(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154019
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】循環システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
A01G9/24 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056787
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】520122976
【氏名又は名称】株式会社シーナ・コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】524123399
【氏名又は名称】スカイウォータージャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】世良 友識
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029XA03
2B029XA10
(57)【要約】
【課題】水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域であっても、植物工場を実現可能な循環システム1を提供できるようにする。
【解決手段】本願発明の循環システム1は、栽培装置6を内部に収容した閉鎖系施設2と、収集した空気中の水蒸気を水として取り出す大気水生成装置3と、栽培装置6の植物Pに潅水を行う潅水装置4とを備える。大気水生成装置3の装置給気口19と装置排気口20との両方を閉鎖系施設2内に臨ませて、大気水生成装置3を介して閉鎖系施設2内の室内空気を循環させるように構成する。潅水装置4は、大気水生成装置3にて抽出された水を栽培装置6の植物Pに散布するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培装置を内部に収容した閉鎖系施設と、収集した空気中の水蒸気を水として取り出す大気水生成装置と、前記栽培装置の植物に潅水を行う潅水装置とを備えており、
前記大気水生成装置の装置給気口と装置排気口との両方を前記閉鎖系施設内に臨ませて、前記大気水生成装置を介して前記閉鎖系施設内の室内空気を循環させるように構成されており、前記潅水装置は、前記大気水生成装置にて抽出された水を前記栽培装置の植物に散布するように構成されている、
循環システム。
【請求項2】
養殖水槽を内部に収容した閉鎖系施設と、収集した空気中の水蒸気を水として取り出す大気水生成装置と、前記養殖水槽に水を供給する給水装置とを備えており、
前記大気水生成装置の装置給気口と装置排気口との両方を前記閉鎖系施設内に臨ませて、前記大気水生成装置を介して前記閉鎖系施設内の室内空気を循環させるように構成されており、前記給水装置は、前記大気水生成装置にて抽出された水を前記養殖水槽に供給するように構成されている、
循環システム。
【請求項3】
前記大気水生成装置は、前記閉鎖系施設内に配置されている、
請求項1または2に記載した循環システム。
【請求項4】
前記大気水生成装置にて抽出された水を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の水位を検出する貯留槽水位センサと、前記閉鎖系施設外の室外空気と前記室内空気との熱交換を行う熱交換器と、コントローラとを備えており、
前記熱交換器は、前記室外空気を前記熱交換器に取り入れて前記閉鎖系施設内に供給する給気ブロワと、前記室内空気を前記熱交換器に取り入れて前記閉鎖系施設外に排出する排気ブロワと、前記熱交換器に取り入れる前記室外空気の流量を調節する外気ダンパーと、前記熱交換器から排出する室内空気の流量を調節する排気ダンパーとを有しており、
前記コントローラは、前記貯留槽水位センサの検出値に基づき、前記外気ダンパーおよび前記排気ダンパーを開閉させて前記給気ブロワおよび前記排気ブロワを作動または停止させる、
請求項1または2に記載した循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、植物工場や陸上養殖を実現可能な循環システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な人口増加や食の安全意識の高まりから、露地栽培等に不向きな土地であっても農作物を安全かつ計画的に栽培することが可能な植物工場の技術に注目が集まっている(例えば特許文献1等参照)。また同様に、例えば地下水や上水道等の水源から離れた場所であっても設置することが可能な陸上養殖の技術も有望視されている(例えば特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178598号公報
【特許文献2】特許第6784879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば砂漠や乾燥地域のように、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域において、上記技術を導入すれば、きわめて有意義なものになると解される。しかし、この種の地域では一般的に水の供給が難しいため、水の定期的な補給を必要不可欠とする上記技術をそのまま採用できないという問題があった。
【0005】
一方、大気空気から水を生成する大気水生成装置が最近注目されている。この種の大気水生成装置では、水蒸気を含む空気の温度を露点温度より低くして水蒸気を強制的に凝縮させ、液化した水を収集する。空気中には常に水蒸気が含まれているから、空気中の水蒸気を液体の水に変える大気水生成装置は、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域での水問題を解消する方策の一つとして期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上記のような現状を検討して、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域であっても、植物工場や陸上養殖を実現可能な循環システムを提供することを技術的課題としたものである。
【0007】
請求項1の発明に係る循環システムは、栽培装置を内部に収容した閉鎖系施設と、収集した空気中の水蒸気を水として取り出す大気水生成装置と、前記栽培装置の植物に潅水を行う潅水装置とを備えており、前記大気水生成装置の装置給気口と装置排気口との両方を前記閉鎖系施設内に臨ませて、前記大気水生成装置を介して前記閉鎖系施設内の室内空気を循環させるように構成されており、前記潅水装置は、前記大気水生成装置にて抽出された水を前記栽培装置の植物に散布するように構成されているというものである。
【0008】
請求項2の発明に係る循環システムは、養殖水槽を内部に収容した閉鎖系施設と、収集した空気中の水蒸気を水として取り出す大気水生成装置と、前記養殖水槽に水を供給する給水装置とを備えており、前記大気水生成装置の装置給気口と装置排気口との両方を前記閉鎖系施設内に臨ませて、前記大気水生成装置を介して前記閉鎖系施設内の室内空気を循環させるように構成されており、前記給水装置は、前記大気水生成装置にて抽出された水を前記養殖水槽に供給するように構成されているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した循環システムにおいて、前記大気水生成装置は、前記閉鎖系施設内に配置されているというものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載した循環システムにおいて、前記大気水生成装置にて抽出された水を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の水位を検出する貯留槽水位センサと、前記閉鎖系施設外の室外空気と前記室内空気との熱交換を行う熱交換器と、コントローラとを備えており、前記熱交換器は、前記室外空気を前記熱交換器に取り入れて前記閉鎖系施設内に供給する給気ブロワと、前記室内空気を前記熱交換器に取り入れて前記閉鎖系施設外に排出する排気ブロワと、前記熱交換器に取り入れる前記室外空気の流量を調節する外気ダンパーと、前記熱交換器から排出する室内空気の流量を調節する排気ダンパーとを有しており、前記コントローラは、前記貯留槽水位センサの検出値に基づき、前記外気ダンパーおよび前記排気ダンパーを開閉させて前記給気ブロワおよび前記排気ブロワを作動または停止させるというものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によると、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域であっても、空気中の水蒸気を有効利用して、植物工場や陸上養殖を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の循環システムを示す概略説明図である。
【
図2】大気水生成装置の冷媒回路を説明する概略説明図である。
【
図3】循環システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態の循環システムを示す概略説明図である。
【
図6】循環システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。図面には好ましい実施形態を示しているが、多くの異なる形態で実施することが可能であり、本願明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。
【0014】
はじめに、
図1および
図2を参照しながら、第1実施形態の循環システム1の概要について説明する。第1実施形態の循環システム1は、栽培装置としての栽培棚6を内部に収容した閉鎖系施設2と、収集した空気中の水蒸気を水として取り出す大気水生成装置3と、栽培棚6の各植物Pに潅水を行う潅水装置4とを備えている。閉鎖系施設2は、例えば発泡ポリスチレンや発泡ウレタン製等のボード材によって屋根、壁および床を取り囲んでなる閉鎖系の建屋である。閉鎖系施設2の気密性および断熱性は、きわめて高いものである。
図1では閉鎖系施設2を概念的に二点鎖線で表し、出入口や窓の記載を省略している。
【0015】
図1および
図2に示す大気水生成装置3は、水蒸気を含む空気の温度を露点温度より低くして水蒸気を強制的に凝縮させ水を抽出するものである。大気水生成装置3は、圧縮機12、凝縮器13、膨張弁14および蒸発器15を冷媒配管16で閉回路状に接続した冷媒回路11と、大気水生成装置3内に空気を取り込む蒸発器ファン17と、大気水生成装置3外へ空気を排出する凝縮器ファン18とを備えている。第1実施形態の大気水生成装置3は、閉鎖系施設2内に配置されている。すなわち、大気水生成装置3は、作動環境のよい場所に置かれるため、安定的に作動でき故障しにくい。
【0016】
圧縮機12は、冷媒配管16内の冷媒を圧縮するものである。凝縮器13は、凝縮器13を通過する空気を用いて、圧縮した冷媒を冷却して液化させるものである。膨張弁14は、液化した冷媒を断熱膨張させるものである。蒸発器15は、蒸発器15を通過する空気を用いて、膨張した冷媒を加熱して蒸発させるものである。
【0017】
冷媒回路11、蒸発器ファン17および凝縮器ファン18は、略箱型の筐体10内に配置されている。筐体10には、筐体10内外を連通させる装置給気口19および装置排気口20を開口させている。装置給気口19には、蒸発器15を介して蒸発器ファン17を対峙させている。装置排気口20には、凝縮器ファン18を介して凝縮器13を対峙させている。筐体10内のうち蒸発器15の下方には、蒸発器15で強制的に凝縮させ液化した水を受けるドレンパン21が配置されている。ドレンパン21内には、ドレンパン21の水位を検出するドレンパン水位センサ22が設けられている。なお、筐体10内には、凝縮器13周辺の温度を検出する凝縮器温度センサ23と、蒸発器15周辺の温度を検出する蒸発器温度センサ24とが配置されている。
【0018】
主に蒸発器ファン17の駆動にて筐体10外から装置給気口19を経て筐体10内に取り込まれた空気は、蒸発器15および凝縮器13を通過したのち、主に凝縮器ファン18の駆動にて装置排気口20から筐体10外に排出される。ここで、圧縮機12から吐出された冷媒は、凝縮器13から膨張弁14を経て蒸発器15に順次に流れて、圧縮機12に戻るという冷房サイクルが実行される。
【0019】
すなわち、冷媒配管16内の冷媒は、蒸発器15の箇所を流れる際に、蒸発器15を通過する空気から熱を奪って蒸発する。このとき、蒸発器15表面は、露点温度より低い温度に冷やされ、通過中の空気に含まれる水蒸気は、蒸発器15表面に結露し、水となって下方のドレンパン21に滴下して回収される。なお、蒸発器15を通過して冷却された空気は、凝縮器13を通過する際に、圧縮された冷媒から熱を奪ってから、装置排気口20経由で筐体10外に排出される。
【0020】
第1実施形態では、大気水生成装置3(筐体10)の装置給気口19および装置排気口20の両方を閉鎖系施設2内に臨ませている。この場合、閉鎖系施設2内に大気水生成装置3が配置されているため、筐体10の装置給気口19および装置排気口20は、両方とも当然に、閉鎖系施設2内に位置している。換言すると、閉鎖系施設2内と大気水生成装置3の筐体10内とは、装置給気口19および装置排気口20を介して連通している。
【0021】
閉鎖系施設2内の室内空気は、主に蒸発器ファン17の駆動にて装置給気口19から筐体10内に取り込まれ、蒸発器12および凝縮器14を通過したのち、主に凝縮器ファン18の駆動にて装置排気口20から閉鎖系施設2内に戻される。すなわち、閉鎖系施設2内の室内空気は、大気水生成装置3を介して循環するように構成されている。このため、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域であっても、閉鎖系施設2内の室内空気中の水蒸気を有効利用して水を調達できる。なお、大気水生成装置3を閉鎖系施設2外に配置した場合、装置給気口19と装置排気口20とにそれぞれダクトを連結し、これらダクトの先端開口を閉鎖系施設2内に臨ませるという構成にすれば、大気水生成装置3を通じて閉鎖系施設2内の室内空気を循環させることが可能である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の循環システム1は、大気水生成装置3にて抽出された水を貯留する貯留槽5を備えている。第1実施形態では、閉鎖系施設2外に貯留槽5が配置されている。閉鎖系施設2のサイズが許せば、貯留槽5を閉鎖系施設2内に配置してよいことは言うまでもない。なお、貯留槽5の容積は、閉鎖系施設2内の水蒸気循環量(水蒸気必要量)に対して十分余裕のある大きさを確保しておくのが望ましい。貯留槽5内には、貯留槽5の水位を検出する貯留槽水位センサ25が設けられている。
【0023】
貯留槽5には、大気水生成装置3のドレンパン21につながるドレン回収管26が接続されている。ドレン回収管26の中途部には、上流側から順に、可変式のドレン開閉弁27と、ドレンパン21からの水をろ過するろ過器28と、ドレンパン21からの水を貯留槽5に供給するドレンポンプ29とが設けられている。なお、例えば水道管等の水供給源Wにアクセス可能ならば、当該水供給源Wに連通する給水管30を貯留槽5に接続してもよい。この場合、給水管30の中途部には、可変式の給水開閉弁31が設けられる。
【0024】
第1実施形態では、ドレンパン水位センサ22がドレンパン21の上限水位まで水が貯留されたことを検出すると、後述するコントローラ8がドレン開閉弁27を開放してドレンポンプ29を作動させ、ドレンパン21の水を貯留槽5に自動的に供給するように構成されている。そして、ドレンパン水位センサ22がドレンパン21の下限水位まで水が放出されたことを検出すると、コントローラ8がドレンポンプ29の作動を停止させてドレン開閉弁27を閉止し、ドレンパン21から貯留槽5への水の供給が停止するように構成されている。
【0025】
一方、閉鎖系施設2内には、栽培装置の一例としての栽培棚6が配置されている。栽培棚6には、上下多段に棚板32が設けられている。各棚板32上には、例えばトレイ状またはポット状の栽培容器33が配置されている。各栽培容器33内の培地に植物Pが植えられている。各栽培容器33には、内部の培地に含まれる水分量を検出する培地水分量センサ34が配置されている。培地水分量センサ34の種類は特に限定しないが、例えば培地に差し込んで、培地の抵抗値や誘電率等から含水率を計測するもの等を適用すれば好適である。
【0026】
第1実施形態では、栽培棚6の各棚段に対応して、各栽培容器33の植物Pに光を照射する照明装置35が配置されている。各照明装置35は、例えばLED光源群を有するLEDモジュールで構成されている。
【0027】
さて、栽培棚6の各植物Pに潅水を行う潅水装置4は、貯留槽5から閉鎖系施設2内に延びる散水本管36を備えている。散水本管36は、ドレン回収管26とは別個に、貯留槽5に接続されている。散水本管36の下流側には、栽培棚6の各棚段に対応した複数の散水分岐管37が分岐接続されている。各散水分岐管37の下流先端部には、各栽培容器33内の培地や植物Pに水を散布する散水ノズル38が設けられている。散水本管36の中途部には、上流側から順に、可変式の散水開閉弁39と、貯留槽5からの水を後述する各散水ノズル38に向けて供給する散水ポンプ40とが設けられている。各散水分岐管37の中途部には、可変式の潅水制御弁41が設けられている。
【0028】
第1実施形態では、各栽培容器33の植物Pの生育条件および各培地水分量センサ34の検出値に基づき、コントローラ8が散水開閉弁39や各灌水制御弁41を開放して散水ポンプ40を作動させ、貯留槽5の水を各栽培容器33の植物Pに散布するように構成されている。貯留槽5の水は基本的に、大気水生成装置3にて抽出された水である。従って、第1実施形態の潅水装置4は、大気水生成装置3にて抽出された水を各栽培容器33の植物Pに散布する構成になっている。
【0029】
例えばいずれかの培地水分量センサ34の検出値が設定下限値を下回ると、コントローラ8が散水開閉弁39や各灌水制御弁41を開放して散水ポンプ40を作動させ、対応する栽培容器33の植物Pに貯留槽5の水が散布される。水の散布量は予め設定してもよいし、対応する培地水分量センサ34の検出値が設定上限値を上回ったときに、コントローラ8が散水開閉弁39や対応する灌水制御弁41を閉止して散水ポンプ40の作動を停止させて、散布停止するようにしてもよい。設定下限値や設定上限値自体は下回る側に含めてもよいし、上回る側に含めてもよい。
【0030】
図1に示すように、第1実施形態の循環システム1は、閉鎖系施設2外の室外空気と閉鎖系施設2内の室内空気との熱交換を行う熱交換器7を備えている。第1実施形態では、熱交換器7が閉鎖系施設2内に配置されている。熱交換器7のケーシング42内には、主として熱交換素子43と給気ブロワ44と排気ブロワ45とが収容されている。
【0031】
ケーシング42には、室外空気をケーシング42内に取り込む外気口46と、室内空気を閉鎖系施設2外に排出する排気口47と、ケーシング42内に室内空気を取り込む還気口48と、熱交換器7通過後の室外空気を閉鎖系施設2内に供給する給気口49とが設けられている。ケーシング42内には、外気口47から取り込まれ給気口49から吹き出るように室外空気が通る給気路50と、還気口48から取り込まれ排気口47から吹き出るように室内空気が通過する排気路51とが設けられている。
【0032】
外気口46には外気ダクト52が接続されている。外気口46は外気ダクト52を介して閉鎖系施設2外に連通している。排気口47には排気ダクト53が接続されている。排気口47は排気ダクト53を介して閉鎖系施設2外に連通している。還気口48には還気ダクト54が接続されている。還気口48は還気ダクト54を介して閉鎖系施設2内に連通している。給気口49には給気ダクト55が接続されている。給気口49は給気ダクト55を介して閉鎖系施設2内に連通している。
【0033】
第1実施形態の熱交換器7は、熱交換器7に取り入れる室外空気の流量を調節する外気ダンパー56と、熱交換器7から排出する室内空気の流量を調節する排気ダンパー57とを有している。この場合、外気ダンパー56は外気ダクト52内に配置されている。排気ダンパー57は排気ダクト53内に配置されている。
【0034】
熱交換素子43は例えば紙製であり、給気路50を通る室外空気と排気路51を通る室内空気との間で、顕熱および潜熱を交換、すなわち全熱交換するものである。なお、熱交換素子43としては全熱交換タイプに限らず、顕熱交換タイプを採用してもよい。ただし、室外空気を室内空気の温度および湿度に近づけてから閉鎖系施設2内に供給するという観点では、全熱交換タイプの熱交換素子43を採用するのが望ましい。熱交換素子43のうち給気路50の上流側には、塵埃除去用の給気フィルタ58が取り付けられている。また、熱交換素子43のうち排気路51の上流側には、塵埃除去用の排気フィルタ59が取り付けられている。
【0035】
給気ブロワ44は、室外空気を外気口46からケーシング42内の給気路50に取り込み、熱交換素子43にて全熱交換させた後、給気口49から閉鎖系施設2内に供給するものである。給気ブロワ44は、ケーシング42内のうち給気路50の下流側に配置されている。排気ブロワ45は、室内空気を還気口48からケーシング42内の排気路51に取り込み、熱交換素子43にて全熱交換させた後、排気口47から閉鎖系施設2外に排出するものである。排気ブロワ45は、ケーシング42内のうち排気路51の下流側に配置されている。
【0036】
第1実施形態では、後述する室内湿度センサ62の検出値等に基づき、コントローラ8が外気ダンパー56および排気ダンパー57を開閉して給気ブロワ44および排気ブロワ45を作動または停止させ、閉鎖系施設2内を換気するように構成されている。例えば外気ダクト52を介して外気口46から高温多湿の室外空気を熱交換器7に供給し、還気ダクト54を介して還気口48から低温低湿の室内空気を熱交換器7に供給すると、熱交換素子43において室外空気と室内空気との間で全熱交換が行われる。その後、室外空気は、温度および湿度が低下した状態で閉鎖系施設2内に供給され、室内空気は、温度および湿度が上昇した状態で閉鎖系施設2外に排出される。
【0037】
逆に、外気ダクト52を介して外気口46から低温低湿の室外空気を熱交換器7に供給し、還気ダクト54を介して還気口48から高温多湿の室内空気を熱交換器7に供給すると、熱交換素子43において室外空気と室内空気との間で全熱交換が行われる。その後、室外空気は、温度および湿度が上昇した状態で閉鎖系施設2内に供給され、室内空気は温度および湿度が低下した状態で閉鎖系施設2外に排出される。すなわち、熱交換器7を用いて閉鎖系施設2内を換気すれば、室外空気を室内空気の温度および湿度に近づけてから閉鎖系施設2内に供給することが可能になる。
【0038】
詳細は後述するが、第1実施形態では、貯水量水位センサ22の検出値(貯留槽5の水量)が下限値(所定値としてもよい)を下回ると、外気ダンパー56および排気ダンパー57を全開にするかまたは大きく開放させるとともに、給気ブロワ44および排気ブロワ45を作動させて、閉鎖系施設2外の水蒸気を含む室外空気を閉鎖系施設内に補給することが可能になっている。貯水量水位センサ22の検出値(貯留槽5の水量)が下限値を上回っていれば、外気ダンパー56および排気ダンパー57を全閉にするかまたは少しだけ開放させればよい。給気ブロワ44および排気ブロワ45は作動停止させておく。下限値自体は下回る側に含めてもよいし、上回る側に含めてもよい。
【0039】
この場合、閉鎖系施設2外の室外空気を室内空気の温度および湿度に近づけてから閉鎖系施設2内に供給できるため、特に冬季等には室内空気の露点温度の低下を抑制でき、時期や環境によらず、大気水生成装置3での水捕集能力を確保できる。夏季であっても、閉鎖系施設2の気密性および断熱性の高さとあいまって、電力消費は抑制しながら、閉鎖系施設2内の温湿度を快適な状態に維持しやすく、年間を通じて植物Pにとって好適な生育環境を確保しやすい。閉鎖系施設2内の室内空気を乾燥寄りに保持できるから、植物Pの蒸散を助け、植物Pの成長促進の一助にもなると解される。
【0040】
図1に示すように、第1実施形態の閉鎖系施設2内には、閉鎖系施設2内の温度を検出する室内温度センサ61と、閉鎖系施設2内の湿度を検出する室内湿度センサ62とが配置されている。室内湿度センサ62は、閉鎖系施設2内の上方に位置させるのが好ましい。水蒸気は上部に滞留する傾向にあるからである。閉鎖系施設2内には、閉鎖系施設2内の室内空気を対流(循環)させる複数の送風ファン63も配置されている。閉鎖系施設2外には、閉鎖系施設2外の温度を検出する室外温度センサ64が配置されている。詳細な図示は省略するが、閉鎖系施設2内には、液晶ディスプレイ等の表示部、各種操作用のスイッチ類およびコントローラ8等を有する制御盤も配置されている。
【0041】
次に、
図3を参照しながら、第1実施形態における循環システム1のハードウェア構成について説明する。第1実施形態の循環システム1は、当該循環システム1の各種制御を司るコントローラ8を備えている。詳細な図示は省略するが、コントローラ8は、演算処理や制御処理を実行する中央演算装置であるCPUのほか、制御プログラムやデータを記憶するROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶するRAM、各種プログラムやデータ等を格納する補助記憶装置であるHDD、コントローラ8を通信ネットワークに通信接続させる機能を有する通信I/F、コントローラ8に外部機器を接続させるUSB規格等のインターフェースである接続I/F、およびDC-ACインバータ等を含んでいる。なお、コントローラ8は単一のものに限らず、複数でも差し支えない。コントローラが複数の場合、それぞれ相互にシステムバスを介して接続される。
【0042】
コントローラ8には、太陽光発電装置65、風力発電装置66、エンジン発電装置67およびバッテリ68等が電気的に接続されている。太陽光発電装置65は、閉鎖系施設2の屋根等に太陽光パネルを配置し、太陽光を利用して発電するものである。風力発電装置66は、閉鎖系施設2の周辺に風車(風力発電機)を配置し、風力を利用して発電するものである。エンジン発電装置67は、エンジンの出力軸に発電機の駆動軸を連結し、エンジンの動力で発電機を作動させて発電するものである。バッテリ68は、二次電池または大容量コンデンサ等からなる充放電可能なものである。各発電装置65~67の電力は、バッテリ68に充電される。コントローラ8や各電気電子機器には、バッテリ68から電力供給がなされる。
【0043】
コントローラ8には、大気水生成装置3の圧縮機12、膨張弁14、蒸発器ファン17、凝縮器ファン18、ドレンパン水位センサ22、凝縮器温度センサ23、蒸発器温度センサ24、栽培棚6の各培地水分量センサ34、各照明装置35、各灌水制御弁41、熱交換器7の給気ブロワ44、排気ブロワ45、外気ダンパー56、排気ダンパー57、さらには、ドレン開閉弁27、ドレンポンプ29、給水開閉弁31、散水開閉弁39、散水ポンプ40、貯留槽水位センサ25、室内温度センサ61、室内湿度センサ62、各送風ファン63、ならびに室外温度センサ64等も電気的に接続されている。
【0044】
次に、
図4を参照しながら、第1実施形態の熱交換器制御について説明する。
図4のフローチャートは、第1実施形態における熱交換器制御の一例である。なお、以下に開示のフローチャートに示すアルゴリズムは、コントローラ8のROMまたはHDDにプログラムとして予め記憶されていて、RAMに読み出されてからCPUで実行される。第1実施形態のコントローラ8は、貯留槽水位センサ25の検出値に基づき、外気ダンパーおよび前記排気ダンパーを開閉させて給気ブロワ44および前記排気ブロワ45を作動または停止させるという熱交換器制御を実行する。
【0045】
すなわちコントローラ8は、貯留槽水位センサ25の検出値を読み込み(S01)、読み込んだ検出値から、貯留槽5の水量が予め設定された下限値を下回ったか否かを判別する(S02)。貯留槽5の水量が下限値を下回っていれば(S02:YES)、コントローラ8は、外気ダンパー56および排気ダンパー57を全開にし、給気ブロワ44および排気ブロワ45を作動させる(S03)。そうすると、熱交換器7内の熱交換素子43において、閉鎖系施設2外の室外空気と閉鎖系施設2内の室内空気との間で全熱交換が行われ、閉鎖系施設2外の水蒸気を含む室外空気を、室内空気の温度および湿度に近づけてから閉鎖系施設2内に補給できる。従って、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域であっても、空気中の水蒸気を有効利用して水調達を確実に行える。
【0046】
また、上述した通り、特に冬季等には室内空気の露点温度の低下を抑制でき、時期や環境によらず、大気水生成装置3での水捕集能力を確保できる。夏季であっても、閉鎖系施設2の気密性および断熱性の高さとあいまって、電力消費は抑制しながら、閉鎖系施設2内の温湿度を快適な状態に維持しやすく、年間を通じて植物Pにとって好適な生育環境を確保しやすい。
【0047】
第1実施形態のコントローラ8は、一旦ステップS03を実行すると(外気ダンパー56および排気ダンパー57を全開にし、給気ブロワ44および排気ブロワ45を作動させると)、しばらくはかかる状態を継続する。この間は、ドレンパン21の水が上限水位まで溜まると、そのつどドレン開閉弁27を開放してドレンポンプ29を作動させ、ドレンパン21の水が貯留槽5に自動的に供給される。次いで、貯留槽水位センサ25の検出値を読み込み(S04)、読み込んだ検出値から、貯留槽5の水量が予め設定された上限値に達したか(上回ったか)否かを判別する(S05)。貯留槽5の水量が上限値に達していなければ(S05:NO)、ステップS03に戻る。貯留槽5の水量が上限値に達していれば(S05:YES)、コントローラ8は、給気ブロワ44および排気ブロワ45を作動停止させ、外気ダンパー56および排気ダンパー57を全閉にする(S06)。
【0048】
以上の説明から分かるように、第1実施形態の構成によると、大気水生成装置3を介して閉鎖系施設2内の室内空気を循環させるから、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域であっても、閉鎖系施設2内の室内空気中の水蒸気を有効利用して水を調達でき、植物工場の実現が可能になる。
【0049】
次に、
図5および
図6を参照しながら、第2実施形態の循環システム100の概要について説明する。なお、第2実施形態の説明において、これまでに説明した第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
第2実施形態の循環システム100では、閉鎖系施設2内に、栽培棚6に代えて、魚介類Fを陸上養殖する養殖水槽106が収容されている。そして、第2実施形態の循環システム100は、潅水装置4に代えて、養殖水槽106に水(淡水)を供給する給水装置104を備えている。養殖水槽106内には、内部の水(淡水)の溶存酸素濃度を検出する溶存酸素センサ132と、養殖水槽106の水位を検出する養殖水槽水位センサ133と、養殖水槽106の水温を検出する水温センサ134とが配置されている。養殖水槽106内の水には、曝気ブロワ137によって室内空気を供給することが可能になっている。養殖水槽106の上方には、例えばLED光源群を有するLEDモジュールで構成された照明装置135が配置されている。
【0051】
養殖水槽106に水を供給する給水装置104は、貯留槽5から閉鎖系施設2内に延びる散水管136を備えている。散水管136は、ドレン回収管26とは別個に、貯留槽5に接続されている。散水管136の中途部には、上流側から順に、可変式の散水開閉弁39と、貯留槽5からの水を養殖水槽106に供給する散水ポンプ40と、可変式の散水制御弁141が設けられている。養殖水槽106には、養殖水槽106内の水を外部(この場合は貯留槽5)に排出する排出管169が接続されている。排出管169の先端側は、ドレン回収管26のうちドレン開閉弁27とろ過器28との間に接続されている。排出管169の中途部には、可変式の排出開閉弁170が設けられている。
【0052】
第2実施形態では、養殖水槽水位センサ133や水温センサ134等の検出値に基づき、コントローラ8が散水開閉弁39や散水制御弁141を開放して散水ポンプ40を作動させ、貯留槽5の水を養殖水槽内に供給するように構成されている。貯留槽5の水は第1実施形態と同様に、大気水生成装置3にて抽出された水である。従って、第2実施形態の供給装置104は、大気水生成装置3にて抽出された水を養殖水槽106に供給する構成になっている。
【0053】
第2実施形態のコントローラ108には、栽培棚6関連のものに代えて、養殖水槽106の溶存酸素センサ132、養殖水槽水位センサ133、水温センサ134、照明装置135、曝気ブロワ137、散水制御弁141、排水開閉弁170等が電気的に接続されている。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の熱交換器制御を実行できることは言うまでもない。
【0054】
第2実施形態においても、大気水生成装置3を介して閉鎖系施設2内の室内空気を循環させるから、水源へのアクセスが難しい地域やライフラインの未整備な地域でも、閉鎖系施設2内の室内空気中の水蒸気を有効利用して水を調達でき、陸上養殖の実現が可能になる。また、閉鎖系施設2外の水蒸気を含む室外空気を、室内空気の温度および湿度に近づけてから閉鎖系施設2内に補給でき、水調達をより確実に行える。特に冬季等には室内空気の露点温度の低下を抑制でき、時期や環境によらず、大気水生成装置3での水捕集能力を確保できる。夏季であっても、閉鎖系施設2の気密性および断熱性の高さとあいまって、電力消費は抑制しながら、閉鎖系施設2内の温湿度を快適な状態に維持しやすく、年間を通じて魚介類Fにとって好適な生育環境を確保しやすい。
【0055】
本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。例えば貯留槽5にミネラルや栄養(肥料)分を手動または自動で追肥するようにしてもよい。閉鎖系施設2内の室内空気中の酸素濃度や二酸化炭素濃度を定期的または随時モニタリングするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
P 植物
F 魚
1,100 循環システム
2 閉鎖系施設
3 大気水生成装置
4 潅水装置
5 貯留槽
6 栽培棚
7 熱交換器
8 コントローラ
19 装置給気口
20 装置排気口
42 ケーシング
43 熱交換素子
44 給気ブロワ
45 排気ブロワ
46 外気口
47 排気口
48 還気口
49 給気口
50 給気路
51 排気路
52 外気ダクト
53 排気ダクト
54 還気ダクト
55 給気ダクト
56 外気ダンパー
57 排気ダンパー
104 給水装置
106 養殖水槽