(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154608
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】紐状物およびその製造方法、ならびに農業用誘引紐および梱包用紐
(51)【国際特許分類】
D02G 3/06 20060101AFI20251002BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20251002BHJP
D04H 1/4391 20120101ALI20251002BHJP
D02G 3/22 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
D02G3/06
D04H1/4374
D04H1/4391
D02G3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057708
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】野末 はつみ
(72)【発明者】
【氏名】森田 遼
【テーマコード(参考)】
4L036
4L047
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA08
4L036MA09
4L036MA35
4L036MA39
4L036PA21
4L047AA08
4L047AB09
4L047BA01
4L047BA04
4L047BA21
4L047CA01
4L047CB10
4L047CC15
4L047CC16
4L047EA02
(57)【要約】
【課題】優れた操作性および取り扱い性を有する紐状物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】帯状の積層不織布を撚って形成された紐状物であり、前記積層不織布において、第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化されており、前記積層不織布は、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚られている、紐状物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の積層不織布を撚って形成された紐状物であり、
前記積層不織布において、
第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化されており、
前記積層不織布は、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚られている、紐状物。
【請求項2】
前記積層不織布は、前記第2繊維層が外側になるように撚られている、請求項1に記載の紐状物。
【請求項3】
前記第1繊維の平均繊維長は、0.5mm以上20mm以下である、請求項1に記載の紐状物。
【請求項4】
前記第1繊維層は、湿式不織布により形成されている、請求項1に記載の紐状物。
【請求項5】
前記第1繊維および前記第2繊維の少なくとも一方は、生分解性繊維を含む、請求項1に記載の紐状物。
【請求項6】
前記第1繊維および前記第2繊維の少なくとも一方は、セルロース繊維を含む、請求項1に記載の紐状物。
【請求項7】
前記第1繊維は、パルプ繊維を含む、請求項1に記載の紐状物。
【請求項8】
前記積層不織布は、水流交絡不織布である、請求項1に記載の紐状物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の紐状物を用いた、農業用誘引紐。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の紐状物を用いた、梱包用紐。
【請求項11】
紐状物の製造方法であって、
第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化された積層不織布を準備することと、
前記積層不織布を帯状に裁断することと、
前記帯状の積層不織布を、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚ることと、を備える、紐状物の製造方法。
【請求項12】
前記帯状の積層不織布は、前記第2繊維層が外側になるように撚られている、請求項11に記載の紐状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紐状物およびその製造方法、ならびに農業用誘引紐および梱包用紐に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3は、不織布を裁断して紐状物を得ることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-279962号公報
【特許文献2】特開平08-126437号公報
【特許文献3】特開平06-073676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の紐状物の操作性および取り扱い性には、改善の余地がある。本開示は、不織布から得られ、優れた操作性および取り扱い性を有する紐状物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
帯状の積層不織布を撚って形成された紐状物であり、
前記積層不織布において、
第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化されており、
前記積層不織布は、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚られている、紐状物を提供する。
【0006】
本開示はまた、
紐状物の製造方法であって、
第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化された積層不織布を準備することと、
前記積層不織布を帯状に裁断することと、
前記帯状の積層不織布を、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚ることと、を備える、紐状物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、優れた操作性および取り扱い性を有する紐状物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の紐状物は、帯状の積層不織布を撚って形成されている。積層不織布は、第1繊維層と第2繊維層とを備える。第1繊維層と第2繊維層とは、繊維同士の交絡により一体化されている。第1繊維層は、第1繊維により構成される。第2繊維層は、第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される。
【0009】
積層不織布が、平均繊維長の異なる繊維を含む複数の繊維層を備えることにより、操作性および取り扱い性が向上する。
【0010】
紐状物の操作性とは、具体的には、使用対象物への追従性、結び目の固さ、および結び目の緩み易さに関する総合的な性能をいう。操作性が高いとは、使用対象物に追従し易く、固い結び目ができ、かつ、結び目が緩み難いことをいう。高い操作性を有する紐状物は、使用対象物を所定の位置に固定することができる。
【0011】
紐状物の操作性は、例えば、引張強さ、伸び率、および5%伸長時応力(5%モジュラス)で評価できる。5%伸長時応力は、試料を5%伸ばすのに必要な力である。
【0012】
引張強さが過度に低いと、紐が容易に破断する。そのため、固い結び目を形成することができず、使用対象物を固定できない。伸び率が過度に低い場合も同様である。5%伸長時応力が過度に大きいと、紐状物のしなやかさが損なわれ、使用対象物への追従性が低下する。加えて、結び目に隙間ができ易くなって、緊縛性が低下する。
【0013】
紐状物の取り扱い性とは、具体的には、肌への負荷に関する性能をいう。取り扱い性に優れるとは、肌当たりがよく、紐状物を強く握っても皮膚が切れないことをいう。優れた取り扱い性を有する紐状物を用いると、外傷を負い難い。
【0014】
紐状物の取り扱い性は、例えば、引張強さで評価できる。引張強さが過度に高いと、紐状物が硬くなって、肌当たりが良くない。そのため、紐状物を強く握ると皮膚が切れる場合がある。
【0015】
紐状物は、降雨にさらされる環境で使用される場合がある。上記の操作性および取り扱い性は、湿潤状態の紐状物に対しても求められ得る性能である。
【0016】
平均繊維長の短い第1繊維は、繊維を交絡させる工程において、平均繊維長のより長い第2繊維と適度に交絡して、積層不織布の強度を高める。また、短い第1繊維を有する第1繊維層は緻密である。第1繊維層は、積層不織布の強度を適度に高め、伸長時応力を適切な範囲にコントロールする。第1繊維層によって、主に操作性が向上する。
【0017】
平均繊維長の長い第2繊維は、積層不織布の風合いを高め、肌当たりを向上させる。第2繊維層によって、主に取り扱い性が向上する。
【0018】
積層不織布において、平均繊維長の異なる第1繊維と第2繊維とがそれぞれ異なる繊維層を形成しており、かつ、これら繊維層が一体化されている。この積層不織布は、積層不織布のMD方向が紐状物の長手方向になるように撚られている。その結果、得られる紐状物は、高い操作性と優れる取り扱い性とを発揮する。
【0019】
MD方向(Machine Direction)は、製造時における不織布の進行方向であり、機械方向ともいわれる。本開示において、MD方向は、紐状物の長手方向に一致する。後述のCD方向(Cross Direction)は、MD方向に直交する方向である。
【0020】
不織布は、JIS L 0222に「繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交絡、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮じゅう(絨)フェルトを除く。」と定義されている。
【0021】
積層される前の繊維層は、不織布であってよく、不織布の前駆体であってよい。不織布の前駆体とは、繊維シート、ウェブまたはバットであって、繊維が一方向又はランダムに配向しているが、繊維間が結合されていないものである。積層される前の繊維層の作製法は、特に限定されない。ウェブは、カード式法、エアレイド法または湿式法等により作製されてよく、水流交絡(スパンレース)法、スパンボンド法または湿式法等により作製されてよい。以下、積層される前の繊維層を、便宜的に「ウェブ」と称する場合がある。
【0022】
まず、本開示で使用される繊維層、および繊維層を構成する繊維を説明する。
(第1繊維層)
第1繊維層は、複数の第1繊維により構成される。第1繊維は、第2繊維よりも10mm以上短い平均繊維長を有する。
【0023】
第1繊維の平均繊維長L1と第2繊維の平均繊維長L2との差(L2-L1)は、12mm以上であってよく、15mm以上であってよく、20mm以上であってよく、23mm以上であってよい。L2-L1は、80mm以下であってよく、75mm以下であってよく、70m以下であってよい。
【0024】
平均繊維長L1は特に限定されない。平均繊維長L1は、操作性向上の観点から、0.5mm以上20mm以下であってよい。平均繊維長L1は、15mm以下であってよく、12mm以下であってよく、10mm以下であってよく、8mm以下であってよく、5mmであってよい。平均繊維長L1は、1mm以上であってよく、1.5mm以上であってよく、2.0mm以上であってよく、2.5mm以上であってよい。
【0025】
平均繊維長Lは、以下のようにして求められる。まず、積層不織布を各繊維層に分離する。各繊維層の端面以外の部分を解し、1.0gの繊維を得る。この複数の繊維の繊維長をすべて測定し、平均化した値が平均繊維長Lである。あるいは、平均繊維長Lは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、全長が観察できる任意の複数本の繊維の繊維長を測定し、平均化した値としてもよい。SEMの倍率は、例えば、300~500倍であればよい。平均繊維長Lの算出が困難な場合(例えば、市販の繊維層(繊維ウェブ)を使用する場合であって、使用されている繊維の長さが範囲として示されている場合)、最大の繊維長(例えば、上記のように、範囲として繊維長が示されている場合の上限値)を平均繊維長Lとみなしてよい。
【0026】
第1繊維は、実質的に同じ平均繊維長L1を有していてよい。これにより、紐状物に適した強度および伸長時応力が得られ易くなる。具体的には、本数割合として90%以上、望ましくは95%以上の第1繊維の繊維長が、平均繊維長L1±3mmの範囲に含まれていてよい。
【0027】
第1繊維の種類は特に限定されない。第1繊維は、例えば、天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維であってよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】
繊維の素材の分類は、例えば消費者庁から公表されている「繊維の名称を示す用語」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/fiber/fiber_term.html)における「繊維等の種類」に従う。
【0029】
第1繊維は、環境保全の観点から、生分解性繊維を含んでよい。生分解性繊維としては、例えば、セルロース繊維、セルロース繊維以外の天然繊維(例えば、シルク、ウール)、生分解性合成繊維が挙げられる。
【0030】
合成繊維は、通常、熱可塑性樹脂により形成される。熱可塑性樹脂は特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマーが挙げられる。
【0031】
生分解性合成繊維は、生分解可能な熱可塑性樹脂からなる繊維である。生分解可能な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートが挙げられる。合成繊維に生分解促進剤を添加した生分解性繊維を用いてもよい。
【0032】
第1繊維は、セルロース繊維を含んでよい。セルロース繊維の種類は特に限定されない。セルロース繊維としては、例えば、以下が挙げられる。
(1)綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプおよびカポック等の植物に由来する天然繊維;
(2)ビスコース法で得られるレーヨンおよびポリノジック、銅アンモニア法で得られるキュプラ、ならびに溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)およびリヨセル等の溶剤紡糸セルロース繊維、ならびにその他の再生繊維;
(3)溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;
(4)アセテート繊維等の半合成繊維;および
(5)機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ
【0033】
第1繊維は、パルプを含んでよい。パルプは、後述する水流交絡法で積層不織布を製造する場合に第2繊維と交絡し易く、積層不織布の強度および伸長時応力をより高める。パルプの繊維長は0.8~5.0mm程度であり、パルプの平均繊維長もまた、0.8~5.0mmの範囲内にある
【0034】
第1繊維層は、湿式不織布により形成されてよい。湿式不織布は、湿式法により形成される。湿式不織布は緻密な構造を有するため、積層不織布の強度および伸長時応力をさらに高めることができる。
【0035】
第1繊維層は、パルプを含む湿式不織布により形成されていてよい。パルプは、扁平状の繊維断面を有しており、これを含む湿式不織布の表面に凹凸が形成され難い。そのため、第2繊維層と積層した場合、第2繊維層の風合いに影響を及ぼし難い。
【0036】
第1繊維は、パルプとともに、平均繊維長および/または繊維種の異なる1種以上の繊維を含み得る。第1繊維は、パルプを50質量%以上、80質量%以上、100質量%含んでいてよい。パルプの割合は、第1繊維(例えば、ウェブの製造時に添加されるバインダーおよび添加剤等の質量は含まない)に占めるパルプの質量割合である。
【0037】
繊維の含有割合は、積層される前の繊維層(ウェブ)に含まれる繊維の割合である。例えば、積層不織布において、第2繊維層を構成する繊維の一部が第1繊維層に混入しているとしても、当該混入した繊維は第1繊維層に含まれるものとはならない。
【0038】
第1繊維の繊度は特に限定されない。第1繊維の繊度は、0.3dtex以上6.0dtex以下であってよい。第1繊維の繊度は、0.6dtex以上であってよく、0.8dtex以上であってよく、1.0dtex以上であってよい。第1繊維の繊度は、5.0dtex以下であってよく、4.0dtex以下であってよく、3.0dtex以下であってよい。パルプの繊度は、1.0dtex以上4.0dtex以下程度である。
【0039】
第1繊維層の目付は特に限定されない。第1繊維層の目付は、10g/m2以上であってよく、15g/m2以上であってよく、20g/m2以上であってよい。第1繊維層の目付は、70g/m2以下であってよく、50g/m2以下であってよく、30g/m2以下であってよい。第1繊維層の目付がこの範囲であると、積層不織布の強度および伸長時応力が適切な範囲にコントロールされ得る。
【0040】
(第2繊維層)
第2繊維層は、複数の第2繊維により構成される。第2繊維は、第1繊維よりも10mm以上長い平均繊維長を有する。
【0041】
第2繊維の平均繊維長L2は特に限定されない。平均繊維長L2は、取り扱い性向上の観点から、15mm以上80mm以下であってよい。平均繊維長L2は、18mm以上であってよく、20mm以上であってよく、25mm以上であってよく、30mm以上であってよい。平均繊維長L2は、70mm以下であってよく、65mm以下であってよい。
【0042】
第2繊維は、実質的に同じ平均繊維長L2を有していてよい。これにより、紐状物に適した柔軟性が得られ易くなる。具体的には、本数割合として90%以上、望ましくは95%以上の第2繊維の繊維長が、平均繊維長L2±3mmの範囲に含まれていてよい。
【0043】
第2繊維の種類は特に限定されない。第2繊維は、例えば、天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維であってよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
第2繊維は、環境保全の観点から、上記の生分解性繊維を含んでよい。
【0045】
第2繊維は、紐状物の過度な伸長が抑制される点で、上記のセルロース繊維を含んでよい。セルロース繊維は、平均繊維長および/または種類の異なる複数種のセルロース繊維を含み得る。
【0046】
第2繊維は、肌当たりおよび生分解性の観点から、コットン、レーヨンおよび溶剤紡糸セルロース繊維(典型的には、リヨセル)よりなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。コットンは、平均繊維長および/または種類の異なる複数種のコットンを含み得る。レーヨンは、平均繊維長および/または種類の異なる複数種のレーヨンを含み得る。溶剤紡糸セルロース繊維は、平均繊維長および/または種類の異なる複数種の溶剤紡糸セルロース繊維を含み得る。
【0047】
第2繊維層は、乾式法で作製されたウェブから形成されてよい。乾式法としては、典型的には、カード式法およびエアレイド法が挙げられる。第2繊維層はカード式法で作製されたウェブから形成されてよい。乾式カード式法で作製されたウェブは、適度な厚みおよび柔軟性を有する。
【0048】
第2繊維の繊度は特に限定されない。第2繊維の繊度は、0.3dtex以上6.0dtex以下であってよい。第2繊維の繊度は、0.6dtex以上であってよく、0.8dtex以上であってよく、1.0dtex以上であってよい。第2繊維の繊度は、5.0dtex以下であってよく、4.0dtex以下であってよく、3.0dtex以下であってよい。
【0049】
第2繊維層の目付は特に限定されない。第2繊維層の目付は、10g/m2以上であってよく、15g/m2以上であってよく、20g/m2以上であってよい。第2繊維層の目付は、70g/m2以下であってよく、50g/m2以下であってよく、30g/m2以下であってよい。第2繊維層の目付がこの範囲の積層不織布は、風合いが良い。
【0050】
(積層不織布)
積層不織布は、少なくとも第1繊維層および第2繊維層を含む。積層不織布において、各繊維層は積層されており、少なくとも繊維同士の交絡によって一体化されている。積層不織布において、各繊維層の少なくとも一部が重なっていればよい。すなわち、積層不織布に、第1繊維層のみ、あるいは第2繊維層(および後述の第3繊維層)のみの領域があってよい。
【0051】
第1繊維層と第2繊維層との質量比は特に限定されない。第1繊維層と第2繊維層との質量比(第1繊維層/第2繊維層)は、30/70~70/30であってよく、35/65~65/35であってよく、40/60~60/40であってよい。
【0052】
積層不織布は、パルプを含む湿式不織布である第1繊維層と、コットン、レーヨンおよび溶剤紡糸セルロース繊維よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、かつ、乾式カード式法で作製された第2繊維層とを備えてよい。主にセルロース繊維で形成された積層不織布は、優れた操作性および取り扱い性に加え、生分解性を有しており、サステナブルな社会の実現に貢献する。
【0053】
積層不織布は、第1繊維層および第2繊維層と、第3繊維層とを備えてよい。第3繊維層は、第1繊維層の第2繊維層とは反対側の面に配置されてよい。積層不織布は、第2繊維層と第1繊維層と第3繊維層とが、この順で積層されて形成されてよい。第3繊維層の繊維種および平均繊維長は特に限定されない。第3繊維層は、第2繊維層と同様の繊維種および平均繊維長を有していてよい。積層不織布は、パルプを含む湿式不織布である第1繊維層と、コットン、レーヨンおよび溶剤紡糸セルロース繊維よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、かつ、乾式カード式法で作製された第2繊維層および第3繊維層とを備えてよい。
【0054】
積層不織布は、水流交絡法、スパンボンド法、ニードルパンチ法により作製されてよい。積層不織布は、水流交絡法により作製された、水流交絡不織布であってよい。
【0055】
積層不織布の目付は特に限定されない。積層不織布の目付は、10g/m2以上であってよく、15g/m2以上であってよく、20g/m2以上であってよく、30g/m2以上であってよい。積層不織布の目付は、100g/m2以下であってよく、90g/m2以下であってよく、80g/m2以下であってよく、70g/m2以下であってよい。積層不織布の目付がこの範囲であると、操作性および取り扱い性がさらに向上し得る。
【0056】
・引張強さ
標準時(乾燥状態)の積層不織布のMD方向の引張強さは、20N/5cm以上60N/5cm以下であってよい。標準時の上記引張強さが20N/5cm以上であると、結び目が固くなり易い。標準時の上記引張強さが60N/5cm以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。標準時の上記引張強さは、22N/5cm以上であってよく、25N/5cm以上であってよく、30N/5cm以上であってよい。標準時の上記引張強さは、58N/5cm以下であってよく、55N/5cm以下であってよく、50N/5cm以下であってよい。
【0057】
湿潤時の積層不織布のMD方向の引張強さは、15N/5cm以上90N/5cm以下であってよい。湿潤時の上記引張強さが15N/5cm以上であると、結び目が固くなり易い。湿潤時の上記引張強さが90N/5cm以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。湿潤時の上記引張強さは、17N/5cm以上であってよく、20N/5cm以上であってよく、22N/5cm以上であってよい。湿潤時の上記引張強さは、87.5N/5cm以下であってよく、85N/5cm以下であってよく、80N/5cm以下であってよく、70N/5cm以下であってよい。
【0058】
・伸び率
標準時の積層不織布のMD方向の伸び率は、10%以上45%以下であってよい。標準時の上記伸び率がこの範囲であると、結び目が固くなり易い。標準時の上記伸び率は、12%以上であってよく、15%以上であってよく、18%以上であってよい。標準時の上記伸び率は、42%以下であってよく、40%以下であってよく、30%以下であってよい。
【0059】
湿潤時の積層不織布のMD方向の伸び率は、30%以上70%以下であってよい。湿潤時の上記伸び率がこの範囲であると、結び目が固くなり易い。湿潤時の上記伸び率は、35%以上であってよく、38%以上であってよく、40%以上であってよい。湿潤時の上記伸び率は、65%以下であってよく、60%以下であってよく、55%以下であってよい。
【0060】
・5%伸長時応力
標準時の積層不織布のMD方向の5%伸長時応力は、10N/5cm以上30N/5cm以下であってよい。標準時の上記5%伸長時応力が10N/5cm以上であると、結び目が固くなり易い。標準時の上記5%伸長時応力が30N/5cm以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。標準時の上記5%伸長時応力は、11N/5cm以上であってよく、12N/5cm以上であってよく、13N/5cm以上であってよい。標準時の上記5%伸長時応力は、29N/5cm以下であってよく、25N/5cm以下であってよく、20N/5cm以下であってよい。
【0061】
湿潤時の積層不織布のMD方向の5%伸長時応力は、2.5N/5cm以上10N/5cm以下であってよい。湿潤時の上記5%伸長時応力が2.5N/5cm以上であると、結び目が固くなり易い。湿潤時の上記5%伸長時応力が10N/5cm以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。湿潤時の上記5%伸長時応力は、2.7N以上であってよく、2.8N/5cm以上であってよく、2.9N/5cm以上であってよい。湿潤時の上記5%伸長時応力は、9.5N/5cm以下であってよく、9.0N/5cm以下であってよく、8.5N/5cm以下であってよく、7.0N/5cm以下であってよい。
【0062】
積層不織布の引張強さ、伸び率および伸長時応力は、JIS L 1913:2010 6.3(引張強さ及び伸び率(ISO法))に準じて測定される。測定には、例えば、定速緊張形引張試験機が用いられる。測定は、つかみ間隔20cm、引張速度30cm/分の条件で行われる。
【0063】
湿潤時の積層不織布は、標準時の積層不織布100質量部に対し、250質量部の蒸留水を含浸させることにより得られる。
【0064】
(紐状物)
紐状物は、帯状にカットされた積層不織布を、積層不織布のMD方向が紐状物の長手方向になるように撚られることにより、得られる。帯状にカットされた積層不織布は、第2繊維層が外側になるように撚られてよい。
【0065】
・引張強さ
標準時の紐状物のMD方向の引張強さは、55N以上100N以下であってよい。標準時の上記引張強さが55N以上であると、結び目が固くなり易い。標準時の上記引張強さが100N以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。標準時の上記引張強さは、57N以上であってよく、60N以上であってよく、62N以上であってよく、70N以上であってよい。標準時の上記引張強さは、95N以下であってよく、93N以下であってよく、91N以下であってよい。
【0066】
湿潤時の紐状物のMD方向の引張強さは、35N以上75N以下であってよい。湿潤時の上記引張強さが35N以上であると、結び目が固くなり易い。湿潤時の上記引張強さが75N以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。湿潤時の上記引張強さは、38N以上であってよく、42N以上であってよく、45N以上であってよい。湿潤時の上記引張強さは、73N以下であってよく、70N以下であってよく、65N以下であってよい。
【0067】
・伸び率
標準時の紐状物のMD方向の伸び率は、6.5%以上15%以下であってよい。標準時の上記伸び率がこの範囲であると、結び目が固くなり易い。標準時の上記伸び率は、6.7%以上であってよく、6.8%以上であってよく、7.0%以上であってよい。標準時の上記伸び率は、13%以下であってよく、11%以下であってよく、9%以下であってよい。
【0068】
湿潤時の紐状物のMD方向の伸び率は、25%以上45%以下であってよい。湿潤時の上記伸び率がこの範囲であると、結び目が固くなり易い。湿潤時の上記伸び率は、26%以上であってよく、27%以上であってよく、29%以上であってよい。湿潤時の上記伸び率は、42%以下であってよく、40%以下であってよく、38%以下であってよい。
【0069】
・5%伸長時応力
標準時の紐状物のMD方向の5%伸長時応力は、25N以上75N以下であってよい。標準時の上記5%伸長時応力が25N以上であると、結び目が固くなり易い。標準時の上記5%伸長時応力が75N以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。標準時の上記5%伸長時応力は、27N以上であってよく、30N以上であってよく、35N以上であってよい。標準時の上記5%伸長時応力は、73.5N以下であってよく、72N以下であってよく、70N以下であってよい。
【0070】
湿潤時の紐状物のMD方向の5%伸長時応力は、1.5N以上11N以下であってよい。湿潤時の上記5%伸長時応力が1.5N以上であると、結び目が固くなり易い。湿潤時の上記5%伸長時応力が11N以下であると、取り扱い性がさらに向上し得る。湿潤時の上記5%伸長時応力は、1.7N以上であってよく、1.8N以上であってよく、2.2N以上であってよい。湿潤時の上記5%伸長時応力は、10N以下であってよく、9N以下であってよく、8N以下であってよく、6N以下であってよい。
【0071】
紐状物の引張強さ、伸び率および伸長時応力は、JIS L 1095:2010 9.5(引張強さ及び伸び率(JIS法))に準じて測定される。測定には、例えば、定速緊張形引張試験機が用いられる。測定は、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分の条件で行われる。
【0072】
湿潤時の紐状物は、標準時の紐状物100質量部に対し、250質量部の蒸留水を含浸させることにより得られる。
【0073】
標準時の紐状物のMD方向の引張強さが55N以上100N以下であり、伸び率が6.5%以上15%以下であり、かつ、5%伸長時応力が25N以上75N以下である紐状物は、標準時(乾燥状態)において、優れた操作性および取り扱い性を有するといえる。
【0074】
湿潤時の紐状物のMD方向の引張強さが35N以上75N以下であり、伸び率が25%以上45%以下であり、5%伸長時応力が1.5N以上11N以下である紐状物は、湿潤時(濡れた状態)であっても、優れた操作性および取り扱い性を有するといえる。
【0075】
(用途)
紐状物は、種々の用途に用いられる。特に、本開示の紐状物は、農業用誘引紐および梱包用紐に適している。誘引紐は、農産物のツルや茎などを支柱に結ぶ際に用いられる。梱包用紐は、生活資材(典型的には、新聞および段ボール)を束ねる際に用いられる。
【0076】
従来、ポリプロピレンまたは麻製の紐が知られている。これらは、通常、同じ長さの繊維により形成されている。そのため、麻製の紐は剛性が過度に高い。麻製の紐は、固い結び目が形成され難く、また、手を傷つけ易い。ポリプロピレン製の紐は、手を傷つけ易い。
【0077】
本開示の紐状物は、平均繊維長の異なる繊維を含む繊維層を備える積層不織布から形成されているため、高い操作性と、優れた取り扱い性とを有する。本開示の紐状物を用いた農業用誘引紐は、農産物を支柱にしっかりと固定できる一方、農産物を損傷させ難い。本開示の紐状物を用いた梱包用紐は、生活資材をしっかりと束ねて荷崩れを起こし難い。
【0078】
(紐状物の製造方法)
紐状物は、第1繊維により構成される第1繊維層と、第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化された積層不織布を準備することと、積層不織布を帯状に裁断することと、帯状の積層不織布を、積層不織布のMD方向が紐状物の長手方向になるように撚ることと、を備える方法により製造される。
【0079】
(1)積層不織布の準備
まず、第1繊維ウェブおよび第2繊維ウェブ、必要に応じて第3繊維ウェブを準備する。第1繊維ウェブは第1繊維層を形成する。第2繊維ウェブは第2繊維層を形成する。第3繊維ウェブは第3繊維層を形成する。
【0080】
各繊維ウェブは、上記の通り、カード式法、エアレイド法または湿式法等により作製される不織布の前駆体であってよく、スパンレース法、スパンボンド法または湿式法等により作製される不織布であってよい。各繊維ウェブは、例えば、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、および湿式抄紙ウェブ等から選択されるいずれであってもよい。強度の観点から、第1繊維ウェブは、湿式法により作製されてよい。柔軟性の観点から、第2,第3繊維ウェブは、カード式法またはエアレイド法により作製されてよい。
【0081】
第1,第2,第3繊維ウェブに含まれる繊維の種類および平均繊維長等は、先に第1,第2,第3繊維層に関連して説明したとおりである。
【0082】
次に、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとを積層し、積層繊維ウェブを作製する。あるいは、第2繊維ウェブと第1繊維ウェブと第3繊維ウェブとをこの順に積層し、積層繊維ウェブを作製する。必要に応じて、第2繊維ウェブ(または第3繊維ウェブ)と第1繊維ウェブとをあらかじめ積層した予備積層繊維ウェブを作製し、これに第3繊維ウェブ(または第2繊維ウェブ)を積層して、積層繊維ウェブを作製してよい。予備積層繊維ウェブは、繊維ウェブ間で繊維同士を予め一体化させたものであってよい。
【0083】
積層繊維ウェブを、例えば高圧流体流を用いた交絡処理に付して、繊維同士を交絡させる。これにより、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブ、あるいは第2繊維ウェブと第1繊維ウェブと第3繊維ウェブとが、繊維同士の交絡により一体化され、積層不織布が得られる。
【0084】
高圧流体は、例えば、圧縮空気等の高圧気体、および高圧水等の高圧液体である。高圧流体は、高圧水であってよい。高圧水によれば、第2繊維の過剰な交絡が抑制される一方、繊維ウェブ間の繊維同士が交絡し易くなって、一体感が高まる。
【0085】
以下、高圧流体として高圧水(以下、「水流」とも称される。)を用いる場合を例に挙げて、本開示で用いられる積層不織布の製造方法を説明するが、これに限定されない。
【0086】
水流交絡処理は、支持体に積層繊維ウェブを載せて、柱状水流を噴射することにより実施される。支持体は、例えば、80メッシュ以上100メッシュ以下の平織である。水流は、例えば、孔径0.05mm以上0.5mm以下のオリフィスが、0.3mm以上1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから噴射される。水圧は、例えば、1MPa以上15MPa以下である。水圧は、10MPa以下であってよく、7MPa以下であってよい。水流は、積層繊維ウェブの表裏面に、それぞれ1~5回ずつ噴射される。
【0087】
水流交絡処理後、得られた積層不織布は、水分を除去するために乾燥させる。乾燥温度は、例えば100~160℃であり、120~150℃であってよい。
【0088】
(2)裁断
積層不織布を帯状(典型的には、MD方向の長さがCD方向の長さより大きい矩形)に裁断する。積層不織布は、帯のMD方向の全長にわたって、第1繊維層および第2繊維層(さらには第3繊維層)が積層された部分が存在するように、裁断されることが望ましい。積層不織布は、帯のCD方向の全長にわたって、第1繊維層および第2繊維層(さらには第3繊維層)が積層された部分が存在するように、裁断されてもよい。
【0089】
帯状の積層不織布(不織布の帯)のサイズは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。不織布の帯のCD方向の長さは、例えば、1cm以上50cm以下である。上記CD方向の長さは、1.5cm以上であってよく、2cm以上であってよい。上記CD方向の長さは、45cm以下であってよく、40cm以下であってよい。
【0090】
(3)加撚
不織布の帯を、積層不織布のMD方向が紐状物の長手方向になるように撚って、紐状物を得る。不織布の帯は、第2繊維層が外側になるように撚られてよい。
【0091】
不織布の帯に撚りを加える装置は特に限定されない。加撚には、例えば、粗紡機が用いられる。加撚数は特に限定されない。加撚数(回数(T)/m)は、例えば、5T/m以上500T/m以下である。加撚数は、7T/m以上であってよく、10T/m以上であってよい。加撚数は、450T/m以下であってよく、400T/m以下であってよい。
【0092】
不織布の帯に撚りをかけてできた紐をさらに複数本撚り合わせて、紐状物にしてもよい。複数の不織布の帯に撚りをかけて、紐状物を得てもよい。
【実施例0093】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本実施例で使用する繊維として以下のものを用意した。
【0094】
パルプ:繊度約1.0~4.0dtex、繊維長約0.8mm~4.5mm(平均繊維長4.5mm)、木材由来、目付26g/m2の湿式不織布、ハビックス(株)製
コットン:繊度1.0dtex~5.0dtex、繊維長10mm~60mm、平均繊維長20mm、コットン繊維、商品名:MSD、丸三産業(株)製
リヨセル:繊度1.7dtex、平均繊維長38mm、溶剤紡糸セルロース繊維、商品名:リヨセル、Lenzing社製
レーヨン:繊度1.7dtex、平均繊維長40mm、ビスコースレーヨン、商品名:CD、ダイワボウレーヨン株式会社製
【0095】
[実施例1]
(i)第1繊維ウェブの準備
目付26g/m2のパルプ製湿式不織布を、第1繊維ウェブとした。
【0096】
(ii)第2および第3繊維ウェブの準備
コットンから、パラレルカード機を用いて第2および第3繊維ウェブ(いずれも目付約16g/m2)を作製した。
【0097】
(iii)積層不織布の作製
第2繊維ウェブと第1繊維ウェブと第3繊維ウェブとを、この順に積層して、積層繊維ウェブを作製した。第1繊維ウェブと、第2および第3繊維ウェブの合計との質量比(第1/第2+第3)は45質量%/55質量%であった。
【0098】
積層繊維ウェブを支持体(90メッシュの平織)に載置して、4m/分の速度で搬送しながら、第2繊維ウェブの表面に3.0MPaの水圧の水流を1回噴射した。続いて、第3繊維ウェブの表面に3.0MPa水圧の水流を1回噴射した。この水流交絡処理では、孔径0.12mmのオリフィスが、0.6mm間隔で設けられたノズルを使用した。ノズルと積層繊維ウェブとの間の間隔は20mmとした。最後に、100℃で乾燥処理を行って、乾燥状態の積層不織布(目付45g/m2)を得た。
【0099】
(iv)裁断
積層不織布をCD方向の長さが5cmである帯状に裁断して、不織布の帯を得た。
【0100】
(v)加撚
不織布の帯を、積層不織布のMD方向が紐状物の長手方向になるように、粗紡機を用いて撚った(加撚数18T/m)。これにより、紐状物を得た。
【0101】
[実施例2]
コットンからパラレルカード機を用いて、目付約12g/m2のウェブを2枚作製した。これを第2および第3繊維ウェブとして用いたこと以外、実施例1と同様の手順で積層不織布および紐状物をそれぞれ得た。第1繊維ウェブと、第2および第3繊維ウェブの合計との質量比(第1/第2+第3)は52質量%/48質量%であった。
【0102】
[比較例1]
コットンからパラレルカード機を用いてコットン繊維ウェブを作製し、実施例1と同様にして水流交絡処理および乾燥を行って、コットン不織布(目付60g/m2)を得た。コットン不織布から、実施例1と同様にして、紐状物を得た。
【0103】
[比較例2~4]
市販のポリプロピレン製荷造り紐((株)ユタカメイク社製、商品名:PSロープ、品番M-576)、市販の紙紐((株)ユタカメイク社製、商品名:紙ヒモ、品番M-153-1)および市販の麻紐(BMS社製、商品名:あさのひもジュート 白)を準備した。
【0104】
[評価]
評価方法は、以下の通りである。評価結果を表1および表2に示す。表1は、積層不織布の物性を示し、表2は紐状物の物性を示している。
評価には、乾燥状態ならびに湿潤状態の積層不織布および紐状物を、試料として用いた。湿潤状態の試料は、乾燥状態の積層不織布あるいは紐状物100質量部に対し、250質量部の蒸留水を含浸させることにより得た。
【0105】
(積層不織布の伸長時応力、引張強さ、伸び率)
JIS L 1913:2010 6.3(引張強さ及び伸び率(ISO法))に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、幅50mm×長さ250mmの試料片に対して、つかみ間隔20cm、引張速度30cm/分の条件で引張試験を行い、試料が切断した時の荷重値(引張強さ)および伸び率、ならびに5%伸長時応力を測定した。1水準あたり3点の試料を準備し、測定した値を平均化した。引張試験において、試料の機械方向(MD方向)を引張方向とした。
【0106】
(紐状物の伸張時応力、引張強さ、伸び率)
JIS L 1095:2010 9.5(単糸引張強さ及び伸び率(JIS法))に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分の条件で引張試験を行い、試料が切断した時の荷重値(引張強さ)および伸び率、ならびに5%伸長時応力を測定した。1水準あたり3点の試料を準備し、測定した値を平均化した。引張試験において、試料の機械方向(MD方向)を引張方向とした。
【0107】
【0108】
【0109】
本開示は以下の態様を含む。
(態様1)
帯状の積層不織布を撚って形成された紐状物であり、
前記積層不織布において、
第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化されており、
前記積層不織布は、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚られている、紐状物。
(態様2)
前記積層不織布は、前記第2繊維層が外側になるように撚られている、態様1の紐状物。
(態様3)
前記第1繊維の平均繊維長は、0.5mm以上20mm以下である、態様1または2の紐状物。
(態様4)
前記第1繊維層は、湿式不織布により形成されている、態様1~3のいずれかの紐状物。
(態様5)
前記第1繊維および前記第2繊維の少なくとも一方は、生分解性繊維を含む、態様1~4のいずれかの紐状物。
(態様6)
前記第1繊維および前記第2繊維の少なくとも一方は、セルロース繊維を含む、態様1~5のいずれかの紐状物。
(態様7)
前記第1繊維は、パルプ繊維を含む、態様1~6のいずれかの紐状物。
(態様8)
前記積層不織布は、水流交絡不織布である、態様1~7のいずれかの紐状物。
(態様9)
態様1~8のいずれかの紐状物を用いた、農業用誘引紐。
(態様10)
態様1~8のいずれかの紐状物を用いた、梱包用紐。
(態様11)
紐状物の製造方法であって、
第1繊維により構成される第1繊維層と、前記第1繊維の平均繊維長よりも10mm以上長い平均繊維長を有する第2繊維により構成される第2繊維層とが、繊維同士の交絡により一体化された積層不織布を準備することと、
前記積層不織布を帯状に裁断することと、
前記帯状の積層不織布を、前記積層不織布のMD方向が前記紐状物の長手方向になるように撚ることと、を備える、紐状物の製造方法。
(態様12)
前記帯状の積層不織布は、前記第2繊維層が外側になるように撚られている、態様11の紐状物の製造方法。