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特開2025-154269防火区画貫通処理シート及び防火区画材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154269
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】防火区画貫通処理シート及び防火区画材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20251002BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
F16L5/04
E04B1/94 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057178
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 将巳
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA01
2E001EA05
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA34
2E001GA24
2E001HB01
2E001HB04
2E001HD11
(57)【要約】
【課題】火災が延焼するのを効率的に抑えた防火区画貫通処理シートを提供する。
【解決手段】防火区画貫通処理シート21Aは、金属で形成された耐熱シート22Aと、耐熱シート22A上に配置された溶融シート23Aを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で形成された耐熱シートと、
前記耐熱シート上に配置された溶融シートと、
を備える、防火区画貫通処理シート。
【請求項2】
貫通孔が形成された防火区画材本体と、
前記貫通孔に一部が配置された挿通体と、
請求項1に記載の防火区画貫通処理シートである第1防火区画貫通処理シート及び第2防火区画貫通処理シートと、
を備え、
前記第1防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記防火区画材本体及び前記挿通体に対向するように、前記防火区画材本体の第1主面及び前記挿通体にそれぞれ接続され、
前記第2防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記防火区画材本体及び前記挿通体に対向するように、前記防火区画材本体の第2主面及び前記挿通体にそれぞれ接続されている、防火区画材。
【請求項3】
貫通孔が形成された防火区画材本体と、
前記貫通孔に少なくとも一部が配置された管材と、
前記防火区画材本体における前記貫通孔の開口周縁部と前記管材との間に配置され、前記管材よりも前記管材の軸線方向の両側にそれぞれ突出し、前記管材を全周にわたって覆う請求項1に記載の防火区画貫通処理シートと、
前記管材内に一部が配置された挿通体と、
前記軸線方向の両側において、前記挿通体に接触した前記防火区画貫通処理シートを前記挿通体に固定する固定部材と、
を備え、
前記防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記管材に対向するように配置されている、防火区画材。
【請求項4】
貫通孔が形成された防火区画材本体と、
前記貫通孔に少なくとも一部が配置された管材と、
前記防火区画材本体における前記貫通孔の開口周縁部と前記管材との間に配置され、前記管材を全周にわたって覆う請求項1に記載の防火区画貫通処理シートと、
前記管材内に一部が配置された挿通体と、
前記管材の軸線方向の両側において、前記挿通体及び前記防火区画貫通処理シートにそれぞれ貼り付けられた耐熱テープと、
を備え、
前記防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記管材に対向するように配置されている、防火区画材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火区画貫通処理シート及び防火区画材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物は、床、壁等の防火区画材を備えている。防火区画材は、火災時に建築物が延焼するのを抑制する。
防火区画材にケーブル、配管等の挿通体を通すために、防火区画材に防火区画貫通部(貫通孔)が設けられることがある。防火区画貫通部の延焼を抑制するために、防火区画貫通措置部材が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、防火区画貫通措置部材は、建築物の仕切り部(防火区画材)に形成され、挿通体が通る防火区画貫通部において、延焼を抑えるのに用いられる。防火区画貫通措置部材は、耐火材と、保持材からなる。
耐火材は、耐火性を有する部材である。耐火材は、熱膨張性部材であることが好ましく、シート状の部材とすることができる。
【0004】
保持材は、シート状の第1基材であるとよい。例えば、第1基材は、金属箔、ガラスクロスなどの不燃材料、ポリエチレンや塩化ビニル等の樹脂材料等、もしくはそれらの複合材により形成される。保持材は、耐火材と積層して、積層構造とすることができる。
積層構造は、耐火材が仕切り部及び挿通体に対向するように接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-126531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の防火区画貫通措置部材の延焼抑制性能には、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、火災が延焼するのを効率的に抑えた防火区画貫通処理シート、及びこの防火区画貫通処理シートを備える防火区画材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、金属で形成された耐熱シートと、前記耐熱シート上に配置された溶融シートを備える、防火区画貫通処理シートである。
【0009】
この発明では、例えば、貫通孔に挿通体が通された中空壁に対して、溶融シートが中空壁及び挿通体に対向するように、防火区画貫通処理シートを中空壁及び挿通体に接続する。ここで言う対向するとは、互いに間を空けて向き合う意味だけでなく、互いに接触する意味も含む。
例えば、防火区画貫通処理シートに対する中空壁とは反対側である、中空壁に対する第1側に火災が生じると、挿通体、防火区画貫通処理シート、及び中空壁が加熱される。防火区画貫通処理シートの耐熱シートは、火災による熱に耐えて、中空壁における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0010】
一方で、防火区画貫通処理シートの溶融シートの少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、中空壁及び挿通体と、耐熱シートとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、中空壁における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、中空壁に対する第2側に達するのが抑制され、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0011】
(2)本発明の態様2は、貫通孔が形成された防火区画材本体と、前記貫通孔に一部が配置された挿通体と、(1)に記載の防火区画貫通処理シートである第1防火区画貫通処理シート及び第2防火区画貫通処理シートと、を備え、前記第1防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記防火区画材本体及び前記挿通体に対向するように、前記防火区画材本体の第1主面及び前記挿通体にそれぞれ接続され、前記第2防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記防火区画材本体及び前記挿通体に対向するように、前記防火区画材本体の第2主面及び前記挿通体にそれぞれ接続されている、防火区画材である。
【0012】
この発明では、例えば、防火区画材本体の第1主面側に火災が生じると、挿通体、第1防火区画貫通処理シート、及び防火区画材本体が加熱される。第1防火区画貫通処理シート及び第2防火区画貫通処理シートの耐熱シートは、火災による熱に耐えて、防火区画材本体における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
一方で、第1防火区画貫通処理シートの溶融シートの少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、防火区画材本体及び挿通体と、第1防火区画貫通処理シートの耐熱シートとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、防火区画材本体における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、防火区画材本体の第2主面側に達するのが抑制される。
【0013】
第2防火区画貫通処理シートの耐熱シートは、火災による熱に耐えて、防火区画材本体における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
以上のようにして、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0014】
(3)本発明の態様3は、貫通孔が形成された防火区画材本体と、前記貫通孔に少なくとも一部が配置された管材と、前記防火区画材本体における前記貫通孔の開口周縁部と前記管材との間に配置され、前記管材よりも前記管材の軸線方向の両側にそれぞれ突出し、前記管材を全周にわたって覆う(1)に記載の防火区画貫通処理シートと、前記管材内に一部が配置された挿通体と、前記軸線方向の両側において、前記挿通体に接触した前記防火区画貫通処理シートを前記挿通体に固定する固定部材と、を備え、前記防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記管材に対向するように配置されている、防火区画材である。
【0015】
この発明では、例えば、防火区画材本体に対する軸線方向の第1側に火災が生じると、挿通体、防火区画貫通処理シート、防火区画材本体、及び固定部材が加熱される。固定部材は、軸線方向の両側において、防火区画貫通処理シートを挿通体に固定する。防火区画貫通処理シートの耐熱シートは、火災による熱に耐えて、防火区画材本体における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0016】
一方で、防火区画貫通処理シートの溶融シートの少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、管材及び挿通体と、防火区画貫通処理シートの耐熱シートとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、管材と挿通体との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、防火区画材本体に対する軸線方向の第2側に達するのが抑制される。
以上のようにして、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0017】
(4)本発明の態様4は、貫通孔が形成された防火区画材本体と、前記貫通孔に少なくとも一部が配置された管材と、前記防火区画材本体における前記貫通孔の開口周縁部と前記管材との間に配置され、前記管材を全周にわたって覆う(1)に記載の防火区画貫通処理シートと、前記管材内に一部が配置された挿通体と、前記管材の軸線方向の両側において、前記挿通体及び前記防火区画貫通処理シートにそれぞれ貼り付けられた耐熱テープを備え、前記防火区画貫通処理シートは、前記溶融シートが前記管材に対向するように配置されている、防火区画材である。
【0018】
この発明では、例えば、防火区画材本体に対する軸線方向の第1側に火災が生じると、挿通体、防火区画貫通処理シート、防火区画材本体、及び耐熱テープが加熱される。耐熱テープは、軸線方向の両側において、挿通体及び防火区画貫通処理シートにそれぞれ貼り付けられている。防火区画貫通処理シートの耐熱シートは、火災による熱に耐えて、防火区画材本体における貫通孔の開口周縁部と挿通体との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0019】
一方で、防火区画貫通処理シートの溶融シートの少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、管材及び挿通体と、防火区画貫通処理シートの耐熱シートとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、管材と挿通体との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、防火区画材本体に対する軸線方向の第2側に達するのが抑制される。
以上のようにして、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防火区画貫通処理シート及び防火区画材では、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態の壁を備える建築物を側面視した断面図である。
図2】同壁における第1防火区画貫通処理の平面図である。
図3】同壁の作用を説明する断面図である。
図4】本発明の第2実施形態の壁を側面視した断面図である。
図5】同壁の防火区画貫通処理ユニットを側面視した断面図である。
図6】同壁の作用を説明する断面図である。
図7】本発明の第3実施形態の壁を側面視した半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る防火区画貫通処理シート及び防火区画材の第1実施形態を、防火区画材が壁である場合を例にとって、図1から図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の壁10は、建築物1に用いられる。建築物1の構成は、壁10を備えていれば、限定されない。例えば、建築物1は、図示しない柱、梁、及び床と、壁10を備える。
柱は、H形鋼等で形成されている。柱は、不図示の基礎から上方に向かって延びている。梁は、H形鋼等で形成され、水平面に沿って延びている。梁の端部は、柱に接合されている。
【0023】
床は、鉄筋コンクリート等で平板状に形成されている。床は、梁により床の下方から支持されている。
壁10は、中空壁(防火区画材本体)11と、挿通体16と、第1防火区画貫通処理シート(防火区画貫通処理シート)21Aと、第2防火区画貫通処理シート(防火区画貫通処理シート)21Bを備える。
中空壁11は、平板状に形成されている。中空壁11は、第1壁材12と、第2壁材13と、を有する。例えば、壁材12,13は、石こうボードで平板状に形成されている。
なお、防火区画材本体は、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete:高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)、鉄筋コンクリート、押出成形セメント板、ケイ酸カルシウム板、コンクリートブロック等の防火区画を構成できる部材で形成されてもよい。
壁材12,13は、自身の厚さ方向が水平面に沿うように配置されている。
第1壁材12と第2壁材13との間には、隙間S1が形成されている。
【0024】
中空壁11には、貫通孔11aが形成されている。貫通孔11aは、第1壁材12に形成された第1貫通孔12a、及び第2壁材13に形成された第2貫通孔13aにより構成されている。
例えば、貫通孔12a,13aは、壁材12,13の厚さ方向に見たときに、円形状を呈し、互いに重なっている。
なお、中空壁11は、1つの壁材により構成されてもよい。貫通孔11a(貫通孔12a,13a)の形状は、これに限定されない。
以下では、中空壁11における第1壁材12側の外面を、第1主面12bと言う。中空壁11における第2壁材13側の外面を、第2主面13bと言う。第1主面12b及び第2主面13bは、壁材12,13の厚さ方向を向く面である。第2主面13bは、中空壁11における第1主面12bとは反対側の面である。
【0025】
例えば、挿通体16は、配管である。例えば、挿通体16は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂等もしくは鋼管で形成されている。例えば、挿通体16の融点は、160℃から250℃程度である。
挿通体16は、水平面に沿って延び、中空壁11の貫通孔11aに配置されている。挿通体16は、中空壁11よりも、中空壁11の厚さ方向の両側にそれぞれ突出している。すなわち、挿通体16の一部が、中空壁11の貫通孔11aに配置されている。
なお、挿通体はケーブル等でもよい。
【0026】
本実施形態では、第1防火区画貫通処理シート21Aの構成と第2防火区画貫通処理シート21Bの構成とは、中空壁11に沿う基準面S6に対して面対称である。このため、第1防火区画貫通処理シート21Aの構成を、符号の数字に英大文字「A」を付加することで示す。第2防火区画貫通処理シート21Bのうち第1防火区画貫通処理シート21Aに対応する構成を、第1防火区画貫通処理シート21Aの符号と同一の数字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。
例えば、第1防火区画貫通処理シート21Aの後述する耐熱シート22Aと第2防火区画貫通処理シート21Bの後述する耐熱シート22Bとは、基準面S6に対して面対称である。
【0027】
図1及び図2に示すように、第1防火区画貫通処理シート21Aは、耐熱シート22Aと、溶融シート23Aと、を有する。耐熱シート22A及び溶融シート23Aは、それぞれシート状(平板状)に形成されている。
耐熱シート22Aは、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属箔で形成されている。例えば、耐熱シート22Aは、火災時に想定される600℃の温度下で一定の剛性を有することができる。
【0028】
溶融シート23Aは、LLDPE(Linear Low-Density PolyEthylene:直鎖状低密度ポリエチレン)等の合成樹脂で形成されている。溶融シート23Aは、耐熱シート22A上に配置されている。LLDPEの融点は、80℃から120℃程度である。
第1防火区画貫通処理シート21Aは、耐熱シート22A及び溶融シート23Aが積層されて構成されている。
図2に示すように、第1防火区画貫通処理シート21Aには、第1防火区画貫通処理シート21Aの平面視で、第1防火区画貫通処理シート21Aの外周縁から、第1防火区画貫通処理シート21Aの中央部に達するスリット21aAが形成されている。
【0029】
図1に示すように、第1防火区画貫通処理シート21Aは、溶融シート23Aが中空壁11の第1主面12b及び挿通体16に対向するように、中空壁11の第1主面12b及び挿通体16にそれぞれ接続されている。ここで言う対向するとは、互いに間を空けて向き合う意味だけでなく、互いに接触する意味も含む。
このとき、挿通体16は、第1防火区画貫通処理シート21Aのスリット21aAに通され、第1防火区画貫通処理シート21Aの一部は、挿通体16に巻き付けられている。第1防火区画貫通処理シート21Aは、中空壁11の貫通孔11aを封止することが好ましい。
第1防火区画貫通処理シート21Aは、タッカーの針(ステイプル)等の固定具26Aにより、中空壁11及び挿通体16にそれぞれ固定されている。
第1防火区画貫通処理シート21Aと挿通体16とを、金属箔の片面に接着層が設けられた金属テープ、樹脂製の結束バンド等で互いに固定してもよい。
【0030】
第2防火区画貫通処理シート21Bは、第1防火区画貫通処理シート21Aの耐熱シート22A、溶融シート23Aと同様に構成された、耐熱シート22B、溶融シート23Bを有する。
第2防火区画貫通処理シート21Bは、溶融シート23Bが中空壁11の第2主面13b及び挿通体16に対向するように、中空壁11の第2主面13b及び挿通体16にそれぞれ接続されている。
壁10は、床、梁により壁10の下方から支持されている。
【0031】
次に、以上のように構成された壁10の作用について説明する。
例えば、図3に示すように、中空壁11の第1主面12b側に火災が生じると、挿通体16、第1防火区画貫通処理シート21A、及び中空壁11が加熱される。防火区画貫通処理シート21A,21Bの耐熱シート22A,22Bは、火災による熱に耐えて、中空壁11における貫通孔11aの開口周縁部と挿通体16との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0032】
一方で、第1防火区画貫通処理シート21Aの溶融シート23Aの少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、中空壁11及び挿通体16と、第1防火区画貫通処理シート21Aの耐熱シート22Aとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。なお、第2防火区画貫通処理シート21Bの溶融シート23Bが溶融するか否かは、火災の熱の伝わり方に依存する。
従って、中空壁11における貫通孔11aの開口周縁部と挿通体16との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、中空壁11の第2主面13b側に達するのが抑制される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の壁10では、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態の第1防火区画貫通処理シート21Aでは、例えば、貫通孔11aに挿通体16が通された中空壁11に対して、溶融シート23Aが中空壁11及び挿通体16に対向するように、第1防火区画貫通処理シート21Aを中空壁11及び挿通体16に接続する。
例えば、第1防火区画貫通処理シート21Aに対する中空壁11とは反対側である、中空壁11に対する第1側に火災が生じると、挿通体16、第1防火区画貫通処理シート21A、及び中空壁11が加熱される。第1防火区画貫通処理シート21Aの耐熱シート22Aは、火災による熱に耐えて、中空壁11における貫通孔11aの開口周縁部と挿通体16との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0035】
一方で、第1防火区画貫通処理シート21Aの溶融シート23Aの少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、中空壁11及び挿通体16と、耐熱シート22Aとの間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、中空壁11における貫通孔11aの開口周縁部と挿通体16との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、中空壁11に対する第2側に達するのが抑制され、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4から図6を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図4に示すように、本実施形態の壁30は、壁10の各構成において、防火区画貫通処理シート21A,21B、固定具26A,26Bに代えて、管材31、防火区画貫通処理シート36、固定部材41A,41B、を備える。なお、管材31及び防火区画貫通処理シート36で、防火区画貫通処理ユニット39を構成する。
管材31は、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂で、管状に形成されている。管材31は、管材31の軸線O1が、中空壁11の厚さ方向に沿うように配置されている。管材31の軸線O1方向の中間部は、中空壁11の貫通孔11aに配置されている。管材31は、中空壁11よりも軸線O1方向の両側にそれぞれ突出している。
なお、管材31の全体が、貫通孔11aに配置されていてもよい。
【0037】
防火区画貫通処理シート36は、第1防火区画貫通処理シート21Aの耐熱シート22A、溶融シート23Aと同様に構成された、耐熱シート37、溶融シート38を有する。
この例では、防火区画貫通処理シート36は、第1防火区画貫通処理シート21Aよりも大きく(軸線O1方向に長く)、防火区画貫通処理シート36にスリットは形成されていない。
防火区画貫通処理シート36は、中空壁11における貫通孔11aの開口周縁部と管材31との間に配置され、管材31を全周にわたって覆っている。防火区画貫通処理シート36は、溶融シート38が管材31に対向するように配置されている。
防火区画貫通処理シート36は、管材31よりも軸線O1方向の両側にそれぞれ突出している。処理シート36における突出した部分は、挿通体16の外周面に接触している。
防火区画貫通処理シート36は、管材31の外周面に熱融着されていてもよい。
【0038】
本実施形態では、挿通体16の軸線O1方向の中間部(一部)は、管材31内に配置されている。挿通体16は、管材31よりも軸線O1方向の両側にそれぞれ突出している。
固定部材41Aには、針金が用いられている。固定部材41A,41Bは、軸線O1方向の両側において、挿通体16に接触した防火区画貫通処理シート36を挿通体16に固定している。
なお、固定部材には、金属箔の片面に接着層が設けられた金属テープ等が用いられてもよい。
壁30は、図4中に示す封止部材43A,43Bを備えてもよい。封止部材43A,43Bは、中空壁11と管材31(防火区画貫通処理シート36)とを固定している。
【0039】
壁30の各構成において、予め工場等で、図5に示す防火区画貫通処理ユニット39を製造しておくと、中空壁11の貫通孔11aに、防火区画貫通処理ユニット39及び挿通体16を通す等することで、壁30を構成することができるため、施工が容易になる。
【0040】
次に、以上のように構成された壁30の作用について説明する。
例えば、図6に示すように、中空壁11に対する軸線O1方向の第1側に火災が生じると、挿通体16、防火区画貫通処理シート36、中空壁11、及び固定部材41Aが加熱される。固定部材41A,41Bは、軸線O1方向の両側において、防火区画貫通処理シート36を挿通体16に固定する。防火区画貫通処理シート36の耐熱シート37は、火災による熱に耐えて、中空壁における11貫通孔11aの開口周縁部と挿通体16との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0041】
一方で、防火区画貫通処理シート36の溶融シート38の少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、管材31及び挿通体16と、防火区画貫通処理シート36の耐熱シート37との間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、管材と挿通体16との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、中空壁11に対する軸線O1方向の第2側に達するのが抑制される。
以上のようにして、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態の壁50は、壁30の各構成において、固定部材41A,41Bに代えて、耐熱テープ51A,51Bを備える。
この例では、防火区画貫通処理シート36は、管材31と同じ長さであり、防火区画貫通処理シート36は、管材31よりも軸線O1方向の両側にそれぞれ突出していない。
封止部材43A,43Bは、中空壁11と防火区画貫通処理シート36とを固定している。なお、壁50は封止部材43A,43Bを備えなくてもよい。
【0043】
例えば、耐熱テープ51A,51Bには、金属箔の片面に接着層が設けられた金属テープ等が用いられる。耐熱テープ51A,51Bは、軸線O1方向の両側において、挿通体16及び防火区画貫通処理シート36にそれぞれ貼り付けられている。
【0044】
次に、以上のように構成された壁50の作用について説明する。
例えば、中空壁11に対する軸線O1方向の第1側に火災が生じると、挿通体16、防火区画貫通処理シート36、中空壁11、及び耐熱テープ51Aが加熱される。耐熱テープ51A,51Bは、軸線O1方向の両側において、挿通体16及び防火区画貫通処理シート36にそれぞれ貼り付けられている。防火区画貫通処理シート36の耐熱シート37は、火災による熱に耐えて、中空壁11における貫通孔11aの開口周縁部と挿通体16との間の隙間の少なくとも一部を塞ぎ続ける。
【0045】
一方で、防火区画貫通処理シート36の溶融シート38の少なくとも一部は、火災による熱で溶融し、管材31及び挿通体16と、防火区画貫通処理シート36の耐熱シート37との間の隙間の少なくとも一部を塞ぐ。
従って、管材31と挿通体16との間を通して空気が流れ難くなり、火災による炎及び熱が、中空壁11に対する軸線O1方向の第2側に達するのが抑制される。
以上のようにして、火災が延焼するのを効率的に抑えることができる。
【0046】
以上、本発明の第1実施形態から第3実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態から第3実施形態では、防火区画材が壁であるとしたが、防火区画材はこれに限定されず、床等でもよい。
【符号の説明】
【0047】
10,30,50 壁(防火区画材)
11 中空壁(防火区画材本体)
11a 貫通孔
16 挿通体
21A 第1防火区画貫通処理シート(防火区画貫通処理シート)
21B 第2防火区画貫通処理シート(防火区画貫通処理シート)
22A,22B 耐熱シート
23A,23B 溶融シート
31 管材
36 防火区画貫通処理シート
41A,41B 固定部材
51A,51B 耐熱テープ
O1 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7