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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154142
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20251002BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20251002BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20251002BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20251002BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/30 D
H01L23/00 C
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056991
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【テーマコード(参考)】
4M109
5H770
【Fターム(参考)】
4M109BA03
4M109DB09
4M109EE06
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】絶縁基板の表面に形成された導電層から放電することがある。
【解決手段】パワーモジュール1は、絶縁基板11と、絶縁基板11に実装される半導体素子16と、半導体素子16とともに絶縁基板11を収容するケーシング70と、ケーシング70内の半導体素子16を封止する封止材60と、を備える。絶縁基板11の表面には、半導体素子16を実装する導電層12を少なくとも含む導体パターン12Pが形成されており、導電層12の表面のうち、半導体素子16が実装される被実装領域13が露出するように、導電層12の周縁とともに、絶縁基板11の表面が、絶縁フィルム14で被覆されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧用のパワーモジュールであって、
前記パワーモジュールは、
セラミックスからなる絶縁基板と、
前記絶縁基板に実装される半導体素子と、
前記半導体素子とともに前記絶縁基板を収容するケーシングと、
前記ケーシング内の前記半導体素子を封止する封止材と、を備えており、
前記絶縁基板の表面には、前記半導体素子を実装する導電層を少なくとも含む導体パターンが形成されており、
前記導電層の表面のうち、前記半導体素子が実装される被実装領域が露出するように、前記導電層の周縁とともに、前記絶縁基板の表面が、絶縁フィルムで被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記絶縁フィルムには、前記半導体素子の設置面の形状に応じた形状の素子用開口部が形成されることにより、前記被実装領域は、前記半導体素子の設置面の形状に応じた形状になっていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記被実装領域と前記素子用開口部とにより、凹部が形成されており、
前記凹部の少なくとも一部を埋めるように、前記被実装領域にはめっき層がさらに形成されており、
前記めっき層の厚さは、前記凹部の深さ以下であることを特徴とする請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記導体パターンには、前記導電層を介して前記半導体素子に導通する接続端子が立設されており、
前記絶縁フィルムには、前記接続端子が立設された位置に、前記接続端子の端面の形状に応じた端子用開口部が形成されることにより、前記導体パターンの導電層の表面には、前記絶縁フィルムから露出し、前記接続端子の端面に接触する接触領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記接続端子は、円柱状の金属製の端子であることを特徴とする請求項4に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記封止材は、前記ケーシングの底面から所定の高さまで充填されており、前記所定の高さを超えた前記ケーシング内の空間に少なくとも存在する前記接続端子の円柱部分は、円筒状のセラミックスからなる絶縁筒体に挿入されていることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記ケーシング内には、前記絶縁基板と、前記絶縁基板に実装される半導体素子と、を1つセットとした素子実装基板が、複数並設された状態で、複数の前記素子実装基板は、電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧用のパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、セラミックスからなる絶縁基板と、絶縁基板に実装される半導体素子と、半導体素子とともに絶縁基板を収容するケーシングと、ケーシング内の前記半導体素子を封止する封止材と、を備えたパワーモジュールが提案されている(たとえば特許文献1参照)。絶縁基板の表面には、半導体素子を実装する導電層を含む導体パターンが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-12831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のパワーモジュールでは、導電層の周縁が封止材で十分に覆われていない場合や、導電層の周縁において封止材に気泡が形成された場合、導電層から放電することがある。さらに、導電層の縁部の側面に、絶縁性の高い樹脂を塗布したとしても、導電層の上縁部が露出しているや塗布した樹脂に気泡が形成された場合には、導電層から放電することがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、絶縁基板の表面に形成された導電層から放電することを抑えることができるパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑みて、本発明に係るパワーモジュールは、高電圧用のパワーモジュールであって、前記パワーモジュールは、セラミックスからなる少なくとも1つの絶縁基板と、前記絶縁基板に実装される半導体素子と、前記半導体素子とともに前記絶縁基板を収容するケーシングと、前記ケーシング内の前記半導体素子を封止する封止材と、を備えており、前記絶縁基板の表面には、前記半導体素子を実装する導電層を少なくとも含む導体パターンが形成されており、前記導電層の表面のうち、前記半導体素子が実装される被実装領域が露出するように、前記導電層の周縁とともに、前記絶縁基板の表面が、絶縁フィルムで被覆されている。
【0007】
本発明によれば、絶縁基板に形成された導電層の表面のうち、半導体素子が実装される被実装領域が露出するように、導電層の周縁とともに、絶縁基板の表面が、絶縁フィルムで被覆されている。これにより、導電層の周縁により形成される凹部および凸部は、絶縁フィルムで覆われるため、導電層の周縁の凹部および凸部に電界が集中することを抑制し、これらの凹部および凸部から放電することを抑えることができる。
【0008】
より好ましい態様としては、前記絶縁フィルムには、前記半導体素子の設置面の形状に応じた形状の素子用開口部が形成されることにより、前記被実装領域は、前記半導体素子の設置面の形状に応じた形状になっている。
【0009】
この態様によれば、絶縁フィルムに形成された素子用開口部により、被実装領域は、半導体素子の設置面の形状に応じた形状にとなるため、絶縁フィルムから導電層が露出する領域を低減することができる。これにより、導電層からの放電を低減することができる。
【0010】
さらに好ましい態様としては、前記被実装領域と前記素子用開口部とにより、凹部が形成されており、前記凹部の少なくとも一部を埋めるように、前記被実装領域にはめっき層がさらに形成されており、前記めっき層の厚さは、前記凹部の深さ以下である。
【0011】
この態様によれば、導電層の表面に形成されるめっき層の厚さを、被実装領域と素子用開口部とにより形成された凹部の深さ以下とすることにより、めっき層の周縁が、絶縁フィルムからはみ出すことがない。これにより、めっき層の周縁に電界が集中することを抑制し、この周縁から放電することを抑えることができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記導体パターンには、前記導電層を介して前記半導体素子に導通する接続端子が立設されており、前記絶縁フィルムには、前記接続端子が立設された位置に前記接続端子の端面の形状に応じた端子用開口部が形成されることにより、前記導体パターンの導電層の表面には、前記絶縁フィルムから露出し、前記接続端子の端面に接触する接触領域が形成されている。
【0013】
この態様によれば、絶縁フィルムに形成された端子用開口部により、導体パターンの導電層の表面には、絶縁フィルムから露出し、接続端子の端面に接触する接触領域が形成されている。これにより、接続端子が立設される導電層の周縁にも、絶縁フィルムで覆うことができるため、導電層の周縁からの放電を抑えることができる。
【0014】
さらに好ましい態様としては、前記接続端子は、円柱状の金属製の端子である。
【0015】
この態様によれば、接続端子を円柱状の金属製の端子とすることにより、接続端子の側面が丸みを帯びた形状となるため、接続端子からの放電を抑えることができる。
【0016】
さらに好ましい態様としては、前記封止材は、前記ケーシングの底面から所定の高さまで充填されており、前記所定の高さを超えた前記ケーシング内の空間に少なくとも存在する前記接続端子の円柱部分は、円筒状のセラミックスからなる絶縁筒体に挿入されている。
【0017】
この態様によれば、封止材が、ケーシングの底面から所定の高さまで充填されているため、所定の高さを超えたケーシング内の空間は、封止材が充填されていない非充填空間となる。この非充填空間は、封止材が充填された空間に比べ、接続端子の周面からの放電が発生し易い。そこで、この態様によれば、この非充填空間に少なくとも存在する接続端子の円柱部分が、セラミックスからなる絶縁筒体に挿入される。これにより、この非充填空間において、円柱部分を絶縁筒体で覆うことができるので、接続端子の円柱部分からの放電を抑えることができる。
【0018】
より好ましい態様としては、前記ケーシング内には、前記絶縁基板と、前記絶縁基板に実装される半導体素子と、を1つセットとした素子実装基板が、複数並設された状態で、複数の前記素子実装基板は、電気的に直列に接続されている。
【0019】
この態様によれば、複数の素子実装基板を電気的に直列に接続することにより、導電層の周縁から、高電圧により放電し易いところ、上述した絶縁フィルムにより効果的に放電を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁基板の表面に形成された導電層から放電することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るパワーモジュールの模式的斜視図である。
図2】(A)は、図1に示すパワーモジュールの上面図であり、(B)は、図1に示すパワーモジュールの底面図である。
図3図1に示すパワーモジュールの側面図である。
図4図1に示す基板構造体の斜視図である。
図5図1に示す基板構造体の分解斜視図である。
図6】(A)基準電圧用接続端子の斜視図であり、(B)は(A)の分解斜視図であり、(C)は、基準電圧用接続端子を取り付けた状態における部品実装基板の断面図であり、(D)は、基準電圧用接続端子を取り付けた状態におけるコネクタ基板の断面図である。
図7】(A)は、導体パターンが形成された絶縁基板と絶縁フィルムの模式的斜視図であり、(B)は、素子実装基板の分解斜視図である。
図8】(A)は、導体パターンが形成された絶縁基板を絶縁フィルムで覆った状態を説明するための模式的断面図であり、(B)は、(A)の変形例である。
図9図5に示す基板構造体を他方から視た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.パワーモジュール1の全体構造について
以下に、図1図9を参照しながら、本発明の実施形態に係るパワーモジュール1を説明する。本実施形態に係るパワーモジュール1は、高電圧用(たとえば、絶対値が数kV~数10kV)のパワーモジュールである。パワーモジュール1は、たとえば、高電圧用のFET(電界効果トランジスタ)などの半導体スイッチング素子を備えたモジュールであり、スイッチング等によって生じた発熱の放熱性がよく、半導体スイッチング素子に高電圧を印加したときに生じ易い放電を抑制する構造を有している。なお、本実施形態では、上記のようなFETモジュールをパワーモジュール1の一例として例示しているが、パワーモジュール1が、たとえば、高電圧用のダイオード(半導体素子)を備えたダイオードモジュールであってもよい。ダイオードモジュールの場合であっても、以下に示す構造のうち、ダイオードモジュールに応じた構造を採用することにより、ダイオードで生じた発熱の放熱性を向上させるとともに、ダイオードに高電圧を印加したときに生じ易い放電を抑制することができる。
【0023】
図1に示すように、パワーモジュール1は、複数の(たとえば2つの)基板構造体1Aと、これらを収容するケーシング70とを備えている。図3および図4に示すように、基板構造体1Aは、素子実装基板10、部品実装基板20、およびコネクタ基板30を備えている。素子実装基板10は、たとえば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのセラミックスからなる絶縁基板11に半導体素子16が少なくとも実装された基板である。本実施形態では、半導体素子16は、FET(電界効果トランジスタ)またはMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などの半導体スイッチング素子である。本明細書では、FETおよびMOSFETを総称して、「電界効果トランジスタ」と表記する。パワーモジュール1は、後述するゲート駆動回路23を内蔵したインテリジェントパワーモジュール(IPM)である。
【0024】
部品実装基板20は、実装部品が実装された基板である。実装部品は、電気部品および電子部品で構成されている。電気部品としては、半導体素子16に電気的に接続されるコンデンサ27などの受動素子を挙げることができる。電子部品としては、ゲート駆動回路23を構成するトランジスタなどの能動素子を挙げることができる。部品実装基板20は、プリント基板21を備えており、実装部品は、プリント基板21に取り付けられている。本実施形態では、部品実装基板20には、電気部品および電子部品が実装されているが、パワーモジュール1が、ダイオードモジュールの場合には、電気部品のみが実装されていてもよい。さらに、本実施形態では、電気部品として、コンデンサ27が実装されているが、その他にも、受動素子として抵抗(器)が実装されていてもよく、電気部品または電子部品のいずれが実装されていればよい。また、素子実装基板10とコネクタ基板30との間に、1枚の部品実装基板20が配置されているが、素子実装基板10とコネクタ基板30との間に、部品実装基板20が複数枚、対向するように配置されていてもよい。
【0025】
コネクタ基板30は、部品実装基板20の実装部品に電気的に接続される基板である。コネクタ基板30は、プリント基板31を基板本体として備える。コネクタ基板30は、外部機器に電気的に接続される接続部として、所定の電圧が付与されるコネクタプラグ38を有している。さらに、コネクタ基板30は、隣接する基板構造体1A等に接続される接続部53a、54aを有している。コネクタ基板30には、リード抵抗33およびコンデンサ37が実装されている。
【0026】
素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30とは、ケーシング70に収容されている。素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30とは、対向した状態で離間するように、複数の金属製の支柱50で連結されている。より具体的には、ケーシング70の底部から順に、素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30が、複数の支柱50により間隔を空けた状態で、着脱自在に連結されている。すなわち、各支柱50が、基板間のスペーサとして機能している。ケーシング70には、少なくとも素子実装基板10および部品実装基板20を封止する封止材60が、さらに収容されている(図3参照)。封止材60は、ケーシング70の内部全体に充填されていてもよいが、本実施形態では、封止材60は、ケーシング70の底面から所定の高さまで充填されている(図3の一点鎖線参照)。具体的には、封止材60は、後述する光レシーバ26のうち、光ファイバ(図示せず)を受ける受光面26aが封止材60で覆わない高さ(所定の高さ)まで、ケーシング70内に充填されている。このように、封止材60が、ケーシング70の底面から所定の高さまで充填されているため、所定の高さを超えたケーシング70内の空間は、封止材が充填されていない非充填空間Sとなる。
【0027】
本実施形態では、素子実装基板10、前記部品実装基板20、およびコネクタ基板30が、ケーシング70に収容されている。この収容状態で、素子実装基板10と部品実装基板20とが対向し、部品実装基板20とコネクタ基板30とが対向している。ケーシング70は、対向する一対の第1の側壁71、71と、第1の側壁71、71に両側で連結されたパネル状の第2の側壁72、72とを備えている。第1の側壁71および第2の側壁72は、樹脂材料からなる。ケーシング70には、ケーシング70の底壁として、銅板などの放熱板76が、設けられている。放熱板76は、素子実装基板10の絶縁基板11に接触している。放熱板76は、第1の側壁71および第2の側壁72に固定具(図示せず)などで固定されており、これにより、ケーシング70は、上部が開放した筐体となる。
【0028】
図2(A)に示すように、第1の側壁71には、その幅方向に沿った外側に、複数の凹溝73が間隔を空けて形成されている。各凹溝73は、ケーシング70の深さ方向に沿って延在している。これにより、第1の側壁71、71の外面には、ケーシング70の深さ方向に沿った凸条が形成され、この凸条が、放熱フィンとして機能する。さらに、放熱板76には、各凹溝73の端部(下端部)に面した位置に、ケーシング70(放熱板76)を取り付けるための取り付け孔74が形成されている。これにより、凹溝73に沿って、ドライバなどの工具(図示せず)を挿入し、取り付け孔74に挿入した固定具(図示せず)を工具に係合させ、工具を用いて、ケーシング70を固定具で外部支持体(図示せず)などに簡単に取り付けることができる。
【0029】
さらに、図2(B)に示すように、放熱板76の裏面の中央には、ヒートシンク77が設けられている。ヒートシンク77は、放熱板76の裏面から突出した複数の金属製の放熱フィン77aを有する。ヒートシンク77の周りには、ヒートシンク77の複数の放熱フィン77aを囲うようにOリング78が配置されている。ヒートシンク77に冷却水を接触させることにより、放熱板76からの熱を吸熱することができる。Oリング78により、冷却水の水漏れを防止することができる。
【0030】
2.基板構造体1Aの組み立て構造について
上述した如く、本実施形態では、図1および図4に示すように、ケーシング70の底部から順に、素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30とが、複数の支柱50により間隔を空けた状態で、着脱自在に連結されている。支柱50は、接続端子51~54として機能している。接続端子51~54は、コネクタプラグ38、コンデンサ27、ゲート駆動回路23の構成部品等の実装部品、または半導体素子16等に電気的に導通している。本実施形態では、接続端子51~54は、基準電圧用接続端子51、ドレイン用接続端子52、ソース用接続端子53、および駆動電圧用接続端子54で構成されている。
【0031】
ここで、素子実装基板10、部品実装基板20、およびコネクタ基板30は、平面視において矩形状である。2つの基準電圧用接続端子51と、ドレイン用接続端子52と、ソース用接続端子53とは、素子実装基板10の四隅から立設している。各接続端子51~53は、部品実装基板20の四隅に形成された貫通孔29に挿通されている。各接続端子51~53の端部(上端部)である接続部51a~53aは、コネクタ基板30の平面視において、その四隅に形成された各貫通孔39内に収まるように配置されている。したがって、各接続端子51~53の端部は、コネクタ基板30の平面視で、貫通孔39においてコネクタ基板30から露出している。このようにして、後述するように、各接続端子51~53の端部の形成された雌ネジ部56cに、ネジ等などの締結具(図示せず)を螺着させることにより、機械的に接続する接続部として機能させることができる(たとえば、図6(D)参照)。これにより、コネクタ基板30を、締結具と、接続端子51~53で挟み込み、コネクタ基板30を、締結具で各接続端子51~53で固定することができる。これに加えて、各接続端子51~53の端部のうち、ドレイン用接続端子52およびソース用接続端子53の端部を、配線93を介して隣接する基板構造体1Aまたは外部機器等に、電気的に接続される接続部として機能させることができる。
【0032】
各接続端子51~53が、コネクタ基板30を支持することができ、かつ、これらの接続部51a~53aが、コネクタ基板30の平面視において、その四隅に形成された各貫通孔39内に収まっていれば、各接続端子51~53の端部(接続部51a~53a)の位置は、特に限定されるものではない。たとえば、本実施形態では、各接続端子51~53の端部が、コネクタ基板30の貫通孔39の下側周縁に接触している。したがって、各接続端子51~53の接続部51a~53aは、貫通孔39に面して配置されている。この他にも、各接続端子51~53の端部が、コネクタ基板30の貫通孔39の内部に位置してもよい。さらに、各接続端子51~53を、貫通孔39に挿通し、各接続端子51~53の端部が、コネクタ基板30の貫通孔39から突出していてもよい。
【0033】
さらに、部品実装基板20には、部品実装基板20の長手方向に沿った基準電圧用接続端子51とドレイン用接続端子52との間に、コネクタ基板30を支持する支柱50が立設されている。この支柱50は、ゲート駆動回路23を駆動するためのゲート駆動電圧が入力される駆動電圧用接続端子54である。したがって、駆動電圧用接続端子54は、ゲート駆動回路23の隣接した位置から、コネクタ基板30を支持するように立設している。駆動電圧用接続端子54の端部は、コネクタ基板30の平面視において、貫通孔39内に収まるように配置されている。駆動電圧用接続端子54の端部は、ネジなどの締結具(図示せず)に機械的に接続される接続部54aであり、その位置は、接続端子51~53の端部と同様であるので、詳細な説明を省略する。このように、支柱50を、実装部品または半導体素子16に導通した接続端子51~54とすることにより、パワーモジュールの構造のシンプル化を図ることができる。
【0034】
各支柱50である接続端子51~53は、円柱状の金属端子である。各接続端子51~53は、第1支持柱51A~53Aと、第2支持柱51B~53Bとで、構成されている。第1支持柱51A~53Aは、素子実装基板10から立設し、部品実装基板20を支持している。第2支持柱51B~53Bは、部品実装基板20から立設し、コネクタ基板30を支持している。
【0035】
図5に示すように、第1支持柱51A~53Aには、端部(上端部)に雌ネジ部56cが形成されている。第2支持柱51B~53Bの端部(下端部)には、雌ネジ部56cに螺着される雄ネジ部56bが形成されている。なお、雄ネジ部56bは、図6(B)に示すように、円柱状の支持柱本体56aから突出した部分である。本実施形態では、図6(C)に示すように、部品実装基板20に形成された貫通孔29を介して、雄ネジ部56bと雌ネジ部56cを螺着させる。この螺着した状態で、部品実装基板20は、第1支持柱51A~53Aおよび第2支持柱51B~53Bにより、その四隅で挟持されている。同様に、駆動電圧用接続端子54は、雌ネジ部56cが形成された第1支持柱54Aと、雄ネジ部56bが形成された第2支持柱54Bを有しており、雄ネジ部56bと雌ネジ部56cとが螺着している。本実施形態では、第1支持柱51A~54Aに雌ネジ部56cを形成し、第2支持柱51B~54Bに雄ネジ部56bを形成し、これらを螺着させた。しかしながら、これらを螺着させることができるのであれば、第1支持柱51A~54Aに雄ネジ部56bを形成し、第2支持柱51B~54Bに雌ネジ部56cを形成してもよい。
【0036】
本実施形態では、上述したように、封止材60は、ケーシング70の底面から所定の高さまで充填されている。この所定の高さを超えたケーシング70内の空間は、封止材60の非充填空間Sとなる(図3参照)。本実施形態では、非充填空間Sに少なくとも存在する接続端子51~54の円柱部分は、円筒状のセラミックスからなる絶縁筒体58に挿入されている。具体的には、図4図5、および図6(A)、(B)に示すように、本実施形態では、第2支持柱51B~53Bの円柱状の支持柱本体56aの全体、駆動電圧用接続端子54の円柱部分の全体が、絶縁筒体58で覆われている。なお、非充填空間Sに存在する部分のみが、絶縁筒体で覆われていてもよい。
【0037】
非充填空間Sに存在する接続端子の周面は、封止材60で被覆された周面よりも、放電し易い。本実施形態では、非充填空間Sに存在する接続端子51~54の円柱部分(支持柱本体56a)が、セラミックスからなる絶縁筒体58に挿入されることにより、円柱部分を絶縁筒体58で覆うことができる。このため、円柱部分からの放電を抑えることができる。さらに、本実施形態では、図6(C)に示すように、絶縁筒体58の端面には、Oリング59が配置されている。雄ネジ部56bを雌ネジ部56c締め込むことにより、Oリング59が変形し、絶縁筒体58の内部58aに、後述する未硬化の状態の封止材60Aが流入することを抑えることができる。
【0038】
図2(A)および図5に示すように、接続端子51~54の端部(上端部)である接続部51a~54aは、コネクタ基板30の平面視において、各貫通孔39内に収まるように配置されている。したがって、各接続端子51~54の接続部51a~54aは、コネクタ基板30の平面視で、コネクタ基板30から貫通孔39において露出している。各接続部51a~54aには、雌ネジ部56cが形成されている。各接続端子51~53のうち、ドレイン用接続端子52またはソース用接続端子53の場合には、図6(D)に示すように、雌ネジ部56cには、貫通孔39を挿通したネジ等の締結具92が螺着され、ワッシャ91を介して、配線93が固定される。このようにして、図2(A)に示す、ドレイン用接続端子52またはソース用接続端子53の接続部52a、53aに、電源または隣接する基板構造体1A等からの配線93を接続することができる。これに加えて、各接続端子51~53の接続部51a~54aに形成された雌ネジ部56cに、締結具92を螺着させて締め込むことにより、コネクタ基板30を、接続端子51~54に支持した状態で、コネクタ基板30を安定して固定することができる。なお、第2支持柱51B~54Bの上端面(接続部51a~54a)には、雌ネジ部56cを交わるように、マイナスドライバ(図示せず)の先端が係合する締め込み用の溝部56fが形成されている(たとえば図6(A)参照)。これにより、マイナスドライバで、第2支持柱51B~54Bを第1支持柱51A~54Aに簡単に取り付けることができる。
【0039】
本実施形態によれば、ケーシング70の底部から順に、素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30が、複数の支柱50により間隔を空けた状態で、着脱自在に連結されている。これにより、素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30と、を簡単に分離することがきる。特に、検査時に、部品実装基板20またはコネクタ基板30に実装されたリード抵抗33、コンデンサ27、37等の電気部品等の特性が所望の特性を有していない場合、部品実装基板20またはコネクタ基板30を簡単に交換することができる。
【0040】
さらに、部品実装基板20は、第1支持柱51A~53Aおよび第2支持柱51B~53Bにより挟持した状態で、部品実装基板20に形成された貫通孔29を介して、雄ネジ部56bと雌ネジ部56cを螺着させている。第1支持柱51A~53Aおよび第2支持柱51B~53Bの螺着を解除することにより、部品実装基板20を、素子実装基板10とコネクタ基板30との間から簡単に取り除くことができる。さらに、部品実装基板20に形成された貫通孔29を介して、雄ネジ部56bと雌ネジ部56cを螺着させて、第1支持柱51A~53Aに第2支持柱51B~53Bを締め込むと、素子実装基板10およびコネクタ基板30に対して、部品実装基板20を安定して固定することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、素子実装基板10に実装された半導体素子16から発熱した熱は、絶縁基板11に接触した放熱板76から、放熱され易い。一方、部品実装基板20に実装された実装部品(たとえば、ゲート駆動回路23の電子部品、コンデンサ27)、コネクタ基板30のリード抵抗33およびコンデンサ37から発熱した熱は、各基板を介して金属製の支柱50を伝導し、外部に放熱され易い。
【0042】
さらに、素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30とが、対向した状態で離間して配置されているため、これらの間に、半導体素子16、後述するゲート抵抗15Rなどの実装部品から発熱した熱も放熱される。この放熱された熱も、封止材60を介して金属製の支柱50から外部に放熱される。したがって、ケーシング70の内部に封止材60が収容されていたとしても、封止材60に入熱された熱は、顕熱として封止材60に蓄熱され難く、金属製の支柱50から外部に放熱することができる。このようにして、素子実装基板10、部品実装基板20、およびコネクタ基板30で発熱した熱を、効率良く放熱することができる。
【0043】
ここで、支柱50は、半導体素子16と上述した実装部品等とに電気的に導通した接続端子51~54である。したがって、半導体素子16と実装部品から発熱した熱は、これらの導通経路(図示せず)を介して接続端子51~54に伝達され易い。この結果、半導体素子16と実装部品とから発熱した熱を、接続端子51~54を介して、素子実装基板10側からコネクタ基板30側に向かって外部(ケーシング70の上方)に放熱し易くなる。
【0044】
特に、素子実装基板10の四隅から立設した各接続端子51~53が、部品実装基板20の四隅の貫通孔29に挿通され、さらにコネクタ基板30の四隅において、コネクタ基板30の平面視で、コネクタ基板30から貫通孔39において露出している。このため、半導体素子16と上述した実装部品とから発熱した熱は、これらの四隅に位置する接続端子51~53にバランスよく分散して伝達され、コネクタ基板30の貫通孔39から外部に効率良く放熱させることができる。特に、基準電圧用接続端子51は、その機能上、1つであってもよいが、基準電圧用接続端子51を複数(本実施形態では2つ)設けることにより、部品実装基板20のゲート駆動回路23等の集積回路で発熱した熱を、複数の(2つの)基準電圧用接続端子51から効率的に放熱させることができる。
【0045】
3.素子実装基板10の構造とパワーモジュール1の回路構成
以下に、素子実装基板10の構造と、パワーモジュール1の回路構成について、図7図9をさらに参照して説明する。図7(A)に示すように、絶縁基板11の表面には、半導体素子16を実装する導電層12を少なくとも含む導体パターン12Pが形成されている。各導電層12は、放電の抑制の観点から、平面視において丸みを帯びた凸角部または凹角部を有している。本実施形態では、導体パターン12Pは、たとえば銅箔等の金属箔により形成されている。導体パターン12Pは、導電層12として、平面状の第1~第3導電層12A~12Cを有している。第2導電層12Bの表面のうち、半導体素子16が実装される被実装領域13Cが露出するように、第2導電層12Bの周縁とともに、絶縁基板11の表面が、絶縁フィルム14で被覆されている。具体的には、絶縁フィルム14には、半導体素子16の設置面の形状に応じた形状の素子用開口部14c(開口部14H)が形成されることにより、被実装領域13C(13)は、半導体素子16の設置面の形状に応じた形状になっている。被実装領域13Cに、半導体素子16が設置した状態で、リフロー等のより、半導体素子16は、被実装領域13Cにおいて、第2導電層12Bにはんだ接合される。
【0046】
半導体素子16は、電界効果トランジスタであり、上述するように、部品実装基板20には、ゲート駆動回路23が設けられており、ゲート駆動回路23は、電子部品等の実装部品で構成され、電界効果トランジスタである半導体素子16を駆動させる電子回路である。ゲート駆動回路23は、駆動電圧用接続端子54からの電圧が入力される。さらに、ゲート駆動回路23は、光レシーバ26で受光した光信号(パルス信号)を制御信号として、ゲート駆動電圧の波形を制御するものであり、PWM信号からなるパルス信号を生成する。本実施形態では、部品実装基板20には、導入口25を挟んだ両側のうち一方側に、光レシーバ26と、ゲート駆動回路23とが、並設されている。これにより、ゲート駆動回路23と光レシーバ26とを、導入口25を挟んだ両側のうち一方側に、並設することにより、光レシーバ26をゲート駆動回路23の近傍に配置することができる。このため、光レシーバ26で受信した光信号を精度良くゲート駆動回路23に入力することができる。これにより、ゲート駆動回路23で半導体素子(電界効果トランジスタ)16を駆動させる(スイッチングさせる)ゲート駆動電圧のパルス波形を精度よく生成することができる。
【0047】
素子実装基板10には、ゲート駆動回路23と半導体素子16(電界効果トランジスタ)とを中継するインターポーザ(中継基板)15と、中継部品17とが、実装されており、これらは、ワイヤボンディング等によりワイヤ(図示せず)で、電気的に接続されている。インターポーザ15は、配線基板15aを備えており、配線基板15aには、チップ抵抗15bで構成されたゲート抵抗15Rが設けられている。さらに、配線基板15aには、ゲート・ソース間抵抗も設けられている。ゲート駆動回路23は、配線基板15aに実装されたコネクタ15cの端子に電気的に接続されている。
【0048】
本実施形態では、インターポーザ15の裏面には、銅からなる導電層15dが形成されており、導電層15dの表面には、はんだがさらに被覆されている。第1導電層12Aの表面のうちインターポーザ15が実装される被実装領域13Aが露出するように、第1導電層12Aの周縁とともに、絶縁基板11の表面が、絶縁フィルム14で被覆されている。具体的には、絶縁フィルム14には、インターポーザ15の設置面の形状に応じた形状のインターポーザ用開口部14a(開口部14H)が形成されることにより、被実装領域13A(13)は、インターポーザ15の設置面の形状に応じた形状になっている。被実装領域13Aに、インターポーザ15を設置した状態で、リフロー等により、インターポーザ15は、被実装領域13Aにおいて、第1導電層12Aにはんだ接合される。
【0049】
第2導電層12Bの表面には、中継部品17が実装される被実装領域13Dが形成されている。中継部品17も同様に、部品用開口部14d(開口部14H)が形成されることにより、被実装領域13D(13)は、中継部品17の設置面の形状に応じた形状になっている。被実装領域13Dに、中継部品17を設置した状態で、リフロー等のより、中継部品17は、被実装領域13Dにおいて、第3導電層12Cにはんだ接合される。
【0050】
さらに、導体パターン12Pには、第1~第3導電層12A~12C(導電層12)を介して半導体素子16等に直接的または間接的に導通するように、上述した接続端子51~53が立設されている。絶縁フィルム14には、各接続端子51~53が立設された位置に、接続端子の端面の形状に応じた端子用開口部14b、14e、14fが形成されている。これにより、導体パターン12Pの第1~第3導電層12A~12C(導電層12)のそれぞれの表面には、絶縁フィルム14から露出し、接続端子51~53の端面に接触する接触領域13B、13E、13Fが形成されている。各接続端子51~53は、接触領域13B、13E、13Fのそれぞれにおいて、対応する第1~第3導電層12A~12Cにはんだ付けで接合される。接続端子51~53は、円柱状の金属製の端子であるので、接続端子51~53の側面が丸みを帯びた形状となるため、接続端子51~53からの放電を抑えることができる。本実施形態では、接続端子51~53は、円柱状の端子であるが、たとえば、接続端子51~53は、多角柱状の端子で、角部(稜線)に丸みを帯びた形状の端子であってもよい。
【0051】
ここで、コネクタ基板30では、外部機器からコネクタプラグ38に供給された電圧が、基準電圧とゲート駆動電圧とに電圧変換される。変換された基準電圧は、基準電圧用接続端子51に供給され、基準電圧用接続端子51を介して、第1導電層12Aに入力される。したがって、第1導電層12Aは、基準電圧用導電層となる。一方、ゲート駆動電圧は、駆動電圧用接続端子54に供給され、ゲート駆動電圧は、ゲート駆動回路23に入力される。ゲート駆動電圧と上述した光信号(PWM信号)とから、ゲート駆動回路23では、パルス状の波形を有したゲート駆動電圧が生成される。ここで、第1導電層12Aに入力された基準電圧により、ゲート駆動回路23で生成されたゲート駆動電圧の電位が適正な電位に調整される。このようなゲート駆動電圧は、ゲート駆動信号として、半導体素子16のゲートとソース間に印加される。
【0052】
さらに、接続端子51~53のうち、ドレイン用接続端子52は、半導体素子(電界効果トランジスタ)16のドレイン端子(図示せず)に接続される端子である。第2導電層12Bは、半導体素子(電界効果トランジスタ)16のドレイン端子に導通するドレイン用導電層である。さらに、接続端子51~53のうち、ソース用接続端子53は、半導体素子(電界効果トランジスタ)16のソース端子(図示せず)に接続される端子である。第3導電層12Cは、半導体素子(電界効果トランジスタ)16のソース端子に導通するソース用導電層である。第2導電層(ドレイン用導電層)12Bには、ドレイン用接続端子52が立設されている。第3導電層(ソース用導電層)12Cには、ソース用接続端子53が立設している。
【0053】
このようにして、半導体素子(電界効果トランジスタ)16で発熱した熱は、ソース端子およびドレイン端子に導通する第2導電層(ドレイン用導電層)12Bと第3導電層(ソース用導電層)12Cから絶縁基板11を介して放熱板76に伝達され、放熱板76から放熱される。さらに、半導体素子(電界効果トランジスタ)16で発熱した熱は、第2導電層(ドレイン用導電層)12Bと第3導電層(ソース用導電層)12Cのそれぞれに立設したソース用接続端子53とドレイン用接続端子52からも放熱することができる。一方、インターポーザ15に実装されたゲート抵抗15Rも、半導体素子16とともに発熱する。このゲート抵抗15Rで発熱した熱は、ゲート端子に間接的に導通する第1導電層(ゲート抵抗用導電層)12Aから放熱板76に伝達され、放熱板76から放熱することができる。
【0054】
このように、図8(A)に示すように、絶縁基板11に形成された導電層12の表面のうち、半導体素子16が実装される被実装領域13が露出するように、導電層12の周縁とともに、絶縁基板11の表面が、絶縁フィルム14で被覆されている。なお、ここで、導電層12の周縁とは、導電層12の表面および側面を含む周縁のことをいう。これにより、導電層12の周縁と絶縁基板11の表面により形成される凸部および凹部は、絶縁フィルム14で覆われるため、導電層12の周縁の凸部および凹部に電界が集中することを抑制し、これらの凸部および凹部から放電することを抑えることができる。発明者らが行った解析結果等から、被実装領域13は、導電層12の周縁から5mm以上内側に形成されていることが好ましい。これにより、被実装領域13近傍の放電を抑えることができる。
【0055】
また、絶縁フィルム14に形成された開口部14Hにより、被実装領域13は、半導体素子16等の設置面の形状に応じた形状にとなるため、絶縁フィルム14から導電層12が露出する領域を低減することができる。これにより、導電層12からの放電を低減することができる。さらに、絶縁フィルム14に形成された端子用開口部14b、14e、14fにより、導体パターン12Pの導電層12の表面には、絶縁フィルム14から露出し、接続端子51~53の端面に接触する接触領域13B、13E、13Fが形成されている。これにより、接続端子51~53が立設される導電層のうち、接触領域13B、13E、13Fの周縁にも、絶縁フィルム14で覆うことができるため、導電層12の周縁からの放電を抑えることができる。発明者らが行った解析結果等から、接触領域13B、13E、13Fは、導電層12の周縁から5mm以上内側に形成されていることが好ましい。これにより、接触領域13B、13E、13F近傍の放電を抑えることができる。
【0056】
ここで、絶縁フィルム14の絶縁破壊強度は、封止材60のものよりも高いことが好ましく、たとえば、200kV/mm以上であることが好ましい。絶縁フィルム14の材料としてぇあ、ポリイミド系樹脂などの樹脂材料を挙げることができる。封止材60の絶縁破壊強度は、20kV/mm程度であり、封止材60の材料としては、たとえばSiゲル等のゲル状の絶縁材料を挙げることができる。
【0057】
さらに、図8(A)に示すように、被実装領域13と開口部14Hとにより、凹部11bが形成されており、凹部11bの少なくとも一部を埋めるように、被実装領域13にめっき層18がさらに形成されてもよい。めっき層18は、たとえば無電解ニッケルめっきにより形成された、ホウ素ニッケルからなる層である。この場合、めっき層18の表面18aが、半導体素子16が実装される被実装領域となる。本実施形態では、めっき層18の厚さは、凹部11bの深さ以下である。さらに、絶縁基板11の裏面には、銅からなる導電層19Aおよびめっき層19Bが形成されており、これらの層がアースとしての役割りを果たす。また、図8(B)に示すように、導電層12の厚みよりも厚い接着層14Bを設けて、この上に、絶縁フィルム14Aを配置してもよい。これにより、絶縁フィルム14Aがフラットな状態で、絶縁基板11および導電層12の縁部に、絶縁フィルム14Aを設けることができる。なお、絶縁フィルム14、14Aは、真空ラミネート処理により、絶縁基板11および導電層12の縁部に、貼り付けられたフィルムである。
【0058】
この態様によれば、導電層12の表面に形成されるめっき層18の厚さを、被実装領域13と開口部14Hとにより形成された凹部11bの深さ以下としている。これにより、めっき層18の周縁が、絶縁フィルム14からはみ出すことがない。このような結果、めっき層18の周縁に電界が集中することを抑制し、この周縁から放電することを抑えることができる。
【0059】
パワーモジュール1には、複数の抵抗が設けられおり、素子実装基板10には、複数の抵抗のうちチップ抵抗15bが設けられており、コネクタ基板30には、リード抵抗33が設けられている。なお、リード抵抗33は、ドレイン用接続端子52とソース用接続端子53との間の電圧を安定させるために、これらの間に接続されおり、同じ目的で、コンデンサ27、37が、部品実装基板20およびコネクタ基板30のそれぞれに設けられている。なお、リード抵抗33は、部品実装基板20に設けられてもよい。
【0060】
このように抵抗を配置することにより、リード抵抗33は、素子実装基板10から離間した部品実装基板20およびコネクタ基板30の少なくとも一方に実装される。このため、リード抵抗33から発熱した熱は、コネクタ基板30側から外部に放熱することができる。一方、リード抵抗33よりも発熱量の少ないチップ抵抗15bは、素子実装基板10に設けられているため、放熱板76を介して外部に放熱することができる。このようにして、チップ抵抗15bよりも発熱量が多いリード抵抗33は、コネクタ基板30側から外部に放熱するため、半導体素子16から発熱した熱を、放熱板76からより効率的に放熱することができる。
【0061】
さらに、ゲート駆動回路23で発熱した熱は、金属の支柱50(基準電圧用接続端子51)から放熱させることできる。一方、素子実装基板10には、ゲート駆動回路23と半導体素子(電界効果トランジスタ)16とを中継するインターポーザ15が、実装されており、インターポーザ15には、チップ抵抗15bで構成されたゲート抵抗15Rが設けられている。これにより、ゲート抵抗15Rから発熱した熱を、放熱板76から放熱することができる。このようにして、ゲート駆動回路23およびゲート抵抗15Rから発熱するそれぞれの熱を分散することができる。
【0062】
4.封止材60(60A)の封入について
図9に示すように、部品実装基板20は矩形状であり、部品実装基板20の中央には、ケーシング70内に素子実装基板10を封止する封止材60Aを導入する導入口25が形成されている。さらに、上述した如く、部品実装基板20には、実装部品の1つとして、光ファイバに接続され、光ファイバ(図示せず)の光信号を受光する光レシーバ26が実装されている。コネクタ基板30には、光レシーバ26と対向した位置には、開口部35が形成されている。
【0063】
この態様によれば、部品実装基板20の中央には、ケーシング70内に素子実装基板10を封止する封止材60Aを導入する導入口25が形成されている。これにより、部品実装基板20の導入口25から、未硬化の液状の封止材60Aを素子実装基板10に向けて安定して流すことができる。この結果、封止材60Aに気泡が形成されることを抑えつつ、素子実装基板10の表面全体を封止材60Aで一様に封止することができる。
【0064】
さらに、光ファイバを開口部35から光レシーバ26に案内して接続する前に、コネクタ基板30の開口部35を利用して、封止材60Aを排出する治具(図示せず)を挿入する。挿入した治具から排出された封止材60Aを、部品実装基板20の導入口25から、素子実装基板10に向かって導入することができる。これにより、光レシーバ26の受光面26aに封止材60Aが付着することが無いことを確認しながら、それよりもケーシングの底面側に位置する素子実装基板10および部品実装基板20を、封止材60Aにより埋めることができる。その後、液状の封止材60Aを硬化させる。封止材60Aによる封止が完了した後には、コネクタ基板30の開口部35から光ファイバを光レシーバ26に案内し、光ファイバを光レシーバ26に簡単に接続することできる。
【0065】
5.基板構造体1Aの配置と接続について
本実施形態では、ケーシング70内には、絶縁基板11と、絶縁基板11に実装される半導体素子16と、を1つセットとした素子実装基板10が、複数(たとえば2つ)並設された状態で、複数の素子実装基板10は、電気的に直列に接続されている。具体的には、素子実装基板10と、部品実装基板20と、コネクタ基板30とが、支柱50を介して、連結された基板構造体1Aを、複数(たとえば2つ)並設した状態で、隣接する基板構造体1A同士の一方の基板構造体1Aのソース用接続端子53と他方の基板構造体1Aのドレイン用接続端子52とが電気的に接続されている。接続されるソース用接続端子53とドレイン用接続端子52とは、一対の基板構造体1Aの隣り合うソース用接続端子53とドレイン用接続端子52である。さらに、複数のパワーモジュール1を複数(たとえば8個)並列に配置し、これらの隣り合うパワーモジュール1のソース用接続端子53とドレイン用接続端子52とを接続してもよい。
【0066】
このような直列接続により、複数の素子実装基板10は、導電層12の周縁から、高電圧により放電し易いところ、上述した絶縁フィルム14により、より効果的に放電を抑えることができる。特に、基板構造体1Aを複数並設した状態で、隣接する基板構造体1A、1A同士の一方の基板構造体1Aのソース用接続端子53と他方の基板構造体1Aのドレイン用接続端子52とを電気的に接続するので、隣接する基板構造体1A、1Aを直列に接続し、高電圧域の直流電圧から交流電圧の変換を、各基板構造体1Aに担わせることができ、変換時に発生する熱を各基板構造体1Aに分散することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0068】
1:パワーモジュール、1A:基板構造体、10:素子実装基板、11:絶縁基板、12:導電層、12P:導体パターン、13:被実装領域、14、14A:絶縁フィルム、14H:開口部、15:インターポーザ、15b:チップ抵抗、15R:ゲート抵抗、16:半導体素子(電界効果トランジスタ)、20:部品実装基板、23:ゲート駆動回路、25:導入口、26:光レシーバ、29:貫通孔、30:コネクタ基板、33:リード抵抗、35:開口部、39:貫通孔、50:支柱、51:基準電圧用接続端子(接続端子)、52:ドレイン用接続端子(接続端子)、53:ソース用接続端子(接続端子)、51A~53A:第1支持柱、51B~53B:第2支持柱、54:駆動電圧用接続端子(接続端子)、56b:雄ネジ部、56c:雌ネジ部、58:絶縁筒体、60:封止材、70:ケーシング、76:放熱板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9