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特開2025-153907RLC-AMにおける不要な送信を防ぐための端末装置、基地局装置、及び制御方法
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  • 特開-RLC-AMにおける不要な送信を防ぐための端末装置、基地局装置、及び制御方法 図1
  • 特開-RLC-AMにおける不要な送信を防ぐための端末装置、基地局装置、及び制御方法 図2
  • 特開-RLC-AMにおける不要な送信を防ぐための端末装置、基地局装置、及び制御方法 図3
  • 特開-RLC-AMにおける不要な送信を防ぐための端末装置、基地局装置、及び制御方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153907
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】RLC-AMにおける不要な送信を防ぐための端末装置、基地局装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/02 20090101AFI20251002BHJP
   H04W 80/02 20090101ALI20251002BHJP
【FI】
H04W28/02
H04W80/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056620
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】李 ヤンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】高久 淑考
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067AA43
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】RLC-AMにおける許容遅延時間を超過したデータの送信を防ぐこと。
【解決手段】1つ以上のPDCP PDUを含んだRLC PDUを生成して、RLC-AMで通信の相手装置へ送信する通信装置は、PDCPレイヤにおいて、送信されたPDCP PDUが相手装置において受信成功するまでの遅延の許容値である許容遅延時間を管理し、許容遅延時間を超えたPDCP PDUを破棄し、RLCレイヤにおいて、破棄されたPDCP PDUを特定する情報を取得し、破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUのシーケンス番号を特定し、破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄し、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号を相手装置へ通知する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠した通信装置であって、
ユーザデータを含んだPacket Data Convergence Protocol(PDCP) Protocol Data Unit(PDU)の生成を含んだPDCPレイヤの処理を行うPDCP処理手段と、
前記PDCP処理手段からPDCP PDUを取得し、1つ以上のPDCP PDUを含んだRadio Link Control(RLC) PDUを生成して、RLC-Acknowledge Mode(RLC-AM)で通信の相手装置へ送信するRLC処理手段と、
を有し、
前記PDCP処理手段は、送信されたPDCP PDUが前記相手装置において受信成功するまでの遅延の許容値である許容遅延時間を管理し、当該許容遅延時間を超えたPDCP PDUを破棄し、
前記RLC処理手段は、
破棄されたPDCP PDUを特定する情報を前記PDCP処理手段から取得し、
前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUのシーケンス番号を特定し、
前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄し、
破棄されるRLC PDUのシーケンス番号を前記相手装置へ通知する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記RLC処理手段は、前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄するたびに、当該破棄されるRLC PDUのシーケンス番号を前記相手装置へ通知する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記RLC処理手段は、前記破棄されるRLC PDUのシーケンス番号を前記相手装置へ通知した場合、当該通知の後の所定期間の間、さらなる通知を行わないようにするタイマを起動する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記RLC処理手段は、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号を所定の周期で周期的に前記相手装置へ通知する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記所定の周期は、前記相手装置から通知される、ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記RLC処理手段は、破棄される第1のRLC PDUのシーケンス番号の情報を、破棄されない第2のRLC PDUであるAcknowledge Mode Data(AMD) PDUに含めて前記相手装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記RLC処理手段は、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の情報を、STATUS PDUに含めて、前記相手装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記RLC処理手段は、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号のリストを、前記相手装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記RLC処理手段は、破棄される1つ以上のRLC PDUの情報として、当該1つ以上のRLC PDUのシーケンス番号の最小値と、破棄されるRLC PDUの数を示す情報を、前記相手装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記RLC処理手段は、前記相手装置へ送信されていない第1のRLC PDUを破棄する場合、当該第1のRLC PDUの後に送信される第2のRLC PDUのシーケンス番号を繰り上げ、前記第1のRLC PDUに付されていたシーケンス番号を前記相手装置へ通知しない、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記RLC処理手段は、前記相手装置へ通知した前記シーケンス番号のRLC PDUの再送を要求する信号を前記相手装置から受信した場合、破棄されたRLC PDUの当該シーケンス番号を前記相手装置へ再送する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記RLC処理手段は、前記破棄されたPDCP PDUと、破棄されないPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄して、当該破棄されないPDCP PDUを含んだRLC PDUを生成し、前記相手装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
前記RLC処理手段は、送信対象のRLC PDUを特定するためのシーケンス番号の範囲を特定するためのウィンドウにおける最小のシーケンス番号が破棄されたRLC PDUに対応するシーケンス番号に対応する場合、当該ウィンドウを当該破棄されたRLC PDUに対応するシーケンス番号を含まない範囲までシフトさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項14】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠した通信装置であって、
通信の相手装置から、Radio Link Control(RLC)-Acknowledge Mode(AM)で、RLC Protocol Data Unit(PDU)を受信し、当該RLC PDUに含まれる1つ以上のRLC Service Data Unit(SDU)を出力するRLC処理手段と、
前記RLC SDUを、Packet Data Convergence Protocol(PDCP) PDUとして取得して、当該PDCP PDUの受信処理を行うPDCP処理手段と、
を有し、
前記RLC処理手段は、
破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知を前記相手装置から受信し、
通知された当該シーケンス番号のRLC PDUが受信されない場合であっても、当該RLC PDUの再送を要求しない、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項15】
前記RLC処理手段は、前記相手装置へ、RLC PDUの受信状態を示す情報を送信するように構成され、通知された前記シーケンス番号のRLC PDUが受信されていないことを示さないように前記受信状態を生成する、ことを特徴とする請求項14に記載の通信装置。
【請求項16】
前記通信装置は端末装置であり、前記相手装置は基地局装置である、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項17】
前記通信装置は、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知に関する能力を有するか否かを示す能力情報を、前記相手装置へ送信する送信手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項16に記載の通信装置。
【請求項18】
前記能力情報は、前記通知に伴う内部変数の制御機能を有するか否かを示す情報をさらに含む、ことを特徴とする請求項17に記載の通信装置。
【請求項19】
前記通信装置は基地局装置であり、前記相手装置は端末装置である、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項20】
前記通信装置は、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知に関する能力を有するか否かを示す能力情報を、前記相手装置から受信する受信手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項19に記載の通信装置。
【請求項21】
前記能力情報は、前記通知に伴う内部変数の制御機能を有するか否かを示す情報をさらに含む、ことを特徴とする請求項20に記載の通信装置。
【請求項22】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠し、ユーザデータを含んだPacket Data Convergence Protocol(PDCP) Protocol Data Unit(PDU)の生成を含んだPDCPレイヤの処理を行うPDCP機能と、前記PDCP機能からPDCP PDUを取得し、1つ以上のPDCP PDUを含んだRadio Link Control(RLC) PDUを生成して、RLC-Acknowledge Mode(RLC-AM)で通信の相手装置へ送信するRLC機能と、を含んだ通信装置によって実行される制御方法であって、
前記PDCP機能において、
送信されたPDCP PDUが前記相手装置において受信成功するまでの遅延の許容値である許容遅延時間を管理することと、
当該許容遅延時間を超えたPDCP PDUを破棄することと、
前記RLC機能において、
破棄されたPDCP PDUを特定する情報を前記PDCP機能から取得することと、
前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUのシーケンス番号を特定することと、
前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄することと、
破棄されるRLC PDUのシーケンス番号を前記相手装置へ通知することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項23】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠し、通信の相手装置から、Radio Link Control(RLC)-Acknowledge Mode(AM)で、RLC Protocol Data Unit(PDU)を受信し、当該RLC PDUに含まれる1つ以上のRLC Service Data Unit(SDU)を出力するRLC機能と、前記RLC SDUを、Packet Data Convergence Protocol(PDCP) PDUとして取得して、当該PDCP PDUの受信処理を行うPDCP機能と、を含んだ通信装置によって実行される制御方法であって、
前記RLC機能において、
破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知を前記相手装置から受信することと、
通知された当該シーケンス番号のRLC PDUが受信されない場合であっても、当該RLC PDUの再送を要求しないことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項24】
通信装置に備えられたコンピュータに請求項22に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【請求項25】
通信装置に備えられたコンピュータに請求項23に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ通信システムにおけるRLC-AMを用いたデータ送信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))のセルラ通信規格において、ユーザデータの通信に関する信頼性向上のために、Radio Link Control(RLC)-Acknowledge Mode(AM)と呼ばれる仕組みが導入されている。このモードは、送信対象のユーザデータが相手装置に届いたことを示す確認応答(ACK)が受信されない場合に、そのユーザデータの再送を行うモードである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
相手装置に到達するまでの遅延の許容値(許容遅延時間、Packet delay badget)が設定されるユーザデータが存在する。例えば、リアルタイム性が要求されるユーザデータは、その許容遅延時間が短いことが当然に想定される。ここで、RLC-AMにおいてそのような許容遅延時間が短いユーザデータを送信する場合、そのユーザデータの送信または再送時に、その許容遅延時間を超過してしまうことが想定される。許容遅延時間を超過したユーザデータは、もはや送信する必要がないデータとなる。しかしながら、RLC-AMエンティティが再送などの処理を停止することができず、不必要なデータの送信などの無駄が生じうる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、RLC-AMにおける許容遅延時間を超過したデータの送信を防ぐ技術を提供する。
【0005】
本発明の一態様による通信装置は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠した通信装置であって、ユーザデータを含んだPacket Data Convergence Protocol(PDCP) Protocol Data Unit(PDU)の生成を含んだPDCPレイヤの処理を行うPDCP処理手段と、前記PDCP処理手段からPDCP PDUを取得し、1つ以上のPDCP PDUを含んだRadio Link Control(RLC) PDUを生成して、RLC-Acknowledge Mode(RLC-AM)で通信の相手装置へ送信するRLC処理手段と、を有し、前記PDCP処理手段は、送信されたPDCP PDUが前記相手装置において受信成功するまでの遅延の許容値である許容遅延時間を管理し、当該許容遅延時間を超えたPDCP PDUを破棄し、前記RLC処理手段は、破棄されたPDCP PDUを特定する情報を前記PDCP処理手段から取得し、前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUのシーケンス番号を特定し、前記破棄されたPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄し、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号を前記相手装置へ通知する。
【0006】
本発明の別の一態様による通信装置は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)のセルラ通信規格に準拠した通信装置であって、通信の相手装置から、Radio Link Control(RLC)-Acknowledge Mode(AM)で、RLC Protocol Data Unit(PDU)を受信し、当該RLC PDUに含まれる1つ以上のRLC Service Data Unit(SDU)を出力するRLC処理手段と、前記RLC SDUを、Packet Data Convergence Protocol(PDCP) PDUとして取得して、当該PDCP PDUの受信処理を行うPDCP処理手段と、を有し、前記RLC処理手段は、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知を前記相手装置から受信し、通知された当該シーケンス番号のRLC PDUが受信されない場合であっても、当該RLC PDUの再送を要求しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、RLC-AMにおける許容遅延時間を超過したデータの送信を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】基地局装置及び端末装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】基地局装置及び端末装置の機能構成例を示す図である。
図4】無線通信システムで実行される処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成)
図1に本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の、ロングタームエボリューション(LTE)や第5世代(5G)などのセルラ通信規格、又はその後継規格に準拠した無線通信システムである。本無線通信システムは、基地局装置101及び端末装置111を含んで構成される。端末装置111は、基地局装置101と接続を確立して、上りリンク(端末装置111から基地局装置101へ向かう方向のリンク)のユーザデータを送信し、下りリンク(基地局装置101から端末装置111へ向かう方向のリンク)のユーザデータを受信する通信装置である。同様に、基地局装置101は、接続された端末装置111へ、下りリンクのユーザデータを送信し、上りリンクのユーザデータを受信する通信装置である。
【0011】
(装置構成)
図2に、本実施形態に係る基地局装置101及び端末装置111のハードウェア構成例を示す。基地局装置101及び端末装置111は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)などの、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の制御処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置101及び端末装置111が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、LTEや5G、又はその後継規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、基地局装置101及び端末装置111は、複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置101及び端末装置111は、LTE用、5G用、およびその後継規格用のそれぞれのための無線通信回路と、それらの回路に共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置101及び端末装置111は、各規格に適したアンテナを別個に有してもよい。また、基地局装置101は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、端末装置111は、さらに、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)やBluetooth(登録商標)などのセルラ通信規格以外の無線通信規格に準拠した通信回路などを有してもよい。なお、基地局装置101及び端末装置111は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路205を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路205を有してもよい。
【0012】
図3に、本実施形態に係る基地局装置101及び端末装置111の機能構成例を示す。基地局装置101及び端末装置111は、共に、PDCP処理部301、RLC処理部302、MAC処理部303、及びPHY処理部304を含んで構成される。なお、図3では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置や端末装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置は、5Gやその後続規格などに準拠した端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは基地局装置101及び端末装置111の大まかな機能のみを概説する。
【0013】
PDCP処理部301は、Packet Data Convergence Protocol(PDCP)レイヤの処理を実行する。PDCP処理部301は、ユーザデータを含んだInternet Protocol(IP)パケットを取得すると、そのパケットを送信対象のPDCP Service Data Unit(SDU)として取り扱う。そして、PDCP処理部301は、そのPDCP SDUに、PDCPレイヤのヘッダ(PDCPヘッダ)を追加して、PDCP Protocol Data Unit(PDU)を生成する。PDCP処理部301は、PDCP PDUをRLC処理部302へ出力する。
【0014】
RLC処理部302は、Radio Link Control(RLC)レイヤの処理を実行する。RLC処理部302は、PDCP処理部301から入力されたPDCP PDUをRLC SDUとして、そのRLC SDUにRLCレイヤのヘッダ(RLCヘッダ)を追加してRLC PDUを生成し、そのRLC PDUをMAC処理部303へ出力する。なお、RLC処理部302は、複数のRLC SDUを連結して、1つのRLC PDUを生成しうる。このとき、1つのRLC SDUが分割されて、複数のRLC PDUに含まれてもよい。
【0015】
MAC処理部303は、Medium Access Control(MAC)レイヤの処理を実行する。MAC処理部303は、RLC処理部302が生成したRLC PDUをMAC SDUとして、そのMAC SDUにMACレイヤのヘッダ(MACヘッダ)及びパディングを追加してMAC PDUを生成し、そのMAC PDUをPHY処理部304へ出力する。PHY処理部304は、MAC PDUをトランスポートブロックとして、送信対象のサブフレームを生成し、無線信号として相手装置へ送信する。
【0016】
ここまで、送信側の通信装置についての各処理部についての説明をした。受信側の通信装置では、その逆の手順が行われる。すなわち、PHY処理部304は、相手装置からトランスポートブロックを含んだ無線信号(サブフレーム)を受信し、そのトランスポートブロックをMAC処理部303へ出力する。MAC処理部303は、トランスポートブロックをMAC PDUとして、そこからMACヘッダ及びパディングを削除して、MAC SDUを抽出し、RLC処理部302へそのMAC SDUを出力する。RLC処理部302は、MAC SDUをRLC PDUとして、RLCヘッダを削除して、RLC SDUを抽出する。なお、RLC PDUには、複数のRLC SDUが含まれうる。また、1つのRLC SDUが複数のRLC PDUに分割されて含められている場合もありうる。このため、RLC処理部302は、RLC PDUに含まれるペイロードの部分を分割又は連結して、各RLC SDUを再現する。そして、RLC処理部302は、再現したRLC SDUをPDCP処理部301へ出力する。PDCP処理部301は、RLC SDUからPDCPヘッダを削除して、IPパケットを抽出する。このようにして、送信側の通信装置(上りリンクの場合は端末装置111、下りリンクの場合は基地局装置101)のユーザデータ(IPパケット)が、受信側の通信装置(上りリンクの場合は基地局装置101、下りリンクの場合は端末装置111)に到達する。
【0017】
なお、送信側の通信装置におけるPDCP処理部301は、ユーザデータ(IPパケット)が、通信の相手装置において受信成功するまでの遅延の許容値である許容遅延時間を管理している。そして、PDCP処理部301は、ユーザデータの発生(PDCP処理部301への入力)からの経過時間がその許容遅延時間を超過した場合に、そのPDCP PDUを破棄する。なお、この場合の許容遅延時間は、受信側の通信装置である基地局装置から、送信側の通信装置である端末装置へ通知されうる。基地局装置は、コアネットワーク装置から受信した5QI(5G QoS Identifier)などの無線回線に要求される品質を示す情報に基づいて、許容遅延時間を決定し、PDCPのパラメータの一部のdiscardTimerとして、端末装置に通知しうる。
【0018】
また、RLC処理部302は、RLC-Acknowledge Mode(AM)と呼ばれる確認応答及び再送機構を用いることができる。RLC-AMでは、RLC処理部302は、送信対象のRLC PDUに対してシーケンス番号を付与して送信する。そして、RLC処理部302は、通信の相手装置のRLC処理部302において正常に受信されなかったRLC PDUのシーケンス番号を示す確認応答(状態情報)を受信し、正常に受信されなかったRLC PDUを再送する。相手装置からは、例えば、RLC PDUの受信状態を示すSTATUS PDUが受信される。STATUS PDUは、例えば、受信に成功していないRLC PDUのシーケンス番号と、受信に成功したRLC PDUのシーケンス番号の次のシーケンス番号(すなわち、次に新たに受信されるべきRLC PDUのシーケンス番号)を示す情報を含む。例えば、シーケンス番号が1~3のRLC PDUが送信された状態において、シーケンス番号2のRLC PDUの受信に成功しておらず、シーケンス番号1及び3のRLC PDUの受信に成功していた場合、受信に成功していないRLC PDUのシーケンス番号「2」と、次に新たに受信されるべきRLC PDUのシーケンス番号「4」が、STATUS PDUに含まれうる。RLC処理部302は、そのSTATUS PDUを受信したことに応じて、シーケンス番号「2」のRLC PDUの再送と、シーケンス番号「4」のRLC PDUの送信とを行いうる。
【0019】
RLC-AMによる通信制御が行われている場合、受信側の通信装置において、RLC PDUの受信に成功しなかった場合には、送信側の通信装置は、そのRLC PDUを繰り返し送信する。このときに、例えば、PDCP処理部301は、そのRLC PDUを用いて送信されるユーザデータの発生からの時間が許容遅延時間を超過したと判定した場合、そのユーザデータに関するPDCP PDUを破棄する。この時点で、そのPDCP PDUを含んだRLC PDUがRLCレイヤにおいて再送される必要がなくなりうるが、RLC処理部302は、再送が不要となったことを認識することができない。また、許容遅延時間が短いユーザデータについては、RLC処理部302においてそのユーザデータを含んだRLC PDUの送信の準備を行っている間に、そのユーザデータの発生からの時間がその許容遅延時間を超えてしまうことも想定されうる。このような場合に、RLC処理部302は、不必要な送信を行ってしまうこととなる。また、受信側の通信装置におけるRLC処理部302は、RLC PDUが、ユーザデータの許容遅延時間が経過したことによりもはや送信する必要がないものであることを認識することができず、再送要求を送信し続けてしまう。
【0020】
本実施形態では、このような事情に鑑み、RLC PDUの不必要な送信を抑制するための技術を提供する。
【0021】
本実施形態では、送信側の通信装置(以下、「送信装置」と呼ぶ。)において、PDCP処理部301は、ユーザデータ(そのユーザデータを含んだPDCP PDU又はPDCP SDU)を破棄した場合に、その破棄されたユーザデータを特定する情報をRLC処理部302へ通知する。PDCP処理部301は、例えば、PDCP PDU又はPDCP SDUを特定する情報をRLC処理部302へ通知しうる。RLC処理部302は、通知された情報に基づいて、破棄されたユーザデータを含んだRLC PDUのシーケンス番号を特定する。そして、送信装置のRLC処理部302は、そのシーケンス番号のRLC PDUを破棄し、さらに、受信側の通信装置(以下、「受信装置」と呼ぶ。)のRLC処理部302に向けて、その破棄されたRLC PDUのシーケンス番号を通知する。これにより、送信装置において、不要なRLC PDUを送信してしまうことを防ぐことができる。また、受信装置は、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号の情報を受信することにより、そのシーケンス番号のRLC PDUが受信されない場合であっても、そのRLC PDUの再送要求を送信装置へ送信しないようにしうる。
【0022】
なお、送信装置は、RLC PDUの破棄が行われるたびに、破棄したRLC PDUのシーケンス番号を受信装置へ通知してもよいし、例えば、破棄したRLC PDUのシーケンス番号(のリスト)を所定の周期で周期的に受信装置へ通知してもよい。なお、この場合の所定の周期を特定可能な情報は、送信装置が端末装置111である場合に、基地局装置101から通知されうる。なお、送信装置が基地局装置101である場合にも、その所定の周期を特定可能な情報が端末装置111から基地局装置101へ通知されてもよい。なお、送信装置は、破棄したRLC PDUのシーケンス番号を受信装置に通知した際に、prohibit timerを起動し、所定期間の間、さらなる破棄したRLC PDUのシーケンス番号の通知が行われないようにしてもよい。すなわち、高頻度で破棄したRLC PDUのシーケンス番号が通知されることを防ぎ、一度シーケンス番号の通知が行われた後は、一定期間にわたって同様の通知が行われることを防いでもよい。送信装置は、破棄したRLC PDUのシーケンス番号に関する情報のみを受信装置へ送信してもよいし、受信装置に対して送信されるユーザデータを含んだRLC PDU(Acknowledge Mode Data(AMD) PDU)に、破棄したRLC PDUのシーケンス番号に関する情報を含めて、受信装置へ送信してもよい。また、送信装置は、破棄したRLC PDUのシーケンス番号に関する情報を含んだSTATUS PDUを生成し、受信装置へそのSTATUS PDUを送信してもよい。このSTATUS PDUは、破棄されたRLC PDUを通知するために新たに定義されうる。送信装置が通知する情報は、破棄したRLC PDUのシーケンス番号(のリスト)に限られず、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号の最小値と、破棄されたRLC PDUの個数で構成された情報であってもよい。また、送信装置は、RLC PDUが初回送信される前に破棄された場合、そのRLC PDUの後に送信される他のRLC PDUのシーケンス番号を繰り上げ、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号に関する通知を行わないようにしてもよい。すなわち、例えば、シーケンス番号が「n」の第1のRLC PDUが受信装置へ送信されることなく破棄された場合に、シーケンス番号が「n+1」に設定されて送信される予定であった第2のRLC PDUのシーケンス番号を「n」に振り直し、第1のRLC PDUのシーケンス番号に関する通知が行われないようにしてもよい。第1のRLC PDUが送信されたことがないため、受信装置は、その第1のRLC PDUの存在を認識しておらず、その第1のRLC PDUの再送を要求することもないからである。
【0023】
なお、送信装置は、受信装置へ、破棄したRLC PDUのシーケンス番号を通知した後に、その受信装置からそのシーケンス番号のRLC PDUの再送要求を受信した場合、そのRLC PDUを送信することなく、その破棄したRLC PDUのシーケンス番号の通知を、受信装置へ再送しうる。再送要求が届いたことにより、受信装置に破棄されたRLC PDUのシーケンス番号の通知が届いていないことが想定されるからである。なお、この処理を行うために、送信装置は、送信したRLC PDUと、破棄したRLC PDUとを区別して管理しうる。すなわち、送信装置は、所定の範囲のシーケンス番号を有するRLC PDUを送信対象として特定するための、所定サイズのウィンドウを用いて送信管理を行うが、その管理のみでは、破棄されたRLC PDUと再送する可能性があるRLC PDUとを区別することができない。このため、送信装置は、破棄したRLC PDUの再送の要求を受信した場合に、そのRLC PDUが再送対象でないことを特定することを可能とするための情報を管理してもよい。送信装置は、例えばこの情報に基づいて、再送要求の対象のRLC PDUを再送するか否かを判定しうる。すなわち、送信装置は、破棄されたRLC PDUについては再送要求を受信したとしても再送しないと判定し、破棄されていないRLC PDUについての再送要求を受信した場合に再送を行うと判定しうる。また、送信装置は、例えば、上述のウィンドウによって特定されるシーケンス番号の範囲のうち、最小のシーケンス番号のRLC PDUが破棄された場合、破棄されたシーケンス番号を含まない範囲までウィンドウをシフトして、送信対象の範囲を変更しうる。
【0024】
また、送信装置は、1つのRLC PDUに、破棄された第1のPDCP PDUと破棄されていない第2のPDCP PDUが含まれる場合、その第1のPDCP PDUを含んだRLC PDUを破棄して、第2のPDCP PDUのみが含まれたRLC PDUを生成しうる。そして、送信装置は、そのRLC PDUを受信装置へ送信しうる。なお、このRLC PDUのシーケンス番号は、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号を流用してもよいし、別のシーケンス番号がこのRLC PDUに付与されてもよい。また、この場合、破棄された第1のPDCP PDUと破棄されていない第2のPDCP PDUを含むRLC PDUを破棄せずに、そのRLC PDUの再送を含めた従来の処理が継続されるようにしてもよい。
【0025】
受信装置は、上述のように、破棄されたRLC PDUについては、受信されなくても再送要求を送信しない。受信装置のRLC処理部302は、その破棄されたRLC PDUについて、受信成功した場合と同様の扱いをする。一例において、受信装置は、破棄されたことが通知されたシーケンス番号のRLC PDUが受信されていないことを示さないように(受信された場合と同様に)、上述のSTATUS PDUを生成して、送信装置へ送信しうる。なお、受信装置においても、シーケンス番号のウィンドウなどによって受信管理が行われうる。この場合に、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号の通知を受信した場合に、そのシーケンス番号が、ウィンドウの最小値に対応する場合に、そのシーケンス番号を含まなくなるようにそのウィンドウの範囲をシフトしうる。
【0026】
なお、端末装置111は、上述のような処理を行う能力を有するか否かを示す能力情報を、基地局装置101へ通知してもよい。すなわち、端末装置111は、破棄されたRLC PDUのシーケンス番号を通知する能力、又は、その通知を受信した場合に、その破棄されたRLC PDUの再送を要求しない能力を有するか否かを、基地局装置101へ通知しうる。また、能力情報は、上述のウィンドウの制御などのための内部変数の制御を実行可能であるか否かを示す情報を含んでもよい。なお、内部変数の制御については、通知されなくてもよい。すなわち、端末装置111は、本実施形態において説明される処理の全てではなく、一部のみをサポートしていることを示す情報を基地局装置101へ通知してもよい。例えば、端末装置111が、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知に関する処理のみをサポートしている場合、基地局装置101は、そのRLC PDUの受信に成功した場合と同様の処理を行うことにより、端末装置111が、内部変数の処理を行うことなく、不必要なRLC PDUの送信を防ぐことができる。すなわち、基地局装置101が、上述のSTATUS PDUにおいて、破棄されたRLC PDUについてNACKの対象としないことにより、端末装置111がそのRLC PDUを再送することを防ぐことができる。また、この場合、端末装置111は、基地局装置101から、破棄されたRLC PDUの再送を要求された場合には、そのRLC PDUを再送しうる。すなわち、端末装置111は、シーケンス番号の通知のみを行い、他の処理については行わなくてもよい。すなわち、基地局装置101が内部変数の制御も含めて実行可能であることを条件に、端末装置111は、上述の処理の全てを実行可能でなくてもよい。なお、端末装置111が、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知機能のみを実行可能な場合に、基地局装置101が上述の処理を実行可能でない場合、その通知が無視されるのみであり、従来通りの動作が行われうる。すなわち、端末装置111は、削除されるRLC PDUのシーケンス番号を通知するが、基地局装置101においてそのRLC PDUが正常に受信されたことが通知されるまで、そのRLC PDUを破棄しない。このため、基地局装置101が、上述の通知を解釈することができない場合には、破棄されたユーザデータに対応するRLC PDUが送信されることとなるが、破棄されたRLC PDUが存在せず、通知を再送してもその解釈がされない、という動作が発生することを防ぐことができる。
【0027】
なお、基地局装置101は、能力情報を受信したことに応じて、端末装置111に実行させる処理を決定しうる。すなわち、基地局装置101は、端末装置111が有する能力に対応する処理の全部が実行されるように端末装置111に指示してもよいし、例えば上述のシーケンス番号の通知処理のみなど、一部の機能のみを実行するように端末装置111に指示してもよい。この指示は、例えば、RRC Reconfigurationメッセージによって、端末装置111へ通知されうる。
【0028】
(処理の流れ)
続いて、図4を用いて、本実施形態の無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について説明する。なお、ここで示す処理は一例であり、上述のような様々な変形が行われうる。なお、端末装置111の能力情報の通知は既に行われており、シーケンス番号の通知と内部変数の変更とが行われるものとする。
【0029】
送信装置は、例えば、シーケンス番号が1~9のRLC PDUを送信するものとする。なお、図4では、初期的にシーケンス番号が1~9のRLC PDUが生成されているような例が示されているが、これらのRLC PDUは逐次的に生成されてもよく、初期的には少なくとも一部のデータが生成されていなくてもよい。送信装置は、送信対象のRLC PDUを特定するためのウィンドウを使用する。図4の例では、ウィンドウサイズが3であり、初期的には、シーケンス番号が1~3の範囲が送信対象として特定されうる。送信装置は、ウィンドウによって指定されるシーケンス番号が1~3のRLC PDUを、受信装置へ送信する(S401)。このとき、送信装置は、受信装置からACKを受信していないシーケンス番号のうち、最も古い番号を、変数TX_Next_Ackによって管理する。S401の時点では、シーケンス番号が1~3のRLC PDUが送信され、そのいずれについてもACKを受信していないため、TX_Next_Ackが「1」に設定される。このTX_Next_Ackは、ウィンドウで指定されるシーケンス番号の下限に対応する。すなわち、シーケンス番号がTX_Next_AckからTX_Next_Ack+Window Size-1までのRLC PDUが、送信対象となるようにウィンドウが設定される。また、送信装置は、次に送信すべき(未送信状態の)RLC PDUのシーケンス番号を、変数TX_Nextにより管理する。この場合、シーケンス番号が1~3のRLC PDUが送信されたため、TX_Nextが「4」に設定される。
【0030】
なお、受信装置において、受信用のウィンドウが管理されており、そのウィンドウによって規定されるシーケンス番号の下限値が変数RX_Nextによって管理される。また、受信装置において、受信に成功した最後のシーケンス番号が、RX_Next_Highestによって管理される。図4の例では、受信装置において、初期的に、RX_Next=1が保持されている。ここで、受信装置は、S401において送信されたシーケンス番号が1~3のRLC PDUのうち、シーケンス番号が1~2のRLC PDUのみ受信に成功したものとする。この場合、受信装置は、例えば、シーケンス番号が1~2のRLC PDUの受信に成功したことを示す確認応答(ACK)を送信装置へ送信する(S402)。この場合の確認応答(ACK)は、ACK_SN=3を含むSTATUS PDUでありうる。送信装置は、この時点において、受信に成功したシーケンス番号の最大値が2であるため、RX_Next_Highestに「2」を設定し、次に受信されるべきRLC PDUのシーケンス番号が3であるため、RX_Nextに「3」を設定する。
【0031】
送信装置は、S402のACKを受信すると、シーケンス番号が1~2のRLC PDUの送信に成功したことを認識し、TX_Next_Ackを「3」に変更する。これにより、ウィンドウが3~5の範囲にシフトし、送信装置は、シーケンス番号が3~5のRLC PDUのうち、初回送信が完了していないシーケンス番号が4及び5のRLC PDUを受信装置へ送信する(S403)。この時点で、初回送信が完了していない次に送信されるべきRLC PDUのシーケンス番号が「6」となるため、変数TX_Nextが「6」に変更される。また、受信装置は、そのシーケンス番号が4及び5のRLC PDUのうち、シーケンス番号が4のRLC PDUのみ受信成功したことを示すACKを送信したものとする(S404)。この場合の確認応答(ACK)は、NACK_SN=3とACK_SN=5を含むSTATUS PDUでありうる。S404のタイミングにおいて、受信装置は、シーケンス番号が3のRLC PDUの受信に成功していないことを特定することができ、NACK_SN=3を含むSTATUS PDUを送信することができる。この場合、シーケンス番号が3のRLC PDUは受信されておらず、一方で、受信に成功したシーケンス番号の最大値が4となるため、RX_Nextの値を「3」のまま維持しながら、RX_Next_Highestを「4」に変更する。一方で、送信装置は、このACKを受信しても、TX_Next_Ackの値もTX_Nextも変更しない。
【0032】
その後、送信装置は、PDCPレイヤにおいてユーザデータの破棄があったことに応じて、送信済みのシーケンス番号が3のRLC PDUを破棄することを決定したものとする。送信装置は、この決定に応じて、破棄されるRLC PDUのシーケンス番号「3」を受信装置へ通知する(S405)。このとき、送信装置は、シーケンス番号が3のRLC PDUを破棄した上で、そのRLC PDUについての内部変数を、送信が成功した場合と同様に変更する。すなわち、送信装置は、シーケンス番号が3のRLC PDUに対してACKが受信された場合と同様に、TX_Next_Ackを変更する。この場合、送信装置は、シーケンス番号が4のRLC PDUについては受信成功の通知を受信しているため、TX_Next_Ackの値を「5」に変更する。そして、送信装置は、シーケンス番号が5から開始するようにウィンドウをシフトさせ、そのウィンドウ内で初回送信が完了していない、シーケンス番号が6及び7のRLC PDUを受信装置へ送信する(S406)。また、送信装置は、この送信により、TX_Nextの値を「8」に変更する。
【0033】
一方、受信装置は、S405において破棄されるRLC PDUのシーケンス番号の通知を受信すると、その通知されたシーケンス番号が3のRLC PDUの受信に成功した場合と同様に内部変数を変更する。すなわち、受信装置は、シーケンス番号が4のRLC PDUについては受信に成功しているため、RX_Nextの値を「5」に変更する。その後、受信装置は、例えばS406において送信装置から送信されたシーケンス番号が6及び7のRLC PDUの受信に成功した場合、それに応答してACKを返信する(S407)。この場合の確認応答(ACK)は、NACK_SN=5とACK_SN=8を含むSTATUS PDUでありうる。S407のタイミングにおいて、受信装置は、シーケンス番号が5のRLC PDUの受信に成功していないことを特定することができ、NACK_SN=5を含むSTATUS PDUを送信することができる。この場合、受信装置は、シーケンス番号が5のRLC PDUについては受信成功していないため、RX_Nextの値を「5」のまま維持し、RX_Next_Highestの値を「7」に変更する。
【0034】
なお、受信装置は、RLC PDUの受信状況を示すSTATUS PDUに、受信に成功していないRLC PDUのシーケンス番号を示すNACK_SNと、受信に成功した最新のRLC PDUのシーケンス番号の次のシーケンス番号を示すACK_SNとを含めて、送信装置へ送信する。このようなSTATUS PDUが、例えばS405より早いタイミングで送信される場合、NACK_SN=3、ACK_SN=5のように設定される。これに対して、S405からS406の間に報告されるSTATUS PDUには、ACK_SN=5のみが含められ、NACK_SNが含められないこととなる。なお、S406において、シーケンス番号が6のRLC PDUが受信されたことに応じて、受信装置は、シーケンス番号が5のRLC PDUの受信に成功していないことを特定することができる。このため、S406より後のタイミングでは、NACK_SN=5、ACK_SN=8が指定されたSTATUS PDUが送信されうる。
【0035】
このようにして、PDCPレイヤにおけるユーザデータの破棄に伴う不必要なRLC PDUの送信を防ぐことができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0036】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4