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特開2025-15455フラックス及び当該フラックスを含むはんだペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015455
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】フラックス及び当該フラックスを含むはんだペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20250123BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20250123BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20250123BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20250123BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20250123BHJP
   C22C 12/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
H05K3/34 503Z
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
C22C13/00
C22C13/02
C22C12/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109274
(22)【出願日】2024-07-06
(31)【優先権主張番号】23186571.8
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523396772
【氏名又は名称】ヘレウス エレクトロニクス ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】ネイダート,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カース,ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ルース,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA06
5E319AB05
5E319AC01
5E319AC02
5E319AC03
5E319AC04
5E319AC06
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD21
5E319GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接合部のボイドの発生を抑制し、大気下で良好なはんだ付け性を有するフラックス、該フラックスからなるはんだペーストおよびその使用を提供する。
【解決手段】フラックスであって、
(i)30~80重量%の1つ以上の酸性樹脂と、
(ii)10~60重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(iii)0~15重量%の1つ以上のアミンと、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分と、
からなり、10K/分の加熱速度で、合成空気を添加しながら25~350℃の範囲で実施される熱重量分析中に、280℃の温度に達したときに≧50重量%の重量損失を受けることを特徴とする、フラックス、並びに80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%のフラックスと、からなるはんだペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスであって、
(i)30~80重量%の1つ以上の酸性樹脂と、
(ii)10~60重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(iii)0~15重量%の1つ以上のアミンと、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分と、からなり、
10K/分の加熱速度で、合成空気を添加しながら25~350℃の範囲で実施される熱重量分析中に、280℃の温度に達したときに≧50重量%の重量損失を受けることを特徴とする、フラックス。
【請求項2】
前記1つ以上の酸性樹脂が、酸性オリゴエステル及び酸性(メタ)アクリルコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記酸性オリゴエステル及び酸性(メタ)アクリルコポリマーが各々、カルボキシル基含有樹脂である、請求項2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記酸性オリゴエステルが、150~300mg KOH/gの範囲の酸価及び300~600の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項2又は3に記載のフラックス。
【請求項5】
前記酸性オリゴエステルが、200~250mg KOH/gの範囲の酸価及び400~550の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項4に記載のフラックス。
【請求項6】
前記酸性オリゴエステルが、ヒドロキシル構成単位としての1つ以上の異なる低分子量ポリオールと、カルボキシル構成単位としての1つ以上の異なる低分子量ポリカルボン酸と、から構成される、請求項2~5のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項7】
前記酸性オリゴエステルが、1つ若しくは2つの末端カルボキシル基を有する直鎖状酸性オリゴエステル、又はそのようなオリゴエステルの混合物である、請求項2~6のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項8】
前記直鎖状酸性オリゴエステルが、1つ以上の異なる低分子量ジオールと、1つ以上の異なる低分子量ジカルボン酸と、から構成される、請求項7に記載のフラックス。
【請求項9】
前記酸性(メタ)アクリルコポリマーが、100~350mg KOH/gの範囲の酸価及び1000~3500の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項2~8のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項10】
前記酸性(メタ)アクリルコポリマーが、150~300mg KOH/gの範囲の酸価及び1000~3000の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項9に記載のフラックス。
【請求項11】
100~250mg KOH/gの範囲のフラックス酸価を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項12】
80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%の、請求項1~11のいずれか一項に記載のフラックスと、からなる、はんだペースト。
【請求項13】
電子部品を基板に接続するための、又ははんだ付着物を基板上に生成するための、請求項12に記載のはんだペーストの、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだペースト用のフラックス、及び特に電子部品を基板に取り付けるためのフラックスを含むはんだペーストに関する。
【0002】
はんだペースト、特に軟質はんだペーストは、主に電子回路の製造に使用され、電子部品と基板との間、又はより正確にはこの目的のために提供される後者の接触面の間に機械的、電気的、及び熱的接続部を作り出すために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本特許出願の意味の範囲内における電子部品の例には、ダイオード、LED(発光ダイオード)、ダイ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IC(集積回路)、センサ、ヒートシンク、抵抗器、コンデンサ、コイル、接続素子(例えばクリップ)、ベースプレート、アンテナなどが含まれる。
【0004】
本特許出願の意味の範囲内における基板の例には、リードフレーム、PCB(プリント回路板)、フレキシブル電子機器、セラミック基板、DCB基板(ダイレクトボンド銅基板)、IMS(絶縁金属基板)などのセラミック金属基板などが含まれる。
【0005】
電子部品は、典型的には、はんだペーストを介して基板に接触又は適用される。はんだペーストを加熱して、例えばリフロー処理によりペースト中のはんだ(はんだ金属、はんだ合金)を溶融させる。はんだが冷却して固化した後、電子部品と基板とは強固に互いに接合される。
【0006】
はんだ粉末に加えて、はんだペーストは、典型的にはフラックスを含有する。フラックスは、とりわけ、はんだ粉末、電子部品及び基板の表面の酸化膜(oxide layer)を溶解し、それによってはんだ付けプロセス時の濡れ性を向上させる役割を担っている。
【0007】
はんだペーストの一部を形成するフラックスは、典型的には、特にコロホニーなどの天然樹脂に基づく。更に、有機溶媒、緩衝塩基、例えばアミン、及び活性化剤、例えばカルボン酸又はハロゲン化合物が、典型的には、このようなフラックス中の成分として含まれる。
【0008】
本発明の課題は、はんだペーストから製造されたはんだ接合部のボイドの形態における欠陥、例えばガス又は空気の含有率が可能な限り低いはんだペーストを提供することである。見出されるはんだペーストはまた、空気の存在下で、すなわち、真空はんだ付け又は不活性ガス下でのはんだ付けなどの、大気酸素を排除するための特別な手段をとる必要なく、良好なはんだ付け性を有するべきである。
【0009】
本出願人は、この課題を解決するフラックス、より厳密に言えばこの課題を解決する、フラックスを含むはんだペーストを開発することができた。したがって、本発明は、フラックスであって、
(i)30~80重量%(重量%)、好ましくは40~70重量%の1つ以上の酸性樹脂と、
(ii)10~60重量%、好ましくは20~50重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(iii)0~15重量%、好ましくは4~12重量%の1つ以上のアミンと、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分と、からなり、
10K/分の加熱速度で、合成空気を添加しながら25~350℃の範囲で実施される熱重量分析(TGA)中に、280℃の温度に達したときに≧50重量%の重量損失を受けることを特徴とする、フラックスを提供することにある。
【0010】
成分(iii)及び/又は(iv)の存在に応じて、本発明によるフラックスは、それに従って成分(i)+(ii)、又は(i)+(ii)+(iii)、又は(i)+(ii)+(iv)、又は(i)+(ii)+(iii)+(iv)からなることができ、これらの選択肢の各々において、それぞれの成分の重量%の合計は100重量%である。
【0011】
本発明によるフラックスは、成分(i)として30~80重量%、好ましくは40~70重量%の1つ以上の酸性樹脂を含む。1つ以上の酸性樹脂は、酸性オリゴエステル及び酸性(メタ)アクリルコポリマーからなる群から選択されてもよい。「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」及び/又は「アクリル」を意味する。酸性オリゴエステル及び酸性(メタ)アクリルコポリマーは各々、特にカルボキシル基含有樹脂、すなわち、それらの酸性特性がそれらのカルボキシル基に起因する樹脂である。
【0012】
第1の実施形態では、本発明によるフラックスの成分(i)は、1つ以上の異なる酸性オリゴエステルの形態の1つ以上の酸性樹脂からなる。
【0013】
第2の実施形態では、本発明によるフラックスの成分(i)は、1つ以上の異なる酸性(メタ)アクリルコポリマーの形態の1つ以上の酸性樹脂からなる。
【0014】
第3の実施形態では、本発明によるフラックスの成分(i)は、1つ以上の酸性オリゴエステルと1つ以上の酸性(メタ)アクリルコポリマーとの組み合わせからなる。
【0015】
可能な成分(i)として本明細書で言及される酸性オリゴエステルは、150~300mg KOH/gの範囲の酸価及び300~600の範囲の重量平均分子量Mを有する。200~250mg KOH/gの範囲の酸価を有し、400~550の範囲の重量平均分子量Mを有する酸性オリゴエステルが好ましい。特に好ましくは、それは、200~250mg KOH/gの範囲の酸価を有し、400~550の範囲の重量平均分子量Mを有する一つのみの酸性オリゴエステルに関する。本明細書では、1つの酸性オリゴエステルといくつかの異なる酸性オリゴエステルとが区別される。誤解を避けるために、「酸性オリゴエステル」という用語は、定性的及び定量的に定義された構造、すなわち、タイプ及び量によって定義された構成単位からなる構造を有するオリゴマー又はオリゴマーポリエステルの混合物を指す。重量平均分子量Mから既に分かるように、「酸オリゴエステル」も分子量分布を有し、すなわち、異なる大きさのオリゴマーポリエステル分子の混合物として存在する。したがって、「いくつかの異なる酸性オリゴエステル」という用語は、異なるオリゴマー混合物の組み合わせ、又はいくつかの異なる構造のオリゴマーポリエステルを指し、これらの異なるオリゴマーポリエステルの各々は、モル質量分布を有する。
【0016】
本明細書及び実施例において使用される用語「酸価」は、DIN EN ISO 2114に従ってmg KOH/g(ミリグラムKOH/グラム)で決定することができる酸価(SZ)を指す。
【0017】
特に断りのない限り、本明細書で引用される全ての規格は、本特許出願の優先日時点で普及している版である。
【0018】
本明細書及び実施例において言及される重量平均分子量Mは、当業者に公知の通常の方法で、GPCによって、例えばDIN 55672-1(2016年3月;固定相として架橋ポリスチレン、液相としてテトラヒドロフラン、ポリスチレン標準、23℃)に従って決定することができる。
【0019】
酸性オリゴエステルは、ヒドロキシル構成単位としての1つ以上の異なる低分子量ポリオールと、カルボキシル構成単位としての1つ以上の異なる低分子量ポリカルボン酸と、から構成されることができる。
【0020】
本明細書で使用される「低分子量」という用語は、それらの分子及び構造式によって定義された、モル質量分布を有していない化合物を指す。
【0021】
酸性オリゴエステルは、好ましくは、1つ若しくは2つの末端カルボキシル基を有する直鎖状酸性オリゴエステル、又はそのようなオリゴエステルの混合物である。好ましい直鎖状酸性オリゴエステルは、1つ以上の異なる低分子量ジオールと、1つ以上の異なる低分子量ジカルボン酸と、から構成されることができる。低分子量ジオールの例としては、脂肪族及び脂環式ジオール、例えばエチレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルヘキサンジオール、水素化ビスフェノール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びブチルエチルプロパンジオールが挙げられる。好ましくは、低分子量ジオールは、低分子量脂環式ジオールからなる群から選択される。低分子量ジカルボン酸としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、及びトリデカン二酸が挙げられる。好ましくは、ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、例えば異性体フタル酸、特にオルトフタル酸からなる群から選択される。
【0022】
ヒドロキシル構成単位としての低分子量ポリオールとカルボキシル構成単位としての低分子量ポリカルボン酸との重縮合によって酸性オリゴエステルを調製する方法は、当業者、すなわち合成樹脂化学者又はポリマー化学者に周知である。典型的には溶融状態で行われる重縮合で、エステル化反応中に水が分離され、水は、反応混合物から、特に蒸留によって、場合によっては共沸的に、又は真空を適用することによる支持によって除去される。もちろん、ポリカルボン酸(利用可能な場合)の代わりに、対応する酸無水物を使用することができ、これは、開環によってヒドロキシル構成単位とエステル化することができる。
【0023】
可能な成分(i)として本明細書で言及される酸性(メタ)アクリルコポリマーは、100~350mg KOH/g、好ましくは150~300mg KOH/gの範囲の酸価を有する。好ましくは、これは、一つのみのそのような酸性(メタ)アクリルコポリマーに関する。酸性(メタ)アクリルコポリマーは、例えば、1000~3500の範囲、又は好ましくは1000~3000の範囲の重量平均分子量Mを有する。100~350mg KOH/gの範囲の酸価を有し、1000~3500の範囲の重量平均分子量Mを有する酸性(メタ)アクリルコポリマーが好ましい。150~300mg KOH/gの範囲の酸価を有し、1000~3000の範囲の重量平均分子量Mを有する酸性(メタ)アクリルコポリマーが特に好ましい。これらは、ラジカル共重合によって当業者に知られている通常の方法で調製することができる(メタ)アクリル化合物のコポリマーであり、コポリマーが、ビニル化合物及び/又は他のオレフィン性不飽和ラジカル共重合性化合物などの(メタ)アクリルタイプのコモノマー以外のコモノマーを、総酸性(メタ)アクリルコポリマーに基づいて、<50重量%の総重量割合で含むこともまた可能である。総(メタ)アクリルコポリマーに基づいて、>50重量%を構成する(メタ)アクリル化合物の例は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドである。ビニル化合物の例には、ビニルエステル、ビニルエーテル、スチレンなどの化合物が含まれる。
【0024】
酸性(メタ)アクリルコポリマーが、>0℃の領域であるが概ね≦105℃であるガラス転移温度(T)を有する場合が好ましい。ガラス転移温度は、10K/分の加熱速度でDIN 51007に基づいて示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定することができる。
【0025】
上で説明したタイプの酸性(メタ)アクリルコポリマーは、市販されている。それらの例としては、Indulor Chemie GmbH製のIndurezの名称による製品、及びBASF製のJoncryl(登録商標)の名称による製品が挙げられる。
【0026】
成分(ii)として、本発明によるフラックスは、10~60重量%、好ましくは20~50重量%の少なくとも1つの有機溶媒を含む。例には、25℃で液体であるジオール、アルコール、エーテルアルコール、及びケトン、特にトリメチルプロパノール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、グリコールエーテル、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、n-デシルアルコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、テルピネオール、及びイソプロパノール、並びにこれらの混合物が含まれる。グリコールエーテルの例には、モノ-、ジ-、トリプロピレングリコールメチルエーテル、モノ-、ジ-、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、モノ-、ジ-、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、並びにこれらの混合物が含まれる。誤解を避けるために、ここで例として挙げたジオールは、本発明によるフラックスを配合する際にタイプ(ii)成分として意図的に添加されるジオールに関する。当該ジオールは、任意の酸性オリゴエステルの合成においてヒドロキシル構成単位として使用され、酸性オリゴエステルに組み込まれない(縮合されない)微量のジオールの形態の、本発明によるフラックス中の任意の意図しない及び不可避の不純物と混同されるべきではない。
【0027】
成分(iii)として、本発明によるフラックスは、0~15重量%、好ましくは4~12重量%の1つ以上のアミンを含み、すなわち、本発明によるフラックスは、1つ以上のアミンを含んでもよく、又はそれを含まなくてもよく、好ましくは1つ以上のアミンが含まれる。アミンの例としては、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピルエチレンジアミン、N-ココ-1,3-ジアミノプロパン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン及び1,10-ジアミノデカン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ビス(2-メチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水素化獣脂アルキルアミン、水素化(獣脂アルキル)ジメチルアミン、並びに水素化ビス(獣脂アルキル)メチルアミンが挙げられる。
【0028】
成分(iv)として、本発明によるフラックスは、0~20重量%の、成分(i)~(iii)とは異なる1つ以上の成分を含み、すなわち、本発明によるフラックスは、1つ以上のタイプ(iv)の成分を含んでもよく、又はそれを含まなくてもよい。タイプ(iv)の成分の例には、特に増粘剤が含まれるが、活性化剤、消泡剤、湿潤助剤及び/又は安定剤も含んでもよい。しかしながら、過小評価されるべきではない本発明によるフラックスの1つの利点は、それが必ずしも活性化剤を必要としないこと、すなわち、それが活性化剤なしでもまた配合され得ることであり得る。
【0029】
増粘剤の例には、エチルセルロース、水添ヒマシ油、グリセロール-トリス-12-ヒドロキシステアリン、ポリアミド及び変性グリセロール-トリス-12-ヒドロキシステアリンが含まれる。
【0030】
活性化剤として有用な低分子量カルボン酸の例には、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、及びトリデカン二酸が含まれる。誤解を避けるために、ここで例として言及されるジカルボン酸は、本発明によるフラックスを配合するときにタイプ(iv)成分として意図的に添加される低分子量カルボン酸に関するものであり、タイプ(i)酸性オリゴエステルの合成においてカルボキシル構成単位として使用され、オリゴエステルに組み込まれない(縮合されない)微量のカルボン酸の形態の本発明によるフラックス中の任意の意図しない及び不可避の不純物と混同されるべきではない。
【0031】
活性化剤として有用なハロゲン含有化合物の例には、アニリン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン臭化水素酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、及びトランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオールが含まれる。
【0032】
本発明によるフラックスは、10K/分の加熱速度で、合成空気を添加しながら25~350℃の範囲で実施されるTGA中に、280℃の温度に達したときに≧50重量%の重量損失を受けるという事実により特徴付けられる。合成空気は、80体積%(体積%)の窒素と20体積%の酸素とのガス混合物である。当業者にとって、TGAが通常、10~30mgの範囲の本発明によるフラックスの重量を扱うことに言及する必要はない。当該TGAにおいて観察される重量損失は、蒸発及び/又は分解及び/又は酸化の結果であり得る。本発明によるフラックスの開発の際に、本明細書に記載された重量損失挙動は、タイプ及び量に関して成分(i)の選択によって顕著に影響され得ることが見出され、これに関して、当業者の注意は、特に、成分(i)のタイプ及び量に関する前述の記述に向けられる。当業者には、成分(i)を選択するための有用な示唆が与えられている。
【0033】
好ましくは、本発明によるフラックス、すなわち、成分(i)+(ii)又は(i)+(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iv)又は(i)+(ii)+(iii)+(iv)からなるフラックス全体は、100~250mg KOH/gの範囲、好ましくは120~220mg KOH/gの範囲のフラックス酸価(FMSZ)を有する。本明細書及び実施例において言及されるフラックス酸価は、IPC TM-650 2.3.13(日付け06/2004の改訂A)に従って決定することができる。フラックス酸価は、少なくとも実質的に又は完全に、成分(i)のカルボキシル基及び成分(iv)によって任意選択で与えられるカルボキシル基から形成される。
【0034】
本発明は、80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%の本発明によるフラックス、すなわち前述の実施形態の1つにおける本発明によるフラックスと、を含む、はんだペーストを提供することにある。本発明によるはんだの重量百分率及びフラックスの重量百分率の合計は100重量%である。
【0035】
上述したように、本発明によるはんだペーストは、80~92重量%の1つ以上の異なるはんだ、特にスズをベースとするはんだ(少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも83重量%、特に90~99.5重量%のスズを含むはんだ合金)又はビスマス/スズをベースとするはんだ(50~60重量%のビスマス及び40~50重量%のスズを含むはんだ合金)を含む。
【0036】
はんだは、150~350℃の範囲、好ましくは180~300℃の範囲の液相線温度を有することが好ましい。
【0037】
はんだは、本発明によるはんだペースト中に、はんだペーストに対して通常であるままに、はんだ粉末として存在する。はんだ粉末を構成するはんだボールのボールサイズは、IPC J-STD-005A規格による分類のいずれかに対応することができ、すなわち、本発明によるはんだペーストは、タイプ範囲T1~T7内の任意のタイプのボールサイズのはんだボールを有することができる。
【0038】
好ましくは、本発明によるはんだペーストは、50~250Pa・sの粘度を有する。本明細書において言及される粘度は、50mmのプレート直径及び400μmの測定ギャップを有するプレート-プレートレオメーター(例えば、Anton-Paar製のプレート-プレートレオメーターPhysica MCR 150)を25℃及び10s-1の剪断速度で使用して決定することができる。
【0039】
本発明の更なる目的は、本発明によるはんだペーストを製造するための方法である。
【0040】
本発明によるはんだペーストを製造するための方法は、以下の:
本発明によるフラックスの成分を混合する工程と、
上述のように、はんだ粉末を添加する工程と、を含む。
【0041】
はんだ粉末は、好ましくは、複数回に分けて、撹拌しながら、本発明によるフラックス成分の調製された混合物に、概して加熱せずに添加される。
【0042】
本発明によるはんだペーストを使用して、電子部品を基板に接続することができる。また、これを使用して、はんだ付着物を基板上に生成することもできる。
【0043】
電子部品を基板に接続する場合、基板の接触面と電子部品の接触面とを、本発明によるはんだペーストを介して接合させる。
【0044】
本発明によるはんだペーストを使用して電子部品を基板に取り付ける方法は、以下の:
a)接触面を有する電子部品を提供する工程と、
b)接触面を有する基板を提供する工程と、
c)はんだペーストを電子部品の接触面及び/又は基板の接触面に適用する工程と、
d)電子部品の接触面を、はんだペーストを使用して基板の接触面に接合させる工程と、
e)はんだペーストをはんだの液相線温度より高く加熱し、その後、はんだを冷却して固化させ、電子部品と基板との間に強固な接合部を形成する工程と、を含み得る。
【0045】
工程a)及びb)は、自明であり、これ以上の説明は必要がない。
【0046】
工程c)では、本発明によるはんだペーストは、当業者に知られている従来の方法、例えば、スクリーン若しくはステンシル印刷、又はディスペンス若しくはジェッティングによって、一方又は両方の接触面に適用することができる。
【0047】
工程d)では、電子部品と基板との接触面を、はんだペーストを使用して互いに接合させることができる。つまり、電子部品と基板とから、それらの接触面の間にはんだペーストを使用して、サンドイッチ状配置を作り出すことができる。
【0048】
工程e)では、はんだペーストをはんだの液相線温度より高く加熱することにより、サンドイッチアセンブリにはんだ付けすることで、はんだの冷却及び固化の後に、はんだペーストを介して電子部品と基板との間に頑丈な接続部が形成される。はんだペーストは、好ましくは、はんだが液相に移行するが、電子部品及び/又は基板を損傷しないように加熱される。サンドイッチアセンブリ、より厳密に言えばはんだペーストは、好ましくは、はんだの液相線温度よりも5~60℃高い、好ましくは10~50℃高い温度に加熱される。
【0049】
本発明によるフラックスを含むはんだペーストは、それから製造されたはんだ接合部においてわずかにしか、又は全く空洞を形成しないことを特徴とする。本発明によるフラックスの前述のフラックス酸価が増すにつれて、特に、既に好ましいとして言及した>120~220mg KOH/gの範囲で増すにつれて、本発明によるフラックスを含むはんだペーストのはんだ付け性は、空気の存在下で改善する。
【実施例0050】
実施例1.1 (1,4-シクロヘキサンジメタノール及びo-フタル酸からの酸性オリゴエステルの調製):100gの1,4-シクロヘキサンジメタノール及び150gのo-フタル酸を、透明で気泡のない組成物が得られるまで、ビーカー内で一定に撹拌しながら145℃に加熱した。次いで、得られた組成物を室温で放冷した。得られたオリゴエステルの酸価は、215mg KOH/gであった。重量平均分子量Mは、494であった。
【0051】
実施例1.2 (グリセロール及びo-フタル酸からの酸性オリゴエステルの調製):100gのグリセロール及び150gのo-フタル酸を、透明で気泡のない組成物が得られるまで、ビーカー内で一定に撹拌しながら145℃に加熱した。次いで、得られた組成物を室温で放冷した。得られたオリゴエステルの酸価は、220mg KOH/gであった。重量平均分子量Mは、508であった。
【0052】
実施例1.3 (2-エチル-1,3-ヘキサンジオール及びo-フタル酸無水物からの酸性オリゴエステルの調製):100gの2-エチル-1,3-ヘキサンジオール及び150gのo-フタル酸無水物を、透明で気泡のない組成物が得られるまで、ビーカー内で一定に撹拌しながら145℃に加熱した。次いで、得られた組成物を室温で放冷した。得られたオリゴエステルの酸価は、210mg KOH/gであった。重量平均分子量Mは、497であった。
【0053】
フラックスの調製
実施例1.1、1.2及び1.3からの酸性オリゴエステルの各々を、表1に従ってジエチレングリコールモノヘキシルエーテル中に110℃で溶解した。次いで、混合物を80℃に冷却し、更なる成分を添加し、表1に従って均質化した。
【0054】
他の全てのフラックスについて、成分を表1に従って組み合わせ、均質化した。
【0055】
はんだペーストの調製
はんだペーストを調製するために、11重量部のフラックスを89重量部のはんだ粉末(SnAgCu:Sn 96.5重量%、Ag 3.0重量%、Cu 0.5重量%、IPC J-STD-005A規格によるタイプ4)と混合して、はんだペーストを形成した。
【0056】
重量損失挙動に関するフラックスの熱重量分析(TGA)
熱重量分析は、熱天秤(Netzsch製のTG 209 F1 Libra)を用いて行った。この目的のために、表1に列挙されたフラックスの各々の10.0mgの試料量を酸化アルミニウムるつぼに秤量した。TGAは、合成空気(80体積%の窒素及び20体積%の酸素)中、25℃~350℃の範囲で、10K/分の加熱速度で行った。280℃に達したときの重量損失を記録した。
【0057】
はんだ付け箇所における欠陥率の決定
ボイド率を決定するために、5つのプリント回路基板(キャリア材料:FR4/接触面:浸漬スズ)を、ステンシル印刷(EKRA製のX5 Professional)を使用して、それらの表面全体にわたってはんだペーストで印刷した。印刷ステンシルの厚さは120μmであった。次に、プリント回路基板に、ピックアンドプレース機(Siemens製のSiplace X2)を使用して、各々2つのMLF48-6mmダミー部品(Amkor 48LD/MLF 6×6mm DC Sn)を取り付け、通常の大気条件下でリフロー処理に供した。この目的のために、組み立てられたプリント回路基板を、以下の温度設定で76.5cm/分の速度でリフローオーブン(レーム製のVXS nitro 3150 type 634)に通した:ゾーン1:150℃、ゾーン2:160℃、ゾーン3:175℃、ゾーン4:180℃、ゾーン5及び6:200℃、ゾーン7:230℃、ゾーン8:255℃及びゾーン9:265℃。
【0058】
AXI(Phoenix micromex GE PA1864からの自動X線検査)を使用して、ダミー部品間のボイド率を評価した。この目的のために、はんだ付け箇所の2D X線画像を撮影し、捕捉されたガス体積の割合を分析した。算術平均を総はんだ付け面積(接触面積4.6mm×4.6mm)の百分率として得て、結果を以下のボイドクラスに割り当てた:
ボイドクラス:
+:<25%
-:≧25~<40%
--:≧40%
【0059】
通常の大気条件下での湿潤能力の試験
通常の大気条件下でのIPC-TM-650(1/95)の試験方法2.4.45による溶融試験を使用して、はんだペーストの濡れ性を評価した。この目的のために、試験すべきはんだペーストを銅板(20mm×20mm×0.5mm)に適用した。銅板の表面に酸化膜がある場合は、P600級のサンドペーパーで光輝金属仕上げになるまで研磨し、アルコールで洗浄した。銅板の表面が明るく清浄なものは、アルコールだけで洗浄した。調製した銅板に、ステンシルを使用して印刷した。それを行うために、テンプレートの開口部が銅板の中央にくるように、テンプレートを銅板にしっかりと押し付けた。試験すべきはんだペーストをへら上に置き、ステンシル上にはんだペーストがなくなるまで、最初は軽く、次いでやや強く圧力を加えて、ステンシルの開口部の上に広げた。その後、ステンシルを慎重に剥がし、ステンシルによって画定されたパターンを保持した。印刷された銅板を、200℃(すなわち、はんだの液相線温度より低い温度に設定されている)の第1の加熱プレート上に2分間置いた後、直ちにはんだの液相線温度より50℃高い温度の第2の加熱プレート上に置いた。はんだペースト又ははんだが溶融した後、銅板を更に5秒間第2の加熱プレート上に放置し、取り出して冷却した。
【0060】
はんだペーストが冷却された後、それがステンシルの開口部のサイズに対応したスポットに溶融しているのか又は複数の小さなスポットに溶融しているのか、及び溶融した後のはんだペーストが鋭いエッジを有しているかどうかを評価した。また、表面が光沢であるのか又はマットであるのかを評価した。
【0061】
はんだペーストを4つのクラスに分類した。
クラス1:再溶融した面積が、以前にはんだペーストで印刷した面積よりも大きかった。
クラス2:再溶融した表面が、以前にはんだペーストで印刷した表面に相当した。
クラス3:再溶融した面積が、以前にはんだペーストで印刷した面積よりも小さかった(わずかにはんだはじきが見られる)。
クラス4:はんだペーストが1つ以上のはんだボールを形成しており、銅板を濡らしていないか、完全に溶融していなかった。
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスであって、
(i)30~80重量%の1つ以上の酸性樹脂と、
(ii)10~60重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(iii)0~15重量%の1つ以上のアミンと、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分と、からなり、
10K/分の加熱速度で、合成空気を添加しながら25~350℃の範囲で実施される熱重量分析中に、280℃の温度に達したときに≧50重量%の重量損失を受けることを特徴とする、フラックス。
【請求項2】
前記1つ以上の酸性樹脂が、酸性オリゴエステル及び酸性(メタ)アクリルコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記酸性オリゴエステル及び酸性(メタ)アクリルコポリマーが各々、カルボキシル基含有樹脂である、請求項2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記酸性オリゴエステルが、150~300mg KOH/gの範囲の酸価及び300~600の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項2又は3に記載のフラックス。
【請求項5】
前記酸性オリゴエステルが、200~250mg KOH/gの範囲の酸価及び400~550の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項4に記載のフラックス。
【請求項6】
前記酸性オリゴエステルが、ヒドロキシル構成単位としての1つ以上の異なる低分子量ポリオールと、カルボキシル構成単位としての1つ以上の異なる低分子量ポリカルボン酸と、から構成される、請求項2に記載のフラックス。
【請求項7】
前記酸性オリゴエステルが、1つ若しくは2つの末端カルボキシル基を有する直鎖状酸性オリゴエステル、又はそのようなオリゴエステルの混合物である、請求項2に記載のフラックス。
【請求項8】
前記直鎖状酸性オリゴエステルが、1つ以上の異なる低分子量ジオールと、1つ以上の異なる低分子量ジカルボン酸と、から構成される、請求項7に記載のフラックス。
【請求項9】
前記酸性(メタ)アクリルコポリマーが、100~350mg KOH/gの範囲の酸価及び1000~3500の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項2に記載のフラックス。
【請求項10】
前記酸性(メタ)アクリルコポリマーが、150~300mg KOH/gの範囲の酸価及び1000~3000の範囲の重量平均分子量Mを有する、請求項9に記載のフラックス。
【請求項11】
100~250mg KOH/gの範囲のフラックス酸価を有する、請求項1に記載のフラックス。
【請求項12】
80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%の、請求項1に記載のフラックスと、からなる、はんだペースト。
【請求項13】
電子部品を基板に接続するための、又ははんだ付着物を基板上に生成するための、請求項12に記載のはんだペーストの、使用。