(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154562
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】画像生成方法、化粧シミュレーション方法、画像生成装置、および画像生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 15/50 20110101AFI20251002BHJP
G01J 3/46 20060101ALI20251002BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G06T15/50
G01J3/46 Z
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057632
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(71)【出願人】
【識別番号】518104186
【氏名又は名称】公立大学法人長野大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】丸木 航
(72)【発明者】
【氏名】桑原 晃大
(72)【発明者】
【氏名】田中 法博
【テーマコード(参考)】
2G020
4C083
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA06
2G020DA12
2G020DA34
2G020DA35
2G020DA45
2G020DA52
4C083BB21
4C083CC02
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083EE50
(57)【要約】
【課題】本発明は、光輝性粉体の特徴を捉え、画像として高精度かつリアルに再現できる技術を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、画像生成方法などを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、画像生成方法。
【請求項2】
前記光輝性粉体が、干渉パール顔料および着色パール顔料のうち少なくとも一方を含み、
前記色信号算出工程において、干渉パール顔料の光学特性情報を干渉系三次元反射特性モデルに与えて、干渉パール顔料の色信号を算出し、
前記色信号算出工程において、着色パール顔料の光学特性情報を着色系三次元反射特性モデルに与えて、着色パール顔料の色信号を算出する、
請求項1に記載の画像生成方法。
【請求項3】
前記着色系三次元反射特性モデルが、前記光輝性粉体の物理的な光反射特性を記述した物理モデルと、仮説に基づいて前記光輝性粉体の光反射特性を記述した経験的モデルと、のうち少なくとも一方のモデルを含む、
請求項2に記載の画像生成方法。
【請求項4】
前記光輝性粉体が、基材となる粉体が1層または複数層の薄膜で被覆されて構成されており、
前記色信号算出工程において、前記薄膜の厚みに依存する干渉光の波長を前記三次元反射特性モデルに与えて、前記色信号を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成方法。
【請求項5】
前記光輝剤情報取得工程において取得する前記光学特性情報が、前記波長を含む、
請求項4に記載の画像生成方法。
【請求項6】
前記光輝剤情報取得工程において取得する前記形状情報が、前記光輝性粉体の平均粒径および標準偏差を含み、
前記画像生成工程において、前記平均粒径および前記標準偏差に基づいて、確率分布を用いて前記画像を生成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成方法。
【請求項7】
前記画像が、法線マップを用いて表現される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成方法。
【請求項8】
前記画像における前記光輝性粉体の平面視形状が多角形である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成方法。
【請求項9】
前記画像における前記光輝性粉体の粒径が3mm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成方法。
【請求項10】
前記光学特性情報が、分光反射率を含み、
前記光輝剤情報取得工程において、分光測色計で取得する前記分光反射率が、照明方向ベクトルと前記光輝性粉体が塗布される対象物の表面との間の方向に反射した光、または、前記照明方向ベクトルの正反射方向ベクトルと前記表面との間の方向に反射した光の分光反射率である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成方法。
【請求項11】
前記表面に対する水平方向を0度とするとき、前記分光測色計で取得する光の反射角度が25度以下である、
請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項12】
化粧料である光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、化粧シミュレーション方法。
【請求項13】
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得部と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出部と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出部と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成部と、を備える、画像生成装置。
【請求項14】
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、をコンピュータに実行させる、画像生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成方法、化粧シミュレーション方法、画像生成装置、および画像生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧品や自動車塗装における光輝性粉体(パール顔料)の使用は、製品に美しい輝きや高級感をもたらしてきた。これらの粉体は、その独特の反射特性や質感によって、メイクアップ製品や自動車の外装など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしている。最近では、CG技術の進歩により、これらの光輝性粉体のコンピュータ上でのシミュレーションが可能となり、化粧品メーカーや自動車デザイナーは、より精密な製品評価やデザイン検討を行うために、これらの粉体の特性を再現しようとしている。
【0003】
例えば特許文献1には、任意のソリッド色の下地の上に光輝性模様形成塗料を塗装して形成された光輝性模様塗膜の模様を模する光輝性模様画像を生成する方法などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のシミュレーション技術では、光輝性粉体の視覚的な質感、特にその色彩の変化、輝度の変動、および粒子の形状などによる光の反射特性を高精度でリアルに再現することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、これらの光輝性粉体の特徴を捉え、画像として高精度かつリアルに再現できる技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、画像生成方法を提供する。
前記光輝性粉体が、干渉パール顔料および着色パール顔料のうち少なくとも一方を含み、
前記色信号算出工程において、干渉パール顔料の光学特性情報を干渉系三次元反射特性モデルに与えて、干渉パール顔料の色信号を算出し、
前記色信号算出工程において、着色パール顔料の光学特性情報を着色系三次元反射特性モデルに与えて、着色パール顔料の色信号を算出してよい。
前記着色系三次元反射特性モデルが、前記光輝性粉体の物理的な光反射特性を記述した物理モデルと、仮説に基づいて前記光輝性粉体の光反射特性を記述した経験的モデルと、のうち少なくとも一方のモデルを含んでよい。
前記光輝性粉体が、基材となる粉体が1層または複数層の薄膜で被覆されて構成されており、
前記色信号算出工程において、前記薄膜の厚みに依存する干渉光の波長を前記三次元反射特性モデルに与えて、前記色信号を算出してよい。
前記光輝剤情報取得工程において取得する前記光学特性情報が、前記波長を含んでよい。
前記光輝剤情報取得工程において取得する前記形状情報が、前記光輝性粉体の平均粒径および標準偏差を含み、
前記画像生成工程において、前記平均粒径および前記標準偏差に基づいて、確率分布を用いて前記画像を生成してよい。
前記画像が、法線マップを用いて表現されてよい。
前記画像における前記光輝性粉体の平面視形状が多角形であってよい。
前記画像における前記光輝性粉体の粒径が3mm以下であってよい。
前記光学特性情報が、分光反射率を含み、
前記光輝剤情報取得工程において、分光測色計で取得する前記分光反射率が、照明方向ベクトルと前記光輝性粉体が塗布される対象物の表面との間の方向に反射した光、または、前記照明方向ベクトルの正反射方向ベクトルと前記表面との間の方向に反射した光の分光反射率であってよい。
前記表面に対する水平方向を0度とするとき、前記分光測色計で取得する光の反射角度が25度以下であってよい。
また、本発明は、
化粧料である光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、化粧シミュレーション方法を提供する。
また、本発明は、
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得部と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出部と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出部と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成部と、を備える、画像生成装置を提供する。
また、本発明は、
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、をコンピュータに実行させる、画像生成プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、光輝性粉体の特徴を捉え、画像として高精度かつリアルな再現が可能な技術が提供される。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像生成方法のフローの例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る反射の幾何学モデルを示す模式図である。
【
図3】
図2に示す反射の幾何学モデルにおける反射光分布を示す模式図である。
【
図4】光輝性粉体の構成例を示す模式断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る画像生成方法が適用される画像生成システムの構成例を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る画像生成方法が適用されるユーザ端末の構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る画像生成方法が適用されるサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図7に示すGPUの機能構成の例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る化粧シミュレーション方法において表示する画面の例である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る化粧シミュレーション方法において表示する画面の例である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る画像生成装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.第1実施形態(画像生成方法の例)]
[(1)概要]
光輝性粉体(パール顔料)は、光沢と干渉色を発現する特殊な顔料であり、化粧品、自動車塗料、プラスチックなど多岐にわたる製品に独特の視覚効果を提供している。
【0011】
本発明は、このような光輝性粉体をコンピュータ上で高精度に再現する技術を提供するものである。具体的には、本発明は、光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体の色値を算出する色値算出工程と、前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、画像生成方法を提供する。
【0012】
以下の説明では、「画像」とは、二次元及び三次元の静止画並びに二次元及び三次元の動画を含む概念であり、「動画」とは、リアルタイムに撮影される動画映像や撮影済みの動画映像を含む概念であるとする。
【0013】
本発明における「光輝性粉体が塗布されている状態の画像」とは、光輝性粉体の分布状態および形状が詳細に表現されている画像を指す。この画像は、顕微鏡などの計測機器による実際の計測データに基づくこともあれば、後述する方法によって自動生成されることもある。
【0014】
本発明が提供する画像生成方法について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像生成方法のフローの例を示すフローチャートである。
【0015】
図1に示されるとおり、光輝剤情報取得工程(ステップS1)では、コンピュータが備える取得部が、光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する。
【0016】
光学特性情報は、光輝性粉体の光学挙動を定量化するための指標群である。この光学特性情報には、例えば反射率、色調、干渉光など、光輝性粉体が光とどのように相互作用するかを示す情報が含まれる。
【0017】
形状情報は、光輝性粉体の形状と寸法を示す情報である。この形状情報には、例えば粒子の形状、粒度分布、表面粗さ、粒子の大きさなどが含まれる。さらに、この形状情報には粒子形状の細かな変異も含まれる。例えば、均一ではない形状の粒子を表現するために、多角形粒子の各辺を歪めることによる形状の多様性が考慮される。この多角形粒子の各辺の歪みは、実際に見られる粒子の不均一性や自然な外観を再現するためのものであり、各辺の長さに乱数を適用することで、多角形粒子が表現される。
【0018】
取得部は、光学特性情報および形状情報のうち、一方または両方の情報を取得する。光学特性情報などは、測定機器による測定、コンピュータディスプレイからの入力など、いずれの方法で取得されてもよい。
【0019】
取得部として、例えば分光測色計が挙げられる。分光測色計は、物体の色を測定するための測定機器である。従来の測色計と異なり、分光測色計は、光の波長ごとの反射率を測定することで、より詳細な色彩情報を取得できる。
【0020】
分光測色計は、光源、分光器、および検出器などの要素から構成される。光源は、物体に光を照射する。分光器は、光を波長ごとに分解する。検出器は、分解された光を検出し、各波長の反射率(分光反射率)を測定する。これらの要素から得られたデータは、色空間に変換され、色値として表示される。色値とは、色の見え方を数値で表したものである。色値は、例えば、RGB、CMYK、HSV、Lab、CIE XYZ、yCbCrなどの表色系で表現されうる。
【0021】
上記のとおり、色値はコンピュータディスプレイからの入力などによりよっても取得可能である。具体的には、ユーザがコンピュータディスプレイなどを通じてRGB値などの色情報を直接入力することができる。この場合、取得部としては、コンピュータディスプレイやキーボードなどが用いられることになる。
【0022】
本発明による画像生成方法は、これらの光学特性情報および形状情報を基に、光輝性粉体の反射特性を記述した数学モデルを用いて色信号を算出し、これに基づき色値を算出することで、該粉体が塗布されている状態の画像を生成することができる。このプロセスにより、実際の光輝性粉体の視覚効果を高精度に再現することが可能となる。このような入力方式を採用することで、ユーザ自身が望む色情報を直接、容易に提供することが可能となり、より直感的かつ柔軟な画像生成プロセスを実現できる。
【0023】
画像取得工程(ステップS2)では、例えばコンピュータが備える演算部(例えばCPU、GPUなど)が、顔料が塗布される対象物の画像を取得する。この過程では、演算部は外部からの画像データを受け取り、それを処理のためにメモリに格納する。取得される画像は、分析、加工、または特定の処理手順に基づいて生成される画像の基となる。この取得プロセスは、画像生成、分析、または他の画像処理技術の実行に先立って必要なステップであり、後続の処理において重要な役割を果たす。
【0024】
この画像は、顔料が塗布される前の状態の画像である。ここで、顔料が塗布される前の状態の画像を第1画像と定義する。この第1画像は、例えば1枚の静止画でもよいし、角度を変えて撮影された複数枚の静止画であってもよいし、三次元モデルであってもよい。
【0025】
本発明が化粧シミュレーションに応用される場合、第1画像は顔画像となり得る。これにより、顔料の塗布前の顔の状態を捉え、化粧品の色や質感が顔に与える視覚的影響をシミュレートする基盤となる。同様に、本発明が自動車塗装シミュレーションに使用される際には、第1画像は自動車の画像となる。この場合、塗装前の自動車の外観が記録され、異なる塗装色や仕上げが自動車にどのような視覚効果をもたらすかを評価するための基準点として機能する。このように、本発明はその適用範囲が広く、化粧品の塗布シミュレーションから自動車の塗装シミュレーションに至るまで、多様な分野での視覚効果の再現に利用することができる。
【0026】
第1画像を撮影する際には、撮影環境における照明等の様々な要因の影響を受ける。シミュレーションにより適した第1画像を取得する観点から、撮影環境における影響を低減するための補正として、例えば、撮影された第1画像に対してメモリに記憶させた画像処理プログラムなどによって周囲の照明環境に応じて明度や彩度を適切な色になるように自動的を調整することも可能である。また、データベースを用いることで、撮影時とは異なるシーンでの顔料の見え方(色の変化)を想定した映像再現をしてもよい。
【0027】
形状推定工程(ステップS3)では、演算部が、第1画像から塗布対象物(例えば顔や自動車など)の三次元形状を推定する。具体的には、演算部は、化粧や肌の質感などを再現するために必要な法線ベクトルを算出する。
【0028】
法線ベクトルは、表面上の点におけるその点での表面の傾きや向きを示すベクトルであり、幾何学、グラフィックス、物理ベースレンダリングなど様々な分野で用いられる概念である。これは、平面や曲面などの表面に垂直であり、表面が外向きに向いている方向を指す。この法線ベクトルの算出により、塗布対象物の精密な三次元形状を推定し、それに基づいてよりリアルな画像を生成することが可能になる。
【0029】
法線ベクトルは、後述する三次元反射特性モデルにおいて重要な役割を果たし、陰影や光沢などの表現に密接に関連している。特に、拡張現実(AR)技術を活用する場合、塗布対象物や顔料の質感が刻々と変化する状況での顔の向きや表情の変化に応じて、リアルタイムかつ連続的に法線ベクトルを算出することが重要となる。この連続的な法線ベクトルの算出により、対象物の質感変化に即座に対応し、ユーザに対してよりリアルな視覚体験を提供することが可能になる。このプロセスは、AR技術を含む様々なリアルタイムグラフィックス処理において、対象物の質感や光の反射をより精密に再現するために用いられる。
【0030】
表面特定工程(ステップS4)では、演算部が、第1画像から塗布対象物の表面の凹凸形状を数学モデルとして特定する。特に塗布対象物が肌である場合、演算部は肌表面の微細な凹凸を数学モデルによって特定する。これらの微細な凹凸は、肌表面の不均一な形状を指し、シワ、キメ、吹き出物、傷跡などが具体例である。
【0031】
肌の質感に影響を与えるこれらの特徴は、形状情報を直接提供するのではなく、陰影や色の変化として数学モデルによって表現される。このようにして、数学モデルのパラメータを調整することにより、シワやキメなどの質感の違いを再現できる。従って、画像からこれらのパラメータを推定することにより、肌の質感を推定できる。
【0032】
この数学モデルには、例えばTorrance-SparrowモデルやOren-Nayarモデルなどが含まれる可能性がある。これらのモデルは、光学的特性を数学的に表現し、物体の表面反射特性をコンピュータグラフィックスやコンピュータビジョンの分野でシミュレートするために使用される。
【0033】
Torrance-Sparrowモデルは、マイクロファセット理論に基づく物理ベースのモデルであり、微小な表面要素(マイクロファセット)が光を反射する際の挙動を記述する。このモデルにおけるV字溝モデルは、表面の凹凸が反射に与える影響を数学的に表現したものである。
【0034】
一方、Oren-Nayarモデルは、表面が粗い場合の光の散乱を考慮し、反射光の強度や方向性をモデル化したものであり、特に粗い表面の質感再現に適している。
【0035】
照明環境推定工程(ステップS5)では、演算部が、第1画像を使用して、第1画像が撮像された照明環境を推定する。照明環境は、特定のシーンで塗布対象物に適した照明効果を再現するための照明光分光分布E(λ)と照明光源の空間分布の組み合わせである。照明光分光分布E(λ)は、塗布対象物に照射される可能性のある照明光の分光分布である。
【0036】
具体的な照明環境の例として、人工の直接光源を使用する屋内環境や、自然の直接光源を利用する屋外環境がある。屋外環境では、朝、昼、夕、夜などの時間帯ごとに区分されることがある。人工の直接光源には、例えば、白熱電球、蛍光灯、LEDライトがあり、自然の直接光源としては、太陽や月などが挙げられる。
【0037】
照明環境推定工程(ステップS5)での処理を具体的に説明する。演算部は、第1画像から照明方向ベクトルを推定する。照明方向ベクトルは、ある点や表面において光が来る方向を示すベクトルである。同時に、演算部は、色値から照明光分光分布E(λ)を得るためのシステム変換マトリックスを使用し、第1画像の色値から照明光分光分布E(λ)を導き出す。このシステム変換マトリックスは、事前に既知光源の分光分布に対して、さまざまな塗布対象物の分光反射率をかけた色信号を記憶したデータベースから生成されうる。
【0038】
そして、照明方向ベクトルと照明光分光分布E(λ)に基づいて、演算部は、照明光源の空間分布を推定し、それにより第1画像における照明環境を推定する。この推定された照明環境情報(シーン情報)は独立した照明環境の情報としても記録され、他のシーンで撮影した画像にも適用できる。たとえば、あるオフィスで推定した照明環境情報を別の場所で撮影した顔の映像再現に活用できる。
【0039】
演算部が照明方向ベクトルを推定する処理の一例として、顔画像を使用する場合を説明する。まず、顔の三次元形状の情報を基に、顔画像の各画素に対応する法線ベクトルを算出する。法線ベクトルは、物体表面上のある点において、その点での表面の垂直方向を示すベクトルである。法線ベクトルは、表面上の各点ごとに異なる方向を持つことが一般的で、物体の形状や曲面に応じて変化する。
【0040】
頬や額などで顔を凸包物体と仮定できる場合、光沢のない物体(マットな反射)であれば、周囲と比較して一番明るい画素を見つけ、その画素の法線ベクトルが照明方向と一致するため、照明方向を推定できる。光沢のある物体であれば、周囲と比較して一番明るい画素を見つけることで、その画素の法線ベクトルに関する視線方向ベクトルの正反射方向ベクトルが照明方向と一致するため、照明方向を推定できる。視線方向ベクトルは、観察者やカメラから見た視点の方向を示すベクトルである。
【0041】
また、演算部は、第1画像とは異なる画像である照明環境推定用画像を使用して、照明環境推定用画像が撮像された照明環境を推定してもよい。この照明環境推定用画像は、例えば、塗布対象物を含まない画像であってもよいし、塗布対象物を含む画像であってもよい。このため、例えば、塗布対象物が含まれていない画像から環境光やキャスマッチの情報を得て、第1画像に限定されない照明環境の推定が可能となる。なお、第1画像と照明環境推定用画像が同一であってもよい。
【0042】
塗布領域受付工程(ステップS6)では、コンピュータがユーザからの入力を介して対象物における塗布領域の情報を受け付ける。対象物が顔である場合には、ユーザは顔画像が表示されているタッチパネルなどのインタフェースを用いて、顔料を塗布する具体的な領域を指定できる。たとえば、ユーザがまぶたに顔料を塗布したい場合、表示された顔画像上でまぶたの領域を直接選択または描画することで、塗布領域を設定する。このプロセスを通じて、ユーザは直感的かつ正確に顔料を塗布したい領域を指定でき、その結果として生成される画像において顔料の位置や範囲を自由に制御できるようになる。この入力情報は、システム内の演算部によって処理され、後続の工程において使用される。
【0043】
第1分光反射率算出工程(ステップS7)では、演算部が、第1画像を構成する色値である第1色値に基づいて、塗布領域における分光反射率である第1分光反射率S1(λ)を算出する。分光反射率は、物体が光を受けたときに、波長ごとにどれだけの光を反射するかを示す比率である。通常、波長によって光の色が異なるため、分光反射率は物体の色を表現する指標となる。
【0044】
第1分光反射率算出工程(ステップS7)の処理を具体的に説明すると、演算部は、塗布領域における塗布対象物の色に応じた第1変換関数Mを読み出し、塗布領域における第1分光反射率S1(λ)を算出する。第1変換関数Mは、例えばコンピュータ内のデータベースに記憶されていてよい。
【0045】
第1変換関数Mは、色値を分光反射率に変換するための関数である。第1変換関数Mは、多数の人々を対象として、塗布対象物の色値と分光反射率を実測し、それらのデータを統計的に分析して得られる変換マトリックスである。実測対象者ごとに、塗布対象物の色値と分光反射率の対応関係を調査し、それをもとに統計的な解析が行われることにより、第1変換関数Mが得られる。第1変換関数Mは、例えば、可視波長域である400nm~700nmを5nm間隔で区分した61×3の変換行列として表現されうる。この行列は、対象物の色とその色値、分光反射率の関係を示すものであり、実際のデータから統計的に導き出されたものである。この変換行列を使用することで、色値から対象物の分光反射率を推定することが可能となる。
【0046】
第1変換関数Mは、例えば、第1画像の塗布領域を構成する第1色値に応じて自動で決定されてよい。あるいは、第1変換関数Mは、ユーザがカラーコードのような色見本から塗布対象物に近い色を選択することで決定されてもよい。
【0047】
以下では、色値がRGB値である場合を例に説明する。第1分光反射率S1(λ)は、第1変換関数Mと、第1色値における各要素の値であるR1,G1,B1とを用いて、400nm~700nmの可視波長域を5nm間隔で区分した離散的な61次元の分光反射ベクトルsとして近似できる。第1分光反射率S1(λ)は、以下の式(1),(2)で表すことができる。
【0048】
【0049】
第1分光反射率S1(λ)は、塗布対象物の色に応じた第1変換関数Mに基づいて算出され、これにより実際の分光反射率に近い値を得ることができる。例えば、顔における肌の場合、通常は分光光度計などの測定機器の測定範囲が狭いため、顔全体の分光反射率を直接測定するのは難しいことがある。これに対して、本実施形態では未化粧状態の顔画像が有する第1色値から第1分光反射率S1(λ)を算出することで、未化粧状態における塗布対象物の分光反射率を効果的に取得することができる。
【0050】
なお、例えば髪の毛など、顔料が塗布されない領域、すなわち、塗布領域以外の領域では、第1分光反射率算出工程(ステップS7)は行われなくてよい。これにより、第1分光反射率S1(λ)を算出する際の処理を簡略化できる。
【0051】
第1色信号算出工程(ステップS8)では、演算部が、第1分光反射率S1(λ)、第1反射特性パラメータ、照明光分光分布E(λ)、および第1三次元反射特性モデルに基づいて、第1色信号C1(λ)を算出する。
【0052】
三次元反射特性モデルは、物体の光反射プロセスを数学的に表現したモデルであり、物体の色や質感を定義する重要な要素である。このモデルの核心は分光反射率と反射特性パラメータにあり、これらによって物体の見え方が決定される。
【0053】
反射特性パラメータは、物体の表面性状、特に表面の粗さなどに依存し、物体表面での照明光の入射角度に応じた反射光の強度や光沢の広がりを定義する。これにより、物体の表面がどのように光を反射するか、つまりその光沢や質感が具体的にどのように見えるかが決定される。
【0054】
第1三次元反射特性モデルは、顔料が塗布される前の状態を表すモデルである。このモデルに照明光の分光分布や入射角度などの幾何学的条件を適用することで、物体が照明光を反射したときの色信号を計算できる。これにより、特定の照明条件下で物体がどのように見えるかを予測し、それに基づいてリアルな画像を生成することが可能となる。
【0055】
第1三次元反射特性モデルは、第1分光反射率S1(λ)、照明光分光分布E(λ)、第1拡散反射関数Da、および第1鏡面反射関数Gaを用いて、以下の式(3)で表すことができる。第1拡散反射関数Daは、顔料を塗布する前の状態の塗布対象物における拡散反射を規定する関数である。第1鏡面反射関数Gaは、顔料を塗布する前の状態の塗布対象物における鏡面反射を規定する関数である。Nは法線ベクトルを表し、Vは視線方向ベクトルを表し、Lは照明方向ベクトルを表す。右辺第1項が拡散反射成分を表し、右辺第2項が鏡面反射成分を表す。
【0056】
【0057】
ここで、
図2を参照しながら、本実施形態における反射の幾何学モデルについて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る反射の幾何学モデルを示す模式図である。
【0058】
図2に示されるとおり、仮想空間50は、仮想点51、仮想光源52、および仮想視点53を備えている。仮想点51は塗布対象物の表面S上の点であり、仮想光源52はこの点に対して照明光を照射する。また、仮想視点53は仮想点51を観測する視点である。
【0059】
照明方向ベクトルLは、仮想点51から仮想光源52に向かうベクトルである。法線ベクトルNは、表面S上の仮想点51における法線方向のベクトルである。視線方向ベクトルVは、仮想点51から仮想視点53に向かうベクトルである。照明方向ベクトルL、法線ベクトルN、および視線方向ベクトルVは、三次元反射特性モデルにおける照明光の幾何条件を規定するためのパラメータである。
【0060】
一般的に、物体が照明光を受けた場合、物体表面において生じる色信号C0(λ)は、物体の分光反射率S0(λ)と、照明光分光分布E0(λ)とを用いて、C0(λ)=E0(λ)S0(λ)として表現される。
【0061】
一方、本実施形態では、物体の分光反射率および照明光の分光分布だけでなく、物体表面における拡散反射と鏡面反射を考慮した三次元反射特性モデルを用いることで、物体表面の光沢や質感をより正確に再現することができる。
【0062】
具体的に説明する。照明方向ベクトルLと法線ベクトルNとのなす角を入射角θiとし、法線ベクトルNと視線方向ベクトルVとのなす角を受光角θrとする。仮想点51が仮想光源52からの光を受けると、仮想点51において全方位に生じる拡散反射光と、入射角θiと受光角θrとが近似する場合に生じる鏡面反射光から構成される反射光が生じる。
【0063】
このことについて、
図3を参照しながら説明する。
図3は、
図2に示す反射の幾何学モデルにおける反射光分布を示す模式図である。
【0064】
図3に示されるとおり、仮想点51において生じる反射光の強度分布は、拡散反射光強度αと、鏡面反射光強度Iとを足し合わせた強度分布である反射光分布RDで表現される。仮想点51において生じる反射光の強度は、受光角θ
rに応じて異なる値を示す。具体的には、仮想点51から反射光分布RDまでの距離が受光角θ
rにおける反射光の強度を表している。
【0065】
拡散反射光強度αは、拡散反射光の強度を規定するための反射特性パラメータである。拡散反射光強度αは、入射角θiに対して受光角θrがいずれの値であってもほぼ一定の値を持つ。鏡面反射光強度Iは、拡散反射光強度αに対する鏡面反射光の相対的な強度を規定するための反射特性パラメータである。鏡面反射光強度Iは、入射角θiに対して受光角θrの値が近づくにつれて増大し、入射角θiと受光角θrが一致したときに最大値となる。
【0066】
例えば、受光角θrが入射角θiと大きく異なる受光角θr1である場合、仮想視点53aにおいて観測される反射光の強度は、拡散反射光強度αの値となる。これに対して、受光角θrが入射角θiと近似する受光角θr2である場合、仮想視点53bにおいて観測される反射光の強度は、拡散反射光強度αと鏡面反射光強度Iとを足し合わせた値となる。
【0067】
式(3)で用いる第1拡散反射関数Daは、第1拡散反射光強度α1と、照明光の幾何条件としての照明方向ベクトルLおよび法線ベクトルNとを用いて、以下の式(4)で表される。第1拡散反射光強度α1は、顔料を塗布する前の状態の塗布対象物における拡散反射光の強度を規定するための第1反射特性パラメータである。ここでは、第1拡散反射光強度α1=1として扱う。なお、以下の計算で用いられる照明光の幾何条件は、照明光源の空間分布、塗布対象物の形状、および塗布対象物を観測する視点位置などから算出される。
【0068】
【0069】
図3に示されている反射光分布RDにおいて、鏡面反射光が生じる範囲は、鏡面反射パラメータmで表現される。鏡面反射パラメータmは、物体表面の粗さやその他の表面性状に依存するパラメータであり、光沢の広がりを規定する反射特性パラメータである。鏡面反射パラメータmが大きいほど、鏡面反射光が生じる範囲が大きくなる。
【0070】
式(3)で用いる第1鏡面反射関数Gaは、第1鏡面反射光強度I1、第1鏡面反射パラメータm1、照明方向ベクトルL、法線ベクトルN、および視線方向ベクトルVを用いて、以下の式(5)~(7)で表される。なお、式(6)に含まれるB(N,V,L,m1)は、Beckmann関数である。
【0071】
【0072】
第1鏡面反射光強度I1は、顔料を塗布する前の状態の塗布対象物における鏡面反射光の強度を規定するための第1反射特性パラメータである。第1鏡面反射パラメータm1は、同状態の塗布対象物における光沢の広がりを規定するための第1反射特性パラメータである。第1鏡面反射光強度I1および第1鏡面反射パラメータm1は、あらかじめ任意の値が設定される。
【0073】
なお、第1鏡面反射光強度I1および第1鏡面反射パラメータm1は、例えば、顔料を塗布する前の状態での塗布対象物に対して、照明光の入射角度を変えた複数の画像から求めることもできる。例えば、画像取得工程(ステップS2)において、塗布対象物の画像を取得する際に、照明光の入射角度を変えた複数の画像を取得することで、第1鏡面反射光強度I1および第1鏡面反射パラメータm1を求めることもできる。
【0074】
このように、第1三次元反射特性モデルを用いて第1色信号C1(λ)を算出することで、顔料を塗布する前の状態における塗布対象物の色および照明光によって生じる陰影や光沢を第1色信号C1(λ)として再現できる。
【0075】
なお、第1色信号算出工程(ステップS8)において、演算部は、塗布対象物の表面の凹凸による質感(例えば陰影や光沢など)の変化を計算し、計算により得られた塗布対象物の表面による質感に関する情報を含む質感情報をさらに用いて、第1色信号C1(λ)を算出してもよい。これにより、塗布対象物の凹凸に対応する質感を計算して、塗布対象物の色に対して質感の情報を付与できる。
【0076】
特徴部分特定工程(ステップS9)では、演算部が、第1画像から塗布対象物の特徴部分を特定する。この特定は、一例として、塗布対象物の位置及び領域を特定することであってよい。具体的な例として、第1画像が顔画像である場合、演算部は目、鼻、口などの顔の構成要素を特定し、これによって顔の構成要素の位置と領域(輪郭や輪郭で囲まれた部分)を特定する。この特定は、既知の画像認識技術を使用することで実現可能である。この画像認識技術として、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などが挙げられる。
【0077】
第2分光反射率算出工程(ステップS10)では、演算部が、第1分光反射率S1(λ)および第2変換関数T(λ)に基づいて、顔料の塗布領域での第2分光反射率S2(λ)を算出する処理を実行する。詳細には、演算部が、データベースから塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)を読み出し、これを用いて塗布領域での第2分光反射率S2(λ)を算出する。
【0078】
第2変換関数T(λ)は、第1分光反射率S1(λ)に基づいて、顔料の分光反射率である第2分光反射率S2(λ)を算出するための変換マトリックスである。ここでの顔料とは、塗布対象物に塗布される顔料である。塗布対象物が例えば肌である場合、顔料は化粧料であり、例えば、ファンデーション、チーク、アイカラー、リップなどが含まれる。
【0079】
第2変換関数T(λ)は、例えば、多数の人々を対象として、被験者の塗布対象物における分光反射率Saと、被験者の塗布対象物に顔料を塗布した状態の分光反射率Sbとを実測し、分光反射率Saおよび分光反射率Sbの変化量から測定対象者の塗布対象物の色ごとに統計的に算出される。
【0080】
第2分光反射率S2(λ)は、第1分光反射率S1(λ)と、第2変換関数T(λ)とを用いて、以下の式(8)で表すことができる。
【0081】
【0082】
第2変換関数T(λ)および第1分光反射率S1(λ)に基づいて第2分光反射率S2(λ)を算出することで、実際に顔料が塗布対象物に塗布され、なじんだ状態での分光反射率に近い第2分光反射率S2(λ)を算出する。
【0083】
なお、第2変換関数T(λ)は、例えば、第1分光反射率算出工程(ステップS7)において第1変換関数Mと合わせて決定されてもよい。また、第2変換関数T(λ)は、ユーザがカラーコードのような色見本から塗布対象物に近い色を選択することで決定されてもよい。
【0084】
第2色信号算出工程(ステップS11)では、演算部が、第2分光反射率S2(λ)、第2反射特性パラメータ、照明光分光分布E(λ)、および、照明光の幾何条件で表現される第2三次元反射特性モデルに基づいて、第2色信号C2(λ)を算出する。
【0085】
具体的には、演算部は、ユーザが選択した顔料の反射特性パラメータである第2反射特性パラメータをデータベースから読み出す。その後、照明光分光分布E(λ)と照明光源の空間分布とを、第2三次元反射特性モデルに与えて、第2色信号C2(λ)を算出する。第2色信号C2(λ)は、顔料に対して照明光を照射し、反射した際の色信号である。
【0086】
第2三次元反射特性モデルは、第2分光反射率S2(λ)、照明光分光分布E(λ)、第2拡散反射関数Db、および、第2鏡面反射関数Gbを用いて、以下の式(9)~(11)で表すことができる。第2拡散反射関数Dbは、顔料における拡散反射を定義する関数である。第2鏡面反射関数Gbは、顔料における鏡面反射を定義する関数である。また、式(11)に含まれるB(N,V,L,m2)は、Beckmann関数である。式(9)では、右辺第1項が拡散反射成分を表し、右辺第2項が鏡面反射成分を表す。
【0087】
【0088】
式(9)~(11)で表す第2三次元反射特性モデルにおいて、第2拡散反射光強度α2は、顔料ごとに設定されるパラメータで、顔料の拡散反射光の強度を規定する第2反射特性パラメータである。ここでは、第2拡散反射光強度α2を単純化するために、α2=1として取り扱う。また、第2鏡面反射光強度I2は、顔料ごとに設定されるパラメータで、顔料の鏡面反射光の強度を規定する第2反射特性パラメータである。さらに、第2鏡面反射パラメータm2は、顔料ごとに設定されるパラメータで、顔料の光沢の広がりを規定する第2反射特性パラメータである。
【0089】
また、複数種の顔料が選択される場合、第2色信号算出工程(ステップS11)では、演算部が各顔料の第2色信号C2(λ)を算出してよい。
【0090】
また、第2色信号算出工程(ステップS11)では、演算部は、塗布対象物の表面の凹凸による陰影や光沢の変化を計算し、計算により得られた塗布対象物の表面による陰影や光沢に関する情報、すなわち質感情報をさらに用いて第2色信号C2(λ)を算出してもよい。これにより、塗布対象物の凹凸に対応する陰影や光沢(質感)を計算し、それを用いて顔料に対して陰影や光沢の情報を付与できる。
【0091】
このように、第2三次元反射特性モデルを用いて第2色信号C2(λ)を算出することで、顔料の色や、照明光による陰影や光沢を効果的に第2色信号C2(λ)として再現できる。
【0092】
光輝剤色信号算出工程(ステップS12)では、演算部が、光学特性情報を、光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである第3三次元反射特性モデルに与えて、光輝性粉体の色信号CG(λ)を算出する。この場合、光輝性粉体を除く顔料の第2色信号C2(λ)が第2三次元反射特性モデルによって算出され、光輝性粉体の色信号CG(λ)が第3三次元反射特性モデルによって算出される。
【0093】
図4は、光輝性粉体の構成例を示す模式断面図である。
図4に示されるとおり、光輝性粉体60は、基材62となる粉体が1層または複数層の薄膜61で被覆されて構成されており、この薄膜の厚みによって光輝性粉体の色や光沢が決定される。基材62の例として、例えば、マイカ、アルミナ、シリカ、合成フルオロフロゴパイト、ガラス末、アルミニウム末、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。薄膜61の例として、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化鉄、金、銀、有機色素、樹脂などが挙げられる。
【0094】
仮想光源52からの光が光輝性粉体60に照射されると、仮想視点53において、薄膜61の厚みdに依存する干渉光が観測される。この干渉光を基に、光輝性粉体60の色信号CG(λ)が算出される。薄膜61の厚みdにより選択的に強化される特定の干渉色により、光輝性粉体が生み出す独特の色を正確に再現することが可能となる。光輝性粉体60における薄膜61の数や厚みdなどの情報は、データベースに記憶されており、これらの情報をもとに演算部が色信号を算出する際の参照データとして用いられる。
【0095】
光輝剤色信号算出工程(ステップS12)において、演算部が、薄膜61の厚みdに依存する干渉光の波長を第3三次元反射特性モデルに与えて、色信号CG(λ)を算出することができる。このプロセスは、光輝性粉体に特有の色彩と光沢を正確にシミュレートするために重要である。薄膜61の物理的特性、特にその厚みdは、照射された光の干渉パターンを決定し、それによって光輝性粉体が示す特有の色変化や光沢効果が生じる。この干渉光の波長情報を第3三次元反射特性モデルに適用することで、実際に光輝性粉体がどのように光を反射し、どのような視覚効果を生み出すかを計算し、シミュレーションすることができる。
【0096】
光輝剤情報取得工程(ステップS12)では、ユーザは多様な方法で特定の波長を入力することが可能である。これには、目視による判断から導き出された波長の入力や、分光測色計によって得られた値の使用が含まれる。つまり、光輝剤情報取得工程(ステップS12)において取得する光学特性情報が、波長を含むことができる。
【0097】
光輝性粉体は、その光学特性に基づき光の波長に反応して様々な色を示す性質を持っている。このため、ユーザが特定の波長を入力することにより、実際の使用条件下での粉体の色彩をより正確に再現することができるようになる。このプロセスを通じて、シミュレーションされる色が実際の塗布状態とより一致し、予想と実際の結果の間のギャップを減少させることが可能になる。この機能は、製品開発やデザインのプロセスにおいて、より精度の高い視覚的フィードバックを提供し、最終的な製品の品質を向上させることに貢献する。
【0098】
第3三次元反射特性モデルは、光輝性粉体の分光反射率SG、光輝性粉体の反射特性パラメータ、照明光分光分布E(λ)、および、照明光の幾何条件を用いて、以下の式(12),(13)で表すことができる。式(13)に含まれるB(N,V,L,mG)は、Beckmann関数である。また、光輝性粉体は、照明光の幾何条件に依存する分光反射率SGを有する。なお、このモデルでは、光輝性粉体の鏡面反射成分のみに基づいて色信号CG(λ)を算出しており、拡散反射成分は無視している。
【0099】
【0100】
なお、用いる分布関数はBeckmann関数に限定されず、他の分布関数を用いることも可能である。例えば、Beckmann関数が適用できない材質の特性を捉えるために、異なる分布関数を選択することが望ましい場合もある。
【0101】
式(12),(13)で表す第3三次元反射特性モデルにおいて、鏡面反射関数GGは、光輝性粉体における鏡面反射を規定する関数である。鏡面反射光強度IGは、光輝性粉体の反射特性パラメータで、光輝性粉体ごとに固有の鏡面反射光の強度を規定するパラメータである。鏡面反射パラメータmGは、光輝性粉体の反射特性パラメータで、光輝性粉体ごとの光沢の広がりを規定するパラメータである。これらの反射特性パラメータは、例えば、実際の光輝性粉体に対して光沢計などの測定機器で計測された実測値から求めることができる。
【0102】
また、光輝剤色信号算出工程(ステップS12)は、塗布領域内で光輝性粉体が塗布される領域において実行される。具体的には、塗布領域内で光輝性粉体が塗布される領域は、光輝性粉体の粒形状の大きさなどを規定する形状情報と、実際に顔料が塗布された領域内での光輝性粉体の分散状態を規定する分散情報と、に基づいて推定できる。塗布領域内で光輝性粉体が塗布される領域を推定し、その領域において光輝性粉体の色信号CG(λ)を算出することで、実際の顔料に含まれる光輝性粉体の粒形状および分散状態を再現できる。光輝性粉体の形状情報および分散情報は、データベースに記憶されている。
【0103】
なお、光輝性粉体の色信号CG(λ)を算出する際には、特定の波長におけるスペクトル強度を高める補正を行ってもよい。また、第3三次元反射特性モデルは、光輝性粉体の配向性を規定する配向パラメータ、薄膜61の厚みdなどのパラメータを含む構成であってもよい。
【0104】
第3色信号算出工程(ステップS13)では、演算部は、第1色信号C1(λ)および第2色信号C2(λ)に基づいて、顔料が塗布されている状態の塗布対象物を含む第2画像の色信号である第3色信号C3(λ)を算出する。塗布領域のうち複数種の顔料が重畳される領域においては、それぞれの顔料の第2色信号C2(λ)を合算することで、第3色信号C3(λ)が算出される。
【0105】
具体例として、演算部は、塗布領域のうち第1顔料と第2顔料が重畳される領域において、第1色信号C1(λ)と、第1顔料の色信号C2f(λ)と、第2顔料の色信号C2c(λ)と、それぞれの色信号に対する重み係数w1~w3と、用いて以下の式(14)に基づいて第3色信号C3(λ)を算出する。重み係数w1~w3は、各色信号に対して適切な重み付けを行う係数であり、シミュレーションにおける顔料の厚みや、塗布する順序などによって適宜決定される。
【0106】
【0107】
このように、第1色信号C1(λ)及び第2色信号C2(λ)に基づいて第3色信号C3(λ)を算出することで、顔料が塗布されている状態における塗布対象物の色信号として、顔料に塗布対象物の色が反映された状態の第3色信号C3(λ)を算出できる。
【0108】
複数種の顔料が重畳された状態のシミュレーションを行う場合でも、第1色信号C1(λ)と各顔料の第2色信号C2(λ)に基づいて第3色信号C3(λ)を算出することで、最表面の顔料に塗布対象物の色と下地となる顔料の色とが反映された色信号を算出できる。
【0109】
さらに、第3色信号算出工程(ステップS13)では、演算部は、第1色信号C1(λ)、第2色信号C2(λ)、および光輝性粉体の色信号CG(λ)に基づいて、第3色信号C3(λ)を算出する。
【0110】
具体的な例として、演算部は、塗布領域の中で第1顔料と第2顔料と光輝性粉体(パール顔料)が重畳される領域において、以下の式(15)に基づいて、第3色信号C3(λ)を算出する。
【0111】
【0112】
ここで、第2色信号C2e(λ)は、塗布される顔料のうち光輝性粉体を除いた部分の色信号を示す。色信号CGp(λ)は、第1光輝性粉体の色信号である。色信号CGl(λ)は、第2光輝性粉体の色信号である。重み係数w1~w3は、各色信号に対して適切な重み付けを行う係数であり、シミュレーションにおける顔料の厚みや、塗布する順序などによって適宜決定される。
【0113】
このように、第1色信号C1(λ)、第2色信号C2(λ)、および光輝性粉体の色信号CG(λ)に基づいて、顔料が塗布されている状態の色信号を算出できる。これにより、顔料に含まれる光輝性粉体の色や光沢が反映された第3色信号C3(λ)が得られる。
【0114】
色値算出工程(ステップS14)では、第3色信号C3(λ)に基づいて、演算部が、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値(第2色値)を算出する。
【0115】
具体的には、演算部は、第3色信号C3(λ)およびRGB等の色関数を用いた以下の式(16)に基づいて第2色値を算出する。なお、式(16)における左辺のR2,G2,B2は、第2色値における各要素の値である。
【0116】
【0117】
第2画像生成工程(ステップS15)では、第2色値および光輝性粉体の形状情報に基づいて、演算部が、第2画像を生成する。この工程では、前段階で定義された色値と光輝性粉体の粒子形状、サイズ、分布などの形状情報を組み合わせることで、対象物上に光輝性粉体が塗布された状態を表現する画像が創出される。この画像生成プロセスにおいて、光輝性粉体の独特な光学特性や粒子の形状が考慮されるため、実際に光輝性粉体を塗布した際の見た目に非常に近いシミュレーション結果を得ることができる。この工程により、最終的なビジュアルエフェクトの精度が向上し、ユーザによりリアルなビジュアル体験を提供することが可能となる。
【0118】
重畳画像生成工程(ステップS16)では、第2色値および光輝性粉体の形状情報に基づいて、演算部が、光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する。具体的には、演算部は第1画像と第2画像を重畳し、両者を組み合わせた画像を作成する。このプロセスによって、光輝性粉体が塗布される領域とその周辺の関係をリアルタイムで視覚化し、最終的な見た目の確認を可能にする。このような重畳技術を用いることで、光輝性粉体の微妙な色の変化や形状の特性を、塗布された対象物の表面上で正確に再現することができる。結果として、よりリアルで細かなディテールを含んだ画像が生成され、ユーザは塗布する粉体の最終的な見た目を詳細に把握することが可能となる。
【0119】
このように、第1色信号C1(λ)および第2色信号C2(λ)を、照明光分光分布E(λ)および照明光源の空間分布に基づいて算出することで、シミュレーション結果としての重畳画像には、第1画像が撮影された場所の照明環境が反映される。この手法により、第1画像における照明環境の影響を考慮したシミュレーションが可能である。
【0120】
さらに、実際の照明環境における分光分布の実測値から算出される照明光分光分布E(λ)を用いることで、様々な照明環境を容易に再現できる。これにより、例えば、特定の照明環境下でのシミュレーションを容易に行うことができる。同様に、異なる照明環境下でのシミュレーションの結果を比較することも簡便になる。
【0121】
なお、
図1に示される各工程の順序は、処理に支障が無い範囲において適宜変更されてもよい。例えば、照明環境推定工程(ステップS5)および第1分光反射率算出工程(ステップS7)は、この順で実行されてもよく、順序を入れ替えて実行されてもよい。言い換えれば、照明環境推定工程(ステップS5)の後に第1分光反射率算出工程(ステップS7)が実行されてもよく、または、第1分光反射率算出工程(ステップS7)の後に照明環境推定工程(ステップS5)が実行されてもよい。また、例えば、表面特定工程(ステップS4)は、塗布対象物の表面の凹凸が考慮されない場合、第1色信号算出工程(ステップS8)よりも後に実行されてもよい。
【0122】
また、第1画像と第2画像が重畳している状態で、別の顔料を選択することで、第1分光反射率算出工程(ステップS7)~色値算出工程(ステップS14)を再度実行し、別の顔料が適用された重畳画像を生成、表示させることもできる。この際、例えば、一度算出した第1色信号C1(λ)をメモリに記憶させることで、第1分光反射率算出工程(ステップS7)および第1色信号算出工程(ステップS8)を省略してもよい。このように、様々な顔料を選択して繰り返しシミュレーションすることで、ユーザ自身の希望に合う顔料を探すことができる。
【0123】
[(2)干渉パール顔料/着色パール顔料]
光輝性粉体には、干渉パール顔料および着色パール顔料が含まれる。干渉パール顔料は、特定の光の干渉効果を利用して、様々な色彩や輝きを発生させる顔料である。この効果は、薄膜干渉と呼ばれ、薄い膜の上に光が当たると、膜の内部で反射し、干渉することにより発生する。干渉パール顔料は、主に酸化チタン(TiO2)などの金属酸化物をマイカ(雲母)などの鉱物の表面にコーティングして作られるが、干渉効果を示す顔料であれば、これだけに限定されない。例えば、積層樹脂のラメ剤等が挙げられる。積層に使用される樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0124】
この顔料の特徴は、見る角度によって色が変わることである。例えば、光源からの光が顔料に当たり、観察者の目に到達する際に、顔料の薄膜の中で反射し干渉することにより、観察角度によって異なる色が観察される。これにより、赤、緑、青、黄、紫などの異なる色が見える場合がある。また、干渉パール顔料は色自体を持たず、光の干渉によって色が生じるため、非常に鮮やかで深みのある色彩を実現する。
【0125】
干渉パール顔料は、例えば、化粧品、塗料、インク、プラスチック、自動車の塗装など、さまざまな産業で利用される。特に、化粧品では、自然な輝きや立体感を出すために使われ、自動車塗装では、角度によって色が変わるメタリックな輝きを出すために用いられる。この顔料を使用することで、肌や製品に独特の美しさや魅力を加えることが可能である。
【0126】
着色パール顔料は、金属や鉱物の微細な粉末に色素をコーティングして作られ、直接色を付加した光輝性粉体である。この顔料の特徴は、光輝性粉体自体が持つ色により、照明や視点の変化に関わらず一定の色を示す点にある。着色パール顔料は、干渉パール顔料と異なり、見る角度や光の当たり方によって色が大きく変わることは少ないが、光によって輝度や色の深みが変化する。
【0127】
着色パール顔料は、主に、メタリックやパール感を出したい化粧品、塗料、プラスチックなどの産業で使用される。着色パール顔料を用いることで、製品に豊かな色彩と独特の質感を与え、魅力を高めることができる。また、複数の色素を組み合わせることにより、様々な色合いの顔料を製造することが可能であり、デザインの幅が広がる。
【0128】
着色パール顔料の製造には、干渉パール顔料に、有機顔料や無機顔料をコーティングする技術が用いられる。これにより、自然光下での輝きや色の再現性が向上し、さまざまな用途に適した顔料が提供される。
【0129】
着色パール顔料の応用例としては、化粧品におけるアイシャドウやチーク、リップ製品などが挙げられる。これらの製品に着色パール顔料を使用することで、自然な光沢感や立体感を演出し、使用者の肌に豊かな表情を与えることができる。また、自動車塗装やプラスチック製品にも適用され、高級感や独特の質感を表現するのに寄与している。
【0130】
本発明は、干渉パール顔料および着色パール顔料の高精度かつリアルな再現を可能とする。本発明が再現する光輝性粉体は、干渉パール顔料および着色パール顔料のうち少なくとも一方を含む。つまり、本発明は、干渉パール顔料および着色パール顔料の一方または両方を再現できる。
【0131】
干渉パール顔料を再現するために用いる三次元反射特性モデルと、着色パール顔料を再現するために用いる三次元反射特性モデルとは、互いに異なっていることが好ましい。前者を干渉系三次元反射特性モデルと定義し、後者を着色系三次元反射特性モデルと定義する。本発明では、干渉系三次元反射特性モデルおよび着色系三次元反射特性モデルの一方が用いられてもよいし、両方が用いられてもよい。
【0132】
第3色信号算出工程(ステップS13)において、演算部は、干渉パール顔料の光学特性情報を干渉系三次元反射特性モデルに与えて、干渉パール顔料の色信号を算出する。
【0133】
また、第3色信号算出工程(ステップS13)において、演算部は、着色パール顔料の光学特性情報を着色系三次元反射特性モデルに与えて、着色パール顔料の色信号を算出する。
【0134】
干渉系三次元反射特性モデルおよび着色系三次元反射特性モデルは、それぞれ異なる原理と特性に基づいて構築されている。
【0135】
干渉パール顔料の再現には、薄膜干渉の原理を利用する物理モデルが用いられる。この物理モデルでは、光がパール顔料の薄い膜に入射し、内部で複数回反射することによって生じる干渉効果をシミュレートする。この効果により、観察角度に応じて異なる色彩が見える現象を再現する。本発明では、干渉パール顔料の特性を高精度に再現するために、例えばTorrance-Sparrow モデルなどをベースとし、薄膜干渉の効果を加味した反射光の分布を定義している。これにより、角度によって色や輝度が変化する干渉パールの特徴を正確に表現できる。
【0136】
一方、着色パール顔料の再現には、ハイライトに直接着色するための別のモデル式が構築されている。着色パールは、干渉パールと異なり、顔料自体に色が付いている。その原理が不明な側面も存在しうるため、実際の見た目や測色値に合わせるために、着色系三次元反射特性モデルは、光輝性粉体の物理的な光反射特性を記述した物理モデルと、仮説に基づいて光輝性粉体の光反射特性を記述した経験的モデルと、のうち少なくとも一方のモデルを含む。つまり、原理を解明済みの物理モデルと、仮説に基づいた経験的モデルの両方を活用する柔軟性を持たせたモデルを使用している。この手法により、着色パール顔料特有の反射のぼやけ方や干渉の仕方を、数学モデルを用いて構築し、それらを組み合わせて一つの反射特性を表現することができる。主に経験的モデルを用いることで、光の反射と干渉により被膜の特定の色調が協調される現象を精密に再現し、着色パール特有の色効果を再現している。このプロセスは、単なる物理モデルに依存するのではなく、実際の色彩を再現するための実践的なアプローチであり、この方法が実物の色再現に適合している。将来的には、技術の進歩により、経験的モデルを物理モデルに置き換えることが可能となる。
【0137】
これらのアプローチの違いは、干渉パール顔料と着色パール顔料が持つ物理的な特性と反射メカニズムの違いに由来している。干渉パールは光の干渉による色変化を、着色パールは顔料自体の色とその反射特性に基づく色彩を再現するためのものである。このように、本発明は両タイプのパール顔料の独特な光輝効果を高精度かつリアルに再現するための適切なモデルを用いている。
【0138】
[(3)ばらつき]
光輝性粉体は、粉砕、合成、沈殿、蒸着などの様々な方法で製造される。これらのプロセスでは、原料の粒子サイズの不均一性、反応条件の微妙な違い、または粉砕機械の設定差異などにより、最終的な粒子サイズにばらつきが生じる。例えば、粉砕過程では、粒子が不規則な形状に砕かれ、さまざまなサイズの粒子が生成される。光輝性粉体を高精度かつリアルに再現するためには、このばらつきを表現することが好ましい。例えば光輝性粉体が化粧品に用いられる場合、製品が近くで見られるため、粒径が小さい領域(20~200μm程度)でのばらつきを正確に再現することが特に重要である。
【0139】
そこで、本発明では、光輝性粉体の平均粒径および標準偏差といった数値パラメータを入力することにより、光輝性粉体の形状や粒子分布などを計算により自動的に求めることが可能である。つまり、光輝剤情報取得工程(ステップS12)において取得する形状情報が、光輝性粉体の平均粒径および標準偏差を含む。標準偏差は、粒径のばらつきを定量的に示す指標である。これらの情報は、例えば顕微鏡や粒度分析装置などを用いて取得することが可能である。粒子の大きさとその分布は、粉体が実際に塗布された時の外観に大きな影響を与えるため、この情報は非常に重要である。
【0140】
そして、第2画像生成工程(ステップS15)において、平均粒径および標準偏差に基づいて、確率分布を用いて前記画像を生成する。つまり、取得した平均粒径および標準偏差を基に、光輝性粉体の粒子が持つサイズのばらつきを確率分布に基づいて表現する。これにより、実際に粒子の大きさが一定でなく、ランダムなばらつきを持つことを反映できる。
【0141】
確率分布には、正規分布、対数正規分布、二項分布、ポアソン分布など多種多様なものが存在する。本発明では、これらの確率分布を適用できる。特に、薄いガラスの板などを粉砕したときの粒子のサイズ分布には、対数正規分布が適している。これは、ガラス状の材料が砕かれた際に生じる粒子のサイズが対数正規分布に従う傾向にあるためである。一方、最初から特定の形状を有する材質の場合、例えば、製造過程で一定の形状やサイズに加工された粒子などは、この分布には必ずしも従わない。そのため、使用される材質や粒子の特性に応じて、最適な確率分布を選択することが重要である。
【0142】
対数正規分布は、変数の対数が正規分布に従う確率分布であり、正の実数上で定義される。この分布は、自然界や社会現象で見られるサイズの分布に適用されることができる。例えば、個体の大きさ、所得の分布、粒子のサイズ分布などが挙げられる。
【0143】
対数正規分布は非常に小さい値から大きな値まで広い範囲のサイズを表現できる。光輝性粉体の粒子は非常に細かいものから比較的大きなものまで幅広いサイズが存在し、この広範囲を一つの分布で表現することが可能である。
【0144】
対数正規分布は、右裾が長く裾野が広がる特性を持つ。多くの物質製造プロセスでは、少数の大きな粒子と多数の小さな粒子が生成されることが一般的であり、この現象を対数正規分布は自然に表現できる。
【0145】
特に、光輝性粉体の粒度分布が対数正規分布に特に適していると考えられる。これは、光輝性粉体が粉砕や合成の過程で生成され、さらに分級という工程を通じて粒径が選別されることにより、その粒度分布が対数正規分布に近くなる傾向にあるためである。ただし、技術の進歩によって将来的には粒度分布をより高精度に表現できる確率関数を用いる可能性がある。
【0146】
対数正規分布を純粋に適用すると、特定のパラメータに依存して、非常に粒径の大きな光輝性粉体が稀に出現することがあり、塗布領域が狭く、肌から近い距離での仕上がり確認が多い化粧品においては、これが大きな違和感を引き起こす可能性がある。そこで、本発明では、一定の粒径を超える光輝性粉体は表示しないような処理を加えることで、この問題を解決している。この処理により、化粧品としての仕上がりの質感や見栄えを自然に保ちつつ、違和感のない範囲での粒子サイズのばらつきを正確に再現することが可能となる。
【0147】
[(4)生成画像]
生成する画像は、法線マップを用いて表現される。法線マップは、三次元表現技術の一つであり、表面の細かな凹凸をシミュレートするために使用される。具体的には、各ピクセルにおける表面の法線ベクトルの方向を色情報としてエンコードし、この情報を利用して光の反射や陰影を計算する。法線マップを用いることで、実際に三次元形状を作成することなく、視覚的に三次元的な凹凸や質感を表現できる。この技術は、計算コストを抑えつつリアルな表現を可能にすることができる。法線マップは、特に細かい部分の再現に有効であり、光輝性粉体の質感や光沢の再現において重要な役割を果たす。
【0148】
この画像生成において、法線マップ以外にも様々な技術が利用できる。例えばディスプレースメントマッピングは、物体の表面の凹凸をよりリアルに再現するために使用される。法線マップが表面の見た目の変更に主に寄与するのに対し、ディスプレースメントマッピングは実際の幾何学的な変形を伴う。これにより、表面の高さが変わり、より立体的な表現が可能になる。環境マッピングは、環境の反射をシミュレートし、オブジェクトが置かれている環境内でのリアルな反射効果を生成する。特に、光沢のある表面やメタリックな質感の表現に有効である。サブサーフェイス・スキャッタリング(SSS)は、半透明の物体の内部で光が散乱する効果をシミュレートする。光が部分的に透過する材質のリアルなレンダリングに用いられる。
【0149】
生成する画像における光輝性粉体の平面視形状は、多角形であることが好ましい。多角形の例として、三角形、四角形、三角形、五角形、六角形などが挙げられる。
【0150】
光輝性粉体は、通常、薄いガラスの板や他の素材を粉砕して製造される。この粉砕過程によって生じる粒子は、完全な円形ではなく、自然に多角形の形状を帯びることが一般的である。この多角形の形状は、光の反射や屈折の特性に大きく影響を与え、その結果、光輝性粉体特有の独特な光沢や色彩の変化を生み出す。粉体の粒子が多角形であることは、特に角度によって見える色や輝きが変化する干渉効果やメタリックな質感の再現において重要であり、これらの視覚効果を豊かに再現する。したがって、画像生成においても、実際の光輝性粉体の製造過程を反映し、粒子を多角形で表現することで、よりリアリティのある質感と視覚効果を実現することができる。
【0151】
生成する画像における光輝性粉体の粒径は、3mm以下でありうる。この粒径の光輝性粉体は、化粧料に用いられる。3mm以下の細かい粒径の粉体は、粉砕されて製造され、この粒径の細かさが肌に滑らかな質感と均一な光沢を提供する。このような細かい粒子は、光を捉え反射する能力が高く、見る角度によって色や輝きが変化し、化粧料に豊かな表情を与える。
【0152】
細かい粒径の光輝性粉体は、ハイライト、アイシャドウ、ファンデーションなど多岐にわたる化粧料に利用される。これらは肌に自然な輝きを加え、立体感や深みのある表現を可能にする。
【0153】
[(5)光輝剤情報取得工程]
分光反射率を含む光学特性情報の取得に際しては、光の入射角度および反射角度が重要な役割を担っており、これらは視線ベクトル、法線ベクトル、照明方向ベクトルの三者間の幾何的関係に依存する。特に、光源からの光が物体に入射する角度(光源角度)は、色の正確な再現性に大きな影響を及ぼす。着色パール顔料などの光輝性粉体の色特性を正確に捉えるためには、分光測色計を用いた分光反射率の測定が好適である。この測定過程では、測色する角度が結果に影響を与えるため、具体的な角度の選定が重要となる。
【0154】
このことについて、再び
図4を参照しながら説明する。
図4では、測色する角度が示されている。照明方向ベクトルLを基準として、照明方向ベクトルLと法線ベクトルNがなす角度が45°となっている。
【0155】
光輝性粉体の原色を正確に再現するためには、特定の角度で測色することが必要である。光輝剤情報取得工程(ステップS12)において、分光測色計で取得する分光反射率は、照明方向ベクトルLと光輝性粉体が塗布される対象物の表面Sとの間の方向に反射した光、または、照明方向ベクトルLの正反射方向ベクトルと表面Sとの間の方向に反射した光の分光反射率であることが好ましい。
【0156】
分光測色計で取得する光の反射角度は特に限定されないが、より望ましいことには、表面Sに対する水平方向を0度とするとき、分光測色計で取得する光の反射角度が25度以下であることである。すなわち、仮想光源52から発せられた光が表面Sで正反射し、仮想視点53bにおいて観測される反射光の方向を0度と定義する。このとき、110度の方向と表面Sとの間に反射した光、または、-15度の方向と表面Sとの間に反射した光の分光反射率を取得することが望ましい。これにより、化粧膜の質感要素を排除した実際の色を捉え、観察される色の再現性を高めることが可能となる。
【0157】
なお、適切な三次元反射特性モデルを用いることで、計測していない角度における光の反射特性も補間や推定により求めることが可能である。
【0158】
[(6)システム構成]
図5は、本発明の一実施形態に係る画像生成方法が適用される画像生成システムの構成例を示す模式図である。
図5に示されるとおり、画像生成システム1は、ユーザ端末10と、サーバ20とを備える。ユーザ端末10は、ユーザ2が所有する情報処理装置であり、一例としてスマートフォンが挙げられる。また、ユーザ端末10は、タブレット、ラップトップパソコン、デスクトップパソコンなどの情報処理装置であってもよい。
【0159】
塗布対象物が例えば顔である場合、画像取得工程(ステップS2)では、ユーザ端末10の制御部11が、撮像部14に対して未化粧状態のユーザ2の顔画像(未化粧状態の顔の肌及び唇を含む第1画像)の取得を指示する。その後、制御部11は、第1色値で構成される第1画像をサーバ20に送信する処理を実行する。
【0160】
なお、例えば、デジタルカメラなどの外部装置で取得した顔画像を第1画像として使用することも可能である。また、照明環境推定用画像についても、ユーザ端末10の撮像部14を使用して取得された画像である必要はなく、ユーザ端末以外の外部装置で取得された画像を使用してもよい。
【0161】
サーバ20は、画像生成システム1における各種処理を実行するサーバコンピュータであって、画像生成を行うための画像生成装置の一例である。具体的に、サーバ20は、顔料を塗布した状態の塗布対象物を含む画像である第2画像を生成する。また、サーバ20は、顔料を塗布する前の状態の塗布対象物を含む画像である第1画像に、第2画像を重畳させる。なお、本実施形態において、第1画像は、塗布対象物を含む画像であればよく、塗布対象物以外の物を含んでいてよい。例えば塗布対象物が唇である場合、第1画像は、唇と唇以外の部位とを含む画像であってよく、具体的には顔画像であってよい。
【0162】
ユーザ端末10及びサーバ20は、通信回線であるネットワーク3を介して接続されている。ネットワーク3は、一例として、携帯電話の4G、5Gなどの移動通信システム、Wi‐Fi(登録商標)などの無線LAN通信システムである。
【0163】
ユーザ端末10には、アプリケーションプログラムとしての画像表示プログラムがインストールされている。画像表示プログラムは、ユーザ端末10に第1画像、及び第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像などの各種画像を表示する処理を実行させるプログラムである。画像表示プログラムは、ネットワークを介してアプリケーション配信装置からダウンロードされ、ユーザ端末10にインストールされる。
【0164】
ユーザ端末10は、タッチパネル13を備える。タッチパネル13には、第1画像30aや、シミュレーション結果としての重畳画像30bなどの各種画像が表示される。
【0165】
[(7)ユーザ端末]
図6は、本発明の一実施形態に係る画像生成方法が適用されるユーザ端末の構成例を示すブロック図である。
図6に示されるとおり、ユーザ端末10は、制御部11と、メモリ12と、タッチパネル13と、撮像部14と、通信部15とを備える。制御部11は、一例として、CPUであり、ユーザ端末10における全体の動作を制御する。
【0166】
メモリ12は、メインメモリとデータ記憶部とを備える。メモリ12が備えるメインメモリは、一例として、RAMであり、ユーザ端末10のデータやプログラムなどを一時的に記憶する。メモリ12が備えるデータ記憶部は、不揮発性メモリであって、一例として、フラッシュメモリである。メモリ12が備えるデータ記憶部には、例えば、画像表示プログラムなど、ユーザ端末10における各種処理を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0167】
タッチパネル13は、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスと、位置入力デバイスとを組み合わせたタッチ操作入力が可能なディスプレイである。すなわち、タッチパネル13は、ユーザ端末10において、画像30が表示される表示部であり、また、サーバ20に対して操作入力を行う操作部である。
【0168】
撮像部14は、例としてCCDやCMOS等の撮像素子を備えるカメラである。撮像部14は、可視光等の光を検出し、色彩情報を含む画像データを出力する。以下では、撮像部14で取得された画像の色値を第1色値とする。
【0169】
撮像部14は、第1色値で構成される、顔料を塗布する前の状態でのユーザ2の顔画像(未化粧状態の顔を含む第1画像)を取得する。また、撮像部14は、後述する照明環境推定部において用いられる照明環境推定用画像を取得してもよい。なお、本発明は、顔料の塗布に関するものであるが、その応用範囲は化粧料に限定されない。例えば、自動車の塗装にも適用可能である。
【0170】
通信部15は、ネットワーク3を介して、サーバ20と通信する。具体的に、通信部15は、ユーザ端末10からの信号をサーバ20に送信し、また、サーバ20が生成した画像などのデータを受信する。また、通信部15は、ネットワーク3を介してサーバ20以外の情報処理装置(図示せず)と通信可能であってよい。この場合、通信部15は、例えばサーバ20以外の情報処理装置から第1画像又は上記照明環境推定用画像を受信してもよい。
【0171】
[(8)サーバ]
図7は、本発明の一実施形態に係る画像生成方法が適用されるサーバの構成例を示すブロック図である。
図7に示されるとおり、サーバ20は、演算部21と、メモリ24と、通信部25とを備える。演算部21は、一例として、CPU22とGPU23とを備える。CPU22は、サーバ20における画像の生成処理以外の全体の動作を制御する。GPU23は、サーバ20における画像の生成処理を実行する。
【0172】
メモリ24は、メインメモリとデータ記憶部とを備える。メモリ24が備えるメインメモリは、一例として、RAMであり、サーバ20のデータやプログラムなどを一時的に記憶する。メモリ24が備えるデータ記憶部は、不揮発性メモリであって、一例として、HDDやSSDなどのフラッシュメモリである。
【0173】
メモリ24が備えるデータ記憶部には、例えば、画像生成プログラムなど、サーバ20における各種処理を実行するためのプログラムが記憶されている。画像生成プログラムは、第2画像を生成し、第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像を生成する処理をサーバ20に実行させるプログラムである。画像生成プログラムにおける処理は、演算部21が備えるGPU23によって制御される。
【0174】
なお、この構成に限定されるわけではなく、例えば、ユーザ端末10の制御部11にGPUを設け、ユーザ端末10に画像生成プログラムをインストールし、ユーザ端末10が備えるGPUで処理を行うことも可能である。
【0175】
メモリ24は、データ記憶部としての分光変換データベース24aと、照明環境データベース24bと、顔料データベース24cとを備える。また、メモリ24は、RGB値から照明光の分光分布を求めるためのシステム変換マトリックスを記憶する変換マトリックス記憶部24dをさらに備えていてもよい。
【0176】
分光変換データベース24aは、第1変換関数Mを記憶している。第1変換関数Mは、色値を分光反射率に変換するための関数である。例えば、第1変換関数Mは、塗布対象物を構成する第1色値を、顔料を塗布する前の状態における塗布対象物の分光反射率、すなわち第1分光反射率S1(λ)に変換する。本実施形態では、分光変換データベース24aが、塗布対象物の例としての顔の素肌や唇など、各部位ごとに第1変換関数Mを記憶している。
【0177】
具体例として、分光変換データベース24aは、塗布対象物の一例である肌に含まれるメラニン色素量に応じて、第1タイプの肌と、第2タイプの肌と、第3タイプの肌との3つのタイプに分けて、肌の色に応じた第1変換関数Mを記憶する。第1タイプの肌は、メラニン色素量が第2タイプ及び第3タイプよりも少ない第1範囲内にある肌であって、肌に光を当てた時の各波長の相対反射率が高い肌である。第2タイプの肌は、メラニン色素量が第1範囲より多い第2範囲内にある肌であって、肌に光を当てた時の各波長の相対反射率が中程度の肌である。第3タイプの肌は、メラニン色素量が第2範囲より多い第3範囲内にある肌であって、肌に光を当てた時の各波長の相対反射率が低い肌である。なお、分光変換データベース24aは、例えば、肌のRGB値を所定の範囲ごとに区分し、肌のRGB値における区分ごとの第1変換関数Mを記憶してもよい。
分光変換データベース24aでは、肌を例として、メラニン色素の量に基づき、例えば3つのタイプに分類し、それぞれの肌の色に適した第1変換関数Mを記憶している。具体的には、第1タイプの肌はメラニン色素の量が最も少なく、光を当てた際に相対反射率が高い。第2タイプの肌はメラニン色素が第1タイプより多く、反射率が中程度である。第3タイプの肌はさらにメラニン色素が多く、反射率が低い。また、このデータベースは、肌の色値を特定の範囲ごとに分類し、各範囲に応じた第1変換関数Mを記憶することも可能である。
【0178】
照明環境データベース24bは、塗布対象物に当てられる照明光の種類と、その照明光を生み出す光源の配置を、照明環境ごとに記憶している。ここでいう照明光には、塗布対象物に直接当たる直接光源と、周囲の物体から反射して塗布対象物に当たる反射光源が含まれるが、この二つは本実施形態では明確に区分されていない。そのため、照明環境データベース24bは、塗布対象物周囲の全方位からの、直接光源と反射光源の両方を含む光源の配置と、それらからの照明光分光分布E(λ)を網羅的に記録している。光源の配置情報は、照明光の塗布対象物への当たり方、例えば入射角度などの幾何学的条件を定義するのに使われる。
【0179】
照明光分光分布E(λ)および照明光源の空間分布は、例えば、実際の照明環境において、全方位からの分光画像を取得し、可視波長域(例えば、400~700nm)で5nmごとに分光分布をサンプリングすることで求めることができる。この場合、照明環境データベース24bは、分光画像の各画素における照明光分光分布E(λ)を記憶する。各画素の位置は、塗布対象物を中心とした全方位の空間に分布する照明光源の空間分布を特定する情報となり、割り当てられた照明光分光分布E(λ)は、塗布対象物に照射される照明光の分光分布となる。すなわち、分光画像の各画素を照明光源とみなし、それに照明光分光分布E(λ)を割り当てることで、全方位の照明光源の空間分布と、各照明光源から照射される照明光の分光分布を得る。この方法により、実際の照明環境において直接光源と反射光源を区別せずに、シーン全体の照明光源を一括で処理することが可能となり、例えば複数の照明光源が存在する場合でも、照明環境の再現が可能である。
【0180】
顔料データベース24cは、第2変換関数T(λ)を顔料ごとに記憶する。第2変換関数T(λ)は、第1分光反射率S1(λ)に基づいて、顔料の分光反射率である第2分光反射率S2(λ)を算出するための変換マトリックスである。顔料が例えば化粧料であるとき、顔料データベース24cは、ファンデーションやチークなどの化粧料の種類、およびそれぞれの色や用途のバリエーションごとに、第2変換関数T(λ)を記憶する。
【0181】
具体的には、顔料データベース24cは、製品ごとに塗布対象物の色に対応する第2変換関数T(λ)を記憶する。例として、肌に塗布される化粧料の場合、製品ごとに第1タイプ、第2タイプ、第3タイプの肌それぞれに対応する第2変換関数T(λ)が記憶されている。
【0182】
第2変換関数T(λ)は、例えば、多くの人を対象に、塗布対象物の未塗布時の分光反射率Saと、顔料を塗布した後の分光反射率Sbを実測し、これらの分光反射率の変化量を基にして、塗布対象物の色ごとに統計的に算出される。
【0183】
また、顔料データベース24cは、顔料ごとに顔料の反射特性パラメータを記憶する。反射特性パラメータは、物体の表面性状、例えば表面の粗さに依存するパラメータであり、物体表面での照明光の入射角度に対する反射光の強度や光沢の広がりなど、反射特性を定義するものである。顔料の反射特性パラメータは、例えば、光沢計などの測定器を用いて顔料の表面に対する実際の測定から算出される。
【0184】
他にも、顔料データベース24cは、光輝性粉体の分光反射率および反射特性パラメータを記憶することが可能である。光輝性粉体の分光反射率は、顔料が肌に塗布された状態であっても、塗布対象物の色の影響を受けにくいため、肌自体の分光反射率とは独立した反射成分として計算される。このため、第2変換関数T(λ)を使用した算出処理は不要である。光輝性粉体の分光反射率に関しては、測定機器によって得られた実測値がデータベースに記憶される。
【0185】
変換マトリックス記憶部24dは、色値から照明光分光分布E(λ)を得るためのシステム変換マトリックスを記憶する。
【0186】
通信部25は、ネットワーク3を介して、ユーザ端末10と通信する。具体的に、通信部25は、ユーザ端末10からの信号を受信し、また、サーバ20が生成した画像などのデータをユーザ端末10に送信する。
【0187】
[(9)GPU]
図8は、
図7に示すGPUの機能構成の例を示すブロック図である。
図7に示されるとおり、演算部21が備えるGPU23は、画像取得部23a、形状推定部23b、表面特定部23c、照明環境推定部23d、第1分光反射率算出部23e、第1色信号算出部23f、特徴部分特定部24g、第2分光反射率算出部23h、第2色信号算出部23i、光輝剤色信号算出部23j、第3色信号算出部23k、色値算出部23l、第2画像生成部23m、および重畳画像生成部23nを有しており、これらとして機能する。
【0188】
画像取得部23aは、画像取得工程(ステップS2)の処理を実行する。
【0189】
形状推定部23bは、形状推定工程(ステップS3)の処理を実行する。
【0190】
表面特定部23cは、表面特定工程(ステップS4)の処理を実行する。
【0191】
照明環境推定部23dは、照明環境推定工程(ステップS5)の処理を実行する。
【0192】
第1分光反射率算出部23eは、第1分光反射率算出工程(ステップS7)の処理を実行する。
【0193】
第1色信号算出部23fは、第1色信号算出工程(ステップS8)の処理を実行する。
【0194】
特徴部分特定部24gは、特徴部分特定工程(ステップS9)の処理を実行する。
【0195】
第2分光反射率算出部23hは、第2分光反射率算出工程(ステップS10)の処理を実行する。
【0196】
第2色信号算出部23iは、第2色信号算出工程(ステップS11)の処理を実行する。
【0197】
光輝剤色信号算出部23jは、光輝剤色信号算出工程(ステップS12)の処理を実行する。
【0198】
第3色信号算出部23kは、第3色信号算出工程(ステップS13)の処理を実行する。
【0199】
色値算出部23lは、色値算出工程(ステップS14)の処理を実行する。
【0200】
第2画像生成部23mは、第2画像生成工程(ステップS15)の処理を実行する。
【0201】
重畳画像生成部23nは、重畳画像生成工程(ステップS16)の処理を実行する。
【0202】
サーバ20に搭載されたGPU23がこれらの処理を実行することにより、これらの処理を高速に行うことが可能となり、リアルタイムでの画像生成が実現する。例えば、拡張現実(AR)や複合現実(MR)を活用したシミュレーションが可能になるため、ユーザは様々な塗布効果を即座に確認できるようになる。
【0203】
この技術の応用は、化粧品の試用や自動車のカスタマイズシミュレーションなど、ユーザが実際に製品を手に取る前に、多様な仕上がりやデザインを視覚的に体験することを可能にする。GPU23の高速処理能力により、複雑な光輝性粉体の反射特性や質感をリアルタイムで再現し、よりリアリスティックなシミュレーション結果を提供することができる。これにより、製品開発者やデザイナーは、製品の外観や効果に対するユーザの反応を早期に評価し、製品の改善やマーケティング戦略の策定に役立てることができる。
【0204】
[(10)効果]
本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。さらに、本実施形態は、本明細書中に記載されている他の効果も実現可能である。
【0205】
(1)光輝性粉体の特有な光沢や、視点や光源の変化に応じた色の変化を物理的なモデルに基づいて高精度に再現することができる。これにより、実際の使用状況における粉体の振る舞いを正確に予測し、表示することが可能となる。
【0206】
(2)異なる光源の下での光輝性粉体の振る舞いや、視点の変化による色や光沢の変化をリアルタイムで確認できるため、使用者がさまざまな環境下での顔料の効果をあらかじめ把握することができる。
【0207】
(3)干渉パール顔料と着色パール顔料の独特な光輝効果を高精度に再現することができる。干渉パール顔料に関しては、薄膜干渉の原理を利用する物理モデルを採用し、内部で複数回反射して生じる干渉効果によって、観察角度に応じて色彩が変化する現象を正確にシミュレートする。一方で、着色パール顔料の再現には、金属のような外観を実現する別のモデル式が構築され、顔料自体に色が付いている特性と、光反射特性のぼやけ方や干渉の仕方を数学モデルにより表現する。これらのモデルは、干渉パールと着色パールそれぞれの物理的な特性と反射メカニズムの違いに基づいており、将来的には技術の進歩によりさらなる精度の向上が期待される。
【0208】
(4)光輝性粉体の粒子サイズのばらつきをリアルに再現することが可能となるだけでなく、平均粒径および標準偏差を変更することにより、リアルタイムで粒子サイズの分布を調整し、さまざまな状況を予測して可視化することもできる。対数正規分布を用いることにより、非常に細かい粒子から比較的大きな粒子まで、実際の光輝性粉体に見られる幅広いサイズのばらつきを一つの分布で捉え、これを基に材質情報のパラメータを調整することで、製品の試作過程において実物の材質の調合を変えることなく、コンピュータ上でのシミュレーションにより予測し、最適な外観や使用感を探求することが可能になる。この機能は、実際の使用感や見た目の効果を正確に予測する上で大きな利点となり、製品の開発プロセスを大幅に効率化する。
【0209】
(5)法線マップを用いた画像生成技術によって、光輝性粉体の独特な質感や光沢をリアルに再現することが可能となる。計算コストを抑えつつ、三次元的な凹凸や質感を視覚的に表現することができ、細かい部分の再現に特に有効である。
【0210】
(6)光輝性粉体の光学特性を正確に捉え、特に着色パール顔料などの色特性を正確に再現することが可能となる。光の入射角度および反射角度、すなわち視線ベクトル、法線ベクトル、照明方向ベクトルの間の幾何的関係に基づいて分光反射率を含む光学特性情報の取得が行われる。この測定には分光測色計が用いられ、光源からの光が物体に入射する角度(光源角度)が色の再現性に重要であることが強調される。特に、照明方向ベクトルと表面との間に反射した光の分光反射率を特定の角度で測色することが重要であり、これにより化粧膜の質感要素を排除した実際の色が捉えられ、光輝性粉体の原色の再現性が高まる。この技術は、光輝性粉体が塗布される対象物の表面における色の再現性を大幅に向上させる。
【0211】
(7)第1三次元反射特性モデルを用いて第1色信号C1(λ)を算出し、第2三次元反射特性モデルを用いて第2色信号C2(λ)を算出することにより、顔料を塗布した状態における塗布対象物の色信号として、顔料に塗布対象物の色が反映された第3色信号C3(λ)を算出することが可能である。そして、第3色信号C3(λ)から第2色値を算出することで、顔料が塗布されている状態の塗布対象物を含む第2画像を生成できる。これにより、単に塗布対象物の領域に顔料の色を重畳する場合よりも、再現精度の高い画像生成を行うことができる。また、照明光による光沢を再現できるため、第2画像において、塗布対象物に顔料を塗布した状態の質感を再現できる。
【0212】
なお、本明細書において「再現精度」とは、実際の顔料において塗布対象物の位置、向き、または照明環境に対応して刻一刻と変化する顔料の光沢、色、および陰影などの三次元的な質感をリアルタイムに再現できることを意味する。
【0213】
(8)塗布対象物としての肌や唇の色に応じた第1変換関数Mに基づいて第1分光反射率S1(λ)を算出することで、より実際の肌や唇における分光反射率に近い第1分光反射率S1(λ)を算出できる。
【0214】
(9)第1分光反射率S1(λ)と、塗布対象物の色に応じた第2変換関数T(λ)に基づいて第2分光反射率S2(λ)を算出することで、実際に顔料が塗布対象物に塗布されて塗布対象物になじんだ状態での顔料の分光反射率により近い第2分光反射率S2(λ)を算出できる。
【0215】
(10)顔料ごとの第2分光反射率S2(λ)及び第2反射特性パラメータを用いて第2色信号C2(λ)を算出することで、顔料ごとの色及び反射特性が反映された第2画像を生成できる。
【0216】
(11)第3三次元反射特性モデルを用いることで、光輝性粉体の色信号CG(λ)を算出できる。そして、第1色信号C1(λ)、第2色信号C2(λ)、及び光輝性粉体の色信号CG(λ)に基づいて算出される第3色信号C3(λ)から第2色値を算出することで、顔料が塗布されている状態における光輝性粉体の光沢が再現された第2画像を生成できる。また、形状情報及び分散情報から推定される光輝性粉体が点在する領域において、光輝性粉体の色信号CG(λ)を算出することで、光輝性粉体の粒形状及び光輝性粉体の分散状態を再現できる。
【0217】
(12)第1色信号C1(λ)及び第2色信号C2(λ)を、第1画像の照明環境として推定された照明環境の照明光分光分布E(λ)及び照明光源の空間分布に基づいて算出することで、第2画像にも照明環境が反映される。したがって、第1画像における照明環境を反映した再現精度の高い化粧シミュレーションを行うことができる。
【0218】
(13)GPU23を用いて画像生成システム1における処理を実行することで、リアルタイムでの画像処理が可能となり、より適切に画像生成を行うことができる。例えば、拡張現実(AR)または複合現実(MR)で画像生成を行うことができる。
【0219】
(14)顔料の特性を示すパラメータとして、分光光度計、光沢計、及び色彩計測器などの各種測定機器によって計測された結果そのものを、顔料データベース24cに記憶させることができる。これにより、測定機器による計測結果を直接的に画像生成に利用することができる。
【0220】
(15)数学モデル(例えば三次元反射特性モデル)を適切に設定することで、デザイナーの感性や技術力に依存せずに光輝性粉体を高精度かつリアルに再現できる。従来のCG技術がRGB値を用いて色を指定する方法とは異なり、本発明では材料情報を入力として物理的な計算を行い、色を自動で生成する。これにより、視点や光源の角度に応じて変化する光輝性粉体の色変化を自然かつ正確に再現できる。
【0221】
(16)顔料を構成する材質ごとに個々の数学モデルとして分解して、それぞれを独立したブロック構造として記述することが可能となる。上記構造を採用することでえられる利点は次のとおりである。
【0222】
(16-1)光沢や陰影、照明や視点の角度に応じた色の変化など、三次元的な変化に対応する映像の再現が可能であるため、実在の顔料の質感や観測条件の変化に応じた質感の変化を実物と同様に再現することが可能である。
【0223】
(16-2)顔料の開発において、個々の組成を数学モデルのブロック構造で記述することにより、特定の成分を除去したり追加したりすることだけでなく、パラメータの変更もシミュレーション上で可能となる。ここでいうパラメータとは、数学モデルに与える数値データのことであり、含有量の変化、特定の波長を強める材料の増減、粒径の変更などがこれに該当する。これにより、実物の顔料を用意しなくても、顔料の成分組成や特性の変化に対応するコンピュータシミュレーション(視覚シミュレーション)が可能となる。
【0224】
(16-3)数学モデルの精度を引き上げることにより、画像生成システム1の高機能化が図れる。しかし、システムの高機能化が処理速度の低下をもたらす可能性があるため、この点を考慮して数学モデルの精度を引き下げることにより、画像生成システム1の高速化を図ることが可能である。
【0225】
(16-4)複雑な組成を持つ顔料など、全体のモデル化が困難な場合には、部分的に簡略化したモデルや仮説を含む経験的モデルなどの精度の低いモデルをブロックとして独立して記述することができる。計測精度の向上などにより、精度の低いモデル(ブロック)を高精度なモデルに置き換えることで、モデル全体の精度を徐々に向上させることが可能である。
【0226】
(16-5)特に、従来の表現方法では再現が難しかったカラートラベルパールのような複雑な光学効果を持つ顔料も、本システムを用いることで効果的に再現することが可能になる。カラートラベルパールは、視点や光源の角度によって色が変化する特性を持ち、その再現には高度なモデル化が必要である。本発明では、これらの特性を捉えるために、経験的モデルを活用し、従来の方法では表現できなかったカラートラベルパールの独特な色彩変化を、コンピュータ上で正確にシミュレートすることができる。
【0227】
(16-6)さらに、この方法の大きな利点の一つは、材質が未知のものであっても、利用可能な計測データからその材質の特性を予想してモデルを構築できることである。これにより、複雑な組成の材質であっても、ある程度の精度でモデルを作成することが可能となり、材質の理解や開発プロセスが大幅に促進される。
【0228】
本発明の第1実施形態に係る画像生成方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0229】
[2.第2実施形態(化粧シミュレーション方法の例)]
第1実施形態に係る画像生成方法は、化粧シミュレーションに適用可能である。この化粧シミュレーションでは、光輝性粉体を化粧料として扱い、その光学特性情報や形状情報を取得する工程が含まれる。取得した情報は、光輝性粉体の光反射プロセスを説明する数学モデル、すなわち三次元反射特性モデルに供給され、光輝性粉体の色信号を算出するために使用される。次に、この色信号を基にして光輝性粉体の色値を算出し、その色値と形状情報に基づいて光輝性粉体が塗布された状態の画像を生成する工程が行われる。これにより、化粧シミュレーション方法が提供される。
【0230】
つまり、本発明は、化粧料である光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、化粧シミュレーション方法を提供する。
【0231】
この光輝剤情報取得工程、色信号算出工程、色値算出工程、および画像生成工程については、
図1を参照しながら説明したため、再度の説明を省略する。
【0232】
本実施形態に係る化粧シミュレーション方法について、
図9および
図10を参照しながら説明する。
図9および
図10は、本発明の一実施形態に係る化粧シミュレーション方法において表示する画面の例である。
図9に示されるとおり、ユーザ端末10のタッチパネル13には、画像表示プログラムによって表示されるアプリケーション画像であるアプリ画像40が表示される。アプリ画像40は、画像表示領域41と、操作領域42とを備える。画像表示領域41は、第1画像、及び第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像などの画像30が表示される領域である。
【0233】
操作領域42は、例えば、切換オブジェクト42a、化粧領域選択オブジェクト42b、化粧料選択オブジェクト42c、照明選択オブジェクト42d、及び、操作オブジェクト42eを備える。切換オブジェクト42aは、化粧料ごとにシミュレーション結果のON、OFFを切り換えるオブジェクトである。
【0234】
化粧領域選択オブジェクト42bは、塗布対象物における化粧料が適用される領域である化粧領域31を手動で指定するためのオブジェクトである。化粧領域31を指定する方法の一例としては、画像表示領域41に表示された第1画像30aにおいて、化粧料を塗布したい領域をタップ操作入力で指定する。化粧領域31としては、例えば、ファンデーションであれば顔の肌全体が指定され、チークであれば頬骨付近の肌が指定され、アイカラーであれば目元付近の肌が指定され、リップであれば唇が指定される。なお、化粧領域31は、画像認識機能等を用いて自動で設定される構成でもよい。
【0235】
化粧料選択オブジェクト42cは、シミュレーションしたい化粧料の製品を選択するためのオブジェクトである。
図10に示されるとおり、化粧料選択オブジェクト42cをタップ操作することで、画像表示領域41に化粧料選択領域43が表示される。化粧料選択領域43には、顔料データベース24cに登録された化粧料が、製品オブジェクト43aとして製品ごとに表示される。製品オブジェクト43aをタップ操作することで、化粧シミュレーションにおいて適用される化粧料の製品が選択される。
【0236】
具体例として、ファンデーションの場合では、リキッドファンデーション、パウダーファンデーションなどファンデーションの種類ごと、及び、色ごとに表示された製品オブジェクト43aの中から、シミュレーションしたい製品の製品オブジェクト43aを選択する。
【0237】
他の一例として、化粧領域及び化粧料の選択は、化粧領域選択オブジェクト42b及び化粧料選択オブジェクト42cを介さずに行われてもよい。例えば、画像表示領域41に表示された第1画像において、化粧料を塗布したい領域をタップすることにより、タップされた領域に応じた化粧料が自動で選択されてよい。具体例として、第1画像において頬骨付近がタップされた場合、化粧料としてチークが自動で選択され、化粧の専門家が指定したそのチークに適した塗布方法で塗布される。これにより、様々な化粧ノウハウを有する化粧の専門家が化粧料を塗布した時のイメージを再現できる。上記塗布方法は複数から選択されてよく、例えば年齢、雰囲気、又はTPOに合わせて塗布方法が選択されてよい。
【0238】
照明選択オブジェクト42dは、化粧シミュレーションにおける照明環境を選択するためのオブジェクトである。化粧料選択オブジェクト42cをタップ操作することで、画像表示領域41に照明選択領域(非図示)が表示される。照明選択領域には、照明環境データベース24bに登録された各種照明環境が、照明オブジェクトとして照明環境ごとに表示される。照明オブジェクトをタップ操作することで、化粧シミュレーションにおいて適用される照明環境が選択される。例えば、第1画像が撮影された場所の照明環境とは異なる照明環境で化粧シミュレーションを行いたい場合に、照明選択オブジェクトをタップ操作して、任意の照明環境が選択されてよい。
【0239】
操作オブジェクト42eは、画像表示領域41に表示された画像を移動、回転、拡大、縮小させるためのオブジェクトである。
【0240】
例えば、化粧シミュレーションシステム(画像生成システム1)を使用して、ユーザ2に対して各種化粧料のシミュレーションを実施することにより、ユーザ2の要望に応じた最適な化粧料を提案するカウンセリングが可能となる。このシステムを活用することで、ユーザ2の肌質や好み、さらには照明環境などに最適化された化粧品選びのアドバイスが行える。ユーザ2は、実際に化粧品を使用する前に、デジタル上でのシミュレーションを通じて、様々な製品の効果を確認し、自分に合った化粧品を見つけることができる。このようなカウンセリングは、化粧品の購入における失敗を減少させ、より満足度の高い製品選びをサポートする。また、このシステムは、美容師や化粧品販売員などの専門家によるカウンセリングにおいても有効に活用でき、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされた提案が可能になる。
【0241】
本実施形態における化粧シミュレーションシステムは、ユーザが化粧シミュレーションを通じて選択した化粧料を購入する機能を提供することもできる。具体的には、本システムは、画像表示プログラムを使用して生成されたシミュレーション結果としての重畳画像に適用された化粧料を購入するプロセスをサポートする。このプロセスを実現するために、サーバ20は、決済処理を実行するための決済部を備えることができる。
【0242】
ユーザは、化粧シミュレーションシステムを利用して自身の希望に合致する化粧料を探索し、選択した化粧料を直接購入することが可能である。この機能により、ユーザは実際の化粧品を購入する前に、デジタル上でのシミュレーションを通じて様々な化粧品の効果を確認し、自分に最適な製品を見つけることができる。これにより、化粧品購入時の失敗を減らし、より満足度の高い選択を支援する。
【0243】
本発明は、化粧品のシミュレーションだけでなく、車両の塗装、アート作品、ファッションデザインなど、幅広い分野での応用が期待される。特に、光輝性粉体を使用する製品のデザインやプレゼンテーションにおいてリアルな色彩表現が求められる場合に有効である。
【0244】
さらに、本発明による物理的な計算に基づく色の再現方法は、教育や研究分野においても非常に有用である。学生や研究者が物質の光学特性を深く理解する際に、実験的な観察だけでなく、この技術によるシミュレーションを補助的に使用することができる。
【0245】
本発明の第2実施形態に係る化粧シミュレーション方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0246】
[3.第3実施形態(画像生成装置の例)]
本発明は、光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する取得部と、前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出部と、前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体の色値を算出する色値算出部と、前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成部と、を備える、画像生成装置を提供する。
【0247】
本発明の一実施形態に係る画像生成装置の構成例について、
図11を参照しながら説明する。
図11は、本発明の一実施形態に係る画像生成装置の構成例を示すブロック図である。
【0248】
図11に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る画像生成装置70は、取得部71と、色信号算出部72と、色値算出部73と、画像生成部74と、を備える。
【0249】
取得部71は、光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する。上述したように、取得部71は、光輝剤情報取得工程(ステップS1)を行う。取得部71は、例えば、分光測色計やコンピュータディスプレイなどでありうる。
【0250】
色信号算出部72は、光学特性情報を、光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、光輝性粉体の色信号を算出する。上述したように、色信号算出部72は、光輝剤色信号算出部23jなどでありうる。
【0251】
色値算出部73は、色信号に基づいて、光輝性粉体の色値を算出する。上述したように、色値算出部73は、色値算出部23lなどでありうる。
【0252】
画像生成部74は、色値および形状情報に基づいて、光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する。上述したように、画像生成部74は、第2画像生成部23m、重畳画像生成部23nなどでありうる。
【0253】
本発明の第3実施形態に係る画像生成装置について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0254】
[4.第4実施形態(画像生成プログラムの例)]
本発明は、光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体の色値を算出する色値算出工程と、前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、をコンピュータに実行させる、画像生成プログラムを提供する。
【0255】
上述したように、画像生成プログラムは、サーバ20における各種処理を実行する。画像生成プログラムは、第2画像を生成し、第1画像と第2画像とを重畳した重畳画像を生成する処理をサーバ20に実行させるプログラムである。画像生成プログラムにおける処理は、演算部21が備えるGPU23によって制御される。
【0256】
本発明は、非揮発性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えば、フラッシュドライブ、SSD(ソリッドステートドライブ)、ROM(リードオンリーメモリ)、EEPROM(電気的に消去およびプログラム可能なリードオンリーメモリ)など)、磁気記憶媒体(例えば、ハードディスクドライブやフロッピーディスク)、光学記憶媒体(例えば、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク)に記録された、画像生成プログラムを含む。この記憶媒体は、コンピュータシステムに装入された際に、前記コンピュータに前述した画像生成プログラムを実行させることを可能にする。
【0257】
本発明の第4実施形態に係る画像生成プログラムについて説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0258】
本発明に係る実施形態は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々な変更が可能である。記述された具体的な数値、形状、材料(組成を含む)等は例示に過ぎず、これらに限定されない。
【0259】
また、本発明は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、画像生成方法。
[2]
前記光輝性粉体が、干渉パール顔料および着色パール顔料のうち少なくとも一方を含み、
前記色信号算出工程において、干渉パール顔料の光学特性情報を干渉系三次元反射特性モデルに与えて、干渉パール顔料の色信号を算出し、
前記色信号算出工程において、着色パール顔料の光学特性情報を着色系三次元反射特性モデルに与えて、着色パール顔料の色信号を算出する、
[1]に記載の画像生成方法。
[3]
前記着色系三次元反射特性モデルが、前記光輝性粉体の物理的な光反射特性を記述した物理モデルと、仮説に基づいて前記光輝性粉体の光反射特性を記述した経験的モデルと、のうち少なくとも一方のモデルを含む、
[2]に記載の画像生成方法。
[4]
前記光輝性粉体が、基材となる粉体が1層または複数層の薄膜で被覆されて構成されており、
前記色信号算出工程において、前記薄膜の厚みに依存する干渉光の波長を前記三次元反射特性モデルに与えて、前記色信号を算出する、
[1]から[3]のいずれか一つに記載の画像生成方法。
[5]
前記光輝剤情報取得工程において取得する前記光学特性情報が、前記波長を含む、
[4]に記載の画像生成方法。
[6]
前記光輝剤情報取得工程において取得する前記形状情報が、前記光輝性粉体の平均粒径および標準偏差を含み、
前記画像生成工程において、前記平均粒径および前記標準偏差に基づいて、確率分布を用いて前記画像を生成する、
[1]から[5]のいずれか一つに記載の画像生成方法。
[7]
前記画像が、法線マップを用いて表現される、
[1]から[6]のいずれか一つに記載の画像生成方法。
[8]
前記画像における前記光輝性粉体の平面視形状が多角形である、
[1]から[7]のいずれか一つに記載の画像生成方法。
[9]
前記画像における前記光輝性粉体の粒径が3mm以下である、
[1]から[8]のいずれか一つに記載の画像生成方法。
[10]
前記光学特性情報が、分光反射率を含み、
前記光輝剤情報取得工程において、分光測色計で取得する前記分光反射率が、照明方向ベクトルと前記光輝性粉体が塗布される対象物の表面との間の方向に反射した光、または、前記照明方向ベクトルの正反射方向ベクトルと前記表面との間の方向に反射した光の分光反射率である、
[1]から[9]のいずれか一つに記載の画像生成方法。
[11]
前記表面に対する水平方向を0度とするとき、前記分光測色計で取得する光の反射角度が25度以下である、
[10]に記載の画像生成方法。
[12]
化粧料である光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、を含む、化粧シミュレーション方法。
[13]
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得部と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出部と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出部と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成部と、を備える、画像生成装置。
[14]
光輝性粉体の光学特性情報および形状情報の少なくとも一方を取得する光輝剤情報取得工程と、
前記光学特性情報を、前記光輝性粉体の光反射のプロセスを記述した数学モデルである三次元反射特性モデルに与えて、前記光輝性粉体の色信号を算出する色信号算出工程と、
前記色信号に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の色値を算出する色値算出工程と、
前記色値および前記形状情報に基づいて、前記光輝性粉体が塗布されている状態の画像を生成する画像生成工程と、をコンピュータに実行させる、画像生成プログラム。
【符号の説明】
【0260】
S1 光輝剤情報取得工程
S2 画像取得工程
S3 形状推定工程
S4 表面特定工程
S5 照明環境推定工程
S6 塗布領域受付工程
S7 第1分光反射率算出工程
S8 第1色信号算出工程
S9 特徴部分特定工程
S10 第2分光反射率算出工程
S11 第2色信号算出工程
S12 光輝剤情報取得工程
S13 第3色信号算出工程
S14 色値算出工程
S15 第2画像生成工程
S16 重畳画像生成工程
1 画像生成システム
2 ユーザ
3 ネットワーク
10 ユーザ端末
11 制御部
12 メモリ
13 タッチパネル
14 撮像部
15 通信部
20 サーバ
21 演算部
23a 画像取得部
23b 形状推定部
23c 表面特定部
23d 照明環境推定部
23e 第1分光反射率算出部
23f 第1色信号算出部
23h 第2分光反射率算出部
23i 第2色信号算出部
23j 光輝剤色信号算出部
23k 第3色信号算出部
23l 色値算出部
23m 第2画像生成部
23n 重畳画像生成部
24 メモリ
24a 分光変換データベース
24b 照明環境データベース
24c 顔料データベース
24d 変換マトリックス記憶部
24g 特徴部分特定部
25 通信部
60 光輝性粉体
61 薄膜
62 基材
70 画像生成装置
71 取得部
72 色信号算出部
73 色値算出部
74 画像生成部