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特開2025-15401廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程及びこれにより製造される潤滑基油
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  • 特開-廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程及びこれにより製造される潤滑基油 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015401
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程及びこれにより製造される潤滑基油
(51)【国際特許分類】
   C10G 67/04 20060101AFI20250123BHJP
   C10G 21/06 20060101ALI20250123BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20250123BHJP
   C10G 21/20 20060101ALI20250123BHJP
   C10G 45/64 20060101ALI20250123BHJP
   C10M 175/02 20060101ALI20250123BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C10G67/04
C10G21/06
C10G45/58
C10G21/20
C10G45/64
C10M175/02
C10N70:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043993
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0093261
(32)【優先日】2023-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】509349451
【氏名又は名称】エスケー エンムーブ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヨン ウック
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジュン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム・ウン キュン
(72)【発明者】
【氏名】ノ・キュン ショック
【テーマコード(参考)】
4H104
4H129
【Fターム(参考)】
4H104JA04
4H129AA02
4H129CA17
4H129CA18
4H129DA02
4H129DA06
4H129EA01
4H129EA02
4H129HA17
4H129HB03
4H129KA11
4H129KB03
4H129KC13X
4H129MA01
4H129MA07
4H129MA12
4H129MB05A
4H129MB19B
4H129NA02
4H129NA05
4H129NA17
4H129NA32
4H129NA33
(57)【要約】
【課題】廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程を提供する。
【解決手段】前記工程は、廃潤滑油を精製して精製留分を生成するステップと、前記精製留分を前処理するステップ-ここで、前処理された精製留分は30ppm未満の窒素を含む-と、前記前処理された精製留分を、未転換油(UCO)の減圧蒸留及び触媒脱蝋の前、減圧蒸留及び触媒脱蝋の後、又は前記減圧蒸留と触媒脱蝋との間に前記未転換油と配合するステップと、を含む。前記工程は、廃潤滑油を燃料油ではなく、高級潤滑基油に再生することができるため、廃潤滑油をより経済的で環境調和的に活用可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程であって、
廃潤滑油を精製して精製留分を生成するステップと、
前記精製留分を前処理するステップ-ここで、前処理された精製留分は30ppm未満の窒素を含む-と、
前記前処理された精製留分を、未転換油(UCO)の減圧蒸留及び触媒脱蝋の前、減圧蒸留及び触媒脱蝋の後、又は前記減圧蒸留と触媒脱蝋との間に前記未転換油と配合するステップと、を含む、廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項2】
前記精製留分を生成するステップは、前記廃潤滑油を遠心分離するステップ、常圧蒸留するステップ、第1及び第2減圧蒸留するステップ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項3】
前記精製留分の前処理ステップは、精製留分を溶媒抽出するステップを含む、請求項1に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項4】
前記溶媒抽出に使用される溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-Pyrrolidone)、スルホラン(Sulfolane)、DMSO、フルフラール(Furfural)、フェノール、アセトン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項5】
前記溶媒抽出は50~150℃の温度及び大気圧~5kg/cmの圧力下で行われる、請求項3に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項6】
前記溶媒抽出は1:1~10:1の溶媒対オイルの体積比下で行われる、請求項3に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項7】
前記減圧蒸留は前記触媒脱蝋の前に行われる、請求項1に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項8】
前記触媒脱蝋はEU-2ゼオライト担体を含む触媒の存在下で行われる、請求項1に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項9】
前記未転換油に対する精製留分の配合量は、全体配合原料の体積を基準に1%以上10%以下である、請求項1に記載の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程。
【請求項10】
請求項1に記載の製造工程によって製造された潤滑基油であって、
前記潤滑基油は、粘度指数が120以上であり、飽和度が90%以上である、潤滑基油。
【請求項11】
前記潤滑基油は27以上のセーボルト色(saybolt color)値を有する、請求項10に記載の潤滑基油。
【請求項12】
前記潤滑基油は99%以上の飽和度を有する、請求項10に記載の潤滑基油。
【請求項13】
前記潤滑基油の硫黄、窒素及び塩素の含有量はそれぞれ1ppm未満である、請求項10に記載の潤滑基油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程及びこれにより製造される潤滑基油に関する。
【背景技術】
【0002】
廃潤滑油は、一連の精製工程を経て、国内では全量が燃料油として使用されており、海外では一部は燃料油、別の一部は低級再生基油として使用されていた。
【0003】
通常、廃潤滑油は、添加剤を含有しており、前記添加剤は、多量の硫黄(約1000~5000ppm)、窒素(約500~5000ppm)及び塩素(約100~5000ppm)などの不純物を含有しているから、これを精製して燃料油として活用する場合、燃焼時に環境汚染を招き、低い密度と発熱量を持つため、これを燃料油として使用することは、経済面においても不利である。
【0004】
一方、一般に優れた潤滑基油は、高い粘度指数を有し、安定性(酸化、熱、UVなど)に優れるうえ、揮発性が少ない特性を有する。米国石油協会API(American Petroleum Institute)では、潤滑基油を品質に応じて下記表1のように分類している。
【0005】
【表1】
【0006】
上記分類において、グループIからグループVに行くほど潤滑基油としての品質が優れるものと評価され、その中でも、グループIII潤滑基油は、一般に高度の水添分解反応によって製造される。通常、グループIII以上の高級潤滑基油を製造するための供給原料として、燃料油水素化分解工程で燃料油に転換されずに残った重質留分である未転換油が使用され、特許文献1等にも、供給原料として未転換油を用いる高級潤滑基油の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許公告第10-1996-0013606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程及びこれにより製造される潤滑基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一観点によれば、廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程が提供され、前記工程は、廃潤滑油を精製して精製留分を生成するステップと、前記精製留分を前処理するステップ-ここで、前処理された精製留分は30ppm未満の窒素を含む-と、前記前処理された精製留分を、未転換油(UCO)の減圧蒸留及び触媒脱蝋の前、減圧蒸留及び触媒脱蝋の後、又は前記減圧蒸留と触媒脱蝋との間に前記未転換油と配合するステップと、を含むことができる。
【0010】
一実施形態によれば、前記精製留分生成ステップは、前記廃潤滑油を遠心分離するステップ、常圧蒸留するステップ、第1及び第2減圧蒸留するステップ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0011】
一実施形態によれば、前記精製留分の前処理ステップは、精製留分を溶媒抽出するステップを含むことができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記溶媒抽出に使用される溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-Pyrrolidone)、スルホラン(Sulfolane)、DMSO、フルフラール(Furfural)、フェノール、アセトン、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
一実施形態によれば、前記溶媒抽出は、50~150℃の温度及び大気圧~5kg/cmの圧力下で行われることができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記溶媒抽出は、1:1~10:1の溶媒対オイルの体積比下で行われることができる。
【0015】
一実施形態によれば、前記減圧蒸留は前記触媒脱蝋の前に行われることができる。
【0016】
一実施形態によれば、前記触媒脱蝋は、EU-2ゼオライト担体を含む触媒の存在下で行われることができる。
【0017】
一実施形態によれば、前記未転換油に対する精製留分の配合量は、全体配合減量の体積を基準に1%以上10%以下であり得る。
【0018】
一実施形態によれば、前記精製留分と前記未転換油との配合後の配合原料は、硫黄含有量が50ppm未満、窒素含有量が10ppm未満、塩素含有量が2ppm未満であり得る。
【0019】
一実施形態によれば、前述した製造工程によって製造された潤滑基油が提供され、前記潤滑基油は、粘度指数が120以上であり、飽和度が90%以上であり得る。
【0020】
一実施形態によれば、前記潤滑基油は、27以上のセーボルト色(saybolt color)値を有することができる。
【0021】
一実施形態によれば、前記潤滑基油は、99%以上の飽和度を有することができる。
【0022】
一実施形態によれば、前記潤滑基油の硫黄、窒素及び塩素の含有量はそれぞれ1ppm未満であり得る。
【発明の効果】
【0023】
本開示の廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油の製造工程によれば、廃潤滑油を燃料油ではなく、高級潤滑基油に再生することができるため、廃潤滑油をより経済的であり、環境にやさしく活用することができる。また、廃潤滑油を精製して得られる精製留分を未転換油に配合し、これを触媒脱蝋に導入し、ここで、前記精製留分(又は廃潤滑油)は、蝋成分が少ないか実質的にないので、未転換油のみを供給原料にして潤滑基油を製造する工程に比べて高い収率で潤滑基油を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態による精製留分を生成するための廃潤滑油の精製過程を示す流れ図である。
図2】一実施形態による工程流れ図である。
図3】一実施形態による工程流れ図である。
図4】一実施形態による工程流れ図である。
図5】一実施形態による工程流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願に使用された用語「未転換油(uncovnerted oil、UCO)」は、燃料油水素化分解工程で燃料油に転換されずに残った重質留分を指す。
【0026】
本願に使用された用語「廃潤滑油」は、使用された後の潤滑油を指すものであり、通常、潤滑油は、潤滑基油に様々な添加剤が添加されるが、前記添加剤は、潤滑基油としての使用に適していない不純物を多量に含んでいるので、廃潤滑油も不純物を多量に含有することができる。例えば、廃潤滑油は、1000~5000ppmの硫黄、500~5000ppmの窒素、100~5000ppmの塩素、及びその他の潤滑作用中に流入できる金属不純物などを含むことができる。また、廃潤滑油は、0.8~0.9の比重、2~20cStの100℃での動粘度、60~150の粘度指数、-18~12℃の流動点、及び10wt%以上の芳香族含有量を有し、ASTMを基準に約8~10の黒色を示し、沈殿物(Sediment)の含有量が高く、一部の水分を含むことができる。
【0027】
本願に使用された用語「精製留分」は、前記廃潤滑油が遠心分離、常圧蒸留、第1及び第2減圧蒸留、又はこれらの組み合わせに導入された後に得られる留分を指すもので、廃潤滑油に比べて減少した不純物含有量を有する。例えば、前記精製留分は、1000ppm未満の硫黄含有量、500ppm未満の窒素含有量、2000ppm未満の塩素含有量を有することができる。
【0028】
本発明の一観点によれば、廃潤滑油精製留分を活用した潤滑基油製造工程が提供され、前記工程は、廃潤滑油を精製して精製留分を生成するステップを含む。
【0029】
前記廃潤滑油の精製による精製留分生成ステップは、廃潤滑油を遠心分離するステップ、常圧蒸留するステップ、第1及び第2減圧蒸留するステップ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0030】
前記遠心分離ステップは、廃潤滑油に存在する不純物を沈殿によって分離して除去するためのものであって、約100rpm~3000rpmの回転速度で行われることができる。前記遠心分離の代わりに、自然沈殿による不純物の沈殿も可能であるが、分離速度及び性能の観点から遠心分離がより好ましい。
【0031】
遠心分離によって密度が高く、廃潤滑油に混和されていない固相不純物が一次的に除去された後の廃潤滑油は、大気圧下での常圧蒸留に導入できる。常圧蒸留は、約50℃~350℃の温度で行われ、常圧蒸留温度が増加するにつれて、廃潤滑油中の留分が沸点の低い順に蒸留されて分別される。前記常圧蒸留ステップで分別される留分のうち、約150℃以上の沸点を有する留分が精製留分生成のために収集され得る。その他、150℃未満の沸点を有する留分は、以後の潤滑基油製造工程の供給原料ではなく、燃料油としての使用といった他の用途として使用できる。
【0032】
常圧蒸留ステップで収集された留分は、以後、第1減圧蒸留に導入できる。これは、常圧蒸留ステップで得られた前記留分のより詳細な分別のためのものであって、大気圧下で前記留分の詳細分別のために蒸留温度を増加させる場合、留分のクラッキングが発生する可能性があるので、減少した圧力及び温和な温度条件で行われることができる。前記第1減圧蒸留は、10torr以下の圧力及び150~350℃の温度で行われることができる。前記第1減圧蒸留ステップのうち、300~550℃の沸点を有する留分が収集されるが、これを減圧精製油と呼ぶ。前記減圧精製油は、約0.8~1.0の比重、100℃の温度での約4~6cStの動粘度、約80~150の粘度指数(viscosity index、VI)、及び約-20℃~0℃の流動点を有することができる。また、前記減圧精製油は、約200~1000ppmの硫黄含有量、約200~500ppmの窒素含有量及び約30~2000ppmの塩素含有量を有するため、前記廃潤滑油に比べて減少した不純物含有量を有することができる。前記減圧精製油は、ASTMを基準に約5~6の、褐色に近い色相を示し、前記遠心分離及び2ステップの蒸留によって、前記減圧精製油は、精製の前に廃潤滑油に存在していた沈殿物及び水分の含有量よりも大きく減少した沈殿物及び水分含有量を有することができる。
【0033】
第1減圧精製の後に得られた減圧精製油は、第2減圧精製ステップに導入できる。第2減圧精製は、減圧精製油に存在しうる軽質でありながら以後の溶媒抽出に使用される溶媒と重畳する範囲の沸点を有する留分を除去するためのステップである。前記第2減圧蒸留は、10torr以下の圧力及び150~300℃の温度で行われることができる。第2減圧蒸留によって得られる精製留分は、100℃の温度で約4.5~6cStの100℃での動粘度、約110~150の粘度指数、及び約-20℃~-8℃の流動点を有することができる。また、前記精製留分は、約200~500ppmの硫黄含有量、約200~400ppmの窒素含有量及び約30~200ppmの塩素含有量を有するため、前記減圧精製油に比べて減少した不純物含有量を有することができる。すなわち、第2減圧蒸留ステップは、以後の溶媒抽出ステップで使用される溶媒と重畳する沸点を有する留分を除去することにより、溶媒抽出以後に使用された溶媒の回収の際に回収される溶媒の純度を高く維持することができるようにし、供給原料である精製留分の不純物含有量をさらに減少させることができる。また、第2減圧蒸留ステップは、基油の製造に要求されない低い沸点を有する留分を前もって除去し、溶媒抽出ステップに導入されるフィードの量を低減して工程負荷(load)を減少させることができる。
【0034】
前記工程は、精製留分を前処理するステップを含むことができる。前記前処理は、精製留分を未転換油との配合によって潤滑基油製造工程に導入する前に、精製留分が工程及び触媒に及ぼす影響を最小限に抑えるために精製留分をさらに処理するステップを意味するものであり、前記前処理は、精製留分を溶媒抽出するステップを含むことができる。
【0035】
精製留分の溶媒抽出は、混合槽で精製留分及び溶媒を混合した後、これを静置させることにより、相分離させて得ようとする留分が主成分である相を得、不純物が多量に含有された相を除去するステップである。前記溶媒抽出に使用される溶媒は、精製留分中のオイル成分よりも不純物との親和性が高い溶媒であり得る。一実施形態において、前記溶媒抽出に使用される溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-Pyrrolidone、NMP)、スルホラン(Sulfolane)、DMSO、フルフラール(Furfural)、フェノール、アセトン、又はこれらの組み合わせを含むことができる。前記溶媒は、不純物に対する親和度が高く、精製留分に対する親和度が低いため、精製留分と相分離され、以後の溶媒分離のために揮発度の差があれば、制限なく使用できる。
【0036】
前記精製留分の溶媒抽出は、約50~150℃、好ましくは約55~120℃、より好ましくは約60~100℃の温度条件下で行われることができる。また、前記精製留分の溶媒抽出は、大気圧~5kg/cm、好ましくは1~4kg/cm、より好ましくは2~3kg/cmの圧力下で行われることができる。上述した条件での溶媒抽出は、精製留分内の不純物含有量の減少、特に窒素含有量の減少に効果的であり、精製留分内の不純物含有量の減少は、以後の工程ステップの運転条件を温和(mild)にして潤滑基油製造工程全体の効率を増加させることができる。
【0037】
また、前記精製留分の溶媒抽出ステップで使用される溶媒対精製留分中のオイル成分の体積比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~8:1、2:1~7:1、2:1~6:1、2:1~5:1、3:1~8:1、3:1~7:1、3:1~6:1、4:1~8:1、4:1~7:1、及び5:1~8:1であり得る。前記精製留分の溶媒抽出ステップで使用される溶媒対精製留分中のオイル成分の体積比は、最も好ましくは1:1~1.5:1であり得る。前記体積比は、溶媒抽出による不純物の除去水準と、以後に前処理された精製留分から生成される潤滑基油の収率のバランスの観点から好ましい。
【0038】
前記溶媒抽出ステップ後の精製留分は、0.8~0.9の比重、4~6cStの100℃での動粘度、110~130の粘度指数、-18~-3℃の流動点を有することができ、150ppm未満の硫黄含有量及び20ppm未満の塩素含有量を有することができる。
【0039】
特に、溶媒抽出ステップ後の精製留分、すなわち、前処理された精製留分は、30ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満の窒素を含むことができる。このように、前処理された精製留分は、溶媒抽出によってより改善された性状及び減少した不純物含有量を有することができ、ASTMを基準に約2~4の薄茶色を示し、精製留分に比べてより減少した沈殿物含有量を有することができる。
【0040】
前記工程は、未転換油と前記前処理された精製留分とを配合するステップを含み、前記配合ステップは、未転換油に対する減圧蒸留及び触媒脱蝋ステップの前;減圧蒸留及び触媒脱蝋ステップの後、又は減圧蒸留と触媒脱蝋工程との間で行われる。さらに、前記工程は、前処理されていない精製留分を未転換油に対する減圧蒸留及び触媒脱蝋ステップの前に未転換油と配合するステップを含むことができる。各場合の上記工程の構成は、例示的に次の通りであるが、これに限定されるものではない。
【0041】
モデル1.前処理された精製留分を未転換油に対する減圧蒸留及び触媒脱蝋の前に未転換油と配合する場合
図2を参照すると、前処理として溶媒抽出に導入された後の精製留分は、未転換油と配合された後、減圧蒸留及び触媒脱蝋ステップに導入される。モデル1の工程によれば、前処理された廃潤滑油精製留分が減圧蒸留ステップで沸点分布によって分別され、最終生成物であるグループIII以上の潤滑基油全製品(図2の70N、100N及び150N画分)に全て分散されることができる。
【0042】
モデル2.前処理された精製留分を未転換油に対する減圧蒸留と触媒脱蝋との間で未転換油と配合する場合
図3及び図4を参照すると、前処理として溶媒抽出ステップに導入された後の精製留分は、減圧蒸留によって分別された未転換油の成分の一部と配合されることができる。例えば、前記前処理された精製留分は、減圧蒸留によって分別された70D(Distillate)画分と配合されるか(図4)、或いは減圧蒸留によって分別された100及び150D(Distillate)画分と配合されることができる(図3)。上述のように、前処理された廃潤滑油精製留分を未転換油の減圧蒸留後に分別された各画分に個別に配合する場合、特定の沸点を有する未転換油の画分に精製留分を配合することにより、所望の沸点を有する潤滑基油を製造することが可能であり、各画分に精製留分を配合し、これを触媒脱蝋するステップにおいて、いずれか一つの配合原料の処理に問題があっても、これが他の配合原料の処理による潤滑基油製造工程に影響を及ぼさないという利点を持つことができる。
【0043】
前記工程構成における全体配合原料に対する前処理された精製留分の配合量は、体積を基準に約1%~10%であり得る。全体配合原料に対する前処理された精製留分の配合量は、体積を基準に、好ましくは約1.2%~8%、より好ましくは約1.5%~5%であり得る。全体配合原料に対する前処理された精製留分の配合量は、体積を基準に、最も好ましくは約2%~4%であり得る。前処理された精製留分は、蝋成分を殆ど含有しないため、前述したように流動点が-18℃~-3℃と低く、約42℃の高い流動点を有する未転換油と配合する場合、配合原料の流動性が増加して低温においても移送しやすいが、前処理された精製留分の配合量が1体積%未満である場合には、このような流動性増加効果が大きくないため、工程の各ステップにおける移送が容易ではなく、前処理された精製留分の配合量が10%を超える場合、精製留分に含有された不純物及び低い粘度指数により、配合原料が高級潤滑基油の製造原料として適さない可能性がある。
【0044】
上述のように、低い不純物含有量を有する前処理された精製留分を未転換油と配合して得られた配合原料も低い不純物含有量を有し、これは以後の脱蝋ステップで触媒に加わる負担を減らすことができる。すなわち、配合原料の低い不純物含有量は、脱蝋ステップの工程温度を下げることができるという利点を有する。
【0045】
前記モデル1及び2において、前記未転換油と精製留分との配合によって生成された配合原料は、0.8~0.9の比重、3~8cStの100℃での動粘度、120~140の粘度指数、12~45℃の流動点を有し、20ppm未満の硫黄含有量、5ppm未満の窒素含有量及び1ppm未満の塩素含有量を有する。すなわち、前記モデル1及び2の配合原料は、流動点を除いた性状においてグループIIIの潤滑基油と類似している。また、前記配合原料は、ASTMを基準に約0.5~1の黄色を示す。
【0046】
モデル3.前処理されていない精製留分を未転換油の減圧蒸留及び触媒脱蝋の前に未転換油と配合する場合
図5を参照すると、前処理ステップを経ていない精製留分と未転換油とが配合された配合原料が、減圧蒸留ステップに導入されて沸点によって分別され、分別された各画分が触媒脱蝋ステップに導入されるため、それぞれの潤滑基油生成物が得られることができる。このように精製留分を前処理せずに未転換油と配合する場合、工程を簡素化することができるという利点があるが、配合原料中の不純物含有量の制御のために、精製留分の配合量を上記のモデル1及び2に比べて低く調節しなければならない。
【0047】
モデル3の場合、精製留分が溶媒抽出などの前処理ステップを経ないため、配合原料の不純物含有量がモデル1及び2に比べて高く、これは、全体高級潤滑基油製造工程の工程制約要素に該当する。モデル3において、未転換油に対する精製留分の配合量は、体積を基準に5%以下に制限される。
【0048】
また、モデル3の配合原料は、前記モデル1及び2の配合原料と類似した性状を有するが、100~300ppmの硫黄含有量、50~100ppmの窒素含有量及び5~20ppmの塩素含有量を有するため、モデル1及び2に比べて高い不純物含有量を示す。
【0049】
前記未転換油に対する減圧蒸留ステップ(本ステップの前に未転換油と精製留分とが配合される場合には、配合原料に対する減圧蒸留ステップに該当)は、前記触媒脱蝋ステップの前に行われることができる。通常、触媒脱蝋の後に得られる生成物を減圧蒸留して所望の沸点を有する潤滑基油を分別して得ることが一般的な工程手順であるが、本発明の工程では、減圧蒸留を先に行い、所望の沸点を有する画分のみを触媒脱蝋ステップに導入することにより、目的とする沸点を有する製品のみを生成することが可能であり、製品の生産量調節が可能であるだけでなく、工程規模をより縮小させることにより、工程の運転費用を低減することができる。
【0050】
前記未転換油に対する減圧蒸留ステップは、精製留分生成ステップにおける廃潤滑油の減圧蒸留と同一の工程条件で行われることができ、これにより未転換油又は配合原料が沸点によって分別される。
【0051】
前記触媒脱蝋は、未転換油又は配合原料に含有された蝋成分を選択的に異性化(isomerization)させて低温性状を改善し(低い流動点の確保)、高い粘度指数(VI)を維持することができるようにする。本発明では、前記触媒脱蝋工程に使用される触媒の改善を介して効率及び収率の向上を達成しようとする。前記触媒脱蝋ステップは、脱蝋反応及び以後の水添仕上げ(hydrofinishing)反応を含むことができる。
【0052】
一般に、触媒脱蝋反応の主要反応は、異性化反応によって低温性状の改善のためにN-パラフィンをイソパラフィンに転換することであるが、ここに使用される触媒は、主に二機能性(Bi-functional)触媒であると報告されている。二機能性触媒は、水素化/脱水素化反応のための金属活性成分(Metal Site)と、カルベニウムイオン(carbenium ion)を介した骨格異性化反応(skeletal isomerization)のための酸点を有する担体(Acid site)の2つの活性成分から構成されるが、ゼオライト(Zeolite)構造の触媒は、アルミノシリケート(Aluminosillicate)担体と、第8族金属及び第6族金属の中から1つ以上選択される金属とから構成されることが一般的である。
【0053】
本発明で使用可能な脱蝋反応触媒は、分子ふるい(Molecular Sieve)、アルミナ及びシリカ-アルミナから選択される酸点を有する担体と、周期表の第2族、第6族、第9族及び第10族の元素から選択される1つ以上の水素化機能を有する金属とを含み、特に第9族及び第10族(すなわち、VIII族)金属の中ではCo、Ni、Pt、Pdが好ましく、第6族(すなわち、VIB族)金属の中ではMo、Wが好ましい。
【0054】
前記酸点を有する担体の種類としては、分子ふるい、アルミナ、シリカ-アルミナなどを含み、その中でも、分子ふるいは、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)、SAPO、ALPO等をいうものであって、酸素10員環(10-membered Oxygen Ring)を有する中細孔(Medium Pore)分子ふるい(SAPO-11、SAPO-41、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48など)と、酸素12員環を有する大細孔(Large Pore)分子ふるいが使用できる。
【0055】
特に、本開示では、好ましくは、担体として相転移程度の調節されたEU-2ゼオライトを使用することができる。純粋なゼオライトが生成された後に合成条件が変化するか、或いは水熱合成条件が同一であっても一定時間を超えて合成が持続されると、合成されたゼオライト結晶がより安定な相(Phase)に徐々に転移を起こす場合があるが、このような現象をゼオライトの相転移(Phase Transformation)といい、前記ゼオライトの相転移程度に応じて改善された異性化選択性能を示し、これを用いた触媒脱蝋反応においても優れた性能を示すことができることを確認した。
【0056】
前記工程によって製造される潤滑基油は、前述したAPI分類においてグループIII以上の等級を有する高級潤滑基油であり得る。より具体的には、前記潤滑基油は、粘度指数が120以上、好ましくは120~140、120~135、120~130、120~125、125~140、125~135、125~130、130~140、及び130~135であり、飽和度が90%以上、好ましくは91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、及び99%以上であり得る。
【0057】
また、前記潤滑基油は、硫黄、窒素及び塩素などの不純物の含有量がそれぞれ1ppm以下であって、不純物を殆ど含有しないことができる。
【0058】
前記潤滑基油は、ASTM D156に準拠して測定された、27以上のセーボルト色(Saybolt color)を有することができる。前記セーボルト色の値が27以上である場合、ウォーターホワイト(Water White)等級の安定性を有する潤滑基油として取り扱われる。ウォーターホワイト(Water White)等級の潤滑基油は、1ppm未満の硫黄及び窒素の含有量を有し、飽和度が99%以上であり、芳香族含有量が1%未満であって、通常のAPIグループIIIの潤滑基油よりもさらに安定な潤滑基油に該当する。
【0059】
前記潤滑基油は、ASTM D2008に準拠して測定された、2.5以下のUV260~350nmの吸光度及び0.7以下のUV325nmの吸光度を示すことができる。ここで、260~350nmの波長に対する吸光度は、3以上の芳香族環を有する成分を含有するということを示し、325nmの波長に対する吸光度は、3~7の芳香族環を有する成分を含有するということを示すが、前記潤滑基油は、これらの波長に対する低い吸光度を有するので、芳香族含有量が少なく、これにより高い安定性を有する。
【0060】
前記工程の各ステップにおける例示的なオイルの性状及び不純物含有量は、下記表2の通りである。
【0061】
【表2】
【0062】
以下、本開示の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本開示をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本開示は、これに限定されるものではない。
【0063】
実施例
1.本発明の工程によって製造された潤滑基油の性状及び特性の測定
約2000ppmの硫黄含有量、約1500ppmの窒素含有量及び約1500ppmの塩素含有量を有する廃潤滑油を約300rpmの速度で遠心分離し、これを常圧蒸留、及び第1及び第2減圧蒸留して精製留分を得た。得られた精製留分を溶媒抽出して、体積を基準に2.3%の配合量で、前述したモデル1のように未転換油と配合し、減圧蒸留及び触媒脱蝋して潤滑基油を得た。ここで、前記常圧蒸留は、50℃~350℃の温度及び大気圧下で行われた。前記第1及び第2減圧蒸留の工程条件は、下記表3及び表4の通りである。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
前記溶媒抽出の工程条件は、下記表5の通りである。
【0067】
【表5】
【0068】
また、前記触媒脱蝋は、300℃の温度及び150kg/cmの圧力下で、EU-2ゼオライトを担体とする水素化触媒の存在下で行われた。上記の工程のうち、モデル1の構成を有する工程によって製造された潤滑基油に対して性状及び種々の特性を測定した。測定の結果、前記潤滑基油は0.84の比重、7.3cStの100℃での動粘度、129の粘度指数(VI)及び-33℃の動粘度を示し、硫黄、窒素及び塩素の含有量がそれぞれ1ppm未満であって、不可避な微量を除いた不純物を殆ど含有していない。上記事項の他に、前記潤滑基油に対して測定された特性は、下記表6の通りである。
【0069】
【表6】
【0070】
前記潤滑基油は、最小120の粘度指数及び最小95%の飽和度を有するため、前記表1におけるグループIII潤滑基油の条件を満たすことが分かった。前記潤滑基油は、肉眼で評価したとき、明るくてきれいな色であり、ASTM D156に準拠して測定された27以上のセーボルト色(Saybolt Color)を示した。すなわち、前記潤滑基油は、ウォーターホワイト(Water white)等級を有する潤滑基油であって、高温での高い熱安定性を有する。
【0071】
また、前記潤滑基油は、260~350nmの波長を有するUV、及び特に325nmの波長を有するUVに対してASTM D2008に準拠して測定された最大3.0(325nmの波長に対しては最大1.0)の低い吸光度を示すため、UVに対する安定性が高いことを確認することができる。
【0072】
2.廃潤滑油精製留分の配合有無による潤滑基油の収率評価
廃潤滑油の精製留分を未転換油に配合する以外は、前記実施例1と同様の工程条件で潤滑基油を得て、その収率を前記実施例1の収率と比較した結果は、下記表7の通りである。
【0073】
【表7】
【0074】
上述したように、廃潤滑油精製留分を未転換油に配合した配合原料を供給原料にして潤滑基油を製造する場合、未転換油のみを供給原料とする場合と同等である或いは微細に高い収率を示した。これは、未転換油が約15%のN-パラフィンを含有するのに対し、精製留分は、N-パラフィンなどの蝋成分を全く含有しないことに起因した結果と考えられる。このように、一定量の廃潤滑油精製留分を未転換油に配合してこれを潤滑基油製造の供給原料として使用する場合、最終生成物である潤滑基油の安定性及び収率が増加することができる。
図1
図2
図3
図4
図5