(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154646
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F  30/10        20060101AFI20251002BHJP        
   H01F  27/32        20060101ALI20251002BHJP        
   H01F  27/22        20060101ALI20251002BHJP        
   H01F  27/08        20060101ALI20251002BHJP        
   H01F  27/28        20060101ALI20251002BHJP        
【FI】
H01F30/10 E 
H01F30/10 A 
H01F30/10 S 
H01F30/10 G 
H01F27/32 150 
H01F27/22 
H01F27/08 150 
H01F27/28 179 
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057761
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷  勝
(72)【発明者】
【氏名】黄  基浩
(72)【発明者】
【氏名】金  明聖
(72)【発明者】
【氏名】岩倉  正明
(72)【発明者】
【氏名】眞保  聡司
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5E050
【Fターム(参考)】
5E043DA02
5E044BA01
5E044BB02
5E044BB03
5E044BB05
5E044BB07
5E050BA03
5E050JA01
(57)【要約】
【課題】空冷放熱性能に優れたコイル装置を提供する。
【解決手段】巻軸方向である第1方向に沿う挿通孔が形成されるボビンと、前記ボビンに巻回される第1および第2巻線と、前記第1方向に直交する第2方向に沿って所定の隙間を空けて配列される複数のコア部分に分割されており、各前記コア部分が前記挿通孔を挿通する中脚を有しており前記第2方向に直交する断面において前記第1および第2巻線を取り囲む磁路を形成するコアと、を有し、前記ボビンは、前記第1方向に直交する第1断面において前記挿通孔を取り囲んでおり前記第1および第2巻線に内側から対向する側壁外面に凹凸部が形成されているコイル装置。
【選択図】
図7
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  巻軸方向である第1方向に沿う挿通孔が形成されるボビンと、
前記ボビンに巻回される第1および第2巻線と、
前記第1方向に直交する第2方向に沿って所定の隙間を空けて配列される複数のコア部分に分割されており、各前記コア部分が前記挿通孔を挿通する中脚を有しており前記第2方向に直交する断面において前記第1および第2巻線を取り囲む磁路を形成するコアと、を有し、
前記ボビンは、前記第1方向に直交する断面において前記挿通孔を取り囲んでおり前記第1および第2巻線に内側から対向する側壁外面に凹凸部が形成されているコイル装置。
【請求項2】
  前記凹凸部は、前記挿通孔を挟んで前記第2方向に沿って延びる一対の側壁基面と、前記側壁基面から前記第1および第2方向とは垂直な第3方向に突出する複数のリブとを有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
  複数の前記リブは、前記第2方向に関して前記ボビンの中央部に配置される第1リブと、前記第2方向に関して前記第1リブと前記ボビンの端部との間に配置される第2リブと、を有し、
  前記第1リブの前記第3方向への突出高さは、前記第2リブの前記第3方向への突出高さより高い請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
  前記ボビンは、前記側壁外面から前記第1方向に直交する方向に突出して前記第1および第2巻線を前記第1方向の一方側の部分と他方側の部分とに仕切る鍔部を有し、
  前記鍔部のうち前記第2方向に関して前記ボビンの中央部に配置される部分における中央鍔上面および中央鍔下面の少なくとも一方には、段差面が形成されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項5】
  前記ボビンは、前記側壁外面から前記第1方向に直交する方向に突出して前記第1および第2巻線を前記第1方向の一方側の部分と他方側の部分とに仕切る鍔部を有し、
  前記鍔部は、前記第1方向に直交する断面において、前記側壁外面に沿って4カ所以上の切り欠き部を挟んで不連続に形成されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項6】
  前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアに対して前記第1方向の一方側である下側に配置してあり、
  前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアを載置する金属ベースを有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項7】
  前記金属ベースに対して少なくとも2か所で接続しており、前記第2方向に直交する断面において、前記第1および第2巻線を取り囲む熱伝導路を、前記金属ベースとともに形成する金属ブロックを有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項8】
  前記コア部は、前記金属ベースに対して、放熱グリースを介して固定されている請求項7に記載のコイル装置。
【請求項9】
  前記側壁外面は、前記挿通孔を挟んで前記第2方向に沿って延びる一対の側壁基面と、一対の前記側壁基面の互いの前記第2方向の端部同士を接続する一対の側壁端面と、を有し、
  一対の前記側壁端面の少なくとも一方には、前記挿通孔に連通する貫通孔が形成されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項10】
  前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアに対して前記第1方向の他方側である上側に配置してあり、前記コアを構成する複数の前記コア部分に接続しており前記第1方向の一方側である下側を向く接続下面と、前記第1方向の他方側である上側を向き放熱凹凸部が形成される放熱上面と、を有する金属製のヒートシンクを有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項11】
  前記金属ベースに対して少なくとも2か所で接続しており、前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアを収容する収容空間を、前記金属ベースとともに形成する金属製のケースを有する請求項7に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本開示は、空冷放熱性能に優れたコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
  たとえば大容量に対応するトランス等のコイル装置では、発熱による変形や磁気特性の変動を抑制するために、放熱効率が求められる場合がある。また、コイル装置を含む装置の簡略化や小型化が求められる場合、水冷式より簡易的な空冷式により効果的に放熱されるコイル装置が必要となる。
【0003】
  ここで大容量に対応し、かつ、放熱特性を考慮したコイル装置として、一組のE-Eコアを突き合せて形成したコア部分を、複数重ねて構成したコアを用いるコイル装置が提案されている(特許文献1等参照)。また、E-Eコアを突き合せて形成したコア部分を複数配列し、コア部分の間に金属板を配置したものも提案されている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
               【特許文献1】実開昭58-12915号公報
               【特許文献2】特開2011-61096号公報
             
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  しかし、従来のコイル装置では、巻線などが配置されているコアに囲まれた空間内には空気の流れが形成されず、効率的な空冷放熱特性を得ることが難しいという課題がある。
  本開示は、このような実状に鑑みてなされ、複数のコア部分が所定方向に配列されて構成されるコアを有するコイル装置に関し、空冷放熱性能に優れたコイル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
  上記目的を達成するために、本開示に係るコイル装置は、
  巻軸方向である第1方向に沿う挿通孔が形成されるボビンと、
前記ボビンに巻回される第1および第2巻線と、
前記第1方向に直交する第2方向に沿って所定の隙間を空けて配列される複数のコア部分に分割されており、各前記コア部分が前記挿通孔を挿通する中脚を有しており前記第2方向に直交する断面において前記第1および第2巻線を取り囲む磁路を形成するコアと、を有し、
前記ボビンは、前記第1方向に直交する断面において前記挿通孔を取り囲んでおり前記第1および第2巻線に内側から対向する側壁外面に凹凸部が形成されている、
【0007】
  本開示に係るコイル装置では、複数のコア部分が所定の隙間を空けて配列されることにより、コアの内側とコアの外側との間に空気の流れが生じやすくなっている。また、ボビンの側壁外面に凹凸部が形成されていることにより、第1および第2巻線とボビンとの間に冷却のための気流が入り込む隙間が形成され、このようなコイル装置は、空冷放熱性能に優れている。
【0008】
  また、たとえば、前記凹凸部は、前記挿通孔を挟んで前記第2方向に沿って延びる一対の側壁基面と、前記側壁基面から前記第1および第2方向とは垂直な第3方向に突出する複数のリブとを有してもよい。
【0009】
  側壁外面に形成される凹凸部としては、穴などにより形成することも可能であるが、凹凸部が側壁基面とそこから突出するリブを有することにより、ボビンの強度を好適に確保することが可能である。
【0010】
  また、たとえば、複数の前記リブは、前記第2方向に関して前記ボビンの中央部に配置される第1リブと、前記第2方向に関して前記第1リブと前記ボビンの端部との間に配置される第2リブと、を有してもよく、
  前記第1リブの前記第3方向への突出高さは、前記第2リブの前記第3方向への突出高さより高くてもよい。
【0011】
  このように凹凸部のリブの高さを変更することにより、第2方向に沿う冷却気流などにより、第1および第2巻線とその周辺部分を効果的に冷却することができる。
【0012】
  また、たとえば、前記ボビンは、前記側壁外面から前記第1方向に直交する方向に突出して前記第1および第2巻線を前記第1方向の一方側の部分と他方側の部分とに仕切る鍔部を有してもよく、
  前記鍔部のうち前記第2方向に関して前記ボビンの中央部に配置される部分における中央鍔上面および中央鍔下面の少なくとも一方には、段差面が形成されていてもよい。
【0013】
  このような鍔部を有するコイル装置は、第1および第2巻線と鍔部との間により多くの隙間を形成することにより、第1および第2巻線とその周辺部分を、冷却気流により効果的に冷却することができる。
【0014】
  また、たとえば、前記ボビンは、前記側壁外面から前記第1方向に直交する方向に突出して前記第1および第2巻線を前記第1方向の一方側の部分と他方側の部分とに仕切る鍔部を有し、
  前記鍔部は、前記第1方向に直交する断面において、前記側壁外面に沿って4カ所以上の切り欠き部を挟んで不連続に形成されていてもよい。
【0015】
  鍔部が4か所以上の切り欠き部を挟んで不連続に形成されていることにより、鍔部によって冷却気流の流れが阻害される問題を回避することが可能であり、このようなコイル装置は、良好な空冷放熱性能を奏する。
【0016】
  また、たとえば、前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアに対して前記第1方向の一方側である下側に配置してあり、
  前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアを載置する金属ベースを有してもよい。
【0017】
  熱伝導率の高い金属ベースを有することにより、このようなコイル装置は、良好な空冷放熱性能を奏する。
【0018】
  また、たとえば、前記金属ベースに対して少なくとも2か所で接続しており、前記第2方向に直交する断面において、前記第1および第2巻線を取り囲む熱伝導路を、前記金属ベースとともに形成する金属ブロックを有してもよい。
【0019】
  このようなコイル装置は、金属ブロックが第1および第2巻線周辺で生じた熱を、金属ブロックを介して効率的に金属ベースに伝えて放熱することが可能である。
【0020】
  また、たとえば、前記コア部は、前記金属ベースに対して、放熱グリースを介して固定されていてもよい。
【0021】
  このようなコイル装置では、コア部の熱が放熱グリースを介して金属ベースに伝わりやすく、良好な空冷放熱性能を奏する。
【0022】
  また、たとえば、前記側壁外面は、前記挿通孔を挟んで前記第2方向に沿って延びる一対の側壁基面と、一対の前記側壁基面の互いの前記第2方向の端部同士を接続する一対の側壁端面と、を有してもよく、
  一対の前記側壁端面の少なくとも一方には、前記挿通孔に連通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0023】
  このようなコイル装置では、第2方向に沿う冷却気流が挿通孔の内部を通過しやすくなるため、ボビンおよびボビンに巻回される第1および第2巻線周辺を効果的に冷却することができる。
【0024】
  また、たとえば、コイル装置は、前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアに対して前記第1方向の他方側である上側に配置してあり、前記コアを構成する複数の前記コア部分に接続しており前記第1方向の一方側である下側を向く接続下面と、前記第1方向の他方側である上側を向き放熱凹凸部が形成される放熱上面と、を有する金属製のヒートシンクを有してもよい。
【0025】
  このようなヒートシンクは、コアの熱を効果的に放熱することができるため、良好な空冷放熱性能を奏する。
【0026】
  また、たとえば、前記金属ベースに対して少なくとも2か所で接続しており、前記ボビン、前記第1および第2巻線並びに前記コアを収容する収容空間を、前記金属ベースとともに形成する金属製のケースを有してもよい。
【0027】
  このようなコイル装置は、金属ベースから遠い上側部分の熱を、ケースを介して金属ベースに導くことにより、金属ベースから遠い領域での局所的な温度上昇を、効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
            【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るコイル装置の外観図である。
 
            【
図2】
図2は、
図1に示すコイル装置においてケースを取り外した状態を示す外観図である。
 
            【
図3】
図3は、
図1に示すコイル装置のコイル本体部を示す正面図である。
 
            
            【
図5】
図5は、
図3に示すコイル本体部からヒートシンクを除去した状態を示す斜視図である。
 
            【
図6】
図6は、
図5に示すコイル本体部からさらにコアの一部を除去した状態を示す概念図である。
 
            【
図7】
図7は、
図5に示すコイル本体部からさらにコアの全部と第1巻線を除去した状態を示す概念図である。
 
            【
図8】
図8は、
図5に示すコイル本体部からさらにコアの全部と第1巻線を除去した状態を示す正面図である。
 
            【
図9】
図9は、
図5に示すコイル本体部からさらにコアの全部と第1巻線を除去した状態を示す左側面図である。
 
            【
図10】
図10は、
図5に示すコイル本体部からさらにコアの全部と第1巻線を除去した状態を斜め下方から見た部分拡大図である。
 
            【
図11】
図11は、コアと第1巻線を除いたコイル本体部を上方から見た断面図である。
 
            【
図12】
図12は、コイル装置における金属ベースと金属ブロックを示す部分組立図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0029】
  以下、本開示を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0030】
  図1は、本開示に係るコイル装置10の外観図である。コイル装置10のコイル本体部16(
図2参照)にはケース90が取付けられており、コイル本体部16に含まれるボビン20等は、ケース90および金属ベース72等による収容空間90a(
図2参照)に収容される。
図1に示すように、ケース90の外部には、第1巻線40および第2巻線50の端部が引き出されている。
 
【0031】
  図1に示すようなコイル装置10は、比較的容量の大きいトランス等として用いられるが、コイル装置10の用途としては、トランスのみには限定されない。また、コイル装置10は、水冷ではなく、コイル装置10の周辺の気体(空気)の流れにより冷却される空冷式のコイル装置として好適に用いられる。また、コイル装置10の周辺には、ファン等の空冷式冷却装置により、第2方向D2に沿う冷却気流を形成することも好ましい。
 
【0032】
  図2は、
図1に示すコイル装置10において、コイル本体部16からケース90を分離した状態を示す外観図である。ケース90は、固定用のネジ等を緩めることにより、金属ベース72から取り外し、コイル本体部16から分離することが可能である。なお、コイル装置10の説明では、ケース90以外の部分を、コイル本体部16と称する。
 
【0033】
  図2に示すように、コイル装置10は、ボビン20と、ボビン20に巻回される第1および第2巻線40、50と、コア60とを有する。また、コイル装置10は、金属ベース72と、金属ブロック74と、ヒートシンク80と、ケース90とを有する。
 
【0034】
  図3は、
図2に示すコイル装置10におけるコイル本体部16を第3方向D3から見たコイル本体部16の正面図であり、
図4は、コイル本体部16を第2方向D2から見たコイル本体部16の側面図である。また、
図5は、
図2に示すコイル装置におけるコイル本体部16を、斜め上方から見た斜視図である。
 
【0035】
  図3~
図5に示すように、ボビン20にはコア60が取付けられており、
図3~
図5では、ボビン20における第2方向D2の中央部付近は、コア60に隠れている。
図6は、
図5に示すコイル本体部16において、コア60に含まれる各コア部分62の上コア63と、ボビン20の上側部分に巻回される第1巻線40の一部を非表示とした状態を表す部分分解図である。
図6に示すように、ボビン20には第1および第2巻線40、50の巻軸方向である第1方向D1に沿う挿通孔22が形成されている。
 
【0036】
  図6または
図11に示すように、ボビン20は、挿通孔22の貫通方向である第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って楕円の長軸が引き延ばされた略楕円柱状の外形状を有する。
図3および
図4に示すように、ボビン20の側壁外面23(
図7参照)には第1巻線40と第2巻線50とが巻回されている。ボビン20は、複数の鍔部32を有している。ボビン20の詳細構造については後述する。
 
【0037】
  図3および
図5に示すように、コア60は、第2方向D2に沿って所定の間隔を空けて配列される複数のコア部分62に分割されている。コア60は、実施形態では7つのコア部分62を有するが、コア60が有するコア部分62の数は7つのみには限定されない。
 
【0038】
  コア60は、複数のコア部分62に分割されていることにより、熱膨張などによる局所的な応力集中などによりコア60が損傷する問題を防止できる。また、
図3に示すように、各コア部分62がコア部分62の幅より小さい隙間を空けて配列されていることは、コア部分62の間での応力の伝搬を防止できるため好ましい。また、コア部分62の間に隙間が形成されていることにより、ボビン20に巻回される第1巻線40および第2巻線50の周辺に放熱に資する空気の流れが形成され易くなり、良好な空冷放熱特性を有する。
 
【0039】
  図4、
図5から理解できるように、コア部分62は、第1方向D1に沿って向き合う上コア63と下コア64とで構成されている。上コア63と下コア64は両方ともE字型の外形状を有しており、コア部分62は、いわゆるE-Eコアである。ただし、コア60に含まれるコア部分62としては、いわゆるE-Eコアのみには限定されず、コア部分62はいわゆるE-Iコアなどの他の形状であってもよい。また、コア60には、互いに異なる形状のコア部分が含まれていてもよい。
 
【0040】
  図4および
図5に示すように、上コア63と下コア64は、第1方向D1に沿って延びる中脚63a、64aと、中脚63a、64aを挟むように中脚63a、64aの両側に配置される側脚63b、64bおよび側脚63c、64cとを有する。また、上コア63は、中脚63a、側脚63bおよび側脚63cの上端部を第1方向D1および第2方向D2に垂直な第3方向に沿って接続する接続部63dを有する。一方、下コア65は、中脚64a、側脚64bおよび側脚64cの下端部を第3方向D3に沿って接続する接続部64dを有する。
 
【0041】
  図4に示すように、各コア部分62がボビン20の挿通孔22を挿通する中脚63a、64aを有する。各コア部分62は、中脚63a、64a、側脚63b、64b、63c、64c、接続部63d、64dにより、第2方向D2に直交する断面において第1および第2巻線40、50を取り囲む磁路67を形成する。コア60の材質としては、特に限定されないが、たとえばフェライトや鉄などの磁性材料が挙げられる。
 
【0042】
  なお、
図6に示すように、本開示に係るコイル装置10については、第1および第2巻線40、50のボビン20に対する巻軸方向を第1方向D1とし、第1方向D1とは垂直であるコア部分62の配列方向を第2方向D2とし、第1方向D1および第2方向D2に垂直な方向を第3方向D3として説明を行う。また、第1方向D1においてコイル装置10の中心から下コア64の接続部64dへ向かう方向を下方向、コイル装置10の中心から上コア63の接続部63dへ向かう方向を上方向として説明を行う。ただし、コイル装置10の設置姿勢は、
図1に示すように金属ベース72が下側になる向きのみには限定されず、
図1に示す設置姿勢とは異なる設置姿勢であってもかまわない。
 
【0043】
  図3、
図4および
図6に示すように、第1巻線40は、ボビン20の上側部分に巻回されており、第2巻線50は、ボビン20の下側部分に巻回されている。ただし、コイル装置10に巻回される第1および第2巻線40、50の配置としては、
図3および
図4に示すような第1巻線40と第2巻線50とを上下方向に分ける配置のみには限定されず、たとえば、第1巻線40と第2巻線50とが第1方向D1に関して重複するように、ボビン20に巻回される変形例なども考えられる。第1巻線40および第2巻線50は、たとえば被覆導線をボビン20の側壁外面23に巻回して形成される。
 
【0044】
  図5および
図6に示すように、金属ベース72は、ボビン20、第1および第2巻線40、50並びにコア60に対して第1方向D1の一方側である下側に配置してある。金属ベース72の上には、ボビン20、第1および第2巻線40、50、コア60並びにヒートシンク80(
図2参照)が載置してある。
 
【0045】
  図12は、金属ベース72と、金属ベース72に接続する金属ブロック74を示す斜視図である。金属ベース72は、第1方向D1から見て略長方形の矩形平板形状であり、たとえばアルミニウム、鉄またはアルミニウムや鉄を含む合金など、熱伝導率の高い金属材料で構成される。
 
【0046】
  図6および
図12に示すように、金属ベース72の第2方向D2に沿う長さは、ボビン20の第2方向D2に沿う長さより長く、金属ベース72の第3方向D3に沿う長さは、コア60の第3方向D3に沿う長さより長い。
図10に示すように、コイル装置10を第1方向D1の上側から見た場合、ボビン20およびコア60が、金属ベース72の外縁の内側に配置されていることが好ましい。このように配置することにより、第1巻線40および第2巻線50の周辺やコア60で生じた熱を、金属ベース72を介して効果的に放熱できる。
 
【0047】
  また、
図6に示すように、コア60は、金属ベース72に対して、放熱グリース76を介して固定されている。すなわち、コイル装置10では、上コア63と下コア64との対向面が放熱グリース76で固定してあり、さらに、下コア64の接続部64dと金属ベース72との対向面が、同様の放熱グリース76で固定してある。これにより、コイル装置10の内部で生じた熱を、コア60を介して金属ベース72に伝達し、金属ベース72を介して効果的に外部に放熱することができる。
 
【0048】
  図12に示すように、コイル装置10は、金属ベース72から上側に突出するように設けられる金属ブロック74を有する。金属ブロック74は、金属ベース72に対して少なくとも2カ所の下側接続部74aで接続している。また、金属ブロック74は、ボビン20の挿通孔22内に少なくとも一部が位置する上側挿入部74bを有する。
図3に示すように、金属ブロック74は、第2方向D2に配列されるコア部分62のうち最も第1および第2巻線40、50の引出部40a、50aに近いコア部分62に隣接して配置される。
 
【0049】
  図9は、コア60と第1巻線40とを除いたコイル本体部16の左側面図である。
図9に示すように、金属ブロック74は、第2方向D2に直交する断面において、第1および第2巻線40、50を取り囲む熱伝導路74dを、金属ベース72とともに形成する。金属ブロック74の材質としては、金属ベース72と同様に、アルミニウム等の金属材料が挙げられる。また、
図9に示すように、金属ブロック74は、コア60の第2方向D2側の端面に対して、放熱グリース76を介して固定されていてもよい。さらに、金属ブロック74の上端は、ケース90の天壁91の下面に、放熱グリース76を介して接続されていてもよい。
 
【0050】
  金属ブロック74は、金属ベース72に対して距離の遠い上コア63および第1巻線40周辺の熱を効率的に金属ベース72に伝えることで、コイル装置10の内部で生じた熱を効果的に外部に放熱することができる。また、金属ブロック74は、コア60における冷却気流の下流側となる第2方向D2の端部で接続するように、コア60に隣接して配置することも好ましい。このような配置とすることで、熱が逃げにくい傾向にあるコア60における冷却気流の下流側での放熱を向上させることができる。
【0051】
  図2に示すように、コイル装置10は、ボビン20、第1および第2巻線40、50並びにコア60に対して第1方向D1の他方側である上側に配置してある金属性のヒートシンク80を有する。
図3に示すように、ヒートシンク80は接続下面80bと、放熱上面80aとを有する。接続下面80bは、第1方向D1の一方側である下側を向き、コア60を構成するコア部分62における上コア63の接続部63dに接続する。接続下面80bとコア60とは、放熱グリース76(
図6参照)を介して固定される。
 
【0052】
  ヒートシンク80の放熱上面80aは、第1方向D1の他方側である上側を向いており、放熱凹凸部82が形成してある。ヒートシンク80は、金属ベース72に対して距離の遠い上コア63および第1巻線40周辺の熱を、効率的に放熱することができる。コイル装置10では、ヒートシンク80と金属ブロック74とが、コア60を上下に挟んで配置してあることにより、コイル装置10の内部で生じた熱を効果的に外部に放熱することが可能になっている。
【0053】
  図1および
図2に示すように、コイル装置10のケース90は、ボビン20、第1および第2巻線40、50並びにコア60を収容する収容空間90aを、金属ベース72とともに形成する。
図2に示すように、ケース90は、金属ベース72に対して少なくとも第3方向D3の両側の2カ所で接続している。
 
【0054】
  ケース90は、天壁91、ケース側壁92および端壁93を有する。ケース90の天壁91には、ヒートシンク80の放熱凹凸部82を露出するための開口部が形成されている。また、ケース90の端壁93には、端壁93を通過して収容空間90a内に冷却流を導入できるように、貫通孔が形成されている。ヒートシンク80およびケース90の材質としては、金属ベース72および金属ブロック74と同様に、たとえばアルミニウム等の金属材料が挙げられる。
【0055】
  図7は、
図5に示すコイル本体部16からさらにコア60の全部と第1巻線30を除去した状態を示す概念図である。第1巻線30が配置されるボビン20の上側部分に示されるように、ボビン30において第1および第2巻線40、50に内側から対向する側壁外面23には、凹凸部24が形成されている。側壁外面23は、第1方向D1に直交する断面(
図10参照)において挿通孔22を取り囲む面である。
 
【0056】
  図8は、
図7に示す状態のボビン20等を、第3方向D3から見た正面図であり、
図9は、
図7に示す状態のボビン20等を、第2方向D2から見た側面図である。また、
図10は、
図7に示す状態のボビン20等について、斜め下方から見た部分拡大図である。
図7~
図10(特に
図10)に示すように、側壁外面23に形成されている凹凸部24は、側壁基面25と、側壁基面25から突出する複数のリブ26を有する。
 
【0057】
  図11は、
図7に示すボビン20を、第1方向D1に直交する断面で切断した断面図である。
図11に示すように、挿通孔22を取り囲む側壁外面23に形成される凹凸部24は、挿通孔22を挟んで第2方向D2に沿って延びる一対の側壁基面25を有する。一対の側壁基面25は、第1方向D1および第2方向D2とは垂直な第3方向D3に、互いに離間して配置されている。
図5から理解できるように、一対の側壁基面25の間には、コア部分62の中脚63a、64aの一部が配置される。
 
【0058】
  図11に示すように、凹凸部24は、側壁基面25から第3方向D3に突出する複数のリブ26を有しており、側壁基面25とリブ26により凹凸部24が構成されている。複数のリブ26には、第1リブ26aと、第2リブ26bと、第3リブ26cとが含まれる。
 
【0059】
  図10に示すように、複数のリブ26に含まれる第1リブ26a、第2リブ26bおよび第3リブ26cは、いずれも第1方向D1に沿って延びている。側壁外面23には、第2方向D2に沿って延びるリブも形成されており、第2方向D2に沿って延びるリブは、第1方向D1に沿って延びる複数のリブ26を補強する。ただし、第2方向D2に沿って延びるリブについては、側壁外面23に形成されていなくてもよい。
 
【0060】
  図11に示すように、第1リブ26aは、第2方向D2に関してボビン20の中央部に配置される。また、第2リブ26bは、第2方向D2に関して第1リブ26aと側壁端面27が配置してあるボビン20の端部との間に配置される。第1リブ26aの第3方向D3への突出高さは、第2リブ26bの第3方向への突出高さより高い。なお、第3リブ26cは、第2方向D2に関して第1リブ26aと第2リブ26bとの間に配置されており、第3方向D3への突出高さは、第1リブ26aより低く、第2リブ26bより高い。
 
【0061】
  図10では第2巻線50の内側に隠れているが、ボビン20の側壁外面23の下側部分にも、上側部分と同様の凹凸部24が形成されている。
図7、
図8、
図10および
図11に示すように、ボビン20の側壁外面23に凹凸部24が形成されていることにより、第1および第2巻線40、50と側壁外面23との接触面積が狭くなり、コイル装置10を冷却する気流が第1および第2巻線40、50の広い範囲に当り易くなり、第1および第2巻線40、50の放熱を促進させることができる。
 
【0062】
  また、凹凸部24が
図10および
図11に示すような複数のリブ26と側壁基面25とで構成されることにより、第1および第2巻線40、50と側壁基面25との隙間を大きく形成することができ、第1および第2巻線40、50を効果的に空冷することが可能となる。さらに、
図11に示すように、ボビン20の中央部にある第1リブ26aの高さを、端部の近くにある第2リブ26bの高さより高くすることにより、第1および第2巻線40、50が第2方向D2に対して傾斜するため、第2方向D2に沿う冷却気流により効果的な冷却が可能となる。
 
【0063】
  図11に示すように、側壁外面23は、挿通孔22を挟んで第2方向D2に沿って延びる一対の側壁基面25と、一対の側壁基面25の互いの第2方向D2の隣接する端部同士を接続する一対の側壁端面27を有する。各側壁端面27は、第1方向に直交する断面において、略半円形状である。
 
【0064】
  図9に示すように、一対の側壁端面27の少なくとも一方(
図9に示す側壁端面27は、第1および第2巻線40、50の引出部40a、50aとは反対側の側壁端面27)には、ボビン20の挿通孔22に側壁端面27の外側から連通する貫通孔27aが形成されている。貫通孔27aは、第1方向D1に関して端部鍔部36を上下方向に跨いで形成されている。
 
【0065】
  側壁端面27に貫通孔27aが形成されていることにより、コイル装置10を冷却する気流が挿通孔22の内部に導入されやすくなり、特にコイル装置10の中心部分の放熱効率を向上させることができる。なお、
図9に示すように、側壁端面27には、第1方向D1に沿って、複数の貫通孔27aが断続的に形成されていることも好ましい。
 
【0066】
  図7、
図8、
図10に示すように、ボビン20は、側壁外面23から第1方向D1に直交する方向に沿って外側に突出する鍔部32を有する。ボビン20は、第1方向D1の位置が異なる複数の鍔部32を有する。それぞれの鍔部32は、第1および第2巻線40、50を第1方向D1の一方側(下側)の部分と他方側(上側)の部分とに仕切る。鍔部32により、第1および第2巻線40、50を構成する各ターンの高さ方向の位置ずれを抑制するとともに、各ターンの上下に隙間を形成することができる。
 
【0067】
  図7および
図9に示すように、鍔部32には、第2方向D2に関してボビン20の中央部に配置される中央鍔部34と、第2方向D2に関してボビンの端部に配置される端部鍔部36とが含まれる。鍔部32のうち中央鍔部34における中央鍔上面34a(
図7参照)および中央鍔下面34b(
図10参照)の少なくとも一方(実施形態では両方)には、段差面が形成されている。
 
【0068】
  中央鍔上面34aおよび中央鍔下面34bに段差面が形成されていることにより、中央鍔部34に対する第1および第2巻線40、50の接触面積を狭くできる。また、第1および第2巻線40、50の各ターンは、上下の段差面により、第1方向D1に関して上側の鍔部32と下側の鍔部32とのより真ん中に位置に配置されやすくなる。ボビン20では、このような段差面により、鍔部32に対する第1および第2巻線40、50の接触面積を狭くして、第1および第2巻線40、50の表面のうち冷却流が接触可能な面積を広げることができる。
【0069】
  また、
図11に示すように、鍔部32は、第1方向D1に直交する断面において、側壁外面23に沿って4か所以上(実施形態では4か所)の切り欠き部38を挟んで不連続に形成されている。すなわち、中央鍔部34と端部鍔部36との間には、切り欠き部38が形成されている。このように、鍔部32が4か所以上の切り欠き部38を挟んで不連続に形成されていることにより、第1および第2巻線40、50の各ターンの上下に形成される隙間を大きくすることができ、冷却気流により効率的な空冷が可能となる。なお、ボビン20の材質としては、絶縁性の樹脂が挙げられる。
 
【0070】
  以上、実施形態を挙げて本開示に係るコイル装置10について説明してきたが、本開示の技術的範囲は、コイル装置10として示された実施形態のみに限定されず、他の実施形態や変形例を含むものであることは言うまでもない。たとえば、ボビン20の側壁外面23に形成される凹凸部24は、側壁基面25に形成される穴や、リブ以外の突起などにより構成されていてもよい。
【0071】
  また、コイル装置10は、ボビン20、第1および第2巻線40、50並びにコア60に対して第2方向D2に沿う冷却気流を発生させるファンなどを有していてもよい。第2方向D2に沿う気流をボビン20の周辺に形成することで、第1および第2巻線40、50の上下に形成される隙間に、第2方向D2に沿って流れる気流が形成され、コイル装置10は好適な放熱特性を奏する。
【符号の説明】
【0072】
  10…コイル装置
16…コイル本体部
20…ボビン
22…挿通孔
23…側壁外面
24…凹凸部
25…側壁基面
26…リブ
26a…第1リブ
26b…第2リブ
26c…第3リブ
27…側壁端面
27a…貫通孔
32…鍔部
34…中央鍔部
34a…中央鍔上面
34b…中央鍔下面
36…端部鍔部
38…切り欠き部
40…第1巻線
50…第2巻線
40a、50a…引出部
60…コア
62…コア部分
63…上コア
64…下コア
63a、64a…中脚
63b、64b、63c、64c…側脚
63d、64d…接続部
67…磁路
72…金属ベース
74…金属ブロック
74a…下側接続部
74b…上側挿入部
76…放熱グリース
80…ヒートシンク
80a…放熱上面
80b…接続下面
82…放熱凹凸部
90…ケース
90a…収容空間
91…天壁
92…ケース側壁
93…端壁
D1…第1方向
D3…第3方向
D2…第2方向