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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154064
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】レトルト対応シーラントフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20251002BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20251002BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056854
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】足立 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】富永 真二
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AD01
3E086BA15
3E086BB41
3E086BB52
3E086CA01
4F100AB10D
4F100AK04B
4F100AK07D
4F100AK42D
4F100AK48D
4F100AK62A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB03
4F100EJ17
4F100EJ37D
4F100EJ42
4F100GB15
4F100GB23
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JJ03
4F100JJ04
4F100JK02
4F100JK07
4F100JK10
4F100JL08
4F100JL12
4F100JL14
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 125℃でのレトルト処理にも対応可能であるシーラントフィルム、及びそれを用いた食品包装用フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも、最内層、中間層、最外層を有し、その最内層が以下の条件(a-1)~(a-3)を満たす樹脂(A)を55~100重量%、中間層が以下の条件(b-2)及び(b-2)を満たす樹脂(B)を20~100重量%含むことを特徴とするレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
樹脂(A)
(a-1)エチレンと炭素数が6以上のα-オレフィンを共重合させた直鎖状中密度ポリエチレン
(a-2)密度が0.930~0.950g/cm
(a-3)MFRが0.1~20g/10分
樹脂(B)
(b-1)密度が0.950~0.970g/cm
(b-2)MFRが0.05~10g/10分
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最内層、中間層、最外層を有し、その最内層が以下の条件(a-1)~(a-3)を満たす樹脂(A)を55~100重量%、中間層が以下の条件(b-2)及び(b-2)を満たすポリエチレン樹脂(B)を20~100重量%含むことを特徴とするレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
樹脂(A)
(a-1)エチレンと炭素数が6以上のα-オレフィンを共重合させた直鎖状中密度ポリエチレン
(a-2)密度が0.930~0.950g/cm
(a-3)MFRが0.1~20g/10分
樹脂(B)
(b-1)密度が0.950~0.970g/cm
(b-2)MFRが0.05~10g/10分
【請求項2】
最内層の樹脂(A)のDSCによる最大の溶融ピークが125℃以上に存在することを特徴とする、請求項1に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
【請求項3】
該多層シーラントフィルムにおいて、1%引張弾性率が縦方向及び横方向において、それぞれ400MPa以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
【請求項4】
該多層シーラントフィルムにおいて、フィルムインパクトテスター(1/2インチヘッド使用)を用いて測定した衝撃強度が10J/mm以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
【請求項5】
該多層シーラントフィルムを用いて作製したパウチが125℃で30分の加熱加圧殺菌処理した後、融着が見られないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
【請求項6】
該多層シーラントフィルムの最外層の隣にPET、Ny、OPP、Alから選ばれる基材層を少なくとも1層以上積層することを特徴とする、請求項1又は2に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムを用いた食品包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、125℃のレトルト処理に適応可能なシーラントフィルム、及びこれを用いた食品包装用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、個食文化の浸透やコンビニエンスストアの増加により、食品包装袋に対する要求性能も時代に応じて変化してきている。たとえば、食品包装袋には、ロングライフ化のための高温加熱滅菌に耐え、冷凍やチルドでの低温流通を経た後に、電子レンジやレトルトで加熱されるという幅広い温度帯での強度適性が要求されてきている。このような食品は、冷蔵または冷凍輸送保管後加熱されるため、包装袋には耐寒性も耐熱性も要求されるようになっている。
また、店頭での視認性や加熱調理時の形態保持の面で、スタンドパウチ形式の包装デザインが採用されており、構成するフィルムとして高剛性化が求められる。
従来、電子レンジやレトルトへ対応する包装袋にはシール層に融点の高いポリプロピレン系樹脂が多く用いられてきた。しかし、ポリプロピレンには耐寒性がなく、輸送時に破袋が発生するという問題がある。一方、シーラントフィルムに多く用いられるポリエチレンは耐寒性に優れていることが知られているが(特許文献1)、ポリプロピレンに比べて融点が低く、耐熱性に劣り、レトルト後にフィルム同士が融着するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-15804
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、125℃でのレトルト処理にも対応可能であるシーラントフィルム、及びそれを用いた食品包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため種々の研究を重ねた結果、近年、新たに製造開発した、特定物性を有する直鎖状中密度ポリエチレン樹脂を使用し、更に最内層とそれ以外の層を有する多層フィルムにおいて、特定の樹脂層構成によるフィルムを用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも、最内層、中間層、最外層を有し、その最内層が以下の条件(a-1)~(a-3)を満たす樹脂(A)を55~100重量%、中間層が以下の条件(b-2)及び(b-2)を満たすポリエチレン樹脂(B)を20~100重量%含むことを特徴とするレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムが提供される。
樹脂(A)
(a-1)エチレンと炭素数が6以上のα-オレフィンを共重合させた直鎖状中密度ポリエチレン
(a-2)密度が0.930~0.950g/cm
(a-3)MFRが0.1~20g/10分
樹脂(B)
(b-1)密度が0.950~0.970g/cm
(b-2)MFRが0.05~10g/10分
第2の発明によれば、最内層の樹脂(A)のDSCによる最大の溶融ピークが125℃以上に存在することを特徴とする、第1の発明に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムが提供される。
第3の発明によれば、該多層シーラントフィルムにおいて、1%引張弾性率が縦方向及び横方向において、それぞれ400MPa以上であることを特徴とする、第1又は2の発明に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムが提供される。
第4の発明によれば、該多層シーラントフィルムにおいて、フィルムインパクトテスター(1/2インチヘッド使用)を用いて測定した衝撃強度が10J/mm以上であることを特徴とする、第1から3の発明に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムが提供される。
第5の発明によれば、該多層シーラントフィルムを用いて作製したパウチが125℃で30分の加熱加圧殺菌処理した後、融着が見られないことを特徴とする、第1から4の発明に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムが提供される。
第6の発明によれば、該多層シーラントフィルムの最外層の隣にPET(ポリエチレンテレフタレート)、Ny(ナイロン)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、Al(アルミニウム)から選ばれる基材層を少なくとも1層以上積層することを特徴とする、第1から5の発明に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムが提供される。
第7の発明によれば、第1から6の発明に記載のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムを用いた食品包装用フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレトルト処理対応可能な多層シーラントフィルムは、125℃の加熱加圧処理後においてフィルム同士の融着が見られないという特徴を有する。そのため、該シーラントフィルムを用いることにより、より高温の加熱加圧殺菌処理やレトルト処理に対応できる食品包装用フィルム、レトルト食品包装用フィルムを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、少なくとも、最内層、中間層、最外層を有し、その最内層に樹脂(A)、中間層にポリエチレン樹脂(B)を含むレトルト処理対応可能なシーラントフィルムである。以下に各樹脂を構成する成分、その特性、それらを用いた食品包装用フィルムについて詳細に説明する。
【0009】
樹脂(A)
(a-1)
本発明の樹脂(A)とは、具体的には炭素数6以上のα-オレフィンを共重合させた直鎖状中密度ポリエチレンである。
ここで、炭素数6以上のα-オレフィンとしては、例えば、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等が挙げられ、中でも、炭素数6~12であるのが好ましく、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数6~10であるものが特に好ましい。
【0010】
また、エチレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの含有量は、好ましくは3~24重量%、より好ましくは5~20重量%、さらに好ましくは7~15重量%である。α-オレフィンの含有量が3重量%未満では、フィルムとしての耐ピンホール性に劣りやすくなる。
【0011】
さらに、本発明における樹脂(A)は、下記の特性(a-2)~(a-3)を満たすことが必要である。
(a-2)密度
樹脂(A)の密度は、0.930~0.950g/cmであり、好ましくは0.932~0.950g/cm、更に好ましくは0.934~0.948g/cmである。ここで、密度は、JIS K7112-1999の「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管法)に準拠して測定する値である。
【0012】
(a-3)メルトフローレイト(MFR)
樹脂(A)のMFRは0.1~20g/10分(min)であり、好ましくは0.3~15g/10分であり、より好ましくは0.5~10g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では、フィルムへ成形加工するとき、樹脂圧が上がる等して加工性が劣ることとなり、一方、MFRが20g/10分超では、包装用フィルムとしての機械的強度、フィルム成形加工時のバブル安定性等の加工性が劣ることとなる。
ここで、MFRは、JIS K7210-1999の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定する値である。
【0013】
本発明で用いる樹脂(A)としては、チーグラー・ナッタ型触媒やフィリップス型触媒等の存在下に共重合されたものより、カミンスキー型触媒の存在下に共重合されたものであるのが好ましい。
カミンスキー型触媒によるエチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、特開昭58-19309号、特開昭59-95292号、特開昭60-35005号、特開昭60-35006号、特開昭60-35007号、特開昭60-35008号、特開昭60-35009号、特開昭61-130314号、特開平3-163088号の各公報、欧州特許公開第420436号公報、米国特許第5055438号明細書、及び国際公開WO91/04257号公報等に記載されている、メタロセン系触媒、特にメタロセン・アルモキサン系触媒を用い、又は例えば、国際公開WO92/07123号公報等に記載されている、メタロセン化合物と該化合物と反応して安定なアニオンとなる化合物からなる触媒を用い、例えば、気相法、スラリー法、溶液法、高圧イオン重合法等の重合法によって製造することができる。
【0014】
中でも、本発明における前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、モノ-、ジ-、又はトリ-シクロペンタジエニル環若しくは置換シクロペンタジエニル環を配位子とした、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、又は白金等の4価の遷移金属化合物をメタロセン化合物とする触媒を用いて重合されたもの、特にハフニウム化合物を中心金属とした遷移金属化合物をメタロセン化合物とする触媒を用いて重合されたものであるのが好ましい。
更に好ましくは、特許3539801号等に記載されているような、特別な触媒種により製造されるエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。
【0015】
(2)ポリエチレン樹脂(B)
本発明のポリエチレン樹脂(B)は以下の特性以下の特性(b-1)、(b-2)を満たすと好ましい。(なお、ポリエチレン樹脂(B)は、樹脂(A)に該当するものを除く)
(b-1)密度
ポリエチレン樹脂(B)の密度は、0.950~0.970g/cmであり、好ましくは0.955~0.970g/cmである。更に好ましくは、0.958~0.968g/cm以下である。ここで、密度は、JIS K7112-1999の「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管法)に準拠して測定する値である。
【0016】
(b-2)メルトフローレイト(MFR)
ポリエチレン樹脂(B)のMFRは、0.05~10g/10分であり、好ましくは0.1~10g/10分である。更に好ましくは0.5~10g/10分である。MFRが0.05g/10分未満では、フィルムへ成形加工するとき、樹脂圧が上がる等して加工性が劣ることとなり、一方、MFRが10g/10分超では、包装用フィルムとしての機械的強度、フィルム成形加工時のバブル安定性等の加工性が劣ることとなる。
ここで、MFRは、JIS K7210-1999の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定する値である。
【0017】
本発明で用いるポリエチレン樹脂(B)としては、チーグラー触媒やクロム触媒の存在下に製造されたものなどの公知の高密度ポリエチレンから選択しうる。例えば、日本ポリエチレン社製の「ノバテックHD」(商標名)の中から樹脂を例示することができる。
【0018】
(3)その他の添加剤
本発明の各層を構成するエチレン系共重合体組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂やゴム、並びに、熱可塑性樹脂に通常用いられる各種の添加剤、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、防曇剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、接着性付与剤、難燃剤、着色剤、充填材等が添加されていてもよい。これらの成分は、各成分に含まれていても良いし、エチレン系共重合体組成物の製造時に配合しても良い。
【0019】
(4)フィルムの成形
フィルムの製造方法は、多層ダイを用いて押出機で溶融された樹脂をダイス先端で接合させ積層構造とする多層インフレーション成形法、多層Tダイ成形法等の共押出成形法の他に、多層ブロー成形法等の通常の成形法が適用され特に限定されない。
【0020】
(5)多層フィルムの構成
本願発明のシーラントフィルムは、少なくとも、最内層と、中間層と、最外層の3層以上で構成される。最内層とは、多層フィルム表面に位置する層であり、該フィルムで袋等を構成する際には内側に位置する層を最内層という。
多層構成においては、最内層とその他の層の間に、バリア性又は接着性等を有する他の任意の層を設けてもよいが、好ましくはシンプルな構成である。また、最内層とその他の層における層比は特に限定されない。多層フィルムの全体厚さは10~500μm、好ましくは20~200μmである。
【0021】
(6)最内層
本発明の最内層は(a-1)エチレンと炭素数が6以上のαオレフィンを共重合させた直鎖状中密度ポリエチレンで、(a-2)密度が0.930~0.950g/cm、(a-3)MFRが0.1~20g/10分の樹脂(A)を55~100重量%を含有することを特徴とし、レトルト処理対応可能なフィルムを得る上で好ましい。樹脂(A)の好ましい特性は前記のとおりである。
【0022】
(7)中間層
本発明の中間層は(b-1)密度が0.950~0.970g/cm、(b-2)MFRが0.05~10g/10分のポリエチレン樹脂(B)を20~100重量%含むと好ましい。
この構成により、レトルト処理対応可能なシーラントフィルムに要求される耐熱性を付与することが可能となる。
【0023】
(8)溶融ピーク
本発明のレトルト処理対応可能なシーラントフィルムは好ましい特性として、最内層の樹脂(A)のDSCによる溶融ピークが特定の温度以上となることを特徴とする。すなわち、DSCによる樹脂(A)の最大の溶融ピークが125℃以上に存在すると好ましい。上限は特に限定されない。
【0024】
(9)1%引張弾性率
本発明のレトルト処理対応可能なシーラントフィルムは好ましい特性として、特定値以上の1%引張弾性率を有することを特徴とする。すなわち、JIS K7127を参考として測定される1%引張弾性率が、フィルムの流れ方向(MD)、垂直方向(TD)の双方において、400MPa以上であることが好ましい。
【0025】
(10)衝撃強度
本発明のレトルト処理対応可能なシーラントフィルムは好ましい特性として、特定以上の衝撃強度を有することを特徴とする。すなわち、フィルムインパクトテスターを用いて測定した衝撃強度が10J/mm以上であることが好ましい。
この衝撃強度は株式会社東洋精機製作所のフィルムインパクトテスターを用いて測定することができ、その際が1/2インチヘッドを使用することが好ましい。
【0026】
(11)耐熱性
本発明のレトルト処理対応可能なシーラントフィルムは好ましい特性として、125℃の加熱加圧処理後も最内層同士が融着しないことを特徴とする。この加熱時の圧力、処理時間は特に限定されないが、例えば125℃で30分の加熱を行う。
【0027】
(12)他の基材との組み合わせ
本発明のレトルト処理対応可能なシーラントフィルム、すなわちレトルト用シーラントフィルムを用いて、酸素バリア性を有する基材フィルムの内容物側に該シーラントフィルムを配して、パウチを構成してもよい。具体的には、シーラントフィルムの、最内層を設ける側とは反対側の層(最外層)に、PET(ポリエチレンテレフタレート)、Ny(ナイロン),OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、Al(アルミニウム)から選ばれる基材層を積層する。他の機能を有する基材と組み合わせることによって、レトルト食品用パッケージ(レトルト食品包装用フィルム)、ロングライフ食品パッケージとして好適な態様となる。
【実施例0028】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、さらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた試験・評価方法、材料は以下の通りである。
【0029】
1.試験、評価方法
(1)密度:JIS K7112-1999の「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管法)に準拠して測定した。
(2)MFR:JIS K7210-1999の「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定した。
(3)溶融ピーク
下記装置、条件にて測定した。
装置:DSC7020(株式会社日立ハイテクサイエンス)
測定条件:10℃/1分で200℃まで昇温、5分保持の後、10℃/1分で20℃まで降温し5分保持する。その後、再び10℃/1分で200℃まで昇温した際の最も融解エネルギーの大きいピークを溶融ピークと判断する。
(4)1%引張弾性率
JIS K7127を参考にして、下記装置、条件にて測定した。MDは流れ方向(MD:Machine Direction)であり、TDは垂直方向(TD:Transverse Direction)の値である。
装置:テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック)
測定環境:温度23℃、湿度50%
測定条件:チャック間;100mm、試験速度;25mm/min
(5)衝撃強度
下記装置、条件にて測定した。
装置:フィルムインパクトテスター(株式会社東洋精機製作所製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
測定条件:1/2インチ衝撃ヘッド
(6)加熱加圧処理
下記装置、条件にて加熱加圧処理を実施した。処理には、該耐熱用シーラントフィルムと、ユニチカ株式会社製ナイロンフィルム「EMBLEM(ONY)」を組み合わせ、中に水を適量入れたパウチを作製した。
装置:高温高圧シャワー滅菌(殺菌)装置 YRF-40/50E(サクラエスアイ株式会社製)
処理条件:125℃×30分処理
耐熱性については、次の基準で判断した。
〇:目視にて、最内層同士の融着が見られない
△:目視にて、軽いブロッキングが見られるが、実用上に問題はない
×:目視にて、最内層同士の融着が見られる
【0030】
2.材料
密度が0.935g/cm、MFRが4.4g/10分である、メタロセン系直鎖状中密度ポリエチレンLL(1)(エチレンとC6のα-オレフィンの共重合体)
密度が0.963g/cm、MFRが7.0g/10分である、高密度ポリエチレンHD(1)
密度が0.931g/cm、MFRが4.0g/10分である、メタロセン系直鎖状中密度ポリエチレンLL(2)(エチレンとC6のα-オレフィンの共重合体)
密度が0.912g/cm、MFRが2.0g/10分である、直鎖状中密度ポリエチレンLL(3)
密度が0.927g/cm、MFRが2.1g/10分である、直鎖状中密度ポリエチレンLL(4)
密度が0.938g/cm、MFRが2.1g/10分である、直鎖状中密度ポリエチレンLL(5)
【0031】
(実施例1)
表1の配合に従い多層Tダイ成形機(ダイリップ;1mm、ダイス温度;240℃)を用い、3層の合計厚み60μmのシート状フィルムを成形した。最内層:中間層:最外層の厚みは12μm:36μm:12μmであった。得られたフィルムにおいて弾性率、衝撃強度、耐熱性を評価した。その結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1より、実施例1、2は比較例1~3と比較して、125℃のレトルト処理後も使用上に問題となるような融着が見られず、かつ衝撃強度に優れることが分かる。
したがって、本発明のシーラントフィルムは、125℃という高熱のレトルト処理に相当する温度での加熱加圧処理に対する耐熱性と、包装用フィルムとしての強度を備えており、大きな技術的意義を持つことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の多層構成からなるシーラントフィルムは、125℃の加熱加圧処理後でも最内層同士の融着が生じず、かつ十分な衝撃強度を有しているので、加熱加圧殺菌処理が必要なレトルト食品をはじめとする食品包装用フィルムとして好適に用いられる。