(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015456
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】フラックス及び当該フラックスを含むはんだペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20250123BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20250123BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20250123BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20250123BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20250123BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
H05K3/34 503Z
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
C22C12/00
C22C13/00
C22C13/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109279
(22)【出願日】2024-07-06
(31)【優先権主張番号】23186570.0
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523396772
【氏名又は名称】ヘレウス エレクトロニクス ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】カース,ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ネイダート,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルース,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA06
5E319AB05
5E319AC02
5E319AC03
5E319AC04
5E319AC06
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD21
5E319GG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な粘度、貯蔵安定性を有し、大気下で良好なはんだ付け性を有するフラックス、該フラックスからなるはんだペーストおよびその使用を提供する。
【解決手段】フラックスであって、
(i)30~80重量%の、100~350mgKOH/gの範囲の酸価を有し、1000~5000の範囲の重量平均分子量Mwを有する1つ以上の酸性(メタ)アクリルコポリマーと、
(ii)10~60重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(iii)0~15重量%の1つ以上のアミンと、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分と、
からなる、フラックス、並びに80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%のフラックスと、からなるはんだペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスであって、
(i)30~80重量%の、100~350mg KOH/gの範囲の酸価を有し、1000~5000の範囲の重量平均分子量Mwを有する1つ以上の酸性(メタ)アクリルコポリマーと、
(ii)10~60重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(iii)0~15重量%の1つ以上のアミンと、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分と、からなる、フラックス。
【請求項2】
前記酸価が150~300mg KOH/gの範囲であり、前記重量平均分子量Mwが1000~3000の範囲である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記酸性(メタ)アクリルコポリマーが、>0℃~≦105℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記フラックスが、100~250mg KOH/gの範囲のフラックス酸価(FMSZ)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項5】
80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%の、請求項1~4のいずれか一項に記載のフラックスと、からなる、はんだペースト。
【請求項6】
電子部品を基板に接続するための、又ははんだ付着物を基板上に生成するための、請求項5に記載のはんだペーストの、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだペースト用のフラックス、及び特に電子部品を基板に取り付けるためのフラックスを含むはんだペーストに関する。
【0002】
はんだペースト、特に軟質はんだペーストは、主に電子回路の製造に使用され、電子部品と基板との間、又はより正確にはこの目的のために提供される後者の接触面の間に機械的、電気的、及び熱的接続部を作り出すために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本特許出願の意味の範囲内における電子部品の例には、ダイオード、LED(発光ダイオード)、ダイ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IC(集積回路)、センサ、ヒートシンク、抵抗器、コンデンサ、コイル、接続素子(例えばクリップ)、ベースプレート、アンテナなどが含まれる。
【0004】
本特許出願の意味の範囲内における基板の例には、リードフレーム、PCB(プリント回路板)、フレキシブル電子機器、セラミック基板、DCB基板(ダイレクトボンド銅基板)、IMS(絶縁金属基板)などの金属セラミックス基板などが含まれる。
【0005】
電子部品は、典型的には、はんだペーストを介して基板に接触又は適用される。はんだペーストを加熱して、例えばリフロー処理によりペースト中のはんだ(はんだ金属、はんだ合金)を溶融させる。はんだが冷却して固化した後、電子部品と基板とは強固に互いに接合される。
【0006】
はんだ粉末に加えて、はんだペーストは、典型的にはフラックスを含有する。フラックスは、とりわけ、はんだ粉末、電子部品及び基板の表面の酸化膜(oxide layer)を溶解し、それによってはんだ付けプロセス時の濡れ性を向上させる役割を担っている。
【0007】
はんだペーストの一部を形成するフラックスは、典型的には、特にコロホニーなどの天然樹脂に基づく。更に、有機溶媒、緩衝塩基、例えばアミン、及び活性化剤、例えばカルボン酸又はハロゲン化合物が、典型的には、このようなフラックス中の成分として含まれる。
【0008】
本発明の目的は、改善された粘度を有し、ひいては改善された貯蔵安定性を有し、好ましくは空気の存在下で改善されたはんだ付け性も有し、すなわち、真空はんだ付け又は不活性ガス下でのはんだ付けなどの大気酸素を排除するための特別な手段を更に講じる必要なしに良好なはんだ付け性を有する、はんだペーストを提供することである。高い粘度安定性は、同様に、一貫した加工性、例えば特に一貫した印刷適性と連携する。
【0009】
本出願人は、この課題を解決するフラックス、より厳密に言えばこの課題を解決する、フラックスを含むはんだペーストを開発することができた。したがって、本発明は、フラックスであって、
(i)30~80wt.%(重量%)、好ましくは35~70重量%の、100~350mg KOH/gの範囲の酸価を有し、1000~5000の範囲の重量平均分子量Mwを有する1つ以上の酸性(メタ)アクリルコポリマー、
(ii)10~60重量%、好ましくは20~50重量%の少なくとも1つの有機溶媒、
(iii)0~15重量%、好ましくは4~12重量%の1つ以上のアミン、
(iv)0~20重量%の、成分(i)~(iii)以外の1つ以上の成分、
からなる、フラックスを提供することにある。
【0010】
「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」及び/又は「アクリル」を意味する。
【0011】
本明細書及び実施例において使用される用語「酸価」は、DIN EN ISO 2114に従ってmg KOH/g(ミリグラムKOH/グラム)で決定することができる酸価(SZ)を指す。
【0012】
特に断りのない限り、本明細書で引用される全ての規格は、本特許出願の優先日時点で普及している版である。
【0013】
本明細書及び実施例において言及される重量平均分子量Mwは、当業者に公知の通常の方法で、GPCによって、例えばDIN 55672-1(2016年3月;固定相として架橋ポリスチレン、液相としてテトラヒドロフラン、ポリスチレン標準、23℃)に従って決定することができる。
【0014】
成分(iii)及び/又は(iv)の存在に応じて、フラックスは、それに従って成分(i)+(ii)、又は(i)+(ii)+(iii)、又は(i)+(ii)+(iv)、又は(i)+(ii)+(iii)+(iv)からなることができ、これらの選択肢の各々において、それぞれの成分の重量%の合計は100重量%である。
【0015】
成分(i)として、本発明によるフラックスは、30~80重量%、好ましくは35~70重量%の1つ以上の異なる酸性(メタ)アクリルコポリマーを含む。好ましくは、それは1つのみの酸性(メタ)アクリルコポリマーである。酸性(メタ)アクリルコポリマーは、100~350mg KOH/g、好ましくは150~300mg KOH/gの範囲の酸価を有する。酸性(メタ)アクリルコポリマーは、1000~5000の範囲、好ましくは1000~3000の範囲、特に1500~2500の範囲の重量平均分子量Mwを有する。150~300mg KOH/gの範囲の酸価及び1000~3000又は1500~2500の範囲の重量平均分子量Mwを有する酸性(メタ)アクリルコポリマーが好ましい。これらは、ラジカル共重合によって当業者に知られている通常の方法で調製することができる(メタ)アクリル化合物のコポリマーであり、コポリマーが、ビニル化合物及び/又は他のオレフィン性不飽和ラジカル共重合性化合物などの(メタ)アクリルタイプのコモノマー以外のコモノマーを、総酸性(メタ)アクリルコポリマーに基づいて、<50重量%の総重量割合で含むことも可能である。総(メタ)アクリルコポリマーに基づいて、>50重量%を構成する(メタ)アクリル化合物の例は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドである。ビニル化合物の例には、ビニルエステル、ビニルエーテル、スチレンなどの化合物が含まれる。
【0016】
酸性(メタ)アクリルコポリマーが、>0℃の範囲、但し概ね≦105℃であるガラス転移温度(Tg)を有する場合が好ましい。ガラス転移温度は、10K/分の加熱速度でDIN 51007に基づいて動的示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定することができる。
【0017】
上で説明したタイプの酸性(メタ)アクリルコポリマーは、市販されている。それらの例は、Indulor Chemie GmbH製のIndurezという名称の製品として、及びBASF製のJoncryl(登録商標)という名称の製品として見出すことができる。
【0018】
成分(ii)として、本発明によるフラックスは、10~60重量%、好ましくは20~50重量%の少なくとも1つの有機溶媒を含む。例には、25℃で液体であるジオール、アルコール、エーテルアルコール、及びケトン、特にトリメチルプロパノール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、グリコールエーテル、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、n-デシルアルコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、テルピネオール、及びイソプロパノール、並びにこれらの混合物が含まれる。グリコールエーテルの例には、モノ-、ジ-、トリプロピレングリコールメチルエーテル、モノ-、ジ-、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、モノ-、ジ-、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0019】
成分(iii)として、本発明によるフラックスは、0~15重量%、好ましくは4~12重量%の1つ以上のアミンを含み、すなわち、本発明によるフラックスは、1つ以上のアミンを含んでもよく、又はそれを含まなくてもよく、好ましくは1つ以上のアミンが含まれる。アミンの例には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピルエチレンジアミン、N-ココ-1,3-ジアミノプロパン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン及び1,10-ジアミノデカン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ビス(2-メチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水素化獣脂アルキルアミン、水素化(獣脂アルキル)ジメチルアミン、並びに水素化ビス(獣脂アルキル)メチルアミンが含まれる。
【0020】
成分(iv)として、本発明によるフラックスは、0~20重量%の、成分(i)~(iii)とは異なる1つ以上の成分を含み、すなわち、本発明によるフラックスは、1つ以上のタイプ(iv)の成分を含んでもよく、又はそれを含まなくてもよい。タイプ(iv)の成分の例には、特に増粘剤が含まれるが、活性化剤、消泡剤、湿潤助剤及び/又は安定剤が含まれてもよい。
【0021】
増粘剤の例には、エチルセルロース、水添ヒマシ油、グリセロール-トリス-12-ヒドロキシステアリン、及び変性グリセロール-トリス-12-ヒドロキシステアリンが含まれる。
【0022】
活性化剤として使用することができる低分子量カルボン酸の例には、ベンジル酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びトリデカン二酸が含まれる。本発明によるフラックスが、2~15重量%の少なくとも1つの低分子量カルボン酸をタイプ(iv)の成分として含むことが好都合であり得る。したがって、そのような実施形態の場合、最大5~18重量%の更なるタイプ(iv)の成分(但し、低分子量カルボン酸とは異なる)が、本発明によるフラックスに含まれてもよい。
【0023】
活性化剤として有用なハロゲン含有化合物の例には、アニリン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン臭化水素酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、及びトランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオールが含まれる。
【0024】
好ましくは、本発明によるフラックス、すなわち、成分(i)+(ii)又は(i)+(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iv)又は(i)+(ii)+(iii)+(iv)からなるフラックス全体は、100~250mg KOH/gの範囲、好ましくは120~220mg KOH/gの範囲のフラックス酸価(FMSZ)を有する。本明細書及び実施例において言及されるフラックス酸価は、IPC TM-650 2.3.13(日付け06/2004の改訂A)に従って決定することができる。フラックス酸価は、少なくとも実質的に又は完全に、成分(i)のカルボキシル基及び成分(iv)によって任意選択で与えられるカルボキシル基から形成される。
【0025】
本発明は更に、80~92重量%の1つ以上の異なるはんだと、8~20重量%の本発明によるフラックス、すなわち前述の実施形態の1つにおける本発明によるフラックスと、を含む、はんだペーストを提供することを含む。本発明によるはんだの重量百分率及びフラックスの重量百分率の合計は100重量%である。
【0026】
上述したように、本発明によるはんだペーストは、80~92重量%の1つ以上の異なるはんだ、特にスズをベースとするはんだ(少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも83重量%、特に90~99.5重量%のスズを含むはんだ合金)又はビスマス/スズをベースとするはんだ(50~60重量%のビスマス及び40~50重量%のスズを含むはんだ合金)を含む。
【0027】
はんだは、150~350℃の範囲、好ましくは180~300℃の範囲の液相線温度を有することが好ましい。
【0028】
はんだは、本発明によるはんだペースト中に、はんだペーストに対して通常であるままに、はんだ粉末として存在する。はんだ粉末を構成するはんだボールのボールサイズは、IPC J-STD-005A規格による分類のいずれかに対応することができ、すなわち、本発明によるはんだペーストは、タイプ範囲T1~T7内の任意のタイプのボールサイズのはんだボールを有することができる。
【0029】
好ましくは、本発明によるはんだペーストは、50~250Pa・sの粘度を有する。本明細書及び実施例において言及される粘度は、50mmのプレート直径及び400μmの測定ギャップを有するプレート-プレートレオメーター(例えば、Anton-Paar製のプレート-プレートレオメーターPhysica MCR 150)を25℃及び10s-1の剪断速度で使用して決定することができる。
【0030】
本発明の更なる目的は、本発明によるはんだペーストを製造するための方法である。
【0031】
本発明によるはんだペーストを製造するための方法は、以下の:
本発明によるフラックスの成分を混合する工程と、
上述のように、はんだ粉末を添加する工程と、を含む。
【0032】
はんだ粉末は、好ましくは、複数回に分けて、撹拌しながら、本発明によるフラックス成分の調製された混合物に、概して加熱せずに添加される。
【0033】
本発明によるはんだペーストを使用して、電子部品を基板に接続することができる。また、これを使用して、はんだ付着物を基板上に生成することもできる。
【0034】
電子部品を基板に接続する場合、基板の接触面と電子部品の接触面とを、本発明によるはんだペーストを介して接合させる。
【0035】
本発明によるはんだペーストを使用して電子部品を基板に取り付ける方法は、以下の:
a)接触面を有する電子部品を提供する工程と、
b)接触面を有する基板を提供する工程と、
c)はんだペーストを電子部品の接触面及び/又は基板の接触面に適用する工程と、
d)電子部品の接触面を、はんだペーストを使用して基板の接触面に接合させる工程と、
e)はんだペーストをはんだの液相線温度より高く加熱し、その後、はんだを冷却して固化させ、電子部品と基板との間に強固な接合部を形成する工程と、を含み得る。
【0036】
工程a)及びb)は、自明であり、これ以上の説明は必要がない。
【0037】
工程c)では、本発明によるはんだペーストは、当業者に知られている従来の方法、例えば、スクリーン若しくはステンシル印刷、又はディスペンス若しくはジェッティングによって、一方又は両方の接触面に適用することができる。
【0038】
工程d)では、電子部品と基板との接触面を、はんだペーストを使用して互いに接合させることができる。つまり、電子部品と基板とから、それらの接触面の間にはんだペーストを使用して、サンドイッチ状配置を作り出すことができる。
【0039】
工程e)では、はんだペーストをはんだの液相線温度より高く加熱することにより、サンドイッチアセンブリにはんだ付けすることで、はんだの冷却及び固化の後に、はんだペーストを介して電子部品と基板との間に頑丈な接続部が形成される。はんだペーストは、好ましくは、はんだが液相に移行するが、電子部品及び/又は基板を損傷しないように加熱される。サンドイッチアセンブリ、より厳密に言えばはんだペーストは、好ましくは、はんだの液相線温度よりも5~60℃高い、好ましくは10~50℃高い温度に加熱される。
【0040】
有利には、本発明によるフラックスを含むはんだペーストは、はんだペーストに使用されるはんだ粉末のボールサイズに関係なく、空気中での工程e)によるはんだ付けを可能にする。
【実施例0041】
フラックス及びはんだペーストの調製
フラックスの成分を表1に従って組み合わせ、均質化した。
【0042】
はんだペーストを調製するために、11重量部のフラックスを89重量部のはんだ粉末(SnAgCu:Sn 96.5重量%、Ag 3.0重量%、Cu 0.5重量%、IPC J-STD-005A規格によるタイプ4)と混合して、はんだペーストを形成した。
【0043】
通常の大気条件下での湿潤能力
通常の大気条件下でのIPC-TM-650(1/95)の試験方法2.4.45による溶融試験を使用して、はんだペーストの濡れ性を評価した。この目的のために、試験すべきはんだペーストを銅板(20mm×20mm×0.5mm)に適用した。銅板の表面に酸化膜がある場合は、P600級のサンドペーパーで光輝金属仕上げになるまで研磨し、アルコールで洗浄した。銅板の表面が明るく清浄なものは、アルコールだけで洗浄した。
【0044】
調製した銅板に、ステンシルを使用して印刷した。それを行うために、テンプレートの開口部が銅板の中央にくるように、テンプレートを銅板にしっかりと押し付けた。試験すべきはんだペーストをへら上に置き、ステンシル上にはんだペーストがなくなるまで、最初は軽く、次いでやや強く圧力を加えて、ステンシルの開口部の上に広げた。その後、ステンシルを慎重に剥がし、ステンシルによって画定されたパターンを保持した。印刷された銅板を、はんだの液相線温度より低い温度に設定された第1の200℃の高温加熱プレート上に2分間置き、次いで直ちに、はんだの液相線温度より50℃高い温度に設定された第2の加熱プレート上に置いた。はんだペースト又ははんだが溶融した後、銅板を更に5秒間第2の加熱プレート上に放置し、取り出して冷却した。
【0045】
はんだペーストが冷却された後、それがステンシルの開口部のサイズに対応したスポットに溶融しているのか又は複数の小さなスポットに溶融しているのか、及び溶融した後のはんだペーストが鋭いエッジを有しているかどうかを評価した。また、表面が光沢であるのか又はマットであるのかを評価した。
【0046】
はんだペーストを4つのクラスに分類した。
クラス1:再溶融した面積が、以前にはんだペーストで印刷した面積よりも大きかった。
クラス2:再溶融した表面が、以前にはんだペーストで印刷した表面に相当した。
クラス3:再溶融した面積が、以前にはんだペーストで印刷した面積よりも小さかった(わずかにはんだはじきが見られる)。
クラス4:はんだペーストが1つ以上のはんだボールを形成しており、銅板を濡らしていないか、完全に溶融していなかった。
【0047】
室温での粘度安定性試験
最初に、新たに調製したはんだペーストの初期粘度を、プレート-プレートレオメーター(Anton-Paar製のPhysica MCR 150;プレート直径50mm、測定ギャップ400μm)を使用して、25℃及び10s
-1の剪断速度で決定した。次に、はんだペーストを各々室温(23℃)で密封容器内に貯蔵し、7日後に前述のように再び測定した。7日間の貯蔵後の粘度を測定する前に、各はんだペーストを、スパチュラを用いて手で短時間均質に混合した。該当するはんだペーストの調製直後に記録された第1の測定値と、該当するはんだペーストを7日間貯蔵した後に記録された第2の測定値との差を、以下のように評価した。
++:<5Pa・s
+:5Pa・s~<10Pa・s
-:>10Pa・s
【表1】