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特開2025-153555水溶性セサミン高含有素材の製造方法
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  • 特開-水溶性セサミン高含有素材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153555
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】水溶性セサミン高含有素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 25/00 20160101AFI20251002BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20251002BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20251002BHJP
   A23F 3/30 20060101ALN20251002BHJP
【FI】
A23L25/00
A23L33/105
A23L35/00
A23F3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056091
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】524084805
【氏名又は名称】門田 善彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】大久 長範
(72)【発明者】
【氏名】門田 善彦
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
4B036
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD27
4B018MD56
4B018MD58
4B018MD91
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF08
4B018MF14
4B027FB17
4B027FC06
4B027FC10
4B027FE02
4B027FE09
4B027FK02
4B027FK08
4B036LC03
4B036LE01
4B036LF16
4B036LH05
4B036LH10
4B036LH22
4B036LH27
4B036LH37
4B036LH39
4B036LH41
4B036LH44
4B036LP01
4B036LP05
4B036LP07
4B036LP09
4B036LP11
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】ゴマから効率的に、低コストで水溶性セサミン高含有素材を製造する方法及び、これによって製造した水溶性セサミン高含有素材を提供する。
【解決手段】栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する。栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて得た発芽ゴマを乾燥して乾燥発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する。栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させた発芽ゴマを乾燥して得た乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する方法。
【請求項2】
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて得た発芽ゴマを乾燥して乾燥発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する方法。
【請求項3】
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させた発芽ゴマを乾燥して得た乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水溶性セサミン高含有素材の製造方法に関し、特に、ゴマから効率的に、低コストで水溶性セサミン高含有素材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リグナンは抗酸化作用が強い細胞壁を形成するための物質である。代表的なリグナンとしては、セサミン、セサモリン、セサミノール、セサモールなどがあり、ゴマに含まれるゴマリグナンが有名である。
【0003】
ゴマに0.1~0.5質量%程度含まれるセサミンは、それ自身は抗酸化作用が認められないが、セサミンを摂取すると門脈を介して吸収されて肝臓に運ばれ、セサミンのメチレンジオシキフェニル基が開裂して2個の水酸基をもつカテコール体に変化し、生体内で抗酸化活性を示す。その為セサミンは各種の健康食品などとして利用されている。
【0004】
セサミン類は、水には殆ど溶解しない性質を有しており、原料油脂から濃縮するのに手間を要していた。そのためにエタノールおよび界面活性剤の混合剤でセサミン類を抽出した後にエタノールを除去するという方法も採用されていた。
【0005】
また、難溶性生理活性成分の吸収性を改善する目的で生理活性成分の微細化や、乳化剤添加による難溶性生理活性成分の溶解性の改善が試みられている。例えば、乳化剤の使用に伴う潜在的毒性を避ける目的で、最小量(3%)のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用した例がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第607345号公報
【特許文献2】特開2013-39082号公報
【特許文献3】特開2017-195826号公報
【特許文献4】特許第4084809号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】化学と生物56, pp.598-604 (2018)
【非特許文献2】日本農芸化学会誌69, pp.685-693 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、ゴマから効率的に、低コストで水溶性セサミン高含有素材を製造する方法及び、これによって製造した水溶性セサミン高含有素材を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ゴマ種子には、セサミンが0.1~0.5重量%程度含まれる他、セサモール、セサモリン、セサミノールなどが含有されている。
【0010】
ゴマリグナンは親油性物質であり、水に難溶性という特性を持っていた。
【0011】
本発明の基盤となった知見は非特許文献2の福田らの報告である。福田らはセサミンやセサモリンが発芽の初期過程で速やかに消失する現象を見出した。それは、種子ゴマを発芽させる過程でセサミンやセサモリンがセサミノールに変換した後にグルコースと抱合し水溶性セサミンに変化することが明らかになったのである(非特許文献2)。
【0012】
このグルコース抱合したセサミンを、有機溶剤を使用することなく濃縮することで、セサミン等が濃縮された水溶性セサミン高含有素材を得ることができる。
【0013】
上述した目的を達成する本発明は以下のように例示することができる。
[1]
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する方法。
【0014】
[2]
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて得た発芽ゴマを乾燥して乾燥発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する方法。
【0015】
[3]
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させた発芽ゴマを乾燥して得た乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造する方法。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ゴマから効率的に、低コストで水溶性セサミン高含有素材を製造する方法及び、これによって製造した水溶性セサミン高含有素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の製造方法によって粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造する工程の一例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法は、栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から3~7日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造するものである。
【0019】
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせて実施する発芽工程は、20℃~35℃の温度状態で、ゴマ種子を水につける、等、食物栽培用の種子を発芽させる技術分野で従来から実施されている種々の実施形態にすることができる。
【0020】
発芽ゴマの利用に関しては、例えば、発芽ゴマ由来の成分の免疫賦活効果を用いる免疫賦活性組成物および免疫賦活法が、特許文献4に開示されている。
【0021】
本発明は、上述したように、非特許文献2に開示されている、種子ゴマを発芽させる過程でセサミンやセサモリンがセサミノールに変換した後にグルコースと抱合し水溶性セサミンに変化するという知見に基づくものである。
【0022】
発明者の検討によれば、上述したように、吸水開始から3~7日間発芽させた発芽ゴマは、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高濃度で含有していて、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)が濃縮されたものになっていた。
【0023】
なお、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)をより高濃度で含有しているという観点からは、栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から4~6日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造することがより望ましく、前記吸水開始から5~6日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造することが更に望ましい。
【0024】
上記において、ゴマはゴマ科、ゴマ属の一年草本で、ゴマ属の大半は野生種で栽培種はSesamuun indicum L.のみである。本発明の製造方法に供される上述したゴマ種子は、栽培種のゴマ種子である。
【0025】
ゴマを発芽させ、もやしを作ることにより抗酸化性が増大することは、食品として新しい機能性を高めることになる。特にゴマは発芽率も高く成長速度も速いので、これをセサミンの原料として利用することは合理的である。
【0026】
この発明の他の実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法は、栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から2~7日間発芽させて得た発芽ゴマを乾燥して乾燥発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造するものである。
【0027】
ここでも、前記吸水開始から3~6日間発芽させて得た発芽ゴマを乾燥して乾燥発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造することが、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)をより高濃度で含有している水溶性セサミン高含有素材を製造する上で望ましい。
【0028】
この発明の他の実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法は、栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から2~7日間発芽させた発芽ゴマを乾燥して得た乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造するものである。
【0029】
ここでも、前記吸水開始から3~6日間発芽させた発芽ゴマを乾燥して得た乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造することが、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)をより高濃度で含有している粉体状の水溶性セサミン高含有素材を製造する上で望ましい。
【0030】
前記において、乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状にする工程は、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高含有する分画を収集する工程である。
【0031】
上述した、栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から2~7日間発芽させて発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する方法においても、このようにして得た発芽ゴマから水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高含有する分画を収集する工程を引き続いて実施するようにできる。
【0032】
また、上述した、栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、前記吸水開始から2~7日間発芽させて得た発芽ゴマを乾燥して乾燥発芽ゴマからなる水溶性セサミン高含有素材を製造する方法においても、このようにして得た乾燥発芽ゴマから水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高含有する分画を収集する工程を引き続いて実施するようにできる。
【0033】
上記では、乾燥発芽ゴマを粉砕し、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状にしている。発明者の検討によれば、粉砕した乾燥発芽ゴマを、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状とすることが、セサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高含有する上で望ましかった。
【0034】
また、この観点から、粉砕した乾燥発芽ゴマを、目開き(直径)0.5mmの篩で篩別して0.5mm未満の粉体状とすることが、セサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)をより高含有する上で望ましい。
【0035】
上述した本発明の水溶性セサミン高含有素材を製造する方法により、水分散性セサミン類を含む紛末を効率的に、かつ安価に製造することができる。この粉末から健康食品などとして有用となるセサミン類の配合物を簡便に得ることができる。すなわち、飲食品等に添加した場合に分散しやすく食感の点で優れたセサミン類を含有する組成物を提供することができる。
【0036】
前記において、栽培種のゴマ種子を発芽させる工程としては、例えば、カイワレダイコンのように容器内に播種し自然光で栽培する形態と、屋内に設置した装置で生産する形態とがあるが、そのどちらも使用することができる。
【0037】
大量生産するためには回転ドラム型のスプラウト製造装置を用いてもよい。この場合のドラム内の光強度は 10 ~ 20 μmol・m-2・s-1程度とする。暗所で栽培するよりも弱い照度で発芽させた方が、上述したようにゴマを発芽させ、もやしを作る良好であった。
【0038】
前記において発芽ゴマを乾燥させる工程では、常圧定温乾燥機を使用することができる。また、赤外線を利用した乾燥や、減圧乾燥などの方法を採用することもできる。
【0039】
前記において乾燥発芽ゴマを粉砕する工程には、従来公知の種々の粉砕機、粉砕装置を使用可能であるが、ジューサーミキサーやコーヒーミルを使用することもできる。
【0040】
前記において篩別には、手動の篩を使用することもできるが、駆動装置の付いた小型振動篩機が効率的である。
【0041】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材は、サプリメント、飲食品、医薬用組成物、等への使用が可能である。
【0042】
前記のサプリメントは、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材を含有するものにすることができる。このサプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液、等の任意の形態にすることができる。
【0043】
前記サプリメントは、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材の他に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類、ミネラル類、糖類、無機塩類、クエン酸またはその塩、茶エキス、油脂、プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン、等の滋養強壮成分、ショウガエキス、高麗人参エキス、等の生薬エキス、ハーブ類、コラーゲン、等を挙げることができる。
【0044】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材を上述したサプリメントに配合する割合は任意であるが、水溶性セサミン高含有素材による生体内での抗酸化活性が発現される範囲で配合割合を選択することができる。
【0045】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材は、水溶性セサミン高含有素材による生体内での抗酸化活性発現が期待されることから、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材が含まれている飲食品とすることができる。
【0046】
ここで、飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。
【0047】
すなわち、上述した飲食品は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含む概念である。
【0048】
上述した飲食品は、当該飲食品又はその容器や包装、その販促物等に、水溶性セサミン高含有素材による生体内での抗酸化活性発現が表示されているものであってもよい。また、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0049】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別、添加・配合対象となる飲食品の一般的な摂取量、等を考慮して適宜変更することができる。
【0050】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、一例を挙げると次のようになる。清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、また、これらの飲料の濃縮原液および調整用粉末。アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷、等の冷菓。そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類。飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、等の菓子類。かまぼこ、ハム、ソーセージ、等の水産・畜産加工食品。加工乳、発酵乳、等の乳製品。サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング、等の油脂および油脂加工食品。ソース、たれ、等の調味料。スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物。その他、種々の形態の健康・栄養補助食品、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤。
【0051】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材を上述した飲食品に配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0052】
また、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
【0053】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材を、食品添加剤に配合する割合は任意であるが、水溶性セサミン高含有素材による生体内での抗酸化活性発現作用を有する範囲で配合割合が選択される。
【0054】
上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材は、水溶性セサミン高含有素材による生体内での抗酸化活性発現作用を有する。そこで、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材は、その有効量を薬学的に許容される基材とともに配合して医薬組成物とすることができる。
【0055】
前記医薬組成物とは、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の少なくとも一つに対して有用な薬剤を意味する。なお、本明細書において、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。また、本明細書において、「医薬組成物」には、医薬品のみならず、医薬部外品も含む。
【0056】
上述した医薬組成物は、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材以外にもその効能を損なわない範囲で他の薬剤や薬理学的に許容される任意の成分を含んでもよい。また、上述した実施形態に係る水溶性セサミン高含有素材を製造する方法で製造した水溶性セサミン高含有素材そのものを、上述した医薬組成物として使用してもよい。
【0057】
上述した医薬組成物の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型がある。上述した医薬組成物の形態は、固体又は液体同士でもよいし、固体と液体でも良いし、特に限定されない。上述した医薬組成物の好適な態様としては、経口剤が挙げられる。
【0058】
上述した医薬組成物の摂取量は、水溶性セサミン高含有素材による生体内での抗酸化活性発現作用を発揮できる量であれば、特に限定されず、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。
【0059】
以下、本発明についての検討、本発明についてのいくつかの実施例、等を説明するが、本発明は上述した実施形態、後述する実施例に限られることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【0060】
<ゴマ発芽に伴うフェノール含有量の変化についての検討>
ゴマはグアテマラ産白ゴマ種子を精選して用いた。
内径17cmのシャーレに滅菌した石英砂を敷き、その上にゴマ種子5gを播種し、蒸留水を噴霧して、30℃の恒温室の暗所で時々蒸留水を補給しながら発芽させた。
【0061】
発芽日数0日(蒸留水噴霧直後)、発芽日数2日(蒸留水噴霧してから2日経過後)、発芽日数3日(蒸留水噴霧してから3日経過後)、発芽日数4日(蒸留水噴霧してから4日経過後)、発芽日数5日(蒸留水噴霧してから5日経過後)、発芽日数6日(蒸留水噴霧してから6日経過後)、発芽日数7日(蒸留水噴霧してから7日経過後)に、それぞれ、発芽したゴマ種子である発芽ゴマを採取し、それぞれ、80℃で定温常圧乾燥して、発芽日数2日、3日、4日、5日、6日、7日の乾燥発芽ゴマを得た。
【0062】
それぞれの乾燥発芽ゴマに質量比で10倍量の50%メタノールを加え、それぞれ、24時間浸漬した。
【0063】
24時間浸漬後それぞれのメタノール溶液をろ過し、上清を得て試料とした。
【0064】
各試料の総フェノール量を次のようにして測定した。
【0065】
総フェノール量は、FOLIN-DENIS法を用い、検量線は、タンニン酸標準液を用いて作成した。
【0066】
総フェノール量をFOLIM-DENIS法を用いて定量した結果は表1の通りであった。
【0067】
【表1】
表1の結果の通り、各試料における総フェノール量は発芽日数の経過とともに増大し、特に3日目から6日目にかけて著しく増加し、発芽日数6日(蒸留水噴霧してから6日経過後)の総フェノール量は、発芽日数0日(蒸留水噴霧直後)の総フェノール量の約10倍に増加していた。
【0068】
栽培種のゴマ種子を発芽させるため当該ゴマ種子に吸水を行わせ、吸水開始から3~7日間発芽させることで、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高濃度で含有していて、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)が濃縮された発芽ゴマになることを確認できた。
【0069】
また、表1の結果から、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)がより高濃度で含有されていて、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)がより濃縮された発芽ゴマとする上では、吸水開始から4~6日間発芽さることがより望ましく、前記吸水開始から5~6日間発芽させて発芽ゴマとすることが更に望ましいと認められた。
【0070】
<乾燥発芽ゴマを粉砕し、篩別した時のフェノール含有量の検討>
ゴマはグアテマラ産色ゴマ種子を精選して用いた。
内径17cmのシャーレに滅菌した石英砂を敷き、その上にゴマ種子5gを播種し、蒸留水を噴霧して、30℃の恒温室で時々蒸留水を補給しながら5日間発芽させて発芽ゴマを得た。
【0071】
発芽ゴマを80℃の常圧定温乾燥機で24時間乾燥させて乾燥発芽ゴマとした。
【0072】
乾燥発芽ゴマをミキサー(象印、1.0L ブラック BM-SS10-BA)で粉砕し、乾燥発芽ゴマの乾燥粉末を得た。
【0073】
このようにして得た乾燥粉末における総フェノール量を、対照とするべく、上述したFOLIM-DENIS法を用いて定量した。
【0074】
次に、上述したようにして得た乾燥粉末を、目開(直径)の異なるふるい(アズワン製)で篩別した。
【0075】
篩別した各分ごとの総フェノール量を、上述したFOLIM-DENIS法を用いて定量した。その結果は表2の通りであった。
【0076】
【表2】
表2の結果の通り、目開き(直径)1.0mmを通過できない直径1.0mm以上であると、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)の含有量が対照(篩別前)に比較して低下していた。
【0077】
一方、直径0.5mmでは、対照(篩別前)に比較して、水溶性セサミンであるセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)の含有量が増加しており、直径0.5mm未満になると、この傾向は一層顕著になっていた。
【0078】
そこで、乾燥発芽ゴマを粉砕し、所定サイズの篩で篩別して粉体状にする場合、目開き(直径)1.0mmの篩で篩別して1.0mm未満の粉体状にすることがセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)を高含有する上で望ましい。
【0079】
また、目開き(直径)0.5mmの篩で篩別して0.5mm未満の粉体状にすることがセサミン関連物質(グルコース抱合したフェノール化合物)をより高含有する上で望ましい。
【実施例0080】
ゴマはグアテマラ産ゴマ種子を精選して用いた。
【0081】
内径17cmのシャーレに滅菌した石英砂を敷き、その上にゴマ種子5gを播種し、蒸留水を噴霧して、30℃の恒温室で時々蒸留水を補給しながら5日間発芽させて発芽ゴマを得た。
【0082】
発芽ゴマを80℃の常圧定温乾燥機で24時間乾燥させて乾燥発芽ゴマとした。
【0083】
乾燥発芽ゴマをミキサー(象印、1.0L ブラック BM-SS10-BA)で粉砕し、乾燥発芽ゴマの乾燥粉末を得た。
【0084】
この乾燥粉末を目開き(直径)0.5mmの篩で篩別して0.5mm未満の粉体状の水溶性セサミン高含有素材とした。
【0085】
<使用例1>
耐熱ボウルに卵、砂糖、牛乳、醤油を入れて混ぜた後に、薄力粉を加えよく混ぜた。ボウルにラップをかけ、電子レンジで固まるまで加熱した。固まったものをこし器で裏ごしした。フライパンを弱火で熱しておき、裏ごしした卵混合物を入れ、乾燥するまで炒めた。
【0086】
乾燥するまで炒めたものに、かつお節粉末と、実施例1で調製した粉体状の水溶性セサミン高含有素材を加え、なじむまで炒めた。
【0087】
火を止めてのりを加えて混ぜて、卵と水溶性セサミンの乾燥ふりかけとした。
【0088】
<使用例2>
実施例1で調製した粉体状の水溶性セサミン高含有素材100g、大豆粉末100g、糖蜜10g、日本酒30mlを混ぜ合わせてセサミン生地を調製した。
【0089】
横型の麺類押出製麺機(そば達人(登録商標))の混合機能を利用してセサミン生地を耳たぶ程度の硬さに練り込んだ。
【0090】
練り込んだ生地を製丸機(旭朗机機、93A小型漢方薬製造機)に投入し直径8mmの丸い粒にした。
【0091】
これを室内で自然風乾し目的のセサミン含有丸薬とした。
【0092】
<使用例3>
実施例1で調製した粉体状の水溶性セサミン高含有素材100g、と、粉茶100gを混合して水溶性セサミン粉茶混合物を調製した。
【0093】
調製した水溶性セサミン粉茶混合物2gをティーバッグ巾着袋(不織布ティーパック YFFSFDC)に分注し、パック茶とした。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の水溶性セサミン高含有素材を製造する方法によって製造される水溶性セサミン高含有素材は生体内で抗酸化活性を発現できるもので各種健康食品などに効果的に使用することができる。
【0095】
また、本発明の水溶性セサミン高含有素材を製造する方法によって製造される粉末状の水溶性セサミン高含有素材は、添加された飲食品における分散性や安定性の点で次のような効果が認められた。
【0096】
(1)粉末状の水溶性セサミン高含有素材は、水に対する分散性が良好であり、水に限らず果実ジュ-ス、野菜ジュ-ス、乳飲料、栄養ドリンクなどの飲料に容易に分散することができる。
【0097】
(2)消費者が飲用する直前に本発明の粉末状水溶性セサミン高含有素材を水に分散させて摂取することができる。
【0098】
(3)水への分散性の向上から、ゲルやジェル状の食品(ゼリー、プリンなどゲル状食品または、スポーツ用のジェル状ドリンク)や加工食品(うどんやそばなど)の素材として利用することができる。
図1