンプから吐出された圧油を合流して前記第2油圧ポンプの前記複数のポンプ要素の1つを構成することを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記複数の第1吐出ポートは,前記ポートブロックの前記側部の第1表面に形成され,前記複数の第2吐出ポートは,前記ポートブロックの前記側部の第1表面又は前記第1表面に平行な第2表面に形成されていることを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【請求項8】
原動機により駆動されて回転するシャフトの軸方向に間隔をあけて配置された第1及び第2油圧ポンプを備えたタンデムポンプを備えた建設機械のポンプ装置であって,
複数の第1切換弁及び複数の第2切換弁を搭載し,複数のサービスポートを形成したマニホールドブロックを更に備え,
前記第1油圧ポンプは,複数の第1吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な複数の第1ポンプ要素を内包し,
前記第2油圧ポンプは,複数の第2吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な複数の第2ポンプ要素を内包し,
前記第1及び第2油圧ポンプは,前記第1及び第2油圧ポンプの共有部品として構成され,前記複数の第1吐出ポートと前記複数の第2吐出ポートを側部に開口させたポートブロックを有し,
前記マニホールドブロックは,前記ポートブロックの前記複数の第1及び第2吐出ポートから流入した圧油の流れ方向を前記複数の第1及び第2切換弁によって切り換え,当該圧油を前記複数のサービスポートのいずれかに導くように構成され,
前記マニホールドブロックは,前記複数の第1及び第2吐出ポートが開口する前記ポートブロックの前記側部に結合されることを特徴とする建設機械のポンプ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の建設機械のポンプ装置において,
前記複数のサービスポートは第1及び第2サービスポートを含み,
前記複数の第1及び第2切換弁は,初期位置である第1位置と非初期位置である第2位置とに切り換え可能であり,
前記複数の第1切換弁は,前記第1位置において,前記複数の第1吐出ポートを前記第1サービスポートに連通させ,前記第2位置において,前記複数の第1吐出ポートを前記第2サービスポートに連通させ,
前記複数の第2切換弁は,前記第1位置において,前記複数の第2吐出ポートを前記第2サービスポートに連通させ,前記第2位置において,前記複数の第2吐出ポートを前記第1サービスポートに連通させることを特徴とする建設機械のポンプ装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の建設機械のポンプ装置において,
前記第1及び第2油圧ポンプの前記複数の第1及び第2ポンプ要素は,それぞれ,4つの第1及び第2ポンプ要素であり,前記複数の第1及び第2吐出ポートは,それぞれ,4つの第1及び第2吐出ポートであり,
前記マニホールドブロックの前記複数の第1及び第2切換弁は,それぞれ,4つの第1及び第2切換弁であることを特徴とする建設機械のポンプ装置。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の建設機械のポンプ装置において,
前記第1油圧ポンプは,前記シャフトの軸方向に間隔をあけて配置された複数の第1ラジアルピストンポンプを有し,
前記複数の第1ラジアルピストンポンプは,それぞれ,前記シャフトに対して放射状に配置された複数のピストンポンプを有し,前記複数のピストンポンプは複数のグループに分けられ,グループ毎にグループ内の各ピストンポンプから吐出された圧油を合流して前記第1油圧ポンプの前記複数のポンプ要素の1つを構成し,
前記第2油圧ポンプは,前記シャフトの軸方向に間隔をあけて配置された複数の第2ラジアルピストンポンプを有し,
前記複数の第2ラジアルピストンポンプは,それぞれ,前記シャフトに対して放射状に配置された複数のピストンポンプを有し,前記複数のピストンポンプは複数のグループに分けられ,グループ毎にグループ内の各ピストンポンプから吐出された圧油を合流して前記第2油圧ポンプの前記複数のポンプ要素の1つを構成することを特徴とする建設機械のポンプ装置。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載の建設機械のポンプ装置において,
前記複数の第1吐出ポートは,前記ポートブロックの前記側部の第1表面に形成され,前記複数の第2吐出ポートは,前記ポートブロックの前記側部の第1表面又は前記第1表面に平行な第2表面に形成されていることを特徴とする建設機械のポンプ装置。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1つに記載の建設機械の油圧回路システムにおいて,
前記第1及び第2油圧ポンプは,各々,ポンプシャフトを有し,かつ
前記ポンプシャフトの回転に伴って周期的に容積が変化する少なくとも3つの作動室を有し,
前記第1及び第2油圧ポンプの各作動室は,
前記作動室と低圧マニホールドとの間の圧油の流れを制御する低圧弁と,
前記作動室と高圧マニホールドとの間の圧油の流れを制御する高圧弁とを有し,
前記第1及び第2油圧ポンプの作動室は複数のポンプ要素を形成し,各ポンプ要素は1つ又は複数の作動室を有し,かつ各ポンプ要素の1つ又は複数の作動室に共通に設けられた前記高圧マニホールドに接続され,
コントローラを更に備え,前記コントローラは,前記作動室の容積サイクルに位相的に相関して少なくとも前記低圧弁を能動的に制御することで,前記作動室の各容積サイクルに対して,前記低圧マニホールドと前記高圧マニホールドとの間に圧油の正味押しのけ容積を形成する有効サイクルと,前記低圧マニホールドと前記高圧マニホールドとの間に圧油の正味押しのけ容積を形成しない非有効サイクルのいずれを各作動室が行うかを決定し,圧油のそれぞれの要求流量に応じて,前記高圧マニホールドのそれぞれを介して前記吐出ポートのそれぞれに至る各ポンプ要素の作動室の正味押しのけ容積を制御することを特徴とする建設機械の油圧回路システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,複数の吐出ポートの流量をそれぞれ独立して制御可能なポンプ装置を搭載した建設機械の油圧回路システム及びポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルに代表される建設機械の油圧回路システムに用いられるポンプ装置として,特許文献1に,フロントポンプとリアポンプの2台のポンプを軸方向に間隔をあけて配置した(すなわちタンデム配置した)タンデムポンプと呼ばれるポンプ装置が記載されている。このタンデムポンプにおいては,フロントポンプとリアポンプは,それぞれ,2つの吐出流量を生成する2フロータイプのピストンポンプとして構成されている。また,フロントポンプとリアポンプの間にポートブロックを介在させ,ポートブロックの異なる側面に4つの吐出ポートを2つずつに分けて開口させることで,4つの吐出流量を取り出すことができる。
【0003】
また,特許文献2には,4つの吐出ポートの流量をそれぞれ独立して制御可能な油圧ポンプを備えた油圧回路システムが記載されている。4つの吐出ポートは16個の切換弁を介して4つの負荷ポート油路に接続され,切換弁を切り換えることでアクチュエータの要求に応じた数の吐出ポートを負荷ポート油路に接続し,要求に応じた流量の圧油をアクチュエータに供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5027878号公報
【特許文献2】米国2019/0211849A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタンデムポンプは,フロントポンプとリアポンプの間に配置されたポートブロックの異なる側面に4つの吐出ポートを2つずつに分けて開口させ,4つの吐出流量を取り出せるようにしたことで,ポートブロックを小型化し,タンデムポンプ全体の小型化を図っている。しかし,フロントポンプとリアポンプはそれぞれ2つの吐出ポートを備えたスプリットフローポンプと呼ばれるポンプであり,2つの吐出流量を独立して制御することはできない。
【0006】
特許文献2に記載の油圧回路システムは,1台のポンプから4つの吐出流量を取り出せ,かつ4つの吐出流量を独立して制御可能である。また,アクチュエータの要求に応じて切換弁を切り換え,アクチュエータに接続される吐出ポートの数を変更することで,要求に応じた流量の圧油をアクチュエータに供給することができる。
【0007】
しかし,特許文献2に記載の油圧回路システムにおいては,1台のポンプが4つの吐出ポートを備え,この4つの吐出ポートから4つの吐出流量を取り出すため,4つの吐出ポートを16個の切換弁を含む切換弁ブロックに4本の油圧ホースで接続する必要がある。このためポンプが大型化しかつホースレイアウトが複雑となり,建設機械への搭載性が低下するという課題がある。
【0008】
この課題は,ポンプ(吐出ポート)の数を増やして操作性を向上させる場合に特に顕著となる。
【0009】
すなわち,油圧ショベルのように複数のアクチュエータを駆動する建設機械においては,アクチュエータ駆動時の操作性を向上するために,アクチュエータに接続されるポンプ(吐出ポート)数を増やすことが必要であり,これを実現するためには,特許文献2に記載のような複数の吐出ポートの流量を独立に制御できる油圧ポンプを複数台用いることが好適である。例えば油圧ポンプを2台を用いてタンデムポンプとした場合,独立に流量制御できる吐出ポート数が8個に増えるので,アクチュエータに必要な吐出ポート数を細かく変更することができ,切換に伴うアクチュエータの速度変動も滑らかになるので,アクチュエータ駆動時の操作性の向上につながる。
【0010】
しかし,特許文献2に記載の油圧ポンプを例えば2台用いてタンデム配置した場合,吐出ポートの数が8個に増え,かつ8個の吐出ポートを切換弁に接続する油圧ホースの数も8本に増えるため,油圧源(ポンプ装置)が大型化し,かつホースレイアウトが複雑となり,ポンプ装置の搭載性が著しく低下する。
【0011】
本発明の目的は,複数の吐出ポートの流量を独立して制御可能な2台の油圧ポンプを軸方向に間隔をあけて配置したタンデムポンプと複数の切換弁を用いて油圧回路システムのポンプ装置を構成する場合に,アクチュエータ駆動時の操作性を向上し,かつポンプ装置の小型化と油圧ホースの削減により建設機械への搭載性を向上した建設機械の油圧回路システム及びポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために,本発明は,原動機と,前記原動機により駆動されるポンプ装置と,前記ポンプ装置から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータと,前記ポンプ装置から前記複数のアクチュエータへ供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁とを備え,前記ポンプ装置は,前記原動機により駆動されて回転するシャフトの軸方向に間隔をあけて配置された第1及び第2油圧ポンプを有するタンデムポンプとを備えた建設機械の油圧回路システムであって,複数の第1切換弁及び複数の第2切換弁を搭載し,複数のサービスポートを形成したマニホールドブロックとを備え,前記第1油圧ポンプは,2つ以上の第1吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な2つ以上の第1ポンプ要素を内包し,前記第2油圧ポンプは,2つ以上の第2吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な2つ以上の第2ポンプ要素を内包し,前記第1及び第2油圧ポンプは,前記第1及び第2油圧ポンプの共有部品として構成され,前記2つ以上の第1吐出ポートと前記2つ以上の第2吐出ポートを側部に開口させたポートブロックを有し,前記マニホールドブロックは,前記ポートブロックの前記2つ以上の第1及び第2吐出ポートから流入した圧油の流れ方向を前記複数の第1及び第2切換弁によって切り換え,当該圧油を前記複数のサービスポートのいずれかに導くように構成され,前記マニホールドブロックは,前記2つ以上の第1及び第2吐出ポートが開口する前記ポートブロックの前記側部に結合され,前記マニホールドブロックの複数のサービスポートは,前記複数の方向制御弁をバルブハウジング内に納めたコントロールバルブに複数の配管を介して接続されるものとする。
【0013】
また,上記の目的を達成するために,本発明は,原動機により駆動されて回転するシャフトの軸方向に間隔をあけて配置された第1及び第2油圧ポンプを備えたタンデムポンプを備えた建設機械のポンプ装置であって,複数の第1切換弁及び複数の第2切換弁を搭載し,複数のサービスポートを形成したマニホールドブロックを更に備え,前記第1油圧ポンプは,2つ以上の第1吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な2つ以上の第1ポンプ要素を内包し,前記第2油圧ポンプは,2つ以上の第2吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な2つ以上の第2ポンプ要素を内包し,前記第1及び第2油圧ポンプは,前記第1及び第2油圧ポンプの共有部品として構成され,前記2つ以上の第1吐出ポートと前記2つ以上の第2吐出ポートを側部に開口させたポートブロックを有し,前記マニホールドブロックは,前記ポートブロックの前記2つ以上の第1及び第2吐出ポートから流入した圧油の流れ方向を前記複数の第1及び第2切換弁によって切り換え,当該圧油を前記複数のサービスポートのいずれかに導くように構成され,前記マニホールドブロックは,前記2つ以上の第1及び第2吐出ポートが開口する前記ポートブロックの前記側部に結合されるものとする。
【0014】
このように本発明においては,第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの2台の油圧ポンプでタンデムポンプを構成し,その第1油圧ポンプと第2油圧ポンプのそれぞれを,2つ以上の第1吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な2つ以上の第1ポンプ要素及び2つ以上の第2吐出ポートから吐出される圧油の流れを独立に制御可能な2つ以上の第2ポンプ要素を内包する構成としたので,ポンプ装置の吐出ポート(ポンプ要素)数を増やすことが可能となり,要求流量に応じてアクチュエータに接続される吐出ポートの数(ポンプ要素の数)を増減し,吐出流量をきめ細かく制御してアクチュエータの駆動時の操作性を向上することができる。
【0015】
また,そのようなタンデムポンプを備えたポンプ装置において,第1及び第2油圧ポンプの共有部品として構成されたポートブロックの側部に第1吐出ポートと第2吐出ポートを開口させ,第1及び第2切換弁を搭載し複数のサービスポートを形成したマニホールドブロックを第1及び第2吐出ポートが開口するポートブロックの前記側部に結合したので,ポートブロックの吐出ポートをマニホールドブロックに接続する多数の油圧ホースを全て無くすことができ,ポンプ装置の小型化と油圧ホースの削減により建設機械への搭載性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,複数の吐出ポートの流量を独立して制御可能な2台の油圧ポンプをタンデム配置したタンデムポンプと複数の切換弁を用いて油圧回路システムのポンプ装置を構成する場合に,アクチュエータ駆動時の操作性を向上し,かつポンプ装置の小型化と油圧ホースの削減により建設機械への搭載性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態による油圧回路システムを搭載した建設機械の代表例である油圧ショベルを示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態による油圧回路システムの回路構成を示す図である。
図3】ポンプ装置のシャフトに沿った縦断面図である。
図4図3のA-A線に沿ったポンプ装置の縦断面図である。
図5】ポンプ装置の部分断面上面図である。
図6図3のB-B線に沿ったポンプ装置の上面図である。
図7】ポンプ要素を備えた電子制御式の油圧ポンプの一部を示す模式図であって,第1及び第2油圧ポンプの動作原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を説明する。
【0020】
~建設機械~
図1は,本発明の第1の実施形態による油圧回路システムを搭載した建設機械の代表例である油圧ショベルを示す図である。
【0021】
図1に示す油圧ショベル100は,クローラ式の左右の走行装置108a,108bを装備した下部走行体101の上に,旋回装置107を介して,オペレータが搭乗するキャブ102aを備えた上部旋回体102を搭載した構成である。
【0022】
上部旋回体102の前方にはフロント作業機103のブーム104が接続されており,ブーム104は片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1によって駆動される。また,ブーム104の先端にはアーム105が接続されており,アーム105はアームシリンダ2によって駆動される。アーム105の先端には作業具であるバケット106が接続されており,バケット106は作業具シリンダであるバケットシリンダ3によって駆動される。旋回装置107は旋回モータ4によって駆動され,走行装置108a,108bは左右の走行モータ5a,5bによって駆動される。
【0023】
~油圧回路システム~
図2は,本発明の第1の実施形態による油圧回路システムの回路構成を示す図である。
【0024】
図2において,油圧回路システムは,原動機であるエンジン9と,エンジン9により駆動されるポンプ装置10と,ポンプ装置10から吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ1~5b(アクチュエータ3~5bは図1参照)と,ポンプ装置10から複数のアクチュエータ1~5bへ供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁21~29と,複数の方向制御弁21~29を切り換え,複数のアクチュエータ1~5bを動作させる複数の操作レバー装置56a,56b,56c,56dとを備えている。
【0025】
ポンプ装置10は,エンジン9により駆動されて回転するシャフト14の軸方向に間隔をあけて配置された第1及び第2油圧ポンプ11,12を有するタンデムポンプ30と,複数の第1切換弁である4つの第1切換弁41a~41d及び複数の第2切換弁である4つの第2切換弁42a~42dを搭載し,複数のサービスポートである第1及び第2の2つのサービスポート43,44を形成したマニホールドブロック40とを備えている。第1及び第2油圧ポンプ11,12はエンジン9により駆動され,タンク55から作動油を吸入し,圧油を吐出する。エンジン9に代え,電動モータを用いてもよい。
【0026】
また,第1及び第2油圧ポンプ11,12は,それぞれ,2つ以上の第1吐出ポートである4つの第1吐出ポート45a~45d及び2つ以上の第2吐出ポートである4つの第2吐出ポート46a~46dを有し,第1油圧ポンプ11は,4つの第1吐出ポート45a~45dから吐出される圧油の流量を独立に制御可能な2つ以上の第1ポンプ要素である4つの第1ポンプ要素11a~11dを内包し,第2油圧ポンプ12は,4つの第2吐出ポート46a~46dから吐出される圧油の流量を独立に制御可能な2つ以上の第2ポンプ要素である4つの第2ポンプ要素12a~12dを内包している。「ポンプ要素」の詳細は後述する。
【0027】
マニホールドブロック40は,第1及び第2吐出ポート45a~45d,46a~46dから流入した圧油の流れ方向を第1及び第2切換弁41a~41d,42a~42dによって切り換え,当該圧油を第1及び第2サービスポート43,44のいずれかに導くように構成されている。
【0028】
第1及び第2切換弁41a~41d,42a~42dは,初期位置である第1位置と非初期位置である第2位置とに切り換え可能な電磁式の切換弁であり,第1切換弁41a~41dは,第1位置において,第1吐出ポート45a~45dを第1サービスポート43に連通させ,第2位置において,第1吐出ポート45a~45dを第2サービスポート44に連通させ,第2切換弁42a~42dは,第1位置において,第2吐出ポート46a~46dを第2サービスポート44に連通させ,第2位置において,第2吐出ポート46a~46dを第1サービスポート43に連通させる。
【0029】
マニホールドブロック40の第1及び第2サービスポート43,44は,複数の方向制御弁21~29をバルブハウジング内に納めたコントロールバルブ20に第1及び第2配管51,52を介して接続されている。
【0030】
複数のアクチュエータ1~5bは,それぞれ図1に示したブームシリンダ1,アームシリンダ2,バケットシリンダ3,旋回モータ4,左走行モータ5a及び右走行モータ5bであり,複数の方向制御弁21~29は,それぞれ,走行右用方向制御弁21,バケット用方向制御弁22,ブームI用方向制御弁23,ブーム用方向制御弁27と,旋回用方向制御弁25,アームI用方向制御弁26,アームII用方向制御弁24,予備用方向制御弁28,走行左用方向制御弁29である。
【0031】
操作レバー装置56aはブーム104及びバケット106用であり,操作レバー装置56bはアーム105及び旋回装置107用であり,操作レバー装置56cは左走行装置108a用であり,操作レバー装置56dは右走行装置108b用である。
【0032】
複数の方向制御弁21~29は,コントロールバルブ20内において,操作される頻度が比較的高い特定の第1アクチュエータ用の方向制御弁であるブームI用方向制御弁23及びブームII用方向制御弁27を含む第1バルブグループ33と,操作される頻度が比較的高い特定の第2アクチュエータ用の方向制御弁であるアームI用方向制御弁26及びアームII用方向制御弁24を含む第2バルブグループ34とに分けられている。コントロールバルブ20は,第1及び第2バルブグループ33,34に接続された第1及び第2ポンプポート31,32を有し,第1及び第2ポンプポート31,32は第1及び第2配管51,52を介して第1及び第2サービスポート43,44に接続されている。第1及び第2サービスポート43,44と第1及び第2ポンプポートの数はタンデムポンプ30の第1及び第2油圧ポンプ11,12の数と同じ2個である。
【0033】
第1サービスポート43からの圧油は第1配管51を通ってポンプポート31からコントロールバルブ20に流入し,第1バルブグループ33の走行右用方向制御弁21,バケット用方向制御弁22,ブームI用方向制御弁23,ブームII用方向制御弁27に供給される。第2サービスポート44からの圧油は第2配管52を通ってポンプポート32からコントロールバルブ20に流入し,第2バルブグループ34の旋回用方向制御弁25,アームI用方向制御弁26,アームII用方向制御弁24,予備用方向制御弁28,走行左用方向制御弁29に供給される。
【0034】
第1バルブグループ33は方向制御弁21,22,23,27をセンタバイパスライン33aに配置し,方向制御弁21,22,23,27を互いに並列に接続したオープンセンタ回路として構成され,第2バルブグループ34は,方向制御弁24,25,26,28,29をセンタバイパスライン34aに配置し,方向制御弁24,25,26,28,29を互いに並列に接続したオープンセンタ回路として構成されている。
【0035】
方向制御弁21~29は,操作レバー装置56a,56b,56c,56dのレバーが操作されておらず,コントローラ57から指令がない場合は中立状態にあり,ポンプポート32から流入した圧油はセンタバイパスライン33a,34aを通ってタンク55に還流する。操作レバー装置56a,56b,56c,56dのレバーが操作され,コントローラ57から指令が生成されると,方向制御弁21~29は中立状態から切り換わり,ポンプポート31,32から流入した圧油の流量配分を調整して,その圧油をそれぞれのアクチュエータ1~5bに供給する。また,ブームI用方向制御弁23とブームII用方向制御弁27が中立状態から切り換わると,これら方向制御弁23,27からの圧油が合流してブームシリンダ1に供給される。アームI用方向制御弁26とアームII用方向制御弁24も中立状態から切り換わると,これら方向制御弁24,26からの圧油が合流してアームシリンダ2に供給される。
【0036】
コントローラ57は,操作レバー装置56a~56dからの操作信号と,エンジン9の回転数や第1及び第2油圧ポンプ11,12の吐出圧など各部の圧力などのセンサ信号を入力し,これらの信号に基づいてポンプコントローラ58,59,切換弁41a~41d,42a~42d,コントロールバルブ20に指令を与える。ポンプコントローラ58,59はコントローラ57からの指令に応じ,第1及び第2ポンプ要素11a~11d,12a~12dの吐出流量を独立に制御する。
【0037】
エンジン9の回転数は,例えば第1油圧ポンプ11又は第2油圧ポンプ12内のシャフト14に対し,エンコーダなどの回転センサを配置することにより検出することができる。第1及び第2油圧ポンプ11,12の吐出圧は,例えば配管51,52に圧力センサを接続することにより検出することができる。回転センサのセンサ信号は,第1及び第2ポンプ要素11a~11d,12a~12dの圧油の流量制御に用いられ,圧力センサのセンサ信号は第1及び第2ポンプ要素11a~11d,12a~12dの圧油の馬力制御に用いられる。
【0038】
~動作~
次に,以上の構成において,ブーム104とアーム105を動作させる場合の動作例を説明する。
【0039】
図2において,操作レバー装置56a~56dのレバーが操作されておらず,コントローラ57からの指令がないとき,切換弁41a~41d,42a~42dは図示の位置にあり,第1油圧ポンプ11内の4つのポンプ要素11a~11dは第1バルブグループ33に,第2油圧ポンプ12内の4つのポンプ要素12a~12dは第2バルブグループ34に接続されている。また,ポンプ要素11a~11d,12a~12dは吐出流量がゼロであるか,微量な流量を吐出している。方向制御弁21~29は中立状態なので,その圧油はセンタバイパスライン33a,34aを通ってタンク55に流れる。
【0040】
操作レバー装置56aのレバーがブーム駆動方向に操作されると,コントローラ57からの指令により,レバー操作量(要求流量)に応じてブームI用方向制御弁23及びブームII用方向制御弁27が変位し,第1油圧ポンプ11からの圧油によりブームシリンダ1が駆動される。また,ポンプコントローラ58からの指令により第1油圧ポンプ11の流量もレバー操作量に応じて増加し,まずポンプ要素11aの吐出流量が増加し始め,ポンプ要素11aが最大流量に達すると,次にポンプ要素11bの吐出流量が増える。ポンプ要素11bが最大流量に達すると,ポンプ要素11cの吐出流量が増え,ポンプ要素11cが最大流量に達すると,ポンプ要素11dの吐出流量が増える。レバー操作量が更に増え,ブームシリンダ1の必要流量が第1油圧ポンプ11だけでは賄えない場合は,切換弁42aを切換え,ポンプ要素12aの流量を加えることができ,切換弁42a,42b,42c,42dを切換えれば第2油圧ポンプ12の全流量を加えることができる。すなわち,8個ある全ポンプ要素11a~11d,12a~12dをブームシリンダ1に接続することが可能であるので,ブームシリンダ1の高速動作が可能となる。
【0041】
操作レバー装置56bのレバーがアーム駆動方向に操作されると,コントローラ57からの指令により,レバー操作量に応じてアームI用方向制御弁26及びアームII用方向制御弁24が変位し,第2油圧ポンプ12からの圧油によりアームシリンダ2が駆動される。また,ポンプコントローラ59からの指令により,第2油圧ポンプ12の流量もレバー操作量に応じて増加し,まずポンプ要素12dの吐出流量が増加し始め,ポンプ要素12dが最大流量に達すると,次にポンプ要素12cの吐出流量が増える。ポンプ要素12cが最大流量に達すると,ポンプ要素12bの吐出流量が増え,ポンプ要素12bが最大流量に達するとポンプ要素12cの吐出流量が増える。レバー操作量が更に増え,アームシリンダ2の必要流量が第2油圧ポンプ12だけでは賄えない場合は,切換弁41dを切換え,ポンプ要素11dの流量を加えることができ,切換弁41d,41c,41b,41aを切換えれば第1油圧ポンプ11の全流量を加えることができる。すなわち,8個ある全ポンプ要素11a~11d,12a~12dをアームシリンダ2に接続することが可能であるので,アームシリンダ2の高速動作が可能となる。
【0042】
ブーム104とアーム105を同時に動作させる場合は,操作レバー装置56aのレバーがブーム駆動方向に操作され,操作レバー装置56bのレバーがアーム駆動方向に操作されると,コントローラ57からの指令により,レバー操作量(要求流量)に応じてブームI用方向制御弁23及びブームII用方向制御弁27が変位し,アームI用方向制御弁26及びアームII用方向制御弁24が変位する。また,このとき,例えば操作レバー装置56aのレバーをフル操作量の20%,操作レバー装置56bのレバーをフル操作量の20%で入力した場合,ポンプ要素11a,11b及びポンプ要素12d,12cが圧油を吐出し,ブームシリンダ1はポンプ要素11a,11bからの圧油により,アームシリンダ2はポンプ要素12d,12cからの圧油により駆動される。8個の全ポンプ要素11a~11d,12a~12dの合計の最大流量を超える要求が入力された場合,例えば操作レバー装置56aのレバーを100%,操作レバー装置56bのレバーを60%で入力した場合は,両者の比に応じてポンプ要素11a~11d,12a~12dが配分され(100:60→5:3),ブームシリンダ1は5個のポンプ要素11a,11b,11c,11d,12aにより,アームシリンダ2は3個のポンプ要素12d,12c,12bにより駆動される。
【0043】
このようにブームシリンダ1とアームシリンダ2は,それぞれのポンプ要素から供給される圧油が分流することなく,独立して駆動されるので,それぞれのポンプ要素はブームシリンダ1及びアームシリンダ2に必要な最低圧力の流量を供給すればよい。このため方向制御弁で圧油を絞って減圧する必要がなく,分流ロスを低減することができる。
【0044】
~第1及び第2油圧ポンプの動作原理~
第1及び第2油圧ポンプ11,12の第1ポンプ要素11a~11d及び第2ポンプ要素12a~12dは,それぞれ,複数のシリンダ作動室と,その正味容積(容量)を可変とする電磁弁によって構成され,コントローラ57及びポンプコントローラ58,59から出力される指令に基づいて電磁弁を切り換え,シリンダ作動室の正味容積を変えることで,第1ポンプ要素11a~11d及び第2ポンプ要素12a~12dの吐出流量を制御する。このようなポンプ要素を内包した油圧ポンプはデジタルポンプと呼ばれることがある。
【0045】
第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12の動作原理の詳細を,図7を用いて説明する。図7は,複数のポンプ要素を内包した電子制御式の油圧ポンプ200の一部を示す模式図であり,第1及び第2油圧ポンプ11,12はそれぞれ油圧ポンプ200と同等の構成を有している。
【0046】
油圧ポンプ200はポンプシャフト204を有し,かつポンプシャフト204の回転に伴って周期的に容積が変化する少なくとも3つのシリンダ作動室(以下単に作動室と言う)202を有している。
【0047】
また,油圧ポンプ200は,タンクポート216に連通する低圧マニホールド201と作動室202との間の圧油の流れを制御する低圧弁209と,吐出ポート214に連通する高圧マニホールド213と作動室202との間の圧油の流れを制御する高圧弁212とを有している。
【0048】
油圧ポンプ200は作動室202によって複数のポンプ要素を形成し,各ポンプ要素は,1つ又は複数の作動室202(典型的には複数の作動室202)を有し,かつ各ポンプ要素の複数の作動室202に共通する前述した高圧マニホールド213に接続されている。
【0049】
コントローラ207は図2に示したポンプコントローラ58,59に対応するものであり,作動室202の容積サイクルに位相的に相関して少なくとも低圧弁を能動的に制御することで,作動室202の各容積サイクルに対して,低圧マニホールド210と高圧マニホールド213との間に作動室202の正味容積を形成する有効サイクル(active cycle)と,低圧マニホールド210と高圧マニホールド213との間に作動室202の正味容積を形成しない非有効サイクル(inactive cycle)のいずれを各作動室202が行うかを決定し,これにより要求流量に応じて高圧マニホールド213のそれぞれを介して吐出ポート214のそれぞれに至る各ポンプ要素の作動室202の正味容積を制御する。
【0050】
油圧ポンプ200は,内周面によって複数の作動室202を形成する複数のシリンダ201と,ポンプシャフト204に設けられた偏心カム205によって駆動され,シリンダ201内を往復動してシリンダ201の作動室202の容積を周期的に変化させる複数のピストン203とを備えている。また,油圧ポンプ200は,シャフト204のそのときの角度位置及び/又はシャフト204の回転速度を検出するセンサ206を備え,センサ206の検出情報を信号線208を介してコントローラ207に送り,コントローラ207はその検出情報に基づいて,各作動室202の容積サイクルのそのときの位相を決定する。
【0051】
作動室202は,各々,電子的に作動する面封止ポペット弁として構成された低圧弁(LPV)209と関連付けられており,LPV209は作動室202から低圧マニホールド210に至る流路を選択的に閉じるように動作可能である。これにより低圧マニホールド210は,各ポンプ要素に関連するの1つ又は複数の作動室202,或いは全ての作動室202をタンクポート216に接続することができる。
【0052】
LPV209は,常開型の電磁弁であり,作動室202内の圧力が低圧マニホールド210内の圧力以下である吸入ストローク中は受動的に開いて,作動室202を低圧マニホールド210と流体連通状態とする一方,LPV209はLPV制御線211を介してコントローラ207に接続され,コントローラ207よる能動的制御により選択的に閉じて,作動室202を低圧マニホールド210と非流体連通状態にすることができる。LPV209は,代替的に常閉型の電磁弁であってもよい。
【0053】
作動室202は,各々,圧力作動式吐出弁として構成された高圧弁(HPV)212とさらに関連付けられている。HPV212は,それぞれの作動室202から外側に向かって開き,かつ作動室202から高圧マニホールド213へと延びる流路を密閉するように動作可能である。HPV212が開いているとき,高圧マニホールド213は作動室202を吐出ポート214に接続し,作動室202から吐出ポート214に圧油を流出させる。HPV212は,HPV212の前後差圧によりHPV212内の付勢部材の付勢力とのバランスで受動的に開く,常閉型圧力開放逆止弁として機能する。実施形態によっては,HPV212はまた,作動室202内の圧力によって一旦開かれると,コントローラ207によりHPV制御線215を介して選択的に開いたままに保持される常閉型電磁逆止弁としても機能する。通常,HPV212は,高圧マニホールド213内の圧力に抗してコントローラ207によって開けることはできない。HPV212は,さらに,高圧マニホールド213内に圧力があり,作動室202内に圧力がない場合に,コントローラ207の制御下により開いていてもよいし,部分的に開いてもよい。
【0054】
吐出モードにおいて,コントローラ207は,1つ又は複数のLPV209を,関連する作動室202の容積サイクルにおける最大容積点付近にて能動的に閉じて,低圧マニホールド210に至る流路を閉じ,それによって後続の収縮ストロークにおいて,関連するHPV212を介して圧油を流出させ(しかしHPV212を積極的に開くことなく),作動室202の正味容積を伴う有効サイクルを生じさせることにより,油圧ポンプ200による作動室202から高圧マニホールド213への正味容積量を選択する。あるいは,LPV209は作動室202のサイクル全体を通して開いたままにされ(あるいは,作動室202はサイクル全体を通して閉じられ),正味容積のない非有効サイクルを生じさせてもよい。コントローラ207は,同じ高圧マニホールド213及び吐出ポート214に接続されるポンプ要素の作動室202による選択された正味容積量を満たし,ポンプ要素の要求流量に適合するよう,流れを生成する或いは軸トルク若しくは動力を生成するよう有効サイクルと非有効サイクルの数と順序を選択する。
【0055】
コントローラ207は,LPV209を閉じるか開けたままにするかをサイクルごとに決定し,有効サイクルと非有効サイクルを選択するだけでなく,変化する作動室202の容積に対してLPV209及び/又はHPV212を閉じる位相を正確に変化させ,それによって高圧マニホールド213から低圧マニホールド210又はその逆の正味容積量を選択するように動作可能である。
【0056】
マニホールド210,213に関する矢印はポンプモードでの圧油の流れを示し,モータモードでは流れが逆方向となる。
【0057】
図示の例では,全ての作動室202が同じ高圧マニホールド213及び吐出ポート214に接続されている場合を示したが,典型的には,油圧ポンプ200は,それぞれの高圧マニホールド213,吐出ポート214,及び要求信号を有する1又は複数の別個のポンプ要素を形成する作動室202を更に備えている。
【0058】
より具体的には,第1油圧ポンプ11で言うと,第1吐出ポート45a,45b,45c,45dに対応する4つの高圧マニホールド213と4つの吐出ポート214が設けられ,各高圧マニホールド213は高圧弁209を介して作動室202に接続される。第2油圧ポンプ12の場合も同様である。
【0059】
要求信号は,任意の好適な単位で表すことができる。一例として,要求信号は,ポンプシャフト204の1回転あたりの最大可能容積の変化量である「容積変化率Fd」として表わされる。目標流量は,容積変化率Fdとポンプシャフト204の回転速度との積で表わされる。
【0060】
~ポンプ装置の構造~
次に,本実施形態に係わるポンプ装置10の構造を説明する。
【0061】
図3図6図1に示す油圧回路システムにおけるポンプ装置10の構造を示す図であって,図3はポンプ装置10のシャフト14に沿った縦断面図,図4図3のA-A線に沿ったポンプ装置10の縦断面図,図5はポンプ装置10の部分断面上面図,図6図3のB-B線に沿ったポンプ装置10の上面図である。
【0062】
図3~6を用い,本実施形態の油圧回路システムにおけるポンプ装置10の構造を説明する。
【0063】
図3において,前述したようにポンプ装置10は,シャフト14の軸方向に間隔をあけて配置された第1及び第2油圧ポンプ11,12を有するタンデムポンプ30と,第1切換弁41a~41d及び第2切換弁42a~42d(図5参照)を搭載し,第1及び第2の2つのサービスポート43,44(図5参照)を形成したマニホールドブロック40とを備えている。
【0064】
また,第1及び第2油圧ポンプ11,12は,第1及び第2油圧ポンプ11,12の共有部品として構成されたポートブロック13を有し,ポートブロック13は,図6に示すように,側部13Sに4つの第1吐出ポート45a~45dと4つの第2吐出ポート46a~46dを開口させている。マニホールドブロック40は,第1及び第2吐出ポート45a~45d,46a~46dが開口するポートブロック13の側部13S(図3図5図6参照)に結合されている。
【0065】
なお,図示の実施形態では,ポートブロック13の側部13Sは単一のブロック表面を有し,第1及び第2吐出ポート45a~45d,46a~46dをそのブロック表面に開口させたが,ポートブロック13の側部13Sに段差のある複数の表面,例えば第1表面と第1表面に平行な第2表面を形成し,第1吐出ポート45a~45dを第1表面に形成し,第2吐出ポート46a~46dを第2表面に形成してもよい。
【0066】
第1油圧ポンプ11は,ケーシング48と,ケーシング48内のシャフト14aの軸方向に間隔をあけて配置された2つの第1ラジアルピストンポンプ36a,36bを有している。第1ラジアルピストンポンプ36aは,前述した4つの第1ポンプ要素11a~11dのうち2つの第1ポンプ要素11a,11dを形成し,第1ラジアルピストンポンプ36bは,残りの2つの第1ポンプ要素11b,11cを形成する。
【0067】
第2油圧ポンプ12も同様にケーシング49と,ケーシング49内のシャフト14b上に間隔をあけて配置された2つの第2ラジアルピストンポンプ37a,37bを有している。第2ラジアルピストンポンプ37aは,4つの第2ポンプ要素12a~12dのうち2つの第2ポンプ要素12a,12dを形成し,第2ラジアルピストンポンプ37bは,残りの2つの第2ポンプ要素12b,12cを形成する。
【0068】
タンク55からの作動油はポートブロック13に形成された吸入ポート47を経由してケーシング48,49内の第1ラジアルピストンポンプ36a,36bが配置されているスペースと第2ラジアルピストンポンプ37a,37bが配置されているスペースに導かれる。
【0069】
第1ラジアルピストンポンプ36aは,シャフト14の一部を構成するシャフト14a,シャフト14aと一体に回転する偏心カム15,偏心カム15の外周面に摺接するピストン16,ピストン16が往復動するシリンダ19,ピストン16とシリンダ19により形成されたシリンダ室50に連通する吸入チェック弁17a及び吐出チェック弁18aを主な構成部品として構成されている。第1ラジアルピストンポンプ36bも同様にシャフト14a,偏心カム15,ピストン16,シリンダ19,吸入チェック弁17b,吐出チェック弁18bを主な構成部品として構成されている。
【0070】
第2ラジアルピストンポンプ37aも,同様に,シャフト14b,偏心カム15,ピストン16,シリンダ19,吸入チェック弁17c,吐出チェック弁18cを主な構成部品として構成され,第2ラジアルピストンポンプ37bも同様にシャフト14b,偏心カム15,ピストン16,シリンダ19,吸入チェック弁17d,吐出チェック弁18dを主な構成部品として構成されている。
【0071】
シャフト14aはケーシング48とポートブロック13に軸受を介して回転自在に支持され,シャフト14bはケーシング49とポートブロック13に軸受を介して回転自在に支持されている。シャフト14a,14bはカップリング14cによって連結されてシャフト14を構成する。
【0072】
また,図4に示すように,第1ラジアルピストンポンプ36aは,ピストン16とシリンダ19とで構成されかつシャフト14aに対して例えば等角度に放射状に配置された6本のピストンポンプ60を有し,シャフト14aと一体の偏心カム15が回転するとピストンポンプ60のそれぞれのピストン16はシリンダ19内を往復動し,ケーシング48内のスペースに満たされた作動油を吸入チェック弁17a(図3参照)からシリンダ室50に吸入し,吐出チェック弁18aから吐出する。吐出された作動油はケーシング48の内部通路38a,38dを通ってケーシング48のポートブロック13側の端面に形成された開口部39a,39dからポートブロック13内に流入し,図6に示す第1吐出ポート45a~45dのいずれか,図示実施例では第1吐出ポート45a,45dに導かれ,これら吐出ポート45a,45dから吐出される。
【0073】
図示しないが,第1ラジアルピストンポンプ36b,第2ラジアルピストンポンプ37a,37bも同様に構成されている。ただし,第1ラジアルピストンポンプ37bの場合は,吐出チェック弁18bから吐出された圧油は,図6に示す第1吐出ポート45b,45cに導かれ,これら吐出ポート45b,45cから吐出される。第1ラジアルピストンポンプ37aの場合は,吐出チェック弁18cから吐出された圧油は図6に示す第2吐出ポート46a,46dに導かれ,これら吐出ポート46a,46dから吐出され,第2ラジアルピストンポンプ37bの場合は,吐出チェック弁18dから吐出された圧油は図6に示す第2吐出ポート46b,46cに導かれ,これら吐出ポート46b,46cから吐出される。
【0074】
図3において,吸入チェック弁17aは電磁式オンオフ弁(以下電磁弁と言う)であり,電磁弁がOFFの時は吸入チェック弁17aに示すようにばねで弁が常に開いている。このためピストン16の下降時にシリンダ室50に吸入された作動油はピストン16の上昇時に再び吸入チェック弁17aからケーシング48内に戻り,吐出されることはない。ピストン16の上昇時に電磁弁をONにすることで吸入チェック弁17bに示すように弁が閉じ,シリンダ室50が加圧されて吐出チェック弁18bが開き,吐出がなされる。また,ON-OFFするタイミングを制御することにより吸入チェック弁を閉じるタイミングが制御され,ピストン16の1ストロークでの吐出流量を制御することができる。このように電磁弁のON-OFFと,ON-OFFするタイミングを制御することによりピストンポンプ60の流量を一本ごとに独立して制御することが可能である。
【0075】
このように本実施形態では,独立して流量制御が可能なピストンポンプ60を複数用い,複数のピストンポンプ60からの圧油を合流して吐出させるようにしたものを「ポンプ要素」と呼んでいる。
【0076】
また,本実施形態では,ポンプ脈動を低減するために1つのポンプ要素に対し3本のピストンポンプ60を用いており,第1油圧ポンプ11において,第1ラジアルピストンポンプ36a,36bの12本のピストンポンプ60から4つのポンプ要素11a~11dを構成し,ポンプ要素11a~11dからの圧油を4つの吐出ポート45a~45dから吐出する構成としている。同様に,第2油圧ポンプ12において,第2ラジアルピストンポンプ37a,37bの12本のピストンポンプ60から4つのポンプ要素12a~12dを構成し,ポンプ要素12a~12dからの圧油を4つの吐出ポート46a~46dから吐出する構成としている。
【0077】
このことを,図4を用いて更に説明する。
【0078】
図4において,第1ラジアルピストンポンプ36aの6本のピストンポンプ60に対し,時計回りに符号60a,60b,60c,60d,60e,60fを付して示すと,ピストンポンプ60a,60c,60eの吐出油を合流させてポンプ要素11aを形成し,ピストンポンプ60b,60d,60fの吐出油を合流させてポンプ要素11dを形成する。それぞれの合流した吐出流量は開口部39a,39dからポートブロック13に流入し,図6に示される吐出ポート4a,45dに導かれる。第1油圧ポンプ11の第1ラジアルピストンポンプ36bについても同様であり,第1ラジアルピストンポンプ36bは2つのポンプ要素11b,11cを形成し,それぞれの合流した吐出流量は図6に示される吐出ポート45b,45cに導かれる。
【0079】
第2油圧ポンプ12の第2ラジアルピストンポンプ37a,37bも同様であり,第2ラジアルピストンポンプ37aは2つのポンプ要素12a,12dを形成し,それぞれの合流した吐出流量は図6に示される吐出ポート46a,46dに導かれ,第2ラジアルピストンポンプ37bは2つのポンプ要素12b,12cを形成し,それぞれの合流した吐出流量は図6に示される吐出ポート46b,46cに導かれる。
【0080】
このように2つの第1ラジアルピストンポンプ36a,36bのそれぞれの6本のピストンポンプ60は,それぞれ,2つのグループに分けられ,グループ毎に各ピストンポンプ60から吐出された圧油を合流して第1油圧ポンプ11の4つのポンプ要素11a~11dの1つを構成している。同様に,2つの第2ラジアルピストンポンプ37a,37bのそれぞれの6本のピストンポンプ60は,それぞれ,2つのグループに分けられ,グループ毎に各ピストンポンプ60から吐出された圧油を合流して第2油圧ポンプ12の4つのポンプ要素12a~12dの1つを構成している。
【0081】
マニホールドブロック40は,ポートブロック13の8個の吐出ポート45a~45d,46a~46dが開口する側部13Sに結合されたブロック本体40aを有し,図3及び図5に示すように,ブロック本体40aの第1油圧ポンプ11側の側面に第1切換弁41a~41dが取り付けられ,ブロック本体40aの第2油圧ポンプ12側の側面に第2切換弁42a~42dが取り付けられている。また,ブロック本体40a内の第1及び第2切換弁41a~41d,42a~42dの出口側(図3の第1及び第2切換弁41a~41d,42a~42dの上側)に,図5に示すように平行に伸び,ブロック本体40aの互いに反対側の端面で開口する2本の通路43a,44aが形成され,第1サービスポート43は通路43aの開口部に形成され,第2サービスポート44は通路44aの開口部に形成されている。なお,通路43a,44aをブロック本体40aの上面に開口させて第1サービスポート43及び第2サービスポート44を形成してもよい。
【0082】
また,マニホールドブロック40のブロック本体40a内には,8個の吐出ポート45a~45d,46a~46dからの圧油をそれぞれ電磁式の切換弁41a~41d,42a~42dに導く内部通路と,コントローラ57から切換弁41a~41d,42a~42dへの指令の有無に応じて通路43a,43bのいずれかに圧油を導く内部流路が形成されている。この内部通路は,図2に示すようなマニホールドブロック40の油圧回路を形成する構成となっている。
【0083】
~効果~
本実施形態によれば,以下の効果が得られる。
【0084】
1.本実施形態においては,前述したように,ブーム104の単独操作時に,8個のポンプ要素11a~11d,12a~12dがレバー操作量(要求流量)に応じて順次ブームシリンダ1に接続されるので,レバー操作量に応じてポンプ要素の数(吐出流量)をきめ細かく制御することができ,切換弁41a~41d,42a~42dによる吐出ポートの切り換えに伴うブームシリンダ1の速度変動が滑らかになり,操作性が向上する。また,8個ある全ポンプ要素11a~11d,12a~12dをブームシリンダ1に接続することが可能であるので,ブームシリンダ1の高速動作が可能となり,作業量を確保することができる。
【0085】
アーム105の単独操作時も,ブーム操作の場合と同様であり,レバー操作量に応じてポンプ要素の数(吐出流量)をきめ細かく制御することができ,操作性が向上する。また,かつアームシリンダ2の高速動作が可能となり,作業量を確保することができる。
【0086】
また,仮に切換弁41a~41d,42a~42dをポンプから離して設置した場合,吐出ポート45a~45d,46a~46dを切換弁41a~41d,42a~42dに接続するのに8本の油圧ホースが必要となり,8本の油圧ホースを吐出ポート45a~45d,46a~46dに接続するために,ホースを通すスペースのため搭載性が低下する上,ホース接続の作業工数増大,油圧接続部の増加による漏れ・信頼性リスクなど,多くの課題が発生する。また8本の油圧ホースを接続するために吐出ポート45a~45d,46a~46d間の距離を離す必要があるので,ポートブロック13が大型化し,ポンプ装置10自体が大型化するので,この点でも搭載性が低下する。
【0087】
本実施形態においては,ポートブロック13の8個の吐出ポート45a~45d,46a~46dが開口する側部13Sにマニホールドブロック40を結合したので,吐出ポート45a~45d,46a~46dを切換弁41a~41d,42a~42dに接続する油圧ホースを全て無くすことができ,ポンプ装置10の小型化と油圧ホースを削減により建設機械への搭載性を向上することができる。
【0088】
また,ホースの接続作業は発生せず,ポンプ装置の搭載が容易であり,かつ漏れ箇所が減るので漏れに対する信頼性も向上することができる。
【0089】
なお,本実施形態では,第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12のポンプ要素及び吐出ポートの数を,それぞれ,ポンプ要素11a~11d及びポンプ要素12a~12d,吐出ポート45a~45d及び吐出ポート46a~46dの4個ずつとしたが,これに限られない。第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12のポンプ要素及び吐出ポートの数は,それぞれ,2個,3個,5個など,2個以上あればよく,これによっても操作性,省エネ性,搭載性等に関し,本発明の効果を得ることができる。
【0090】
2.コントロールバルブ20は,第1バルブグループ33にブームI用方向制御弁23及びブームII用方向制御弁27を集約し,第2バルブグループ34にアームI用方向制御弁26及びアームII用方向制御弁24を集約した構成となっている。このためブーム104とアーム105の複合操作時は,ブームシリンダ1及びアームシリンダ2は,それぞれ,接続されたポンプ要素から供給される圧油を分流することなく,それぞれ独立して駆動されるので,それぞれのポンプ要素はブームシリンダ1及びアームシリンダ2に必要な最低圧力の流量を供給すればよい。このため方向制御弁で圧油を絞って減圧する必要がなく,分流ロスを低減し,省エネ性を向上することができる。
【0091】
3.配管51,52によって接続されるマニホールドブロック40のサービスポート43,44とコントロールバルブ20のポンプポート31,32の数がタンデムポンプ30の第1及び第2油圧ポンプ11,12の数と同じ(2個)であるため,マニホールドブロック40とコントロールバルブ20を最小のホース数で接続でき,この点でもホース数が削減され,建設機械への搭載性を向上することができる。
【0092】
4.マニホールドブロック40内では,第1切換弁41a~41dは,第1位置(初期位置)で第1吐出ポート45a~45dを第1サービスポート43に連通させ,第2位置で第1吐出ポート45a~45dを第2サービスポート44に連通させ,第2切換弁42a~42dは,第1位置(初期位置)で第2吐出ポート46a~46dを第2サービスポート44に連通させ,第2位置で第2吐出ポート46a~46dを第1サービスポート43に連通させるように油圧回路が構成されている。このためレバー操作量(要求流量)に応じてポンプ要素11a~11dを順次ブームシリンダ1に接続してブームシリンダ1にポンプ要素11a~11dの吐出流量を供給するとき,切換弁41a~41dを切り換えずに吐出流量を供給できるため,切換弁41a~41dの切り換えによる圧力変動が発生せず,ブームシリンダ1をスムーズに起動或いは増速することができる。レバー操作量(要求流量)に応じてポンプ要素42a~42dを順次アームシリンダ2に接続してアームシリンダ2にポンプ要素12a~12dの吐出流量を供給するときも同様であり,切換弁42a~42dの切り換えによる圧力変動が発生せず,アームシリンダ2をスムーズに起動或いは増速することができる。
【0093】
また,レバー操作量に応じて8個のポンプ要素11a~11d,12a~12dを順次ブームシリンダ1に接続してブームシリンダ1を駆動するとき,ブームシリンダ1の必要流量が第1油圧ポンプ11だけでは賄えるまでは,切換弁41a~41d,42a~42dのいずれも第1位置から切り換わらず,ブームシリンダ1の必要流量が第1油圧ポンプ11だけでは賄えなくなった場合に,切換弁42a~42dを第2位置に切り換えればよい。レバー操作量に応じて8個のポンプ要素11a~11d,12a~12dを順次アームシリンダ2に接続し,アームシリンダ2を駆動するときも同様であり,アームシリンダ2の必要流量が第2油圧ポンプ12だけでは賄えなくなった場合に,切換弁41a~41dを第2位置に切り換えればよい。このためブームシリンダ1或いはアームシリンダ2を駆動するときの切換弁41a~41d,42a~42dの切り換え回数を減らすことができ,切換弁41a~41d,42a~42dの耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…ブームシリンダ(特定の第1アクチュエータ)
2…アームシリンダ(特定の第2アクチュエータ)
3…バケットシリンダ
4…旋回モータ
1~5b…複数のアクチュエータ
9…エンジン
10…ポンプ装置
11…第1油圧ポンプ
11a~11d…第1ポンプ要素
12…第2油圧ポンプ
12a~12d…第2ポンプ要素
13…ポートブロック
14…シャフト
15…偏心カム
16…ピストン
17a~17d…吸入チェック弁
18a~18d…吐出チェック弁
19…シリンダ
20…コントロールバルブ
21…走行右用方向制御弁
22…バケット用方向制御弁
23…ブームI用方向制御弁
24…アームII用方向制御弁
25…旋回用方向制御弁
26…アームI用方向制御弁
27…ブーム1用方向制御弁
28…予備用方向制御弁
29…走行左用方向制御弁
30…タンデムピストン
31…第1ポンプポート
32…第2ポンプポート
33…第1バルブグループ
34…第2バルブグループ
36a,36b…第1ラジアルピストンポンプ
37a,37b…第2ラジアルピストンポンプ
40…マニホールドブロック
41a~41d…第1切換弁
42a~42d…第2切換弁
43…第1サービスポート
44…第2サービスポート
45a~45d…第1吐出ポート
46a~46d…第2吐出ポート
47…吸入ポート
48,49…ケーシング
50…シリンダ室
51…第1配管
52…第2配管
55…タンク
56a,56b,56c,56d…操作レバー装置
57…コントローラ
58,59…ポンプコントローラ
60a~60f…ピストンポンプ
100…油圧ショベル
101…下部走行体
102…上部旋回体
108a,108b…走行装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7