(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153670
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 15/00 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
F04C15/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056264
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】金物 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】有福 大輔
(72)【発明者】
【氏名】前川 雄貴
【テーマコード(参考)】
3H044
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC05
3H044DD06
3H044DD18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータ部の冷却効率を高めることができる電動ポンプを提供する。
【解決手段】本発明の電動ポンプの一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能なシャフトを有するモータ部と、シャフトの軸方向一方側の端部に連結され、モータ部の動力により駆動されて流体を圧送するポンプ部と、モータ部、およびポンプ部を収容するハウジングと、を備える。ハウジングには、モータ部を配置するモータ室と、ポンプ部を配置するポンプ室と、流体をポンプ室からモータ室に流入させる供給経路と、流体をモータ室からポンプ室に戻す戻し経路と、が設けられる。シャフトは、第1開口部においてモータ室に開口し第2開口部においてポンプ室に開口する中空部を有する。ポンプ部は、外部から流体を吸い込む吸入口と、流体を外部に吐出する吐出口と、を有する。ハウジングは、第2開口部と吸入口とを繋ぐ流路部を有する。戻し経路は、中空部、および流路部に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転可能なシャフトを有するモータ部と、
前記シャフトの軸方向一方側の端部に連結され、前記モータ部の動力により駆動されて流体を圧送するポンプ部と、
前記モータ部、および前記ポンプ部を収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングには、
前記モータ部を配置するモータ室と、
前記ポンプ部を配置するポンプ室と、
前記流体を前記ポンプ室から前記モータ室に流入させる供給経路と、
前記流体を前記モータ室から前記ポンプ室に戻す戻し経路と、が設けられ、
前記シャフトは、第1開口部において前記モータ室に開口し第2開口部において前記ポンプ室に開口する中空部を有し、
前記ポンプ部は、
外部から前記流体を吸い込む吸入口と、
前記流体を外部に吐出する吐出口と、を有し、
前記ハウジングは、前記第2開口部と前記吸入口とを繋ぐ流路部を有し、
前記戻し経路は、前記中空部、および前記流路部に設けられる、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記ポンプ室を軸方向一方側から覆う内壁面を有し、
前記内壁面には、
前記第2開口部に対向する第1凹部と、
前記第1凹部の径方向外側に位置し前記吸入口に繋がる第2凹部と、
径方向に沿って延びて前記第1凹部と前記第2凹部とを繋ぐ第1溝部と、が設けられ、
前記流路部は、前記第1凹部、前記第2凹部、および前記第1溝部を有する、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第1溝部と前記第2凹部との接続部は、前記第1溝部における前記吸入口の開口部よりも下側に位置する、
請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記ポンプ部は、前記吐出口に繋がり前記流体を圧送する圧縮室を有し、
前記供給経路は、前記圧縮室に接続される、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記ハウジングは、軸方向と交差する方向に延びて前記モータ室と前記ポンプ室とを隔てる底壁部を有し、
前記底壁部には、軸方向に延びて前記モータ室と前記ポンプ室とを繋ぐシャフト支持孔が設けられ、
前記シャフト支持孔は、内周面において前記シャフトを回転可能に支持し、
前記供給経路の少なくとも一部は、前記シャフト支持孔の内周面と前記シャフトの外周面との間に設けられる、
請求項4に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記底壁部の軸方向一方側を向く面には、
前記圧縮室の内壁部の少なくとも一部を構成する第3凹部と、
前記第3凹部と前記シャフト支持孔の内周面とを繋ぐ第2溝部と、が設けられ、
前記供給経路の少なくとも一部は、前記第2溝部の内部に設けられる、
請求項5に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記ハウジングは、
前記モータ部を径方向外側から囲む筒状部と、
前記筒状部の軸方向他方側の端部に連結され前記筒状部の軸方向他方側の開口を覆う蓋部と、を有し、
前記供給経路の少なくとも一部は、前記筒状部と前記蓋部との間の隙間に設けられる、請求項5に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記ポンプ室に配置され前記モータ部を制御する制御部を備え、
前記制御部の少なくとも一部は、前記第1開口部よりも下側に位置する、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1開口部と軸方向に対向する、
請求項8に記載の電動ポンプ。
【請求項10】
前記戻し経路の流路断面積は、前記供給経路の流路断面積よりも大きい、
請求項1~9の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ部と、ポンプ部を回転させるモータとを備えた電動ポンプでは、モータの温度上昇が問題となることがあった。特許文献1には、モータに供給された流体をシャフトの中空部を通して再びポンプ部に戻す電動ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動ポンプでは、中空シャフトの中空部がポンプ部の吐出口に繋がっていた。吐出口では流体の圧力が高まっている。このため、従来構造では流体がポンプ部に戻りにくく、流体の循環が円滑に行われにくいという問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、モータ部の冷却効率を高めることができる電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能なシャフトを有するモータ部と、前記シャフトの軸方向一方側の端部に連結され、前記モータ部の動力により駆動されて流体を圧送するポンプ部と、前記モータ部、および前記ポンプ部を収容するハウジングと、を備える。前記ハウジングには、前記モータ部を配置するモータ室と、前記ポンプ部を配置するポンプ室と、前記流体を前記ポンプ室から前記モータ室に流入させる供給経路と、前記流体を前記モータ室から前記ポンプ室に戻す戻し経路と、が設けられる。前記シャフトは、第1開口部において前記モータ室に開口し第2開口部において前記ポンプ室に開口する中空部を有する。前記ポンプ部は、外部から前記流体を吸い込む吸入口と、前記流体を外部に吐出する吐出口と、を有する。前記ハウジングは、前記第2開口部と前記吸入口とを繋ぐ流路部を有する。前記戻し経路は、前記中空部、および前記流路部に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、モータ部の冷却効率を高めることができる電動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の電動ポンプの断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の底壁部の第1対向面の正面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のポンプカバーの第2対向面(内側面)の正面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の電動ポンプの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において図には、XYZ座標系を示す。Y軸は、以下に説明する実施形態の中心軸線Jが延びる方向を示している。各図に示す中心軸線Jは、仮想軸線である。以下の説明では、中心軸線Jが延びる方向、つまりY軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。軸方向YのうちY軸の矢印が向く側(+Y側)は軸方向一方側であり、軸方向YのうちY軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は軸方向他方側である。中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。また、Z軸は、一実施形態の電動ポンプ100が取り付けられた状態における上下方向を示す。上下方向ZのうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)は上側であり、上下方向ZのうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は下側である。X軸は、軸方向Yおよび上下方向Zの両方と直交する方向を示す。
【0010】
なお、以下に説明する上下方向Zに対する電動ポンプ100の姿勢は一例であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
(電動ポンプ)
図1は、本実施形態の電動ポンプ100の断面図である。電動ポンプ100は、例えば車両に搭載される機器に取り付けられる。電動ポンプ100が取り付けられる機器は、自動変速機であってもよいし、車両の車軸を駆動する駆動装置であってもよい。
【0012】
以下の説明において、電動ポンプ100が取り付けられる機器を取付対象機器5と呼ぶ。電動ポンプ100は、例えば、車両に搭載される機器にオイルを供給する電動オイルポンプである。電動ポンプ100は、吸入口44c、および吐出口43cを介して、取付対象機器5に設けられる流路に繋がる。
【0013】
電動ポンプ100は、モータ部3と、制御部70と、ポンプ部40と、ハウジング10と、を備える。ハウジング10は、モータ部3、制御部70、およびポンプ部40を収容する。
【0014】
(モータ部)
モータ部3は、モータハウジング11の内部に収容される。軸方向Yにおいて、モータ部3は、制御部70の軸方向一方側(+Y)、かつポンプ部40の軸方向他方側(-Y)に配置される。モータ部3は、ロータ20と、ステータ30と、端子ユニット60と、を有する。
【0015】
ロータ20は、中心軸線Jを中心として回転可能である。ロータ20は、ロータコア21と、磁石22と、シャフト23と、を有する。すなわち、モータ部3は、中心軸線Jを中心として回転可能なシャフト23を有する。磁石22およびシャフト23は、ロータコア21に固定されている。
【0016】
シャフト23は、中心軸線Jを中心として軸方向Yに延びる。本実施形態のシャフト23は、中空シャフトである。シャフト23は、中空部23hを有する。中空部23hは、シャフト23の軸方向他方側(-Y)の端部で開口する第1開口部23aと、シャフト23の軸方向一方側(+Y)の端部で開口する第2開口部23bと、を有する。
【0017】
ステータ30は、ロータ20の径方向外側に配置される。ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ32と、コイル部33と、を有する。ステータコア31は、ロータコア21を径方向外側から囲む。ステータコア31の外周面は、モータハウジング11の筒状部11aに固定されている。ステータコア31は、円環状のコアバック部31aと、コアバック部31aの内周面から径方向内側に突出する複数のティース部31bと、を有する。複数のティース部31bは、周方向に沿って等間隔に配置される。ティース部31bには、インシュレータ32を介してコイル部33が装着される。コイル部33は、コイル線が巻回されて構成される。コイル部33からは、コイル線が引き出される。
【0018】
ステータ30から引き出されたコイル線は、端子ユニット60に接続される。端子ユニット60は、ステータ30と制御部70との間に配置される。端子ユニット60は、複数の端子部材を有する。端子部材は、コイル線と制御部70とを中継する。
【0019】
(回路基板)
制御部70は、モータ部3の軸方向他方側(-Y)に位置する。制御部70は、モータ部3に接続される。制御部70は、コイル部33に供給する電力を制御する。これにより、制御部70は、モータ部3を制御する。制御部70は、軸方向Yと直交する方向に広がる回路基板71を有する。回路基板71は、中心軸線J上に配置される。回路基板71には、モータ部3を駆動制御する制御IC、インバータ、および電源回路などが実装される。回路基板71には、端子ユニット60の端子部材が接続される。
【0020】
(ハウジング)
ハウジング10は、モータ部3、制御部70、およびポンプ部40を内部に収容する。ハウジング10には、モータ室10A、およびポンプ室10Bが設けられる。モータ室10Aには、モータ部3、および制御部70が配置される。一方で、ポンプ室10Bには、ポンプ部40が配置される。シャフト23の軸方向一方側(+Y)の端部は、ポンプ室10Bに配置される。一方でシャフト23の軸方向他方側(-Y)の端部は、モータ室10Aに配置される。
【0021】
ハウジング10は、蓋部13と、モータハウジング11と、ポンプカバー19と、を有する。蓋部13、モータハウジング11、およびポンプカバー19は、互いに別部材である。蓋部13は、モータハウジング11の軸方向他方側の端部に固定される。ポンプカバー19は、モータハウジング11の軸方向一方側の端部に固定される。モータ室10Aは、蓋部13とモータハウジング11とに囲まれる空間である。ポンプ室10Bは、ポンプカバー19とモータハウジング11とに囲まれる空間である。
【0022】
(蓋部)
蓋部13は、制御部70を内部に収容する。また、蓋部13は、モータ室10Aを軸方向他方側(-Y)から覆う。蓋部13は、例えば、樹脂製である。蓋部13は、基板包囲部13aと、複数の固定爪部13bと、基板カバー部13cと、を有する。
【0023】
基板包囲部13aは、中心軸線Jを中心とする略円環状である。基板包囲部13aは、制御部70を径方向外側から囲む。基板包囲部13aの外周面には、溝部13gが設けられる。溝部13gは、径方向外側に開口する。溝部13gは、基板包囲部13aの外周面において一周に亘って設けられる。溝部13gには、Oリング2bが収容される。Oリング2bは、中心軸線Jを中心として円環状に延びる。
【0024】
固定爪部13bは、基板包囲部13aから軸方向一方側(+Y)に延びる。複数の固定爪部13bは、周方向に沿って並んで配置される。固定爪部13bの先端は、径方向内側に向けて突出する突起部が設けられる。
【0025】
基板カバー部13cは、制御部70を軸方向他方側から覆う。これにより、基板カバー部13cは、制御部70を保護する。本実施形態において、基板カバー部13cは、基板包囲部13aに対し軸方向他方側(-Y)から接着固定されている。
【0026】
(モータハウジング)
モータハウジング11は、中心軸線Jを中心として軸方向Yに延びる略円筒状である。モータハウジング11は、モータ部3、およびポンプ部40を内部に収容する。モータハウジング11は、筒状部11aと、底壁部11dと、ポンプ包囲部11hと、を有する。
【0027】
筒状部11aは、中心軸線Jを中心として軸方向Yに延びる円筒状である。筒状部11aは、モータ部3を径方向外側から囲む。また、筒状部11aは、モータ室10Aを径方向外側から囲む。筒状部11aの軸方向他方側(-Y)の端部には、蓋部13が連結される。これにより、筒状部11aの軸方向他方側(-Y)の開口は、蓋部13によって覆われる。
【0028】
筒状部11aの外周面には、係止溝部11cが設けられる。係止溝部11cは、筒状部11aの外周面において一周に亘って設けられる。係止溝部11cは、径方向外側に開口する。係止溝部11cは、筒状部11aの外周面の軸方向他方側(-Y)の端部に位置する。筒状部11aの軸方向一方側(+Y)の端部の径方向外側には、固定爪部13bが配置される。係止溝部11cには、固定爪部13bの突起部が掛かる。これにより、蓋部13は、モータハウジング11に連結される。
【0029】
底壁部11dは、軸方向Yと交差する方向に延びる。底壁部11dは、中心軸線Jを中心とする略円環状である。底壁部11dの軸方向他方側を向く面の径方向外縁は、筒状部11aの軸方向一方側(+Y)に繋がる。底壁部11dは、モータ室10Aの軸方向一方側(+Y)、かつポンプ室10Bの軸方向他方側(-Y)に位置する。底壁部11dは、モータ室10Aとポンプ室10Bとを隔てる。
【0030】
底壁部11dには、シャフト支持孔11jが設けられる。シャフト支持孔11jは、底壁部11dを軸方向Yに貫通する。これにより、シャフト支持孔11jは、モータ室10Aとポンプ室10Bとを繋ぐ。
【0031】
シャフト支持孔11jは、中心軸線Jを中心とする円形である。シャフト支持孔11jには、シャフト23が通される。シャフト支持孔11jの内径は、シャフト23の外径よりも若干大きい。シャフト支持孔11jは、内周面においてシャフト23を回転可能に支持する。すなわち、底壁部11dは、滑り軸受として機能する。
【0032】
底壁部11dの軸方向他方側(-Y)の面には、シャフト支持部11eが設けられる。シャフト支持部11eは、底壁部11dから軸方向他方側(-Y)に突出する円筒状である。シャフト支持部11eは、シャフト支持孔11jの内縁に沿って延びる。シャフト支持部11eの内周面は、シャフト支持孔11jと連続して繋がる。すなわち、シャフト支持部11eの内周面は、シャフト支持孔11jの内周面の一部を構成する。
【0033】
底壁部11dは、ポンプ部40を軸方向他方側(-Y)から覆う。底壁部11dは、軸方向一方側(+Y)を向きポンプ部40と対向する第1対向面11fを有する。第1対向面11fには、第1吸入側溝部44aと第1吐出側溝部(第3凹部)43aと第1連通溝部(第2溝部)11sが設けられる。第1吸入側溝部44a、第1吐出側溝部43a、および第1連通溝部11sは、軸方向他方側(-Y)に凹む。
【0034】
図2は、本実施形態の第1対向面11fの正面図である。
図2に示すように、第1吸入側溝部44aおよび第1吐出側溝部43aは、それぞれ中心軸線Jの周方向に延びる円弧状の溝である。第1吸入側溝部44aおよび第1吐出側溝部43aは、軸方向一方側(+Y)に開口する。第1吸入側溝部44aと第1吐出側溝部43aとは、周方向の異なる位置に設けられる。第1吸入側溝部44aと第1吐出側溝部43aとは、中心軸線Jを挟んで反対側に配置される。
【0035】
第1連通溝部11sは、径方向に沿って直線状に延びる。第1連通溝部11sの径方向内側の端部は、シャフト支持孔11jに開口する。第1連通溝部11sの径方向外側の端部は、第1吐出側溝部43aに開口する。第1連通溝部11sの第1吐出側溝部43aにおける開口は、第1吐出側溝部43aの長さ方向の略中央に位置する。
【0036】
本実施形態の第1連通溝部11sの径方向内側の端部には、段部11nが設けられる。第1連通溝部11sの深さ寸法は、段部11nにおいて大きくなる。すなわち、第1連通溝部11sの底面の位置は、段部11nにおいて他の部分と比較して軸方向他方側(-Y)に凹んでいる。本実施形態によれば、第1連通溝部11sの径方向内側の端部に段部11nが設けられることで、第1連通溝部11sの径方向内側の開口を軸方向に広く確保することができる。これにより、シャフト23の外周面に対し、軸方向の広い範囲に流体を供給することができる。そのため流体がシャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間をより潤滑しやすくなる。
【0037】
なお、段部11nの底面は、径方向内側に向かうに従い軸方向他方側(-Y)に位置する方向に傾斜していてもよい。この場合、第1連通溝部11s内の流体を段部11nにおいてシャフト支持孔11jに向かって円滑に供給できる。
【0038】
さらに、段部11nの溝幅は、径方向内側に無悪に従い徐々に広くなっていてもよい。この場合、シャフト23の外周面に対し、周方向の広い範囲に流体を供給することができる。そのため流体がシャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間をより潤滑しやすくなる。
【0039】
図1に示すように、ポンプ包囲部11hは、底壁部11dから軸方向一方側に突出する円筒状である。ポンプ包囲部11hは、ポンプ部40を径方向外側から囲む。すなわち、ポンプ包囲部11hの径方向内側には、ポンプ室10Bが設けられる。ポンプ包囲部11hは、軸方向一方側に開口する。ポンプ包囲部11hの内周面は、中心軸線Jに対して偏心する円形である。ポンプ包囲部11hの内周面には、アウターロータ42の外周面と対向する。ポンプ包囲部11hの内周面は、アウターロータ42の外周面を回転可能に支持する。
【0040】
(ポンプカバー)
ポンプカバー19は、中心軸線Jを中心とする略円板状である。ポンプカバー19は、ポンプ部40の軸方向一方側(+Y)に配置される。ポンプカバー19は、ポンプ部40を軸方向一方側(+Y)から覆う。したがって、ポンプカバー19と底壁部11dとは、ポンプ部40を軸方向両側から挟み込む。ポンプカバー19は、ポンプ包囲部11hの内周面の軸方向一方側(+Y)の端部に固定される。ポンプカバー19は、ポンプ包囲部11hの開口を軸方向一方側から塞ぐ。すなわち、ポンプカバー19は、
【0041】
ポンプカバー19は、第2対向面(内壁面)19fと、吸入部19aと、吸入口44cと、吐出口43cと、を有する。第2対向面19fは、軸方向他方側(-Y)を向きポンプ部40と対向する。すなわち、ハウジング10は、ポンプ室10Bを軸方向一方側(+Y)から覆う第2対向面19fを有する。
【0042】
第2対向面19fには、第2吸入側溝部(第2凹部)44bと、第2吐出側溝部43bと、対向凹部(第1凹部)19bと、第2連通溝部(第1溝部)19gと、が設けられる。第2吸入側溝部44b、第2吐出側溝部43b、対向凹部19b、および第2連通溝部19gは、ポンプカバー19の軸方向他方側(-Y)を向く面に設けられる。
【0043】
図3は、本実施形態の第2対向面の正面図である。第2吸入側溝部44bおよび第2吐出側溝部43bは、それぞれ中心軸線Jの周方向に延びる溝である。第2吸入側溝部44bおよび第2吐出側溝部43bは、対向凹部19bの径方向外側に位置する。第2吸入側溝部44bおよび第2吐出側溝部43bは、軸方向一方側(+Y)に凹む。第2吸入側溝部44bおよび第2吐出側溝部43bは、軸方向他方側(-Y)に開口する。第2吸入側溝部44bと第2吐出側溝部43bとは、周方向の異なる位置に設けられる。本実施形態では、第2吸入側溝部44bと第2吐出側溝部43bとは、中心軸線Jを挟んで反対側に配置される。第2吸入側溝部44bの底面には、吸入口44cが開口する。すなわち、第2吸入側溝部44bは、吸入口44cに繋がる。第2吐出側溝部43bの底面には、吐出口43cが開口する。すなわち、第2吸入側溝部44bは、吐出口43cに繋がる。
【0044】
図2および
図3に示すように、第2吸入側溝部44bと第1吸入側溝部44aとは略同形状である。第2吸入側溝部44bは、軸方向Yから見て、第1吸入側溝部44aと重なる。同様に、第2吐出側溝部43bと第1吐出側溝部43aとは略同形状である。第2吐出側溝部43bは、軸方向Yから見て、第1吐出側溝部43aと重なる。なお、第2吸入側溝部44b、第1吸入側溝部44a、第2吐出側溝部43b、第1吐出側溝部43a、第1連通溝部11s、対向凹部19b、第2連通溝部19gは、ポンプ室10Bの一部である。
【0045】
図1に示すように、対向凹部19bは、中心軸線J上に位置する。対向凹部19bは、シャフト23の第2開口部23bと軸方向に対向する。本実施形態の対向凹部19bは、軸方向から見て中心軸線Jを中心とする円形である。しかしながら、対向凹部19bの形状は、本実施形態に限定されない。
【0046】
第2連通溝部19gは、径方向に沿って直線状に延びる。第2連通溝部19gの径方向内側の端部は、対向凹部19bに開口する。第2連通溝部19gの径方向外側の端部は、第2吸入側溝部44bに開口する。これにより、第2連通溝部19gは、対向凹部19bと第2吸入側溝部44bとを繋ぐ。
【0047】
図3に示すように、第2連通溝部19gは、水面下(XY平面)に沿って延びる。第2連通溝部19gと第2吸入側溝部44bとの接続部15aは、第2吸入側溝部44bの長さ方向の略中央に位置する。また、第2吸入側溝部44bにおける吸入口44cの開口部は、第2連通溝部19gと第2吸入側溝部44bとの接続部15aよりも上側に位置する。
【0048】
図1に示すように、吸入部19aは、ポンプカバー19の軸方向一方側(+Y)を向く面から軸方向一方側(+Y)に突出する円柱状である。吸入口44cは、吸入部19aの先端面に設けられる。また、吸入口44cは、第2吸入側溝部44bの底面に繋がる。吸入口44cは、電動ポンプ100の外部から流体を吸入する。吸入口44cは、ポンプ室10Bの吸入室A2に流体を流入させる。
【0049】
吐出口43cは、ポンプカバー19の軸方向一方側(+Y)を向く面に設けられる。吐出口43cは、第2吐出側溝部43bの底面に繋がる。吐出口43cは、圧縮された流体を電動ポンプ100の外部に吐出する。吐出口43cは、ポンプ室10Bの圧縮室A1から流体を吐出する。
【0050】
(ポンプ部)
ポンプ部40は、モータ部3の軸方向一方側(+Y)に配置される。ポンプ部40は、シャフト23の軸方向一方側(+Y)の端部に連結される。ポンプ部40は、モータ部3の動力により駆動される。ポンプ部40は、オイル等の流体を外部から吸入し、吸入した流体を圧縮して吐出する。すなわち、ポンプ部40は、流体を圧送する。
【0051】
本実施形態のポンプ部40は、トロコイドポンプである。ポンプ部40は、インナーロータ41とアウターロータ42とを有する。アウターロータ42は、インナーロータ41の径方向外側に配置される。インナーロータ41およびアウターロータ42は、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ41の歯形とアウターロータ42の歯形とは、周方向の1箇所で噛み合う。アウターロータ42は、ポンプ包囲部11hの内周面に保持される。アウターロータ42は、インナーロータ41を、径方向外側から周方向の全周にわたって囲む。インナーロータ41は、シャフト23の軸方向一方側(+Y)の端部に連結される。インナーロータ41は、アウターロータ42の径方向内側で、シャフト23と一体に中心軸線J周りに回転する。アウターロータ42は、ポンプ包囲部11hの内周面を滑りながら、中心軸線J周りを偏心回転する。
【0052】
第2吸入側溝部44bの内部空間、および第1吸入側溝部44aの内部空間は、インナーロータ41とアウターロータ42との隙間Gに対し、軸方向Yの両側から繋がる。以下の説明において、ひとつながりの空間として相互に繋がる第2吸入側溝部44bおよび第1吸入側溝部44aの内部空間を吸入室A2と呼ぶ。吸入室A2は、吸入口44cに繋がる。
【0053】
第2吐出側溝部43bの内部空間、および第1吐出側溝部43aの内部空間は、インナーロータ41とアウターロータ42との隙間Gに対し、軸方向Yの両側から接続される。以下の説明において、ひとつながりの空間として相互に繋がる第2吐出側溝部43bおよび第1吐出側溝部43aの内部空間を圧縮室A1と呼ぶ。圧縮室A1は、吐出口43cに繋がる。
【0054】
吸入口44c、吸入室A2、圧縮室A1、および吐出口43cは、ポンプ部40の一部として機能する。すなわち、ポンプ部40は、吸入口44c、吸入室A2、圧縮室A1、および吐出口43cを有する。吸入口44cは、外部から流体を吸い込む。吸入室A2は、吸入口44cに繋がる。圧縮室A1は、流体を圧送する。吐出口43cは、圧縮室A1に繋がり流体を外部に吐出する。
【0055】
ポンプ部40が駆動することで、インナーロータ41とアウターロータ42との間に設けられる隙間Gは、中心軸線J周りに移動する。これに伴い、吸入室A2の圧力が下がり、吸入室A2および隙間Gには、吸入口44cから流体が流入する。隙間Gが周方向に移動することで、ポンプ部40は、吸入室A2から圧縮室A1に流体を移動させる。これに伴い、圧縮室A1の圧力が高まり、圧縮室A1の流体は吐出口43cから吐出される。
【0056】
(供給経路および戻し経路)
ハウジング10には、供給経路F1a、F1bと戻し経路F2とが設けられる。供給経路F1a、F1bは、流体をポンプ室10Bからモータ室10Aに流入させる。これにより、ポンプ室10Bには、一定の高さまで流体が貯留される。ポンプ室10Bの流体は、ポンプ室10B内で循環してポンプ室10Bに配置されるモータ部3および制御部70を冷却する。戻し経路F2は、流体をモータ室10Aからポンプ室10Bに戻す。ポンプ室10Bに戻された流体は、他の流体とともに吐出口43cから吐出される。
【0057】
本実施形態の第1吐出側溝部43aには、第1連通溝部11sが繋がる。すなわち、第1連通溝部11sは、径方向外側の端部で圧縮室A1に繋がる。また、第1連通溝部11sは、径方向内側の端部で、シャフト支持孔11jの軸方向一方側(+Y)の端部に繋がる。シャフト支持孔11jは、軸方向他方側(-Y)の端部で、モータ室10Aに開口する。このように、第1連通溝部11sとシャフト支持孔11jとは、圧縮室A1とポンプ室10Bとを繋ぐ。
【0058】
電動ポンプ100の駆動時に、圧縮室A1内では流体の圧力が高まる。圧力の高まりにより、流体は、第1連通溝部11sおよびシャフト支持孔11jを通過してモータ室10Aに流入する。すなわち、第1連通溝部11sおよびシャフト支持孔11jは、流体をポンプ室10Bからモータ室10Aに移動させる第1供給経路F1aとして機能する。
【0059】
なお、シャフト支持孔11jには、シャフト23が配置される。このため、シャフト支持孔11jの内部においてポンプ室10Bとモータ室10Aとを繋ぐ経路は、シャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間に設けられる。すなわち、本実施形態において、供給経路F1a、F1bの一部は、シャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間に設けられる。
【0060】
本実施形態の電動ポンプ100は、取付対象機器5の凹部5aに収容される。凹部5aには、流体が充填される。凹部5aの内周面には、取付対象機器5における流路に繋がる開口部5bが設けられる。電動ポンプ100の吐出口43cは、凹部5aの内部に流体を吐出する。これにより、凹部5a内の圧力が高まり開口部5bから流体の取付対象機器5の流路内に圧送される。
【0061】
図4は、本実施形態の電動ポンプ100の部分断面図である。モータハウジング11の筒状部11aは、軸方向他方側(-Y)を向く端面11tを有する。また、蓋部13は、端面11tと軸方向に対向する第3対向面13tを有する。端面11tと第3対向面13tとの間には、わずかな隙間Kが設けられる。隙間Kの軸方向Yの寸法は、モータハウジング11および蓋部13の寸法公差の範囲内の値となる。また、隙間Kの軸方向Yの寸法は、周方向の位置によっても異なる。隙間Kは、モータ室10Aとハウジング10の外部空間とを繋ぐ。
【0062】
隙間Kよりも軸方向一方側(+Y)でハウジング10の外周面にはOリング2bが配置される。Oリング2bは、溝部13gの底面と凹部5aの内周面との間で圧縮される。Oリング2bは、隙間Kの軸方向他方側(-Y)で筒状部11aの外周面と凹部5aの内周面との間の流体等の通過を制限する。本実施形態によれば、凹部5aの開口から侵入する水分および埃などが、隙間Kを介してモータ室10Aに浸入することを抑制できる。
【0063】
吐出口43cが開口する凹部5aの内部は、圧縮室A1と繋がっており、圧縮室A1と同様に流体の圧力が高められている。このため、吐出口43cから吐出される流体の一部は、隙間Kを介してモータ室10Aに流入する。すなわち、隙間Kは、第2供給経路F1bとして機能する。なお、本実施形態において、第2供給経路F1bを構成する隙間Kは、軸方向Yに対向する面同士の間に設けられるが、隙間Kは径方向に対向する面同士の間に設けられていてもよい。
【0064】
本実施形態の対向凹部19b、第2連通溝部19g、および第2吸入側溝部44bは、シャフト23の第2開口部23bと吸入口44cとを繋ぐ流路部15を構成する。すなわち、ハウジング10は、流路部15を有する。また、流路部15は、対向凹部19b、第2連通溝部19g、および第2吸入側溝部44bを有する。さらに、流路部は、第2開口部23bと吸入口44cとを繋ぐ。また、シャフト23の中空部23hは、第1開口部23aにおいてモータ室10Aに開口し、第2開口部23bにおいてポンプ室10Bに開口する。したがって、流路部15と、中空部23hとは、モータ室10Aとポンプ室10Bの吸入口44cとを繋ぐ。
【0065】
電動ポンプ100の駆動時に、吸入室A2では流体の圧力が低くなるため、ポンプ部40は、吸入口44cから流体を吸い込む。これとともに、モータ室10Aの流体は、中空部23hおよび流路部15を通って吸入室A2に吸い込まれる。すなわち、中空部23hおよび流路部15は、流体をモータ室10Aからポンプ室10Bに移動させる戻し経路F2として機能する。
【0066】
本実施形態において、戻し経路F2の流路断面積は、供給経路F1a、F1bの流路断面積よりも大きい。ここで、供給経路F1a、F1bおよび戻し経路F2の「流路断面積」とは、供給経路F1a、F1bおよび戻し経路F2における流路抵抗の大小の指標として用いられる。供給経路F1a、F1bおよび戻し経路F2の「流路断面積」とは、供給経路F1a、F1bおよび戻し経路F2における流体の流れ易さを表す。供給経路F1a、F1bの流路断面積は、供給経路F1a、F1bの全長において、最小の流路断面積を表す。また、供給経路F1a、F1bが分岐する複数の経路を含む場合、供給経路F1a、F1bの流路断面積は、分岐した各経路の最小の流路断面積の総和である。同様に、戻し経路F2の流路断面積は、戻し経路F2の全長において、最小の流路断面積を表す。また、戻し経路F2が分岐する複数の経路を含む場合、戻し経路F2の流路断面積は、分岐した各経路の最小の流路断面積の総和である。
【0067】
本実施形態において、供給経路F1a、F1bは、2つの経路(第1供給経路F1aおよび第2供給経路F1b)を有する。本実施形態の第1供給経路F1aは、シャフト支持孔11jの内部で断面積が最小となる。したがって、第1供給経路F1aの流路断面積は、シャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間の隙間の、軸方向Yと直交する断面における面積である。また、本実施形態の第2供給経路F1bは、隙間Kで断面積が最小となる。本実施形態の第2供給経路F1bの流路断面積は、周方向の全長における隙間Kの面積である。さらに、供給経路F1a、F1bの全体の流路断面積は、第1供給経路F1aの流路断面積と第2供給経路F1bの流路断面積との和である。
【0068】
本実施形態において、戻し経路F2は、1つの経路のみを有する。本実施形態の戻し経路F2は、第2連通溝部19gの内部で断面積が最小となる。本実施形態において、戻し経路F2の流路断面積は、径方向と直交する断面における第2連通溝部19gの断面積である。
【0069】
本実施形態の電動ポンプ100は、駆動時に、圧縮室A1で圧縮される流体を、供給経路F1a、F1bを介してモータ室10Aに送るとともに、モータ室10Aの流体を、戻し経路F2を介して吸入室A2に吸い込む。供給経路F1a、F1bにおいてモータ室10Aに送られる流体の流量が、戻し経路F2においてモータ室10Aから排出される流体の流量より多いと、モータ室10Aの流体の圧力が高まる。モータ室10Aの流体の圧力が高まりすぎる場合、固定爪部13bと係止溝部11cとの連結部の負荷が高まり、蓋部13とモータハウジング11との固定が解除されるおそれがある。また、モータ室10Aの流体の圧力が高まりすぎる場合、ハウジング10そのものに損傷が生じるおそれがある。加えて、モータ室10Aの流体の圧力が高まりすぎると、モータ室10A内で、ロータ20が流体から受ける力が周方向において不均一となり、シャフト23に傾きが生じてシャフト23の回転効率が低下するおそれがある。このため、電動ポンプ100においては、モータ室10Aの流体の圧力の高まりを抑制することが好ましい。
【0070】
本実施形態の戻し経路F2の流路断面積は、供給経路F1a、F1bの流路断面積よりも大きい。このため、戻し経路F2は、供給経路F1a、F1bよりも流路抵抗を小さくすることができる。本実施形態によれば、戻し経路F2においてモータ室10Aから排出される流体の流量が、供給経路F1a、F1bにおいてモータ室10Aに送られる流体の流量よりも少なくなることを抑制できる。結果的に、モータ室10Aの流体の圧力の高まりを抑制でき、ハウジング10を構成する部材間の連結の解除、およびハウジング10の損傷を抑制できる。さらに、モータ室10Aの流体の圧力の高まりに起因するシャフト23の傾きを抑制することができ、電動ポンプ100の駆動効率を維持することができる。
【0071】
本実施形態のシャフト23は、第1開口部23aにおいてモータ室10Aに開口し第2開口部23bにおいてポンプ室10Bに開口する中空部23hを有する。また、ハウジング10は、中空部23hの第2開口部23bと吸入口44cと繋ぐ流路部15を有する。戻し経路F2は、シャフト23の中空部23h、および流路部15に設けられる。本実施形態によれば、モータ室10Aと吸入口44cとが、中空部23hおよび流路部15を介して互いに繋がる。このため、吸入口44cにおける負圧を利用して、モータ室10Aから流体をポンプ室10Bに吸い込むことができる。これにより、モータ室10A内での流体の循環を促し、モータ室10Aに配置されるモータ部3の冷却効率を高めることができる。
【0072】
さらに、本実施形態によれば、戻し経路F2のモータ室10Aにおける開口が、シャフト23の軸方向他方側(-Y)の端部に位置する。このため、戻し経路F2は、モータ部3に対して軸方向他方側(-Y)から流体を吸い込むことができる。第1供給経路F1aをモータ部3の軸方向一方側(+Y)に配置する場合に、モータ室10Aにおいて、軸方向他方側(-Y)から軸方向一方側(+Y)に向かってモータ部3の隙間を通して流体を流すことができ、モータ部3を効率的に冷却できる。
【0073】
本実施形態において、ハウジング10は、ポンプ室10Bを軸方向一方側(+Y)から覆う第2対向面19fを有し、流路部15は、第2対向面19fに設けられる対向凹部19b、第2吸入側溝部44b、および第2連通溝部19gを有する。対向凹部19bは、第2開口部23bに対向する。第2吸入側溝部44bは、吸入口44cに繋がる。第2連通溝部19gは、対向凹部19bと第2吸入側溝部44bとを繋ぐ。本実施形態によれば、シャフト23の中空部23hを通過してポンプ室10Bに流入した流体を第2対向面19fに設けられる対向凹部19b、第2吸入側溝部44b、および第2連通溝部19gによって吸入口44cまで導くことができる。これにより、流体を、戻し経路F2においてモータ室10Aから円滑に排出することができる。
【0074】
本実施形態において、第2連通溝部19gと第2吸入側溝部44bとの接続部15aは、第2吸入側溝部44bにおける吸入口44cの開口部よりも下側に位置する。本実施形態によれば、第2連通溝部19gは、吸入口44cよりも下側で第2吸入側溝部44bに接続される。吸入口44cは、取付対象機器5の流路に接続されて流体で満たされる。このため、第2吸入側溝部44bの内部の吸入室A2においても、第2吸入側溝部44bよりも下側の領域は、流体で満たされやすくなる。したがって、第2連通溝部19gを吸入口44cよりも下側で第2吸入側溝部44bに接続することで、第2連通溝部19gを流体で満たしやすくなる。すなわち、本実施形態によれば、第2連通溝部19g内に空気が残留することを抑制で気、吸入室A2の負圧を利用してモータ室10Aからポンプ室10Bに流体を吸入しやすくなる。
【0075】
本実施形態において、供給経路F1a、F1bは、ポンプ室10Bにおいて圧縮室A1に接続される。圧縮室A1では、流体の圧力が高められているため、供給経路F1a、F1bにおいて流体をポンプ室10Bからモータ室10Aにスムーズに移動させることができる。
【0076】
図1に示すように、本実施形態の供給経路F1a、F1bの少なくとも一部としての第1供給経路F1aは、シャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間に設けられる。シャフト支持孔11jの内周面は、シャフト23の外周面を滑らせながら支持する。本実施形態によれば、第1供給経路F1aをシャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面の隙間に設けることで、第1供給経路F1aの流路断面積を戻し経路F2の流路断面積よりも小さくしやすい。本実施形態によれば、モータ室10Aの圧力の高まりを抑制しやすい。
【0077】
また、供給経路F1a、F1bの流路断面積が大きいと、圧縮室A1からモータ室10Aに流体が多量に流れ、圧縮室A1の圧力が低下することで吐出口43cを介する流体の吐出量が低下する。本実施形態によれば、第1供給経路F1aをシャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面の隙間に設けることで、第1供給経路F1aの流路断面積を十分に小さくして、電動ポンプ100の吐出効率を高めることができる。
【0078】
さらに、本実施形態によれば、第1供給経路F1aをシャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面の隙間に設けることで、流体がシャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間を潤滑する。本実施形態によれば、シャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間の摩擦抵抗を低減できる。
【0079】
本実施形態において、第1対向面11fには、圧縮室A1の内壁部の少なくとも一部を構成する第1吐出側溝部43aと、第1吐出側溝部43aとシャフト支持孔11jの内周面とを繋ぐ第1連通溝部11sと、が設けられる。また、供給経路F1a、F1bの少なくとも一部としての第1供給経路F1aは、第1連通溝部11sの内部に設けられる。本実施形態によれば、圧縮室A1において圧力を高めた流体を、第1連通溝部11sを介して、シャフト支持孔11jの内周面とシャフト23の外周面との間に送ることができる。
【0080】
本実施形態において、ハウジング10は、筒状部11aと、筒状部11aの軸方向他方側(-Y)の開口を覆う蓋部13と、を有する。また、供給経路F1a、F1bの少なくとも一部としての第2供給経路F1bは、筒状部11aと蓋部13との間の隙間Kに設けられる。本実施形態のハウジング10には、分岐する複数の供給経路F1a、F1bが設けられる。本実施形態によれば、モータ室10Aにより多くの流体を送ることが可能となる。これにより、モータ室10Aの各部(モータ部3および制御部70)の冷却効率を高めることができる。
【0081】
流体は、供給経路F1a、F1bを介してモータ室10Aに流入し、戻し経路F2を介してモータ室10Aから流出する。モータ室10Aにおいて、流体は、少なくとも戻し経路F2のモータ室10Aにおける開口の高さまで溜まる。本実施形態において、戻し経路F2は、シャフト23の第1開口部23aにおいてモータ室10Aに開口する。モータ室10Aに配置される部材は、中心軸線Jよりも下側に配置することで、モータ室10Aの下部に溜まる流体によって冷却することができる。
【0082】
本実施形態において、制御部70は、モータ室10Aに配置される。また、制御部70の少なくとも一部は、第1開口部23aよりも下側に位置する。本実施形態によれば、制御部70の少なくとも一部を、モータ室10Aの下部に溜まる流体に浸漬させることができ、制御部70を効果的に冷却することが可能となる。
【0083】
本実施形態において、制御部70は、第1開口部23aと軸方向に対向する。本実施形態によれば、制御部70が浸漬することで温められた制御部70の周囲の流体を、第1開口部23aから吸い込んでポンプ室10Bに戻すことができる。すなわち、本実施形態によれば、モータ室10Aにおいて温度が高まった流体をポンプ室10Bに戻すことができる。これにより、モータ室10A内の流体の温度を低く保ちやすくなり、モータ部3および制御部70の冷却効率を高めることができる。
【0084】
本発明は上述の実施形態およびその変形例に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。
【0085】
例えば、上述の実施形態およびその変形例における供給経路および戻し経路の構成は一例であり、それぞれポンプ室とモータ室との間で流体を移送することができれば、上述の実施形態およびその変形例に限定されない。
【0086】
また、上述の実施形態では、蓋部とモータハウジングとの連結が、固定爪部と係止溝部との関係によってされる場合について説明した。しかしながら、蓋部とモータハウジングとの連結構造は上述の実施形態に限定されない。
【0087】
本発明が適用される電動ポンプの用途は、特に限定されない。電動ポンプによって送られる流体の種類は、特に限定されず、水等であってもよい。電動ポンプは、車両以外の機器に搭載されてもよい。
【0088】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を中心として回転可能なシャフトを有するモータ部と、前記シャフトの軸方向一方側の端部に連結され、前記モータ部の動力により駆動されて流体を圧送するポンプ部と、前記モータ部、および前記ポンプ部を収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングには、前記モータ部を配置するモータ室と、前記ポンプ部を配置するポンプ室と、前記流体を前記ポンプ室から前記モータ室に流入させる供給経路と、前記流体を前記モータ室から前記ポンプ室に戻す戻し経路と、が設けられ、前記シャフトは、第1開口部において前記モータ室に開口し第2開口部において前記ポンプ室に開口する中空部を有し、前記ポンプ部は、外部から前記流体を吸い込む吸入口と、前記流体を外部に吐出する吐出口と、を有し、前記ハウジングは、前記第2開口部と前記吸入口とを繋ぐ流路部を有し、前記戻し経路は、前記中空部、および前記流路部に設けられる、電動ポンプ。
(2) 前記ハウジングは、前記ポンプ室を軸方向一方側から覆う内壁面を有し、前記内壁面には、前記第2開口部に対向する第1凹部と、前記第1凹部の径方向外側に位置し前記吸入口に繋がる第2凹部と、径方向に沿って延びて前記第1凹部と前記第2凹部とを繋ぐ第1溝部と、が設けられ、前記流路部は、前記第1凹部、前記第2凹部、および前記第1溝部を有する、(1)に記載の電動ポンプ。
(3) 前記第1溝部と前記第2凹部との接続部は、前記第1溝部における前記吸入口の開口部よりも下側に位置する、(2)に記載の電動ポンプ。
(4) 前記ポンプ部は、前記吐出口に繋がり前記流体を圧送する圧縮室を有し、前記供給経路は、前記圧縮室に接続される、(1)に記載の電動ポンプ。
(5) 前記ハウジングは、軸方向と交差する方向に延びて前記モータ室と前記ポンプ室とを隔てる底壁部を有し、前記底壁部には、軸方向に延びて前記モータ室と前記ポンプ室とを繋ぐシャフト支持孔が設けられ、前記シャフト支持孔は、内周面において前記シャフトを回転可能に支持し、前記供給経路の少なくとも一部は、前記シャフト支持孔の内周面と前記シャフトの外周面との間に設けられる、(4)に記載の電動ポンプ。
(6) 前記底壁部の軸方向一方側を向く面には、前記圧縮室の内壁部の少なくとも一部を構成する第3凹部と、前記第3凹部と前記シャフト支持孔の内周面とを繋ぐ第2溝部と、が設けられ、前記供給経路の少なくとも一部は、前記第2溝部の内部に設けられる、(5)に記載の電動ポンプ。
(7) 前記ハウジングは、前記モータ部を径方向外側から囲む筒状部と、前記筒状部の軸方向他方側の端部に連結され前記筒状部の軸方向他方側の開口を覆う蓋部と、を有し、前記供給経路の少なくとも一部は、前記筒状部と前記蓋部との間の隙間に設けられる、(5)又は(6)に記載の電動ポンプ。
(8) 前記ポンプ室に配置され前記モータ部を制御する制御部を備え、前記制御部の少なくとも一部は、前記第1開口部よりも下側に位置する、(1)~(7)の何れか一項に記載の電動ポンプ。
(9) 前記制御部は、前記第1開口部と軸方向に対向する、(8)に記載の電動ポンプ。
(10) 前記戻し経路の流路断面積は、前記供給経路の流路断面積よりも大きい、(1)~(9)の何れか一項に記載の電動ポンプ。
【符号の説明】
【0089】
3…モータ部、5a…凹部、5b…開口部、10…ハウジング、10A…モータ室、10B…ポンプ室、11a…筒状部、11d…底壁部、11j…シャフト支持孔、11s…第1連通溝部(第2溝部)、13…蓋部、13g…溝部、15…流路部、15a…接続部、19b…対向凹部(第1凹部)、19f…第2対向面(内壁面)、19g…第2連通溝部(第1溝部)、23…シャフト、23a…第1開口部、23b…第2開口部、23h…中空部、40…ポンプ部、43a…第1吐出側溝部(第3凹部)、43c…吐出口、44b…第2吸入側溝部(第2凹部)、44c…吸入口、70…制御部、100…電動ポンプ、A1…圧縮室、F2…戻し経路、F1a…供給経路、G,K…隙間、IC…制御、J…中心軸線、Y…軸方向