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特開2025-153906端末装置、基地局装置、通信システム、制御方法、およびプログラム
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  • 特開-端末装置、基地局装置、通信システム、制御方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153906
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】端末装置、基地局装置、通信システム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/36 20090101AFI20251002BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20251002BHJP
   H04W 36/30 20090101ALI20251002BHJP
   H04W 76/19 20180101ALI20251002BHJP
【FI】
H04W36/36
H04W16/28
H04W36/30
H04W76/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056619
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪 禎延
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】李 ヤンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】高久 淑考
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD11
5K067DD36
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ39
5K067KK02
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】ビーム障害を検出した端末装置が非サービングセルにハンドオーバするまでの時間を短縮する技術を提供すること
【解決手段】端末装置は、接続中の基地局装置から、他の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる他の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、事前設定を受信し、基地局装置との通信に使用しているビームにビーム障害が発生したことを検出し、基地局装置が形成するビームとリストに示される他の基地局装置が形成するビームとを含む複数のビームの無線品質を測定し、測定結果に基づいて、ビーム障害が発生した場合に使用すべきビームを決定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置であって、
接続中の基地局装置から、他の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記他の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、前記事前設定を受信する受信手段と、
前記基地局装置との通信に使用しているビームにビーム障害が発生したことを検出する検出手段と、
前記基地局装置が形成するビームと前記リストに示される前記他の基地局装置が形成するビームとを含む複数のビームの無線品質を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、ビーム障害が発生した場合に使用すべきビームを決定する制御手段と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記受信手段は、RRC Reconfigurationメッセージを介して前記事前設定を受信することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記事前設定は、前記他の基地局装置へのハンドオーバに使用する設定情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記検出手段で所定の期間内に所定の回数ビーム障害が発生したことを検出したことに応じて、無線リンク障害が発生したことを検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段で前記無線リンク障害が発生したことを検出した場合に、再接続処理を実行する実行手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
基地局装置であって、
前記基地局装置へ接続している端末装置へ、他の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる他の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、事前設定を送信する送信手段を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項6】
前記他の基地局装置から、前記他の基地局装置が形成可能なビームの識別情報を取得する取得手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の基地局装置。
【請求項7】
第1の基地局装置と、第2の基地局装置と、端末装置とを備える無線通信システムであって、
前記端末装置は、
接続中の前記第1の基地局装置から、前記第2の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記第2の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、前記事前設定を受信する受信手段と、
前記第1の基地局装置との通信に使用しているビームにビーム障害が発生したことを検出する検出手段と、
前記第1の基地局装置が形成するビームと前記リストに示される前記第2の基地局装置が形成するビームとを含む複数のビームの無線品質を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、ビーム障害が発生した場合に使用すべきビームを決定する制御手段と、
を備え、
前記第1の基地局装置は、
前記端末装置へ、前記第2の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記第2の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、事前設定を送信する送信手段を備える、無線通信システム。
【請求項8】
端末装置の制御方法であって、
接続中の基地局装置から、他の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記他の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、前記事前設定を受信することと、
前記基地局装置との通信に使用しているビームにビーム障害が発生したことを検出することと、
前記基地局装置が形成するビームと前記リストに示される前記他の基地局装置が形成するビームとを含む複数のビームの無線品質を測定することと、
測定結果に基づいて、ビーム障害が発生した場合に使用すべきビームを決定することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
基地局装置の制御方法であって、
前記基地局装置へ接続している端末装置へ、他の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる他の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、事前設定を送信することを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
第1の基地局装置と、第2の基地局装置と、端末装置とを備える無線通信システムが実行する制御方法であって、
前記端末装置において、
接続中の前記第1の基地局装置から、前記第2の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記第2の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、前記事前設定を受信することと、
前記第1の基地局装置との通信に使用しているビームにビーム障害が発生したことを検出することと、
前記第1の基地局装置が形成するビームと前記リストに示される前記第2の基地局装置が形成するビームとを含む複数のビームの無線品質を測定することと、
測定結果に基づいて、ビーム障害が発生した場合に使用すべきビームを決定することと、
を含み、
前記第1の基地局装置において、
前記端末装置へ、前記第2の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記第2の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、事前設定を送信すること
を含む、制御方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1乃至4のいずれか1項に記載の端末装置として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータを請求項5または6に記載の基地局装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、基地局装置、通信システム、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムでは、端末装置の移動に伴い、その端末装置の接続先のセル(基地局装置)を切り替えるハンドオーバが行われる。従来、端末装置は、基地局装置からのハンドオーバの指示を受信した後に、接続の切り替え先のセルにおける同期確立や設定処理を実行して接続を確立する処理が行われる。この接続先の切り替えのための処理には一定の時間がかかり、この処理が行われている期間には端末装置がユーザデータの通信を行うことができない。
【0003】
これに対して、非特許文献1に記載の手法では、ハンドオーバ元の基地局装置が、端末装置に対して、ハンドオーバが実際に行われる前に、ハンドオーバ先の他の基地局装置との接続のための無線リソース制御(RRC)レイヤにおいて通信パラメータを提供しておく。そして、ハンドオーバ元の基地局装置は、ハンドオーバが行われるべきタイミングにおいて、そのセルの切り替えを指示するレイヤ1又はレイヤ2のコマンドを端末装置に送信する。端末装置は、そのコマンドを受信したことに応じて、ハンドオーバ先の基地局装置との間でランダムアクセス手順を実行することにより、その後のRRCレイヤでの設定処理を行うことなく、ハンドオーバを完了することができる。このようなセル切り替えの技術はLTM(L1/L2 Triggered Mobility)と呼ばれ、ハンドオーバに関する通信効率の劣化を抑制するものとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP(登録商標) 寄書、R2-2209255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、端末装置がビーム障害を検出した(BFD : Beam Failure Detection)後、通信中のセル(Serving Cell)において品質の良いビームへ遷移する。一方、品質の良いビームがない場合、無線リンク障害であると判断し、通信中のセル以外のセルでビーム探索が行われるため、通信中のセル以外のセルにおけるビーム探索を行い、ハンドオーバするまでに時間がかかるという課題があった。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑み、ビーム障害を検出した端末装置が非サービングセルにハンドオーバするまでの時間を短縮する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る端末装置は、
接続中の基地局装置から、他の基地局装置へのハンドオーバのための事前設定であって、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となる前記他の基地局装置が形成しているビームのリストを含む、前記事前設定を受信する受信手段と、
前記基地局装置との通信に使用しているビームにビーム障害が発生したことを検出する検出手段と、
前記基地局装置が形成するビームと前記リストに示される前記他の基地局装置が形成するビームとを含む複数のビームの無線品質を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、ビーム障害が発生した場合に使用すべきビームを決定する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビーム障害を検出した端末装置が非サービングセルにハンドオーバするまでの時間を短縮する技術を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る無線通信システムを示す図。
図2】端末装置、基地局装置のハードウェア構成を示す図。
図3】(A)は端末装置の機能構成図、(B)は基地局装置の機能構成図。
図4】本実施形態に係るビームサーチ処理例を示すシーケンス図。
図5】本実施形態に係る端末装置が実行する処理例を示すフローチャート。
図6】本実施形態に係る基地局装置が実行する処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<システム構成>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例を図1に示す。無線通信システム1は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)セルラ通信規格に準拠した無線通信システムである。ただし、無線通信システムはこれに限られず、例えば5G以降の後継のセルラ通信システムであってもよいし、セルラ以外の無線通信システムであってもよい。無線通信システム1は、端末装置10、基地局装置20、30を含んで構成される。なお、図1では、1つの端末装置と2つの基地局装置を示しているが、これらの装置の数は限定されるものではない。
【0012】
端末装置10は、5G規格に準拠した通信を実行可能な無線通信装置である。基地局装置20は、端末装置10と接続している基地局装置である。基地局装置20は、複数のビームを形成し、その複数のビームの一部を用いて端末装置10に対して通信サービスを提供することができる。基地局装置30は、基地局装置20からのハンドオーバ先の候補の基地局装置である。なお、基地局装置30も、基地局装置20と同様に、複数のビームを形成し、その一部を用いて端末装置10と接続し、端末装置10に通信サービスを提供することができるものとする。
【0013】
端末装置10は、基地局装置20が形成する複数のビームのうちのいずれかを使用して基地局装置20に接続し、アップリンク信号またはダウンリンク信号を送受信する。ここで、基地局装置20は、複数のビームのそれぞれにおいて参照信号(例えば同期信号(SS)/物理ブロードキャストチャネル(PBCH)ブロック(SSB)や、チャネル状態情報-参照信号(CSI-RS))を送信する。端末装置10は、基地局装置20から送信された参照信号の無線品質を測定し、無線品質に基づいて使用するビームを判定して基地局装置20に接続する。ここで、無線品質は、例えば、参照信号受信電力(RSRP)、参照信号受信品質(RSRQ)、受信信号強度、信号対雑音比(SNR)、信号対雑音及び干渉比(SINR)、干渉電力などを含む。
【0014】
その後、ビームを介した通信を行いながら、無線品質を測定し、無線品質が所定の品質未満となった場合に、ビーム障害が発生したことを検知する。
【0015】
ここで、従来のビーム障害発生時の動作について説明する。ビーム障害を検出した端末装置10は、無線品質を測定したビームの測定結果に基づいて、サービングセルが形成する他のビームの測定を行い、接続先のビームを決定する。そして、所定の期間内に所定の回数ビーム障害が発生したと判定した場合に、無線リンク障害(Radio Link Failure)と判定し、非サービングセルのビームを測定し、再接続処理(RRC Re-establish)を実行する。
【0016】
これに対して、本実施形態に係る端末装置10は、ビーム障害が発生した場合に、サービングセルのビームと、非サービングセルのビームとの測定結果に基づいて接続に使用するビームを決定する。なお、ビーム障害が発生した後にサービングセルのビームおよび非サービングセルのビームを測定してもよいし、ビーム障害前に測定した測定結果に基づいてビーム障害後の接続ビームを決定してもよい。そして、端末装置10が非サービングセルのビームを使用すると判定すると、非サービングセルへ後述するLTM(L1/L2 Triggered Mobility)によるハンドオーバを実行する。これによって、ビーム障害が発生した場合に迅速に非サービングセルにハンドオーバすることができる。
【0017】
<ハードウェア構成>
図2に本実施形態に係る端末装置10、基地局装置20および30のハードウェア構成を説明する。
【0018】
端末装置10、基地局装置20および30は、一例において、プロセッサ101、ROM102、RAM103、記憶装置104、及び通信回路105を含んで構成される。プロセッサ101は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM102や記憶装置104に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM102は、端末装置10、基地局装置20および30が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM103は、プロセッサ101がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置104は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路105は、例えば、5Gやその後継規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、図2では、1つの通信回路105が図示されているが、端末装置10、基地局装置20および30は、複数の通信回路を有しうる。例えば、端末装置10、基地局装置20および30は、5G用、およびその後継規格用のそれぞれのための無線通信回路と、それらの回路に共通のアンテナを有しうる。なお、端末装置10、基地局装置20および30は、各規格に適したアンテナを別個に有してもよい。また、基地局装置20および30は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、端末装置10は、さらに、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)やBluetooth(登録商標)などのセルラ通信規格以外の無線通信規格に準拠した通信回路などを有してもよい。なお、端末装置10、基地局装置20および30は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路105を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路105を有してもよい。
【0019】
<機能構成>
図3(A)は、端末装置10の機能構成例を示す。端末装置10は、事前設定取得部201、ビーム測定部202、ビーム障害検出部203、LTM制御部204を備える。なお、図3(A)では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、端末装置10が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置10は、5Gやその後続規格などに準拠した端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図3(A)の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図3(A)の各機能は、例えば、プロセッサ101がROM102や記憶装置104に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路105の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0020】
事前設定取得部201は、基地局装置20からLTMによるハンドオーバを実行するための事前設定を取得する。ここで、LTMとは、基地局装置20へのHANDOVER REQUESTメッセージの送信など接続制御処理を行わずに、基地局装置30へハンドオーバするハンドオーバ手順である。基地局装置20は、端末装置10を基地局装置30へハンドオーバさせると決定した後に、ハンドオーバの候補セルとなる基地局装置30との通信に使用する事前設定を端末装置10へ送信する。この場合、端末装置10は、事前設定を使用して基地局装置30との間の接続設定をハンドオーバ前に実行しておく。これによって、ハンドオーバイベントの発生後、端末装置10が基地局装置30との間でユーザデータの通信を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0021】
事前設定は、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補となるビームのリストを含むビーム障害検出用設定と、ビーム障害発生時にLTMに係るハンドオーバを実行するためのビーム障害回復用設定を含む。ビーム障害検出用設定は、ビーム障害発生時に使用すべきビームの候補(リスト)を含む。端末装置10は、ビームのリストの測定を行い、ビーム障害発生時に使用するビームを判定する。ビーム障害回復用設定は、LTMによるイベントIDとイベント情報を含み、イベント情報は、LTMによるセル切替を実施するための条件を特定可能な情報を含む。条件は例えば、リスト内のビームの測定結果と、接続中のビームの測定結果とを比較して端末装置10がトリガするセル切替を実施するための判定を行う設定を含む。一例では、ビーム障害検出用設定はradioLinkMonitoringConfigで通知され、ビーム障害回復用設定はbeamFailureReconveryConfigで通知される。
【0022】
ビーム測定部202は、所定のタイミングで接続中のビームを含む、1つ以上のビームの無線品質を測定する。例えば、ビーム測定部202は、接続中のビームの無線品質が所定の閾値未満となった場合に、接続中のビームとは異なる1つ以上のビームの測定を行ってもよいし、所定の周期で複数のビームを測定してもよい。
【0023】
ビーム障害検出部203は、接続中のビームの無線品質に応じて、ビーム障害が発生したと検出する。本実施形態では、接続中のビームの無線品質が所定の閾値未満となった場合にビーム障害が発生したと判断するものとする。一例では、ビーム測定部202が所定の周期で接続中のビームとは異なるビームの測定を行う場合には、接続中のビームより無線品質の良いビームを検出した場合や、接続中のビームより所定の値以上無線品質の良いビームを検出した場合にビーム障害が発生したと判断してもよい。
【0024】
図3(B)は、基地局装置20、30の機能構成例を示す。基地局装置20、30は、例えば、測定報告受信部251、候補セル決定部252、事前設定提供部253を有する。なお、図3(B)では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置20、30が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、基地局装置20、30は、5Gやその後続規格などに準拠した基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図3(B)の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図3(B)の各機能は、例えば、プロセッサ101がROM102や記憶装置104に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路105の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0025】
測定報告受信部251は、端末装置10が測定したビームの測定報告を受信し、端末装置10に事前設定を提供するか否かを判定する。候補セル決定部252は、受信した測定報告に基づいて、端末装置10がLTMによるハンドオーバの実行を許可する非サービングセル(候補セル)を決定する。例えば、受信した測定報告から、無線品質が所定の閾値以上であるビームを形成する非サービングセルを候補セルであると判定する。
【0026】
事前設定提供部253は候補セルから、候補セルが形成可能なビームの識別情報や、候補セルへの接続に使用するパラメータを取得し、事前設定として端末装置10に提供する。
【0027】
<処理例>
図4を参照して本実施形態に係る無線通信システム1で実行する処理例を説明する。
【0028】
S101において、端末装置10は基地局装置20に接続し、RRC_Connected状態に遷移する。端末装置10は、端末装置10の周囲の基地局装置が参照信号の送信に使用したビームの識別情報および周囲の基地局装置の識別情報の少なくともいずれかを、周囲の基地局装置から送信された参照信号の無線品質と対応付けて基地局装置20に報告する(S102)。本実施形態では、S102で端末装置10は基地局装置30から送信された参照信号の測定結果を基地局装置20に送信するものとする。
【0029】
基地局装置20は、報告された無線品質に基づいて、LTMのターゲットとなる候補セルを決定する(S103)。基地局装置20は、端末装置10から報告された端末装置10の周囲の基地局装置から送信された参照信号の測定結果に基づいて、ビーム障害検出用設定およびビーム障害回復用設定に含める他の基地局装置の情報を選択することができる。本実施形態では、基地局装置20は測定結果の報告に含まれる基地局装置30を候補セルの1つとして決定するものとする。続いて、基地局装置20は、LTM候補セルの事前設定を準備する(S104)。事前設定は、ビーム障害を検出した際に使用するビーム障害検出用設定と、ビーム障害から回復する際に使用するビーム障害回復用設定とを含む。ビーム障害検出用設定は、ビーム障害を検出した際に、ビーム選択のために測定すべきビームリストを含む。ビームリストは、ビーム識別情報と、参照信号が送信されるリソース情報とが関連付けられる。一例では、ビームリストは、セル識別情報が更に関連付けられてもよい。ビーム障害回復用設定は、セル切替の際に送信するランダムアクセス(RA)プリアンブルのリソースを特定可能な情報や、後述する同期確立処理で使用する設定情報を含みうる。
【0030】
基地局装置20は、RRC_ReconfigurationメッセージにS104で準備した事前設定を含めて端末装置10に送信する(S105)。RRC_Reconfigurationメッセージを受信した端末装置10は事前設定を記憶してRRC_Reconfiguration_Completeメッセージを基地局装置20に送信する(S106)。
【0031】
S106に続いて、一例では端末装置10はハンドオーバ先の基地局装置30と、上りリンク及び下りリンクの同期確立処理を実行するなどの事前処理を行ってもよい。そして、基地局装置20とのデータ通信を実行する。
【0032】
その後、端末装置10は基地局装置20から所定のタイミングで送信された参照信号(SSBやCSI-RS)の無線品質を測定し、所定のイベントが発生したことを検出する(S107)。所定のイベントとは、例えば基地局装置20との接続を確立した後に接続に使用しているビームの無線品質が所定の閾値未満となったことを含む。別の例では、所定のイベントとは、例えば候補セルである基地局装置30が形成するビームのいずれかのビームの無線品質が端末装置10が使用しているビームの無線品質を上回ったことを含む。
【0033】
所定のイベントを検出した端末装置10は、ビーム障害が発生したと判断し、ビーム障害回復処理を実行する。ビーム障害回復処理は、基地局装置20が形成するビームと、基地局装置30が形成するビームを含む、少なくとも1つのビームを測定すること(S108)を含む。S108で測定されるビームの測定は、S105で受信した事前設定に基づいて決定されるものとする。しかしながら一例では、端末装置10は、あらかじめ設定されたリソースにおいてビームの測定を行うよう設定されてもよい。図4に示すように、ビーム測定は、端末装置10が接続に使用しているビームを含む、基地局装置20が形成するビームの測定を含みうる。本実施形態では、端末装置10の測定の結果、基地局装置30が形成するビームの無線品質が最も良いと判断するものとする。
【0034】
次に、端末装置10はセル切替用のターゲットセルを決定する(S109)。前述したように、端末装置10は、基地局装置30が形成するビームがベストビームであると判断するため、基地局装置30へのセル切替を行うものとする。しかしながら、基地局装置20が形成するビームがベストビームであると判断した場合には、セル切替ではなくビーム切り替えが行われる。ここで、セル切替処理とは、LTMで定義された、ハンドオーバの一形態であり、ハンドオーバリクエストやRRCメッセージを基地局装置20へ送信することなく、基地局装置30へのランダムアクセス手順を開始する処理である。言い換えると、セル切替処理では、基地局装置20との接続を維持した状態でランダムアクセス手順が開始される(S110、S111)。基地局装置30との接続に成功した端末装置10は、基地局装置30へRRC Reconfiguration Completeメッセージを送信し、セル切替を完了する(S112)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る端末装置10は、所定のイベントの発生検出によってビーム測定を行う際に、接続中の基地局装置20とは異なる基地局装置30が形成するビームの測定も行い、セル切替を実行することができる。これによって、ビーム障害発生時に非サービングセルへの高速な切り替えが可能となる。このため、ユーザが体感する通信の途切れや通信速度の低下を最小限に抑えることができる。
【0036】
また、ビーム障害回復処理を実行する際に、非サービングセルを含む隣接セルでビーム障害回復処理を実行することができるため、ネットワークのカバレッジエリアが強化される。
【0037】
また、サービングセルが障害で一時的に動作不能となった場合でも、サービングセルへ接続していた端末装置を迅速に非サービングセルに切り替えさせることができるため、通信システム全体の耐障害性を向上することができる。
【0038】
また、従来はサービングセルでビーム障害を所定の回数、回復した後にハンドオーバを行う必要があった。しかしながら、ビーム障害の時点でハンドオーバを実現することで、無線品質が低い期間の長さを最小限に抑えることができる。
【0039】
なお、図4の例では、イベント検出後のビーム測定結果に基づいて接続に使用するビームを判定していた。しかしながら、イベント検出前のビーム測定結果に基づいて接続に使用するビームを判定してもよい。この場合、図4のS107、S108は順番が入れ替わってもよい。これによって、イベント検出後に迅速にハンドオーバを実行することができ、ビーム障害期間の長さを小さくすることができる。
【0040】
<端末装置が実行する処理例>
図5に、本実施形態に係る端末装置が実行する処理例を示す。図5に示す処理は、端末装置10のプロセッサ101がROM102や記憶装置104に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路105の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0041】
S201で端末装置10は基地局装置20に接続し、基地局装置20に測定報告を送信する(S202)。
【0042】
続いて、RRC Reconfigurationメッセージを受信し(S203)、ビーム障害の回復に使用する事前設定を受信し、RRC Reconfiguration Completeメッセージを送信する(S204)。
【0043】
続いて、ビーム障害が発生したか否かを判定し(S205)、ビーム障害が発生した場合はサービングセルおよび非サービングセルでビーム測定を行う(S206)。S206では、サービングセルが形成するビーム、および事前設定で指定された候補セルが形成可能なビームに加え、事前設定で指定されていない所定のビームを測定してもよい。例えば、通信システム1であらかじめ指定されているリソースで送信されるビームや、端末装置10にあらかじめ設定されたリソースで送信されるビームや、サービングセルがビーコンなどで複数の端末装置に通知した、測定すべきビームを測定してもよい。
【0044】
ここで、ベストビームは非サービングセルが形成するビームであると判定した場合(S207でYes)はセル切替を行い(S208)、サービングセルが形成するビームがベストビームである場合(S207でNo)はビーム切り替えを行う(S209)。なお、ビーム切り替えの後には、再度ビーム障害が発生するまでデータ通信を行ってもよい。
【0045】
なお、S206で端末装置10がサービングセルが形成するビームおよび事前設定で指定された候補セルが形成可能なビームとは異なるビームがベストビームであると判定した場合は、LTMによるハンドオーバではなく、再接続処理(RRC Re-establish)を実行する。
【0046】
<基地局装置が実行する処理例>
図6に、本実施形態に係る基地局装置が実行する処理例を示す。図6に示す処理は、基地局装置20のプロセッサ101がROM102や記憶装置104に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路105の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0047】
S301で端末装置と接続すると、端末装置10から測定報告を受信する(S302)。続いて、受信した測定報告に基づいて、LTMのセル切替の候補セルを決定する(S303)。続いて、候補セルからLTMのハンドオーバを実行するためのビーム障害検出用設定とビーム障害回復用設定とを取得する(S304、S305)。ビーム障害検出用設定は、ビーム障害を検出し、接続中の基地局装置20とは異なる他の基地局装置が形成するビームを測定する際に使用する設定である。本実施形態では、ビーム障害検出用設定は、非サービングセルである基地局装置30が形成するビームの識別情報を含むものとする。ビーム障害回復用設定は、非サービングセルである基地局装置30にLTMに係るハンドオーバを実行する際に使用するパラメータを含む。そして、事前設定としてビーム障害検出用設定とビーム障害回復用設定とを端末装置10に送信する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る端末装置は、ビーム障害発生時に使用するビームのリストであって、非サービングセルが形成するビームを含む事前設定を受信する。これによって、ビーム障害発生時に、非サービングセルが形成するビームを使用することができる。このため、サービングセルのビームの無線品質が低下した場合に、迅速にハンドオーバすることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る基地局装置は、ビームの測定報告を端末装置から受信し、端末装置からLTMによるハンドオーバの候補セルを判断し、候補セルが形成するビームをビーム障害発生時に使用するビームのリストとして送信する。これによって、ビーム障害発生時に、非サービングセルが形成するビームを使用することができる。
【0050】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:無線通信システム、10:端末装置、20、30:基地局装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6