(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154619
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】冷媒充填方法
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
F25B45/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057726
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 重徳
(72)【発明者】
【氏名】南田 知厚
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 英二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 育弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 和博
(72)【発明者】
【氏名】田中 政貴
(57)【要約】
【課題】装置の据え付け時に、冷媒回路内へ臭気成分を簡単に供給できる技術を提供する。
【解決手段】冷媒充填方法は、冷媒を循環させる冷媒回路10を有する冷凍装置1に対して冷媒を充填する。冷媒充填方法は、冷凍装置1を所定の位置に据え付ける据え付けステップと、臭気成分OCを収容する容器60と冷凍装置1とを接続して、容器60から冷凍装置1に臭気成分を充填する臭気成分充填ステップと、臭気成分充填ステップと同時または臭気成分充填ステップの後に、冷媒を貯蔵する冷媒タンク54と冷凍装置1とを接続し、冷媒タンク54から冷凍装置1へ冷媒を充填する冷媒充填ステップと、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路を有する冷凍装置に対して前記冷媒を充填する冷媒充填方法であって、
前記冷凍装置を所定の位置に据え付ける据え付けステップと、
臭気成分を収容する容器と前記冷凍装置とを接続して、前記容器から前記冷凍装置に前記臭気成分を充填する臭気成分充填ステップと、
前記臭気成分充填ステップと同時または前記臭気成分充填ステップの後に、前記冷媒を貯蔵する冷媒タンクと前記冷凍装置とを接続し、前記冷媒タンクから前記冷凍装置へ前記冷媒を充填する冷媒充填ステップと、を有する、
冷媒充填方法。
【請求項2】
前記臭気成分充填ステップよりも前に、前記冷凍装置に圧力測定器を接続すると共に前記圧力測定器に真空ポンプを接続して、前記真空ポンプにより前記冷凍装置と前記真空ポンプとの間の流路の真空引きを行う真空引きステップを有する、
請求項1に記載の冷媒充填方法。
【請求項3】
前記臭気成分充填ステップにおいて、前記容器は、前記冷凍装置と前記圧力測定器との間に配置される、
請求項2に記載の冷媒充填方法。
【請求項4】
前記冷凍装置には、前記据え付けステップの前に、予め第1量の前記冷媒が封入されており、
前記冷媒充填ステップでは、前記冷媒タンクから前記冷凍装置に第2量の前記冷媒を充填する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷媒充填方法。
【請求項5】
前記冷凍装置には、前記据え付けステップの前に、前記冷媒が封入されておらず、
前記臭気成分充填ステップでは、前記冷媒が予め封入されていない前記冷媒回路に対して前記臭気成分を充填する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷媒充填方法。
【請求項6】
前記冷媒充填ステップでは、前記冷媒の供給方向上流側から下流側に向かって、前記冷媒タンク、前記容器および前記冷凍装置を、この順に接続している、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷媒充填方法。
【請求項7】
前記冷媒は、強燃性冷媒である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷媒充填方法。
【請求項8】
前記容器に収容された前記臭気成分は、液体状である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷媒充填方法。
【請求項9】
前記臭気成分は、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルフィド、エチルメチルスルフィドのいずれか、またはこれらの1つ以上を成分として含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷媒充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地球温暖化係数であるGWP(Global Warming Potential)値が低い冷媒として強燃性冷媒を冷媒回路に封入した冷凍装置が知られている。この種の冷凍装置は、冷媒回路からの冷媒の漏出を早期に認識して、冷媒の燃焼を回避することが重要となる。
【0003】
特許文献1には、冷媒の他に、硫黄系着臭剤である臭気成分を冷媒回路に封入した冷凍サイクル装置が開示されている。冷媒回路からの冷媒の漏出に伴って臭気成分も一緒に漏出することで、周囲の人間が異常を認識して必要な対処を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、冷凍装置を製造する製造工場において冷媒回路に臭気成分を充填する場合、冷媒回路から製造工場内に臭気成分が漏れると、製造工場の労働環境が悪化するリスクがある。
【0006】
本開示は、装置の据え付け時に、冷媒回路内へ臭気成分を簡単に供給できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、冷媒を循環させる冷媒回路を有する冷凍装置に対して前記冷媒を充填する冷媒充填方法であって、前記冷凍装置を所定の位置に据え付ける据え付けステップと、臭気成分を収容する容器と前記冷凍装置とを接続して、前記容器から前記冷凍装置に前記臭気成分を充填する臭気成分充填ステップと、前記臭気成分充填ステップと同時または前記臭気成分充填ステップの後に、前記冷媒を貯蔵する冷媒タンクと前記冷凍装置とを接続し、前記冷媒タンクから前記冷凍装置へ前記冷媒を充填する冷媒充填ステップと、を有する。
【0008】
上記によれば、冷媒充填方法は、臭気成分充填ステップと同時または臭気成分充填ステップの後に冷媒充填ステップを行うことで、装置の据え付け時に、冷媒回路内へ臭気成分を簡単に供給できる。すなわち、冷媒充填方法は、冷媒回路の圧力が高くない状態で臭気成分を供給できるので、冷媒回路の外部に臭気成分が漏れることを抑制して、目標量の臭気成分を冷媒回路にスムーズに封入できる。
【0009】
また、前記臭気成分充填ステップよりも前に、前記冷凍装置に圧力測定器を接続すると共に前記圧力測定器に真空ポンプを接続して、前記真空ポンプにより前記冷凍装置と前記真空ポンプとの間の流路の真空引きを行う真空引きステップを有する。
【0010】
これにより、冷媒充填方法は、冷媒回路に空気や水分が入り込むことを抑制して、冷媒および臭気成分を冷媒回路に充填できる。
【0011】
また、前記臭気成分充填ステップにおいて、前記容器は、前記冷凍装置と前記圧力測定器との間に配置される。
【0012】
これにより、冷媒充填方法は、容器を接続した状態で、真空引きや冷媒の充填を行うことができ、機器の接続や交換にかかる時間等を短縮することが可能となる。
【0013】
また、前記冷凍装置には、前記据え付けステップの前に、予め第1量の前記冷媒が封入されており、前記冷媒充填ステップでは、前記冷媒タンクから前記冷凍装置に第2量の前記冷媒を充填する。
【0014】
これにより、冷媒充填方法は、予め冷媒を封入している冷媒回路に冷媒を充填するため、真空引きにかかる時間や冷媒の充填にかかる時間を短くでき、作業効率をより向上させることができる。
【0015】
また、前記冷凍装置には、前記据え付けステップの前に、前記冷媒が封入されておらず、前記臭気成分充填ステップでは、前記冷媒が予め封入されていない前記冷媒回路に対して前記臭気成分を充填する。
【0016】
これにより、冷媒充填方法は、臭気成分を冷媒回路により一層スムーズに供給することができる。
【0017】
また、前記冷媒充填ステップでは、前記冷媒の供給方向上流側から下流側に向かって、前記冷媒タンク、前記容器および前記冷凍装置を、この順に接続している。
【0018】
これにより、冷媒充填方法は、冷媒タンクからの冷媒の充填に伴って、容器の臭気成分を冷媒回路に流入させることが可能となる。
【0019】
また、前記冷媒は、強燃性冷媒である。
【0020】
これにより、冷媒充填方法は、強燃性冷媒と共に臭気成分を封入できるので、強燃性冷媒が冷媒回路から漏れた場合に臭気成分も漏れて、周囲の人間に異常を早期に認識させることができる。
【0021】
また、前記容器に収容された前記臭気成分は、液体状である。
【0022】
これにより、冷媒充填方法は、冷凍装置の設置現場において、容器からの臭気成分の漏れを抑制しながら、真空引きや冷媒の供給等をスムーズに実施させることができる。
【0023】
また、前記臭気成分は、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルフィド、エチルメチルスルフィドのいずれか、またはこれらの1つ以上を成分として含む。
【0024】
これにより、臭気成分は、他のスルフィド系の成分と比較して優秀な臭質・臭気閾値を持ち、また化学的に安定化していることで、冷媒回路において臭気成分の組成を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る空気調和装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】室外機のサービスポートの設置状態を示す図である。
【
図3】冷媒回路の第1閉鎖弁およびガス用サービスポートの一例を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る冷凍装置の充填システムを示す図である。
【
図5】
図5(A)は、臭気成分を収容した容器の縦形態を示す断面図である。
図5(B)は、臭気成分を収容した容器の横形態を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る冷媒充填方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】変形例に係る充填システムの接続状態を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る冷凍装置の充填システムを示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る冷媒充填方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。各図面は、発明の理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0027】
<冷凍装置の構成>
図1に示すように、本開示の実施形態に係る冷凍装置1は、室内空間の空気の温度を調節する空気調和装置である。以下では、冷凍装置1を空気調和装置1ともいう。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、室内空間の冷房運転および暖房運転に使用される。冷房運転において、空気調和装置1は室内空間の空気を冷却して温度を調節する。暖房運転において、空気調和装置1は室内空間の空気を温めて温度を調節する。
【0028】
空気調和装置1は、冷媒を封入した冷媒回路10と、室外空間に設置される熱源ユニットである室外機20と、室内空間に設置される利用ユニットである室内機30と、を含む。冷媒回路10は、室外機20と室内機30との間で、冷媒を循環させることで冷房運転および暖房運転を実行する。実施形態に係る空気調和装置1は、1つの室外機20と室内機30とを接続したペア式である。ただし、空気調和装置1は、1つの室外機20と複数の室内機30とを接続した構成でもよく、複数の室外機20と1つの室内機30とを接続した構成でもよい。
【0029】
冷媒回路10は、室外機20と室内機30との間を接続する第1連絡配管11および第2連絡配管12を備える。第1連絡配管11および第2連絡配管12は、室内空間と室外空間を連絡して冷媒を流通させる1以上のチューブである。第1連絡配管11は、気体となった冷媒を流通させるガス管である。第2連絡配管12は、液体となった冷媒を流通させる液管である。
【0030】
また、冷媒回路10は、室外機20の内部において、第1連絡配管11の一端および第2連絡配管12の一端にそれぞれ連結される室外経路13を有する。さらに、冷媒回路10は、室内機30の内部において、第1連絡配管11の他端および第2連絡配管12の他端にそれぞれ連結される室内経路14を有する。冷媒回路10は、第1連絡配管11、第2連絡配管、室外経路13および室内経路14により無端状の循環回路を形成している。
【0031】
<室外機>
室外機20は、筐体20aの内部に室外経路13を設置していることで、冷媒回路10の一部分を構成している。室外機20は、圧縮機21、室外熱交換器22、膨張弁23、四方切換弁24、および室外ファン25を備える。室外機20の室外経路13には、圧縮機21、室外熱交換器22、膨張弁23および四方切換弁24が接続される。
【0032】
圧縮機21は、冷凍サイクル運転において、吸入用接続端21iから吸入した低圧の冷媒を圧縮して高圧化し、吐出用接続端21oから高圧の冷媒を吐出する。この圧縮機21としては、例えば、密閉した圧縮要素を圧縮機モータ21mにより回転駆動させて冷媒を高圧化する回転式の装置を適用できる。圧縮機21の吸入用接続端21iおよび吐出用接続端21oは、室外経路13を通して四方切換弁24に接続されている。
【0033】
室外熱交換器22は、冷房運転時の冷凍サイクル運転において、内部を流通する冷媒と室外空気との間で熱交換を行うことで、冷媒の熱を放熱する。この室外熱交換器22としては、例えば、フィンアンドチューブ式の機構を適用できる。室外熱交換器22のガス用接続端22Gは、室外経路13を通して四方切換弁24に接続されている。室外熱交換器22の液体用接続端22Lは、室外経路13を通して膨張弁23に接続されている。
【0034】
室外ファン25は、室外熱交換器22に室外空気を送風する。室外ファン25としては、例えば、図示しないモータおよびプロペラを有するプロペラファンを適用できる。
【0035】
膨張弁23は、室外経路13を通して流入した冷媒を減圧して低温にする。この膨張弁23としては、内部の流路の開度を調整する電子式の弁あるいは感温式の弁が適用される。なお、膨張弁23は、室内機30に設けられてもよい。
【0036】
四方切換弁24は、冷房運転および暖房運転を選択的に実行するために、冷媒回路10の冷媒の流れを正逆反転させる。この四方切換弁24は、
図1の実線で示す第1状態と、
図1の破線で示す第2状態とに切り換えることができる。
【0037】
具体的には、第1状態において、四方切換弁24は、圧縮機21の吐出用接続端21oおよび室外熱交換器22のガス用接続端22Gを連通させる一方で、圧縮機21の吸入用接続端21iおよび室外機20の外部の第1連絡配管11を連通させる。この第1状態では、圧縮機21の駆動に基づいて第1連絡配管11から室外機20の室外経路13に冷媒が流入する。冷媒は、圧縮機21により圧縮されて高圧となり、四方切換弁24を通して室外熱交換器22に移動する。冷媒は、室外熱交換器22において熱を放熱し、さらに膨張弁23おいて減圧することで低圧低温の液体となり、第2連絡配管12に移動することになる。すなわち、空気調和装置1は、第1連絡配管11を介して高温の冷媒を引き込み、第2連絡配管12を介して室内機30に低温の冷媒を送り出すことで、冷房運転を行うことができる。
【0038】
また、第2状態において、四方切換弁24は、圧縮機21の吐出用接続端21oと室外機20の外部の第1連絡配管11とを連通させる一方で、圧縮機21の吸入用接続端21iと室外熱交換器22のガス用接続端22Gとを連通させる。この第2状態では、圧縮機21の駆動に基づいて第2連絡配管12から室外機20の室外経路13に冷媒が流入する。冷媒は、膨張弁23を通して室外熱交換器22に移動し、さらに室外熱交換器22から圧縮機21に移動する。冷媒は、圧縮機21において圧縮されて高圧高温の気体となり、四方切換弁24を通して第1連絡配管11に移動することになる。すなわち、空気調和装置1は、第2連絡配管12を介して低温の冷媒を引き込み、第1連絡配管11を介して室内機30に高温の冷媒を送り出すことで、暖房運転を行うことができる。
【0039】
また、室外機20の室外経路13は、主にガスとなった冷媒を流通させるガスライン13Gと、主に液体となった冷媒を流通させる液体ライン13Lと、に分けることができる。室外経路13におけるガスライン13Gは、第1連絡配管11との接続箇所から、圧縮機21、室外熱交換器22のガス用接続端22Gまでを接続する配管を言う。室外経路13における液体ライン13Lは、第2連絡配管12との接続箇所から、膨張弁23、室外熱交換器22の液体用接続端22Lまでを接続する配管を言う。これらガスライン13G、液体ライン13Lには、複数の弁が設けられている。例えば、複数の弁としては、第1閉鎖弁41、第2閉鎖弁42、があげられる。
【0040】
第1連絡配管11の接続箇所から圧縮機21までのガスライン13Gには、第1閉鎖弁41が設けられる。具体的には、ガスライン13Gと第1連絡配管11の接続箇所に第1閉鎖弁41が設置される。第1閉鎖弁41は、作業者の操作に基づいてガスライン13Gの流路を開閉する。
【0041】
第2連絡配管12の接続箇所と膨張弁23までの液体ライン13Lには、第2閉鎖弁42が設けられる。具体的には、液体ライン13Lの第2連絡配管12の接続箇所に第2閉鎖弁42が設置される。第2閉鎖弁42は、作業者の操作に基づいて液体ライン13Lの流路を開閉する。
【0042】
また、第1閉鎖弁41は、ガス用サービスポート44を有する。第2閉鎖弁42は、液体用サービスポート45を有する。ガス用サービスポート44は、液体用サービスポート45よりも大きい。ガス用サービスポート44および液体用サービスポート45は、空気調和装置1の冷媒回路10に冷媒を充填する場合、室外機20から冷媒を放出する場合、冷媒回路10の冷媒の圧力を測定する場合等に使用される。
【0043】
図2に示すように、室外機20の筐体20aは、内部に、閉鎖弁配置空間を有する。第1閉鎖弁41および第2閉鎖弁42は、筐体20aの閉鎖弁配置空間に設けられている。第1閉鎖弁41は、第1連絡配管11と接続するコネクタとなっている。第2閉鎖弁42は、第2連絡配管12と接続するコネクタとなっている。
【0044】
第1閉鎖弁41は、基部411を中心に有すると共に、基部411から相互に異なる方向に突出する室外コネクタ412、連絡配管コネクタ413、弁操作部414およびガス用サービスポート44を有する。
【0045】
室外コネクタ412は、筐体20a内に配置された室外経路13のガスライン13Gの配管に接続される。また、室外コネクタ412の外周面には、室外機20の筐体20aに第1閉鎖弁41を固定する固定機構412aが設けられている。第1閉鎖弁41は、固定機構412aを介して筐体20aに固定される。
【0046】
連絡配管コネクタ413は、室外機20の外部に設置される第1連絡配管11に接続される。
図3に示すように、連絡配管コネクタ413は、ネジ山413aを外周面に備え、第1連絡配管11の一端の図示しないナットをネジ山413aに螺合することにより、第1閉鎖弁41と第1連絡配管11とが連結される。
【0047】
弁操作部414は、作業者の手動により第1閉鎖弁41の流路41aの開閉を実現する機構部である。弁操作部414は、基部411と一体成形された突出筒部414aと、突出筒部414a内に設けられる弁棒414bと、突出筒部414aに対して着脱可能なキャップ414cと、を備える。弁操作部414は、開閉操作以外においてキャップ414cを突出筒部414aに螺合することで、弁棒414bを覆っている。
【0048】
弁棒414bは、頭部から軸方向に沿って操作穴を備える。作業者は、この操作穴にレンチ等の操作具を挿入して弁棒414bを回転操作し、弁棒414bを基部411内において進退させる。作業者は、弁棒414bを基部411内に進出させることで、第1閉鎖弁41の流路41aを閉塞できる。逆に、作業者は、弁棒414bを基部411内から後退させることで、第1閉鎖弁41の流路41aを開放できる。
【0049】
一方、ガス用サービスポート44は、
図4に示す後記のコントロールバルブ51が接続可能なコネクタとなっている。ガス用サービスポート44は、コントロールバルブ51が接続されていない状態では遮断状態となっている。ガス用サービスポート44は、作業者によりコントロールバルブ51が接続される。作業者は、コントロールバルブ51の開閉操作によって、第1閉鎖弁41の流路41aとコントロールバルブ51との連通および遮断を切り替える。具体的には、ガス用サービスポート44は、基部411と一体成形された突出筒部44aと、突出筒部44aの内部に収容されたバルブコア44bと、突出筒部44aに対して着脱可能なキャップ44cと、を備える。ガス用サービスポート44は、外部の装置の接続時以外においてキャップ44cが突出筒部44aに螺合されることで、キャップ44cによりバルブコア44bが覆われている。
【0050】
バルブコア44bは、外部の装置を突出筒部44aに装着した際に、コントロールバルブ51に押されるピン44bpと、ピン44bpの変位に伴って開閉する筒体44btとを有する。コントロールバルブ51によりピン44bpが押されると、筒体44btが開放してコントロールバルブ51の流路と第1閉鎖弁41の流路41aとが連通する。コントロールバルブ51がピン44bpを離すと、図示しないバネにより元の位置にピン44bpが復帰し、これに伴い筒体44btが流路41aを閉塞することで、コントロールバルブ51の流路と第1閉鎖弁41の流路41aとが遮断される。
【0051】
また
図2に示すように、第2閉鎖弁42も、基部421、室外コネクタ422、連絡配管コネクタ423、弁操作部424、液体用サービスポート45を備える。この第2閉鎖弁42の構成については、第1閉鎖弁41と略同様であるため、その説明を省略する。
【0052】
<室内機>
図1に戻り、室内機30は、筐体30aの内部に室内経路14を設置していることで、冷媒回路10の一部分を構成している。室内機30は、室内熱交換器31および室内ファン32を備える。室内機30の室内経路14には、室内熱交換器31が接続される。
【0053】
室内熱交換器31は、冷凍サイクル運転において、内部を流通する冷媒と室内空気との熱交換を行う。これにより、室内熱交換器31は、冷媒が室内空気よりも低温である場合に室内空気の熱を奪い冷却することができる一方で、冷媒が室内空気よりも高温である場合に室内空気に熱を放出し温めることができる。この室内熱交換器31としては、例えば、フィンアンドチューブ式の機構を適用できる。室内熱交換器31のガス用接続端31Gは、室内経路14を通して第1連絡配管11に接続されている。室内熱交換器31の液体用接続端31Lは、室内経路14を通して第2連絡配管12に接続されている。
【0054】
室内ファン32は、室内熱交換器31に室内空気を送風する。室内ファン32は、例えば、図示しないモータおよび円筒状の羽根車を有するクロスフローファンが適用される。室内ファン32により搬送される室内空気は、室内熱交換器31を通過すると共に、室内熱交換器31から室内空間に送風される。
【0055】
また、室内機30は、商用電源に接続される電源回路を有する。空気調和装置1は、商用電源からの電力の供給に基づいて室内機30を稼働させると共に、図示しない電力線を介して室外機20を稼働させる。
【0056】
<空気調和装置の制御部>
空気調和装置1は、各構成の動作を制御する制御部90を有する。制御部90は、第1制御装置91、第2制御装置92およびリモートコントローラ93によって構成される。リモートコントローラ93は、ユーザが空気調和装置1に対する各種の指示を操作する機器であり、専用のコントローラでもよく、スマートフォンやタブレット等の携帯端末でもよい。
【0057】
第1制御装置91、第2制御装置92およびリモートコントローラ93の各々は、プロセッサ、メモリ、入出力インタフェースおよび通信インタフェースを有するコンピュータ(詳細には、MCU:Micro Control Unit)である。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリは、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。メモリには、各種の処理を制御するプログラムが格納され、プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって各種の動作を制御する。
【0058】
第1制御装置91は、室外機20に設けられ、室外機20の各構成を制御する。第2制御装置92は、室内機30に設けられ、室内機30の各構成を制御する。第1制御装置91および第2制御装置92は、有線通信または無線通信によって相互に情報を送受信できる。第2制御装置92とリモートコントローラ93は、有線通信または無線通信によって相互に情報を送受信できる。制御部90は、ユーザによるリモートコントローラ93の操作指令に応じて、冷房運転と暖房運転とを選択的に実行する。
【0059】
<冷媒>
冷媒回路10に封入される冷媒は、GWP値が可及的に小さく、環境への負荷が少ないものが選択されるとよい。この種の冷媒の材料としては、例えば、R-290(プロパン)、R-1270(プロピレン)、R-600a(イソブタン)等の炭素数1から4の炭化水素系(ハイドロカーボン)を主成分とするものがあげられる。これらの冷媒の材料は、ハイドロフルオロカーボンよりも高い燃焼性を有する強燃性冷媒である。実施形態では、冷媒としてプロパンを適用した場合について説明する。なお、冷媒は、メタン(R50)、エタン(R170)、ブタン(R600)、アンモニア(R717)等でもよい。
【0060】
<臭気成分>
既述したように、空気調和装置1は、冷媒回路10からの強燃性冷媒の漏れを人間に認識させるために、冷媒と共に臭気成分を封入している。この臭気成分としては、例えば、硫黄系の化合物である硫黄系着臭剤があげられる。硫黄系着臭剤としては、テトラヒドロチオフェン(THT)、ジメチルスルフィド(DMS)、エチルメチルスルフィド等のスルフィド系着臭剤、またはスルフィド系着臭剤にチオールやチオエーテル等を混合したものがあげられる。実施形態では、臭気成分としてテトラヒドロチオフェンを使用した場合について説明する。以下、テトラヒドロチオフェンをTHTという場合もある。
【0061】
<冷凍機油>
また、空気調和装置1は、冷媒回路10に冷媒および臭気成分と共に、冷凍機油を封入している。冷凍機油は、冷媒回路10内において主に圧縮機21の底部に貯めておき、圧縮機21内の圧縮要素へ循環させることで摺動部の潤滑性を維持することが可能である。また、冷凍機油の一部は、冷媒回路10内を冷媒および臭気成分と共に循環する。言い換えれば、冷凍機油は、冷媒、臭気成分と混合して冷凍装置用作動流体として使用される。冷凍装置用作動流体の全量に対する冷凍機油の封入割合は、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
冷凍機油としては、例えば、含酸素系合成油(エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油等)、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。なかでも、冷媒との相溶性の観点から、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油が好ましい。例えば、冷凍機油は、ポリアルキレングリコール油(PAG油)である。冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
<臭気成分の充填について>
以上のように構成される空気調和装置1は、冷媒回路10内に冷媒および臭気成分を封入して冷房運転または暖房運転を行う。ただし、冷媒については、その充填量が空気調和装置1の冷房運転または暖房運転の能力に影響する。このため、装置の据え付け時に冷媒回路10が形成された後に、冷媒は、その冷媒回路10に応じて充填される。その一方で、臭気成分については、製造工場等において冷媒回路10の室外経路13等に予め封入しておくことも可能である。しかしながら、仮に製造工場に臭気成分が漏れた場合には、製造工場の労働環境が悪化することになる。
【0064】
そこで、本開示に係る空気調和装置1は、製造工場から出荷された後の装置の据え付け時に、作業者により、冷媒と共に臭気成分を冷媒回路10に充填させる。つまり、作業者は、冷媒と一緒に臭気成分を充填する充填システムを形成する。なお、製造工場から出荷される際の空気調和装置1は、冷媒回路10に冷媒が予め充填されている状態でもよく、冷媒回路10に冷媒が充填されていない状態でもよい。以下、冷媒回路10に冷媒が予め充填されている状態をプレチャージありと言い、冷媒回路10に冷媒が予め充填されていない状態をプレチャージなしと言う。第1実施形態では、プレチャージありの冷媒回路10に対して冷媒を充填する充填システム50Aおよび冷媒充填方法について説明する。また、第2実施形態では、プレチャージなしの冷媒回路10に対して冷媒を充填する充填システム50Bおよび冷媒充填方法について説明する。
【0065】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る充填システム50Aは、
図4に示すように、適宜の設置現場に設置された室外機20のガス用サービスポート44を通して、冷媒回路10に冷媒を充填するシステムである。なお、
図4では、図の理解の容易化のために、室外機20の筐体20aから第1閉鎖弁41を突出させた状態を誇張して示している。
【0066】
第1閉鎖弁41の室外コネクタ412には、室外経路13のガスライン13G(
図2参照)の配管が予め接続されている。第1閉鎖弁41の連絡配管コネクタ413には、作業者による装置の据え付け時の作業によって、第1連絡配管11が接続される。また図示は省略しているが、第2閉鎖弁42の室外コネクタ422には、室外経路13の液体ライン13Lの配管が予め接続されている。第2閉鎖弁42の連絡配管コネクタ423には、作業者による装置の据え付け時の作業によって、第2連絡配管12が接続される。
【0067】
充填システム50Aは、コントロールバルブ51と、連成計52と、真空ポンプ53と、冷媒タンク54と、各構成を接続する複数のホース55と、を含む。さらにこれらの構成に加えて、充填システム50Aでは、臭気成分を冷媒と同時に充填するために、臭気成分を収容した容器60を使用する。また、各ホース55は、コントロールバルブ51と容器60の間を繋ぐ第1ホース56、容器60と連成計52の間を繋ぐ第2ホース57、連成計52と真空ポンプ53の間を繋ぐ第3ホース58、および連成計52と冷媒タンク54の間を繋ぐ第4ホース59を含む。
【0068】
コントロールバルブ51は、ガス用サービスポート44に接続され、冷媒回路10の気密性を維持しながら、充填システム50Aの第1ホース56を着脱可能な部品である。例えば、コントロールバルブ51は、T字形状に形成され、ホース55に接続されるホース接続部511と、ガス用サービスポート44に接続されるポート接続部512と、コントロールバルブ51の弁の開閉を操作可能な弁操作部513とを有する。
【0069】
弁操作部513は、作業者により円板状の頭部が回転操作されることにより、内部に設けられたプランジャ部材(不図示)がガス用サービスポート44と相対的に進退し、ガス用サービスポート44内のバルブコア44bを移動させる。例えば、作業者は、弁操作部513を開いた状態に操作することでプランジャ部材を後退させた位置に配置して、これに伴いバルブコア44bを閉塞できる。逆に、作業者は、弁操作部513を閉じた状態に操作することでプランジャ部材を進出させた位置に配置して、これに伴いバルブコア44bを押圧することでバルブコア44bを開放できる。また、コントロールバルブ51は、弁操作部513の回転位置によって内部の流路を徐々に開放または閉塞できる構造であってもよい。これにより、コントロールバルブ51は、内部の流路を流れる冷媒の流量を調整することができる。
【0070】
連成計52は、ホース55を介して、コントロールバルブ51と、真空ポンプ53または冷媒タンク54との間に設置されて、圧力を測定可能な圧力測定器に構成されている。連成計52は、各ホース55を接続可能なマニホールド部521と、マニホールド部521内に設けられる1以上の連成計52の開閉バルブ522と、各ホース55により接続されてかつ連成計52の開閉バルブ522が開放している部分の流路の圧力を計測する圧力計523と、を備える。
図4に示す連成計52では、連成計52の開閉バルブ522を3つ備え、コントロールバルブ51と真空ポンプ53との間の流路、またはコントロールバルブ51と冷媒タンク54との間の流路等を開閉する。
【0071】
真空ポンプ53は、接続されている第3ホース58に吸引圧力を生じさせて、充填システム50Aの流路に存在する空気および水分を排出し、冷媒回路10に充填される冷媒に空気や水分が混じることを抑制する。この真空ポンプ53の種類は、特に限定されず、電動式または手動式を適用できる。例えば、電動式の真空ポンプ53は、図示しない駆動モータの回転に基づいて目標の吸引圧力を、充填システム50Aの流路に付与する。
【0072】
冷媒タンク54は、冷媒回路10に充填する冷媒を圧縮した状態で貯蔵可能な高圧用ボンベが適用される。冷媒タンク54は、第4ホース59が接続されるポート部分に冷媒タンク54の開閉バルブ541を備え、冷媒タンク54の開閉バルブ541の開放に伴って第4ホース59に冷媒を圧送する。なお、冷媒タンク54は、電子秤542を備えてもよい。作業者は、電子秤542による冷媒タンク54の重量の計測に基づいて規定量の冷媒を供給したか否かを確認できる。
【0073】
また、各ホース55は、可撓性を有すると共に、接続対象の機器に応じたコネクタを両端部に備える。各ホース55のコネクタは、共通の規格のものであってもよく、個々の接続対象に接続できるように専用の形状に形成されたものであってもよい。
【0074】
以上の充填システム50Aにおいて、作業者は、コントロールバルブ51と連成計52の間に容器60を接続する。
図5(A)に示すように、容器60は、常温で液体状の臭気成分OCを貯留している。具体的には、容器60は、臭気成分OCを貯留する容器本体61と、容器本体61の一端部に設けられる第1開閉バルブ62と、容器本体61の他端部に設けられる第2開閉バルブ63と、第2開閉バルブ63に一体に設けられるポート64と、を備える。
【0075】
容器本体61は、例えば、直方体状に形成され、臭気成分OCを貯留可能な内部空間61sを有する。容器本体61の一端には、第1開閉バルブ62内の流路に連通する第2開口612が設けられている。容器本体61の他端には、第2開閉バルブ63内およびポート64内の流路に連通する第1開口611が設けられている。
【0076】
容器本体61の内部空間61sは、冷媒回路10に充填する臭気成分OCの容量よりも充分に大きな容積を持つように構成されるとよい。例えば、臭気成分OCの貯留量は、内部空間61sの容積の半分以下であるとよい。容器本体61は、後述するように、長手方向が略鉛直方向に沿った縦形態(
図5(A)参照)で冷媒および臭気成分OCを充填するパターンと、長手方向が略水平方向に沿った横形態(
図5(B)参照)で真空引きを行うパターンとに姿勢が切り換えられる。横形態において臭気成分OCの液位が第1開口611および第2開口612よりも下に位置することで、真空引きにおいて臭気成分OCが真空ポンプ53側に向かうことが抑制される。
【0077】
第1開閉バルブ62および第2開閉バルブ63は、容器60において冷媒、空気、水分、臭気成分等の流体を流通可能なポートを形成していると共に、作業者の操作に基づいて内部の流路を開閉可能な弁機構を有している。第1開閉バルブ62および第2開閉バルブ63は、容器本体61の各端面の略中心位置に設置されている。例えば、第1開閉バルブ62および第2開閉バルブ63は、真空引きや冷媒の充填において作業者により開放される一方で、それ以外の状況下では作業者により閉塞されることで臭気成分OCが容器本体61から外部に漏れることを防止する。
【0078】
また、ポート64は、容器本体61の内部空間61sに臭気成分OCを注入する際に使用される。例えば、ポート64の内部には、図示しない逆止弁が設けられるとよい。逆止弁は、外部からの機器の取り付けに伴って開放することにより臭気成分OCの注入を可能とする一方で、機器の取り外しに伴って閉塞することにより内部空間61sの臭気成分の流出を遮断する。
【0079】
なお、臭気成分OCを収容する容器60は、上記の構成に限らず、種々の構成を適用し得る。例えば、容器本体61の形状は、直方体状に限定されず、円筒状等のように他の立体形状であってもよい。また、容器本体61に対する第1開閉バルブ62および第2開閉バルブ63の設置位置も任意に設計してよい。あるいは、容器60は、臭気成分OCを収容可能な収容部と、ホースとを一体化したもの、言い換えれば、ホース内に臭気成分OCを収容したものであってもよい。
【0080】
第1実施形態に係る充填システム50Aは、基本的には以上のように構成され、以下その使用方法である冷媒充填方法について、
図6を参照しながら説明する。第1実施形態に係る冷媒充填方法は、冷媒回路10に冷媒が予め充填されたプレチャージありの空気調和装置1に対して、充填システム50Aにより冷媒および臭気成分OCを充填する方法である。例えば、作業者は、この冷媒充填方法おいて
図6に示すステップS101~S110を順次行うことで、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に充填する。
【0081】
冷媒充填方法において、作業者は、まず設置現場において空気調和装置1の室外機20および室内機30の据え付けると共に、第1連絡配管11および第2連絡配管12を室外機20および室内機30に接続して冷媒回路10を形成する(ステップS101)。つまり、作業者は、空気調和装置1を設置現場に据え付ける据え付けステップを行う。据え付けられた空気調和装置1の冷媒回路10には、第1量の冷媒が封入された状態となっている。例えば、プレチャージされる冷媒は、室外機20の室外経路13、室内機30の室内経路14等に封入されている。
【0082】
次に、冷媒充填方法では、臭気成分OCを収容した容器60を含む充填システム50Aの各種の機器が、空気調和装置1の設置現場に提供される(ステップS102)。例えば、充填システム50Aの各種の機器は、作業者が設置現場に持ち込むことにより提供される。また、臭気成分OCを収容した容器60の提供において、作業者は、臭気成分OCを予め注入した容器60を持ち込んでもよく、設置現場において図示しない注入機器をポート64に接続して容器60に臭気成分OCを注入してもよい。
【0083】
作業者は、室外機20のガス用サービスポート44にコントロールバルブ51を接続する(ステップS103)。これにより、コントロールバルブ51を介して冷媒回路10に冷媒を充填可能な状態となる。ただし接続時において、コントロールバルブ51は、ガス用サービスポート44のバルブコア44bを閉塞しており、ガス用サービスポート44からのガスの排出を遮断している。
【0084】
次に、作業者は、コントロールバルブ51から流体の排出方向上流側から下流側に向かって、容器60、連成計52および真空ポンプ53を、この順に接続する(ステップS104:真空引きステップ)。作業者は、コントロールバルブ51と容器60の間を第1ホース56により接続し、容器60と連成計52の間を第2ホース57により接続し、連成計52と真空ポンプ53の間を第3ホース58により接続する。
【0085】
その後、作業者は、真空ポンプ53を動作させて、真空ポンプ53による真空引きを行う(ステップS105)。この際、作業者は、コントロールバルブ51の弁操作部513を開放したままとして、ガス用サービスポート44のバルブコア44bを閉じた状態とする。また真空引きにおいて、作業者は、
図5(B)に示すように容器60を横形態とする。さらに作業者は、連成計52の真空ポンプ53側の開閉バルブ522、および容器60の第1開閉バルブ62、第2開閉バルブ63を開くと共に、真空ポンプ53により真空引きを行う。これにより、真空ポンプ53は、コントロールバルブ51、容器60、連成計52等の各機器内および各ホース55内の空気および水分を吸引して、コントロールバルブ51までの流路を真空引きできる。
【0086】
この際、容器60では、
図5(B)に示すように、液体である臭気成分OCが容器本体61の下側に溜まることで、内部空間61sの上方を介して空気および水分が流通する。また、臭気成分OCも、第1開口611側から吸引圧力を受けるが、真空ポンプ53による短時間の真空引きでは、容器60から第2ホース57側に多く排出されることがない。
【0087】
図6に戻り真空引きが終了すると、作業者は、連成計52の真空ポンプ53側の開閉バルブ522を閉じて、真空ポンプ53を取り外す一方で、冷媒タンク54を接続する(ステップS106、
図4も参照)。これにより、充填システム50Aは、冷媒の供給方向上流側から下流側に向かって、冷媒タンク54、連成計52、容器60、コントロールバルブ51および空気調和装置1を、この順に接続した状態となる。
【0088】
作業者は、連成計52の開閉バルブ522および冷媒タンク54の開閉バルブ541を開放することで、冷媒タンク54から冷媒を圧送し、容器60において臭気成分OCと合わせて、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に充填する(ステップS107)。この際、作業者は、コントロールバルブ51の弁操作部513を閉じる操作を行うことで、ガス用サービスポート44のバルブコア44bを開放させる。これにより、コントロールバルブ51から冷媒回路10内に、冷媒および臭気成分OCが供給可能となる。
【0089】
また冷媒の充填時において、作業者は、
図5(A)に示すように容器60を縦形態とし、さらに第1開閉バルブ62および第2開閉バルブ63の各々を開放する。これにより、冷媒タンク54から容器60に圧送された冷媒は、容器60内の圧力を高めることで、容器60から臭気成分OCを押し出すことができる。容器60内の臭気成分OCは、第2開口612から流出して、第1開閉バルブ62および第1ホース56を介して冷媒回路10に流入するようになる。つまり、冷媒充填方法では、最初に、容器60から臭気成分OCが流出して冷媒回路10に流れ込み、その後に冷媒と臭気成分OCが混合した状態となって冷媒回路10に流れ込む。臭気成分OCは、冷媒の充填時の勢いに応じてその一部が気化してもよい。言い換えれば、ステップ107では、容器60から臭気成分OCを充填する臭気成分充填ステップと、冷媒タンク54から冷媒を充填する冷媒充填ステップとを同時に行う。
【0090】
容器60では、冷媒の継続的な流入に伴って、内部空間61sに予め注入された臭気成分OCが全て冷媒回路10に流出するようになる。つまり、冷媒タンク54から冷媒を充填する際には、容器60内の臭気成分OCが先になくなる。冷媒充填方法では、この臭気成分OCがなくなった後も、冷媒タンク54からの冷媒の供給を続けて、容器60を経由して冷媒回路10に冷媒を充填する(ステップS108)。つまり、冷媒充填方法では、臭気成分充填ステップの終了後も、冷媒充填ステップのみを継続して行っている。
【0091】
作業者は、冷媒の充填時に、冷媒タンク54の電子秤542が計測する冷媒タンク54の重量、連成計52の圧力計523が計測する圧力等を監視して、冷媒の充填が終了したか否かを監視する(ステップS109)。そして、冷媒の充填が終了していない場合(ステップS109:NO)には、冷媒タンク54からの冷媒の充填を継続する。一方、冷媒の充填が終了した場合(ステップS109:YES)には、第2量の冷媒が冷媒回路10に充填されたことになるため、作業者は、ステップS110に進む。なお、冷媒回路10の冷媒の充填量は、プレチャージされた第1量の冷媒と、充填した第2量の冷媒とを加えた量となる。
【0092】
冷媒の充填終了後のステップS110において、作業者は、充填システム50Aの各バルブを閉じた状態として、さらに充填システム50Aの取り外し作業を行う。取り外し作業において、例えば、作業者は、コントロールバルブ51の弁操作部513を開くことで、ガス用サービスポート44のバルブコア44bを閉塞する。これにより充填した冷媒および臭気成分OCが冷媒回路10から漏れることが抑制される。
【0093】
そして、作業者は、コントロールバルブ51から第1ホース56を離脱させて、さらに相互に接続している充填システム50Aの連成計52、冷媒タンク54、各ホース55および容器60を分離させる。さらに、作業者は、コントロールバルブ51をガス用サービスポート44から取り外す。これにより、空気調和装置1は、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に封入した状態が良好に形成される。
【0094】
以上のように、第1実施形態に係る冷媒充填方法は、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に効率的に充填できる。特に、冷媒充填方法は、臭気成分充填ステップ後も冷媒充填ステップを継続することで、容器60内に臭気成分OCを残さずに、規定量の臭気成分OCを冷媒回路10に安定して充填することができる。また、プレチャージありの冷媒回路10は、真空ポンプ53による真空引きの作業を短縮させることが可能であり、結果的に冷媒充填方法全体としての作業効率を高めることができる。
【0095】
なお、本開示の冷媒充填方法は、上記の実施形態に限らず、種々の変形例をとり得る。例えば、容器60を接続する箇所は、コントロールバルブ51と連成計52の間に限定されず、連成計52と真空ポンプ53の間または連成計52と冷媒タンク54の間であってもよい。
【0096】
また、冷媒充填方法は、臭気成分充填ステップと冷媒充填ステップとを同時に実行する構成に限らず、臭気成分充填ステップの後に冷媒充填ステップを実行してもよい。例えば、充填システム50Aは、図示しないポンプを容器60に備え、真空引きステップの後にポンプを駆動させることで、臭気成分OCを冷媒回路10に先に充填してよい。この臭気成分充填ステップの後に、冷媒タンク54から冷媒を充填する冷媒充填ステップを実行することでも、容器60に残留する臭気成分OCと共に冷媒を充填することができる。
【0097】
また、上記した充填システム50Aでは、連成計52に真空ポンプ53を先に接続して真空引きを行い、その後に真空ポンプ53と代えて冷媒タンク54を接続して冷媒タンク54から冷媒の供給を行った。しかしながら、充填システム50Aは、
図7に示す変形例のように、連成計52に対して、容器60、真空ポンプ53および冷媒タンク54をそれぞれ接続してもよい。この場合、例えば、作業者は、連成計52の真空ポンプ53側の開閉バルブ522、連成計52の冷媒タンク側の開閉バルブ522、コントロールバルブ51、容器60の第1開閉バルブ62および第2開閉バルブ63を開けた状態で、真空引きを行った後、連成計52の真空ポンプ53側の開閉バルブ522を閉じた状態で真空ポンプ53を止める。次に、作業者は、コントロールバルブ51を閉じた状態で、冷媒タンク54から冷媒を充填する。作業者は、連成計52の適宜の開閉バルブ522の開閉を行うことで、真空ポンプ53による真空引き、および冷媒タンク54からの冷媒の充填を切り換えて連続的に実施することができる。すなわち、変形例では、真空ポンプ53および冷媒タンク54の接続を先に行うことで、以降に接続状態を変える必要がなくなり、冷媒および臭気成分OCの充填をより円滑に行うことができる。
【0098】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る充填システム50Bについて、
図8を参照しながら説明する。充填システム50Bは、上記したように、冷媒を予め充填していないプレチャージなしの冷媒回路10に対して、冷媒および臭気成分OCを充填するシステムとなっている点で、第1実施形態に係る充填システム50Aとは異なる。なお、充填システム50Bの説明において、充填システム50Aと同じ構成には同じ符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0099】
冷媒回路10は、プレチャージなしの場合において、冷媒回路10内の流路に水分等の異物が残っている状態となっている。この場合、冷媒回路10に冷媒を充填する前に、真空引きによって冷媒回路10内から空気および水分を除去する必要がある。このため、プレチャージなしの場合には、プレチャージありの場合と比べて、真空引きの実施期間が長くなる。そこで、充填システム50Bは、真空引きを行う際に適宜の期間わたって、容器60を省くことが可能な構成としている。
【0100】
言い換えれば、充填システム50Bは、コントロールバルブ51と連成計52の間において、臭気成分OCを収容した容器60を着脱可能としている。具体的には、第1ホース56は、コントロールバルブ51に接続されるコントロールバルブ用ホース56aと、容器60を介さずに第2ホース57または連成計52に接続される連成計用ホース56bと、容器60に接続される容器用ホース56cと、を含む。
【0101】
充填システム50Bは、真空引きの第1期間において、コントロールバルブ用ホース56a、連成計用ホース56b、および第2ホース57を連続させることで、容器60を省いた状態とする。第1期間は、例えば、冷媒回路10内の空気および水分を充分に排出可能な時間間隔に設定される。これにより、冷媒回路10の真空引きを円滑に進めることができる。
【0102】
一方、真空引きの第2期間および冷媒の充填時において、充填システム50Bは、コントロールバルブ用ホース56a、容器用ホース56c、容器60および第2ホース57を連続させる。第2期間は、例えば、コントロールバルブ51よりもガスの排出方向下流側の空気および水分を排出可能な時間間隔に設定される。この第2期間は第1期間よりも短い。これにより、充填システム50Bは、容器60を介した真空引き、およびその後の冷媒の充填を良好に行うことできる。
【0103】
第2実施形態に係る充填システム50Bは、基本的には以上のように構成され、以下その使用方法である冷媒充填方法について、
図9を参照しながら説明する。第2実施形態に係る冷媒充填方法は、冷媒回路10に冷媒が予め充填されていないプレチャージなしの空気調和装置1に対して、充填システム50Bにより冷媒および臭気成分OCを充填する方法である。この冷媒充填方法において、作業者は、
図9に示すステップS201~S213を順次行うことで、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に充填する。
【0104】
第2実施形態に係る冷媒充填方法も、作業者は、まず設置現場において空気調和装置1の室外機20および室内機30の据え付けると共に、第1連絡配管11および第2連絡配管12を室外機20および室内機30に接続して冷媒回路10を形成する(ステップS201:据え付けステップ)。
【0105】
次に、作業者は、室外機20のガス用サービスポート44にコントロールバルブ51を接続する(ステップS202)。さらに、作業者は、コントロールバルブ51から流体の排出方向の下流側に向かって、連成計52および真空ポンプ53を、この順に接続する(ステップS203)。この際、作業者は、第1ホース56のコントロールバルブ用ホース56aおよび連成計用ホース56bを接続することで、容器60を省いた状態での真空引きを可能とする。
【0106】
そして、作業者は、真空ポンプ53を動作させて、真空ポンプ53による冷媒回路10の真空引きを行う(ステップS204:真空引きステップ)。これにより、充填システム50Bは、冷媒回路10の空気および水分を排出できる。またこの際、作業者は、連成計52の圧力を確認しながら第1期間にわたって真空引きを行うことで、冷媒回路10内を目標の圧力まで減圧する。ステップS204では、コントロールバルブ51と連成計52の間に容器60が存在しないことで、容器60の臭気成分OCの吸引を考慮せずに、真空引きを継続的に行うことができる。
【0107】
そして、冷媒回路10の空気および水分の排出を行った後、作業者は、各バルブを閉じることで真空引きを一旦中断する(ステップS205)。
【0108】
次に、臭気成分OCを収容した容器60を設置現場に提供する(ステップS206)。例えば、作業者は、空の容器60に臭気成分OCを注入することで、臭気成分OCを収容した容器60を用意する。なお、作業者は、臭気成分OCを予め充填した容器60を持ち込んでもよい。
【0109】
作業者は、コントロールバルブ用ホース56aと第2ホース57との間の連成計用ホース56bを取り外して、容器用ホース56cおよび容器60を代わりに接続する(ステップS207)。これにより、充填システム50Bは、第1実施形態に係る充填システム50Aと同様に、コントロールバルブ51から流体の排出方向下流側に向かって順に、容器60、連成計52および真空ポンプ53が接続された状態となる。
【0110】
次に、作業者は、各バルブを開けると共に、真空ポンプ53を再び動作させることで、真空ポンプ53による真空引きを行う(ステップS208:真空引きステップ)。この際、作業者は、コントロールバルブ51の弁操作部513を開放して、ガス用サービスポート44のバルブコア44bを閉じた状態とする。また、作業者は、
図5(B)に示すように容器60を横形態とする。これにより、真空ポンプ53は、コントロールバルブ51、容器60、連成計52等の各機器内および各ホース55内の空気および水分を吸引して、コントロールバルブ51までの流路を真空引きできる。
【0111】
真空引きが終了すると、作業者は、連成計52の真空ポンプ53側の開閉バルブ522を閉じて、真空ポンプ53を取り外す一方で、冷媒タンク54を接続する(ステップS209)。これにより、充填システム50Bは、冷媒の供給方向の上流側から下流側に向かって順に、冷媒タンク54、連成計52、容器60およびコントロールバルブ51が接続された状態となる。
【0112】
この状態で、作業者は、各バルブを開けることで、冷媒タンク54から冷媒を供給し、容器60において臭気成分OCと合わせて、この冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に充填する(ステップS210)。この際、作業者は、容器60を縦形態にすると共に、コントロールバルブ51の弁操作部513を閉じて、ガス用サービスポート44のバルブコア44bを開く。これにより、充填システム50Bは、コントロールバルブ51から冷媒回路10内に冷媒および臭気成分OCを供給することが可能となる。つまり、第2実施形態に係る冷媒充填方法でも、ステップ210において、容器60から臭気成分OCを充填する臭気成分充填ステップと、冷媒タンク54から冷媒を充填する冷媒充填ステップとを同時に行う。
【0113】
第2実施形態に係る冷媒充填方法でも、冷媒の充填時に、容器60内の臭気成分OCが先になくなる。このため、冷媒充填方法は、臭気成分OCがなくなった後も、冷媒タンク54からの冷媒の供給を続けて、容器60を経由して冷媒回路10に冷媒を充填する(ステップS211)。
【0114】
作業者は、冷媒の充填時に、冷媒タンク54の電子秤542が計測する冷媒タンク54の重量、連成計52の圧力計523が計測する圧力等を監視して、冷媒の充填が終了したか否かを監視する(ステップS212)。そして、冷媒の充填が終了していない場合(ステップS212:NO)には、冷媒タンク54からの冷媒の充填を継続する。一方、冷媒の充填が終了した場合(ステップS212:YES)には、ステップS213に進む。
【0115】
冷媒の充填終了後のステップS213において、作業者は、充填システム50Bの各バルブを閉じた状態として、さらに充填システム50Bの取り外し作業を行う。
【0116】
以上のように、第2実施形態に係る冷媒充填方法でも、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に効率的に充填できる。特に、冷媒充填方法は、プレチャージなしの冷媒回路10であっても、冷媒と共に臭気成分OCを同時に充填することで、臭気成分OCを円滑かつ確実に冷媒回路10に封入することが可能となる。
【0117】
なお、第2実施形態に係る冷媒充填方法も、種々の変形例をとり得る。例えば、第2実施形態に係る冷媒充填方法でも、連成計52に対して真空ポンプ53と冷媒タンク54の各々を予め接続して、真空引きおよび冷媒の供給を行ってもよい(
図7も参照)。また、作業者は、プレチャージありの冷媒回路10であっても、冷媒の充填量、または第1連絡配管11および第2連絡配管12の長さ等によっては、第2実施形態に係る冷媒充填方法を実行してよい。これにより、冷媒回路10の空気や水分を安定して排出することができる。
【0118】
<本開示の態様および効果>
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様および効果を有する。
【0119】
本開示の第1の態様は、冷媒を循環させる冷媒回路10を有する冷凍装置1に対して冷媒を充填する冷媒充填方法であって、冷凍装置1を所定の位置に据え付ける据え付けステップと、臭気成分OCを収容する容器60と冷凍装置1とを接続して、容器60から冷凍装置1に臭気成分を充填する臭気成分充填ステップと、臭気成分充填ステップと同時または臭気成分充填ステップの後に、冷媒を貯蔵する冷媒タンク54と冷凍装置1とを接続し、冷媒タンク54から冷凍装置1へ冷媒を充填する冷媒充填ステップと、を有する。
【0120】
上記によれば、冷媒充填方法は、臭気成分充填ステップと同時または臭気成分充填ステップの後に冷媒充填ステップを行うことで、装置の据え付け時に、冷媒回路10内へ臭気成分OCを簡単に供給できる。すなわち、冷媒充填方法は、冷媒回路10の圧力が高くない状態で臭気成分OCを供給でき、冷媒回路10の外部に臭気成分OCが漏れることを抑制して、目標量の臭気成分OCを冷媒回路10にスムーズに封入できる。
【0121】
また、冷媒充填方法は、臭気成分充填ステップよりも前に、冷凍装置1に圧力測定器(連成計52)を接続すると共に圧力測定器に真空ポンプ53を接続して、真空ポンプ53により冷凍装置1と真空ポンプ53との間の流路の真空引きを行う真空引きステップを有する。
【0122】
これにより、冷媒充填方法は、冷媒回路10に空気や水分が入り込むことを抑制して、冷媒および臭気成分OCを冷媒回路10に充填できる。
【0123】
また、臭気成分充填ステップにおいて、容器60は、冷凍装置1と圧力測定器(連成計52)との間に配置される。
【0124】
これにより、冷媒充填方法は、容器60を接続した状態で、真空引きや冷媒の充填を行うことができ、機器の接続や交換にかかる時間等を短縮することが可能となる。
【0125】
また、冷凍装置1には、据え付けステップの前に、予め第1量の冷媒が封入されており、冷媒充填ステップでは、冷媒タンク54から冷凍装置1に第2量の冷媒を充填する。
【0126】
これにより、冷媒充填方法は、予め冷媒を封入している冷媒回路10に冷媒を充填するため、真空引きにかかる時間や冷媒の充填にかかる時間を短くでき、作業効率をより向上させることができる。
【0127】
あるいは、冷凍装置1には、据え付けステップの前に、冷媒が封入されておらず、臭気成分充填ステップでは、冷媒が予め封入されていない冷媒回路10に対して臭気成分OCを充填する。
【0128】
これにより、冷媒充填方法は、臭気成分OCを冷媒回路10により一層スムーズに供給することができる。
【0129】
また、冷媒充填ステップでは、冷媒の供給方向上流側から下流側に向かって、冷媒タンク54、容器60および冷凍装置1を、この順に接続している。
【0130】
これにより、冷媒充填方法は、冷媒タンク54からの冷媒の充填に伴って、容器60の臭気成分OCを冷媒回路10に流入させることが可能となる。
【0131】
また、冷媒は、強燃性冷媒である。
【0132】
これにより、冷媒充填方法は、強燃性冷媒と共に臭気成分OCを封入できるので、強燃性冷媒が冷媒回路10から漏れた場合に臭気成分OCも漏れて、周囲の人間に異常を早期に認識させることができる。
【0133】
また、容器60に収容された臭気成分OCは、液体状である。
【0134】
これにより、冷媒充填方法は、冷凍装置1の設置現場において、容器60からの臭気成分OCの漏れを抑制しながら、真空引きや冷媒の供給等をスムーズに実施させることができる。
【0135】
また、臭気成分OCは、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルフィド、エチルメチルスルフィドのいずれか、またはこれらの1つ以上を成分として含む。
【0136】
これにより、臭気成分は、他のスルフィド系の成分と比較して優秀な臭質・臭気閾値を持ち、また化学的に安定化していることで、冷媒回路10において臭気成分の組成を良好に維持できる。
【0137】
今回開示された実施形態に係る冷媒充填方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0138】
1 冷凍装置(空気調和装置)
10 冷媒回路
52 連成計
53 真空ポンプ
54 冷媒タンク
60 容器
OC 臭気成分