(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154346
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】分離装置、基板処理装置および分離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057283
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】武藤 真
(72)【発明者】
【氏名】尾張 駿太
(57)【要約】
【課題】分離の進捗状況を判別し易い分離装置、基板処理装置及び分離方法を提供する。
【解決手段】実施形態の分離装置1は、板部材(貼合基板S)の両面を保持する2つのホルダ(第1のホルダ110、第2のホルダ120)と、2つのホルダのうちの一方のホルダを加熱する加熱部510と、2つのホルダの少なくともいずれかを駆動することにより、2つのホルダに保持された板部材を回転させる回転駆動部122と、回転する板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、板部材を分離させるノズル30と、板部材の分離中に、2つのホルダのうちの他方のホルダ側から、板部材の温度を検出する温度検出部520と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板部材の両面を保持する2つのホルダと、
前記2つのホルダのうちの一方のホルダを加熱する加熱部と、
前記2つのホルダの少なくともいずれかを駆動することにより、前記2つのホルダに保持された前記板部材を回転させる回転駆動部と、
回転する前記板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、前記板部材を分離させるノズルと、
前記板部材の分離中に、前記2つのホルダのうちの他方のホルダ側から、前記板部材の温度を検出する温度検出部と、
を有することを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記2つのホルダは、鉛直方向の上下から前記板部材の両面を保持するように上下に配置され、
前記加熱部は、上方に配置されたホルダに設けられ、
前記温度検出部は、下方に配置されたホルダ側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記温度検出部により検出される前記板部材の温度の変化に応じて、前記ノズルを移動させるノズル駆動部を有することを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項4】
前記板部材の表面の流体を除去する流体除去部を有することを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項5】
前記温度検出部は、回転する前記板部材の温度を非接触で検出する非接触検出部を有することを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項6】
前記温度検出部は、前記非接触検出部を、前記板部材の径方向に移動させる駆動部を有することを特徴とする請求項5記載の分離装置。
【請求項7】
前記温度検出部は、他方のホルダに設けられたホルダ用検出部を有することを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項8】
一方のホルダに接触した前記板部材の外周を把持する把持部を有し、
前記把持部により前記板部材を把持し、一方のホルダを前記板部材に接触させて前記加熱部により加熱し、他方のホルダを前記板部材から退避させた状態で、前記温度検出部が、前記板部材の中央領域の温度を検出する、
ことを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項9】
前記加熱部は、他方のホルダにも設けられ、
前記温度検出部は、板部材を保持した他方のホルダと反対側にも設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項10】
前記板部材は2つの基板が貼り合わされた貼合基板であり、
請求項1乃至9のいずれかに記載の分離装置と、
分離された前記基板の表面を処理する表面処理装置と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
2つのホルダが、板部材を保持して回転させる回転工程と、
前記2つのホルダのうちの一方のホルダを加熱する加熱工程と、
ノズルが、回転する前記板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、前記板部材を分離させる分離工程と、
温度検出部が、前記分離工程において、前記板部材の温度の変化を検出する検出工程と、
を含むことを特徴とする分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置、基板処理装置および分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板部材を一対の基板に分離させる技術が必要となる場合がある。例えば、3次元構造の半導体デバイスの製造工程において、2枚の基板を貼り合わせた貼合基板(板部材)を分離することによって、一方の基板に形成された層を、他方の基板に写し取ることにより、均一な薄膜を形成することが行われている。
【0003】
このような板部材の分離技術として、2枚の基板を貼り合わせた貼合基板の相反する表面を、一対のホルダによって挟むように吸着保持し、回転させながら高圧の水(ウォータージェット)を貼合基板の外周に向けて供給することにより、流体の楔効果を利用して貼合基板を分離させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウォータージェットによる貼合基板の分離は、貼合基板の外周から中心に向かって進行するが、目視による場合、貼合基板の分離している領域が判別し難いため、分離の進捗が分からない。このため、分離させる時間が不十分で、未分離層が残ってしまう場合や、既に分離が完了しているにもかかわらず、流体を無駄に使用し続けてしまう場合が生じる。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、板部材の分離の進捗状況を判別し易い分離装置、基板処理装置及び分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、板部材の両面を保持する2つのホルダと、前記2つのホルダのうちの一方のホルダを加熱する加熱部と、前記2つのホルダの少なくともいずれかを駆動することにより、前記2つのホルダに保持された前記板部材を回転させる回転駆動部と、回転する前記板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、前記板部材を分離させるノズルと、前記板部材の分離中に、前記2つのホルダのうちの他方のホルダ側から、前記板部材の温度を検出する温度検出部と、を有する。
【0008】
実施形態の基板処理装置は、前記板部材は2つの基板が貼り合わされた貼合基板であり、前記分離装置と、分離された前記基板の表面を処理する表面処理装置と、を有する。
【0009】
実施形態の分離方法は、2つのホルダが、板部材を保持して回転させる回転工程と、前記2つのホルダのうちの一方のホルダを加熱する加熱工程と、ノズルが、回転する前記板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、前記板部材を分離させる分離工程と、温度検出部が、前記分離工程において、前記板部材の温度の変化を検出する検出工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、板部材の分離の進捗状況を判別し易い分離装置、基板処理装置及び分離方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】貼合基板の搬入時における貼合基板、位置決め部及びノズルを示す平面図である。
【
図3】分離工程前の貼合基板の位置決め時における貼合基板、位置決め部及びノズルを示す平面図である。
【
図4】分離開始位置、中心分離位置へのノズルの変位を示す平面図である。
【
図5】分離工程の途中における貼合基板、位置決め部及びノズルを示す平面図である。
【
図6】貼合基板の中心の分離工程における貼合基板、位置決め部及びノズルを示す平面図である。
【
図7】実施形態の貼合基板を分離する手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の貼合基板の分離工程を示す説明図である。
【
図9】分離開始から終了までの貼合基板(第2の基板)の温度変化の推移を示す説明図である。
【
図10】第2のホルダにホルダ用検出部を設けた分離装置の変形例を示す側面図である。
【
図12】温度検出部を中央領域へ移動可能に設けた分離装置の変形例を示す側面図である。
【
図14】第1のホルダ及び第2のホルダにそれぞれ加熱部を設け、中央領域の温度検出可能な温度検出部を追加した分離装置の変形例を示す側面図である。
【
図16】実施形態の基板分離装置を備えた基板処理装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の分離装置について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式図であって、各部のサイズ、比率等は、理解を容易にするために誇張している部分を含んでいる。
図1に示すように、分離装置1は、ノズル30からの流体の吐出によって板部材を分離させる装置である。
図1では、手前にある把持部210、支持部220を省略している。板部材は、2枚の板を貼り合わせたものであって分離装置1によって分離されるものも、一体の板であって分離装置1によって2枚に分離(分割)されるものも含まれる。
【0013】
本実施形態の板部材は貼合基板Sである。貼合基板Sは、第1の基板Sa、第2の基板Sbを貼り合わせることにより構成された円形の基板である。第1の基板Saは、貼合面Sa1とその反対側の面である面Sa2を有する。第2の基板Sbは、貼合面Sb1とその反対側の面である面Sb2を有する。すなわち、貼合基板Sは、円形の一対の面であり、第1の基板Sa及び第2の基板Sbの貼合された面と反対側の露出面である面Sa2と面Sb2を有する。
【0014】
第1の基板Saは、例えば、半導体ウェーハの表面に多孔質層が形成され、さらにその上に単結晶Si層が形成された基板である。第2の基板Sbは、例えば、半導体ウェーハの表面に単結晶Si層が形成された基板である。このような第1の基板Saと第2の基板Sbとが、第1の基板Sa又は第2の基板Sbに形成された絶縁層を介して貼り合わされることにより、貼合基板Sが形成されている。なお、以下の説明では、第1の基板Sa、第2の基板Sbが分離している貼合基板Sであっても、貼合面Sa1と貼合面Sb1とが重なり合った状態の基板であれば貼合基板Sとする。
【0015】
なお、以下の説明では、貼合基板Sの回転軸に沿う方向をZ方向、これに垂直な平面において、ノズル30が流体を吐出する方向をY方向、これに直交する方向をX方向とする。貼合基板Sの回転平面は、XY平面と平行である。本実施形態では、Z方向は上下方向、XY方向は水平方向であるが、分離装置1の設置方向はこれに限定されない。
【0016】
分離装置1は、貼合基板Sの第1の基板Saを多孔質層から分離して、第2の基板Sbに多層の単結晶Si層を形成する。分離装置1は、保持部10、位置決め部20、ノズル30、ノズル駆動部40、加熱部510、温度検出部520、流体除去部60、制御装置100を有する。
【0017】
[保持部]
保持部10は、貼合基板Sの両面(Sa2及びSb2)を保持して回転させる。保持部10は、第1のホルダ110、第2のホルダ120を有する。第1のホルダ110、第2のホルダ120は、貼合基板Sの両面を保持する2つのホルダである。本実施形態の第1のホルダ110、第2のホルダ120は、鉛直方向の上下から貼合基板Sの両面を保持するように上下に配置されている。
【0018】
(第1のホルダ)
第1のホルダ110は、第1の保持体111、支持機構112を有する。第1の保持体111は、貼合基板Sの面の径よりも径の小さな円形の板体である。第1のホルダ110は、貼合基板Sへの傷を防止して、貼合基板Sとの擦れによるパーティクルの発生を防止できる材料により形成されている。例えば、第1のホルダ110を、PEEKなどの樹脂材料により形成する。支持機構112は、Z方向に延びる支持軸112aを介して第1の保持体111の面の中心に接続され、第1の保持体111を、その中心が回転中心Ctとなるように回転可能に支持する。本実施形態においては、支持軸112aは、後述する第2の保持体121を回転させる駆動源にプーリとタイミングベルトを介して接続され、第2の保持体121と同期して回転する。
【0019】
本実施形態においては、第1の保持体111は、支持軸112aに固定された面が上となり、その反対面が下を向く。なお、図示はしないが、第1の保持体111には、貼合基板Sに接する面に開口した吸引孔が形成され、この吸引孔に排気装置が接続されることにより、貼合基板Sの一方の面(第1の基板Saの露出面Sa2)を負圧により吸引保持できる。
【0020】
(第2のホルダ)
第2のホルダ120は、第2の保持体121、回転駆動部122、着脱駆動部123を有する。第2の保持体121は、第1の保持体111と同径の円形の板体である。第2のホルダ120も、第1のホルダ110と同様に、貼合基板Sへの傷を防止して、貼合基板Sとの擦れによるパーティクルの発生を防止できる材料により形成されている。例えば、第2のホルダ120を、PEEKなどの樹脂材料により形成する。
【0021】
回転駆動部122は、貼合基板Sを回転させる。回転駆動部122は、Z方向に延びる駆動軸122aが第2の保持体121の中心に接続され、第2の保持体121を回転可能に支持する。回転駆動部122は、駆動源として、第2の保持体121を回転させるモータを有する。駆動軸122aはモータのシャフトであり、モータが作動することにより、第2の保持体121が回転中心Ctを中心として回転する。なお、回転駆動部122は2つのホルダの少なくともいずれか(いずれか又は双方)を駆動することにより、2つのホルダに保持された貼合基板Sを回転させることができればよい。このため、第1のホルダ110を回転させる回転駆動部122であっても、第1のホルダ110及び第2のホルダ120の双方を回転させる回転駆動部122であってもよい。
【0022】
本実施形態においては、第2の保持体121は、駆動軸122aに取り付けられた面が下となり、その反対面が上を向いて第1の保持体111に対向する。つまり、第1の保持体111と第2の保持体121は、回転中心Ctが一致するように、離隔して対向配置される。なお、図示はしないが、第2の保持体121には、貼合基板Sに接する面に開口した吸引孔が形成され、この吸引孔に排気装置が接続されることにより、貼合基板Sの他方の面(第2の基板Sbの露出面Sb2)を負圧により吸引保持できる。
【0023】
着脱駆動部123は、保持部10に貼合基板Sを保持させる。着脱駆動部123は、第2の保持体121を、第1の保持体111に接離する方向に移動させる。着脱駆動部123は、駆動源としてシリンダを有する。離隔した第1の保持体111と第2の保持体121との間に貼合基板Sが挿入され、着脱駆動部123が、第2の保持体121を第1の保持体111に接近させることにより、第1の保持体111と第2の保持体121との間に貼合基板Sを挟んで保持することができる。
【0024】
[位置決め部]
位置決め部20は、貼合基板Sの中心Csを、保持部10による回転中心Ctに位置決めする(
図2、
図3参照)。つまり、第1の保持体111と第2の保持体121との間に配置された貼合基板Sの中心Csを、第1の保持体111と第2の保持体121の回転中心Ctに合わせる。位置決め部20は、把持部210、支持部220、軸方向駆動部230、開閉駆動部240を有する。
【0025】
(把持部)
把持部210は、貼合基板Sの外周を把持する。貼合基板Sの外周は、円周の外縁に沿う側面である。把持部210は、保持部10を囲む位置、つまり保持部10に保持される貼合基板Sの外周に沿う位置に、等間隔で複数配置されている。本実施形態の把持部210は、直立した4つのピンである。
【0026】
(支持部)
支持部220は各把持部210が取り付けられている。支持部220は把持部210と一対一で対応して4つ設けられている。
【0027】
(軸方向駆動部)
軸方向駆動部230は、把持部210及び支持部220を、保持部10の回転軸に平行な軸方向に移動させる。軸方向駆動部230は、支柱部231、付勢部232、吸収部233を有する。支柱部231は、先端に把持部210及び支持部220を支持し、直立した部材である。付勢部232は、例えば、シリンダによって回動するカム等の駆動機構によって、軸方向に移動可能に設けられている。吸収部233は、付勢部232と支柱部231との間に介在し、付勢部232の移動を支柱部231に伝達するとともに、貼合基板Sの振動を吸収する。吸収部233は、振動を吸収できればよいので、例えば、圧縮バネ、板バネ、ゴムや樹脂の弾性体、シリンダ等を用いることができる。
【0028】
開閉駆動部240は、把持部210及び支持部220を、把持部210が貼合基板Sの外周に接する閉位置と、貼合基板Sの外周から離れる開位置との間で移動させる。閉位置となることにより、貼合基板Sの中心Csが、回転中心Ctに位置決めされるように、把持部210の位置が設定されている。開閉駆動部240は、例えば、図示しないシリンダにより回動するカム等の駆動機構によって、貼合基板Sの半径方向(回転中心Ctに対する求心方向及び遠心方向)に移動するアーム241を有する。アーム241には、支柱部231が軸方向に移動可能に接続されている。
【0029】
[ノズル]
ノズル30は、回転する貼合基板Sの外周に向かって流体を吐出することにより、貼合基板Sを第1の基板Saと第2の基板Sbに分離する。本実施形態のノズル30は、保持部10に保持されて回転する貼合基板Sの外周に向かって流体を吐出した後、位置決め部20により位置決めされて、停止した状態の貼合基板Sの外周に向かって、流体を吐出する。
【0030】
本実施形態のノズル30は、高圧の流体である水(ウォータージェット)を対象物に噴射して加工するウォータージェット加工を実現する噴出装置である。ノズル30は、高圧水を供給するポンプ等を含む供給装置31に配管及びバルブ等を介して接続されている。ノズル30は高圧の流体を吐出可能に構成され、孔径はごく小径(0.1~1mm)であり、ノズル30の先端の肉厚は高圧水に耐えられる厚み(1~5cm)を有する。
図4に示すように、ノズル30の先端の吐出口は貼合基板Sの外周に向かう方向に設けられ、ノズル30の軸は、貼合基板Sの回転平面に平行となっている。流体の温度は加熱部510による貼合基板Sの加熱温度よりも少なくとも10℃低く、例えば20~35℃である。
【0031】
[ノズル駆動部]
ノズル駆動部40は、貼合基板Sの外周に流体を吐出可能な位置に、ノズル30を移動させる。本実施形態のノズル駆動部40は、
図4に示すように、ノズル30を貼合基板Sの外周に沿う方向に移動させることができる。ノズル駆動部40は、温度検出部520により検出された貼合基板Sの温度の変化に応じて、ノズル30を移動させる。ノズル駆動部40は、接離機構41、位置調整機構42を有する。
【0032】
(接離機構)
接離機構41は、
図3に示すように、ノズル30を、吐出口が貼合基板Sの外周から離隔した待機位置と、
図4~
図6に示すように、外周に接近して流体の吐出により貼合基板Sを分離可能な吐出位置との間で移動させる。つまり、接離機構41によって、ノズル30はY方向に沿って移動する。接離機構41は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。
【0033】
(位置調整機構)
位置調整機構42は、ノズル30を、保持部10に保持されて回転する貼合基板Sの外周の接線に沿う分離開始位置(
図4の実線のノズル30参照)と、貼合基板Sの中心Csに向かう中心分離位置(
図6参照)との間を移動させる。つまり、位置調整機構42によって、ノズル30はX方向に沿って移動する。位置調整機構42は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。
【0034】
接離機構41と位置調整機構42によって、ノズル30は吐出位置を維持しながら、分離開始位置から中心分離位置まで、円弧の軌跡で移動することができる。これにより、
図4のRaに示す貼合基板Sの外周の一部の領域に向かって、ノズル30から吐出した流体が吹き付けられる。この一部の領域とは、貼合基板Sの外周において中心角90度の円弧を含む領域である。なお、貼合基板Sは、少なくとも外周の分離中は回転しているので、外周の一部の領域に流体を吐出したとしても、全周に亘って吐出した流体を到達させることができる。そして、貼合基板Sが分離するに従って、第1の基板Saと、第2の基板Sbとの隙間から、貼合基板Sの中央部分にも流体が達する。
【0035】
[加熱部]
加熱部510は、
図1に示すように、2つのホルダのうちの一方の第1のホルダ110を加熱する。つまり、加熱部510は、上方に配置された第1のホルダ110に設けられている。本実施形態の加熱部510は、平板状のヒータであり、第1の保持体111の内部に設けられている。例えば、加熱部510は、第1の保持体111の貼合基板Sに接する面の近傍に内蔵されている。加熱部510は、例えば、第1のホルダ110の耐熱温度まで貼合基板Sを加熱する。好ましくは、50~100℃(50℃以上、100℃以下)まで貼合基板Sを加熱する。
【0036】
[温度検出部]
温度検出部520は、貼合基板Sの分離中に、2つのホルダのうちの他方のホルダ側から貼合基板Sの温度を検出する。本実施形態の温度検出部520は、下方に配置された第2のホルダ120側に設けられている。温度検出部520は、非接触検出部521、駆動部522を有する。非接触検出部521は、回転する貼合基板Sの温度を非接触で検出する。例えば、非接触検出部521として、サーモグラフィーや放射温度計を用いることができる。
【0037】
非接触検出部521は、第2のホルダ120側から、つまり貼合基板Sの第2の基板Sb側から、貼合基板Sの温度を検出するように、第2のホルダ120の近傍に配置されている。
【0038】
駆動部522は、非接触検出部521を貼合基板Sの径方向に移動させる移動機構である。駆動部522は、例えば、サーボモータによって駆動され、先端に非接触検出部521が設けられたアームを水平移動させるボールねじ機構を用いることができる。
【0039】
[流体除去部]
流体除去部60は、貼合基板Sの表面の流体を除去する。流体除去部60は、貼合基板Sの表面に平行な方向に気体を吹き出す。これにより、流体除去部60は、貼合基板Sの上方及び下方の表面に付着した液滴を吹き飛ばす。貼合基板Sの上方の表面に液が残ることで、表面の液に熱が放出されて加熱が阻害されることを防止し、下方の表面に液が付着することで温度検出部520による温度検出が阻害されることを防止できる。
【0040】
流体除去部60は、除去ノズル61、給気装置62を有する。除去ノズル61は、気体を吐出する噴出装置である。給気装置62は、気体を供給するポンプ等を含む装置であり、配管及びバルブ等を介して除去ノズル61に接続されている。
【0041】
除去ノズル61は、貼合基板Sの表面に近接した位置まで延び、除去ノズル61の先端の吐出口は、貼合基板Sの表面に平行な方向に向くように設けられている。このため、除去ノズル61は、気体を貼合基板Sの表面に平行な方向に吐出する。また、除去ノズル61からの気体の吐出方向が、ノズル30の流体の吐出方向に平行であり、対向していないので、ノズル30からの流体の吐出を妨げることがない。
【0042】
除去ノズル61は、貼合基板Sの両面の表面の流体を除去できるように、貼合基板Sを挟む位置に、1つずつ配置されている。支持機構112に取り付けられた除去ノズル61Aが、貼合基板Sの上方の表面(第1の基板Saの露出面Sa2)の流体を除去し、回転駆動部122に取り付けられた除去ノズル61Bが、貼合基板Sの下方の表面(第2の基板Sbの露出面Sb2)の流体を除去する。
【0043】
[制御装置]
制御装置100は、分離装置1を制御する装置であり、保持部10、位置決め部20、ノズル30、ノズル駆動部40、加熱部510、温度検出部520、流体除去部60の動作を制御する。制御装置100は、例えば、専用の電子回路又は所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。また、制御装置100は、分離装置1の各部の処理に必要な情報を記憶する記憶部を有する。記憶部は、例えば、後述する設定温度、ノズル30が貼合基板Sの中央領域の周縁に対応する位置に達した後、中心Csが分離するまでの時間などを記憶する。
【0044】
より具体的には、制御装置100は、回転駆動部122、着脱駆動部123を制御することにより、第2の保持体121の回転、移動を制御する。また、制御装置100は、軸方向駆動部230、開閉駆動部240を制御することにより、把持部210及び支持部220の移動を制御する。さらに、制御装置100は、供給装置31、接離機構41、位置調整機構42、加熱部510、駆動部522、給気装置62を制御することにより、ノズル30からの流体の吐出、ノズル30の移動、第1のホルダ110の加熱、非接触検出部521の移動、除去ノズル61からの気体の吐出を制御する。
【0045】
特に、本実施形態の制御装置100は、温度検出部520が検出した貼合基板Sの温度に応じて、ノズル駆動部40を制御することにより、ノズル30を移動させる。例えば、制御装置100は、温度検出部520により、所定間隔またはリアルタイムで温度を検出し、予め記憶部に設定されたしきい値である設定温度を所定時間以上下回ったか否かを判定することで、貼合基板Sの分離状況を判定し、これに応じて、ノズル駆動部40によるノズル30の位置を分離開始位置から中央領域の周縁へとノズル30を移動させる。中央領域の周縁に達した後、予め記憶部に設定された中心Csが分離するまでの時間が経過すると、ノズル30が停止する。このような温度検出及び経過時間に応じたノズル30の移動動作の一例については、後述する。
【0046】
なお、制御装置100は、図示しない表示装置、入力装置を有し、温度検出部520により検出された貼合基板Sの表面の温度の変化が表示装置に表示され、これに応じて、作業者が入力装置により、分離装置1の各部の動作を指示入力することができる。これにより、作業者は分離の完了を判断して、分離装置1を停止させることができる。制御装置100は、貼合基板Sの表面におけるある位置の温度が設定温度よりも低くなった場合に、当該位置が分離したと判断して、表示装置にその旨を表示させることもできる。
【0047】
[動作]
以上のような分離装置1の動作を、上記の
図1~
図6に加えて、
図7のフローチャート、
図8の説明図を参照して説明する。なお、
図8のPh1は、第1の保持体111の下面の固定された基準位置であり、Ph2は、支持部220がロボットアームMとの間で貼合基板Sを受け渡す際に、支持部220の下面の位置となる受渡位置である。Ps1は、第1の保持体111と第2の保持体121によって貼合基板Sを挟んで、回転させながらノズル30からの流体の吐出によって分離させる際に、第2の基板Sbの下面の高さ位置となる分離位置である。Ps2は、第2の保持体121がロボットアームMから貼合基板Sを受け取る受取位置であり、位置決め部20が貼合基板Sを水平方向に位置決めする位置でもある。
【0048】
まず、第2の保持体121は、第1の保持体111から離隔した位置にある(
図8(A))。また、把持部210及び支持部220は受渡位置Ph2にあるとともに、開位置にある。
図2に示すように、搬送装置のロボットアームMが貼合基板Sを搬入する(
図8(B)、ステップS101)。第2の保持体121が受取位置Ps2に上昇し、ロボットアームMが下降することにより、第2の保持体121が第2の基板Sbの下面に接して、ロボットアームMから第2の保持体121に貼合基板Sを受け渡す(
図8(C))、ステップS102)。
【0049】
図3に示すように、把持部210が閉位置に移動することにより、貼合基板Sの外周を把持することにより、貼合基板Sの中心Csを、回転中心Ctに位置決めする(
図8(D)、ステップS103)。その後、把持部210が開位置に移動し、第2の保持体121が上昇して、貼合基板Sを第1の保持体111に接触させて挟んで保持し、貼合基板Sを分離位置Ps1に位置付けるとともに、吸引孔の負圧により吸引保持する(
図8(E)、ステップS104)。また、加熱部510は、貼合基板Sを加熱する(加熱工程:ステップS105)。つまり、第1のホルダ110(第1の保持体111)を加熱することにより、これに接する一方の基板である第1の基板Saを介して、他方の基板である第2の基板Sbを加熱する。
【0050】
この状態で、第2の保持体121が回転することにより、第1の保持体111とともに貼合基板Sを回転させる(回転工程:ステップS106)。そして、
図4の実線のノズル30に示すように、ノズル30が分離開始位置に移動して(ステップS107)、温度検出部520(非接触検出部521)が、貼合基板Sの温度検出を開始する(検出工程:ステップS108)。ノズル30は、貼合基板Sの外周に向けて流体を吐出する(分離工程:ステップS109)。これにより、貼合基板Sの分離を開始する。この流体の吐出とともに、除去ノズル61から気体を吹き出す。これにより、貼合基板Sの表面の流体が除去されるので、加熱や温度検出の妨げになることが防止される。
【0051】
温度検出部520が検出した貼合基板Sの温度変化により、制御装置100により当該温度変化した位置に対応する貼合面Sa1及びSb1が分離したと判断された場合(ステップS110のYES)、
図5に示すように、分離した領域(図中、網掛けで示す)に追随するようにノズル30が移動する(ステップS111)。ノズル30が、貼合基板Sの中央領域の周縁(第1の保持体111及び第2の保持体121の周縁に対応する位置)に移動して、中央領域の周縁まで分離したことを温度検出部520が検出すると(ステップS112のYES)、
図6に示すように、ノズル30が中心Csに対応する位置(中心分離位置)に移動する。予め設定された、中心Csが分離するまでの設定時間の経過後(ステップS113のYES)、制御装置100は中心Csが分離したと判断し、ノズル30からの流体の吐出を停止する(ステップS114)。第1の保持体111及び第2の保持体121の回転の停止により貼合基板Sの回転が停止する(ステップS115)。なお、温度検出部520(非接触検出部521)による貼合基板Sの温度検出、加熱部510による加熱、除去ノズル61からの気体の吹き出しも停止する。
【0052】
その後、第1の保持体111、第2の保持体121の負圧の供給を解除して、第2の保持体121が受取位置Ps2まで下降して、搬送装置のロボットアームMに貼合基板Sを受け渡し、ロボットアームMが貼合基板Sを搬出する(
図8(C)、(B)参照、ステップS116)。
【0053】
[温度測定とノズルの移動]
上記のような分離工程における温度測定とノズル30の移動について、
図9を参照してより詳細に説明する。
図9は、分離開始から終了までの貼合基板S(第2の基板Sb)の温度変化を下側(面Sb2側)から見た図であり、加熱された貼合基板Sの温度の相違に応じて、貼合基板Sの領域を区別している。具体的には、加熱部510が存在する領域AR1、第1のホルダ110及び第2のホルダ120により保持された領域AR2、領域AR2の周囲の領域AR3、領域AR3から貼合基板Sの外周までの領域AR4を区別している。また、領域AR1を含む領域AR2は、上記の中央領域に相当する。
【0054】
[温度検出開始]
図9(A)に示すように、ノズル30からの流体の吐出による分離開始前には、第1の基板Saの加熱部510が存在する領域AR1が加熱されることにより、第1の基板Saを介して、第2の基板Sbが加熱される。第2の基板Sbにおける領域AR2では、加熱温度と同等の温度(60℃)となる。外側の領域AR3、領域AR4も、領域AR1、AR2からの伝熱により加熱されるが、領域AR1、領域AR2よりも低い温度となる。但し、設定温度よりも高い温度となっている。設定温度とは、分離した時の第2の基板Sbの温度であって、第2の基板Sbの径方向の位置によって異なり、中央から外周に向かって低くなるように設定される。設定温度は、加熱温度及び流体の温度に基づいて、シミュレーションや実験によって予め求められる。
【0055】
図9(B)に示すように、貼合基板Sの分離が開始した後も、加熱された第1の基板Saからの熱が、第2の基板Sbに伝わるので、第2の基板Sbの領域AR1、AR2は、分離開始前と同様に60℃が維持される。領域AR3、領域AR4は、領域AR2からの伝熱によって加熱されるが、第1の基板Saと第2の基板Sbとの間に流体が浸入するので、流体が浸入した領域は温度低下して、分離の開始前よりも低い温度となる。制御装置100は、設定温度よりも低くなった領域AR4については、分離が完了した領域であると判定し、ノズル30を中央側に移動させるとともに、温度検出部520を中央側に移動させる。
【0056】
流体の浸入が進むと、温度が低い領域が、中央側へ拡大する。そして、上記のように、
図9(C)に示すように、第1の基板Saの領域AR1、領域AR2以外の領域が、設定温度よりも低くなった場合に、制御装置100は、中央領域の周縁よりも外側の外周領域の分離完了と判定する。さらに、上記のように、制御装置100は、予め設定された中心Csが分離するまでの時間が経過した後、
図9(D)に示すように、全ての領域が分離したと判定して、ノズル30からの流体吐出及び除去ノズル61からの気体の吹出を停止する。
【0057】
[効果]
(1)本実施形態の分離装置1は、板部材(貼合基板S)の両面を保持する2つのホルダ(第1のホルダ110、第2のホルダ120)と、2つのホルダのうちの一方のホルダを加熱する加熱部510と、2つのホルダの少なくともいずれかを駆動することにより、2つのホルダに保持された板部材を回転させる回転駆動部122と、回転する板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、板部材を分離させるノズル30と、板部材の分離中に、2つのホルダのうちの他方のホルダ側から、板部材の温度を検出する温度検出部520と、を有する。
【0058】
また、本実施形態の分離方法は、2つのホルダ(第1のホルダ110、第2のホルダ120)が、板部材(貼合基板S)を保持して回転させる回転工程と、2つのホルダのうちの一方のホルダ(第1のホルダ110)を加熱する加熱工程と、ノズル30が、回転する板部材の外周に向かって流体を吐出することにより、板部材を分離させる分離工程と、温度検出部520が、分離工程において、板部材の温度の変化を検出する検出工程と、を含む。
【0059】
板部材が分離すると、分離によって板部材の内部の領域に流体が浸入することで、加熱されている板部材の温度が変化するので、分離中の板部材を一方のホルダ側から加熱した状態で、他方のホルダ側から温度を検出することにより、板部材の分離の進捗状況がわかる。このため、分離が完了した時点で分離装置1を停止させることができ、未分離層の残留や、流体の使用量の無駄を防止できる。これは、過度に流体が吐出され続けることによる板部材へのストレスの抑制と、流体量の低減によるランニングコスト低減、タクトタイムの短縮化につながる。
【0060】
板部材が分離する際には、その位置が変化するため、板部材の両面もしくは片面の高さの変化を、レーザ変位センサなどで検出することも考えられる。しかし、分離しても変位量が小さかったり、基板の揺れや撓みにより正確な変位量の検知が難しく、板部材の分離による変化が分かり難いおそれがある。発明者は、鋭意検討した結果、一方の面が加熱された板部材の温度を他方の面から測定した場合、分離により板部材の内部の領域に流体が浸入することで、他方の面の温度が大きく低下することに着目した。つまり、分離中の板部材の温度変化を監視することにより、分離の進捗状況が明確に判定できることを見出した。このため、本実施形態のように、分離中の板部材を一方のホルダ側から加熱した状態で、他方のホルダ側から温度を検出することにより、板部材の変位を検出する場合に比べて、分離状況を正確に判断できる。
【0061】
(2)2つのホルダ(第1のホルダ110、第2のホルダ120)は、鉛直方向の上下から板部材(貼合基板S)の両面を保持するように上下に配置され、加熱部510は、上方に配置されたホルダ(第1のホルダ110)に設けられ、温度検出部520は、下方に配置されたホルダ(第2のホルダ120)側に設けられている。ノズル30から吐出された流体は、板部材の上側よりも下側に残り難いので、下側から温度検出を行うことで、流体によって板部材の温度検出が妨げられる可能性を低減できる。
【0062】
(3)分離装置1は、温度検出部520により検出される板部材(貼合基板S)の温度の変化に応じて、ノズル30を移動させるノズル駆動部40を有する。これにより、貼合基板Sの外周から中心Csに向かって移動する分離した領域に追従させて、ノズル30からの流体の吐出位置を変えることができるので、未分離の箇所を残してノズル30が移動してしまうことが防止され、分離不良を低減できる。また、分離の進捗に応じてノズル30の位置を変化させ、吐出を停止させることができるので、流体の無駄がなくなる。
【0063】
(4)分離装置1は、貼合基板Sの表面の流体を除去する流体除去部60を有する。このため、温度検出部520が温度の変化を検出する面、つまり貼合基板Sの表面における流体を除去することで、精度の高い検出を行うことができる。
【0064】
(5)温度検出部520は、回転する板部材(貼合基板S)の温度を非接触で検出する非接触検出部521を有する。このため、回転する板部材の破損や汚染を防止できる。
【0065】
(6)温度検出部520は、非接触検出部521を、板部材(貼合基板S)の径方向に移動させる駆動部522を有する。このため、回転する板部材の分離状況に応じて、温度を検出する箇所を変えることができる。
【0066】
[変形例]
本実施形態は、以下のような変形例も適用可能である。
(1)温度検出部520は、他方のホルダ(第2のホルダ120)に設けられたホルダ用検出部523を有していてもよい。例えば、
図10及び
図11に示すように、第2のホルダ120にホルダ用検出部523を設けてもよい。ホルダ用検出部523は、板部材(貼合基板S)の温度を直接検出する熱電対等であり、
図11(E)に示すように、中央領域の分離を開始するときに、ホルダ用検出部523によって、中央領域の温度の検出を開始し、制御装置100は、設定温度以下になったと判断したら、分離の完了を判断する。本変形例によれば、中心Csの分離についても、温度に基づいて検出することができる。その結果、中心Csの分離の進捗をより正確に検出できる。
【0067】
(2)一方のホルダ(第1のホルダ110)に接触した板部材(貼合基板S)の外周を把持する把持部210を有し、把持部210により板部材を把持し、一方のホルダを板部材に接触させて加熱部510により加熱し、他方のホルダ(第2のホルダ120)を板部材から退避させた状態で、温度検出部520が、板部材の中央領域の温度を検出してもよい。この態様では、
図12に示すように、駆動部522は、板部材(貼合基板S)の中央領域を検出可能となる位置まで、非接触検出部521を移動させることができる。また、支持部220は、貼合基板Sを支持する載置面を有する。本変形例では、この載置面に、貼合基板Sの第2のホルダ120に保持される面、つまり第2の基板Sbの露出面Sb2が載置される。
【0068】
図13(F)に示すように、外周領域を分離した後、中央領域の分離前に、軸方向駆動部230によって支持部220を上昇させ、支持部220に貼合基板Sを載置し、第2の保持体121を退避させる。そして、第2の保持体121があったところに、非接触検出部521を移動させる。中央領域の分離を開始するときに、非接触検出部521によって、中央領域の温度の検出を開始し、温度が所定の設定温度以下になったと判断したら、分離の完了を判断する。この態様では、中央領域の分離の進捗を検出し、最終的な中心Csの分離までを正確に判定することができる。
【0069】
なお、上記の態様では、第1の保持体111に加熱部510を設け、第2の保持体121側に温度検出部520を設けているが、逆の配置でもよく、第1の保持体111側に温度検出部520を設け、第2の保持体121に加熱部510を設けてもよい。温度検出部520が、重力方向とは逆方向の第1の保持体111側に設けられることによって、ノズル30から吐出された流体が、温度検出部520に付着し難いので、温度検出部520に付着した流体によって板部材の温度検出が妨げられる可能性を低減できる。
【0070】
(3)加熱部510が、他方のホルダ(第2のホルダ120)にも設けられ、温度検出部520は、板部材(貼合基板S)を保持した他方のホルダと反対側にも設けられていてもよい。つまり、
図14に示すように、第1の保持体111に貼合基板Sを加熱する加熱部510Aが設けられるとともに、第2の保持体121にも貼合基板Sを加熱する加熱部510Bが設けられている。また、温度検出部520の非接触検出部521Aが第2の保持体121側に駆動部522Aにより移動可能に設けられるとともに、第2の保持体121と反対側(貼合基板Sの第1の基板Sa側)にも非接触検出部521Bが駆動部522Bにより移動可能に設けられている。ここでいう第2の保持体121と反対側とは、温度検出時に第2の保持体121に保持された貼合基板Sの第1の基板Sa側であればよく、常に第2の保持体121と反対側にある必要はない。このように貼合基板Sを挟んで第2の保持体121側と反対側に設けられる非接触検出部521Bは、駆動部522Bにより、貼合基板Sの外周から中央領域の上方に移動することができる。
【0071】
図15(E)に示すように、外周領域の分離時は、第1の保持体111の加熱部510Aで加熱して下側から非接触検出部521Aによって温度検出を行う。
図15(F)に示すように、中心領域の分離時は、第1の保持体111の吸引を停止して貼合基板Sの保持を解除した後、第2の保持体121を降下させ、把持部210によって貼合基板Sを把持して、非接触検出部521Bが貼合基板Sの中心領域の上方に移動する。第2の保持体121の加熱部510Bで加熱して、上側から非接触検出部521Bによって温度検出を行う。
【0072】
中央領域の分離を開始するときに、非接触検出部521Bによって中央領域の温度の検出を開始し、温度が設定温度以下になったと判断したら分離の完了を判断する。このような態様によっても、中心Csの分離を検出することができる。
【0073】
(4)上記の態様では、ノズル駆動部40は、ノズル30の位置を、連続的に変化させていたが、分離開始位置と中心分離位置との間で間欠的に変化させてもよい。例えば、分離開始位置と中心分離位置との間に、複数の停止ポジションを設定し、温度検出部520により検出される分離の進捗状況に応じて、ノズル30が複数の停止ポジションにおいて一旦停止して、流体を吐出する。貼合基板Sの外周から中心Csの間は周速が異なるため、連続的に吐出すると、流体の吐出量が過大となる箇所が生じるが、停止ポジション毎に停止して吐出して、当該箇所まで分離したら移動することにより、流体の無駄を防止しつつ、確実に分離させることができる。
【0074】
(5)流体除去部60は、上記の態様では、除去ノズル61からの気体の吹き出しにより流体を除去していたが、吸気装置に接続された除去ノズル61によって、吸引により流体を除去する構成であってもよい。
【0075】
(6)位置決め部20が貼合基板Sを位置決めするために、外周に接する位置の数は、3点以上であればよい。つまり、複数の把持部210は円形の貼合基板Sの中心Csを位置決めできればよいので、3つ以上あればよい。
【0076】
(7)保持部10による貼合基板Sの回転の軸は、鉛直方向には限定されない。例えば、貼合基板Sが水平方向の軸回りに回転するように保持部10を構成し、貼合基板Sの外周に対して、ノズル30が鉛直方向に流体を吐出する構成であってもよい。保持部10は、貼合基板Sの両面のうち、少なくともいずれかを保持して回転させることができればよい。このため、保持部10は、第1の保持体111、第2の保持体121のいずれか一方によって貼合基板Sを保持させる構成でもよい。また、回転駆動部122は、第1の保持体111、第2の保持体121のいずれか一方を回転させる構成でも、双方を回転させる構成でもよい。着脱駆動部123は、第1の保持体111、第2の保持体121のいずれか一方を移動させる構成でも、双方を移動させる構成でもよい。
【0077】
(8)分離装置1は、
図16に示すように、基板処理装置2の一部として構成することができる。例えば、基板処理装置2を、分離装置1と、分離された第1の基板Sa、第2の基板Sbの表面を処理する表面処理装置3を収容した複数のチャンバ1aを備え、前工程でカセット(FOUP)1bに複数枚収容されて搬送されてきた貼合基板Sに対して、各チャンバ1a内で1枚ずつ処理を行う枚葉処理の装置とすることができる。表面処理装置3は、例えば、分離後の第1の基板Sa、第2の基板Sbの表面を洗浄液により洗浄する洗浄装置である。貼合基板Sは、カセット1bから搬送ロボット1cによって1枚ずつ取り出され、バッファユニット1dに一時的に載置された後、搬送ロボット1eによる各チャンバ1aへの搬送、分離、洗浄が行われる。表面処理装置3は、分離された第1の基板Sa、第2の基板Sbの表面を、洗浄液により洗浄する。
【0078】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記に示す他の形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び他の形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 分離装置
1a チャンバ
1b カセット
1c 搬送ロボット
1d バッファユニット
1e 搬送ロボット
2 基板処理装置
3 表面処理装置
10 保持部
20 位置決め部
30 ノズル
31 供給装置
40 ノズル駆動部
41 接離機構
42 位置調整機構
60 流体除去部
61、61A、61B 除去ノズル
62 給気装置
100 制御装置
110 第1のホルダ
111 第1の保持体
112 支持機構
112a 支持軸
120 第2のホルダ
121 第2の保持体
122 回転駆動部
122a 駆動軸
123 着脱駆動部
210 把持部
220 支持部
230 軸方向駆動部
231 支柱部
232 付勢部
233 吸収部
240 開閉駆動部
241 アーム
510、510A、510B 加熱部
520 温度検出部
521、521A、521B 非接触検出部
522、522A、522B 駆動部
523 ホルダ用検出部
S 貼合基板