(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015402
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】潤滑基油を製造する方法及びこれにより製造された潤滑基油
(51)【国際特許分類】
C10G 45/58 20060101AFI20250123BHJP
C10G 45/64 20060101ALI20250123BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20250123BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20250123BHJP
C10M 175/02 20060101ALI20250123BHJP
C10N 70/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C10G45/58
C10G45/64
C10G45/02
C10G45/08 Z
C10M175/02
C10N70:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044864
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2023-0093262
(32)【優先日】2023-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】509349451
【氏名又は名称】エスケー エンムーブ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヨン ウック
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジュン ス
(72)【発明者】
【氏名】ノ・キュン ショック
【テーマコード(参考)】
4H104
4H129
【Fターム(参考)】
4H104JA04
4H129AA02
4H129CA17
4H129CA18
4H129DA15
4H129DA20
4H129EA01
4H129KC13X
4H129KD15X
4H129KD16X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129NA17
4H129NA32
(57)【要約】
【課題】潤滑基油を製造する方法及びこれにより製造された潤滑基油を提供する。
【解決手段】前記方法は、廃潤滑油由来の精製留分を提供するステップと、前記廃潤滑油由来の精製留分はAPIグループIII未満の潤滑基油を含む潤滑油に由来し、前記廃潤滑油由来の精製留分は減圧イオン精製油、第1再生基油、又はこれらの組み合わせを含み、前記廃潤滑油由来の精製留分を脱蝋して第2再生基油を生成する脱蝋ステップと、前記第2再生基油を別途の潤滑基油と配合してグループIII以上の潤滑基油混合物を生成する配合ステップと、を含む。前記方法によれば、品質の低い廃潤滑油をより高い品質の潤滑基油の製造工程供給原料として使用することができるため、経済の面で利点があり、廃潤滑油を高級潤滑基油の製造工程供給原料としてリサイクルして環境調和の面においても利点がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑基油混合物を製造する方法であって、
廃潤滑油由来の精製留分を提供するステップであって、前記廃潤滑油由来の精製留分はAPIグループIII未満の潤滑基油を含む潤滑油に由来し、前記廃潤滑油由来の精製留分は減圧イオン精製油、第1再生基油、又はこれらの組み合わせを含む、廃潤滑油由来の精製留分提供ステップと、
前記廃潤滑油由来の精製留分を脱蝋して第2再生基油を生成する脱蝋ステップと、
前記第2再生基油を別途の潤滑基油と配合してグループIII以上の潤滑基油混合物を生成する配合ステップと、を含む、潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項2】
前記廃潤滑油由来の精製留分は、200ppm以上3000ppm以下の硫黄含有量、100ppm以上1200ppm以下の窒素含有量、及び4以上11cSt以下の100℃での動粘度を含む、請求項1に記載の潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項3】
前記脱蝋ステップは、前記廃潤滑油由来の精製留分を水素化処理(hydrotreating)するステップ、水素化脱蝋(hydrodewaxing)するステップ、及び水添仕上げ(hydrofinishing)するステップを含む、請求項1に記載の潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項4】
前記水素化脱蝋するステップは、EU-2ゼオライト担体、アルミナ及びシリカ-アルミナ担体の少なくとも1つを含む触媒の存在下で行われ、300℃以上350℃以下の温度及び60kg/cm2以上150kg/cm2以下の圧力で行われる、請求項3に記載の潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項5】
前記触媒は、金属活性成分としてCo、Ni、Pt、Pd、Mo、W、又はこれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項6】
前記別途の潤滑基油は、6~7cStの100℃での動粘度、120以上の粘度指数、-10℃以下の流動点、及び5400cP以下の-30℃でのCCS(Cold Crank Simulator)粘度を含む、請求項1に記載の潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項7】
前記配合ステップで配合される第2再生基油の量は、グループIII以上の潤滑基油混合物の1~30体積%である、請求項1に記載の潤滑基油混合物を製造する方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の第2再生基油を含む潤滑基油混合物。
【請求項9】
前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、粘度指数が120以上であり、飽和度が90%以上である、請求項8に記載の第2再生基油を含む潤滑基油混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑基油を製造する方法及びこれにより製造された潤滑基油に関する。
【背景技術】
【0002】
廃潤滑油は、一連の精製工程を経て、国内では全量が燃料油として使用されており、海外では一部は燃料油、別の一部は低級再生基油として使用されていた。
【0003】
一方、一般に優れた潤滑基油は、高い粘度指数を有し、安定性(酸化、熱、UVなど)に優れるうえ、揮発性が少ない特性を有する。米国石油協会API(American Petroleum Institute)では、潤滑基油を品質に応じて下記表1のように分類している。
【0004】
【0005】
上記分類において、グループIからグループVに行くほど潤滑基油としての品質が優れるものと評価され、その中でも、グループIII潤滑基油は、一般に高度の水添分解反応によって製造される。通常、グループIII以上の高級潤滑基油を製造するための供給原料として、燃料油水素化分解工程で燃料油に転換されずに残った重質留分である未転換油が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開第2021-0002682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、潤滑基油を製造する方法及びこれにより製造された潤滑基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1観点によれば、潤滑基油混合物を製造する方法が提供され、この方法は、廃潤滑油由来の精製留分を提供するステップと、前記廃潤滑油由来の精製留分はAPIグループIII未満の潤滑基油を含む潤滑油に由来し、前記廃潤滑油由来の精製留分はイオン精製油、第1再生基油、又はこれらの組み合わせを含み、前記廃潤滑油由来の精製留分を脱蝋して第2再生基油を生成する脱蝋ステップと、前記第2再生基油を別途の潤滑基油と配合して、グループIII以上の潤滑基油混合物を生成する配合ステップと、を含む。
【0009】
一実施形態によれば、前記廃潤滑油由来の精製留分は、200ppm以上3000ppm以下の硫黄含有量、100ppm以上1200ppm以下の窒素含有量、及び4以上11cSt以下の100℃での動粘度を含むことができる。
【0010】
一実施形態によれば、前記脱蝋ステップは、前記廃潤滑油由来の精製留分を水素化処理(hydrotreating)するステップ、水素化脱蝋(hydrodewaxing)するステップ、及び水添仕上げ(hydrofinishing)するステップを含むことができる。
【0011】
一実施形態によれば、前記水素化脱蝋ステップは、EU-2ゼオライト担体、アルミナ及びシリカ-アルミナ担体の少なくとも1つを含む触媒の存在下で行われ、300℃以上350℃以下の温度及び60kg/cm2以上150kg/cm2以下の圧力で行われることができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記触媒は、金属活性成分としてCo、Ni、Pt、Pd、Mo、W、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
一実施形態によれば、前記別途の潤滑基油は、6~7cStの100℃での動粘度、120以上の粘度指数、-10℃以下の流動点、及び5400cP以下の-30℃でのCCS(Cold Crank Simulator)粘度を含むことができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記配合ステップで配合される第2再生基油の量は、グループIII以上の潤滑基油混合物の1~30体積%であり得る。
【0015】
本開示の第2観点によれば、前述した第2再生基油を含む潤滑基油混合物が提供される。
【0016】
一実施形態によれば、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、粘度指数が120以上であり、飽和度が90%以上であり得る。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、品質の低い廃潤滑油をより高い品質の潤滑基油の製造工程供給原料として用いることができるため、経済の面で利点があり、廃潤滑油を廃棄せずにリサイクルして環境調和の面においても利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の目的、利点及び特徴は、添付図面に関連する以下の詳細な説明及び好適な実施形態からさらに明らかになるが、本開示は必ずしもこれに限定されるものではない。また、本開示を説明するにあたり、関連する公知の技術についての具体的な説明が本開示の要旨を不必要に不明確にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0020】
以下、添付図面を参照して、本開示の一実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本開示の第1観点によれば、潤滑基油混合物を製造する方法が提供され、この方法は、廃潤滑油由来の精製留分を提供するステップと、前記廃潤滑油由来の精製留分はAPIグループIII未満の潤滑基油を含む潤滑油に由来し、前記廃潤滑油由来の精製留分は減圧イオン精製油、第1再生基油、又はこれらの組み合わせを含み、前記廃潤滑油由来の精製留分を脱蝋して第2再生基油を生成する脱蝋ステップと、前記第2再生基油を別途の潤滑基油と配合して、グループIII以上の潤滑基油混合物を生成する配合ステップと、を含む。前記潤滑基油混合物の製造方法は、概略的に
図1に示されている通りである。
【0022】
前記廃潤滑油由来の精製留分は、前述した米国石油協会(API)潤滑基留分類のグループIII未満に属する性状を有する潤滑基油を含む潤滑油に由来し、より具体的には、グループIII未満に属する性状を有する潤滑基油を含む潤滑油が使用された後に発生する廃潤滑油に由来する。具体的には、前記グループIII未満に属する性状を有する潤滑基油は、300ppm以上の硫黄含有量、90%未満の飽和度、120以下の粘度指数、又はこれらの組み合わせを含む。通常、潤滑油には、潤滑基油に様々な添加剤が添加されるが、前記添加剤は、潤滑基油としての使用に適していない不純物を多量に含んでいるので、廃潤滑油由来の精製留分も不純物を多量に含有することができる。例えば、前記グループIII未満の潤滑基油を含む廃潤滑油は、1000~3000ppmの硫黄、500~2000ppmの窒素、100~2000ppmの塩素、及びその他の潤滑作用中に流入できる金属不純物などを含むことができる。
【0023】
一実施形態において、前記廃潤滑油由来の精製留分提供ステップは、廃潤滑油を遠心分離するステップ、常圧蒸留するステップ、減圧蒸留するステップ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。前記ステップは、廃潤滑油由来の留分に存在する硫黄、窒素、塩素及び金属不純物の含有量を下げるステップに該当する。本開示で使用された用語「廃潤滑油由来の精製留分」は、廃潤滑油由来の留分が精製ステップに導入された後に得られる留分を指すもので、廃潤滑油に比べて減少した不純物含有量を有する。
【0024】
前記廃潤滑油由来の精製留分提供ステップは、好ましくは、前記グループIII未満の潤滑基油を含む廃潤滑油を遠心分離するステップ、減圧蒸留するステップ、及び常圧蒸留するステップを含むことができ、さらに好ましくは、遠心分離、常圧蒸留及び減圧蒸留の順に行われることができる。
【0025】
前記遠心分離ステップは、廃潤滑油に存在する不純物を分離して除去するためのものであって、約100rpm~3000rpmの回転速度で行われることができる。前記遠心分離の代わりに、自然沈殿による不純物の沈殿も可能であるが、分離速度及び性能の観点から遠心分離がより好ましい。また、前記遠心分離ステップは、凝集剤の投入を伴うことができ、この場合、凝集剤の投入により凝集した不純物が回転によって分離されて除去される。凝集剤は、不純物の凝集を可能にするものであれば制限がないが、非限定的な例として、リン酸アンモニウムが凝集剤として使用できる。一実施形態において、前記遠心分離ステップは、80~120℃で行われることができ、当該温度範囲で凝集物の分離が円滑に行われることができる。
【0026】
一実施形態において、遠心分離によって密度の高い、廃潤滑油に混和されていない固相不純物が一次的に除去された後の廃潤滑油は、大気圧下での常圧蒸留に導入される。常圧蒸留は、約50℃~350℃の温度で行われ、常圧蒸留温度が上昇するにつれて、廃潤滑油中の留分が沸点の低い順に蒸留されて分別される。前記常圧蒸留ステップで分別される留分のうち、約150℃以上の沸点を有する留分が精製留分生成のために収集される。このように、遠心分離及び常圧蒸留を経た後の廃潤滑油由来の留分は、「イオン精製油」と呼ばれることがある。
【0027】
一実施形態において、常圧蒸留ステップで収集された留分は、以後、減圧蒸留に導入される。これは、常圧蒸留ステップで得られた前記留分のより詳細な分別のためのものであって、大気圧下で前記留分の詳細な分別のために蒸留温度を上昇させる場合、留分の分解(cracking)が発生するおそれがあるので、減少した圧力及び温和な温度の条件で行われる。前記減圧蒸留は、10torr以下の圧力及び150~350℃の温度で行われることができる。前記減圧蒸留ステップ中に、300~550℃の沸点を有する留分が収集され、これは「減圧イオン精製油」と呼ばれる。前記減圧イオン精製油は、約0.8~1.0の比重、約80~150の粘度指数(viscosity index、VI)、及び約-20℃~0℃の流動点を有することができる。また、前記減圧イオン精製油は、前記廃潤滑油に比べて減少した不純物含有量を有することができる。前記減圧イオン精製油は、ASTMを基準に約5~6の、褐色に近い色を示し、前記遠心分離及び2ステップの蒸留によって、前記減圧イオン精製油は、精製以前に廃潤滑油に存在していた沈殿物及び水分の含有量よりも減少した沈殿物及び水分含有量を有することができる。
【0028】
一実施形態において、前記減圧イオン精製油は、200ppm以上3000ppm以下の硫黄含有量、100ppm以上1200ppm以下の窒素含有量、及び4以上11cSt以下の100℃での動粘度を含むことができる。
【0029】
一実施形態において、前記廃潤滑油由来の精製留分提供ステップは、溶媒抽出又は第1水素化処理ステップを含むことができる。廃潤滑油由来の留分の溶媒抽出は、混合槽で廃潤滑油由来の留分及び溶媒を混合した後、これを静置させることにより、相分離させて得ようとする留分が主成分である相を得、不純物が多量に含有されている相を除去するステップである。前記溶媒抽出に使用される溶媒は、廃潤滑油由来の留分中のオイル成分よりも不純物との親和性が高い溶媒であって、主に使用される溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、スルホラン(Sulfolane)、DMSO、フルフラール(Furfural)、フェノール、及びアセトンがある。前記溶媒は、不純物に対する親和度が高く、廃潤滑油由来の留分に対する親和度が低いため、廃潤滑油由来の留分と相分離され、以後の溶媒分離のために揮発度の差があるものであれば、制限なく使用できる。
【0030】
前記廃潤滑油由来の留分の溶媒抽出は、約30~200℃、好ましくは約30~150℃、より好ましくは約40~120℃の温度、及び大気圧~20kg/cm2、好ましくは大気圧~15kg/cm2、より好ましくは大気圧~10kg/cm2の圧力下で行われることができる。
【0031】
また、前記廃潤滑油由来の留分の溶媒抽出ステップで使用される溶媒対精製留分中のオイル成分の体積比は、1:1~6:1、好ましくは1:1~5:1、1:1~4:1、1:1~3:1、1:1~2:1、2:1~5:1、2:1~4:1、2:1~3:1、3:1~5:1、3:1~4:1、及び4:1~5:1であり得る。さらに好ましくは、体積比は1.5:1~3:1であり得る。前記体積比は、溶媒抽出による不純物の除去水準と、以後廃潤滑油由来の精製留分から生成される潤滑基油の収率のバランスの観点から好ましい。
【0032】
廃潤滑油由来の留分の第1水素化処理は、廃潤滑油由来の留分を触媒の存在下に高温及び高圧で水素化して、廃潤滑油由来の留分に含有されている硫黄、窒素、塩素及びその他の金属不純物を除去するとともに、廃潤滑油由来の留分に存在する不飽和炭化水素を飽和させるステップである。
【0033】
前記第1水素化処理は、触媒の存在下で行われることができる。第1水素化処理用触媒として、Ni-Mo系触媒、Co-Mo系触媒、ラネー(Raney)ニッケル、ラネーコバルト、白金系触媒などの触媒が使用できるが、これに限定されるものではなく、水素飽和反応及び不純物除去に効果を有する水素化触媒であれば制限なく使用できる。
【0034】
前記第1水素化処理は、約200~500℃、好ましくは約250~450℃、より好ましくは約300~400℃の温度条件、50kg/cm2~300kg/cm2、好ましくは50kg/cm2~250kg/cm2、より好ましくは100kg/cm2~200kg/cm2の圧力条件、0.1~5.0hr-1、好ましくは0.3~4.0hr-1、より好ましくは0.5~3.0hr-1の液体空間速度(LHSV)の条件、及び300~3000Nm3/m3、好ましくは500~2500Nm3/m3、より好ましくは1000~2000Nm3/m3の精製留分に対する水素の体積比の条件下で行われることができる。前記条件は、以後の脱蝋触媒の寿命に影響を与えない範囲内であり、上記の条件下で廃潤滑油由来の留分に存在する硫黄や窒素などの不純物含有量の除去水準の最小化及び最終生成物である潤滑基油の収率損失(loss)の最小化を達成することができる。上述のように、廃潤滑油由来の留分を溶媒抽出又は第1水素化処理を含む精製ステップに導入して得られた廃潤滑油由来の精製留分は、「第1再生基油」と呼ばれる。
【0035】
一実施形態において、前記第1再生基油は、100~3000ppmの硫黄含有量、100~1000ppmの窒素含有量、及び5~200ppmの塩素含有量を含むことができる。また、前記第1再生基油は、350~550℃、より好ましくは420~520℃の沸点を有するため、沸点範囲がイオン精製油に比べて狭いことができる。
【0036】
前記廃潤滑油由来の精製留分は、上述した減圧イオン精製油、第1再生基油、又はこれらの組み合わせを含む。
【0037】
一実施形態において、前記廃潤滑油由来の精製留分は、200ppm以上3000ppm以下の硫黄含有量、100ppm以上1200ppm以下の窒素含有量、及び4以上11cSt以下の100℃での動粘度を含むことができる。
【0038】
前記方法は、前記廃潤滑油由来の精製留分を脱蝋して第2再生基油を生成する脱蝋ステップを含む。ここで、「第2再生基油」は、脱蝋ステップで脱蝋された廃潤滑油由来の精製留分を指す。脱蝋ステップは、廃潤滑油由来の精製留分に含有されている蝋成分を選択的に異性化(isomerization)させて低温性状を改善し(低い流動点の確保)、高い粘度指数(VI)を維持することができるようにする。本開示では、前記脱蝋ステップに使用される触媒の改善を介して効率及び収率の向上を達成しようとする。前記脱蝋ステップは、水素化処理反応(hydrotreating)、水素化脱蝋(hydrodewaxing)、及び以後の水添仕上げ(hydrofinishing)反応を含むことができる。
【0039】
水素化脱蝋に先立ち、廃潤滑油由来の精製留分に残存する不純物の除去のための第2水素化処理が行われることができ、第2水素化処理の工程条件及び使用される触媒は、第1水素化処理と同じであり得る。
【0040】
一実施形態において、前記水素化脱蝋ステップは、EU-2ゼオライト担体を含む触媒の存在下で行われ、300℃以上350℃以下の温度及び50kg/cm2以上150kg/cm2以下の圧力で行われることができる。より具体的には、前記水素化脱蝋ステップは、310℃以上340℃以下の温度、好ましくは320℃以上330℃以下の温度、60kg/cm2以上140kg/cm2以下の圧力、好ましくは60kg/cm2以上130kg/cm2以下の圧力で行われることができる。
【0041】
以後の水添仕上げは、200~250℃の工程温度で行われることを除いて、使用される触媒及び残りの工程条件が前記水素化脱蝋ステップと同一であり得る。
【0042】
一般に、触媒脱蝋反応の主要反応は、異性化反応によって低温性状の改善のためにN-パラフィンをイソパラフィンに転換することであるが、ここで使用される触媒は、主に二機能性(Bi-functional)触媒であると報告されている。二機能性触媒は、水素化/脱水素化反応のための金属活性成分(Metal Site)とカルベニウムイオン(carbenium ion)を介した骨格異性化反応(skeletal isomerization)のための酸点を有する担体(Acid Site)の2つの活性成分から構成されるが、ゼオライト構造の触媒は、アルミノシリケート担体と、第8族金属及び第6族金属から1つ以上選択される金属とから構成されることが一般的である。
【0043】
本開示の脱蝋触媒は、分子ふるい(Molecular Sieve)、アルミナ及びシリカ-アルミナから選択される酸点を有する担体を含むことができる。前記酸点を有する担体の種類としては、分子ふるい、アルミナ、シリカ-アルミナなどを含み、その中でも、分子ふるいは、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)、SAPO、ALPO等をいうものであって、酸素10員環(10-membered Oxygen Ring)を有する中細孔(Medium Pore)分子ふるい(SAPO-11、SAPO-41、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48など)と、酸素12員環を有する大細孔(Large Pore)分子ふるいが使用できる。
【0044】
特に、本開示では、好ましくは、担体として相転移程度の調節されたEU-2ゼオライトを使用することができる。純粋なゼオライトが生成された後に合成条件が変化するか、或いは水熱合成条件が同一であっても一定時間を超えて合成が持続されると、合成されたゼオライト結晶がより安定な相(Phase)に徐々に相転移(Phase Trasformation)を起こす場合があるが、このような現象をゼオライトの相転移(Phase Transformation)といい、前記ゼオライトの相転移程度に応じて改善された異性化選択性能を示し、これを用いた触媒脱蝋反応においても優れた性能を示すことができることを確認した。
【0045】
一実施形態において、前記触媒は、金属活性成分としてCo、Ni、Pt、Pd、Mo、W、又はこれらの組み合わせを含むことができる。前記触媒は、前述した担体と共に、周期表の第2族、第6族、第9族及び第10族の元素から選択される一つ以上の水素化機能を有する金属を含むことができ、水素化/脱水素化性能の観点から特に第9族及び第10族(すなわち、VIII族)金属の中ではCo、Ni、Pt、Pdが好ましく、第6族(すなわち、VIB族)金属の中ではMo、Wが好ましい。
【0046】
上述したような触媒の存在下に生成される第2再生基油は、5ppm未満の硫黄含有量、1ppm未満の窒素含有量を有し、100以上120以下の粘度指数を示すため、グループIII潤滑基油に近い性状を有することができる。一実施形態において、脱蝋ステップで生成される第2再生基油が前記硫黄含有量及び窒素含有量よりも高い不純物含有量を有する場合、脱蝋ステップ以後に不純物の除去のための追加的な水素化処理(hydrotreating)に導入できる。
【0047】
前記方法は、前記第2再生基油を別途の潤滑基油と配合して、グループIII以上の潤滑基油混合物を生成する配合ステップを含む。ここで、グループIII以上の潤滑基油混合物は、前記表1のグループIIIに該当する性状を有するか、或いはグループIII潤滑基油条件よりも低い硫黄含有量、高い飽和度、高い粘度指数、又はこれらの組み合わせを含む潤滑基油混合物を指す。前述したように、第2再生基油は、グループIII潤滑基油に近い性状を有するため、groupIII以上の等級に該当する別途の潤滑基油と一定量で配合される場合に最終製品としての潤滑基油混合物がグループIII以上の潤滑基油であり得るようにする。すなわち、前記方法は、グループIII未満の潤滑基油を含む廃潤滑油に由来する留分を、グループIII以上の潤滑基油を製造するための供給原料として用い、グループIII以上の潤滑基油の製造コストを低減することができる。
【0048】
一実施形態において、前記別途の潤滑基油は、6~7cStの100℃での動粘度、120以上の粘度指数、-10℃以下の流動点、及び5400cP以下の-30℃でのCCS(Cold Crank Simulator)粘度を含むことができる。また、前記別途の潤滑基油は、1ppm未満の硫黄、窒素及び塩素含有量を含むことができる。
【0049】
一実施形態において、前記配合ステップで配合される第2再生基油の量は、グループIII以上の潤滑基油混合物の1~30体積%であり得る。前記配合ステップで配合される第2再生基油の量がグループIII以上の潤滑基油混合物の1体積%未満である場合、第2再生基油が最終製品としてのグループIII以上の潤滑基油混合物で占める割合が低いため、製造コスト削減効果が大きくないおそれがあり、前記配合ステップで配合される第2再生基油の量がグループIII以上の潤滑基油混合物の1体積%未満である場合、最終製品としての潤滑基油混合物がグループIII以上の性状を有しないおそれがある。一実施形態において、前記配合ステップで配合される第2再生基油の量は、好ましくはグループIII以上の潤滑基油混合物の5~25体積%、さらに好ましくは10~20体積%であり得る。
【0050】
本開示の第2観点によれば、前記第1再生基油とは別途の潤滑基油を配合するステップ、及び以後の水素化脱蝋及び水添仕上げステップを含む潤滑基油混合物を製造する方法が提供される。前記方法は、概略的に
図2に示すように行われることができる。前記方法の第1再生基油及び別途の潤滑基油は、第1観点による第1再生基油及び別途の潤滑基油と同じ性状を有し、配合量、及び水素化脱蝋及び水添仕上げステップの工程条件も、第1観点と同じであり得る。この方法によれば、グループIII以上の潤滑基油混合物が得られる。
【0051】
本開示の第3観点によれば、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物が提供される。前述したように、第2再生基油は、グループIII未満の潤滑基油を含む廃潤滑油に由来する脱蝋精製留分に該当し、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、廃潤滑油由来の留分を含みながらも下記のグループIII潤滑基油としての性状を維持することができる。すなわち、本開示の一観点による第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、より低級の潤滑基油に由来する留分をより高級の潤滑基油の成分として活用することができるため、経済の面で利点があり、廃潤滑油を廃棄する代わりに、高級潤滑基油製造工程の供給原料としてリサイクルすることにより、廃棄されるオイルの量を減少させることができるという点で、環境調和の面においても利点がある。
【0052】
一実施形態において、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、120超過の粘度指数及び90%以上の飽和度を含むことができる。すなわち、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、表1のグループIII潤滑基油の粘度指数及び飽和度を満たす潤滑基油であり得る。一実施形態において、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、好ましくは125以上の粘度指数、さらに好ましくは130以上の粘度指数を含むことができる。また、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の飽和度を含むことができる。
【0053】
一実施形態において、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、それぞれ1ppm未満の硫黄含有量、窒素含有量及び塩素含有量を含むことができる。すなわち、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、グループIII潤滑基油の不純物含有量の条件を満たすだけでなく、実質的に不純物がなくてもよい。
【0054】
一実施形態において、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、27以上のセーボルト色(Saybolt Color)の値を含むことができる。前記セーボルト色(Saybolt Color)の値が27以上である場合、ウォーターホワイト(Water White)等級の安定性を有する潤滑基油として取り扱われる。ウォーターホワイト(Water White)等級の潤滑基油は、1ppm未満の硫黄含有量及び窒素含有量を有し、飽和度が99%以上であり、芳香族含有量が1%未満であって、通常のAPIグループIIIの潤滑基油よりもさらに安定した潤滑基油に該当する。
【0055】
一実施形態において、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、ASTM D2008によって測定された、2.5以下のUV260~350nmの吸光度及び0.7以下のUV325nmの吸光度を示すことができる。ここで、260~350nmの波長に対する吸光度は、3以上の芳香族環を有する成分を含有するということを示し、325nmの波長に対する吸光度は、3~7の芳香族環を有する成分を含有するということを示すが、前記第2再生基油を含む潤滑基油混合物は、これらの波長に対する低い吸光度を有するので、芳香族含有量が少なく、よって高い安定性を有する。
【0056】
以下、本開示の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本開示をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本開示は、これに限定されるものではない。
【0057】
実施例
本開示の製造方法によって製造された潤滑基油の性状及び特性の測定
約2000ppmの硫黄含有量、約1500ppmの窒素含有量及び約1500ppmの塩素含有量を有する廃潤滑油を約300rpmの速度で遠心分離し、これを常圧蒸留及び減圧蒸留して減圧イオン精製油を得た。下記の工程条件の減圧蒸留で得られた減圧イオン精製油は、400℃以上550℃以下の沸点を有する重質留分を含有した。
【0058】
ここで、前記常圧蒸留は、50℃~350℃の温度及び大気圧下で行われ、前記減圧蒸留の工程条件は、下記表2の通りである。
【0059】
【0060】
一方、前述した廃潤滑油と同じ不純物含有量を有する別途の廃潤滑油を約300℃の温度条件、約60~150kg/cm2の圧力条件、約3.0hr-1の液体空間速度(LHSV)の条件、及び約1000の廃潤滑油由来の留分に対する水素の体積比の条件下で水素化処理して第1再生基油を得た。その後、前記減圧イオン精製油と第1再生基油を1:1の体積比で混合した廃潤滑油由来の精製留分を水素化脱蝋した。水素化脱蝋は、約350℃の温度及び約150kg/cm2の圧力下で、担体としてのEU-2ゼオライト及び金属活性成分としてのNiを含む水素化触媒の存在下で行われた。以後の水添仕上げは、水素化脱蝋と同じ水素化触媒の存在下で、約230℃の温度及び約60~150kg/cm2の圧力で行われた。前記水素化脱蝋及び水添仕上げの後に第2再生基油が得られた。
【0061】
得られた第2再生基油を6.3cStの100℃での動粘度、130の粘度指数、-12℃の流動点、及び6200cPの-30℃でのCCP粘度を有する別途の潤滑基油(YU-6)と配合して潤滑基油混合物を得た。ここで配合される第2再生基油の量は、前記潤滑基油混合物の20体積%であった。
【0062】
前記製造方法によって製造された潤滑基油混合物に対して性状及び種々の特性を測定した。測定の結果、前記潤滑基油混合物は0.84の比重、7.3cStの100℃での動粘度、129の粘度指数(VI)及び-33℃の動粘度を示し、硫黄、窒素及び塩素の含有量がそれぞれ1ppm未満であって、不可避な微量を除いた不純物を殆ど含有しなかった。上記事項の他に、前記潤滑基油混合物に対して測定された特性は、下記表3の通りである。
【0063】
【0064】
前記潤滑基油混合物は、最小120の粘度指数及び最小95%の飽和度を有するため、前記表1におけるグループIII潤滑基油の条件を満たすことが分かった。前記潤滑基油混合物は、肉眼で評価したとき、明るくてきれいな色であり、ASTM D156に準拠して測定された27以上のセーボルト色(Saybolt Color)を示した。すなわち、前記潤滑基油は、ウォーターホワイト(Water white)等級を有する潤滑基油であって、高温での高い熱安定性を有する。
【0065】
また、前記潤滑基油混合物は、260~350nmの波長を有するUV、及び特に325nmの波長を有するUVに対してASTM D2008に準拠して測定された最大3.0(325nmの波長に対しては最大1.0)の低い吸光度を示すため、UVに対する安定性が高いことを確認することができる。
【0066】
このように、一定量の廃潤滑油由来の再生基油を潤滑基油製造の供給原料として用いる場合、最終生成物である潤滑基油の安定性及び収率が増加することができ、廃潤滑油を単純に廃棄せずに潤滑基油製造の供給原料としてリサイクルするという点において、環境の面でも利点を有する。
【0067】
以上、本開示を具体的な実施形態によって詳細に説明したが、実施形態は本開示を具体的に説明するためのものであり、本開示はこれに限定されず、本開示の技術的思想内で当該分野における通常の知識を有する者によってその変形や改良が可能であるのは明らかであるというべきである。
【0068】
本開示の単純な変形乃至変更はいずれも本開示の範囲に属するものであり、本開示の具体的な保護範囲は添付された特許請求の範囲によって明確になるだろう。