(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154212
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】パルス幅測定回路、パルス幅の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/02 20060101AFI20251002BHJP
H03K 5/153 20060101ALI20251002BHJP
H03K 5/26 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G01R29/02 G
H03K5/153 W
H03K5/26 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057085
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】平川 雅也
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039AB01
5J039FF02
5J039KK09
5J039KK13
(57)【要約】
【課題】測定時間を短縮したパルス幅測定回路を提供する。
【解決手段】第1プログラマブル遅延回路130および第2プログラマブル遅延回路140はそれぞれ、入力パルスS
INに応じた第1パルスS1および第2パルスS2を遅延し、第1遅延パルスSd1、第2遅延パルスSd2を生成する。ラッチ回路150は、第1遅延パルスSd1を、第2遅延パルスSd2のエッジに応答してラッチする。コントローラ160は、第1処理において、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ2を連続的にスイープし、ラッチ回路150の出力Qが変化するときの第1遅延量τpを検出する。第2処理において、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ2を、バイナリサーチにより変化させて、ラッチ回路150の出力Qが変化するときの第2遅延量τnを検出する。第1遅延量τpと第2遅延量τnの差を、入力パルスS
INのパルス幅Tpとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力パルスのパルス幅を測定するパルス幅測定回路であって、
前記入力パルスに応じた第1パルスを遅延し、第1遅延パルスを生成する第1プログラマブル遅延回路と、
前記入力パルスに応じた第2パルスを遅延し、第2遅延パルスを生成する第2プログラマブル遅延回路と、
前記第1遅延パルスを、前記第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするラッチ回路と、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1処理と、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2処理と、
を実行可能であり、前記第1遅延量と前記第2遅延量の差を、前記入力パルスの前記パルス幅とする、パルス幅測定回路。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第2処理において、前記第2プログラマブル遅延回路に設定すべき遅延量が前記第1遅延量より小さいとき、前記ラッチ回路の出力がハイであるとみなして、測定をスキップする、請求項1に記載のパルス幅測定回路。
【請求項3】
入力パルスのパルス幅の測定方法であって、
第1プログラマブル遅延回路が、前記入力パルスに応じた第1パルスを遅延して第1遅延パルスを生成するステップと、
第2プログラマブル遅延回路が、前記入力パルスに応じた第2パルスを遅延して第2遅延パルスを生成するステップと、
ラッチ回路が、前記第1遅延パルスを、前記第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするステップと、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御する制御ステップと、
を備え、
前記制御ステップは、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1ステップと、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2ステップと、
を含み、
前記第1遅延量と前記第2遅延量の差を、前記入力パルスの前記パルス幅とする、測定方法。
【請求項4】
前記第2ステップにおいて、前記第2プログラマブル遅延回路に設定すべき遅延量が前記第1遅延量より小さいとき、前記ラッチ回路の出力がハイであるとみなして、測定をスキップする、請求項3に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パルス幅測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において、時間を測定したい場合に、TDC(Time To Digital Converter)回路が利用される。TDC回路の構成として、フラッシュ型TDC、逐次比較型(SAR:Successive Approximation Register)TDCなどが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【0004】
[概要]
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、測定時間を短縮したパルス幅測定回路の提供にある。
【0005】
本開示のある態様は、入力パルスのパルス幅を測定するパルス幅測定回路に関する。パルス幅測定回路は、入力パルスに応じた第1パルスを遅延し、第1遅延パルスを生成する第1プログラマブル遅延回路と、入力パルスに応じた第2パルスを遅延し、第2遅延パルスを生成する第2プログラマブル遅延回路と、第1遅延パルスを、第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするラッチ回路と、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御するコントローラと、を備える。コントローラは、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1処理と、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2処理と、を実行可能であり、第1遅延量と第2遅延量の差を、入力パルスのパルス幅とする。
【0006】
本開示の別の態様は、入力パルスのパルス幅の測定方法に関する。測定方法は、第1プログラマブル遅延回路が、入力パルスに応じた第1パルスを遅延して第1遅延パルスを生成するステップと、第2プログラマブル遅延回路が、入力パルスに応じた第2パルスを遅延して第2遅延パルスを生成するステップと、ラッチ回路が、第1遅延パルスを、第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするステップと、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御する制御ステップと、を備える。制御ステップは、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1ステップと、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2ステップと、を含む。第1遅延量と第2遅延量の差を、入力パルスのパルス幅とする。
【0007】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るパルス幅測定回路の回路図である。
【
図2】
図2は、パルス幅測定回路によるパルス幅測定の第1処理を説明する図である。
【
図3】
図3は、パルス幅測定回路によるパルス幅測定の第2処理を説明する図である。
【0009】
[詳細な説明]
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0010】
一実施形態に係るパルス幅測定回路は、入力パルスに応じた第1パルスを遅延し、第1遅延パルスを生成する第1プログラマブル遅延回路と、入力パルスに応じた第2パルスを遅延し、第2遅延パルスを生成する第2プログラマブル遅延回路と、第1遅延パルスを、第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするラッチ回路と、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御するコントローラと、を備える。コントローラは、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1処理と、第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2処理と、を実行可能である。パルス幅測定回路は、第1遅延量と第2遅延量の差を、入力パルスのパルス幅とする。
【0011】
パルス幅を測定する手法としては、第2プログラマブル遅延回路の遅延量をスイープさせることにより、第1パルスのポジティブエッジ(ライジングエッジ)の位置と、ネガティブエッジ(フォーリングエッジ)の位置を探索する手法が考えられる。この手法では、パルス幅が長くなるにしたがって、パルス幅の測定時間が長くなるという問題がある。これに対して、一実施形態に係る構成によれば、短時間でパルス幅を測定できる。
【0012】
一実施形態において、コントローラは、第2処理において、前記第2プログラマブル遅延回路に設定すべき遅延量が前記第1遅延量より小さいとき、ラッチ回路の出力がハイであるとみなして、測定をスキップしてもよい。これにより、パルス幅の測定時間を短縮できる。
【0013】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0015】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0016】
また本明細書に示される波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0017】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るパルス幅測定回路100の回路図である。パルス幅測定回路100は、入力パルスS
INのパルス幅Tpを測定する。パルス幅測定回路100は、第1パルス発生器110、第2パルス発生器120、第1プログラマブル遅延回路130、第2プログラマブル遅延回路140、ラッチ回路150、コントローラ160を備える。
【0018】
第1パルス発生器110は、入力パルスSINを受け、入力パルスSINに応じた第1パルスS1を生成する。第2パルス発生器120は、入力パルスSINを受け、入力パルスSINに応じた第2パルスS2を生成する。第1パルス発生器110および第2パルス発生器120は、入力パルスSINをしきい値電圧と比較するコンパレータを含んでもよい。本実施形態において、第1パルスS1と第2パルスS2は、同じ波形、同じ位相を有するパルスのレプリカである。
【0019】
第1プログラマブル遅延回路130は、第1パルスS1を遅延し、第1遅延パルスSd1を生成する。第2プログラマブル遅延回路140は、第2パルスS2を遅延し、第2遅延パルスSd2を生成する。第1プログラマブル遅延回路130および第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ1,τ2は、単位遅延τの整数倍で制御可能となっている。ここでは第1プログラマブル遅延回路130の遅延量τ1は固定されるものとする。
【0020】
第1プログラマブル遅延回路130は、入力バッファ131、複数の遅延素子132、複数のマルチプレクサ134、出力バッファ135、デコーダ136を含む。複数の遅延素子132の遅延量はバイナリで重み付けされている。マルチプレクサ134は、対応する遅延素子132の出力信号と、遅延前の入力信号と、を受ける。デコーダ136は、制御信号CTRL1に応じて、複数のマルチプレクサ134の状態を制御する。
【0021】
第2プログラマブル遅延回路140は、第1プログラマブル遅延回路130と同様に構成され、入力バッファ141、複数の遅延素子142、複数のマルチプレクサ144、出力バッファ145、デコーダ146を含む。デコーダ146は、制御信号CTRL2に応じて、複数のマルチプレクサ144の状態を制御する。
【0022】
なお、第1プログラマブル遅延回路130および第2プログラマブル遅延回路140の構成は
図1のそれに限定されない。
【0023】
ラッチ回路150は、第1プログラマブル遅延回路130の出力である第1遅延パルスSd1を、第2プログラマブル遅延回路140の出力である第2遅延パルスSd2のポジティブエッジに応答してラッチする。
【0024】
コントローラ160は、第1プログラマブル遅延回路130および第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ1,τ2を制御することにより、入力パルスSINのパルス幅Tpを測定する。
【0025】
コントローラ160は、第1プログラマブル遅延回路130の遅延量τ1を固定し、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ2を連続的にスイープし、ラッチ回路150の出力Qが変化するときの遅延量(第1遅延量τpという)を検出する。これを第1処理という。第1遅延量τpは、入力パルスSINのポジティブエッジの位置を示す。第1プログラマブル遅延回路130の遅延量は、小さく定めるとよい。
【0026】
続いてコントローラ160は、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ2を、バイナリサーチにより変化させて、ラッチ回路150の出力Qが変化するときの遅延量(第2遅延量τn)を検出する。つまり上位ビットから下位ビットに向かって、遅延量を1ビットずつ確定させていく逐次比較処理を実行する。これを第2処理という。このとき、第1遅延量τpより小さい遅延量については、ラッチ回路150の出力Qはハイであるものとして処理を行う。第2遅延量τnは、入力パルスSINのネガティブエッジの位置を示す。
【0027】
コントローラ160は、第2遅延量τnと第1遅延量τpの差を、入力パルスSINのパルス幅Tpとして出力する。
【0028】
以上がパルス幅測定回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0029】
図2は、パルス幅測定回路100による第1処理を説明する図である。ここでは理解の容易化のため、制御信号CTRL2のビット数が5ビットであるものとする。また第1プログラマブル遅延回路130の遅延量τ1は、9×τであるものとする。
【0030】
第1処理では、遅延量τ2が、0×τから1単位遅延τずつ増加していく。そして、τ2=0~9×τの範囲において、ラッチ回路150の出力Qはロー(L)であり、τ2=10×τのときに、ラッチ回路150の出力Qはハイ(H)となる。したがって、ポジティブエッジの位置を示す第1遅延量τpは、τ×9となる。
【0031】
図3は、パルス幅測定回路100による第2処理を説明する図である。
【0032】
第2処理では、遅延量τ2が、バイナリサーチによって変化する。はじめは、制御信号CTRL2は、バイナリで[10000]に設定され、遅延量τ2は16×τとなる。このときラッチ回路150の出力Qはロー(L)となる。
【0033】
次の制御信号CTRL2は、[01000]となり、遅延量τ2は8×τとなる。この遅延量τ2は、第1処理で決定した第1遅延量τpよりも小さい。そのため、ラッチ回路150の出力Qはローとなるはずであるが、ハイであるものとみなして、実際に制御信号CTRL2=[01000]を、第2プログラマブル遅延回路140にセットすることはせず、1回分の測定をスキップする。
【0034】
ラッチ回路150の出力Qがハイとみなされた結果、次の制御信号CTRL2として、[01100]が第2プログラマブル遅延回路140にセットされ、遅延量τ2は12×τとなる。このときラッチ回路150の出力Qはハイとなる。
【0035】
ラッチ回路150の出力Qがハイとなった結果、次の制御信号CTRL2として、[01110]が第2プログラマブル遅延回路140にセットされ、遅延量τ2は14×τとなる。このときラッチ回路150の出力Qはハイとなる。
【0036】
ラッチ回路150の出力Qがハイとなった結果、次の制御信号CTRL2として、[01111]が第2プログラマブル遅延回路140にセットされ、遅延量τ2は15×τとなる。このときラッチ回路150の出力Qはハイとなる。
【0037】
このバイナリサーチの結果、ネガティブエッジの位置を示す第2遅延量τnは、16×τとなる。
【0038】
入力パルスSINのパルス幅Tpは、τn-τp=16×τ-9×τ=7×τとなる。
【0039】
以上がパルス幅測定回路100の動作である。このパルス幅測定回路100は、比較技術との対比によって明確となる。
【0040】
比較技術1に係るパルス幅測定回路は、
図1のパルス幅測定回路100と同じ構成を有するが、コントローラ160による遅延量の制御が異なる。比較技術1では、コントローラ160は、第1プログラマブル遅延回路130の遅延量τ1を固定する。この点は実施形態と同様である。一方でコントローラ160は、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ2をスイープする。これにより、第1パルスS1のポジティブエッジとネガティブエッジの位置を検出し、それらの差分をパルス幅Tpとする。この手法は、パルス幅Tpが広くなると、ラッチの回数が多くなり、測定時間が長くなってしまう。
【0041】
実施形態では、ポジティブエッジの検出については比較技術1と同じであるが、ネガティブエッジの検出については、バイナリサーチを利用するため、比較技術1に比べて短縮できる。
【0042】
比較技術2に係るパルス幅測定回路は、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量の制御が比較技術1と異なる。比較技術2では、コントローラ160は、第1プログラマブル遅延回路130の遅延量τ1を固定する。この点は実施形態と同様である。
【0043】
コントローラ160は、第2プログラマブル遅延回路140の遅延量τ2のポジティブエッジを、バイナリサーチで検出する。ただし、第1遅延パルスSd1は、2つのロー区間と、それに挟まれるひとつのハイ区間を有しているため、そのままバイナリサーチを行うと、正しいエッジの位置を検出できない。そのため、比較技術2では、ポジティブエッジのみを有する片エッジ信号(ステップ波形)を発生し、片エッジ信号を、第2遅延パルスSd2でラッチする必要がある。このように、比較技術2では、片エッジ信号を生成する必要があるため、追加のハードウェアが必要となるという問題がある。これに対して、実施形態では、追加のハードウェアは不要である。これは大きな利点である。
【0044】
また比較技術2と実施形態とで、ポジティブエッジの検出に必要なラッチの回数を比較すると、固定の第1遅延量τ1を小さくすれば、ラッチ回数に差はでない。
【0045】
このように、実施形態に係るパルス幅測定回路100によれば、短時間でパルス幅Tpを測定することが可能となる。
【0046】
最後に、変形例を説明する。
【0047】
実施形態では、第2処理において、第2プログラマブル遅延回路140に設定すべき遅延量τ2が第1遅延量τpより小さいとき、測定をスキップしたが、本開示はそれに限定されない。変形例では、この場合にも実際に、ラッチ回路150の出力Qの測定を行い、ローとして測定された出力Qをハイであるとみなして、次のステップに移行してもよい。
【0048】
図1のパルス幅測定回路100は、第1パルス発生器110と第2パルス発生器120によって、第1パルスS1および第2パルスS2を生成したが、入力パルスS
INを生成する回路の出力インピーダンスが十分に低い場合、言い換えると駆動能力が十分に高い場合には、第1パルス発生器110および第2パルス発生器120を省略してもよい。
【0049】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0050】
(項目1)
入力パルスのパルス幅を測定するパルス幅測定回路であって、
前記入力パルスに応じた第1パルスを遅延し、第1遅延パルスを生成する第1プログラマブル遅延回路と、
前記入力パルスに応じた第2パルスを遅延し、第2遅延パルスを生成する第2プログラマブル遅延回路と、
前記第1遅延パルスを、前記第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするラッチ回路と、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1処理と、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2処理と、
を実行可能であり、前記第1遅延量と前記第2遅延量の差を、前記入力パルスの前記パルス幅とする、パルス幅測定回路。
【0051】
(項目2)
前記コントローラは、前記第2処理において、前記第2プログラマブル遅延回路に設定すべき遅延量が前記第1遅延量より小さいとき、前記ラッチ回路の出力がハイであるとみなして、測定をスキップする、項目1に記載のパルス幅測定回路。
【0052】
(項目3)
入力パルスのパルス幅の測定方法であって、
第1プログラマブル遅延回路が、前記入力パルスに応じた第1パルスを遅延して第1遅延パルスを生成するステップと、
第2プログラマブル遅延回路が、前記入力パルスに応じた第2パルスを遅延して第2遅延パルスを生成するステップと、
ラッチ回路が、前記第1遅延パルスを、前記第2遅延パルスのエッジに応答してラッチするステップと、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を制御する制御ステップと、
を備え、
前記制御ステップは、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を連続的にスイープし、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第1遅延量を検出する第1ステップと、
前記第2プログラマブル遅延回路の遅延量を、バイナリサーチにより変化させて、前記ラッチ回路の出力が変化するときの第2遅延量を検出する第2ステップと、
を含み、
前記第1遅延量と前記第2遅延量の差を、前記入力パルスの前記パルス幅とする、測定方法。
【0053】
(項目4)
前記第2ステップにおいて、前記第2プログラマブル遅延回路に設定すべき遅延量が前記第1遅延量より小さいとき、前記ラッチ回路の出力がハイであるとみなして、測定をスキップする、項目3に記載の測定方法。
【符号の説明】
【0054】
100 パルス幅測定回路
110 第1パルス発生器
120 第2パルス発生器
130 第1プログラマブル遅延回路
140 第2プログラマブル遅延回路
150 ラッチ回路
160 コントローラ
SIN 入力パルス
S1 第1パルス
S2 第2パルス
Sd1 第1遅延パルス
Sd2 第2遅延パルス