(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154413
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法、その方法により得られた計算書、および実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01N   3/08        20060101AFI20251002BHJP        
   G01M   5/00        20060101ALI20251002BHJP        
【FI】
G01N3/08 
G01M5/00 
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057403
(22)【出願日】2024-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】301036227
【氏名又は名称】有限会社平成自動車
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内  秀一
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061CA01
2G061EA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法、その方法により得られた計算書、および実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムを提供する。
【解決手段】複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、複数の種類の板状ステーから特定のステーを選択する工程と、試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、を含み、前記工程が、最も強度が弱いフレームを特定する工程を含み、前記工程が、複数の種類のステーから最大のサイズのステーを選定する工程からなる、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法。
【選択図】
図4 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、当該強度試験方法は、
  (I)強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程と、
  (II)車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程であって、車両メーカーによって公開された形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、
  (III)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程と、
  (IV)前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に架台に取り付け、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、
  (V)加圧装置に設けられた加圧子を、前記工程(IV)において前記板状ステーを介して前記シャシフレームに取り付けられた前記リアバンパの所定の位置に押圧し、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、
  を含み、
  前記工程(II)が、
  (a)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータから、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程と、
  (b)前記工程(a)で算出された、シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いシャシフレームを特定する工程と、を含み、
  前記工程(III)が、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類の板状ステーから最大のサイズの板状ステーを選定する工程からなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法。
【請求項2】
  請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験についての測定条件ならびに測定結果に係るデータが記載された計算書であって、
  当該データとして、前記工程(II)により選択された前記板状ステーと前記シャシフレームとの個別情報と、前記測定対象となるリアバンパの個別情報とについての規定値と、
  前記測定対象となるリアバンパの測定条件と、
  前記工程(V)により得られた測定結果の情報と、
が記載されている、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書。
【請求項3】
  請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、
  前記工程(b)は、
  前記シャシフレームを片持ち梁と仮定し、さらに2本の前記シャシフレームのそれぞれの自由端近傍に選定された前記板状ステーと同じ長さの剛体が取り付けられた状態と仮定して計算をし、
  前記剛体の先端における変位量を計算することにより、最も強度が弱いシャシフレームを特定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法。
【請求項4】
  実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムであって、当該強度試験システムは、
  (I-1)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータと、
  (I-2)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーの形状を構成している寸法のデータと、
を記憶している記憶装置と、
を含み、前記強度試験システムは、更に
  (II-1)前記記憶装置により記憶されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータに基づいて、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出し、
  (II-2)前記(II-1)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いシャシフレームを特定し、
  (II-3)前記記憶装置により記憶されている、前記板状ステーの形状を構成している寸法のデータに基づいて、最も強度が弱い前記板状ステーを選定する、
演算装置と、
  (III)前記演算装置によって特定された2本の前記シャシフレームを互いに平行に取り付け可能で、
  該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記演算装置によって特定された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに試験の対象となるリアバンパを取り付けることができる架台と、
  (IV)前記リアバンパの所定の位置を加圧する加圧子が設けられた加圧装置と、
を含んでなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法、その方法により得られた計算書、および実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
  自動車の装置に関しては、「装置型式指定(Eマーク)」を取得することで、当該装置に係る技術的な審査が省略される。
  「装置型式指定(Eマーク)」とは、自動車の装置に関し、国が定めた安全や環境等の基準への適合性について事前に確認する制度のことを言う。この型式指定の認証を受けた装置に関しては全数検査が省略される制度である。
【0003】
  自動車型式指定制度とは、新車の販売前に対象車両のブレーキ性能や品質管理体制などが保安基準を満たしているかを国が審査する制度である。審査を通過した車両には国が型式指定を行う仕組みで、これにより、メーカーは量産車の個別の車両毎の審査を省略することができる。
【0004】
  リアバンパについても、事前に「装置型式指定(Eマーク)」を取得することで、当該リアバンパが取り付けられた各種の自動車について、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、自動車販売にあたっての審査の合理化を図ることができる。
【0005】
  2021年9月に、リアバンパをその一部とする、突入防止装置について安全の基準を強化する目的で、保安基準が改正された。
【0006】
  その結果、従来の板状ステーとリアバンパのみの強度ではなく、シャシフレームへの取付までを含んだ強度を確認することとなった。
【0007】
  そのため、リアバンパの強度試験をする際は、リアバンパを実車に取り付けた状態でリアバンパの強度試験を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
  もっとも、自動車の車種(型式)ごとに同一のリアバンパについてその都度実車に取り付けた状態で強度試験を行うことは、極めて煩雑であり事実上不可能である。
【0010】
  そこで、リアバンパについて合理的に審査を省略できる方法、即ち当該リアバンパを実車の代替物に取り付けた「突入防止装置」について車検に適合する方法を必要としていた。
【0011】
  本発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法、その方法により得られた計算書、および実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
  請求項1に係る発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、当該強度試験方法は、
  (I)強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程と、
  (II)車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程であって、車両メーカーによって公開された形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、
  (III)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程と、
  (IV)前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に架台に取り付け、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、
  (V)加圧装置に設けられた加圧子を、前記工程(IV)において前記板状ステーを介して前記シャシフレームに取り付けられた前記リアバンパの所定の位置に押圧し、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、
  を含み、
  前記工程(II)が、
  (a)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータから、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程と、
  (b)前記工程(a)で算出された、シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いシャシフレームを特定する工程と、を含み、
  前記工程(III)が、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類の板状ステーから最大のサイズの板状ステーを選定する工程からなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法に関する。
【0013】
  請求項2に係る発明は、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験についての測定条件ならびに測定結果に係るデータが記載された計算書であって、
  当該データとして、前記工程(II)および(III)により選択された前記板状ステーと前記シャシフレームの個別情報と、前記測定対象となるリアバンパの個別情報とについての規定値と、
  前記測定対象となるリアバンパの測定条件と、
  前記工程(V)により得られた測定結果の情報と、
が記載されている、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書に関する。
【0014】
  請求項3に係る発明は、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、
  前記工程(b)は、
  前記シャシフレームを片持ち梁と仮定し、さらに2本の前記シャシフレームのそれぞれの自由端近傍に選定された前記板状ステーと同じ長さの剛体が取り付けられた状態と仮定して計算をし、
  前記剛体の先端における変位量を計算することにより、最も強度が弱いシャシフレームを特定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法に関する。
【0015】
  請求項4に係る発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムであって、当該強度試験システムは、
  (I-1)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータと、
  (I-2)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーの形状を構成している寸法のデータと、
を記憶している記憶装置と、
を含み、前記強度試験システムは、更に
  (II-1)前記記憶装置により記憶されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータに基づいて、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出し、
  (II-2)前記(II-1)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いシャシフレームを特定し、
  (II-3)前記記憶装置により記憶されている、前記板状ステーの形状を構成している寸法のデータに基づいて、最も強度が弱い前記板状ステーを選定する、
演算装置と、
  (III)前記演算装置によって特定された2本の前記シャシフレームを互いに平行に取り付け可能で、
  該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記演算装置によって特定された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに試験の対象となるリアバンパを取り付けることができる架台と、
  (IV)前記リアバンパの所定の位置を加圧する加圧子が設けられた加圧装置と、
を含んでなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムに関する。
【発明の効果】
【0016】
  請求項1に係る、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法によれば、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、当該強度試験方法は、(I)強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程と、(II)車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程であって、車両メーカーによって公開された形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、(III)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程と、(IV)前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に架台に取り付け、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、(V)加圧装置に設けられた加圧子を、前記工程(IV)において前記板状ステーを介して前記シャシフレームに取り付けられた前記リアバンパの所定の位置に押圧し、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、を含み、前記工程(II)が、(a)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式で使用されている前記フレームの形状を構成している寸法のデータから、前記フレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程と、(b)前記工程(a)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いフレームを特定する工程と、を含み、前記工程(III)が、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類の板状ステーから最大のサイズの板状ステーを選定する工程からなる、ので、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法を提供することができ、かつ、各車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから最弱のもの、各車両メーカーによって公開され使用されている複数の種類の板状ステーから最弱のステーを選択しているため、当該強度試験の基準を満たしたバンパーは他の型式のシャシフレームおよび他の種類の板状ステーに用いられた場合も強度試験基準を満たす結果が得られるため、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、車検に通るという作用効果を奏する。
【0017】
  請求項2に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書によれば、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法に基づいているため、リアバンパについて当該計算書とそれが依拠する強度試験とをもって、車検に合格できるという作用効果を奏する。
【0018】
  請求項3に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法によれば、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法を提供することができ、かつ、各車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから最弱のもの、各車両メーカーによって公開され使用されている複数の種類の板状ステーから最弱のステーを選択しているため、当該強度試験の基準を満たしたバンパーは他の型式のシャシフレームおよび他の種類の板状ステーに用いられた場合も強度試験基準を満たす結果が得られるため、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、自動車販売にあたっての審査の合理化を図ることができるという作用効果を奏する。
【0019】
  請求項4に係る、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムによれば、当該強度試験システムは、(I-1)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータと、(I-2)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーの形状を構成している寸法のデータと、を記憶している記憶装置と、を含み、前記強度試験システムは、更に(II-1)前記記憶装置により記憶されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータに基づいて、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出し、(II-2)前記(II-1)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いシャシフレームを特定し、(II-3)前記記憶装置により記憶されている、前記板状ステーの形状を構成している寸法のデータに基づいて、最も強度が弱い前記板状ステーを選定する、演算装置と、(III)前記演算装置によって特定された2本の前記シャシフレームを互いに平行に取り付け可能で、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記演算装置によって特定された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに試験の対象となるリアバンパを取り付けることができる架台と、(IV)前記リアバンパの所定の位置を加圧する加圧子が設けられた加圧装置と、を含むことを特徴とするため、各車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから最弱のもの、各車両メーカーによって公開され使用されている複数の種類の板状ステーから最弱のステーを選択しているため、当該強度試験の基準を満たしたバンパーは他の型式のシャシフレームおよび他の種類の板状ステーに用いられた場合も強度試験基準を満たす結果が得られるため、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、自動車検査登録制度(車検)にあたっての審査の合理化を図ることができるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
            【
図1】本発明に係る試験対象となるリアバンパがトラックに取り付けられた状態を示す図である。
 
            【
図2】本発明に係る試験対象となるリアバンパが取り付けられる、シャシフレームと板状ステーとの各社ごとのパターンの一例を示す図である。
 
            【
図3】本発明に係る測定対象となるリアバンパの強度試験を実施するための機械を示す図である。
 
            【
図4】発明に係る試験対象となるリアバンパの強度試験のための押圧位置を示す図である。
 
            【
図5A(1)】シャシフレームのたわみ量のモデルを示す図である。
 
            【
図5A(2)】シャシフレームのモデルを示す図である。
 
            
            【
図5C】本発明に係る試験対象となるリアバンパの強度試験で測定されるリアバンパの変位の様子を示す図である。
 
            【
図6A】本発明に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書の一実施例を示す図である。
 
            【
図6B】本発明に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書の一実施例を示す図である。
 
            【
図7】本発明に係る強度試験方法を実施するためのシステムの一実施例を示す図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態1]
  以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法について添付図面を参照しつつ以下に詳述する。
【0022】
<工程(I)>
  工程(I)は、強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程である。
  
図1乃至2に示すように、本実施形態に係る、強度試験の対象となるリアバンパ(2)は、車両(1)のシャシ(3)後方に設けられるべき部品であり、当該シャシ(3)の代替物である、
図2に示すシャシフレーム(3)の自由端に対して、板状ステー(4)を介して取り付けられる。
 
【0023】
<工程(II)>
  工程(II)は、シャシフレーム(3)が、車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームが選択される工程である。
【0024】
  図2に示すシャシフレーム(3)は、形状とともに素材も異なる場合がある。さらに、各車両メーカーでは複数の型式のシャシフレーム(3)が製造されており、型式毎にシャシフレーム(3)の形状が異なる。
  工程(II)は、車両メーカー毎、及び型式毎に異なる形状を有しているシャシフレームの中から、強度試験の対象となるリアバンパ(2)を取り付けるシャシフレーム(3)を選択する工程である。
 
【0025】
  強度試験の対象となるリアバンパ(2)を取り付けるシャシフレーム(3)を選択する場合は、強度計算をするために、形状、寸法、強度特性等の情報が必要となる。ここで、各車両メーカーは、これらシャシフレーム(3)の形状、寸法、強度特性等の情報を公開している。
  工程(II)は、車両メーカーによって公開されたシャシフレーム(3)の形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程である。
【0026】
  なお、各車両メーカーは、型式毎にサイズの異なる複数種類のシャシフレーム(3)を製造している。
  型式毎に複数のシャシフレーム(3)の中で最弱のシャシフレーム(3)は、板厚が薄く外形が小さいものである。ここで、板厚とは、シャシフレーム(3)に用いられている鋼板の厚みであって、外形とは、シャシフレームのフレーム高さとフランジ長さの合計を意味する。
  これを各型式毎の代表(最弱のシャシフレーム)とする。
【0027】
  型式ごとの代表(最弱のシャシフレーム)同士を比較して、当該車両メーカーで製造されているシャシフレームの中で最弱のシャシフレームを特定する。
  具体的には以下の各工程を経て計算式による算出にて特定する。
【0028】
<工程(a)>
  車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの車両重量16トン以上の車両で使用されている前記シャシフレーム(3)の形状を構成している寸法のデータから、前記シャシフレーム(3)の断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程。請求項1における車両メーカーの「特定の型式」とは「車両メーカーの車両重量16トン以上の車両で使用されている型式」のことを言う。
【0029】
<工程(b)>
  前記工程(a)で算出されたシャシフレーム(3)の断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、最も強度が弱いフレームを特定する工程とからなる。
【0030】
  各車両メーカーにおける最弱のシャシフレーム(3)を選択することで、強度試験の対象となるリアバンパ(2)を試験するにあたり、試験回数を減らすことができる。
すなわち、強度試験の対象となるリアバンパ(2)を各車両メーカーにおける最弱のシャシフレーム(3)に取付けて試験をし、強度試験基準を満たす結果が得られる場合は、当該車両メーカーにおける他のシャシフレーム(3)に取付けた場合であっても、強度試験の対象となるリアバンパは強度試験基準を満たす結果が得られることが推定できるためである。
【0031】
  各メーカーが設定しているシャシフレームと最大(即ち、最弱)となる板状ステーとの組み合わせにより、シャシフレームの断面係数と断面二次モーメントと断面面積をそれぞれ調べ、最弱のシャシフレームを特定する。
【0032】
  図5A(1)を参照して、前記工程(b)については、
  前記シャシフレーム(3)は片持ち梁で、剛体(rigid)の仮想的なステー(4)が取り付けられた状態と仮定して計算をし、
  前記剛体の仮想的なステーの先端における変位量を計算することにより、最も強度が弱いシャシフレームを特定する。
 
【0033】
  ここで条件を整理すると、以下となる。
フレームのみの変位をみるため、ステー部分は剛体として考える。A-B間の剛性は  EI、B-C間は剛体とする。
  なお、
図5A(2)における各記号は、以下となる。
フレーム高さ  h
フランジ部長さ  b
鋼材厚み  t1
鋼材厚み  t2
フレーム内面高さ  h1
<備考>
  本来実車に装着されているシャシフレームは長尺なものとなるが、RUPDテストベンチの要件として、強度試験時RUPD最前固定位置とテスト構造体剛性固定装置を、500mm以上離すことと定められていることから、本件においてもそれに準拠した。
            
  まずフレームABに作用する曲げモーメントから、B点のたわみ角θと水平変位δxを求める。
  フレームの回転(θ)によって、生じるC点のたわみδxは以下の式で求まる。
  δx=θ・H
  ABを片持ち梁としたときのたわみ角θ・鉛直変位δyについての計算方法は以下となる。
  曲げモーメントは一様にM=PLが作用する。支間Lの片持ち梁に弾性荷重PL/EIが作用すると考え、それぞれ以下の式で求まる。
  θ=PLH/EI
  δy=(PL
2H)/(2EI)
  先端Cのたわみ合計についての計算方法は、以下となる。
  水平方向
  δx=θ・H=(PLH)/(EI)・H=(PLH
2)/(EI)
  鉛直方向
  δy=(PL
2H)/(2EI)
  以上に基づく、最弱となるシャシフレームの特定のための計算方法は、以下の通りである。
  (i)当該シャシフレームの断面二次モーメントIを算出する(フレーム高さ(h)、フランジ長さ(b)、フレーム板厚(t1)、フレーム内面高さ(h1))
C形(チャンネル)の断面特性の公式に当てはめた場合、計算式は以下の通りである。
  I={b・h
3-(b-t1)・h1
3}/12
  (ii)負荷量(P)を一定値に設定する(180kNまたは車両総重量の85%のいずれか小さい値とする)
  (iii)仮想ステーの根元部のたわみ角(θ)を算出する(負荷(P)、仮想ステーの張り出し量(H)、シャシフレームの長さ(L)、シャシフレームの弾性係数(E)、シャシフレームの断面二次モーメント(I))
計算式は以下の通りである。
  θ= (P・H・L)/(E・I)
  (iv)仮想的なステーの先端における鉛直方向変位量(σy)を算出する(負荷(P)、仮想ステーの張り出し量(H)、シャシフレームの長さ(L)、シャシフレームの弾性係数(E)、シャシフレームの断面二次モーメント(I))。
計算式は以下の通りである。
  σy=(P・H・L
2)/(2・E・I)
  (v)仮想的なステーの先端における水平方向変位量(σx)を算出する(たわみ角(θ)、仮想ステーの張り出し量(H))
計算式は以下の通りである。
  σx= θ・H = {(P・H・L)/(E・I)}・H
 
【0034】
  板状ステーと試験対象となるべきリアバンパとが取り付けられた状態における、最弱のシャシフレームの選択を合理的に行うことができる。
【0035】
<工程(III)>
  工程(III)は、車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選定する工程である。
【0036】
  前記工程(III)は、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類のステーから最大のサイズのステーを選定する工程からなる。
  最大のサイズの板状ステー(4)とは、例えば、板状ステー(4)の取り付け箇所の中心点と、シャシフレームの自由端側に取付けられたリアバンパ(2)の外側面かつ最下端からの距離が60mmの点との距離が最大のものを意味するが、この60mmの点に限定するものではない。
【0037】
<工程(IV)>架台への取り付け
  強度試験の対象となるリアバンパ(2)を試験する際は、シャシフレーム(3)、板状ステー(4)、および強度試験の対象となるリアバンパ(2)が、
図3に示される架台(rigid bench或test benchとも称されている)(5)に取付けられた状態で行われる。そのため、工程(IV)は、前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレーム(3)を互いに平行に架台(5)に取り付け、該2本のシャシフレーム(3)それぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステー(4)を取り付け、該板状ステー(4)を介して前記シャシフレーム(3)に前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパ(2)を取り付ける工程である。
 
【0038】
  なおリアバンパ(2)は上下方向の向きを有し、リアバンパ(2)を板状ステー(4)に取付ける際は、取り付け方向を上下で選ぶことができる。ただし、板状ステー(4)の形状に応じて、強度上不利な向きがある。この場合は、強度上不利な方向を選択してリアバンパ(2)を板状ステー(4)に取り付ける。
【0039】
<工程(V)>加圧測定
  工程(V)は、加圧装置(5)に設けられた加圧子(6)を、前記工程(IV)において前記板状ステー(4)を介して前記シャシフレーム(3)に取り付けられた前記リアバンパ(2)の所定の複数の位置に押圧し、当該リアバンパ(2)の変位量を測定する測定工程である。
【0040】
  図3に示すように、加圧装置(5)は、架台(11)と、シャシフレーム(3)の取り付け台(10)と、加圧子(6)と、ピストン(7)とを含む。架台(11)は、4本の柱によって支えられた台であって、架台(11)の上にシャシフレーム(3)を固定するためのシャシフレーム(3)の取り付け台(10)を載置、固定することができる。シャシフレーム(3)の取り付け台(10)は、工程(b)により特定されたシャシフレーム(3)を2本固定することができる台である。シャシフレーム(3)を、架台(5)の台面に対して垂直になるよう、シャシフレーム(3)の取り付け台(10)に固定し、固定された2本のシャシフレーム(3)のそれぞれの自由端近傍に、板状フレーム(4)を1つずつ固定し、固定された2つの板状フレーム(4)に、強度試験の対象となるリアバンパ(2)が取り付けられる。
 
【0041】
  加圧子(6)は、少なくともリアバンパ(2)の鉛直方向幅の全域を押圧できる鉛直方向幅を有し、少なくともリアバンパ(2)の水平方向における2個所以上を順番に押圧できる水平方向幅を有する板状の部材である。
【0042】
  ピストン(7)は、シリンダ(8)とロッド(9)とを有し、ロッド(9)の先端に加圧子(6)が固定されている。シリンダ(8)内には油又は水などが充填されており、加圧装置(5)は、油圧又は水圧などにより加圧子(6)をピストン(7)で押し出すことにより、リアバンパ(2)に対する圧力を発生させることができる。
ピストン(5)は、架台(11)の天井側に設けられた梁によって、少なくともリアバンパ(2)の長手方向に平行な並行方向軸上を自由に移動できるように梁に設置されている。
【0043】
  加圧装置(5)においては、シャシフレーム(3)の取り付け台(10)にシャシフレーム(3)が取付けられ、シャシフレーム(3)に板状ステー(4)が取り付けられる。板状ステー(4)に、強度試験の対象となるリアバンパ(2)が取り付けられる。
【0044】
  図4に示すように、加圧装置(5)によりリアバンパ(2)の所定の複数の位置(
図4では5カ所の位置が示されているが、これに限定されない。)を加圧装置(5)に設けられた加圧子(6)で押圧する。
負荷荷重をかける順序は、国連の規定書に準拠して(ii)と(iv)とが連続、(i)と(iii)と(v)とが連続であれば、その他の順序は制限されない。
 
【0045】
  図5Cに示すように、加圧装置(5)により押圧されたリアバンパ(2)は、加圧力が一定の力を超える場合は変形するところ、側面視における変位量を測定する。
図5Cでは、側面視における鉛直方向の変位量をσy、水平方向の変位量をσxとして表している。
 
【0046】
  鉛直方向の変位量σyと、水平方向の変位量σxが、強度試験基準を満たすか否かを判断する。
【0047】
<計算書>
  後部突入防止装置(リアバンパ)に限ると、強度、形状等に関し保安基準で定められていることから、
図6に示すような、計算書を提出する。
 
【0048】
  計算書を提出する場合は、以下を記載する。
<1>計算書により算出されたリアバンパの変位量が保安基準値に収まることと、
<2>最弱のもので計算を行い、計算結果が基準値以内であること、 
<3>構造や材質等で明らかに試験体より有利である(即ち、変位量が少ない)と考えられるものに対しても問題がない。
【0049】
  計算書の記入事項としては、板状ステーとシャシフレームと、測定対象となるリアバンパの規定値、強度についての計算結果、リアバンパについての測定結果などがある。
【0050】
  規定値とは、板状ステーとシャシフレームとの個別情報たる、断面形状や寸法など、また測定対象となるリアバンパの個別情報たる、側面部の断面高さなどを意味する。
【0051】
  図5Bを参照して、<1>の計算書におけるリアバンパ(2)の鉛直方向の変位量(σy)、水平方向の変位量(σx)のそれぞれの算出方法は、以下の通りである。
  最弱のシャシフレーム(3)を選択する際に、鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量とを算出する。
  ここで、
図5Bにおける各記号は、以下となる。
  断面二次モーメント    I
高さ  H
外幅  B
内幅  b
厚み  t
図心-厚み  h
図心距離1  e1
図心距離2  e2
図心距離1-厚み  h
幅厚み  a
 
【0052】
  最弱の板状ステー(4)を選択し、鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量とを算出する。具体的な算出方法は、以下の通りである。
<ステーの断面特性>
取付部の断面図、または負荷位置の断面図の形状により算出する公式が異なる。
これらはステー取付部およびステー負荷位置それぞれの断面計算として共通で利用する。
取付部の断面二次モーメント(I1)を算出する。(ステーモデル図である
図5B参照)
I型の場合、板厚(b)、長さ(h)とし、以下の公式に当てはめて算出する。
断面面積  A=b×h
断面二次モーメント  I=b×h
3/12
断面係数  Z=b×h
2/6
L型の場合、長さ(H)、幅(B)、図心距離(e1)、図心距離(e2)、板厚(a)、内幅(b)、図心距離(e1)-厚み(t)=(h)とし、以下の公式に当てはめて算出する。(ステーモデル図である
図5B参照)
断面面積  A=B×H-b(e2+h)
図心距離  e1=(aH
2+bt
2)/{2(aH+bt)}
          e2=H-e1
断面二次モーメント  I=(Be1
3-bh
3+ae2
3)/3
断面係数  Z=I/e1:Z=I/e2
ステー負荷位置断面における計算方法も、I型、L型ともに上記と同様
<ステーの変位量計算>
社団法人 日本自動車車体工業会が示す、ステーの水平方向の変位量計算式は以下のとおりである。
δ=2PH
3/3E(I1+I2)
ステー取付部断面の断面二次モーメントをI1、ステー負荷位置断面の断面二次モーメントをI2とする。
ステー取付部~ステー負荷位置との鉛直方向距離をH、ステー外径として水平方向距離をLとする。
<ステーの変位量>
水平変位量  δx=2×P×H
3/{3×E×(I1+I2)}
ステーのたわみ角θ・鉛直変位δyについての計算方法は以下となる。
ステー取付部にかかる曲げモーメントは一様にM=PLが作用する。ステー高さHに弾性荷重PL/EIが作用すると考え、それぞれ以下の式で求まる。
ステーの鉛直方向変位量は、
たわみ角  θ=P×H×L/(E×I1)
鉛直変位量  δy=θ・H=P×L×H/(E×I1)・H=P×H
2×L/(E×I1)
 
【0053】
  リアバンパ(2)の水平方向変位量を算出する。
  リアバンパ(2)について鉛直方向の変位量を算出しない理由は、リアバンパ(2)における鉛直方向の変位は、シャシフレーム(3)と板状ステー(4)との鉛直方向の変位によりもたらされるもののためである。
【0054】
  最弱のシャシフレーム(3)の鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量と、最弱の板状ステー(4)の鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量と、リアバンパ(2)の水平方向変位量と、のそれぞれを合算する。
【0055】
<システム>
  図7に示すように、実車にて行う試験に等価するリアバンパ(2)の強度試験方法は、システムとして構成されていてもよい。
 
【0056】
  実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムは、RAM、ROMなどの記憶装置(14、15、16)と、CPU、プロセッサなどの演算装置(17)と、加圧装置(5)とを含み、記憶装置(14、15、16)において記憶された、シャシフレーム(3)と板状ステー(4)とのデータに基づいて、演算装置(17)により最弱のシャシフレーム(3)と最弱の板状ステー(4)とを、それぞれ算出、選択する。選択された最弱のシャシフレーム(3)と最弱の板状ステー(4)とを用いて、加圧装置(5)により強度試験の対象となるリアバンパ(2)の強度試験を行うことができるシステムであってもよい。
【0057】
  記憶装置(14、15、16)は、シャシフレーム(3)の型式を記憶した第1の記憶装置(14)と、シャシフレーム(3)の断面データを記憶した第2の記憶装置(15)と、板状ステー(4)の型式を記憶した第3の記憶装置(16)とに分かれていてもよい。また第1の記憶装置(14)と、第2の記憶装置(15)と、第3の記憶装置(16)とのいずれか2つが1つの記憶装置として構成されていてもよい。
【0058】
  図示されていないが、
図3の加圧装置(5)については、実施形態に示す構造の他、当業者が使用し得るあらゆる構造の加圧装置(5)が利用可能であることは言うまでもない。また
図7のシステムについても、実施形態に示す構造の他、当業者が使用し得るあらゆる構造の記憶装置および演算装置が利用可能であることは言うまでもない。
 
【0059】
  本発明は、上記実施形態以外にも、当業者には自明の範囲で種々の変形、修正、変更を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
  本発明に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法は、リアバンパの強度試験を実車に取り付けて行う必要性がない。型式ひいては、リアバンパのみを製造販売するメーカーにおける、各自動車メーカーの型式毎におけるリアバンパの強度試験の申請を省略することに大いに寄与することができる。
【符号の説明】
【0061】
1        車両
2        リアバンパ
3        シャシフレーム
4        板状ステー
5        加圧装置
6        加圧子
7        ピストン
8        シリンダ
9        ロッド
10      シャシフレームの取り付け台
11      架台
12      押圧位置
14      第1の記憶装置
15      第2の記憶装置
16      第3の記憶装置
17      演算装置
【手続補正書】
【提出日】2024-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、当該強度試験方法は、
  (I)強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程と、
  (II)車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程であって、車両メーカーによって公開された形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、
  (III)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程と、
  (IV)前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に架台に取り付け、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、
  (V)加圧装置に設けられた加圧子を、前記工程(IV)において前記板状ステーを介して前記シャシフレームに取り付けられた前記リアバンパの所定の位置に押圧し、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、
  を含み、
  前記工程(II)が、
  (a)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータから、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程と、
  (b)前記工程(a)で算出された、シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択する工程と、を含み、
  前記工程(III)が、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類の板状ステーから板状ステーが曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーを選択する工程からなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法。
【請求項2】
  請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験についての測定条件ならびに測定結果に係るデータが記載された計算書であって、
  当該データとして、前記工程(II)により選択された前記シャシフレームの個別情報と、前記工程(III)により選択された前記板状ステーの個別情報と、前記測定対象となるリアバンパの個別情報とについての規定値と、
  前記測定対象となるリアバンパの測定条件と、
  前記工程(V)により得られた測定結果の情報と、
が記載されている、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書。
【請求項3】
  請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、
  前記工程(b)は、
  前記シャシフレームを片持ち梁と仮定し、さらに2本の前記シャシフレームのそれぞれの自由端近傍に選択された前記板状ステーと同じ長さの剛体が取り付けられた状態と仮定して計算をし、
  前記剛体の先端における変位量を計算することにより、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法。
【請求項4】
  実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムであって、当該強度試験システムは、
  (I-1)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータと、
  (I-2)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーの形状を構成している寸法のデータと、
を記憶している記憶装置と、
  (II-1)前記記憶装置により記憶されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータに基づいて、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出し、
  (II-2)前記(II-1)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択し、
  (II-3)前記記憶装置により記憶されている、前記板状ステーの形状を構成している寸法のデータに基づいて、板状ステーが曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーを選択する、
演算装置と、
  (III)前記演算装置によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に取り付け可能で、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記演算装置によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに試験の対象となるリアバンパを取り付けることができる、架台と、
  (IV)前記リアバンパの所定の位置を加圧する加圧子が設けられた加圧装置と、
を含んでなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法、その方法により得られた計算書、および実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
  自動車の装置に関しては、「装置型式指定(Eマーク)」を取得することで、当該装置に係る技術的な審査が省略される。
  「装置型式指定(Eマーク)」とは、自動車の装置に関し、国が定めた安全や環境等の基準への適合性について事前に確認する制度のことを言う。この型式指定の認証を受けた装置に関しては全数検査が省略される制度である。
【0003】
  自動車型式指定制度とは、新車の販売前に対象車両のブレーキ性能や品質管理体制などが保安基準を満たしているかを国が審査する制度である。審査を通過した車両には国が型式指定を行う仕組みで、これにより、メーカーは量産車の個別の車両毎の審査を省略することができる。
【0004】
  リアバンパについても、事前に「装置型式指定(Eマーク)」を取得することで、当該リアバンパが取り付けられた各種の自動車について、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、自動車販売にあたっての審査の合理化を図ることができる。
【0005】
  2021年9月に、リアバンパをその一部とする、突入防止装置について安全の基準を強化する目的で、保安基準が改正された。
【0006】
  その結果、従来の板状ステーとリアバンパのみの強度ではなく、シャシフレームへの取付までを含んだ強度を確認することとなった。
【0007】
  そのため、リアバンパの強度試験をする際は、リアバンパを実車に取り付けた状態でリアバンパの強度試験を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
  もっとも、自動車の車種(型式)ごとに同一のリアバンパについてその都度実車に取り付けた状態で強度試験を行うことは、極めて煩雑であり事実上不可能である。
【0010】
  そこで、リアバンパについて合理的に審査を省略できる方法、即ち当該リアバンパを実車の代替物に取り付けた「突入防止装置」について車検に適合する方法を必要としていた。
【0011】
  本発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法、その方法により得られた計算書、および実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
  請求項1に係る発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、当該強度試験方法は、
  (I)強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程と、
  (II)車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程であって、車両メーカーによって公開された形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、
  (III)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程と、
  (IV)前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に架台に取り付け、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、
  (V)加圧装置に設けられた加圧子を、前記工程(IV)において前記板状ステーを介して前記シャシフレームに取り付けられた前記リアバンパの所定の位置に押圧し、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、
  を含み、
  前記工程(II)が、
  (a)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータから、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程と、
  (b)前記工程(a)で算出された、シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択する工程と、を含み、
  前記工程(III)が、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類の板状ステーから板状ステーが曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーを選択する工程からなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法に関する。
【0013】
  請求項2に係る発明は、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験についての測定条件ならびに測定結果に係るデータが記載された計算書であって、
  当該データとして、前記工程(II)により選択された前記シャシフレームの個別情報と、前記工程(III)により選択された前記板状ステーの個別情報と、前記測定対象となるリアバンパの個別情報とについての規定値と、
  前記測定対象となるリアバンパの測定条件と、
  前記工程(V)により得られた測定結果の情報と、
が記載されている、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書に関する。
【0014】
  請求項3に係る発明は、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、
  前記工程(b)は、
  前記シャシフレームを片持ち梁と仮定し、さらに2本の前記シャシフレームのそれぞれの自由端近傍に選択された前記板状ステーと同じ長さの剛体が取り付けられた状態と仮定して計算をし、
  前記剛体の先端における変位量を計算することにより、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法に関する。
【0015】
  請求項4に係る発明は、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムであって、当該強度試験システムは、
  (I-1)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータと、
  (I-2)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーの形状を構成している寸法のデータと、
を記憶している記憶装置と、
  (II-1)前記記憶装置により記憶されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータに基づいて、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出し、
  (II-2)前記(II-1)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択し、
  (II-3)前記記憶装置により記憶されている、前記板状ステーの形状を構成している寸法のデータに基づいて、板状ステーが曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーを選択する、
演算装置と、
  (III)前記演算装置によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に取り付け可能で、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記演算装置によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに試験の対象となるリアバンパを取り付けることができる、架台と、
  (IV)前記リアバンパの所定の位置を加圧する加圧子が設けられた加圧装置と、
を含んでなる、
ことを特徴とする、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムに関する。
【発明の効果】
【0016】
  請求項1に係る、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法によれば、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法であって、当該強度試験方法は、(I)強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程と、(II)車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程であって、車両メーカーによって公開された形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程と、(III)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程と、(IV)前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に架台に取り付け、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパを取り付ける工程と、(V)加圧装置に設けられた加圧子を、前記工程(IV)において前記板状ステーを介して前記シャシフレームに取り付けられた前記リアバンパの所定の位置に押圧し、当該リアバンパの変位量を測定する測定工程と、を含み、前記工程(II)が、(a)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式で使用されている前記フレームの形状を構成している寸法のデータから、前記フレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程と、(b)前記工程(a)で算出された、シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択する工程と、を含み、前記工程(III)が、前記特定の車両メーカーで使用されている複数の種類の板状ステーから板状ステーが曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーを選択する工程からなる、ので、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法を提供することができ、かつ、各車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから最も撓みやすいもの、各車両メーカーによって公開され使用されている複数の種類の板状ステーから最も撓みやすいステーを選択しているため、当該強度試験の基準を満たしたバンパーは他の型式のシャシフレームおよび他の種類の板状ステーに用いられた場合も強度試験基準を満たす結果が得られるため、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、車検に通るという作用効果を奏する。
【0017】
  請求項2に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書によれば、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法に基づいているため、リアバンパについて当該計算書とそれが依拠する強度試験とをもって、車検に合格できるという作用効果を奏する。
【0018】
  請求項3に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法によれば、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法を提供することができ、かつ、各車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから曲げ力を受けた際に最も撓みやすいもの、各車両メーカーによって公開され使用されている複数の種類の板状ステーから曲げ力を受けた際に最も撓みやすいステーを選択しているため、当該強度試験の基準を満たしたバンパーは他の型式のシャシフレームおよび他の種類の板状ステーに用いられた場合も強度試験基準を満たす結果が得られるため、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、自動車販売にあたっての審査の合理化を図ることができるという作用効果を奏する。
【0019】
  請求項4に係る、実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムによれば、当該強度試験システムは、(I-1)車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの特定の型式について、使用されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータと、(I-2)車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーの形状を構成している寸法のデータと、を記憶している記憶装置と、を含み、前記強度試験システムは、更に(II-1)前記記憶装置により記憶されている前記シャシフレームの形状を構成している寸法のデータに基づいて、前記シャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出し、(II-2)前記(II-1)で算出されたシャシフレームの断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、シャシフレームが曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを選択し、(II-3)前記記憶装置により記憶されている、前記板状ステーの形状を構成している寸法のデータに基づいて、板状ステーが曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーを選択する、演算装置と、(III)前記演算装置によって選択された2本の前記シャシフレームを互いに平行に取り付け可能で、該2本のシャシフレームそれぞれの自由端近傍に前記演算装置によって選択された前記板状ステーを取り付け、該板状ステーを介して前記シャシフレームに試験の対象となるリアバンパを取り付けることができる、架台と、(IV)前記リアバンパの所定の位置を加圧する加圧子が設けられた加圧装置と、を含むことを特徴とするため、各車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから曲げ力を受けた際に最も撓みやすいもの、各車両メーカーによって公開され使用されている複数の種類の板状ステーから曲げ力を受けた際に最も撓みやすいステーを選択しているため、当該強度試験の基準を満たしたバンパーは他の型式のシャシフレームおよび他の種類の板状ステーに用いられた場合も強度試験基準を満たす結果が得られるため、当該リアバンパに係る技術的な審査が省略され、自動車検査登録制度(車検)にあたっての審査の合理化を図ることができるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
                           【
図1】本発明に係る試験対象となるリアバンパがトラックに取り付けられた状態を示す図である。
 
                           【
図2】本発明に係る試験対象となるリアバンパが取り付けられる、シャシフレームと板状ステーとの各社ごとのパターンの一例を示す図である。
 
                           【
図3】本発明に係る測定対象となるリアバンパの強度試験を実施するための機械を示す図である。
 
                           【
図4】発明に係る試験対象となるリアバンパの強度試験のための押圧位置を示す図である。
 
                           【
図5A(1)】シャシフレームのたわみ量のモデルを示す図である。
 
                           【
図5A(2)】シャシフレームのモデルを示す図である。
 
                           
                           【
図5C】本発明に係る試験対象となるリアバンパの強度試験で測定されるリアバンパの変位の様子を示す図である。
 
                           【
図6A】本発明に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書の一実施例を示す図である。
 
                           【
図6B】本発明に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法により得られた計算書の一実施例を示す図である。
 
                           【
図7】本発明に係る強度試験方法を実施するためのシステムの一実施例を示す図である。
 
                         
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態1]
  以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法について添付図面を参照しつつ以下に詳述する。
【0022】
<工程(I)>
  工程(I)は、強度試験の対象となるリアバンパを準備する工程である。
  
図1乃至2に示すように、本実施形態に係る、強度試験の対象となるリアバンパ(2)は、車両(1)のシャシ(3)後方に設けられるべき部品であり、当該シャシ(3)の代替物である、
図2に示すシャシフレーム(3)の自由端に対して、板状ステー(4)を介して取り付けられる。
 
【0023】
<工程(II)>
  工程(II)は、シャシフレーム(3)が、車両メーカー及び型式毎に異なる複数のシャシフレームから特定のシャシフレームが選択される工程である。
【0024】
  図2に示すシャシフレーム(3)は、形状とともに素材も異なる場合がある。さらに、各車両メーカーでは複数の型式のシャシフレーム(3)が製造されており、型式毎にシャシフレーム(3)の形状が異なる。
  工程(II)は、車両メーカー毎、及び型式毎に異なる形状を有しているシャシフレームの中から、強度試験の対象となるリアバンパ(2)を取り付けるシャシフレーム(3)を選択する工程である。
 
【0025】
  強度試験の対象となるリアバンパ(2)を取り付けるシャシフレーム(3)を選択する場合は、強度計算をするために、形状、寸法、強度特性等の情報が必要となる。ここで、各車両メーカーは、これらシャシフレーム(3)の形状、寸法、強度特性等の情報を公開している。
  工程(II)は、車両メーカーによって公開されたシャシフレーム(3)の形状、寸法、強度特性に基づいて、複数のシャシフレームから特定のシャシフレームを選択する工程である。
【0026】
  なお、各車両メーカーは、型式毎にサイズの異なる複数種類のシャシフレーム(3)を製造している。
  型式毎に複数のシャシフレーム(3)の中で曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム(3)は、板厚が薄く外形が小さいものである。ここで、板厚とは、シャシフレーム(3)に用いられている鋼板の厚みであって、外形とは、シャシフレームのフレーム高さとフランジ長さの合計を意味する。
  これを各型式毎の代表(曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム)とする。
【0027】
  型式ごとの代表(曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム)同士を比較して、当該車両メーカーで製造されているシャシフレームの中で曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを特定する。
  具体的には以下の各工程を経て計算式による算出にて特定する。
【0028】
<工程(a)>
  車両メーカーが公開しているデータのうち、当該車両メーカーの車両重量16トン以上の車両で使用されている前記シャシフレーム(3)の形状を構成している寸法のデータから、前記シャシフレーム(3)の断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)を算出する工程。請求項1における車両メーカーの「特定の型式」とは「車両メーカーの車両重量16トン以上の車両で使用されている型式」のことを言う。
【0029】
<工程(b)>
  前記工程(a)で算出されたシャシフレーム(3)の断面の断面係数(Z1、Z2、Z3・・・Zn)、断面二次モーメント(I1、I2、I3・・・In)、及び断面積(A1、A2、A3・・・An)から、曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを特定する工程とからなる。
【0030】
  各車両メーカーにおける曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム(3)を選択することで、強度試験の対象となるリアバンパ(2)を試験するにあたり、試験回数を減らすことができる。
すなわち、強度試験の対象となるリアバンパ(2)を各車両メーカーにおける曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム(3)に取付けて試験をし、強度試験基準を満たす結果が得られる場合は、当該車両メーカーにおける他のシャシフレーム(3)に取付けた場合であっても、強度試験の対象となるリアバンパは強度試験基準を満たす結果が得られることが推定できるためである。
【0031】
  各メーカーが設定しているシャシフレームと曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステーとの組み合わせにより、シャシフレームの断面係数と断面二次モーメントと断面面積をそれぞれ調べ、曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを特定する。
【0032】
  図5A(1)を参照して、前記工程(b)については、
  前記シャシフレーム(3)は片持ち梁で、剛体(rigid)の仮想的なステー(4)が取り付けられた状態と仮定して計算をし、
  前記剛体の仮想的なステーの先端における変位量を計算することにより、
曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームを特定する。
 
【0033】
  ここで条件を整理すると、以下となる。
フレームのみの変位をみるため、ステー部分は剛体として考える。A-B間の剛性は  EI、B-C間は剛体とする。
  なお、
図5A(2)における各記号は、以下となる。
フレーム高さ  h
フランジ部長さ  b
鋼材厚み  t1
鋼材厚み  t2
フレーム内面高さ  h1
<備考>
  本来実車に装着されているシャシフレームは長尺なものとなるが、RUPDテストベンチの要件として、強度試験時RUPD最前固定位置とテスト構造体剛性固定装置を、500mm以上離すことと定められていることから、本件においてもそれに準拠した。
                           
  まずフレームABに作用する曲げモーメントから、B点のたわみ角θと水平変位δxを求める。
  フレームの回転(θ)によって、生じるC点のたわみδxは以下の式で求まる。
  δx=θ・H
  ABを片持ち梁としたときのたわみ角θ・鉛直変位δyについての計算方法は以下となる。
  曲げモーメントは一様にM=PLが作用する。支間Lの片持ち梁に弾性荷重PL/EIが作用すると考え、それぞれ以下の式で求まる。
  θ=PLH/EI
  δy=(PL
2H)/(2EI)
  先端Cのたわみ合計についての計算方法は、以下となる。
  水平方向
  δx=θ・H=(PLH)/(EI)・H=(PLH
2)/(EI)
  鉛直方向
  δy=(PL
2H)/(2EI)
  以上に基づく、
曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームの特定のための計算方法は、以下の通りである。
  (i)当該シャシフレームの断面二次モーメントIを算出する(フレーム高さ(h)、フランジ長さ(b)、フレーム板厚(t1)、フレーム内面高さ(h1))
C形(チャンネル)の断面特性の公式に当てはめた場合、計算式は以下の通りである。
  I={b・h
3-(b-t1)・h1
3}/12
  (ii)負荷量(P)を一定値に設定する(180kNまたは車両総重量の85%のいずれか小さい値とする)
  (iii)仮想ステーの根元部のたわみ角(θ)を算出する(負荷(P)、仮想ステーの張り出し量(H)、シャシフレームの長さ(L)、シャシフレームの弾性係数(E)、シャシフレームの断面二次モーメント(I))
計算式は以下の通りである。
  θ= (P・H・L)/(E・I)
  (iv)仮想的なステーの先端における鉛直方向変位量(σy)を算出する(負荷(P)、仮想ステーの張り出し量(H)、シャシフレームの長さ(L)、シャシフレームの弾性係数(E)、シャシフレームの断面二次モーメント(I))。
計算式は以下の通りである。
  σy=(P・H・L
2)/(2・E・I)
  (v)仮想的なステーの先端における水平方向変位量(σx)を算出する(たわみ角(θ)、仮想ステーの張り出し量(H))
計算式は以下の通りである。
  σx= θ・H = {(P・H・L)/(E・I)}・H
 
【0034】
  板状ステーと試験対象となるべきリアバンパとが取り付けられた状態における、曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレームの選択を合理的に行うことができる。
【0035】
<工程(III)>
  工程(III)は、車両メーカーによって公開され、使用されている複数の種類の板状ステーから特定の板状ステーを選択する工程である。
【0036】
                             工程(III)において、曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステー(4)を選択し、鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量とを算出する。具体的な算出方法は、以下の通りである。(図5B参照)
                           
                           <ステーの断面特性>
                           
                           取付部の断面図、または負荷位置の断面図の形状により算出する公式が異なる。
                           
                           これらはステー取付部およびステー負荷位置それぞれの断面計算として共通で利用する。
                           
                           取付部の断面二次モーメント(I1)を算出する。(ステーモデル図である図5B参照)
                           
                           I型の場合、板厚(b)、長さ(h)とし、以下の公式に当てはめて算出する。
                           
                           断面面積  A=b×h
                           
                           断面二次モーメント  I=b×h
                           
                              3
                           
                           /12
                           
                           断面係数  Z=b×h
                           
                              2
                           
                           /6
                           
                           L型の場合、長さ(H)、幅(B)、図心距離(e1)、図心距離(e2)、板厚(a)、内幅(b)、図心距離(e1)-厚み(t)=(h)とし、以下の公式に当てはめて算出する。(ステーモデル図である図5B参照)
                           
                           断面面積  A=B×H-b(e2+h)
                           
                           図心距離  e1=(aH
                           
                              2
                           
                           +bt
                           
                              2
                           
                           )/{2(aH+bt)}
                           
                                     e2=H-e1
                           
                           断面二次モーメント  I=(Be1
                           
                              3
                           
                           -bh
                           
                              3
                           
                           +ae2
                           
                              3
                           
                           )/3
                           
                           断面係数  Z=I/e1:Z=I/e2
                           
                           ステー負荷位置断面における計算方法も、I型、L型ともに上記と同様
                           
                           <ステーの変位量計算>
                           
                           社団法人 日本自動車車体工業会が示す、ステーの水平方向の変位量計算式は以下のとおりである。
                           
                           δ=2PH
                           
                              3
                           
                           /3E(I1+I2)
                           
                           ステー取付部断面の断面二次モーメントをI1、ステー負荷位置断面の断面二次モーメントをI2とする。
                           
                           ステー取付部~ステー負荷位置との鉛直方向距離をH、ステー外径として水平方向距離をLとする。
                           
                           <ステーの変位量>
                           
                           水平変位量  δx=2×P×H
                           
                              3
                           
                           /{3×E×(I1+I2)}
                           
                           ステーのたわみ角θ・鉛直変位δyについての計算方法は以下となる。
                           
                           ステー取付部にかかる曲げモーメントは一様にM=PLが作用する。ステー高さHに弾性荷重PL/EIが作用すると考え、それぞれ以下の式で求まる。
                           
                           ステーの鉛直方向変位量は、
                           
                           たわみ角  θ=P×H×L/(E×I1)
                           
                           鉛直変位量  δy=θ・H=P×L×H/(E×I1)・H=P×H
                           
                              2
                           
                           ×L/(E×I1)
                           
                             特定の車両メーカーで使用されている複数の種類のステーから最大のサイズのステーを
、最も撓みやすいステーとして選択する場合もある。
                           
  最大のサイズの板状ステー(4)とは、例えば、板状ステー(4)の取り付け箇所の中心点と、シャシフレームの自由端側に取付けられたリアバンパ(2)の外側面かつ最下端からの距離が60mmの点との距離が最大のものを意味するが、この60mmの点に限定するものではない。
 
【0037】
<工程(IV)>架台への取り付け
  強度試験の対象となるリアバンパ(2)を試験する際は、シャシフレーム(3)、板状ステー(4)、および強度試験の対象となるリアバンパ(2)が、
図3に示される架台(rigid bench或test benchとも称されている)(5)に取付けられた状態で行われる。そのため、工程(IV)は、前記工程(II)によって選択された2本の前記シャシフレーム(3)を互いに平行に架台(5)に取り付け、該2本のシャシフレーム(3)それぞれの自由端近傍に前記工程(III)によって選択された前記板状ステー(4)を取り付け、該板状ステー(4)を介して前記シャシフレーム(3)に前記工程(I)において試験の対象として準備されたリアバンパ(2)を取り付ける工程である。
 
【0038】
  なおリアバンパ(2)は上下方向の向きを有し、リアバンパ(2)を板状ステー(4)に取付ける際は、取り付け方向を上下で選ぶことができる。ただし、板状ステー(4)の形状に応じて、強度上不利な向きがある。この場合は、強度上不利な方向を選択してリアバンパ(2)を板状ステー(4)に取り付ける。
【0039】
<工程(V)>加圧測定
  工程(V)は、加圧装置(5)に設けられた加圧子(6)を、前記工程(IV)において前記板状ステー(4)を介して前記シャシフレーム(3)に取り付けられた前記リアバンパ(2)の所定の複数の位置に押圧し、当該リアバンパ(2)の変位量を測定する測定工程である。
【0040】
  図3に示すように、加圧装置(5)は、架台(11)と、シャシフレーム(3)の取り付け台(10)と、加圧子(6)と、ピストン(7)とを含む。架台(11)は、4本の柱によって支えられた台であって、架台(11)の上にシャシフレーム(3)を固定するためのシャシフレーム(3)の取り付け台(10)を載置、固定することができる。シャシフレーム(3)の取り付け台(10)は、工程(b)により特定されたシャシフレーム(3)を2本固定することができる台である。シャシフレーム(3)を、架台(5)の台面に対して垂直になるよう、シャシフレーム(3)の取り付け台(10)に固定し、固定された2本のシャシフレーム(3)のそれぞれの自由端近傍に、板状フレーム(4)を1つずつ固定し、固定された2つの板状フレーム(4)に、強度試験の対象となるリアバンパ(2)が取り付けられる。
 
【0041】
  加圧子(6)は、少なくともリアバンパ(2)の鉛直方向幅の全域を押圧できる鉛直方向幅を有し、少なくともリアバンパ(2)の水平方向における2個所以上を順番に押圧できる水平方向幅を有する板状の部材である。
【0042】
  ピストン(7)は、シリンダ(8)とロッド(9)とを有し、ロッド(9)の先端に加圧子(6)が固定されている。シリンダ(8)内には油又は水などが充填されており、加圧装置(5)は、油圧又は水圧などにより加圧子(6)をピストン(7)で押し出すことにより、リアバンパ(2)に対する圧力を発生させることができる。
ピストン(5)は、架台(11)の天井側に設けられた梁によって、少なくともリアバンパ(2)の長手方向に平行な並行方向軸上を自由に移動できるように梁に設置されている。
【0043】
  加圧装置(5)においては、シャシフレーム(3)の取り付け台(10)にシャシフレーム(3)が取付けられ、シャシフレーム(3)に板状ステー(4)が取り付けられる。板状ステー(4)に、強度試験の対象となるリアバンパ(2)が取り付けられる。
【0044】
  図4に示すように、加圧装置(5)によりリアバンパ(2)の所定の複数の位置(
図4では5カ所の位置が示されているが、これに限定されない。)を加圧装置(5)に設けられた加圧子(6)で押圧する。
負荷荷重をかける順序は、国連の規定書に準拠して(ii)と(iv)とが連続、(i)と(iii)と(v)とが連続であれば、その他の順序は制限されない。
 
【0045】
  図5Cに示すように、加圧装置(5)により押圧されたリアバンパ(2)は、加圧力が一定の力を超える場合は変形するところ、側面視における変位量を測定する。
図5Cでは、側面視における鉛直方向の変位量をσy、水平方向の変位量をσxとして表している。
 
【0046】
  鉛直方向の変位量σyと、水平方向の変位量σxが、強度試験基準を満たすか否かを判断する。
【0047】
<計算書>
  後部突入防止装置(リアバンパ)に限ると、強度、形状等に関し保安基準で定められていることから、
図6に示すような、計算書を提出する。
 
【0048】
  計算書を提出する場合は、以下を記載する。
<1>計算書により算出されたリアバンパの変位量が保安基準値に収まることと、
<2>曲げ力を受けた際に最も撓みやすいのもので計算を行い、計算結果が基準値以内であること、 
<3>構造や材質等で明らかに試験体より有利である(即ち、変位量が少ない)と考えられるものに対しても問題がないこと。
【0049】
  計算書の記入事項としては、板状ステーとシャシフレームと、測定対象となるリアバンパの規定値、強度についての計算結果、リアバンパについての測定結果などがある。
【0050】
  規定値とは、板状ステーとシャシフレームとの個別情報たる、断面形状や寸法など、また測定対象となるリアバンパの個別情報たる、側面部の断面高さなどを意味する。
【0051】
  図5Bを参照して、<1>の計算書におけるリアバンパ(2)の鉛直方向の変位量(σy)、水平方向の変位量(σx)のそれぞれの算出方法は、以下の通りである。
  
曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム(3)を選択する際に、鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量とを算出する。
  ここで、
図5Bにおける各記号は、以下となる
。
                           
                           高さ  H
外幅  B
内幅  b
厚み  t
図心-厚み  h
図心距離1  e1
図心距離2  e2
図心距離1-厚み  h
幅厚み  a
 
【0052】
  曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステー(4)を選択し、鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量とを算出する。具体的な算出方法は、以下の通りである。
<ステーの断面特性>
取付部の断面図、または負荷位置の断面図の形状により算出する公式が異なる。
これらはステー取付部およびステー負荷位置それぞれの断面計算として共通で利用する。
取付部の断面二次モーメント(I1)を算出する。(ステーモデル図である
図5B参照)
I型の場合、板厚(b)、長さ(h)とし、以下の公式に当てはめて算出する。
断面面積  A=b×h
断面二次モーメント  I=b×h
3/12
断面係数  Z=b×h
2/6
L型の場合、長さ(H)、幅(B)、図心距離(e1)、図心距離(e2)、板厚(a)、内幅(b)、図心距離(e1)-厚み(t)=(h)とし、以下の公式に当てはめて算出する。(ステーモデル図である
図5B参照)
断面面積  A=B×H-b(e2+h)
図心距離  e1=(aH
2+bt
2)/{2(aH+bt)}
          e2=H-e1
断面二次モーメント  I=(Be1
3-bh
3+ae2
3)/3
断面係数  Z=I/e1:Z=I/e2
ステー負荷位置断面における計算方法も、I型、L型ともに上記と同様
<ステーの変位量計算>
社団法人 日本自動車車体工業会が示す、ステーの水平方向の変位量計算式は以下のとおりである。
δ=2PH
3/3E(I1+I2)
ステー取付部断面の断面二次モーメントをI1、ステー負荷位置断面の断面二次モーメントをI2とする。
ステー取付部~ステー負荷位置との鉛直方向距離をH、ステー外径として水平方向距離をLとする。
<ステーの変位量>
水平変位量  δx=2×P×H
3/{3×E×(I1+I2)}
ステーのたわみ角θ・鉛直変位δyについての計算方法は以下となる。
ステー取付部にかかる曲げモーメントは一様にM=PLが作用する。ステー高さHに弾性荷重PL/EIが作用すると考え、それぞれ以下の式で求まる。
ステーの鉛直方向変位量は、
たわみ角  θ=P×H×L/(E×I1)
鉛直変位量  δy=θ・H=P×L×H/(E×I1)・H=P×H
2×L/(E×I1)
 
【0053】
  リアバンパ(2)の水平方向変位量を算出する。
  リアバンパ(2)について鉛直方向の変位量を算出しない理由は、リアバンパ(2)における鉛直方向の変位は、シャシフレーム(3)と板状ステー(4)との鉛直方向の変位によりもたらされるもののためである。
【0054】
  曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム(3)の鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量と、曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステー(4)の鉛直方向の変位量と、水平方向の変位量と、リアバンパ(2)の水平方向変位量と、のそれぞれを合算する。
【0055】
<システム>
  図7に示すように、実車にて行う試験に等価するリアバンパ(2)の強度試験方法は、システムとして構成されていてもよい。
 
【0056】
  実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験システムは、RAM、ROMなどの記憶装置(14、15、16)と、CPU、プロセッサなどの演算装置(17)と、加圧装置(5)とを含み、記憶装置(14、15、16)において記憶された、シャシフレーム(3)と板状ステー(4)とのデータに基づいて、演算装置(17)により曲げ力を受けた際に最も撓みやすいシャシフレーム(3)と曲げ力を受けた際に最も撓みやすい板状ステー(4)とを、それぞれ算出、選択する。選択された最も撓みやすいシャシフレーム(3)と最も撓みやすい板状ステー(4)とを用いて、加圧装置(5)により強度試験の対象となるリアバンパ(2)の強度試験を行うことができるシステムであってもよい。
【0057】
  記憶装置(14、15、16)は、シャシフレーム(3)の型式を記憶した第1の記憶装置(14)と、シャシフレーム(3)の断面データを記憶した第2の記憶装置(15)と、板状ステー(4)の型式を記憶した第3の記憶装置(16)とに分かれていてもよい。また第1の記憶装置(14)と、第2の記憶装置(15)と、第3の記憶装置(16)とのいずれか2つが1つの記憶装置として構成されていてもよい。
【0058】
  図示されていないが、
図3の加圧装置(5)については、実施形態に示す構造の他、当業者が使用し得るあらゆる構造の加圧装置(5)が利用可能であることは言うまでもない。また
図7のシステムについても、実施形態に示す構造の他、当業者が使用し得るあらゆる構造の記憶装置および演算装置が利用可能であることは言うまでもない。
 
【0059】
  本発明は、上記実施形態以外にも、当業者には自明の範囲で種々の変形、修正、変更を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
  本発明に係る実車にて行う試験に等価するリアバンパの強度試験方法は、リアバンパの強度試験を実車に取り付けて行う必要性がない。型式ひいては、リアバンパのみを製造販売するメーカーにおける、各自動車メーカーの型式毎におけるリアバンパの強度試験の申請を省略することに大いに寄与することができる。
【符号の説明】
【0061】
1        車両
2        リアバンパ
3        シャシフレーム
4        板状ステー
5        加圧装置
6        加圧子
7        ピストン
8        シリンダ
9        ロッド
10      シャシフレームの取り付け台
11      架台
12      押圧位置
14      第1の記憶装置
15      第2の記憶装置
16      第3の記憶装置
17      演算装置