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特開2025-15445洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法、装置、機器、及び媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015445
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法、装置、機器、及び媒体
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20250123BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20250123BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20250123BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 A
F03D17/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024105430
(22)【出願日】2024-06-28
(31)【優先権主張番号】202310898246.4
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524248094
【氏名又は名称】長江三峡集団実業発展(北京)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA THREE GORGES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.1 Liuhe Road, Jiang’an District, Wuhan, Hubei, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】于 光明
(72)【発明者】
【氏名】劉 俊峰
(72)【発明者】
【氏名】孫 長平
(72)【発明者】
【氏名】劉 運志
(72)【発明者】
【氏名】唐 博進
(72)【発明者】
【氏名】陳 新群
(72)【発明者】
【氏名】黄 俊
(72)【発明者】
【氏名】林 毅峰
(72)【発明者】
【氏名】滕 華灯
(72)【発明者】
【氏名】許 新▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 紹幸
(72)【発明者】
【氏名】朱 彬
(72)【発明者】
【氏名】倪 常健
(72)【発明者】
【氏名】施 善偉
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AD05
2G024BA22
2G024CA04
2G024DA09
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB22
2G064CC42
2G064CC54
2G064DD01
3H178AA03
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB42
3H178BB59
3H178CC02
3H178CC25
3H178DD12Z
3H178DD52X
3H178DD54X
3H178EE06
3H178EE26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法、装置、機器、及び媒体を提供する。
【解決手段】洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、振動限度超過故障が発生する前の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データに対してフーリエスペクトル解析を行い、インペラ正常回転段階のタービンの励起周波数、振動限度超過故障段階のタービンの励起周波数、及び停止段階の固有周波数を決定し、インペラ正常回転段階のタービンの励起周波数と固有周波数との間の第1偏差値、振動限度超過故障が発生したタービンの励起周波数と固有周波数との間の第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づいて、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判定する。これにより、手動トラブルシューティングによるリソースの無駄や不必要な停止などの関連技術の問題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法であって、
洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップと、
前記第1振動加速度データ、第2振動加速度データ及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得るステップであって、前記第1周波数は、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、前記第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である、ステップと、
前記第1周波数と前記第3周波数との間の第1偏差値、及び前記第2周波数と前記第3周波数との間の第2偏差値を決定するステップと、
前記第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、前記洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得るステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、前記洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得るステップの後、
前記故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、前記洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得るステップの後、
前記洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンのインペラの回転数範囲に基づき、洋上タービンのブレードの掃引周波数帯を決定するステップと、
前記第3周波数が前記掃引周波数帯内であるか否かを判断するステップと、
前記第3周波数が掃引周波数帯内である場合、前記第3周波数に基づき、前記掃引周波数帯に対応する共振回転数区間を決定するステップと、
前記共振回転数区間及び洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラの実測回転数に基づき、前記洋上タービンに自励共振故障が発生したか否かを判定するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の目標期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップの前、
洋上タービンのナセル内の振動加速度データを取得するステップと、
前記振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得るステップと、
前記比較結果に基づき、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の目標期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップの前、
第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データを取得するステップと、
第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサの動作状態が正常であるか否かを判断するステップと、
前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサの動作状態が正常である場合、前記第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断するステップと、
前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する場合、前記洋上タービンに停止制御命令を送信するステップと、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断するステップは、
第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得るステップと、
第1加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、及び/又は第2加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップは、
洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1初期振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2初期振動加速度データ及びタービン停止段階の第3初期振動加速度データを取得するステップと、
前記第1初期振動加速度データ、第2初期振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データのそれぞれに対して信号ゼロパディング処理を行い、第1初期振動加速度データに対応する第1振動加速度データ、第2初期振動加速度データに対応する第2振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データに対応する第3振動加速度データを得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置であって、
洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する第1取得モジュールと、
前記第1振動加速度データ、第2振動加速度データ及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得るスペクトル解析モジュールであって、前記第1周波数は、前記洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、前記第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である、スペクトル解析モジュールと、
前記第1周波数と前記第3周波数との間の第1偏差値、及び前記第2周波数と前記第3周波数との間の第2偏差値を決定する第1決定モジュールと、
前記第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、前記洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る第2決定モジュールと、を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定する第3決定モジュールをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
メモリと、プロセッサと、を含み、前記メモリと前記プロセッサは、互いに通信可能に接続され、前記メモリには、コンピュータ命令が記憶されており、前記プロセッサは、前記コンピュータ命令を実行することによって、請求項1~7のいずれか一項に記載の洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法を実行する、ことを特徴とするコンピュータ機器。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法をコンピュータに実行させるコンピュータ命令が記憶されている、ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号処理の技術分野に関し、具体的には、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法、装置、機器、及び媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電は、タービンによる発電量が多く、開発に適しているという利点がある。現在、洋上風力発電は、急速な発展期を迎えているが、洋上風力発電タービンは、設置環境が特殊であるため、環境の影響によりさまざまな故障が発生しやすくなっている。したがって、洋上風力発電の運転・保守・点検作業は非常に重要である。
【0003】
現在、洋上風力発電タービンには、タービンのナセルの振動限度超過故障を検知した場合、タービンを停止制御し、運転保守員が洋上風力発電タービンの運転・保守・点検作業を行う。運転保守員が運用保守作業を行う際には、通常、洋上風力発電タービンに発生し得る故障を過去の経験に基づいて1つ1つ調査していくため、人的資源の無駄や時間がかかるというデメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上を鑑み、本発明は、洋上風力発電タービンの従来のトラブルシューティング方法に存在する人的資源の無駄や時間がかかるという問題を解決するために、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法、装置、機器、及び媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様では、本発明は、
洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップと、第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得るステップであって、第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である、ステップと、第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定するステップと、第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得るステップと、を含む、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法を提供する。
【0006】
本発明による洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法において、洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ及びタービン停止段階の第3振動加速度データに対してフーリエスペクトル解析を行い、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数及び洋上タービン停止段階の固有周波数を得て、インペラ正常回転段階のタービンの励起周波数と固有周波数との間の第1偏差値、振動限度超過故障が発生したタービンの励起周波数と固有周波数との間の第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づいて洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判定することによって、洋上タービンの振動故障のインテリジェントな診断を実現し、洋上タービンの振動加速度データを分析することで洋上タービンの振動限度超過故障の原因を特定することができ、手動トラブルシューティングによって発生する人的資源の無駄や時間がかかるという関連技術の問題を解決する。
【0007】
好適な実施形態では、第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得るステップの後、該方法は、故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定するステップをさらに含む。
【0008】
この好適な実施形態による方法において、故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定することによって、洋上風力発電の運転・保守・点検作業の効率を向上させ、タービンの安全な運転を確保する。
【0009】
好適な実施形態では、第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得るステップの後、該方法は、洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、洋上タービンのインペラの回転数範囲に基づいて、洋上タービンのブレードの掃引周波数帯を決定するステップと、第3周波数が掃引周波数帯内であるか否かを判断するステップと、第3周波数が掃引周波数帯内である場合、第3周波数に基づき、掃引周波数帯に対応する共振回転数区間を決定するステップと、共振回転数区間及び洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラの実測回転数に基づき、洋上タービンに自励共振故障が発生したか否かを判定するステップと、をさらに含む。
【0010】
この好適な実施形態による方法において、洋上タービンの掃引周波数帯及び固有周波数に基づき、洋上タービンに自励共振故障が発生したか否かを判定することによって、判断結果に基づき、それに対応する故障解決策を決定することに有利である。
【0011】
可能な実施形態では、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の目標期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップの前、該方法は、洋上タービンのナセル内の振動加速度データを取得するステップと、振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得るステップと、比較結果に基づき、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断するステップと、をさらに含む。
【0012】
この好適な実施形態による方法において、振動加速度データを予め設定された閾値と比較し、比較結果に基づき、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを正確に判断することができる。
【0013】
好適な実施形態では、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の目標期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップの前、該方法は、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データを取得するステップと、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常であるか否かを判断するステップと、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常である場合、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断するステップと、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する場合、洋上タービンに停止制御命令を送信するステップと、をさらに含む。
【0014】
この好適な実施形態による方法において、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かをより正確に判定し、振動センサの異常な動作状態によるタービンのシャットダウンの問題を効果的に解決する。
【0015】
可能な実施形態では、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断するステップは、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得るステップと、第1加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、及び/又は第2加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定するステップと、を含む。
【0016】
この好適な実施形態による方法において、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かをより正確に判定する。
【0017】
可能な実施形態では、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得するステップは、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1初期振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2初期振動加速度データ及びタービン停止段階の第3初期振動加速度データを取得するステップと、第1初期振動加速度データ、第2初期振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データのそれぞれに対して信号ゼロパディング処理を行い、第1初期振動加速度データに対応する第1振動加速度データ、第2初期振動加速度データに対応する第2振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データに対応する第3振動加速度データを得るステップと、を含む。
【0018】
本実施形態による方法において、振動加速度データを増加させ、周波数分析の間隔を短縮させ、後で振動加速度データに対してフーリエスペクトル解析を行うことで高精度スペクトル解析結果を取得することが容易になる。
【0019】
第2態様では、本発明は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する第1取得モジュールと、第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得るスペクトル解析モジュールであって、第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である、スペクトル解析モジュールと、第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する第1決定モジュールと、第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る第2決定モジュールと、を含む、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置を提供する。
【0020】
可能な実施形態では、該装置は、故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定する第3決定モジュールをさらに含む。
【0021】
第3態様では、本発明は、メモリと、プロセッサと、を含み、メモリとプロセッサは、互いに通信可能に接続され、メモリには、コンピュータ命令が記憶されており、プロセッサは、コンピュータ命令を実行することによって、上記の第1態様又はそれに対応する実施形態のいずれか一項に記載の洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法を実行する、コンピュータ機器を提供する。
【0022】
第4態様では、本発明は、上記の第1態様又はそれに対応する実施形態のいずれか一項に記載の洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法をコンピュータに実行させるコンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するため、以下、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面について簡単に紹介するが、以下の説明における図面は本発明のいくつかの実施形態であることは明らかであり、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ模式図である。
図2A】本発明の実施例に係る第1振動加速度のうちY方向の振動加速度の経時的な変化の情報の模式図である。
図2B】本発明の実施例に係る第1振動加速度のうちY方向の振動加速度のフーリエスペクトル解析結果の模式図である。
図2C】本発明の実施例に係る第2振動加速度のうちY方向の振動加速度の経時的な変化の情報の模式図である。
図2D】本発明の実施例に係る第2振動加速度のうちY方向の振動加速度のフーリエスペクトル解析結果の模式図である。
図2E】本発明の実施例に係る第3振動加速度のうちY方向の振動加速度の経時的な変化の情報の模式図である。
図2F】本発明の実施例に係る第3振動加速度のうちY方向の振動加速度のフーリエスペクトル解析結果の模式図である。
図2G】本発明の実施例に係る第1振動加速度のうちX方向の振動加速度の経時的な変化の情報の模式図である。
図2H】本発明の実施例に係る第1振動加速度のうちX方向の振動加速度のフーリエスペクトル解析結果の模式図である。
図2I】本発明の実施例に係る第2振動加速度のうちX方向の振動加速度の経時的な変化の情報の模式図である。
図2J】本発明の実施例に係る第2振動加速度のうちX方向の振動加速度のフーリエスペクトル解析結果の模式図である。
図2K】本発明の実施例に係る第3振動加速度のうちX方向の振動加速度の経時的な変化の情報の模式図である。
図2L】本発明の実施例に係る第3振動加速度のうちX方向の振動加速度のフーリエスペクトル解析結果の模式図である。
図3】本発明の実施例に係る別の洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ模式図である。
図4】本発明の実施例に係る更なる洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ模式図である。
図5】本発明の実施例に係る更なる洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ模式図である。
図6】本発明の実施例に係る更なる洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ模式図である。
図7】本発明の実施例に係る更なる洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ模式図である。
図8】本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置の構造ブロック図である。
図9】本発明の実施例に係るコンピュータ機器のハードウェア構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は、本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を払うことなく得た他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0025】
洋上風力発電タービンに発生し得る故障を過去の経験に基づいて1つ1つ調査していくため、人的資源の無駄や時間がかかるという関連技術のデメリットに対して、本発明の実施例は、いずれの電子機器又はプロセッサなどにも適用でき、洋上タービンの振動加速度データを処理して分析することによって、洋上タービンの故障識別結果を決定する洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法を提案する。
【0026】
本発明の実施例によれば、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法実施例を提供する。なお、図面の流れ図に示すステップは、コンピュータ実行可能な命令などのコンピュータシステムにおいて実行されてもよく、流れ図には論理的な順序が示されているが、場合によっては、図示又は説明されたステップは、こことは異なる順序で実行されてもよい。
【0027】
本実施例では、上記の電子機器及びプロセッサ等に適用され得る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供される。図1は、本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ図であり、図1に示すように、該流れは、以下のステップS101~ステップS104を含む。
【0028】
ステップS101:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。
【0029】
例示的には、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したとは、洋上タービンの振動が予め設定された管理閾値を超えると、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定することを指す。第1振動加速度、第2振動加速度、及び第3振動加速度は、タービン内に予め設定された振動加速度センサによって収集されたものであり、振動加速度センサは、予め設定されたサンプリングに基づき、洋上タービンの振動加速度データをリアルタイムで収集し、第1振動加速度データは、振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内のデータであってもよく、予め設定された期間は、任意の期間であってもよく、予め設定された期間は、本願の実施例において特に限定せず、当業者によって必要に応じて決定してもよく、本願の実施例では、予め設定された期間は、1分間を含んでもよいが、これに限定されない。
【0030】
ステップS102:第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。
【0031】
例示的には、本願の実施例では、フーリエスペクトル解析とは、振動信号を時間領域で分割して解析し、パワースペクトル密度が最大となる周波数をその期間内の主周波数として取得することを指す。振動加速度センサは、タービンのナセル内のX(ブレードの受風面に平行するもの)とY(ブレードの受風面に垂直なもの)との2つの方向における振動加速度データを収集してもよく、第1振動加速度のうちY方向の振動加速度の経時的な変化の情報は、図2Aに示され、第1振動加速度のうちY方向の振動加速度データに対してフーリエスペクトル解析を行った結果は、図2Bに示される。図2A及び図2Bから分かるように、-60s~-20sの時間の範囲で、ナセルの振動加速度のY方向の時間領域データをフーリエ変換により、オートスペクトル密度振幅と周波数との関係の曲線に変換した結果、エネルギー(振幅)は最大で0.53であり、最大エネルギーに対応する振動周波数は、0.275Hzであり、これは、タービンの正常運転段階のY方向の振動励起周波数に基づくものである。第2振動加速度のうちY方向の振動加速度の経時的な変化の情報は、図2Cに示され、第2振動加速度に対してフーリエスペクトル解析を行った結果は、図2Dに示される。図2C及び図2Dから分かるように、-10s~10sの時間の範囲で、ナセルの振動加速度のY方向の時間領域データをフーリエ変換により周波数領域振幅と周波数との関係の曲線に変換した結果、エネルギー(振幅)は最大で0.313であり、最大エネルギーに対応する振動周波数は0.35Hzであり、これは、タービンの振動限度超過段階のY方向の振動周波数に基づくものである。第3振動加速度のうちY方向の振動加速度の経時的な変化の情報は、図2Eに示され、第3振動加速度に対してフーリエスペクトル解析を行った結果は、図2Fに示される。図2E及び図2Fから分かるように、20s~60sの時間の範囲で、ナセルの振動加速度のY方向の時間領域データをフーリエ変換した結果、最大エネルギーは0.144であり、最大エネルギーに対応する振動周波数は0.325Hzであり、これは、タービン停止段階のY方向の振動周波数に基づくものであり、全体の自然振動数、すなわち固有周波数に近い。第1振動加速度のうちX方向の振動加速度の経時的な変化の情報は、図2Gに示され、第1振動加速度に対してフーリエスペクトル解析を行った結果は、図2Hに示される。図2G及び図2Hから分かるように、-60s~-20sの時間範囲で、ナセルの振動加速度のX方向の時間領域データをフーリエ変換により周波数領域振幅に変換した結果、最大エネルギーは0.069であり、最大エネルギーに対応する振動周波数は0.325Hzであり、これは、タービンの正常運転段階のX方向の振動励起周波数に基づくものである。第2振動加速度のうちX方向の振動加速度の経時的な変化の情報は、図2Iに示され、第2振動加速度に対してフーリエスペクトル解析を行った結果は、図2Jに示される。図2I及び図2Jから分かるように、-10s~10sの時間範囲で、ナセルの振動加速度のX方向の時間領域データをフーリエ変換により周波数領域振幅と周波数との関係の曲線に変換した結果、最大エネルギーは0.187であり、最大エネルギーに対応する振動周波数は0.35Hzであり、これは、タービンの振動限度超過段階のX方向の振動周波数に基づくものである。第3振動加速度のうちX方向の振動加速度の経時的な変化の情報は、図2Kに示され、第3振動加速度に対してフーリエスペクトル解析を行った結果は、図2Lに示される。図2K及び図2Lから分かるように、20s~60sの時間範囲で、ナセルの振動加速度のX方向の時間領域データをフーリエ変換した結果、最大エネルギーは0.077であり、最大エネルギーに対応する振動周波数は0.333Hzであり、これは、タービン停止段階のX方向の振動周波数に基づくものであり、全体の自然振動数、すなわち、固有周波数に近い。上記で得られた各段階の周波数データは以下の表1に示される。
【0032】
<表1>
【0033】
ステップS103:第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。
【0034】
例示的には、第1偏差値とは、第1周波数と第3周波数との間の差値を指し、第2偏差値とは、第2周波数と第3周波数との間の偏差値を指す。本願の実施例では、表1に記載のデータYを分析したところ、タービンの運行の間に、ナセルの振動加速度の振動応答周波数は約0.275Hz、0.35Hzであり、タービンが停止した後の振動周波数は0.325Hzであり、第1偏差値は、0.275Hzから0.325Hzを差し引いた値であり、第2偏差値は、0.35Hzから0.325Hzを差し引いた値であることが分かった。
【0035】
ステップS104:第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。
【0036】
例示的には、予め設定された偏差値は、任意の値であってもよく、本願の実施例では、予め設定された偏差値は特に限定されず、当業者によって必要に応じて決定されてもよい。本願の実施例では、予め設定された偏差値は、0.05を含んでもよいが、それに限定されるものではなく、第1偏差値又は第2偏差値が0.05未満である場合、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したと判定する。
【0037】
本実施例による洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法では、洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ及びタービン停止段階の第3振動加速度データに対してフーリエスペクトル解析を行い、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数及び洋上タービン停止段階の固有周波数を得て、インペラ正常回転段階のタービンの励起周波数と固有周波数との間の第1偏差値、振動限度超過故障が発生したタービンの励起周波数と固有周波数との間の第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づいて洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判定することによって、洋上タービンの振動故障のインテリジェントな診断を実現し、洋上タービンの振動加速度データを分析することで洋上タービンの振動限度超過故障の原因を特定することができ、手動トラブルシューティングによって発生する人的資源の無駄や時間がかかるという関連技術の問題を解決する。
【0038】
本実施例では、上記の電子機器及びプロセッサなどに適用され得る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供される。図3は、本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ図であり、図3に示すように、この流れは、以下のステップS301~ステップS305を含む。
【0039】
ステップS301:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。詳細は図1に示す実施例のステップS101を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0040】
ステップS302:第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。詳細は図1に示す実施例のステップS102を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0041】
ステップS303:第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。詳細は図1に示す実施例のステップS103を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0042】
ステップS304:第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。詳細は図1に示す実施例のステップS104を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0043】
上記のステップS304の後、該方法は、具体的には、ステップS305をさらに含む。
【0044】
ステップS305:故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定する。
【0045】
例示的には、故障識別結果に基づき、敵陣営の故障処理レシピを決定し、例えば、タービンに共振限度超過故障が発生した場合、共振限度超過故障に応じて、対応する解決策を提供することができ、非共振故障が発生した場合、まず、タービン振動限度超過が台風などの風荷重による振動限度超過であるか否かを判定し、台風の要素を排除する場合、タービンの回転時の受ける力のアンバランスによるものと判定する。その原因としては、一般には、風力発電タービンの内部に機械的な問題が生じて、タービンのインペラの回転中に構造の受ける力のバランスが崩れて、例えば、個別のピッチシステムの同期性が損なわれたり、3本のブレードの標準ゼロベースラインの取り付け位置がずれたり、ギアボックスの内部の主軸受けの摩擦接触面に摩損が発生したり、軸受けの潤滑が不十分であったり、潤滑方式が正しくなかったり、ローター質量が不平衡であったり、インペラの接続部材が緩んだりするなど、振動限度超過故障が発生する。存在し得る故障を1つずつチェックして、故障の原因を特定する。
【0046】
本発明の実施例による洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法では、故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定することによって、洋上風力発電の運転・保守・点検作業の効率を向上させ、タービンの安全な運転を確保する。
【0047】
本実施例では、上記の電子機器及びプロセッサ等に適用され得る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供される。図4は、本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ図であり、図4に示すように、この流れは、以下のステップS401~ステップS408を含む。
【0048】
ステップS401:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。詳細は図1に示す実施例のステップS101を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0049】
ステップS402:第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。詳細は図1に示す実施例のステップS102を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0050】
ステップS403:第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。詳細は図1に示す実施例のステップS103を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0051】
ステップS404:第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。詳細は図1に示す実施例のステップS104を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0052】
具体的には、上記のステップS404の後、該方法は、ステップS405~ステップS408をさらに含む。
【0053】
ステップS405:洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、洋上タービンのインペラの回転数範囲に基づいて、洋上タービンのブレードの掃引周波数帯を決定する。
【0054】
例示的には、インペラの回転数範囲は、出荷時にタービンについて設定されたパラメータであり、掃引周波数帯は、1P周波数帯と3P周波数帯を含んでもよいが、これらに限定されず、1P周波数帯及び3P周波数帯は、インペラの回転数範囲に基づいて決定されてもよく、例えば、インペラの回転数範囲のRMP範囲がRPM1~RPM2であり、1P周波数帯とは、タービンのハブが1周回転する周波数である場合、1P周波数帯f1p=RPM1/60~RPM2/60であり、3P周波数帯とは、3本のブレードがタワーの影を通過する周波数であり、この場合、3P周波数帯f3p=(RPM1/60~RPM2/60)*3である。本願の実施例では、掃引周波数帯は、3P周波数帯であってもよい。
【0055】
ステップS406:第3周波数が掃引周波数帯内であるか否かを判断する。例示的には、本願の実施例では、第3周波数の値及び3P周波数帯の範囲から、第3周波数が3P周波数帯内であるか否かを判断する。
【0056】
ステップS407:第3周波数が掃引周波数帯内である場合、第3周波数に基づき、掃引周波数帯に対応する共振回転数区間を決定する。
【0057】
例示的には、本願の実施例では、第3周波数が3P周波数帯外である場合、洋上タービンに渦誘起共振が発生したと判定し、第3周波数が3P周波数帯内である場合、第3周波数に基づき、3P共振回転数区間を計算し、3P共振回転数R3P=fs*60s/3であり、ここで、fsは、第3共振周波数であり、sは、時間単位(秒)であり、3P共振回転数区間は、R3Pの±15%を取る。
【0058】
ステップS408:共振回転数区間及び洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラの実測回転数に基づき、洋上タービンに自励共振故障が発生したか否かを判定する。例示的には、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラの実測回転数が共振回転数区間内である場合、洋上タービンに自励共振故障が発生し、それ以外の場合、洋上タービンに渦誘起共振故障が発生したと判定する。
【0059】
本発明の実施例による洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法では、洋上タービンの掃引周波数帯及び固有周波数に基づき、洋上タービンに自励共振故障が発生したか否かを決定し、判断結果に基づき、それに対応する故障解決策を決定することに有利である。
【0060】
本実施例では、上記の電子機器及びプロセッサなどに適用され得る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供される。図5は、本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ図であり、図5に示すように、この流れは、以下のステップS501~ステップS507を含む。
【0061】
ステップS501:洋上タービンのナセル内の振動加速度データを取得する。例示的には、洋上タービンのナセル内の振動加速度データは、ナセル内に設置された振動加速度センサによって収集されたものである。
【0062】
ステップS502:振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得る。例示的には、予め設定された閾値とは、予め設定された管理閾値であってもよく、本願の実施例では、予め設定された閾値は特に限定されず、当業者によって必要に応じて決定されてもよい。
【0063】
ステップS503:比較結果に基づき、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断する。例示的には、振動加速度が予め設定された閾値よりも大きい場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する。
【0064】
ステップS504:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。詳細は図1に示す実施例のステップS101を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0065】
ステップS505:第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。詳細は図1に示す実施例のステップS102を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0066】
ステップS506:第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。詳細は図1に示す実施例のステップS103を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0067】
ステップS507:第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。詳細は図1に示す実施例のステップS104を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0068】
本発明の実施例では、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供され、振動加速度データを予め設定された閾値と比較し、比較結果に基づき、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを正確に判断することができる。
【0069】
本実施例では、上記の電子機器及びプロセッサなどに適用され得る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供される。図6は、本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ図であり、図6に示すように、この流れは、以下のステップS601~ステップS608を含む。
【0070】
ステップS601:第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データを取得する。例示的には、本願の実施例では、洋上タービンのナセル内に、第1加速度センサと第2加速度センサの2つの振動加速度センサを主軸の中心線に沿って対称に配置することができる。
【0071】
ステップS602:第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常であるか否かを判断する。例示的には、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、加速度データにジャンプ異常が発生したか否かを判断し、具体的には、タービンのナセルに設けられた2つの加速度センサによるX方向及びY方向の計4組のデータの振幅に急激な変化が存在する場合、センサに故障が発生したことを示し、タービンのナセルに設けられた2つの加速度センサによるX方向及びY方向の計4組のデータの振幅が近い場合、センサの動作状態が確実であり、データにはジャンプ異常が発生していないことを示す。
【0072】
ステップS603:第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常である場合、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断する。例示的には、監視の結果、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常である場合、さらに、加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断する。
【0073】
ステップS604:洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する場合、洋上タービンに停止制御命令を送信する。例示的には、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンを停止制御する。
【0074】
ステップS605:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。詳細は図1に示す実施例のステップS101を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0075】
ステップS606:第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。詳細は図1に示す実施例のステップS102を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0076】
ステップS607:第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。詳細は図1に示す実施例のステップS103を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0077】
ステップS608:第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。詳細は図1に示す実施例のステップS104を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0078】
本発明の実施例による洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法では、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かをより正確に判定し、振動センサの異常な動作状態によるタービンのシャットダウンの問題を効果的に解決する。
【0079】
本実施例では、上記の電子機器及びプロセッサなどに適用され得る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法が提供される。図7は、本発明の実施例に係る洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の流れ図であり、図7に示すように、この流れは、以下のステップS701~ステップS708を含む。
【0080】
ステップS701:第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データを取得する。詳細は図1に示す実施例のステップS601を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0081】
ステップS702:第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常であるか否かを判断する。例示的には、詳細は図1に示す実施例のステップS602を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0082】
ステップS703:第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常である場合、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断する。詳細は図1に示す実施例のステップS603を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0083】
いくつかの好適な実施形態では、上記のステップS703は、ステップS7031とステップS7032を含む。
【0084】
ステップS7031:第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得る。例示的には、予め設定された閾値は、実際のニーズに応じて決定される振動加速度の管理閾値であってもよい。
【0085】
ステップS7032:第1加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、及び/又は第2加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する。例示的には、比較の結果、少なくとも1つの振動加速度センサによって収集された振動加速度の比較結果が予め設定された閾値よりも大きい場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した。
【0086】
ステップS704:洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する場合、洋上タービンに停止制御命令を送信する。詳細は図1に示す実施例のステップS504を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0087】
ステップS705:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。詳細は図1に示す実施例のステップS101を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0088】
いくつかの好適な実施形態では、ステップS705は、ステップS7051とステップS7052を含む。
【0089】
ステップS7051:洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1初期振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2初期振動加速度データ及びタービン停止段階の第3初期振動加速度データを取得する。
【0090】
例示的には、本願の実施例では、第1初期振動加速度データ、第2初期振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データは、振動加速度センサによって収集された元のデータであってもよい。
【0091】
ステップS7052:第1初期振動加速度データ、第2初期振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データのそれぞれに対して信号ゼロパディング処理を行い、第1初期振動加速度データに対応する第1振動加速度データ、第2初期振動加速度データに対応する第2振動加速度データ、及び第3初期振動加速度データに対応する第3振動加速度データを得る。
【0092】
例示的には、フーリエFFTスペクトル解析を行う際に、現場で収集されるデータの長さに限りがあり、周波数分解能が要件を満たさない場合がよくあり、ここで、FFTの周波数分解能=サンプリング周波数/FFT長さである。スペクトル解析の精度を高めるために、振動信号ゼロパディング法によって、振動信号に一定の時間の振幅ゼロの振動信号を追加することによって、FFT長さを効果的に延ばし、周波数分析の間隔を短縮させ、高精度スペクトル解析の結果を取得することができる。本願の実施例では、第1初期振動加速度データ、第2初期振動加速度データ及び第3初期振動加速度データに対して信号ゼロパディング処理を施すことによって、後続のスペクトル解析結果の精度を向上させることができる。
【0093】
ステップS706:第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。詳細は図1に示す実施例のステップS102を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0094】
ステップS707:第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。詳細は図1に示す実施例のステップS103を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0095】
ステップS708:第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。詳細は図1に示す実施例のステップS104を参照できるため、ここでは詳しく説明しない。
【0096】
本実施例による洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法では、洋上タービンの振動故障のインテリジェントな診断を実現し、洋上タービンの振動加速度データを分析することで洋上タービンの振動限度超過故障の原因を特定することができ、手動トラブルシューティングによって発生する人的資源の無駄や時間がかかるという関連技術の問題を解決する。
【0097】
以下、1つの特定実施例によって洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する方法の具体的なステップについて説明する。
実施例
【0098】
ステップ1:ナセルにおいて、2つの振動加速度センサを主軸の中心線に沿って対称に配置し、冗長設計に従って取り付け、ナセルのX及びYの2つの成分の振動加速度の変化を測定し、ナセルの外側の頂部に風力計を配置して風速などの環境データを測定し、タービンハブ回転数テストモジュールによってタービンのインペラの回転数データを測定し、ピッチ角センサによって、タービンのブレードのピッチ角を監視する。
【0099】
ステップ2:振動加速度について、デフォルトの50Hzで監視データをリアルタイムで記録し、タービンが正常に運転する場合、1hの間隔で加速度データを動的に処理し、1s分、すなわち1Hz分のサンプリング周波数の監視結果のみを残し、タービンの運転中に実測加速度が設定された管理閾値を超える場合、振動限度超過故障が発生したとし、50Hzのサンプリング周波数で限度超過前後の2分ずつのデータを自動的に記録する。
【0100】
ステップ3:加速度データにジャンプ異常が発生した否かを判別する。タービンのナセルに設けられた2つの加速度センサのX方向及びY方向の計4組のデータの振幅に突然変化が存在する場合、センサに故障が発生したことを示し、タービンのナセルに設けられた2つの加速度センサのX方向及びY方向の計4組のデータの振幅が近い場合、センサの動作状態が確実で、データにジャンプ異常が発生しておらず、正常な限度超過であり、このデータについてさらなるスペクトル解析を行う。
【0101】
ステップ4:そして、センサによって監視されたX及びYの2つの方向の振動加速度の成分のそれぞれについてフーリエスペクトル解析を行い、タービンの限度超過前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数、限度超過段階の励起周波数及びタービンのインペラ停止後の所定の時間内のタービン固有周波数fsを取得し、タービンの運転励起周波数と固有周波数との偏差が±5%内である場合、共振限度超過故障であると判定し、周波数の偏差が±5%外である場合、非共振限度超過故障であると判定する。
【0102】
ステップ5:共振限度超過故障の場合、故障を引き起こす原因をさらに識別する。インペラの回転数範囲で1P周波数と3P周波数帯幅を計算し、タービンの実測固有周波数が3P周波数帯内であるか否かを判断し、3P周波数帯内である場合、式R3P=fs*60s/3によりタービンの3P共振回転数R3Pを計算し、3P共振回転数区間としてR3Pの±15%とし、タービンの限度超過前のインペラの実測回転数と3P共振回転数区間とに重なりが存在する場合、タービンの振動限度超過の原因が3P自励共振であると認め、それ以外の場合、風場などの外部の要素によりタービンに渦誘起共振が発生したと認める。
【0103】
ステップ6:非共振故障の場合、まず、タービン振動限度超過が台風などの風荷重による振動限度超過であるか否かを判定し、台風の要素を排除する場合、タービンの回転時の受ける力のアンバランスによるものと判定する。その原因としては、一般には、風力発電タービンの内部に機械的な問題が生じて、タービンのインペラの回転中に構造の受ける力のバランスが崩れて、例えば、個別のピッチシステムの同期性が損なわれたり、3本のブレードの標準ゼロベースラインの取り付け位置がずれたり、ギアボックスの内部の主軸受けの摩擦接触面に摩損が発生したり、軸受けの潤滑が不十分であったり、潤滑方式が正しくなかったり、ローター質量が不平衡であったり、インペラの接続部材が緩んだりするなど、振動限度超過故障が発生する。存在し得る故障を1つずつチェックして、故障の原因を特定する。
【0104】
具体的には、フーリエFFTスペクトル解析を行う際に、現場で収集されるデータの長さに限りがあり、周波数分解能が要件を満たさない場合がよくあり、ここで、FFTの周波数分解能=サンプリング周波数/FFT長さである。スペクトル解析の精度を高めるために、振動信号ゼロパディング法によって、振動信号に一定の時間の振幅ゼロの振動信号を追加することによって、FFT長さを効果的に延ばし、周波数分析の間隔を短縮させ、高精度スペクトル解析の結果を取得することができる。
【0105】
振動加速度センサにより現場でテストされた振動信号には、生成および送信プロセス中にさまざまなノイズ干渉情報が含まれている。海洋環境は厳しいため、フーリエスペクトル解析中に時間領域の振動信号をフィルタリングする必要がある。必要に応じてローパスフィルタを配置して、高周波信号をフィルタリングし、洋上風力発電タービンの全体周波数の実際の範囲内の周波数領域データを取得し、干渉信号を除去する。
【0106】
振動加速度センサによるテストデータでは、海洋環境が塩水噴霧や腐食が激しい過酷な環境のため、センサの接合部が影響を受けやすく、センサによるデータの伝送に異常が発生する可能性がある。データが突然に急増し、加速管理のしきい値をはるかに超えると、制御戦略が風力発電タービンを停止制御し、通常の発電に影響を与える。この問題は、データ分析、センサの定期的なメンテナンス、または塩水噴霧や腐食に耐性のある金または銀の金属コネクタを使用してデータケーブルをセンサに接続することで回避できる。
【0107】
本実施例では、上記の実施例及び好ましい実施形態を実現するための、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置が提供され、以上で説明されたため、詳しく説明されない。以下で用いられるように、「モジュール」という用語は、所定の機能を実現するソフトウェア及び/又はハードウェアの組み合わせであってもよい。以下の実施例で説明される装置は、好ましくはソフトウェアで実装されるが、ハードウェア、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせの実装も可能であり、想定され得る。
【0108】
本実施例は、洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置を提供し、図8に示すように、この装置は、第1取得モジュール801と、スペクトル解析モジュール802と、第1決定モジュール803と、第2決定モジュール804と、を含む。
【0109】
第1取得モジュール801は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生した場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前の予め設定された期間内の第1振動加速度データ、振動限度超過故障段階の第2振動加速度データ、及びタービン停止段階の第3振動加速度データを取得する。
【0110】
スペクトル解析モジュール802は、第1振動加速度データ、第2振動加速度データ、及び第3振動加速度データのそれぞれに対してフーリエスペクトル解析を行い、第1振動加速度データに対応する第1周波数、第2振動加速度データに対応する第2周波数、及び第3振動加速度データに対応する第3周波数を得る。第1周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラ正常回転段階のタービンの励起周波数であり、第2周波数は、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したときのタービンの励起周波数であり、第3周波数は、洋上タービン停止段階の固有周波数である。
【0111】
第1決定モジュール803は、第1周波数と第3周波数との間の第1偏差値、及び第2周波数と第3周波数との間の第2偏差値を決定する。
【0112】
第2決定モジュール804は、第1偏差値、第2偏差値、及び予め設定された偏差値に基づき、洋上タービンに共振限度超過故障が発生したか否かを判断し、故障識別結果を得る。
【0113】
いくつかの好適な実施形態では、該装置は、故障識別結果に基づき、故障処理レシピを決定する第3決定モジュールをさらに含む。
【0114】
いくつかの好適な実施形態では、該装置は、洋上タービンに共振限度超過故障が発生した場合、洋上タービンのインペラの回転数範囲に基づいて、洋上タービンのブレードの掃引周波数帯を決定する第4決定モジュールと、第3周波数が掃引周波数帯内であるか否かを判断する第1判断モジュールと、第3周波数が掃引周波数帯内である場合、第3周波数に基づき、掃引周波数帯に対応する共振回転数区間を決定する第5決定モジュールと、共振回転数区間及び洋上タービンに振動限度超過故障が発生する前のインペラの実測回転数に基づき、洋上タービンに自励共振故障が発生したか否かを判定する第6決定モジュールと、をさらに含む。
【0115】
いくつかの好適な実施形態では、該装置は、洋上タービンのナセル内の振動加速度データを取得する第2取得モジュールと、振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得る比較モジュールと、比較結果に基づき、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断する第2判断モジュールと、をさらに含む。
【0116】
いくつかの好適な実施形態では、該装置は、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データを取得する第3取得モジュールと、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づき、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常であるか否かを判断する第3判断モジュールと、第1加速度センサ及び第2加速度センサの動作状態が正常である場合、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データに基づいて、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したか否かを判断する第3判断モジュールと、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する場合、洋上タービンに停止制御命令を送信する送信モジュールと、をさらに含む。
【0117】
いくつかの好適な実施形態では、第3判断モジュールは、第1加速度センサによって収集された振動加速度データ及び第2加速度センサによって収集された振動加速度データをそれぞれ予め設定された閾値と比較し、比較結果を得る比較ユニットと、第1加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、及び/又は第2加速度センサによって収集された振動加速度データが予め設定された閾値よりも大きい場合、洋上タービンに振動限度超過故障が発生したと判定する判定ユニットと、を含む。
【0118】
上記の各モジュール及びユニットの機能についての更なる説明は、上記の対応する実施例と同じであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0119】
本実施例における洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置は、機能ユニットの形で示され、ここでのユニットとは、特定用途集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、1つ又は複数のソフトウェア又は固定プログラムを実行するプロセッサとメモリ、及び/又は上記の機能を提供し得るデバイスを指す。
【0120】
本発明の実施例はまた、上記の図8で示される洋上風力発電タービンの振動限度超過故障を識別する装置を有するコンピュータ機器を提供する。
【0121】
図9を参照すると、図9は、本発明の可能な実施例によるコンピュータ機器の構造模式図であり、図9に示すように、このコンピュータ機器は、1つ又は複数のプロセッサ10と、メモリ20と、高速インターフェースと低速インターフェースとを含む各コンポーネントを接続するためのインターフェースと、を含む。各コンポーネントは、異なるバスを使用して相互に通信可能に接続され、共通のマザーボードに実装されたり、必要に応じて他の方法で実装されたりすることができる。プロセッサは、外部の入出力装置(例えば、インターフェースに結合された表示機器)上にGUIのグラフィック情報を表示するために、メモリに又はメモリ上に記憶される命令を含む、コンピュータ機器内で実行される命令を処理することができる。いくつかの可能な実施形態では、必要に応じて、複数のプロセッサ及び/又は複数のバスを複数のメモリ及び複数のメモリとともに使用することができる。同様に、複数のコンピュータ機器が接続され、各機器は、(例えば、サーバのアレイ、ブレードサーバのセット、又はマルチプロセッサシステムとして)必要な動作の一部を提供する。図9では、1つのプロセッサ10を例に挙げている。
【0122】
プロセッサ10は、中央処理装置、ネットワークプロセッサ、又はこれらの組み合わせであってもよい。なお、プロセッサ10は、ハードウェアチップをさらに含んでもよい。上記のハードウェアチップは、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理デバイス、又はこれらの組み合わせであってもよい。上記プログラマブル論理デバイスは、複雑なプログラマブル論理デバイス、フィールドプログラマブル論理ゲートアレイ、汎用アレイ論理、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0123】
このうち、メモリ20は、少なくとも1つのプロセッサ10によって実行可能な命令を記憶し、少なくとも1つのプロセッサ10に上記の実施例に示される方法を実行させる。
【0124】
メモリ20は、プログラム記憶領域及びデータ記憶領域を含み、プログラム記憶領域は、オペレーティングシステム、少なくとも1つの機能に必要なアプリケーションプログラムを記憶することができ、データ記憶領域は、コンピュータ機器の使用によって作成されたデータなどを記憶してもよい。さらに、メモリ20は、高速ランダムアクセスメモリを含み、少なくとも1つの磁気ディスクメモリデバイス、フラッシュメモリデバイス、又は他の非一時的な固体ステートメモリデバイスなどの非一時的なメモリを含んでもよい。いくつかの可能な実施形態では、メモリ20は、プロセッサ10に対してリモートに配置されたメモリを任意に含んでもよく、これらのリモートメモリは、ネットワークを介してコンピュータ機器に接続され得る。上記ネットワークとしては、例えば、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク、移動通信網、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
メモリ20は、揮発性メモリ、例えばランダムアクセスメモリを含んでもよい。メモリは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク又はソリッドステートドライブなどの不揮発性メモリを含んでもよい。メモリ20は、上記の種類のメモリの組み合わせを含んでもよい。
【0126】
このコンピュータ機器は、このコンピュータ機器が他の機器又は通信ネットワークと通信するための通信インターフェース30をさらに含む。
【0127】
本発明の実施例は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供し、上記の本発明の実施例に係る方法は、ハードウェアやファームウェアにおいて実装されてもよく、又は記憶媒体に記録可能、又はネットワークを介してダウンロードされたリモート記憶媒体又は非一時的な機械読み取り可能な記憶媒体に元々記憶され、ローカル記憶媒体に記憶されるコンピュータコードとして実現することができ、それによって、ここで説明する方法は、汎用コンピュータ、専用プロセッサ、又はプログラマブル若しくは専用ハードウェアを用いた記憶媒体に記憶されるようなソフトウェアで処理されてもよい。記憶媒体は、磁気ディスク、光ディスク、読み取り専用ストレージメモリ、ランダムアクセス記憶メモリ、フラッシュメモリ、ハードディスク又はソリッドステートドライブ等であってもよい。さらに、記憶媒体は、上記の種類のメモリの組み合わせをさらに含んでもよい。コンピュータ、プロセッサ、マイクロプロセッサコントローラ又はプログラマブルハードウェアは、ソフトウェア又はコンピュータコードを記憶又は受信することができる記憶コンポーネントを含み、ソフトウェア又はコンピュータコードは、コンピュータ、プロセッサ又はハードウェアによってアクセスされて実行されると、上記の実施例で示された方法を実現することが理解される。
【0128】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の修正及び変形を行うことができ、かかる修正及び変形は、すべて添付の請求の範囲で規定される範囲内に含まれるものとする。


図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】