IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特開2025-153669防火区画貫通処理部材及び防火区画材
<>
  • 特開-防火区画貫通処理部材及び防火区画材 図1
  • 特開-防火区画貫通処理部材及び防火区画材 図2
  • 特開-防火区画貫通処理部材及び防火区画材 図3
  • 特開-防火区画貫通処理部材及び防火区画材 図4
  • 特開-防火区画貫通処理部材及び防火区画材 図5
  • 特開-防火区画貫通処理部材及び防火区画材 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153669
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】防火区画貫通処理部材及び防火区画材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20251002BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20251002BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20251002BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
F16L5/04
F16L5/02 F
E04B1/94 F
F16L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056263
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 将巳
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA01
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA34
2E001GA47
2E001GA65
2E001GA81
2E001HA32
2E001HA33
2E001HB01
2E001HD03
2E001HD11
2E001HF12
2E001JA18
2E001JA20
2E001JA22
2E001JA25
2E001JD02
2E001KA05
(57)【要約】
【課題】火災が延焼するのを効率的に抑えた防火区画貫通処理部材を提供する。
【解決手段】防火区画貫通処理部材16は、熱膨張性黒鉛を含む管材17と、管材17の第1端部17aに形成された開口17bを覆う第1蓋22Aと、管材17の第2端部17cに形成された開口17dを覆う第2蓋22Bを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性黒鉛を含む管材と、
前記管材の第1端部に形成された開口を覆う第1蓋と、
前記管材の第2端部に形成された開口を覆う第2蓋
を備える、防火区画貫通処理部材。
【請求項2】
前記管材内に、周方向に並べて配置された複数の充填片を備える、請求項1に記載の防火区画貫通処理部材。
【請求項3】
前記第1蓋は、前記管材の前記第1端部側の端面に対向するように配置された第1封止壁を有し、
前記第1封止壁には、前記第1封止壁における他の部分よりも強度が低い脆弱部が、前記管材の軸線方向に見たときに環状に形成され、
前記軸線方向に見たときに、前記管材の外周面内の面積に対する、前記脆弱部の外周縁内の面積の比が、32%以下である、請求項1又は2に記載の防火区画貫通処理部材。
【請求項4】
貫通孔が形成された耐火部材と、
少なくとも一部が前記貫通孔内に配置された、請求項1又は2に記載の防火区画貫通処理部材と、
を備える、防火区画材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火区画貫通処理部材及び防火区画材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物は、床、壁等の防火区画材を備えている。防火区画材は、火災時に建築物が延焼するのを抑制する。
防火区画材にケーブル、配管等の挿通体を通すために、防火区画材に防火区画貫通部(貫通孔)が設けられることがある。防火区画貫通部の延焼を抑制するために、防火区画貫通処理部材が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、防火区画貫通処理部材は、挿通部材(管材)と、係止部材と、包覆部と、を備える。
挿通部材は、スリーブ状に形成されるか、スリーブ状に変形可能である。挿通部材は、防火区画貫通部に挿入される。係止部材は、挿通部材の一端部側に接して配置される。係止部材は、挿通部材の位置を固定する。包覆部は、防火区画貫通部の開口と挿通体との隙間を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-145868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の防火区画貫通処理部材の延焼抑制性能には、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、火災が延焼するのを効率的に抑えた防火区画貫通処理部材、及びこの防火区画貫通処理部材を備える防火区画材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、熱膨張性黒鉛を含む管材と、前記管材の第1端部に形成された開口を覆う第1蓋と、前記管材の第2端部に形成された開口を覆う第2蓋を備える、防火区画貫通処理部材である。
【0008】

この発明では、例えば、第1蓋及び第2蓋に適宜蓋孔を形成し、防火区画貫通処理部材を、防火区画材の貫通孔に配置する。挿通体を、第1蓋及び第2蓋の蓋孔に通す。
例えば、防火区画材に対する第1側に火災が生じると、防火区画材が加熱され、管材に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して、第1蓋と第2蓋との間であって、防火区画材における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間の隙間を塞ぐ。
従って、この間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、防火区画材の貫通孔を通して防火区画材に対する第2側に達するのが抑制され、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0009】
(2)本発明の態様2は、前記管材内に、周方向に並べて配置された複数の充填片を備える、(1)に記載の防火区画貫通処理部材であってもよい。
この発明では、例えば、第1蓋及び第2蓋における管材の軸線上の部分に蓋孔を開けることにより、この蓋孔を通して、管材の軸線上に挿通体を配置する。すると、管材内において、複数の充填片が挿通体を径方向外側から囲むように配置され、複数の充填片が径方向に圧縮される。これにより、複数の充填片の密度が上昇し、複数の充填片の耐火性を高めることができる。
【0010】
(3)本発明の態様3は、前記第1蓋は、前記管材の前記第1端部側の端面に対向するように配置された第1封止壁を有し、前記第1封止壁には、前記第1封止壁における他の部分よりも強度が低い脆弱部が、前記管材の軸線方向に見たときに環状に形成され、前記軸線方向に見たときに、前記管材の外周面内の面積に対する、前記脆弱部の外周縁内の面積の比が、32%以下である、(1)又は(2)に記載の防火区画貫通処理部材であってもよい。
挿通体が電気配線である場合、内線規定により、防火区画材の貫通孔の断面積に対する電気配線の断面積の比を32%以下にすることが定められている。
この発明では、軸線方向に見たときの管材の外周面内の面積は、防火区画材の貫通孔の断面積よりもわずかに狭い程度である。第1蓋の第1封止壁を脆弱部で破断して、第1封止壁に蓋孔を形成すると、この蓋孔の面積が、管材の外周面内の面積に対して32%となる。このため、蓋孔に通る程度の電気配線を通すことにより、電気配線の断面積を測定することなく、内線規定を守ることができる。
【0011】
(4)本発明の態様4は、貫通孔が形成された耐火部材と、少なくとも一部が前記貫通孔内に配置された、(1)から(3)のいずれか一に記載の防火区画貫通処理部材と、を備える、防火区画材である。
この発明では、火災が延焼するのを効率的に抑えた防火区画貫通処理部材、及び耐火部材を備えて、防火区画材を構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防火区画貫通処理部材及び防火区画材では、火災が延焼するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の防火区画材を床として備える建築物を正面視した断面図である。
図2】同防火区画材が備える防火区画貫通処理部材の平面図である。
図3図1中の切断線A1-A1の断面図である。
図4】挿通体が通されていないときの、同防火区画貫通処理部材の要部の断面図である。
図5】同防火区画貫通処理部材の施工方法を説明する断面図である。
図6】同防火区画貫通処理部材の施工方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る防火区画貫通処理部材及び防火区画材の第1実施形態を、防火区画材が床である場合を例にとって、図1から図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の床10は、建築物1に用いられる。建築物1の構成は、床10を備えていれば、限定されない。例えば、建築物1は、図示しない柱及び梁と、床10と、を備える。
柱は、鉄筋コンクリート等で形成されている。柱は、不図示の基礎から上方に向かって延びている。
梁は、H形鋼等で形成され、水平面に沿って延びている。梁の端部は、柱に接合されている。
【0015】
床10は、コンクリート(耐火部材)11と、防火区画貫通処理部材16と、を有する。
コンクリート11は、平板状に形成されている。コンクリート11は、コンクリート11の厚さ方向が、上下方向に沿うように配置されている。
コンクリート11には、貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、コンクリート11を上下方向に貫通している。
なお、耐火部材は、コンクリート11に限定されず、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete:高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)、ケイ酸カルシウム板、石こうボードからなる中空床、木製耐火床等でもよい。
【0016】
図1から図3に示すように、防火区画貫通処理部材16は、管材17と、第1蓋22Aと、第2蓋22Bと、複数の充填片27と、を有する。なお、図2では、第1蓋22Aに後述する蓋孔23cAが形成される前の状態を示している。
ここで、管材17は管状に形成され、第1蓋22A及び第2蓋22Bは有底筒状に形成されている。管材17、第1蓋22A、及び第2蓋22Bそれぞれの中心軸(軸線)は、共通軸と同軸に配置されている。以下では、共通軸を軸線(中心軸)O1と言う。軸線O1に直交する方向を径方向と言い、軸線O1回りに周回する方向を周方向と言う。
図2は、防火区画貫通処理部材16を軸線O1方向に見たときの図である。
【0017】
本実施形態では、第1蓋22Aの構成と第2蓋22Bの構成とは、軸線O1に直交する基準面S1に対して面対称である。このため、第1蓋22Aの構成を、符号の数字に英大文字「A」を付加することで示す。第2蓋22Bのうち第1蓋22Aに対応する構成を、第1蓋22Aの符号と同一の数字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。
例えば、第1蓋22Aの後述する第1封止壁23Aと第2蓋22Bの後述する第2封止壁23Bとは、基準面S1に対して面対称である。
【0018】
管材17は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、若しくは鋼管で構成される。
管材17は、管材17の全体が樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物から形成されていればよい。
例えば、管材17が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が樹脂組成物から形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は吸熱剤を含有していてもよい。
【0019】
一例として、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、熱膨張性黒鉛を1~20重量部の割合で含む樹脂組成物からなる単層構造を採用できる。あるいは、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、熱膨張性黒鉛を1~20重量部の割合で含む樹脂組成物からなる熱膨張性耐火層と、この熱膨張性耐火層の内外面を覆う熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の被覆層とからなる3層構造であるものを採用できる。
【0020】
管材17が単層構造の場合、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないおそれがあり、20重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が、コンクリート11の貫通孔12から脱落し、耐火性が低下してしまうおそれがある。
【0021】
管材17が複層構造の場合、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1~20重量部の割合で含むものが好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量は、4~18重量部の割合がより好ましく、6~16重量部の割合がさらに好ましい。
なお、管材17の全体に亘って存在していれば、熱膨張性黒鉛の含有量が15重量部以上と比較的多く含有していて残渣がもろい場合であっても、残渣が貫通孔12全体を閉塞してコンクリート11内に熱膨張後の残渣が保持され、脱落しにくくすることができる。
【0022】
中間層が熱膨張性黒鉛を含有する場合、中間層は黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
表層内層の厚みとしては、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下が好ましい。被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を十分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
また、管材17は、JIS K6741に記載の性能を満たすものであることが好ましい。
すなわち、熱膨張性黒鉛が1重量部未満であると、燃焼時に、十分な熱膨張性が得られず、所望の耐火性が得られないおそれがある。熱膨張性黒鉛が20重量部を超えると、加熱により熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が、コンクリート11の貫通孔12から脱落し、耐火性が低下してしまうおそれがある。
【0023】
本実施形態で用いる熱膨張性黒鉛は、一例として、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を無機酸と強酸化剤とで黒鉛の層間に無機酸を挿入する酸処理をした後、pH調整して得られる結晶化合物を用いることができる。
無機酸として、濃硫酸、硝酸、セレン酸等を用いることができる。強酸化剤として、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等を用いることができる。
【0024】
前記pH調整により、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物であって、pH1.5~7.0に調整された熱膨張性黒鉛、及び、1.3倍膨張温度が180℃~280℃の熱膨張性黒鉛を用いることができる。
【0025】
熱膨張性黒鉛のpHが1.5未満であると、酸性が強すぎて、成形装置の腐食等を引き起こしやすく、pHが7.0を超えると、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化促進効果が薄れ、十分な耐火性能が得られなくなるおそれがある。
熱膨張性黒鉛の粒径は、特に限定されないが、例えば100~400μmの範囲、好ましくは120~350μmの範囲のものを使用することができる。
【0026】
管材17を構成する樹脂組成物には、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて安定剤、無機充填剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が添加されていてもよい。
【0027】
管材17は、軸線O1が上下方向に沿うように配置される。
管材17における軸線O1方向の第1端部17aには、第1開口(開口)17bが形成されている。管材17における軸線O1方向の第1端部17aとは反対側の第2端部17cには、第2開口(開口)17dが形成されている。
【0028】
第1蓋22Aは、第1封止壁23Aと、第1周壁24Aと、を有する。
第1封止壁23Aは、平板状に形成されている。第1封止壁23Aは、第1封止壁23Aの厚さ方向に見たときに、円形状を呈する。第1封止壁23Aは、軸線O1上に配置されている。第1封止壁23Aは、管材17の第1端部17a側の端面に対向するように配置されている。ここで言う対向するとは、互いに間を空けて向き合う意味だけでなく、互いに接触する意味も含む。第1封止壁23A(第1蓋22A)は、第1開口17bを覆っている。
図2に示すように、第1封止壁23Aには、第1脆弱部(脆弱部)23aAが形成されている。第1脆弱部23aAは、図2に示す軸線O1方向に見たときに環状に形成されている。ここで言う環状とは、円形の外縁状に限定されず、楕円形の外縁状、多角形の外縁状等でもよい。第1脆弱部23aAは、第1封止壁23Aにおける第1脆弱部23aA以外の部分(他の部分)よりも強度が低い。
【0029】
この例では、第1脆弱部23aAは、複数の小径孔23bAにより構成されている。各小径孔23bAは、第1封止壁23Aを軸線O1方向に貫通している。周方向に隣り合う2つの小径孔23bAは互いに接続されていないことが好ましい。
図2において、軸線O1方向に見たときに、第1脆弱部23aAの外周縁内の領域R1を、ハッチングにより示す。領域R1は、軸線O1上に配置されていることが好ましい。
軸線O1方向に見たときに、領域R1の面積に対する、第1脆弱部23aAの外周縁内の面積の比が、32%以下である。
第1蓋22Aの第1封止壁23Aを脆弱部23aAで破断して、第1封止壁23Aに形成した蓋孔23cAを、図2中に二点鎖線で示す。蓋孔23cAは、領域R1とほぼお同じ大きさに形成される。
【0030】
第1周壁24Aは、第1封止壁23Aの外周縁から、第1封止壁23Aの全周にわたって、第1封止壁23Aの厚さ方向に突出している。第1周壁24Aは、第1封止壁23Aの第1端部17aを、第1端部17aの径方向外側から覆っている。
以上のように構成された第1蓋22Aは、管材17の第1端部17aに嵌め合っている。
第1蓋22Aが有する第1封止壁23A及び第1周壁24Aは、塩化ビニル樹脂等により一体に形成されている。
【0031】
図1に示すように、第2蓋22Bは、第1蓋22Aの第1封止壁23A、第1周壁24Aとは、基準面S1に対して面対称に構成された第2封止壁23B、第2周壁24Bを有する。
第2封止壁23Bには、第1脆弱部23aAとは、基準面S1に対して面対称に構成された第2脆弱部(不図示)が形成されている。第2封止壁23B(第2蓋22B)は、第2開口17dを覆っている。
【0032】
各充填片27は、袋28と、充填材29を有する。
図3に示すように、袋28は、金属はく、グラスウール等の不燃材、もしくはそれらの複合材等により形成されている。充填材29には、ロックウール、グラスウール等の不燃材、もしくは発泡ウレタン等の有機材等を用いることができる。不燃材が好ましい。
充填片27を、工場等でこのように構成(製造)することにより、袋28内の充填材29の管理することができる。
複数の充填片27は、管材17内に、周方向に並べて配置されている。
図3では、複数の電気配線101を有する挿通体100が、防火区画貫通処理部材16内の軸線O1上に通されている。管材17内に挿通体100が通されていることで、複数の充填片27が挿通体100を径方向外側から囲むように配置され、複数の充填片27が径方向に圧縮される。
【0033】
なお、管材17内に挿通体100が通されていないときには、図4に示すように、複数の充填片27は挿通体100により径方向に圧縮されない。このとき、充填材29は、耐火性能を確保できる最低密度であることが好ましい。
【0034】
図1に示すように、以上のように構成された防火区画貫通処理部材16における軸線O1方向の中間部(少なくとも一部)は、コンクリート11の貫通孔12内に配置されている。
この例では、第1蓋22Aの第1周壁24A及び第2蓋22Bの第2周壁24Bは、コンクリート11を軸線O1方向に挟んでいる。
床10は、梁により床10の下方から支持されている。
【0035】
次に、以上のように構成された防火区画貫通処理部材16を施工する施工方法について説明する。
まず、図5に示すように、公知の工具により、コンクリート11に貫通孔12を形成する。
次に、防火区画貫通処理部材16の管材17から第1蓋22A及び第2蓋22Bを取り外す。第1蓋22Aの第1封止壁23Aを、脆弱部23aAを叩く等することにより、脆弱部23aAで破断して、第1封止壁23Aに蓋孔23cAを形成する。同様にして、第2蓋22Bに蓋孔23cAを形成する。
【0036】
次に、図6に示すように、コンクリート11の貫通孔12に管材17を通し、管材17に第1蓋22A及び第2蓋22Bを嵌め合わせることにより、防火区画貫通処理部材16を、床10の貫通孔12に配置する。挿通体100を、第1蓋22A及び第2蓋22Bの蓋孔23cA、及び複数の充填片27の間に通す。
【0037】
例えば、床10に対する下側(第1側)に火災が生じると、床10が加熱され、管材17に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して、第1蓋22Aと第2蓋22Bとの間であって、床10における貫通孔12の開口周縁部と挿通体100との間の隙間を塞ぐ。
以上説明したように、本実施形態の防火区画貫通処理部材16では、床10における貫通孔12の開口周縁部と挿通体100との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、床10の貫通孔12を通して床10に対する上側(第2側)に達するのが抑制され、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0038】
防火区画貫通処理部材16は、複数の充填片27を有する。例えば、第1蓋22A及び第2蓋22Bにおける軸線O1上の部分に蓋孔23cAを開けることにより、軸線O1上に挿通体100を通す。すると、管材17内において、複数の充填片27が挿通体100を径方向外側から囲むように配置され、複数の充填片27が径方向に圧縮される。これにより、複数の充填片27の密度が上昇し、複数の充填片27の耐火性を高めることができる。
充填片27を工場等で製造することにより、施工現場で充填材を充填する作業を省き、充填材の密度管理及び厚さの管理を容易に行うことができる。
【0039】
第1蓋22Aは第1封止壁23Aを有し、軸線O1方向に見たときに、領域R1の面積に対する第1脆弱部23aAの外周縁内の面積の比が32%以下である。
挿通体100が電気配線101である場合、内線規定により、床10の貫通孔12の断面積に対する電気配線101の断面積の比を32%以下にすることが定められている。
本実施形態では、軸線O1方向に見たときの管材17の外周面内の面積は、床10の貫通孔12の断面積よりもわずかに狭い程度である。第1蓋22Aの第1封止壁23Aを第1脆弱部23aAで破断して、第1封止壁23Aに蓋孔23cAを形成すると、この蓋孔23cAの面積が、管材17の外周面内の面積に対して32%となる。このため、蓋孔23cAに通る程度の電気配線101を通すことにより、電気配線101の断面積を測定することなく、内線規定を守ることができる。
【0040】
また、本実施形態の床10では、火災が延焼するのを効率的に抑えた防火区画貫通処理部材16、及びコンクリート11を備えて、床10を構成することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、第1脆弱部23aAが複数の小径孔23bAにより構成されるとしたが、第1脆弱部の構成はこれに限定されず、第1脆弱部が、第1封止壁23Aにおける第1脆弱部以外の部分よりも厚さを薄くすること等で構成されてもよい。
封止壁23A,23Bに、脆弱部が形成されなくてもよい。
【0042】
防火区画貫通処理部材16は、複数の充填片27を有さなくてもよい。
防火区画材が床であるとしたが、防火区画材はこれに限定されず、壁等でもよい。
挿通体は、電気配線に限定されず、配管等でもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 床(防火区画材)
11 コンクリート(耐火部材)
16 防火区画貫通処理部材
17 管材
17a 第1端部
17b 第1開口(開口)
17c 第2端部
17d 第2開口(開口)
22A 第1蓋
22B 第2蓋
27 充填片
図1
図2
図3
図4
図5
図6