(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153705
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K   3/04        20060101AFI20251002BHJP        
【FI】
H02K3/04 E 
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056316
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園  博一
(74)【代理人】
【識別番号】100186211
【弁理士】
【氏名又は名称】片山  敏彰
(72)【発明者】
【氏名】橋本  伸吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内  裕人
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CB03
5H603CC03
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD22
5H603CE13
(57)【要約】
【課題】セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分の加工を容易にすることが可能なステータを提供する。
【解決手段】このステータ100は、複数のコイルエンド部20bは、スロット収容部20aに接続される接続部分21aと、軸方向視で、ステータコア1に対してステータコア1の接線方向に傾斜するとともに、軸方向外側に延びる接線方向傾斜部分21bとを有するスロット側傾斜部21を含む。
【選択図】
図3
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  スロットを含むステータコアと、
  前記スロットに挿通されるスロット収容部と、前記ステータコアの端面から軸方向外側に突出して延びる複数のコイルエンド部とを含み、平角線により構成されるとともにU字形状を有する複数のセグメントコイル同士が接合されて構成されるコイルと、を備え、
  前記複数のコイルエンド部は、前記スロット収容部に接続される接続部分と、軸方向視で、前記ステータコアに対して前記ステータコアの接線方向に延びるとともに、軸方向外側に延びる接線方向傾斜部分とを有するスロット側傾斜部を含む、ステータ。
【請求項2】
  前記スロット側傾斜部は、軸方向視で、前記接線方向傾斜部分よりも径方向外側に配置され、前記接線方向傾斜部分の延びる方向に交差する法線方向側に傾斜する法線方向側傾斜部分をさらに有する、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
  軸方向視で、前記スロット側傾斜部のうち隣接する他の前記スロット側傾斜部と重ならない露出部分の面積は、前記スロット側傾斜部のうち前記他の前記スロット側傾斜部と重なる重なり部分の面積よりも大きい、請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
  前記露出部分は、軸方向視で径方向外側に向かうにつれて幅が大きくなるように構成されている、請求項3に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、ステータに関し、特に、コイルを備えるステータに関する。
【背景技術】
【0002】
  従来、コイルを備えるステータが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
  上記特許文献1には、複数のスロットを備えた円環状のステータコアと、スロットに挿通されるコイルとを備える回転電機のステータが開示されている。特許文献1では、コイルは、ステータコアの内周面に沿った円弧形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  特許文献1に開示されているように、コイルをステータコアの内周面に沿った円弧形状に形成する場合、コイルを形成するセグメントコイルのうちステータコアから突出するコイルエンド部を円弧形状に形成する必要がある。しかしながら、寸法が小さい場合にはセグメントコイルを円弧形状に形成することは製造プロセス的には容易ではないため、円弧形状に形成しやすくするため、寸法を大きく設計し、コイルエンド部を円弧形状に形成した後寸法を小さくする場合がある。この場合、セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分の加工に手間がかかるため、セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分の加工を容易にすることが望まれている。
【0006】
  この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分の加工を容易にすることが可能なステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
  上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータは、スロットを含むステータコアと、スロットに挿通されるスロット収容部と、ステータコアの端面から軸方向外側に突出して延びる複数のコイルエンド部とを含み、平角線により構成されるとともにU字形状を有する複数のセグメントコイル同士が接合されて構成されるコイルと、を備え、複数のコイルエンド部は、スロット収容部に接続される接続部分と、軸方向視で、ステータコアに対してステータコアの接線方向に延びるとともに、軸方向外側に延びる接線方向傾斜部分とを有するスロット側傾斜部を含む。
【0008】
  この発明の一の局面によるステータでは、上記のように、セグメントコイルのコイルエンド部のスロット側傾斜部が接線方向傾斜部分を有することにより、セグメントコイルのコイルエンド部を加工する際にステータコアの接線方向にセグメントコイルを折り曲げればよいため、ステータコアの内周面に沿ってセグメントコイルのコイルエンド部を円弧形状に形成する必要がない。この結果、セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分の加工を容易にすることができる。
【0009】
  上記一の局面によるステータにおいて、好ましくは、スロット側傾斜部は、軸方向視で、接線方向傾斜部分よりも径方向外側に配置され、接線方向傾斜部分の延びる方向に交差する法線方向側に傾斜する法線方向側傾斜部分をさらに有する。
【0010】
  このように構成すれば、法線方向側傾斜部分により法線方向側にセグメントコイルを傾斜させることができるため、隣接するセグメントコイル同士を周方向に並ぶように配置することができる。この結果、隣接するセグメントコイル同士が軸方向に重なって軸方向長さが大きくなることを抑制することができる。
【0011】
  上記一の局面によるステータにおいて、好ましくは、軸方向視で、スロット側傾斜部のうち隣接する他のスロット側傾斜部と重ならない露出部分の面積は、スロット側傾斜部のうち他のスロット側傾斜部と重なる重なり部分の面積よりも大きい。
【0012】
  このように構成すれば、露出部分の面積が重なり部分の面積よりも大きいため、スロット側傾斜部が外気と接する面積を大きくして、コイルに電流を流すことにより発生する熱を効率よく放熱することができる。
【0013】
  上記一の局面によるステータにおいて、好ましくは、露出部分は、軸方向視で径方向外側に向かうにつれて幅が大きくなるように構成されている。
【0014】
  このように構成すれば、径方向外側に向かうにつれて幅が大きくなることにより、径方向の内側よりも外側の方が放熱しやすくなる。この結果、ステータコアの内周側から放熱しやすい径方向の外側に向かって熱が伝達されやすくなるため、ステータコアの内周側が高温になることを抑制することができる。
【0015】
  なお、上記一の局面によるステータにおいて、以下のような構成も考えられる。
【0016】
  (付記項1)
  上記一の局面によるステータにおいて、軸方向視で、隣接するスロット側傾斜部は、一のスロット側傾斜部の内周側の面と、他のスロット側傾斜部の内周側の面とが周方向に沿って円弧形状に配置されずに径方向に重なって配置されている。
【0017】
  このように構成すれば、隣接するスロット側傾斜部を円弧形状に形成する必要がないとともに、スロット側傾斜部を径方向に並べて配置すればよいため、セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分をより容易に加工をすることができる。
【0018】
  (付記項2)
  上記スロット側傾斜部が、法線方向側傾斜部分をさらに有する構成において、コイルエンド部は、ステータコアの端面に沿って延びるとともに、軸方向視で周方向に対して径方向外側に傾斜する周方向傾斜部と、周方向傾斜部とスロット側傾斜部とを接続するとともに、径方向視で軸方向外側に湾曲するクランク部とを含む。
【0019】
  このように構成すれば、周方向傾斜部とクランク部とにより、径方向および軸方向にセグメントコイルを傾斜させることができるため、隣接するセグメントコイル同士が径方向および軸方向に重ならないように配置することができる。この結果、セグメントコイル同士が重なることに起因して、コイル全体の軸方向長さおよび径方向長さが大きくなることを抑制することができる。
【0020】
  (付記項3)
  この場合、好ましくは、軸方向視で、周方向傾斜部と法線方向側傾斜部分とクランク部とが、径方向外側の同じ方向に直線状に延びている。
【0021】
  このように構成すれば、軸方向視で、周方向傾斜部と法線方向側傾斜部分とクランク部とが同じ方向に延びていることにより、セグメントコイルを湾曲させたり、ねじったりする必要がないため、セグメントコイルのコイルエンド部に対応する部分の加工をさらに容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
            【
図1】実施形態におけるステータを示す斜視図である。
 
            
            【
図3】実施形態におけるセグメントコイルを示す斜視図である。
 
            【
図4】実施形態におけるコイルの結線構成を示す回路図である。
 
            【
図5】実施形態におけるセグメントコイルを径方向から見た図である。
 
            【
図6】実施形態におけるセグメントコイルの一部を拡大した上面図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0023】
  以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
  図1~
図6を参照して、実施形態によるステータの構成について説明する。
 
【0025】
  (ステータの全体構成)
  図1および
図2に示すステータ100は、ステータ100に対向するようにステータ100のR1側に配置されるロータ(図示しない)とともに回転電機(図示しない)の一部を構成する。回転電機は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ステータ100は、円筒形状である。ステータ100は、ロータが挿通される孔部が中央に形成されている。以下の説明では、ステータ100の径方向をR方向とし、ステータ100の周方向をC方向とし、ステータ100にロータを挿通する方向である軸方向をZ方向とする。
 
【0026】
  ステータ100は、ステータコア1と、コイル2とを備える。ステータ100は、三相交流のステータ100である。
【0027】
  ステータコア1は、Z方向に沿った中心軸線(図示しない)を中心軸とした円筒形状を有する。ステータコア1は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。
【0028】
  ステータコア1には、Z方向に延びる溝である複数のスロット11が設けられている。スロット11には、複数のセグメントコイル20からなるコイル2が挿通される。スロット11は、ステータコア1の端面に周方向に沿って配置されている。
【0029】
  コイル2は、複数のセグメントコイル20が接合されることにより構成されている。コイル2を構成する複数のセグメントコイル20は、平角線から構成されている。複数のセグメントコイル20は、一例として、銅線から構成されている。コイル2は、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。セグメントコイル20は、スロット11をZ方向に往復することにより、ステータコア1の周方向に沿って配置される(巻かれる)。
【0030】
  複数のセグメントコイル20は、U字形状のセグメントコイル20と、I字形状のセグメントコイル20とを含んでいる。
【0031】
  図3に示すように、U字形状のセグメントコイル20は、ステータコア1のスロット11に挿通される一対のスロット収容部20aと、一対のスロット収容部20aを接続するコイルエンド部20bとを含む。複数のセグメントコイル20は、隣接して配置される。ここで、本願明細書において、「隣接」とは、2つのコイルエンド部同士が接していないが、近くに位置していることを指す。
 
【0032】
  図1および
図2に示すように、ステータコア1に挿通された状態において、U字形状のセグメントコイル20は、ステータコア1のZ方向の一方側の端面からコイルエンド部20bが露出するとともに、ステータコア1のZ方向の他方側の端面からセグメントコイル20のコイルエンド部20bによって接続されていない両端部20cが露出している。一対のスロット収容部20aは、異なるスロット11に亘って両端部20cが挿通されるように構成される。また、ステータコア1のZ方向の他方側の端面から露出する複数のセグメントコイル20の端部20c同士が接続されて、1つのコイル2が形成される。
 
【0033】
  図2に示す1つのコイル2は、U字形状のセグメントコイル20にI字形状のセグメントコイル20が周方向の両端に各々接合されている。I字コイルは、接続端部を形成している。
 
【0034】
  図4に示すように、コイル2は、U相コイル2Uと、V相コイル2Vと、W相コイル2Wとを含む三相である。また、U相、V相、W相に対して各々2セットずつコイル2が配置されている。コイル2は、三相のY結線により接続されている。コイル2は、複数の中性点Nが設けられている。U相コイル2Uには、2つの中性点接続端部NtUと、2つの動力線接続端部PtUとが設けられている。V相コイル2Vには、2つの中性点接続端部NtVと、2つの動力線接続端部PtVとが設けられている。W相コイル2Wには、2つの中性点接続端部NtWと、2つの動力線接続端部PtWとが設けられている。動力線接続端部PtU、PtVおよびPtWと、中性点接続端部NtU、NtVおよびNtWとは、U字形状のセグメントコイル20の接続部が設けられるステータコア1の軸方向の一方側(Z1側)とは反対の他方側(Z2側)に配置される。
 
【0035】
  図3に示すように、コイルエンド部20bは、スロット側傾斜部21と、周方向傾斜部22と、クランク部23とを有している。また、コイルエンド部20bは周方向傾斜部22に接続される他方端側部分24を含む。
 
【0036】
  セグメントコイル20は、スロット側傾斜部21により、ステータコア1の端面に対して傾斜するとともに、ステータコア1の端面から離れる方向でかつ軸方向に交差する方向に傾斜する。また、スロット側傾斜部21により、接線方向および法線方向に傾斜する。セグメントコイル20は、クランク部23によってステータコア1の端面に対して傾斜するとともに、ステータコア1の端面から離れる方向でかつ軸方向に交差する方向に傾斜し、周方向傾斜部22によってステータコア1の端面に沿って延びる。周方向傾斜部22から他方端側部分24によりステータコア1の端面に対して傾斜するとともに、ステータコア1の端面から離れる方向でかつ軸方向に交差する方向に湾曲するとともにステータコア1の端面に対して傾斜するとともに、ステータコア1の端面に近づく方向でかつ軸方向に交差する方向に傾斜した後、軸方向に沿ってステータコア1の端面に向かって軸方向に延びる。
【0037】
  図2に示すように、接線方向とは、ステータコア1の内周面上の1点に当接する接線の延びる方向に沿った方向である。接線方向とは、ステータコア1の径方向に直交する方向と、径方向に直交しないが交差する方向とを含む。また、法線方向側とは、接線方向に直交する方向である厳密な意味の法線方向と、接線方向と直交しないが交差する方向とを含む。法線方向側は、径方向と同じ方向を含む。
 
【0038】
  図5および
図6に示すように、スロット側傾斜部21は、接続部分21aと接線方向傾斜部分21bと法線方向側傾斜部分21cとを有している。スロット側傾斜部21は、軸方向から見て、五角形形状に形成されている。なお、スロット側傾斜部は、五角形形状および三角形形状を除く多角形形状であってもよい。
 
【0039】
  接続部分21aは、スロット収容部20aに接続される。接続部分21aは、軸方向に対して接線方向に湾曲する。セグメントコイル20は、スロット収容部20aにより軸方向に沿って延びた後、接続部分21aによりステータコア1の内周面12の接線方向に傾斜する。接続部分21aは、径方向視で周方向に突出する円弧形状を有している。ステータコア1の内周面12は、ロータが挿通される孔部を形成する(取り囲む)面である。
【0040】
  接線方向傾斜部分21bは、接続部分21aと接続されている。接線方向傾斜部分21bは、軸方向視で、ステータコア1に対してステータコア1の接線方向に延びている。一例として、接線方向は、ステータコア1の内周面12の接線方向である。接線方向傾斜部分21bは、径方向視で軸方向外側に延びている(ステータコア1から離れる方向に延びている)。軸方向視で、接線方向傾斜部分21bは、径方向外側に延びている。周方向に隣接するセグメントコイル20において、一方の接線方向傾斜部分21bの下面の一部と、他方の接線方向傾斜部分21bの上面の一部とは、軸方向視において重なっている。なお、重なっている部分は、接続部分21aに接続される側の部分である。軸方向視で、スロット側傾斜部21のうち隣接する他のスロット側傾斜部21と重ならない露出部分21eとし、スロット側傾斜部21のうち隣接する他のスロット側傾斜部21と重なる部分を重なり部分21fとする。
【0041】
  軸方向視で、露出部分21eの面積A1は、重なり部分21fの面積A2よりも大きく形成されている。そのため、隣接するスロット側傾斜部21同士は、軸方向に重なる部分が少ない。なお、
図6では、露出部分21eの面積A1と重なり部分21fの面積A2とを異なるハッチングで示している。また、重なり部分21fは、破線で示している。露出部分21eは、接線方向傾斜部分21bの一部と、法線方向側傾斜部分21cとを合わせた部分である。また、重なり部分21fは、接線方向傾斜部分21bの残りの部分である。露出部分21eは、軸方向視で四角形形状および五角形形状を含むが、三角形形状を除く多角形形状である。重なり部分21fは、軸方向視で三角形形状に形成されている。
 
【0042】
  露出部分21eは、軸方向視で径方向外側に向かうにつれて幅Wが大きくなるように構成されている。詳細には、接線方向傾斜部分21bの幅Wよりも法線方向側傾斜部分21cの幅Wの方が大きい。幅Wは、径方向の長さを指す。
【0043】
  法線方向側傾斜部分21cは、軸方向視で、接線方向傾斜部分21bよりも径方向外側に配置される。法線方向側傾斜部分21cは、接線方向傾斜部分21bの延びる方向に交差する法線方向側に傾斜している。周方向において隣接するセグメントコイル20において、軸方向視で法線方向側傾斜部分21c同士は軸方向に重ならない。また、周方向において隣接するセグメントコイル20において、一方の法線方向側傾斜部分21cは、他方の法線方向側傾斜部分21cよりも径方向の外側に位置している。
【0044】
  スロット側傾斜部21は、屈曲部21dをさらに有している。屈曲部21dは、接線方向傾斜部分21bと法線方向側傾斜部分21cとの間に配置されている。屈曲部21dは、スロット側傾斜部21を径方向内側に屈曲させて、スロット側傾斜部21の延びる方向を法線方向側に変更する。周方向において隣接するセグメントコイル20において、軸方向視で屈曲部21d同士は軸方向に重ならない。また、周方向において隣接するセグメントコイル20において、一方の屈曲部21dは、他方の屈曲部21dよりも径方向の外側に位置している。屈曲部21dは、軸方向視で、直線状に形成されている。なお、
図6では、便宜的に接線方向傾斜部分21bと、屈曲部21dと、法線方向側傾斜部分21cとの境界を破線で示している。接線方向傾斜部分21bと、屈曲部21dと、法線方向側傾斜部分21cとは、一部材で一体的に形成されている。
 
【0045】
  軸方向視で、接線方向傾斜部分21bの面積は、法線方向側傾斜部分21cの面積よりも大きく形成されている。また、軸方向視で、法線方向側傾斜部分21cの面積は、屈曲部21dの面積よりも大きく形成されている。
【0046】
  軸方向視で、隣接するスロット側傾斜部21は、一のスロット側傾斜部21の内周側の面21gと、他のスロット側傾斜部21の内周側の面21gとが周方向に沿って円弧形状に配置されずに径方向に重なって配置されている。軸方向視で、周方向に沿って重なって配置される内周側の面21gは、接線方向傾斜部分21bの内周面である。軸方向視で、隣接する接線方向傾斜部分21bが交差して角部が形成されるように見えるため、軸方向視でコイル2の内周側はセグメントコイル20の数と等しい数の角部を有する多角形形状に見える。
【0047】
  周方向傾斜部22は、軸方向および周方向から見て矩形状である。周方向傾斜部22は、軸方向から見て、法線方向側に延びているとともに、径方向外側に延びている。周方向傾斜部22は、周方向において隣接するセグメントコイル20と接触しない程度に傾斜している。周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面の延びる方向に沿って延びるように構成されている。言い換えると、周方向傾斜部22は、径方向に沿って延びている。周方向傾斜部22は、径方向から見てほぼ水平に形成されている。好ましくは、周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面に対して平行に延びるように構成される。
【0048】
  隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面22a同士が互いに対向していない。隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面からの軸方向長さが略同じになるように形成されている。また、一方および他方の周方向傾斜部22は、ともに周方向に沿って延びているが、互いに平行である必要はなく、一方が他方に対して傾斜していてもよい。また、一方および他方の周方向傾斜部22の周方向側の側面22aは、全体が対向している必要はなく、一部分が対向していればよい。複数の周方向傾斜部22は、ねじることなく周方向側の側面22a同士が互いに対向して隣接するように配置されている。
【0049】
  クランク部23は、スロット側傾斜部21と周方向傾斜部22との間を接続するように構成されている。クランク部23は、軸方向外側に湾曲している。クランク部23は、軸方向外側に湾曲する第1湾曲部分23aに加えて、軸方向内側に湾曲する第2湾曲部分23bを含み、径方向から見てS字形状である。隣接するコイルエンド部20bのクランク部23同士は、軸方向および周方向に重なっていない。隣接するコイルエンド部20bは、周方向においてクランク部23と、周方向傾斜部22とが対向するように配置されている。
【0050】
  図2に示すように、他方端側部分24は、周方向傾斜部22に接続している。他方端側部分24は、径方向から見て、スロット側傾斜部21と反対の方向に傾斜している。詳細には、ステータコア1の端面に近づくように軸方向に対して傾斜している。また、セグメントコイル20の1対のスロット収容部20aのうちスロット側傾斜部21が接続するスロット収容部20aとは異なるスロット収容部20aに接続されている。
 
【0051】
  図6に示すように、軸方向視で、周方向傾斜部22と法線方向側傾斜部分21cとクランク部23とが、径方向外側の同じ方向に直線状に延びている。そのため、軸方向視において周方向傾斜部22と法線方向側傾斜部分21cとクランク部23との延びる方向は、径方向外側で、かつ法線方向である。そのため、セグメントコイル20は、軸方向視で接線方向傾斜部分21bにより接線方向に傾斜するとともに、周方向傾斜部22と法線方向側傾斜部分21cとクランク部23とにより法線方向側に傾斜する。
 
【0052】
  隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、隣接するセグメントコイル20は、ステータコア1側から離れるにつれて、周方向の間隔Gが大きくなるように構成されている。詳細には、互いに対向する隣接するコイルエンド部20bの一方のスロット側傾斜部21と他方の周方向傾斜部22との間隔Gが最も小さく、互いに対向する隣接するコイルエンド部20bの一方の他方端側部分24と他方の他方端側部分24との間隔Gが最も大きくなるように構成されている。
【0053】
  ステータ100は、電磁鋼板を積層してステータコア1を形成した後に、複数のセグメントコイル20を挿通することにより形成される。複数のセグメントコイル20をスロット11に挿通することにより、コイルエンド部20bが形成される。この時、セグメントコイル20は、ねじられることなくスロット11に挿通される。挿通されたセグメントコイル20同士を接合することにより、コイル2が構成される。セグメントコイル20に対して、接続部分21aとクランク部23とを形成するための湾曲加工と、接線方向傾斜部分21bを形成するために接線方向への折り曲げ加工と、法線方向側傾斜部分21cを形成するための法線方向側への折り曲げ加工とを行うことにより、コイル2が形成される。
【0054】
  (本実施形態の効果)
  本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
  本実施形態では、上記のように、複数のコイルエンド部20bは、スロット収容部20aに接続される接続部分21aと、軸方向視で、ステータコア1に対してステータコア1の内周面の接線方向に延びるとともに、軸方向外側に延びる接線方向傾斜部分21bとを有するスロット側傾斜部21を含む。これにより、セグメントコイル20のコイルエンド部20bのスロット側傾斜部21が接線方向傾斜部分21bを有することにより、セグメントコイル20を加工する際にステータコア1の接線方向にセグメントコイル20を折り曲げればよいため、ステータコア1の内周面に沿ってセグメントコイル20のコイルエンド部20bを円弧形状に形成する必要がない。この結果、セグメントコイル20のコイルエンド部20bに対応する部分の加工を容易にすることができる。
【0056】
  本実施形態では、上記のように、スロット側傾斜部21は、軸方向視で、接線方向傾斜部分21bよりも径方向外側に配置され、接線方向傾斜部分21bの延びる方向に交差する法線方向側に傾斜する法線方向側傾斜部分21cをさらに有する。これにより、法線方向側傾斜部分21cにより法線方向側にセグメントコイル20を傾斜させることができるため、隣接するセグメントコイル20同士を周方向に並ぶように配置することができる。この結果、隣接するセグメントコイル20同士が軸方向に重なって軸方向長さが大きくなることを抑制することができる。
【0057】
  本実施形態では、上記のように、軸方向視で、スロット側傾斜部21のうち隣接する他のスロット側傾斜部21と重ならない露出部分21eの面積A1は、スロット側傾斜部21のうち他のスロット側傾斜部21と重なる重なり部分21fの面積A2よりも大きい。これにより、露出部分21eの面積A1が重なり部分21fの面積A2よりも大きいため、スロット側傾斜部21が外気と接する面積を大きくして、コイル2に電流を流すことにより発生する熱を効率よく放熱することができる。
【0058】
  本実施形態では、上記のように、露出部分21eは、軸方向視で径方向外側に向かうにつれて幅Wが大きくなるように構成されている。これにより、径方向外側に向かうにつれて幅Wが大きくなることにより、径方向の内側よりも外側の方が放熱しやすくなる。この結果、ステータコア1の内周側から放熱しやすい径方向の外側に向かって熱が伝達されやすくなるため、ステータコア1の内周側が高温になることを抑制することができる。
【0059】
  本実施形態では、上記のように、軸方向視で、隣接するスロット側傾斜部21は、一のスロット側傾斜部21の内周側の面21gと、他のスロット側傾斜部21の内周側の面21gとが周方向に沿って円弧形状に配置されずに径方向に重なって配置されている。これにより、隣接するスロット側傾斜部21を円弧形状に形成して配置する必要がないとともに、スロット側傾斜部21を径方向に並べて配置すればよいため、セグメントコイル20のコイルエンド部20bに対応する部分をより容易に加工することができる。
【0060】
  本実施形態では、上記のように、コイルエンド部20bは、ステータコア1の端面に沿って延びるとともに、軸方向視で周方向に対して径方向外側に傾斜する周方向傾斜部22と、周方向傾斜部22とスロット側傾斜部21とを接続するとともに、径方向視で軸方向外側に湾曲するクランク部23とを含む。これにより、周方向傾斜部22とクランク部23とにより、径方向および軸方向にセグメントコイル20を傾斜させることができるため、隣接するセグメントコイル20同士が径方向および軸方向に重ならないように配置することができる。この結果、セグメントコイル20同士が重なることに起因して、コイル2全体の軸方向長さおよび径方向長さが大きくなることを抑制することができる。
【0061】
  本実施形態では、上記のように、軸方向視で、周方向傾斜部22と法線方向側傾斜部分21cとクランク部23とが、径方向外側の同じ方向に直線状に延びている。これにより、軸方向視で、周方向傾斜部22と法線方向側傾斜部分21cとクランク部23とが同じ方向に延びていることにより、セグメントコイル20を湾曲させたり、ねじったりする必要がないため、セグメントコイル20のコイルエンド部20bに対応する部分の加工をさらに容易にすることができる。
【0062】
  [変形例]
  今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0063】
  たとえば、上記実施形態では、スロット側傾斜部は、法線方向側傾斜部分を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スロット側傾斜部は、法線方向側傾斜部分を含まなくともよい。
【0064】
  また、上記実施形態では、接続部分が湾曲している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続部分が直線状に傾斜していてもよい。この場合、接続部分が接線方向に傾斜していてもよい。
【0065】
  また、上記実施形態では、軸方向視で、露出部分の面積は、重なり部分の面積よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、露出部分の面積は、重なり部分の面積以下であってもよい。
【0066】
  また、上記実施形態では、露出部分は、軸方向視で径方向外側に向かうにつれて幅が大きくなるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、露出部分は、軸方向視で径方向外側に向かうにつれて幅が変わらなくてもよく、小さくなってもよい。
【0067】
  また、上記実施形態では、屈曲部は、軸方向視で、直線状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、屈曲部は、軸方向視で、湾曲または折れ曲がるように形成されていてもよい。
【0068】
  また、上記実施形態では、軸方向視で、接線方向傾斜部分の面積は、法線方向側傾斜部分の面積よりも大きく形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向視で、接線方向傾斜部分の面積は、法線方向側傾斜部分の面積以下に形成されていてもよい。
【0069】
  また、上記実施形態では、軸方向視で、法線方向側傾斜部分の面積は、屈曲部の面積よりも大きく形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向視で、法線方向側傾斜部分の面積は、屈曲部の面積以下に形成されていてもよい。
【0070】
  また、上記実施形態では、ステータコアが三相交流である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、単相交流のステータであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
  1:ステータコア、2:コイル、11:スロット、20:セグメントコイル、20a:スロット収容部、20b:コイルエンド部、21:スロット側傾斜部、21a:接続部分、21b:接線方向傾斜部分、21c:法線方向側傾斜部分、21e:露出部分、21f:重なり部分、100:ステータ