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特開2025-154059防音壁ユニット、防音壁ユニットの交換方法及び防音壁の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154059
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】防音壁ユニット、防音壁ユニットの交換方法及び防音壁の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056843
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】楠田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀成
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB01
(57)【要約】
【課題】劣化状況に応じて構成部材を容易に交換でき、部材の落下を防止できる防音壁ユニットを提供する。
【解決手段】実施形態における防音壁ユニット1は、鋼板からなる面板2と、面板2に接合されるフレーム部3と、を備える。面板2は、主板部21と、主板部21の左右の端部から折り返された面板リブ22と、左右の面板リブ22から互いに近づく方向に向けて折り返される折り返し片23と、を有する。フレーム部3は、主板部21と折り返し片23との間に配置され、折り返し片23は、ボルト51によりフレーム部3に接合される。面板2は、フレーム部3との接合を解除した状態において、フレーム部3に沿って上下方向に抜き差し可能に構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体に並設される防音壁ユニットであって、
鋼板からなる面板と、
前記面板に接合されるフレーム部と、を備え、
前記面板は、主板部と、前記主板部の左右の端部から折り返された面板リブと、左右の前記面板リブから互いに近づく方向に向けて折り返される折り返し片と、を有し、
前記フレーム部は、前記主板部と前記折り返し片との間に配置され、
前記折り返し片は、機械式接合手段により前記フレーム部に接合され、
前記面板は、前記フレーム部との接合を解除した状態において、前記フレーム部に沿って上下方向に抜き差し可能に構成されること
を特徴とする防音壁ユニット。
【請求項2】
前記構造躯体に接合される基部を更に備え、
前記基部は、前記フレーム部に機械式接合手段により接合されること
を特徴とする請求項1記載の防音壁ユニット。
【請求項3】
前記フレーム部は、前記折り返し片が接合される一対の縦材と、一対の前記縦材を繋ぐ横材と、を有すること
を特徴とする請求項2記載の防音壁ユニット。
【請求項4】
前記基部は、ベースプレートと、前記ベースプレートから起立されるとともに前記縦材に接合されるベースフランジと、を有し、
前記ベースフランジの正面側には、前記縦材よりもはみ出したはみ出し部を有し、
前記はみ出し部の上端の正面側は、切り欠き部を有すること
を特徴とする請求項3記載の防音壁ユニット。
【請求項5】
前記基部は、ベースプレートと、前記ベースプレートから起立されるとともに前記縦材に接合されるベースフランジと、前記ベースプレートから起立されるとともに前記横材に接合されるベースウェブと、を有すること
を特徴とする請求項3記載の防音壁ユニット。
【請求項6】
前記フレーム部は、前記折り返し片が接合される縦材を有し、
前記縦材は、
前記折り返し片に沿って延びる一対の縦材フランジと、
一対の前記縦材フランジを繋ぐとともに前記面板リブに沿って延びる縦材ウェブと、を有し、
前記折り返し片は、一方の前記縦材フランジに接合され、
前記縦材ウェブは、前記面板リブから離間されること
を特徴とする請求項2記載の防音壁ユニット。
【請求項7】
前記折り返し片は、第1貫通孔が形成され、
前記縦材は、前記第1貫通孔に対向する第2貫通孔が形成され、前記第2貫通孔を挟んで前記第1貫通孔の反対側には第1ナットが固定されること
を特徴とする請求項2記載の防音壁ユニット。
【請求項8】
一方の前記面板リブは、隣接する一方の防音壁ユニットの面板リブに向けて突出された突起部を有し、
他方の前記面板リブは、隣接する他方の防音壁ユニットの突起部が嵌合される溝部を有し、
前記溝部は、間詰め材が設けられること
を特徴とする請求項2記載の防音壁ユニット。
【請求項9】
前記フレーム部の頂部は、吊治具を接合するための第2ナットが固定されること
を特徴とする請求項2記載の防音壁ユニット。
【請求項10】
請求項1記載の防音壁ユニットの交換方法であって、
前記面板と前記フレーム部との機械式接合手段による接合を解除し、前記面板を前記フレーム部に沿って上側に抜き去る取外工程と、
前記フレーム部の上側から前記面板とは異なる新たな前記面板を差し込んで、新たな前記面板と前記フレーム部とを機械式接合手段により接合する面板接合工程と、を備えること
を特徴とする防音壁ユニットの交換方法。
【請求項11】
請求項2記載の防音壁ユニットの交換方法であって、
構造躯体に接合された前記基部と前記フレーム部との機械式接合手段による接合を解除し、前記面板が接合された前記フレーム部を前記基部から取り外す取外工程と、
前記基部と新たなフレーム部とを機械式接合手段により接合するフレーム部接合工程と、
新たな前記フレーム部の上側から前記面板とは異なる新たな前記面板を差し込んで、新たな前記面板と新たな前記フレーム部とを機械式接合手段により接合する面板接合工程と、を備えること
を特徴とする防音壁ユニットの交換方法。
【請求項12】
請求項1記載の防音壁ユニットを用いた防音壁の構築方法であって、
前記面板と前記フレーム部とを機械式接合手段により接合する面板接合工程を備えること
を特徴とする防音壁の構築方法。
【請求項13】
前記フレーム部と基部とを機械式接合手段により接合するフレーム部接合工程と、
前記基部と構造躯体とを機械式接合手段により接合する基部接合工程と、を備えること
を特徴とする請求項12記載の防音壁の構築方法。
【請求項14】
前記面板接合工程と、前記フレーム部接合工程との後に、前記基部接合工程を行うこと
を特徴とする請求項13記載の防音壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造躯体に並設される防音壁ユニット、防音壁ユニットの交換方法及び防音壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防音壁構造が、H型鋼等の支柱に対して防音パネルを取り付ける構造であることから、防音壁の構成部材が多くなり、現地設置時の施工手間がかかるため、施工費が高くなる。また、列車風圧等の繰返し荷重による構成部材同士の固定ボルトの緩み等、老朽劣化による部材落下のおそれがあった。
【0003】
そこで、現地設置時の施工手間を簡略化でき、老朽劣化による部材落下のおそれを低減するため、特許文献1~4の開示技術が提案されている。
【0004】
特許文献1の防音壁鋼製部材は、防音パネルまたは防音板からなる壁体と、左右縦材と、ベース部材とを備え、壁体、左右縦材及びベース部材が一体化されている。
【0005】
特許文献2の防音壁鋼製部材は、防音パネル又は防音板を有する壁体と、フランジを有するベース部材とからなり、該壁体と該ベース部材のフランジとが機械的に締結される。
【0006】
特許文献3の壁体構造物には、第1平面方向に沿う主面を有する壁体本体部と、壁体本体部の下部に接合されるベース部と、を備え、ベース部は、板状のベースプレートと、ベースプレートをコンクリート基礎に締結するための締結部材と、ベースプレートに貫通されるとともにベースプレートの下面からの突出長を調整するための調整部材と、を有し、調整部材は、下端部がコンクリート基礎の上面に接触される。
【0007】
特許文献4の防音壁ユニットは、鋼製の左右一対の支柱部材と、騒音を遮音する鋼板からなる面板と、を備え、左右一対の支柱部材は、それぞれ並設される方向に沿って折り返された外側フランジを有し、面板は、左右の端部が前記構造躯体の内側に袋状に並設される方向に沿って折り返された左右一対の折返し部を有し、外側フランジと折返し部が、前記構造躯体の内側から接合部材で止め付けられているとともに、左右一対の折返し部の端面には、左右非対称の段部又は凹凸が形成され、隣接する左右一対の折返し部の端面の段部又は凹凸同士を互いに嵌合して面板の外面が面一となるように構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-10452号公報
【特許文献2】特開2019-7193号公報
【特許文献3】特開2022-30287号公報
【特許文献4】特開2019-85754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、防音壁ユニットを構成する部材において、列車等の風圧や飛来物等の影響を受けやすい面板は、最も劣化、損傷し易い構成部材である。一方、面板を支持するベース部材は、面板よりも劣化、損傷しにくい。このように、防音壁ユニットを構成する部材毎に、劣化、損傷の度合いが異なる。この点、特許文献1~4の開示技術では、面板や壁体を取り替える場合には、面板全体や壁体全体を交換する必要がある。このため、面板の交換が容易でない。また、特許文献1~4の開示技術では、面板をベース部材に接合することから、面板がベース部材に対して片持ちの状態で支持される。このため、風荷重等の横荷重が面板に作用して面板とベース部材との接合部分が損傷した場合には、ボルト等の部材の落下が懸念される。
【0010】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、劣化状況に応じて構成部材を容易に交換でき、部材の落下を防止できる防音壁ユニット、防音壁ユニットの交換方法及び防音壁の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る防音壁ユニットは、構造躯体に並設される防音壁ユニットであって、鋼板からなる面板と、前記面板に接合されるフレーム部と、を備え、前記面板は、主板部と、前記主板部の左右の端部から折り返された面板リブと、左右の前記面板リブから互いに近づく方向に向けて折り返される折り返し片と、を有し、前記フレーム部は、前記主板部と前記折り返し片との間に配置され、前記折り返し片は、機械式接合手段により前記フレーム部に接合され、前記面板は、前記フレーム部との接合を解除した状態において、前記フレーム部に沿って上下方向に抜き差し可能に構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る防音壁ユニットの交換方法は、前記面板と前記フレーム部との機械式接合手段による接合を解除し、前記面板を前記フレーム部に沿って上側に抜き去る取外工程と、前記フレーム部の上側から前記面板とは異なる新たな前記面板を差し込んで、新たな前記面板と前記フレーム部とを機械式接合手段により接合する面板接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る防音壁ユニットの交換方法は、構造躯体に接合された前記基部と前記フレーム部との機械式接合手段による接合を解除し、前記面板が接合された前記フレーム部を前記基部から取り外す取外工程と、前記基部と新たなフレーム部とを機械式接合手段により接合するフレーム接合工程と、新たな前記フレーム部の上側から前記面板とは異なる新たな前記面板を差し込んで、新たな前記面板と新たな前記フレーム部とを機械式接合手段により接合する面板接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る防音壁の構築方法は、本発明に係る防音壁ユニットを用いた防音壁の構築方法であって、前記面板と前記フレーム部とを機械式接合手段により接合する面板接合工程を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、劣化状況に応じて構成部材を容易に交換でき、部材の落下を防止できる防音壁ユニット、防音壁ユニットの交換方法及び防音壁の構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、実施形態における防音壁ユニットの一例を用いた防音壁を示す側面図であり、図1(b)は、図1(a)の防音壁ユニットに付属部材が取り付けられた状態を示す側面図である。
図2図2は、実施形態における防音壁ユニットの一例を示す斜視図である。
図3図3(a)は、実施形態における防音壁ユニットの一例を示す平面図であり、図3(b)は、実施形態における防音壁ユニットの一例を示す正面図である。
図4図4(a)は、実施形態における防音壁ユニットの面板の一例を示す平面図であり、図4(b)は、実施形態における防音壁ユニットの面板の一例を示す正面図である。
図5図5(a)は、実施形態における防音壁ユニットのフレーム部と基部との一例を示す側面図であり、図5(b)は、実施形態における防音壁ユニットのフレーム部と基部の一例を示す正面図である。
図6図6(a)は、フレーム部接合工程を説明する図であり、図6(b)は、面板接合工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した防音壁ユニット、防音壁ユニットの交換方法及び防音壁の構築方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、防音壁ユニット1は、鉄道橋や道路橋などの橋梁8の縁に沿って高欄として橋梁8の地覆部などの構造躯体に設けられる。また、複数の防音壁ユニット1が橋梁8の縁に沿って並設され、橋梁8内となる線路や道路から発生する騒音が民地側に漏れるのを防止する防音壁を構成する。
【0019】
図1(b)に示すように、防音壁ユニット1は、蓋受け部材82、吸音パネル83、保持部材84等の付属部材が設けられる。蓋受け部材82は、橋梁8の地覆部に形成されるトラフ80の上側に設けられる蓋81が載置される。蓋81は、トラフ80の上端縁と、防音壁ユニット1に固定された蓋受け部材82と、に載置される。吸音パネル83は、所定の吸音性能を有する周知の吸音パネルである。保持部材84は、漏えい同軸ケーブル(LCX)ケーブル等の部材を保持することができる。
【0020】
図2図3(a)及び図3(b)に示すように、防音壁ユニット1は、面板2と、面板2に機械式接合手段により接合されるフレーム部3と、フレーム部3に機械式接合手段により接合される基部4と、を備える。面板2は、フレーム部3との接合を解除した状態において、フレーム部3に沿って上下方向に抜き差し可能に構成される。
【0021】
面板2は、鋼板からなり、所定の形状に折り曲げられて構成される。面板2は、主板部21と、面板リブ22と、折り返し片23と、を有する。
【0022】
主板部21は、騒音側とは反対側である民地側(背面側)に配置される。
【0023】
面板リブ22は、主板部21の左右の端部から騒音側(正面側)に折り返される。一対の面板リブ22の一方は、並設する他の防音壁ユニット1に向けて突出される突起部24が形成される。一対の面板リブ22の他方は、並設する他の防音壁ユニット1における突起部24を嵌合させるための溝部25が形成される。溝部25には、ゴム等の間詰め材26が設けられる。突起部24と溝部25とを嵌合したとき、間詰め材26が押し潰されて突起部24と溝部25との隙間を低減できるため、この隙間からの騒音の漏れを防止できる。
【0024】
折り返し片23は、左右の面板リブ22から互いに近づく方向に向けて折り返される。折り返し片23は、第1貫通孔27が形成される。第1貫通孔27には、機械式接合手段としてのボルト51が設けられる。機械式接合手段は、接合とその解除ができるものであり、以下、機械式接合手段としてボルトを例に説明する。機械式接合手段としては、ボルトの他、リベット等であってもよい。
【0025】
図2図3(a)及び図3(b)に示すように、フレーム部3は、面板2の内側となる主板部21と折り返し片23との間に配置される。フレーム部3は、上下方向に延伸する一対の縦材31と、一対の縦材31を繋ぐ横材32と、を有する。
【0026】
縦材31は、機械式接合手段としてのボルト51により折り返し片23に接合される。縦材31は、例えば溝形鋼が用いられ、折り返し片23に沿って延びる一対の縦材フランジ33、34と、一対の縦材フランジ33、34を繋ぐとともに面板リブ22に沿って延びる縦材ウェブ35と、を有する。一方の縦材フランジ33は、折り返し片23にボルト51により接合される。
【0027】
図5(a)及び図5(b)に示すように、一方の縦材フランジ33には、第2貫通孔36が形成される。一方の縦材フランジ33の内面には、第2貫通孔36に対向する第1ナット51aが溶接される。
【0028】
図3(b)、図5(a)及び図5(b)に示すように、第2貫通孔36は、折り返し片23の第1貫通孔27に対向される。第2貫通孔36は、折り返し片23と接合するためのボルト51が配置される。第1ナット51aは、ボルト51が螺合される。つまり、縦材フランジ33の内面に第1ナット51aが固定されることにより、ボルト51がいわゆるワンサイドボルトとなって、折り返し片23と縦材フランジ33とを正面側から接合できる。
【0029】
加えて、図1(a)及び図1(b)に示すように、ボルト51は、上記した蓋受け部材82、吸音パネル83、保持部材84等の付属部材を折り返し片23と縦材フランジ33とに接合する。つまり、縦材フランジ33の内面に第1ナット51aが固定されることにより、ボルト51がいわゆるワンサイドボルトとなって、蓋受け部材82、吸音パネル83、保持部材84等の付属部材を折り返し片23と縦材フランジ33とに正面側から接合できる。
【0030】
図5(a)及び図5(b)に示すように、他方の縦材フランジ34は、横材32にボルト53により接合される。
【0031】
図3(a)及び図3(b)に示すように、縦材ウェブ35は、面板リブ22から離間される。これにより、縦材ウェブ35と面板リブ22との間に空間Sが形成される。この空間が形成されることにより、上記した第1ナット51aや溝部25を設けることができる。また、図2に示すように、縦材ウェブ35と面板リブ22とが離間されることにより、これらが面接触しないため、縦材ウェブ35と面板リブ22とのガタつきを抑制できる。
【0032】
図5に示すように、縦材31の頂部には、アイボルト等の吊治具39を設けるための第2ナット39aが設けられる。第2ナット39aに吊治具39を設けることにより、クレーン等の揚重装置によりフレーム部3を吊り上げ易くなる。
【0033】
縦材31の上下方向の長さは、面板2の上下方向の長さと略同じである。この場合、風荷重等の水平荷重が面板2に作用した場合に、面板2と略同じ長さの縦材31に荷重を分散させ易くなる。なお、縦材31の長さは、面板2の長さの1/2以上あることが好ましい。
【0034】
横材32は、例えば溝形鋼が用いられる。横材32は、例えば縦材31の上端部と、中央部と、下端部と、の3段に配置されるが、横材32の段数は任意である。
【0035】
図2に示すように、基部4は、構造躯体にアンカーボルト(図示省略)等により固定される。また、基部4は、フレーム部3に機械式接合手段(図示省略)により接合される。基部4は、ベースプレート41と、ベースフランジ42と、ベースウェブ43と、を有する。
【0036】
ベースプレート41は、鋼板が用いられる。ベースプレート41には、構造躯体に接合するアンカーボルトを設けるための孔45が形成される。ベースフランジ42は、ベースプレート41から起立される。
【0037】
図3(a)及び図3(b)に示すように、ベースフランジ42は、機械式接合手段としてのボルト52により縦材31に接合される。ベースフランジ42は、一対設けられる。一対のベースフランジ42は、正面側の端部が互いに近づく方向に向けて折り返される折り返し片44が形成される。折り返し片44によりベースフランジ42の剛性を高めることができる。
【0038】
図5に示すように、ベースフランジ42の正面側には、縦材31よりもはみ出したはみ出し部46を有し、はみ出し部46の上端の正面側は、切り欠き部42aを有する。切り欠き部42aにより、基部4を構造躯体に接合するアンカーボルトを締結するレンチ等の工具を回し易くなる。また、切り欠き部42aにより、ベースフランジ42の軽量化を図ることができる。
【0039】
図3(a)及び図3(b)に示すように、ベースウェブ43は、ベースプレート41から起立される。ベースウェブ43は、機械式接合手段としてのボルト52により横材32に接合される。
【0040】
<防音壁の構築方法>
防音壁の構築方法は、防音壁ユニット1を用いて構築される。防音壁の構築方法は、面板接合工程と、フレーム部接合工程と、基部接合工程と、を備える。
【0041】
図6(a)に示すように、フレーム部接合工程は、フレーム部3と基部4とを接合する。
【0042】
図6(b)に示すように、面板接合工程は、面板2とフレーム部3とを接合する。
【0043】
基部接合工程は、基部4と構造躯体とをアンカーボルトにより接合する。
【0044】
防音壁の構築方法では、フレーム部接合工程と面板接合工程との後に、基部接合工程を行うことが好ましい。すなわち、防音壁の構築する際には、面板2とフレーム部3と基部4とを工場等において予め接合して、現場に搬入する。そして、面板2とフレーム部3とが接合された基部4を構造躯体に接合する。これにより、防音壁の構築する際に現場での作業を減らすことができるため、施工が容易となる。
【0045】
なお、防音壁の構築方法は、面板接合工程と、フレーム部接合工程と、基部接合工程と、の順序は任意である。
【0046】
<防音壁ユニット1の交換方法:面板2の交換>
次に、防音壁ユニット1の交換方法について、説明する。防音壁ユニット1の交換方法は、先ず、図2に示すように、防音壁ユニット1が構造躯体に設けられた状態から開始する。面板2を交換する防音壁ユニット1の交換方法は、取外工程と、面板接合工程と、を備える。
【0047】
取外工程は、構造躯体に設置された防音壁ユニット1における面板2とフレーム部3との接合を解除し、面板2をフレーム部3に沿って上側に抜き去る。
【0048】
そして、面板接合工程では、取外工程において面板2との接合を解除した既設のフレーム部3の上側から新たな面板2を差し込んで、新たな面板2と既設のフレーム部3とを機械式接合手段により接合する。
【0049】
これにより、面板2を交換する防音壁ユニット1の交換方法が完了する。
【0050】
<防音壁ユニット1の交換方法:面板2とフレーム部3の交換>
次に、面板2とフレーム部3とを交換する防音壁ユニット1の交換方法について、説明する。面板2とフレーム部3とを交換する防音壁ユニット1の交換方法は、取外工程と、面板接合工程と、に加え、フレーム部接合工程と、を更に備える。
【0051】
先ず、取外工程では、構造躯体に接合された基部4と既設のフレーム部3との機械式接合手段による接合を解除し、既設のフレーム部3を基部4から取り外す。取外工程では、既設のフレーム部3を基部4から取り外す際に、面板2が接合された状態でフレーム部3を取り外してもよい。面板2とフレーム部3とを一括で取り外すことができるため、取り外し作業が容易となる。
【0052】
フレーム部接合工程は、取外工程において既設のフレーム部3を基部4から取り外した後、基部4と新たなフレーム部3とを機械式接合手段により接合する。そして、面板接合工程は、新たな面板2を新たなフレーム部3に差し込んで、新たな面板2と新たなフレーム部3とを接合する。
【0053】
これにより、面板2とフレーム部3とを交換する防音壁ユニット1の交換方法が完了する。なお、防音壁ユニット1の交換方法では、面板接合工程と、フレーム部接合工程と、の順序は任意である。
【0054】
<防音壁ユニット1の交換方法:面板2とフレーム部3と基部4の交換>
次に、面板2とフレーム部3と基部4とを交換する防音壁ユニット1の交換方法について、説明する。面板2とフレーム部3と基部4とを交換する防音壁ユニット1の交換方法は、取外工程と、フレーム部接合工程と、面板接合工程と、に加え、基部接合工程を更に備える。
【0055】
先ず、取外工程では、基部4を構造躯体から取り外す。取外工程では、構造躯体から基部4を構造躯体から取り外す際に、面板2とフレーム部3とが接合された状態で基部4を取り外してもよい。面板2とフレーム部3と基部4を一括で取り外すことができるため、取り外し作業が容易となる。
【0056】
取外工程において基部4を構造躯体から取り外した後、上記した防音壁の構築方法を行う。つまり、基部接合工程と、フレーム部接合工程と、面板接合工程と、を行う。
【0057】
これにより、面板2とフレーム部3と基部4とを交換する防音壁ユニット1の交換方法が完了する。なお、防音壁ユニット1の交換方法では、面板接合工程と、フレーム部接合工程と、基部接合工程と、の順序は任意である。
【0058】
本実施形態によれば、フレーム部3は、面板2の主板部21と折り返し片23との間に配置され、折り返し片23は、機械式接合手段によりフレーム部3に接合され、面板2は、フレーム部3との接合を解除した状態において、フレーム部3に沿って上下方向に抜き差し可能に構成される。フレーム部3が面板2に囲われるため、塩分を含んだ海風や、工場等の排ガス等の劣化因子、列車の風圧等による飛来物に対して、フレーム部3が面板2により保護される。これにより、フレーム部3の寿命を延ばすことができ、劣化し易い面板2のみを交換することもできる。また、フレーム部3も劣化していれば、面板2とフレーム部3とを交換することもできる。面板2の交換に際しては、面板2をフレーム部3に差し込んで、互いをボルト等により接合するだけでよい。このため、劣化状況に応じて構成部材を容易に交換できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、面板2がフレーム部3に沿って上下方向に抜き差し可能に構成されるため、風荷重等の水平荷重が面板2に作用した場合、面板2に接合されたフレーム部3に荷重を分散させることができる。このため、面板2やボルト51等の部材の落下を防止できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、折り返し片23は、機械式接合手段によりフレーム部3に接合される。これにより、フレーム部3への面板2の取り外しと接合とを軌道が設置される正面側から行うことができる。このため、例えば高架橋等に防音壁ユニット1が設けられる場合であっても、高架橋の外側に足場等を設ける必要がないため、容易に点検・交換を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、構造躯体に接合される基部4を更に備え、基部4は、フレーム部3に機械式接合手段により接合される。これにより、基部4の交換も容易となる。
【0062】
本実施形態によれば、フレーム部3は、折り返し片23が接合される一対の縦材31と、一対の縦材31を繋ぐ横材32と、を有する。これにより、フレーム部3の剛性を高めることができる。このため、フレーム部3の形状が保ちやすくなり、面板2の抜き差しが更に容易となる。
【0063】
本実施形態によれば、基部4は、ベースプレート41と、ベースプレート41から起立されるとともに縦材31に接合されるベースフランジ42と、を有する。これにより、基部4の剛性を高めることができる。また、フレーム部3と基部4との接合を軌道が設置される正面側から行うことができる。このため、例えば高架橋等に防音壁ユニット1が設けられる場合であっても、高架橋の外側に足場等を設ける必要がないため、容易に交換を行うことができる。
【0064】
本実施形態によれば、ベースフランジ42の正面側には、縦材31よりもはみ出したはみ出し部46を有し、はみ出し部46の上端の正面側は、切り欠き部42aを有する。これにより、基部4を構造躯体に接合するアンカーボルトを締結するレンチ等の工具を回し易くなる。また、切り欠き部42aにより、ベースフランジ42の軽量化を図ることができる。
【0065】
本実施形態によれば、縦材31は、折り返し片23に沿って延びる一対の縦材フランジ33、34と、一対の縦材フランジ33、34を繋ぐとともに面板リブ22に沿って縦材ウェブ35と、を有し、折り返し片23は、一方の縦材フランジ33に接合され、縦材ウェブ35は、面板リブ22から離間される。これにより、縦材ウェブ35と面板リブ22との間に空間が形成される。この空間が形成されることにより、上記した第1ナット51aや溝部25を設けることができる。また、縦材ウェブ35と面板リブ22とが面で接触される場合にはこれらの面接触によるガタつきが生じやすくなるところ、縦材ウェブ35と面板リブ22とが離間されることにより、これらが面接触しないため、縦材ウェブ35と面板リブ22とのガタつきを抑制できる。
【0066】
本実施形態によれば、折り返し片23は、第1貫通孔27が形成され、縦材31は、第1貫通孔27に対向する第2貫通孔36が形成され、第2貫通孔36を挟んで第1貫通孔27の反対側には第1ナット51aが固定される。これにより、ボルト51がいわゆるワンサイドボルトとなって、ボルト51により蓋受け部材82、吸音パネル83、保持部材84等の付属部材を折り返し片23と縦材フランジ33とに正面側から接合できる。
【0067】
本実施形態によれば、一方の面板リブ22は、隣接する一方の防音壁ユニット1の面板リブ22に向けて突出された突起部24を有し、他方の面板リブ22は、隣接する他方の防音壁ユニットの突起部24が嵌合される溝部25を有し、溝部25は、間詰め材26が設けられる。これにより、突起部24と溝部25とを嵌合したとき、間詰め材26が押し潰されて突起部24と溝部25との隙間を低減できるため、この隙間からの騒音の漏れを防止できる。
【0068】
本実施形態によれば、フレーム部3の頂部は、吊治具39を接合するための第2ナット39aが固定される。第2ナット39aにアイボルト等の吊治具39を設けることにより、クレーン等の揚重装置によりフレーム部3を吊り上げ易くなる。
【0069】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 :防音壁ユニット
2 :面板
21 :主板部
22 :面板リブ
23 :折り返し片
24 :突起部
25 :溝部
26 :間詰め材
27 :第1貫通孔
3 :フレーム部
31 :縦材
32 :横材
33 :縦材フランジ
34 :縦材フランジ
35 :縦材ウェブ
36 :第2貫通孔
39 :吊治具
39a :第2ナット
4 :基部
41 :ベースプレート
42 :ベースフランジ
42a :切り欠き部
43 :ベースウェブ
44 :折り返し片
45 :孔
51 :ボルト
51a :第1ナット
52 :ボルト
53 :ボルト
8 :橋梁
80 :トラフ
81 :蓋
82 :蓋受け部材
83 :吸音パネル
84 :保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6