(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153917
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】情報提供システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20251002BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20251002BHJP
G08B 31/00 20060101ALI20251002BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G06Q50/26
G08B27/00 C
G08B31/00 B
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056638
(22)【出願日】2024-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、独立行政法人情報処理推進機構、未踏アドバンスト事業「洪水浸水予報アプリケーションの構築」に関する委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】723005160
【氏名又は名称】株式会社Gaia Vision
(74)【代理人】
【識別番号】100185317
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】出本 哲
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5L050
【Fターム(参考)】
5C086AA15
5C086BA30
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087BB74
5C087DD02
5C087DD49
5C087EE07
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG14
5C087GG66
5C087GG83
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】関心領域内のいずれかの場所で、ユーザが設定した基準値を超える危険が予測される場合に、ユーザに迅速に水害に関する予測を通知すること。
【解決手段】予測雨量の分布予測データを入力値として複数のセルの浸水深及び河川水位の分布を予測し、浸水深又は河川水位の分布状況を表示するシステムであって、ユーザにより予め設定された関心領域内のいずれかのセルの浸水深又は河川水位の予測値が、ユーザにより予め設定された基準値を超えるか否かを判定し、予測値がアラート基準値を超えると判定された場合、ユーザ端末に対しアラート通知をする、情報提供システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のプロセッサを備え、
前記1または複数のプロセッサは、
降水量データを入力として、複数のセルの浸水深及び河川水位を予測し、
ユーザにより予め設定された関心領域内のいずれかの前記セルの前記浸水深又は前記河川水位の予測値と、前記ユーザにより予め設定された基準値と、に基づいて、前記ユーザの端末に対しアラート通知をする、
情報提供システム。
【請求項2】
前記アラート通知は、電子メールによって実行され、
前記アラート通知の内容は、場所、予測時刻、及び浸水深又は河川水位の予測値を含む、
請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記関心領域は、前記ユーザにより予め設定されたポリゴンに囲まれた領域、又は、市町村の行政界で囲まれる領域である、
請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記アラート通知される情報は、前記浸水深又は前記河川水位の分布状況の表示を可能にするリンク情報を含む、
請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項5】
コンピュータに、
降水量データを入力として、複数のセルの浸水深及び河川水位を予測する機能と、
前記浸水深又は前記河川水位に基づいて着色したセルを地図の上に重畳表示する機能と、
ユーザにより予め設定された関心領域内のいずれかのセルの前記浸水深又は前記河川水位の予測値が、前記ユーザにより予め設定された基準値を超えるか否かを判定する機能と、
前記予測値が前記基準値を超えると判定された場合、前記ユーザの端末に対しアラート通知をする機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象地域を複数のセルに分割し、洪水氾濫状況をセル毎に予測計算を行い、面的に表示するシステムが知られている。
特許文献1には、気象予測情報を入力として、河川流量や洪水氾濫状況を予測計算し、面的に表示する洪水監視システムが開示されている。洪水監視システムは、各セルの土壌の浸透過程や地表水量を計算し、セル間の水の移動を計算し、河川の流量を算出する水文・水理モデルを含む。洪水監視システムは、河川の堤防が氾濫すると予測される場合は、洪水氾濫モデルにより、各セルの水深を計算し、洪水氾濫状況の予測を面的に表示する。
非特許文献1には、セル間で繋がった貯留タンクが地中流や地表流を表現するモデルを使って浸水域や河川の洪水を予測し、予測結果を警戒レベルで色を変えて面的に表示するサービスが記載されている。さらに、自主避難に役立てるため、ユーザが登録した場所における危険度が上昇したとき等にユーザ端末にメールやスマートフォンアプリを介してプッシュ通知するサービスを、気象庁の協力のもとで事業者が実施していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】気象庁のキキクル(警報の危険度分布)の解説<https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/riskmap.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浸水や洪水の予測システムを利用するユーザの中には、個人利用の目的のユーザだけでなく、自治体の防災担当者、道路管理会社の担当者、電力会社の特定管轄地域の災害を監視する者なども含まれる。これら、自治体やインフラ設備の防災担当者は、自分の所管の比較的広域のエリア内全体を監視する必要がある。従来の技術では、特定地点の危険度が差し迫ってくる場合に、特定地点の危険を防災担当者に知らせることはできても、領域内のいずれかの場所で発生すると予測される場合に危険を知らせることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、関心領域内のいずれかの場所で、ユーザが設定した基準値を超える危険が予測される場合にユーザに迅速に水害に関する予測を通知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと完成させた本発明は、1または複数のプロセッサを備え、前記1または複数のプロセッサは、降水量データを入力として、複数のセルの浸水深及び河川水位を予測し、ユーザにより予め設定された関心領域内のいずれかの前記セルの前記浸水深又は前記河川水位の予測値と、前記ユーザにより予め設定された基準値と、に基づいて、前記ユーザの端末に対しアラート通知をする、情報提供システムである。
【0008】
ここで、前記アラート通知は、電子メールによって実行され、前記アラート通知の内容は、場所、予測時刻、及び浸水深又は河川水位の予測値を含む、ことを特徴としてもよい。
【0009】
また、前記関心領域は、前記ユーザにより予め設定されたポリゴンに囲まれた領域、又は、市町村の行政界で囲まれる領域であることを特徴としても良い。
【0010】
また、前記アラート通知される情報は、前記浸水深又は前記河川水位の分布状況の表示を可能にするリンク情報を含む、ことを特徴としても良い。
【0011】
また、本発明は、コンピュータに、降水量データを入力として、複数のセルの浸水深及び河川水位を予測する機能と、前記浸水深又は前記河川水位に基づいて着色したセルを地図の上に重畳表示する機能と、ユーザにより予め設定された関心領域内のいずれかのセルの前記浸水深又は前記河川水位の予測値が、前記ユーザにより予め設定された基準値を超えるか否かを判定する機能と、前記予測値が前記基準値を超えると判定された場合、前記ユーザの端末に対しアラート通知をする機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の情報提供システムは、関心領域内のいずれかの場所で、ユーザが設定した基準値を超える危険が予測される場合にユーザに迅速に水害に関する予測を通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態が適用される情報提供システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1の情報提供システムを構成する管理サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】管理サーバの制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】管理サーバの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】ユーザ端末に表示される予測情報としてのユーザインターフェースの具体例を示す図である。
【
図6】ユーザ端末に表示される関心地点の登録に関するユーザインターフェースの具体例を示す図である。
【
図7】ユーザ端末に表示される関心領域の登録に関するユーザインターフェースの具体例を示す図である。
【
図8】ユーザ端末に表示されるアラート条件設定に関するユーザインターフェースの具体例を示す図である。
【
図9】ユーザ端末に表示されるアラート通知の具体例を示す図である。
【
図10】ユーザ端末に表示されるアラート対象を示すユーザインターフェースの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<情報提供システム1の構成>
図1は、本実施の形態が適用される情報提供システム1の全体構成の一例を示す図である。
情報提供システム1は、管理サーバ10と、ユーザ端末30とがネットワーク90を介して接続されることにより構成されている。ネットワーク90は、例えば、LAN(Local Area Network)、インターネット等である。情報提供システム1は、浸水や洪水を監視するユーザを支援する情報提供システムである。具体的には、常に画面を監視しているわけではないユーザに対し、浸水/洪水又は河川増水の危険を予め知らせることによりユーザが早めに防災や避難の活動ができるように支援する情報提供システムである。
【0015】
(管理サーバ10)
情報提供システム1を構成する管理サーバ10は、情報提供システム1全体を管理するサーバとしての情報処理装置である。管理サーバ10は、ネットワーク90を介して取得可能な気象情報をデータベースに格納して管理する。
【0016】
管理サーバ10は、ユーザが登録を希望する監視対象地点(以下、「関心地点」と呼ぶ。)または監視対象エリア(以下、「関心領域」と呼ぶ。)として、地点やエリアに対応する情報を入力する操作を支援する入力支援情報をユーザ端末30に提示する。なお、ユーザ端末30に提示される入力支援情報の具体例については、
図6及び
図7を参照して後述する。
【0017】
管理サーバ10は、ユーザがアラート通知を希望する閾値(以下、「アラート基準値」と呼ぶ。)を入力する操作を支援する入力支援情報をユーザ端末30に提示する。なお、ユーザ端末30に提示される入力支援情報の具体例については、
図8を参照して後述する。
【0018】
管理サーバ10は、ユーザ端末30から管理サーバ10に向けて送信されてきた、登録情報を取得し、データベースに格納して管理する。
【0019】
管理サーバ10は、気象情報の実況値が存在する時間までは、実況値により浸水/洪水及び河川水位の計算を行い、それ以降の実況値の無い時間帯については、雨量予測情報などの予測情報を入力として、浸水/洪水及び河川水位の予測計算を行う。具体的には、浸水深や河川水位をセル単位で現在から将来にわたり計算する。
なお、本明細書において、浸水とは、内水氾濫又は外水氾濫による洪水により、平常時は河川でない地表面上が水に覆われることをいう。また、浸水深とは、浸水の発生した際の地表面から水面までの深さである。洪水とは、気象庁の定義によれば、「河川の水位や流量が異常に増大することにより、平常の河道から河川敷内に水があふれること、及び、堤防等から河川敷の外側に水があふれること」である。本実施形態においては、洪水は、河川の水が堤防を越えて氾濫することを意味し、浸水に含まれる概念として使用している。
【0020】
管理サーバ10は、データベースに格納されている関心地点に該当するセル又は関心領域内のいずれかのセルの浸水深又は河川水位の予測値が、アラート基準値を超えると判断した場合に、メール等をユーザ端末30に向けて送信することでユーザに提示する。管理サーバ10により生成されるメールには、例えば、浸水又は河川水位の予測情報を表示するサイトのURLなどのリンク情報が含まれる。なお、管理サーバ10の構成や処理の詳細については後述する。
【0021】
(ユーザ端末30)
情報提供システム1を構成するユーザ端末30は、情報提供システム1を利用するユーザが操作するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置である。ユーザ端末30は、ユーザにより入力された情報を管理サーバ10に向けて送信する。ユーザにより入力され、管理サーバ10に向けて送信される情報としては、例えば、ユーザ登録情報、関心地点や関心領域の情報などが挙げられる。
【0022】
また、ユーザ端末30は、管理サーバ10から送信されてきた各種の情報を取得してディスプレイ等に表示する。例えば、ユーザ端末30は、管理サーバ10から送信されてきた面的な浸水予測のデータや画像を取得してディスプレイ等に表示する。
【0023】
管理サーバ10やユーザ端末30は、管理サーバ10やユーザ端末30に接続される各種装置などに用いられるCPUによって、本件における「1又は複数のプロセッサ」を構成し、本実施の形態における各種機能を実現している。
また、
図1に示す管理サーバ10やユーザ端末30の各種構成は、必ずしも筐体を同じくする必要はなく、システムとして把握される態様がある。本体装置と筐体が異なる場合には、有線または無線で接続される。
【0024】
なお、上述の情報提供システム1の構成は一例であり、情報提供システム1全体として上述の処理を実現させる機能を備えていればよい。このため、上述の処理を実現させる機能のうち、一部または全部の機能を情報提供システム1内の各装置で分担してもよいし協働してもよい。例えば、管理サーバ10の機能の一部または全部をユーザ端末30の機能としてもよい。さらに、情報提供システム1を構成する管理サーバ10およびユーザ端末30の各々の機能のうち、一部または全部の機能を図示せぬ他のサーバ等に移譲してもよい。これにより、情報提供システム1全体としての処理が促進され、また、処理を補完し合うことも可能となる。
【0025】
<管理サーバ10のハードウェア構成>
図2は、
図1の情報提供システム1を構成する管理サーバ10のハードウェア構成の一例を示す図である。
管理サーバ10は、制御部11と、メモリ12と、記憶部13と、通信部14と、操作部15と、表示部16とを有している。これらの各部は、データバス、アドレスバス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス等で接続されている。管理サーバ10は、ユーザ端末30のWebブラウザ上で提供される表示システムを提供するWebサーバとして機能することもできる。
【0026】
制御部11は、OS(基本ソフトウェア)やアプリケーションソフトウェア(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアの実行を通じて管理サーバ10の機能の制御を行うプロセッサである。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成される。メモリ12は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、演算に際して作業エリアとして用いられる。メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される。
また、制御部11は、例えばHTML、CGI、PHP、Java(登録商標)アプレット、JavaScript(登録商標)など様々な言語で作られたブラウザシステム(Webブラウザでサイトを開くだけで閲覧できるシステム)を提供することができる。
【0027】
記憶部13は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。記憶部13は、例えばプログラムや各種設定データなどの記憶に用いられるHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等で構成される。記憶部13には、各種の情報を格納するデータベースが設けられている。例えば、気象情報が格納された気象情報DB131、水文・水理モデルが使用するパラメータが格納されたパラメータDB132、浸水深や河川水位の情報が格納された水位DB133、浸水深や河川水位を計算するための管理サーバ10により取得されたユーザの登録情報が格納された登録情報DB134、管理サーバ10により生成されたアラート通知内容が格納されたアラート情報DB135、浸水深や河川水位の実況分布図や予測図などが格納された履歴情報DB136などが記憶部13に格納されている。
【0028】
気象情報DB131に格納される気象情報は、気象庁や気象情報配信会社等から配信される観測値、実況ベースの推定値、予測値が含まれる。レーダアメダスのような面的な雨量推定情報、衛星データから推定した降雨分布情報などの実況ベースのデータと、降水短時間予報や数値予報モデルの面的予測データがある。これら気象情報は、複数のセルの浸水深や河川水位を計算するモデルの入力値となる情報である。入力値は、面的な雨量情報であることが望ましいが、複数の地点雨量の入力を取得した後に、管理サーバ10が、地点雨量から面的な情報を推定してもよい。
例えば、気象庁から配信されるレーダアメダスの情報を、国土交通省、地方自治体、電力会社などが独自に管理する複数の雨量観測地点の情報や衛星から取得したデータを用いて、レーダアメダスを補正した雨量情報やそれをイニシャルとして雨域の移動を外挿した降水短時間予報を6時間先まで予測雨量として使用することもできる。さらに、36時間先までの数値予報モデルの予測結果を入力として、浸水深や河川水位の計算をすることもできる。
また、管理サーバ10は、ネットワーク90を介して入手した気象予測結果に基づき、ネスティングやダウンスケーリングした後に、浸水深や河川水位の計算を実行してもよい。
【0029】
パラメータDB132に格納されるパラメータとは、浸水深や河川水位を計算する水文・水理モデルが使用するパラメータである。例えば、土壌の浸透能、最大貯水量、数値標高モデル(DEM)、セル間の流水の移動方向、粗度係数、堤防高、河道幅などの情報であってもよい。これらの情報は、現実の実測データであってもよく、推定データであってもよい。例えば、河道幅は、衛星データから、ノイズ除去や、キャリブレーションなどのプロセスを経て、現実に近づいたデータを利用することができる。また、堤防高は、明示的にパラメータデータとして用意してもよいが、堤防を地形の一つと考えて、数値標高モデルから推定した値を用いることもできる。
【0030】
パラメータDB132に格納される情報は、基本的にはセルに対応付けられた情報として格納されている。ここで、「セル」とは、計算領域を細分化した単位である。例えば、セルは、縦方向と横方向に約30mごとに格子状に分割したメッシュの単位である。セルは、10mメッシュであってもよく、それよりも細かい単位であっても良い。また、50mメッシュであってもよく、それよりも粗い単位であっても良い。さらに、セルは必ずしも方形メッシュでなくても良く、正六角形であっても構わない。
本実施形態において、セルは、浸水深や河川水位の表示単位であるが、セル単位で計算が行われる必要はない。例えば、分割された集水域単位で計算が行われた後に、セル単位の浸水深や河川水位に換算しても構わない。
【0031】
水位DB133に格納される浸水深や河川水位の情報は、複数のセルの浸水深や河川水位の計算結果及び観測データを含む。観測データの場合は、日時と観測場所の情報が関連付けられて格納される。例えば、管理サーバ10は、国の機関、地方自治体、電力会社などで管理されている水位センサの観測データをネットワークを介して取得し、水位DB133に格納する。予測データの場合は、予測イニシャル時刻、予測時間、セルの位置と関連付けられて、格納される。
【0032】
登録情報DB134に格納されるユーザの登録情報は、ユーザのユーザ識別情報、関心地点又は関心領域、アラート基準値等の情報が格納される。関心地点又は関心領域、アラート基準値は、ユーザ識別情報に関連付けられて格納されるため、管理サーバ10は、ユーザ固有の関心地点や関心領域におけるアラート基準値を参照して、それぞれのユーザ端末に対してアラート通知をすることができる。生成されたアラート通知内容は、ユーザ識別情報と関連付けられてアラート情報DB135に格納される。
【0033】
浸水深や河川水位の実況分布図や予測図などは、履歴情報DB136に格納されるので、管理サーバ10は、過去のイベントの状況を表示させ、ユーザに閲覧させ、統計処理を行うことができる。
【0034】
通信部14は、ネットワーク90を介してユーザ端末30および外部との間で各種の情報の送受信を行う。操作部15は、例えばキーボード、マウス、機械式のボタン、スイッチで構成され、入力操作を受け付ける。操作部15には、表示部16と一体的にタッチパネルを構成するタッチセンサも含まれる。表示部16は、例えば情報の表示に用いられる液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成され、画像やテキストのデータなどを表示する。
【0035】
<ユーザ端末30のハードウェア構成>
ユーザ端末30は、
図2に示す管理サーバ10のハードウェア構成と同様の構成を備えることができる。すなわち、ユーザ端末30は、
図2に示す管理サーバ10の制御部11、メモリ12、記憶部13、通信部14、操作部15、および表示部16の各々と同様の制御部、メモリ、記憶部、通信部、操作部、および表示部の各々を備えることができる。このため、ユーザ端末30のハードウェア構成の図示および説明を省略する。
【0036】
<管理サーバ10の制御部11の機能構成>
図3は、管理サーバ10の制御部11の機能構成の一例を示す図である。
管理サーバ10の制御部11では、管理手段としての管理部101と、取得手段としての取得部102と、浸水及び河川水位の計算手段としての算出部103と、アラート判定手段としての判定部104と、アラート生成手段としての生成部105と、提示手段としての送信制御部106とが機能する。
【0037】
管理部101は、記憶部13(
図2参照)に設けられた各種のデータベースに各種の情報を格納して管理する。例えば、管理部101は、後述する算出部103により算出された浸水深又は河川水位を、記憶部13に設けられた水位DB133に格納して管理する。また、管理部101は、後述する取得部102により取得された登録情報を、記憶部13に設けられた登録情報DB134に格納して管理する。また、管理部101は、後述する生成部105により生成されたアラート内容を、記憶部13に設けられたアラート情報DB135に格納して管理する。
【0038】
取得部102は、ネットワーク90を介して取得可能な複数の動画像を取得する。具体的には、例えば、取得部102は、ネットワーク90を介して気象庁又は気象情報配信会社等から気象情報を取得する。また、取得部102は、ユーザ端末30から管理サーバ10に向けて送信されてきた各種の情報を取得する。例えば、取得部102は、ユーザ端末30から送信されてきた登録情報を取得する。
【0039】
算出部103は、浸水深及び河川水位の情報を算出する。具体的には、算出部103は、実況及び予測ベースの降雨情報を入力として、浸水深及び河川水位を各セルについて算出する。浸水深や河川水位の算出には、公知の水文モデルや水理モデルを用いることができる。例えば、水の土壌の浸透や飽和、地表流、中間流、地下水などをセル毎に物理的に計算する水文モデルや、河川の水の流れを計算する水理モデル、これらを組み合わせたモデルなどを用いることができる。あるいは、集水域単位で水移動計算を実施した後に、セル単位の浸水深や河川水位に換算してもよい。例えば、東京大学生産技術研究所で開発された河川氾濫モデル:Catchment-based Macro-scale Floodplain model (CaMa-Flood)を用いて、集水域単位での貯留量をセル単位に換算して浸水深や河川水位を求めてもよい。
【0040】
また、セル間の水の移動は、通常、標高の高いセルから低いセルへ移動するため、予め数値標高モデル(DEM)のデータに基づいて水の流路方向を決めておいてもよい。セルは、河川のセルであるか、河川でないセルかの予め設定された属性を使って、河川メッシュについては、河川水の流れを水理モデルにより計算することで効率的に計算を実行することもできる。各セルには、浸透能、最大貯留量、流路方向等のパラメータが対応付けられており、さらに、算出部103の算出結果である浸水深又は河川水位などの算出結果も対応付けられている。
【0041】
算出部103は、予測計算された河川水位と、観測された河川水位との誤差が小さくなるように、データ同化の手法を用いた予測計算を行ってもよい。例えば、アンサンブルカルマンフィルタを用いて観測水位データを予測結果に同化させる。アンサンブルカルマンフィルタは、モデルによる時間ステップが1つ先の予測と、カルマンゲインを用いたフィルタリングを繰り返し行うことで、目的の予測時間までデータ同化を繰り返し行うことができる。このように観測水位データを用いたデータ同化の手法により、河川水位の予測精度を向上させることができる。さらに、河川水位の予測精度は、浸水深の予測精度に関係するので、浸水深の予測精度の向上をももたらす。
【0042】
判定部104は、記憶部13に格納されている関心地点に該当するセル又は関心領域内のいずれかのセルの浸水深又は河川水位の予測値と記憶部13に格納されているアラート基準値とを比較することにより、予測値がアラート基準値を超えるか否かを判定する。判定部104は、関心領域が設定されている場合、関心領域内のいずれかのセルの浸水深又は河川水位の予測値が、アラート基準値を超えるか否かについて判定をする。
【0043】
生成部105は、各種の情報を生成する。例えば、生成部105は、アラート通知するメールを生成する。管理サーバ10により生成されるメールの内容には、例えば、浸水又は河川水位の予測情報を表示するサイトのURLなどのリンク情報が含まれる。
【0044】
送信制御部106は、通信部14(
図2参照)を介して各種の情報を送信する制御を行う。例えば、送信制御部106は、生成部105により生成されたアラート通知のメールをユーザ端末30に向けて送信する制御を行う。
【0045】
<管理サーバの処理の流れ>
図4は、管理サーバ10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
管理サーバ10は、ネットワーク90を介して所定の時間間隔で雨量情報を受信する(S401)。最新の気象予測情報を受信していない場合(S401でNO)は、受信するまで待機し、S401の判定を繰り返す。受信した場合(S401でYES)は、算出部103は、浸水深及び河川水位をセル単位で予測計算を実行する(S402)。管理サーバ10は、算出されたセルの浸水深や河川の水位を地図に重畳表示させた図を生成し、ユーザ端末30に送信する(S403)。ユーザ端末30は、管理サーバ10から、予測図のデータを表示させることで、ユーザは予測図を確認することができる。ここで、管理サーバ10は、Webサーバとして機能し、ユーザの使用するブラウザからの要求に対して、ブラウザに予測図のデータを返すことにより、ユーザはブラウザ上で予測図を確認するようなシステム構成であっても構わない。
【0046】
管理サーバ10は、ユーザ端末30から、予め送信され格納されていた関心地点のセル又は関心領域の全てのセルの浸水深又は河川の水位の予測値と、アラート基準値とを比較し、関心地点のセル又は関心領域のいずれかのセルの浸水深又は河川の水位の予測値がアラート基準値を超えるかを判定する(S404)。管理サーバ10は、関心地点のセル又は関心領域のいずれかのセルの浸水深又は河川の水位の予測値がアラート基準値を超えると判定すると(S404でYES)、アラート通知のメールを生成し、送信する(S405)。そして、管理サーバ10は、浸水予測又は河川予測の画面を表示する指示をユーザから受信した場合(S406)、浸水予測又は河川予測の画面をユーザ端末に送信する(S407)。これに対して、管理サーバ10は、浸水予測又は河川予測の画面を表示する指示をユーザ端末から受信しない場合(S407でNO)、ユーザ端末からの指示を待ち、S407を繰り返す。
【0047】
<具体例>
図5は、ユーザ端末に表示される予測情報としてのユーザインターフェースの具体例を示す図である。
上述のように、管理サーバ10(
図1参照)は、各セルの浸水深及び河川水位を算出し、算出したセル予測値の分布図である浸水予測図又は河川予測図を作成する。これらの予測図は、管理サーバ10からユーザ端末30に送信されて、ユーザ端末30の表示画面に表示される。
【0048】
図5で示す浸水予測の分布状況を示す浸水予測
図500には、浸水深に相当する色で配色された複数の浸水セル510が表示されている。ユーザは、浸水予測と河川予測のタブ520が用意されており、浸水予測と河川予測のタブのどちらかをクリックすることで一方の予測情報を閲覧することができる。また、時系列バー530が12時間前から36時間先まで用意されており、ユーザは、閲覧したい時間にポインタをスライドさせることで、過去12時間前から未来36時間先までのうちの任意の時間の分布状況を確認することができる。
【0049】
図6は、ユーザ端末に表示される関心地点の登録に関するユーザインターフェースの具体例を示す図である。ユーザは、予め関心のある地点を登録しておくことにより、関心地点の予測に関するアラート通知を受信することができる。関心地点の登録は、住所を入力することにより地点を特定して登録することもできる。また、緯度及び経度を入力することで地点を特定し登録することもできる。さらに、地図上でポイントを指定し登録することもできる。
図6には、関心地点の周辺の地図を含む関心地点設定画面600が表示されており、関心地点設定画面600には登録した関心地点610が表示されている。
【0050】
図7は、ユーザ端末に表示される関心領域の登録に関するユーザインターフェースの具体例を示す図である。ユーザは、予め関心のある領域を登録しておくことにより、関心領域内の予測に関するアラート通知を受けることができる。関心領域の登録は、住所を入力することにより領域を特定して登録することもできる。また、北西端と南東端の2点の緯度及び経度を入力することで2点を角とする矩形(バウンディングボックス)の関心領域を特定し登録することもできる。さらに、地図上で関心領域を複数のポイントを指定することにより登録することもできる。
図6には、関心領域の周辺の地図を含む関心領域設定画面700が表示されており、関心領域設定画面700には登録した関心領域710が表示されている。
【0051】
なお、上記の事例では、関心領域は矩形として説明したが、関心領域は矩形に限られることはなく、複数の地点で指定されるポリゴンの囲む領域として登録することもできる。関心領域のアラート判定に際しては、関心領域の境界線よりも内側のセルは全てアラート対象であり、関心領域の境界線よりも外側に位置するセルはアラート対象外であるが、関心領域の境界線上にあるセルについては、アラート対象としてもしなくても良い。セルの単位面積の半分以上を関心領域が占めている場合にアラート対象とするようにしてもよい。ポリゴンを複数設定し、複数の関心領域を設定することもできる。また、予め各セルが日本全国のどの市町村に属するかといった属性情報と関連付けておくことにより、市町村を入力した場合には、入力した市町村の行政界で囲まれる領域内に該当する全てのセルが関心領域として特定される。
【0052】
図8は、ユーザ端末に表示されるアラート条件設定に関するユーザインターフェースの具体例を示す図である。アラート条件設定画面800は、浸水深、河川水位、又は降水量の変数、時間、閾値、通知方法を指定することができる。アラート条件設定画面800では、「エリアを選択して登録」のタグが選択された状態であるので、関心領域のアラート通知の条件設定画面を表示している。本条件設定画面では、関心領域内のいずれかのセルの浸水深が36時間以内に10cmを超えると予測される場合に、アラート通知を電子メールで知らせるように設定登録されている。また、関心領域内のいずれかのセルの降水量が24時間以内に5cmを超えると予測される場合に、アラート通知を電子メールで知らせるように設定登録されている。さらに、関心領域内のいずれかのセルの河川水位が30時間以内に200cmを超えると予測される場合に、アラート通知を電子メールで知らせるように設定登録されている。このように、ユーザは、アラート基準値として、浸水深、河川水位、又は降水量の予測要素のいずれか、又は、組み合わせを指定することができる。さらに、ユーザは、同じ予測要素であっても、複数の異なるアラート基準値又は異なる予測時間を指定することも可能である。複数のアラート条件を設定した場合は、いずれかのアラート条件を満たす(OR条件)と予測される判断がされたときに、第一次アラートが通知され、複数の条件を同時に満たす(AND条件)と予測される判断がされた場合に、第二次アラートが通知される。図示していないが、これらOR条件かAND条件を明示的に指定してアラート通知の条件を設定することも可能である。上述のように、本実施形態の情報提供システムは、画一的な基準に基づいて、全てのユーザに一斉に通知されるのとは違って、ユーザ毎に設定された好ましい通知条件に従って、個別のユーザにアラートが通知される。アラートの通知方法は、電子メールの他、スラック(登録商標)やLINE(登録商標)等の通知手段を使う方法であってもよい。
【0053】
図8のアラート基準値である「ユーザにより予め設定された基準値」の入力例では、浸水深、河川水位、降水量の数値が入力されたが、確率年を入力して指定することもできる。図示していないが、例えば、確率降水量として10年が設定されている場合、アラート通知を受けたユーザは、10年に一度の頻度の大雨が予測されていることを知ることができる。降水量と同様に、浸水深、河川水位についても確率年を指定することができる。確率年に対応する確率値は、予め過去の観測値に基づき、水文量(予測要素)に適した確率密度関数を仮定して算出され、記憶部13に格納されている。判定部104は、予測値と記憶部13に格納された確率値との大小比較を実行することにより、アラート通知をするか否かを判定する。
【0054】
図9は、ユーザ端末に表示されるアラート通知の具体例を示す図である。
図8で説明したアラート条件を満たすと予測された場合、電子メール本文900に示すような内容がユーザ端末に通知される。電子メールには、登録された地点に洪水アラートが出ていること、○○県○○村周辺で18時間後の浸水予測が50cmと予測されていること、○○県○○発電所で24時間後の浸水予測が15cmと予測されていることを知らせている。ユーザ端末を確認したユーザは、例えば、メール内に河川予測図を表示するサイトのURL情報が記載されているアイコンをクリックすることで、即座にユーザ端末に
図10に示すような予測図を表示させることができる。このように、ユーザは、ユーザは常時ユーザ端末を監視しているわけではない。ユーザは、予め予測情報に基づいたアラート通知を受けることにより、急激な危険の迫っている場合に不意打ちを食らうことなく、危険を察知し、防災活動の初動を早めることができる。
図10では、関心領域710内のセルのうち、現在(又はイニシャル時刻から)18時間後にユーザの設定したアラート基準値を超えると予測されている危険セル720aと720bとが表示されている。危険セルの表示は、色又はセル外形を囲むなどユーザが危険だと認識し得る手段であればよい。ユーザは、アラート通知を受けた後に、どのセルがアラート基準値を超えているのかを容易に確認することができる。
【0055】
<他の実施の形態>
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は上述した本実施の形態に限るものではない。また、本発明による効果も、上述した本実施の形態に記載されたものに限定されない。例えば、
図1に示す情報提供システム1の構成、
図2に示す管理サーバ10のハードウェア構成、および
図3に示す管理サーバ10の制御部11の機能構成は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。上述した処理を全体として実行できる機能が
図1の情報提供システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのようなハードウェア構成および機能構成を用いるかは上述の例に限定されない。例えば、管理サーバ10の一部の機能をネットワーク90上のWebサーバが担う実施形態であってもよい。
【0056】
また、
図4に示す管理サーバ10の処理のステップの順序も例示に過ぎず、特に限定されない。図示されたステップの順序に沿って時系列的に行われる処理だけではなく、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別的に行われてもよい。また、
図5乃至
図10に示す具体例も一例に過ぎず、特に限定されない。例えば、
図5乃至
図8に示す画面に表示されたユーザインターフェースの態様は、登録情報の入力支援の一例であり、他の態様であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…情報提供システム、10…管理サーバ、11…制御部、12…メモリ、13…記憶部、14…通信部、15…操作部、16…表示部、30…ユーザ端末、90…ネットワーク、101…管理部、102…取得部、103…算出部、104…判定部、105…生成部、106…送信制御部、500…浸水予測図、510…浸水セル、520…タブ、530…時系列バー、600…関心地点設定画面、610…関心地点、700…関心領域設定画面、710…関心領域、720…危険セル、800…アラート条件設定画面、900…電子メール本文