(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015465
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】インスリン誘導体の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/28 20060101AFI20250123BHJP
C07K 14/62 20060101ALI20250123BHJP
C07K 5/00 20060101ALI20250123BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250123BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250123BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250123BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250123BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
A61K38/28
C07K14/62 ZNA
C07K5/00
A61P3/10
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/10
C07K14/62
A61K38/28 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113358
(22)【出願日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】23186053
(32)【優先日】2023-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23195708
(32)【優先日】2023-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】24162420
(32)【優先日】2024-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カスパ・フース
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・クレステン・ニルセン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ・ビルク・オルセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ホウ-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】スティグ・クリストファーセン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC21
4C076DD37R
4C076DD38Q
4C076DD51Q
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF63
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA33
4C084BA44
4C084CA59
4C084DB34
4C084MA05
4C084MA17
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4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA01
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA63
4H045DA37
4H045EA20
4H045FA50
4H045FA74
4H045GA25
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、アリールボロン酸またはアリールボロキソールなどの1つ以上のアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体の安定した組成物を開発することである。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体と、メチオニンと、を含む組成物、ならびに1型糖尿病および2型糖尿病を含む糖尿病の治療におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体医薬組成物であって、
アリールボロン酸またはアリールボロキソール(aryl boroxol)などの少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体と、
メチオニンと、を含む、液体医薬組成物。
【請求項2】
単独または組み合わせのいずれかでの、グリセロール、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールをさらに含む、請求項1に記載の液体医薬組成物。
【請求項3】
マンニトールを含む、請求項2に記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
マンニトールおよびグリセロールを含む、請求項2に記載の液体医薬組成物。
【請求項5】
pHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
フェノール系防腐剤またはフェノール系防腐剤の混合物をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項7】
前記インスリン誘導体が、実施例1のインスリン誘導体、もしくはその薬学的に許容可能な塩、または実施例2のインスリン誘導体、もしくはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、
実施例2のインスリン誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩と、
グリセロールと、
マンニトールと、
メチオニンと、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が亜鉛を実質的に含まない、請求項8に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、
0.6~4.8mMの、実施例2のインスリン誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、
1.2mMの、実施例2のインスリン誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、請求項10に記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
液体医薬組成物であって、
1.2mMの、実施例2のインスリン誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、液体医薬組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
1型糖尿病および2型糖尿病を含む、糖尿病の予防または治療において使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項15】
対象者における1型糖尿病および2型糖尿病などの糖尿病を治療するための方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体医薬組成物を前記対象者に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体の新規な医薬組成物、および糖尿病に関連する医学的状態の治療または予防のためのこのような組成物の使用に関する。
【0002】
配列表の参照による組み込み
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに提出される。配列表の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、1つ以上のアリールボロン酸またはアリールボロキソール(aryl boroxol)部分の含有に基づいてグルコース感受性インスリン活性を示すインスリン誘導体が公開されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【0004】
アリールボロン酸などのアリールホウ素化合物は、中性値付近のpHにおいて、水溶液中で低い安定性を有する可能性がある。C-B結合は、加水分解してフェニル残基および遊離ホウ酸、Ph-H+B(OH)3を得ることができるか、または化合物は、酸化されてフェノール残基+遊離ホウ酸、Ph-OH+B(OH)3を得ることができる。したがって、アリールボロン酸またはアリールボロキソールなどの1つ以上のアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体の安定した組成物を開発することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/201041号
【特許文献2】国際公開第2019/092125号
【特許文献3】国際公開第2022/109078号
【特許文献4】国際公開第2021/202802号
【特許文献5】国際公開第2023/225534号
【発明の概要】
【0006】
最も広い態様では、本発明は、インスリン誘導体の液体医薬組成物に関し、インスリン誘導体は、アリールボロン酸またはアリールボロキソール(aryl boroxol)部分などの1つ以上のアリールホウ素部分を含む。驚くべきことに、メチオニンの添加は、より安定した組成物をもたらすことが見出された。また、驚くべきことに、マンニトールなどの糖アルコール(ポリオール)の添加が、より安定した組成物をもたらすことも見出された。さらに、メチオニンおよびマンニトールの両方の添加が、驚くべき安定した組成物をもたらすことが見出された。さらなる態様では、組成物は、メチオニンおよびマンニトールを含む。一態様では、組成物は安定である。一態様では、組成物は、組成物がメチオニンを含有していない場合よりも安定である。一態様では、組成物は、組成物がマンニトールを含有していない場合よりも安定である。一態様では、組成物は、組成物がメチオニンおよびマンニトールを含有していない場合よりも安定である。
【0007】
本発明は、例示的な実施形態の開示から明らかとなるさらなる問題も解決し得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様では、本発明による組成物は、
a)アリールボロン酸またはアリールボロキソールなどの少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体と、
b)メチオニンと、を含む。
【0009】
一態様では、本発明による組成物は、
a)アリールボロン酸またはアリールボロキソールなどの少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体と、
b)マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコールと、を含む。
【0010】
一態様では、本発明による組成物は、
a)アリールボロン酸またはアリールボロキソールなどの少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体と、
b)メチオニンと、
b)マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコールと、を含む。
【0011】
一態様では、本発明による組成物は、
a)アリールボロン酸またはアリールボロキソールなどの少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体と、
b)単独または組み合わせのいずれかでの、グリセロール、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールと、を含む。
【0012】
一態様では、本発明による組成物は、
a)少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体と、
b)メチオニンと、
b)単独または組み合わせのいずれかでの、グリセロール、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールと、を含む。
【0013】
インスリン誘導体
本明細書で使用される場合、「インスリン誘導体」という用語は、修飾インスリンペプチドを意味し、修飾は、一般的に側鎖または修飾基とも呼ばれる、化学的部分の共有結合の形態にある。一態様では、修飾は、少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソール部分を含む少なくとも1つの修飾基の共有結合の形態にある。一実施形態では、各修飾基は、少なくとも2つのアリールボロン酸またはアリールボロキソール部分を含む。一実施形態では、各修飾基は、少なくとも2つのアリールボロキソール部分を含む。
【0014】
こうしたインスリン誘導体の例は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2020/201041号、国際公開第2019/092125号、国際公開第2022/109078号、国際公開第2021/202802号、および国際公開第2023/225534号に開示されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、インスリン誘導体は、その完全または部分的にイオン化された形態で組成物中に存在してもよく、例えば、1つ以上のカルボン酸基(-COOH)は、カルボキシレート基(-COO-)に脱プロトン化されてもよく、かつ/または1つ以上のアミノ基(-NH2)は、-NH3+基にプロトン化されてもよい。いくつかの実施形態では、インスリン誘導体は、塩の形態で組成物に添加される。いくつかの実施形態では、インスリン誘導体は、ナトリウム塩の形態で組成物に添加される。
【0016】
アリールボロン酸およびアリールボロキソール
本発明の組成物は、少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体を含む。アリールホウ素部分は、アリールボロン酸またはアリールボロキソールであってもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アリールホウ素部分」、「アリールボロン酸」、および「アリールボロキソール」という用語は、置換または非置換のバリアントを含む。アリールボロン酸の一例は、フェニルボロン酸である(化学式1)。アリールボロキソールの例は、ベンゾボロキソールであり、ベンゾオキサボロール(化学式2)としても知られる。
【化1】
化学式1.フェニルボロン酸
【化2】
化学式2.ベンゾボロキソール
【0018】
アリールホウ素部分は、化学式4などのより大きな化学的部分の一部であってもよい(式中、R
1は、CF
3、F、またはHであり、R
2は、HまたはCH
3であり、R
3は、HまたはCH
3である)。
【化3】
化学式4.
【0019】
アリールボロン酸またはアリールボロキソールを含む部分は、化学的ハンドルおよび任意選択でリンカーを介してインスリンペプチドに共有結合している。リンカーは、インスリンペプチドの化学リンカーもしくはペプチド延長部、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
インスリンペプチド
本明細書で使用される場合、「インスリンペプチド」という用語は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体のいずれかであるペプチドを意味する。一実施形態では、本明細書で使用される「インスリンペプチド」という用語は、インスリン活性を有する、すなわち、インスリン受容体を活性化するヒトインスリンまたはその類似体のいずれかであるペプチドを意味する。
【0021】
ヒトインスリン
本明細書で使用される場合、「ヒトインスリン」という用語は、その構造および特性が周知であるヒトインスリンホルモンを意味する。ヒトインスリンは、A鎖およびB鎖と称される2つのポリペプチド鎖を有する。A鎖は、21個のアミノ酸のペプチドであり、B鎖は、30個のアミノ酸のペプチドであり、2つの鎖は、ジスルフィド架橋によって接続され、第1の架橋は、A鎖の7位におけるシステインとB鎖の7位におけるシステインとの間であり、また第2の架橋は、A鎖の20位におけるシステインとB鎖の19位におけるシステインとの間である。第3の架橋は、A鎖の6位におけるシステインとA鎖の11位におけるシステインとの間に存在する。ヒトインスリンA鎖は、以下の配列:GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号1)を有する一方、B鎖は、以下の配列:FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号2)を有する。
【0022】
インスリン類似体
本明細書で使用される場合、「インスリン類似体」という用語は、インスリンの1つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されており、かつ/または1つ以上のアミノ酸残基がインスリンから欠失しており、かつ/または1つ以上のアミノ酸残基がインスリンに付加および/もしくは挿入されている、修飾ヒトインスリンを意味する。本明細書で使用される場合、「インスリン類似体」という用語は、インスリン活性を示す、すなわち、インスリン受容体に結合しインスリン受容体を活性化する、インスリン類似体を意味する。
【0023】
インスリン分子内の修飾は、鎖(AまたはB)、位置、および天然アミノ酸残基を置換するアミノ酸残基の1文字または3文字のコードを述べることで表わされる。本明細書では、「A1」、「A2」、および「A3」などの用語は、(N末端から数えて)インスリンのA鎖のそれぞれ1位、2位、および3位などのアミノ酸を示す。同様に、B1、B2、およびB3などの用語は、(N末端から数えて)インスリンのB鎖のそれぞれ1位、2位、および3位などにおけるアミノ酸を示す。アミノ酸の1文字コードを使用すると、B29Kという用語は、B29位におけるアミノ酸がKであることを指定している。アミノ酸の3文字コードを使用すると、対応する表現は、B29Lysである。「desB30」とは、B30アミノ酸を欠くインスリン類似体を意味する。
【0024】
特定の実施形態では、類似体は、特定の変化を「有する」または「含む」。他の特定の実施形態では、類似体は、変化「から成る」。「から成る」または「から成っている」という用語が類似体に関連して使用される場合、例えば、類似体が、特定のアミノ酸変異の群から成るか、または成っている場合、当然のことながら、特定のアミノ酸変異は、類似体における唯一のアミノ酸変異である。対照的に、特定のアミノ酸変異の群を「含む」類似体は、さらなる変異を有し得る。
【0025】
インスリン類似体の例としては、
desB30ヒトインスリン(配列番号1のA鎖および配列番号3のB鎖)が挙げられる。
【0026】
抗酸化物質
抗酸化物質は、液体製剤中の医薬タンパク質を酸化から安定化させるために使用され得る。一般的に知られている抗酸化物質はアスコルビン酸(ビタミンC)である。少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体の組成物にアスコルビン酸を添加すると、製剤中のインスリン誘導体の安定性の大幅な低下をもたらした。
【0027】
メチオニン
L-メチオニンは、タンパク質原生アミノ酸である。ポリペプチドまたはタンパク質中のメチオニン残基は酸化の影響を受けやすく、メチオニンは、メチオニン残基を含むポリペプチドまたはタンパク質の製剤の安定剤として使用されてきた。添加される量は、メチオニンスルホキシドの量が許容可能なレベルまで、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量であるべきである。一般的に、これは、加えられたメチオニン対メチオニン残基の比が約1:1~約1000:1(約10:1~約100:1など)の範囲となるように、組成物中にメチオニンを添加することによって達成できる。ヒトインスリンは、メチオニン残基を全く含まず、したがって、メチオニンは、インスリン製剤中の一般的な賦形剤ではないが、メチオニンは、抗酸化特性を有することが報告されている。
【0028】
驚くべきことに、少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体の組成物へのメチオニンの添加が、製剤中のインスリン誘導体の安定性の増加をもたらすことが見出された。
【0029】
本明細書で使用される場合、「メチオニン」という用語は、L-メチオニン、D-メチオニン、およびメチオニンのラセミ体を含む。
【0030】
等張化剤
等張化剤は、インスリン誘導体の溶液が体内に注射されるときに、適切な浸透圧を維持する効果を有する。一般的に使用される等張化剤には、塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖(単糖類、二糖類もしくは多糖類または水溶性グルカン、例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストランを含む)、糖アルコール(マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ダルシトール、キシリトール、アラビトールなど)、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、またはそれらの混合物が含まれる。等張化剤は、一般的に等張剤とも呼ばれる。医薬組成物に等張化剤を使用することは、当業者には周知である。便宜上、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995が参照され得る。
【0031】
安定剤としてのグリセロールおよび糖アルコール
驚くべきことに、少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体の組成物に、等張化剤として一般的に使用されるグリセロールを添加すると、製剤中のインスリン誘導体の安定性の増加をもたらすことが見出された。さらに驚くべきことに、少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体の組成物に、等張化剤として使用される場合よりもはるかに少ない量で糖アルコールであるマンニトールを添加すると、製剤中のインスリン誘導体の安定性の増加をもたらすことが見出された。糖アルコールであるソルビトールについて同様の効果が見られた。比較すると、糖類であるスクロースおよびトレハロースの添加は、製剤中のインスリン誘導体の安定性に影響を及ぼさなかった。したがって、マンニトール、ソルビトール、および/またはグリセロールが、少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体の組成物の安定剤として作用することは、非常に驚くべきことである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「マンニトール」という用語には、D-マンニトール、L-マンニトールおよびマンニトールのラセミ体が含まれる。
【0033】
亜鉛
亜鉛は、貯蔵中の分解に対する予防策として、六量体形成を促進するために治療用インスリン調製物に常用される。六量体への促進は、Zn2+残基とインスリンHisB10残基との間の相互作用によって駆動される。Zn2+は通常、塩化亜鉛または酢酸亜鉛などの亜鉛塩の形態で添加される。
【0034】
実施例1のインスリン誘導体を含む試験された組成物は、亜鉛がない場合よりも亜鉛の存在下でより安定であった。驚くべきことに、実施例2のインスリン誘導体を含む試験された組成物は、亜鉛の存在下よりも亜鉛がない場合の方がより安定であることが見出された。
【0035】
防腐剤
本発明のさらなる態様では、製剤は、薬学的に許容可能な防腐剤をさらに含む。防腐剤は、医薬調製物での使用に適した防腐剤から選択することができる。本発明のさらなる実施形態では、防腐剤は、フェノールおよびm-クレゾール、またはそれらの混合物などのフェノール系防腐剤から選択される。本発明のさらなる実施形態では、防腐剤は、フェノールおよびm-クレゾール、またはそれらの混合物から成る群から選択される。医薬組成物に防腐剤を使用することは、当業者には周知である。便宜上、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995が参照され得る。
【0036】
追加の賦形剤
本発明の組成物は、追加的な賦形剤も含み得る。「賦形剤」という用語は、活性治療成分以外の任意の成分を広範に指す。賦形剤は、非活性物質、不活性物質、および/または医薬的に活性でない物質であり得る。賦形剤は、例えば、担体、ビヒクル、希釈剤として様々な目的を果たし、かつ/または活性物質の投与および/もしくは吸収を改善するように機能し得る。賦形剤の非限定的な例は、溶媒、希釈剤、緩衝液、防腐剤、張性調節剤、キレート剤、および安定剤である。様々な賦形剤を伴った薬学的に活性成分の製剤化は、当技術分野において公知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第21版(2005)および任意のその後の版)を参照)。
【0037】
本発明の組成物は、液体製剤、すなわち、水を含む水性製剤の形態にある。液体製剤は、溶液または懸濁液であってもよい。本発明の組成物は、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈注射によって実施される非経口投与用であってもよい。
【0038】
実施形態のリスト
本発明は、以下の非限定的実施形態によってさらに説明される。
1.液体医薬組成物であって、
a)少なくとも1つのアリールホウ素部分を含むインスリン誘導体と、
b)メチオニンと、を含む、液体医薬組成物。
2.液体医薬組成物であって、
a)少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体と、
b)メチオニンと、を含む、液体医薬組成物。
3.メチオニンの濃度が、5mM~300mMの範囲内である、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
4.メチオニンの濃度が、5mM~60mMの範囲内である、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
5.メチオニンの濃度が、5mM~45mMの範囲内である、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
6.メチオニンの濃度が、5mM~30mMの範囲内である、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
7.メチオニンの濃度が、7mM~20mMの範囲内である、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
8.メチオニンの濃度が、15mMである、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
9.メチオニンの濃度が、16mMである、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
10.メチオニンの濃度が、30mMである、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
11.メチオニンの濃度が、45mMである、実施形態1~2のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
12.1つ以上の糖アルコールをさらに含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
13.糖アルコールをさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
14.組成物中の糖アルコールの総濃度が、1mM~300mMの範囲内である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
15.組成物中の糖アルコールの総濃度が、2mM~300mMの範囲内である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
16.組成物中の糖アルコールの総濃度が、5mM~300mMの範囲内である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
17.組成物中の糖アルコールの総濃度が、10mM~300mMの範囲内である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
18.組成物中の糖アルコールの総濃度が、20mM~40mMの範囲内である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
19.マンニトールをさらに含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
20.組成物中のマンニトールの濃度が、10mM~300mMの範囲内である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
21.組成物中のマンニトールの濃度が、20mM~40mMの範囲内である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
22.組成物中のマンニトールの濃度が、40mM~80mMの範囲内である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
23.組成物中のマンニトールの濃度が、20mMである、実施形態1~22のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
24.組成物中のマンニトールの濃度が、30mMである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
25.組成物中のマンニトールの濃度が、40mMである、実施形態1~24のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
26.組成物中のマンニトールの濃度が、80mMである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
27.単独または組み合わせのいずれかでの、糖アルコールまたはグリセロールをさらに含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
28.グリセロールおよび糖アルコールをさらに含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
29.単独または組み合わせのいずれかでの、マンニトール、ソルビトールまたはグリセロールをさらに含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
30.マンニトールおよびグリセロールをさらに含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
31.組成物中のグリセロールの濃度が、10mM~600mMの範囲内である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
32.組成物中のグリセロールの濃度が、10mM~300mMの範囲内である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
33.組成物中のグリセロールの濃度が、100mM~300mMの範囲内である、実施形態1~32のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
34.組成物中のグリセロールの濃度が、100mM~230mMの範囲内である、実施形態1~33のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
35.組成物中のグリセロールの濃度が、150mM~230mMの範囲内である、実施形態1~34のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
36.組成物中のグリセロールの濃度が、152mM~217mMの範囲内である、実施形態1~35のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
37.組成物中のグリセロールの濃度が、185mM~217mMの範囲内である、実施形態1~36のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
38.組成物中のグリセロールの濃度が、152mMである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
39.組成物中のグリセロールの濃度が、165mMである、実施形態1~38のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
40.組成物中のグリセロールの濃度が、174mMである、実施形態1~39のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
41.組成物中のグリセロールの濃度が、185mMである、実施形態1~40のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
42.組成物中のグリセロールの濃度が、195mMである、実施形態1~41のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
43.組成物中のグリセロールの濃度が、217mMである、実施形態1~42のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
44.pHが、5.0~8.0の範囲内である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
45.pHが、6.4~7.4の範囲内である、実施形態1~44のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
46.pHが、6.6である、実施形態1~45のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
47.メチオニンの濃度が、5mM~45mMの範囲内であり、組成物中のマンニトールの濃度が、40mM~80mMの範囲内であり、組成物中のグリセロールの濃度が、152mM~217mMの範囲内である、実施形態1~46のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
48.フェノール系防腐剤またはフェノール系防腐剤の混合物をさらに含む、実施形態1~47のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
49.フェノール系防腐剤が、フェノールである、実施形態1~48のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
50.フェノール系防腐剤が、60mMの濃度のフェノールである、実施形態1~49のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
51.フェノール系防腐剤が、m-クレゾールである、実施形態1~50のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
52.フェノール系防腐剤が、32mMの濃度のm-クレゾールである、実施形態1~51のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
53.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールである、実施形態1~52のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
54.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、10~60mMの範囲内であり、メタクレゾールの濃度が、10~40mMの範囲内である、実施形態1~53のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
55.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、16~32mMの範囲内であり、メタクレゾールの濃度が、16~32mMの範囲内である、実施形態1~54のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
56.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、16mMであり、メタクレゾールの濃度が、16mMである、実施形態1~55のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
57.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、21mMであり、メタクレゾールの濃度が、21mMである、実施形態1~56のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
58.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、25mMであり、メタクレゾールの濃度が、25mMである、実施形態1~57のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
59.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、16mMであり、メタクレゾールの濃度が、32mMである、実施形態1~58のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
60.フェノール系防腐剤の混合物が、フェノールおよびm-クレゾールであり、フェノールの濃度が、60mMであり、メタクレゾールの濃度が、16mMである、実施形態1~59のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
61.インスリン誘導体が、少なくとも4つのアリールホウ素部分を含む、実施形態1~60のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
62.インスリン誘導体が、4~20個のアリールホウ素部分を含む、実施形態1~61のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
63.インスリン誘導体が、4~16個のアリールホウ素部分を含む、実施形態1~62のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
64.インスリン誘導体が、4~12個のアリールホウ素部分を含む、実施形態1~63のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
65.インスリン誘導体が、4~8個のアリールホウ素部分を含む、実施形態1~64のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
66.インスリン誘導体が、4~6個のアリールホウ素部分を含む、実施形態1~65のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
67.アリールボロン酸またはアリールボロキソールが、アリールボロン酸である、実施形態1~66のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
68.アリールボロン酸またはアリールボロキソールが、アリールボロキソールである、実施形態1~67のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
69.インスリン誘導体が、2つのアリールボロキソールを各々が含む1つ以上の修飾基を含む、実施形態1~68のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
70.インスリン誘導体が、2つのアリールボロキソールを各々が含む1~6個の修飾基を含む、実施形態1~69のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
71.インスリン誘導体が、任意選択的に置換されている、
【化4】
の少なくとも1つを含む、実施形態1~70のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
72.インスリン誘導体が、任意選択的に置換されている、
【化5】
の少なくとも1つを含む、実施形態1~71のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
73.インスリン誘導体が、
【化6】
の少なくとも1つを含む(式中、フェニル環は、F、Cl、CHF
2、およびCF
3から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている)、実施形態1~72のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
74.インスリン誘導体が、
【化7】
の少なくとも1つを含む(式中、R
1は、H、F、Cl、CHF
2、またはCF
3である)、実施形態1~73のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
75.インスリン誘導体が、
【化8】
の少なくとも1つを含む(式中、R
1は、HまたはCF
3である)、実施形態1~74のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
76.インスリン誘導体が、
【化9】
の少なくとも1つを含む、実施形態1~75のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
77.インスリン誘導体が、
【化10】
の少なくとも1つを含む(式中、R
1は、H、F、Cl、CHF
2、またはCF
3であり、R
2は、HまたはCH
3であり、R
3は、HまたはCH
3である)、実施形態1~76のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
78.インスリン誘導体が、
【化11】
の少なくとも1つを含む(式中、R
1は、H、F、Cl、CHF
2、またはCF
3であり、R
2は、HまたはCH
3であり、R
3は、HまたはCH
3である)、実施形態1~77のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
79.R
1が、HまたはCF
3である、実施形態77~78のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
80.R
2が、Hであり、R
3が、Hである、実施形態77~78のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
81.R
2が、Hであり、R
3が、CH
3である、実施形態77~78のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
82.R
2が、CH
3であり、R
3が、Hである、実施形態77~78のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
83.インスリン誘導体が、以下の少なくとも1つを含む、実施形態1~82のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【化12】
84.インスリン誘導体が、インスリン骨格および/またはペプチド延長インスリン骨格内のアミノ酸残基に共有結合された、
【化13】
の少なくとも1つを含む、実施形態1~83のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
85.インスリン誘導体が、以下の少なくとも1つを含む、実施形態1~84のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【化14】
86.インスリン誘導体が、インスリン骨格および/またはペプチド延長インスリン骨格内のアミノ酸残基に共有結合された、
【化15】
の少なくとも1つを含む、実施形態1~85のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
87.インスリン誘導体が、
【化16】
(実施例1のインスリン誘導体)、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~86のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
88.インスリン誘導体が、実施例1のインスリン誘導体である、実施形態1~87のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
89.インスリン誘導体が、
【化17】
(実施例2のインスリン誘導体)、またはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態1~88のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
90.インスリン誘導体が、実施例2のインスリン誘導体である、実施形態1~89のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
91.組成物が、
実施例2のインスリン誘導体と、
グリセロールと、
マンニトールと、
メチオニンと、を含む、実施形態1~90のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
92.組成物が、
実施例2のインスリン誘導体と、
フェノールと、
メタクレゾールと、
グリセロールと、
マンニトールと、
メチオニンと、を含む、実施形態1~91のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
93.組成物が、
実施例2のインスリン誘導体と、
フェノールと、
メタクレゾールと、
グリセロールと、
マンニトールと、
メチオニンと、から実質的に成る、実施形態1~92のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
94.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
15~45mMのメチオニンと、
140~250mMのグリセロールと、
20~80mMのマンニトールと、を含む、実施形態1~93のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
95.組成物が、30~45mMのメチオニンを含む、実施形態1~94のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
96.組成物が、40~80mMのマンニトールを含む、実施形態1~95のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
97.組成物が、152~217mMのグリセロールを含む、実施形態1~96のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
98.組成物が、亜鉛を実質的に含まない、実施形態1~97のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
99.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、を含む、実施形態1~98のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
100.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~99のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
101.組成物が、
0.6mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~100のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
102.組成物が、
1.2mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~101のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
103.組成物が、
2.4mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~102のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
104.組成物が、
3.6mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~103のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
105.組成物が、
4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~104のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
106.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~105のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
107.組成物が、
0.6mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~106のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
108.組成物が、
1.2mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~107のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
109.組成物が、
2.4mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~108のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
110.組成物が、
3.6mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~109のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
111.組成物が、
4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
30mMのメチオニンと、
152mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
25mMのフェノールと、
25mMのメタクレゾールと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~110のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
112.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
16mMのフェノールと、
16mMのメタクレゾールと、
185mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
30mMのメチオニンと、を含み
pHが、6.6である、実施形態1~111のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
113.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
16mMのフェノールと、
16mMのメタクレゾールと、
185mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
30mMのメチオニンと、から実質的に成り、
pHが、6.6である、実施形態1~112のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
114.組成物が、亜鉛を実質的に含まない、実施形態1~113のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
115.組成物が、亜鉛イオンを実質的に含まない、実施形態1~114のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
116.インスリン誘導体が、実施例2のインスリン誘導体である場合、組成物は、亜鉛を実質的に含まない、実施形態1~115のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
117.インスリン誘導体が、実施例2のインスリン誘導体である場合、組成物は、亜鉛イオンを実質的に含まない、実施形態1~116のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
118.医薬として使用するための、実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
119.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリック症候群(メタボリック症候群X、インスリン抵抗性症候群)の予防または治療において使用するための、実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
120.糖尿病の予防または治療において使用するための、実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
121.1型糖尿病および2型糖尿病の予防または治療において使用するための、実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
122.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリック症候群(メタボリック症候群X、インスリン抵抗性症候群)の治療または予防のための医薬の製造のための、実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物の、使用。
123.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリック症候群(メタボリック症候群X、インスリン抵抗性症候群)を治療または予防するための方法であって、それを必要とする対象者に、治療有効量の実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物を投与することを含む、方法。
124.対象者における糖尿病の治療するための方法であって、実施形態1~117のいずれか1つに記載の液体医薬組成物を前述の対象者に投与することを含む、方法。
【0039】
本発明は、以下の実施形態の第2のリストによってさらに定義される。
1.液体医薬組成物であって、
a)少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体と、
b)メチオニンと、を含む、液体医薬組成物。
2.メチオニンの濃度が、5mM~300mMの範囲内である、実施形態1に記載の液体医薬組成物。
3.単独または組み合わせのいずれかでの、グリセロール、またはマンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコールをさらに含む、実施形態1または2に記載の液体医薬組成物。
4.マンニトールをさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
5.マンニトールおよびグリセロールをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
6.組成物中のマンニトールの濃度が、10mM~300mMの範囲内である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
7.組成物中のグリセロールの濃度が、10mM~600mMの範囲内である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
8.pHが、6.4~7.4の範囲内である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
9.フェノール系防腐剤またはフェノール系防腐剤の混合物をさらに含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
10.アリールボロン酸またはアリールボロキソールが、アリールボロキソールである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
11.少なくとも1つのアリールボロン酸またはアリールボロキソールを含むインスリン誘導体が、実施例1のインスリン誘導体または実施例2のインスリン誘導体である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
12.組成物が、
実施例2のインスリン誘導体と、
フェノールと、
メタクレゾールと、
グリセロールと、
マンニトールと、
メチオニンと、を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
13.組成物が、
0.6~4.8mMの実施例2のインスリン誘導体と、
16mMのフェノールと、
16mMのメタクレゾールと、
185mMのグリセロールと、
40mMのマンニトールと、
30mMのメチオニンと、を含み、
pHが、6.6である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
14.医薬として使用するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
15.糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、高血糖症、およびメタボリック症候群(メタボリック症候群X、インスリン抵抗性症候群)の予防または治療において使用するための、実施形態1~14のいずれか1つに記載の液体医薬組成物。
【実施例0040】
材料および方法
以下の実施例で使用されるマンニトールは、D-マンニトールである。
【0041】
以下の実施例で使用されるソルビトールは、D-ソルビトールである。
【0042】
以下の実施例で使用されるメチオニンは、L-メチオニンである。
【0043】
以下の実施例で使用されるアスコルビン酸(アスコルビン酸ナトリウム)は、L-アスコルビン酸(L-アスコルビン酸ナトリウム)である。
【0044】
略語リスト
ACN アセトニトリル
ALP achromobactor lyticusプロテアーゼ
BEH エチレン架橋型ハイブリッド(エチレン架橋ハイブリッド粒子技術)
C18 オクタデカニル(HPLCカラム)
CV カラム体積
Dap 2,3-ジアミノプロピオン酸
DCC N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIC N,N-ジイソプロピルカルボジイミド
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
HATU 1-((ジメチルアミノ)(ジメチルイミニオ)メチル)-1H-[1,2,3]トリアゾロ-
[4,5-b]ピリジン3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HCl 塩酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
hrs 時間
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
min 分
MeCN アセトニトリル
mm ミリメートル
mM ミリモル
NaCl 塩化ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NBS N-ブロモスクシンイミド
NHS N-ヒドロキシスクシンミド(hydroxysuccinmide)
NMR 核磁気共鳴
q.s. 必要量(quantum satis)
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
tBu tert-ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
UV 紫外線
Å オングストローム
【0045】
実施例1:実施例1のインスリン誘導体の調製
【化18】
実施例1のインスリン誘導体は、国際公開第2020/201041号(実施例280)に開示されており、国際公開第2020/201041号に記載されるように調製された(インスリンA鎖は、配列番号1の配列を有し、延長B鎖は、配列番号4の配列を有する)。
【0046】
実施例2:実施例2のインスリン誘導体の調製
【化19】
【0047】
酵母におけるインスリンバリアントの発現、およびALPなどでの形質転換
インスリン類似体GKPE-(GEQP)4-GEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(インスリンA鎖は、配列番号1の配列を有し、延長B鎖は、配列番号5の配列を有する)を、例えば、国際公開第2017/032798号に開示されるように、周知の技術を使用して酵母で発現させた。より具体的には、インスリン類似体を単鎖前駆体として発現させ、イオン交換捕捉によって単離し、以下に記載されるALPでの処理によって2鎖インスリン類似体に切断した。
【0048】
GKPE-(GEQP)4-GEQG-GKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリンは、GKPE-GEQPGEQPGEQPGEQP-GEQG-GKPEGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)(C末端SはB1Fに接続)でB1から延長されたdesB30ヒトインスリンを意味する。
【0049】
SP Sepharose BB上での前駆体の捕捉:
酵母上清を、SP Sepharose BBで充填したカラム上に10~20CV/時間の流量で装填した。0.1Mクエン酸、pH3.5による洗浄、および40%EtOHによる洗浄を実施した。類似体を0.2M酢酸ナトリウムpH5.5/35%EtOHで溶出した。
【0050】
ALP消化:
単鎖前駆体の溶液をpH9に調整し、ALP酵素を1:100(w/w)添加した。UPLCで反応を追跡した。RP-HPLC精製用に調製するために、ALP切断プールをpH2.5に調整し、2倍に希釈した。
【0051】
RP-HPLC精製:
精製をRP-HPLC C18によって以下のように実施した:
カラム:15um C18 50×250mm 200Å
緩衝液:
A:0.2%ギ酸、5%EtOH、
B:0.2%ギ酸、50%EtOH
勾配:20~55%B緩衝液。
勾配:20CV
流量 20CV/時間
装填g 約5g/L樹脂
画分をUPLCによって分析し、プールし、凍結乾燥させた。
【0052】
(S)-4-((S)-2,3-ビス(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)プロパンアミド)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(構成ブロック1)の調製
【化20】
NBS(34.0g、191mmol)を濃硫酸(400mL)中の3-トリフルオロメチル-4-メチル安息香酸(39.0g、191mmol)の溶液に添加し、反応混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、反応混合物を氷水(2L)に注いだ。得られた沈殿物を濾過して取り除き、水(500mL)で洗浄し、酢酸エチル(400mL)中に溶解し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸を白色固体として得た。収率:53.4g(98%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):13.71(bs,1H);8.35(d,J=0.4Hz,1H);8.15(d,J=0.9Hz,1H);2.56(s,3H)。
【0053】
濃硫酸(24mL)をメタノール(500mL)中の3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸(35.0g、124mmol)の溶液に添加し、反応混合物を還流下で4時間、および室温で16時間攪拌した。次いで、反応混合物を減圧下で蒸発させ、ジエチルエーテル(250mL)中に溶解し、水(2×100mL)、ならびに炭酸カリウム(100mL)の飽和溶液および食塩水(100mL)の混合物で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチルを白色固体として得た。収率:35.3g(96%)。1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):8.36(d,J=1.1Hz,1H);8.13(d,J=1.1Hz,1H);3.90(s,3H);2.55(d,J=1.3Hz,3H)。
【0054】
水(300mL)中のNBS(31.7g、178mmol)および3-ブロモ-4-メチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチル(35.3g、119mmol)の懸濁液を、100W電球下、80℃で6時間攪拌した。反応混合物をジエチルエーテル(2×200mL)で抽出した。有機層を食塩水(150mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、3-ブロモ-4-ブロモメチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチルを黄色固体として得た。収率:44.0g(98%)。1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):8.47(d,J=1.5Hz,1H);8.31(d,J=1.3Hz,1H);4.75(s,2H);3.98(s,3H)。
【0055】
MeCN(0.5L)中、3-ブロモ-4-ブロモメチル-5-トリフルオロメチル安息香酸メチル(44.0g、117mmol)および酢酸カリウム(22.9g、234mmol)の溶液を75℃で一晩攪拌した。懸濁液を濾紙を通して濾過し、蒸発させた。粗生成物をジクロロメタン中に溶解し、再び濾過した。蒸発により、4-(アセトキシメチル)-3-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルを白色固体として得た。収率:37.9g(91%)。1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):8.49(d,J=1.3Hz,1H);8.34(d,J=1.3Hz,1H);5.37(s,2H);3.99(s,3H);2.11(s,3H)。
【0056】
脱水テトラヒドロフラン(500mL)中、4-(アセトキシメチル)-3-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(37.9g、107mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(29.8g、117mmol)、酢酸カリウム(31.4g、294mmol)、および[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(1.57g、1.92mmol)の溶液をアルゴン雰囲気下で13日間、75℃で攪拌した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、濾過し、蒸発させた。粗生成物を、シリカゲルカラム(Silicagel、0.063~0.200mm、溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル8:1)を通して濾過して、4-(アセトキシメチル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチルを得た。収率:31.1g(72%)。1H NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,δH):8.65(s,1H);8.43(s,1H);5.48(s,2H);3.97(s,3H);2.05(s,3H);1.36(s,12H)。
【0057】
水(300mL)中の4-(アセトキシメチル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(31.0g、77.1mmol)および水酸化ナトリウム(15.4g、386mmol)の溶液を室温で3時間攪拌した。次いで、水(100mL)中の塩酸(35mL)の溶液を添加して、pHを1に低下させた。反応混合物を一晩攪拌した。沈殿物を濾過して取り除き、乾燥させて、1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボン酸を白色固体として得た。収率:16.6g(86%)。
1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):13.47(bs,1H);9.66(s,1H);8.62(s,1H);8.24(s,1H);5.22(s,2H)。
【0058】
MeCN(0.5L)中、ペンタフルオロフェノール(7.48g、40.7mmol)、1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボン酸(10.0mg、40.7mmol)、およびN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、8.37mg、40.7mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合物を濾過し、蒸発させ、MeCN中に溶解し、再濾過し、蒸発させて、ペンタフルオロフェニル1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキシレートを白色固体として得た。
収率:16.7g(100%)。1H NMRスペクトル(300MHz,DMSO-d6,δH):9.79(s,1H);8.86(s,1H);8.46(s,1H);5.30(s,2H)。
【0059】
2-クロロトリチルクロリド樹脂100~200メッシュ1.5mmol/g(3、4.47g、6.71mmol)を脱水ジクロロメタン(30mL)中に30分間放置し膨潤させた。脱水ジクロロメタン(30mL)中の(2S)-5-(tert-ブトキシ)-2-{[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]アミノ}-5-オキソペンタン酸(Fmoc-Glu-OtBu、1.90g、4.47mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.96mL、17.0mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を一晩振盪した。樹脂を濾過し、メタノール/ジクロロメタン混合物(4:1、2×5分、2×40mL)中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.56mL、8.95mmol)の溶液で処理した。次いで、樹脂をDMF(2×30mL)、ジクロロメタン(2×40mL)およびDMF(3×40mL)で洗浄した。DMF中の20%ピペリジン(1×5分、1×20分、2×40mL)で処理することにより、Fmoc基を除去した。樹脂をDMF(3×40mL)、2-プロパノール(2×40mL)およびジクロロメタン(3×40mL)で洗浄した。DMF(40mL)中、(S)-2,3-ビス((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)プロパン酸(Fmoc-Dap(Fmoc)-OH、3.68g、6.71mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU、2.55g、6.71mmol)、および2,4,6-トリメチルピリジン(1.60mL、12.1mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を2時間振盪した。樹脂を濾過し、DMF(2×40mL)、ジクロロメタン(2×40mL)およびDMF(2×40mL)で洗浄した。DMF中の20%ピペリジン(1×5分、1×30分、2×40mL)で処理することにより、Fmoc基を除去した。樹脂をDMF(3×40mL)、2-プロパノール(2×40mL)およびジクロロメタン(3×40mL)で洗浄した。DMF(40mL)中のペンタフルオロフェニル1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキシレート(5.53g、13.4mmol)およびトリエチルアミン(4.99mL、35.8mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を一晩振盪した。樹脂を濾過し、DMF(6×40mL)およびジクロロメタン(10×50mL)で洗浄した。生成物を2,2,2-トリフルオロエタノール(60mL)で16時間処理することによって樹脂から切断した。樹脂を濾過して取り除き、ジクロロメタン(4×50mL)で洗浄した。粗生成物(4)を真空中で乾燥させ、酢酸エチル(2×70mL)および1Mの硫酸水素カリウム水溶液(50mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。次いで、粗生成物をジエチルエーテル(20mL)中で粉砕して、(S)-4-((S)-2,3-ビス(1-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-カルボキサミド)プロパンアミド)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(構成ブロック1)をベージュ色固体として得た。収率:1.89g(57%)。1H NMRスペクトル(300MHz,AcOD-d4,δH):8.50(s,1H);8.46(s,1H);8.29(s,1H);8.26(s,1H);5.28(d,J=2.6Hz,4H);5.20(t,J=5.9Hz,1H);4.55(dd,J=8.5および5.2Hz,1H);4.08(dd,J=6.0および2.1Hz,2H);2.57-2.42(m,2H);2.34-2.16(m,1H);2.17-2.08(m,1H);1.47(s,9H)。LC-MS:746.3(M+H)+。
【0060】
インスリン誘導体の調製
構成ブロック1をTHF中のNHS/DICで活性化し、tBu保護基をTFAで処理することによって除去した。次いで、TFAを、インスリンとのコンジュゲーションの前に蒸発させた。
【0061】
GKPE-(GEQP)4-GEQGGKPEGGGSGGGGSGGGGS-B1 desB30ヒトインスリン(536mg、0.057mmol)を0.1MのNa2HPO4(5.6mL)およびDMSO(2.4mL)中に溶解し、1.0MのNaOH水溶液によってpHを10.8に調整した。構成ブロック1(147mg、0.19mmol)を上述のようにNHS活性化し、tBu脱保護し、次いで、DMF(0.5mL)中に溶解し、10分間にわたって所与のインスリン溶液に滴加し、一方で0.1MのNaOHを滴加することによってpHを10.8付近に保持した。LCMSは、所望の生成物の形成を示す。混合物をMeCNおよび水で希釈し、1MのHClを滴加することによってpHを3.8に調整した。生成物を、水中の0.1%TFAを緩衝液Aとして、およびMeCN中の0.1%TFAを緩衝液Bとして使用した、C18カラム上の逆相HPLC(RP-HPLC)によって精製した。生成物を凍結乾燥によって単離した。LCMS測定値1894.1[M+6H-5×水]6+、計算値1894.1;1623.6[M+7H-5×水]7+、計算値1623.6;1420.8[M+8H-5×水]8+、計算値1420.8;および1263.0[M+9H-5×水]9+、計算値1263.0(C480H666B6F18N122O169S6に対して)。
【0062】
実施例3:抗酸化物質メチオニンおよびアスコルビン酸ナトリウムによる安定性への効果
この例では、2つの抗酸化物質メチオニンおよびアスコルビン酸ナトリウムの安定化効果を調査した。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した製剤を表1に示す。
【0063】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。2mM実施例1のインスリン誘導体、100mMリン酸ナトリウム、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M NaCl、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、1.34Mメチオニン、1.01Mアスコルビン酸ナトリウム、注射用水。
【0064】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、時間ゼロ分析のために50μlを含有するように製剤をHPLCバイアルに充填し、貯蔵安定性分析のために0.5mlの製剤を含有するように3mlサイズの薬剤カートリッジに充填した。
【0065】
方法およびアッセイ実験
カートリッジを37℃で4週間貯蔵し、純度について分析し、これを時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0066】
実施例1のインスリン誘導体の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C18、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および90%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)を使用し、かつ洗浄緩衝液として9%アセトニトリルを使用して、約64分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は35℃であり、注入量は1μlであり、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(215nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0067】
結果
製剤1~5について、時間ゼロ、および37℃で4週間貯蔵後の純度(割合として)を表1に示す。純度損失はまた、37℃で4週間後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【0068】
抗酸化物質を有しない製剤1の場合、37℃での4週間後の純度損失は、8.7割合ポイントであった。驚くべきことに、アスコルビン酸ナトリウムは、4週間後に50割合ポイントを超える純度損失をもたらしたが、メチオニンの添加は、インスリン製剤の安定性を改善することが見出された。
【表1】
【0069】
実施例4:グリセロール、糖アルコール、および糖類による安定性への効果
この実施例では、実施例1のインスリン誘導体の製剤に対するグリセロール、糖アルコール、および糖類の安定化効果を調査した。試験した製剤を表2に示す。
【0070】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。2mM実施例1のインスリン誘導体、100mMリン酸ナトリウム、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M NaCl、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、200mMソルビトール、300mMマンニトール、200mMスクロース、200mMトレハロース、注射用水。
【0071】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、時間ゼロ分析のために50μlを含有するように製剤をHPLCバイアルに充填し、貯蔵安定性のために0.5mlの製剤を含有するように3mlサイズの薬剤カートリッジに充填した。
【0072】
方法およびアッセイ実験
カートリッジを37℃で1週間貯蔵し、純度について分析した。さらに、カートリッジを45℃でさらに6日間貯蔵して、分解をさらに促進し、純度について分析した。
【0073】
実施例1のインスリン誘導体の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C18、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および90%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)を使用し、かつ洗浄緩衝液として9%アセトニトリルを使用して、約70分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は50℃であり、注入量は2μlであり、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(215nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0074】
結果
製剤6~15について、時間ゼロ、ならびに37℃で1週間貯蔵後ならびに37℃で1週間1+45℃でさらに6日間貯蔵後の純度(割合として)を表2aおよび表2bに示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【0075】
製剤中にグリセロールも、糖アルコールも、糖も有さない製剤6についての37℃で1週間+45℃でさらに6日間後の純度損失は、12.3割合ポイントであった。
【0076】
等張化剤は、皮下注射を意図した医薬製剤で製剤の適切な浸透圧を確保するために一般的に使用される。驚くべきことに、174mMの濃度の等張化剤グリセロールを添加することによって、安定性が大幅に改善されることが見出された(製剤7)。
【0077】
さらに驚くべきことに、20mMの糖アルコールであるマンニトールのみを含有する製剤8では、安定性がさらに良好であり、37℃で1週間+45℃でさらに6日間後に、5.0割合ポイントの純度損失となった。
【0078】
驚くべきことに、174mMのグリセロールと20mMのマンニトールとの組み合わせ(製剤10)によって、安定性がさらに改善され得る。
【表2】
【0079】
174mMのグリセロールおよび20mMの糖アルコールソルビトール(製剤13)の添加は、174mMのグリセロールのみ(製剤7)と比較して安定性の増加をもたらしたが、安定化効果は、174mMのグリセロールおよび20mMのマンニトール(製剤10)を含む製剤ほど良好ではなかった。
【0080】
逆に、20mMの糖類スクロース(製剤14)またはトレハロース(製剤15)の添加は、製剤7と比較すると分かるように、安定性に影響を及ぼさなかった。
【表3】
【0081】
マンニトール含有量の変動(表2bを参照)は、マンニトールが広い濃度範囲で安定化効果を有することを示した。
【0082】
実施例5:マンニトールと組み合わせたメチオニンによる安定性への効果
この実施例では、メチオニンおよびマンニトール酸の組み合わせの安定化効果を調査した。さらに、様々なpHレベルでの安定性を決定した。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表3に示す。
【0083】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。5mM実施例1のインスリン誘導体、100mMリン酸ナトリウム、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M塩化ナトリウム、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、335mMメチオニン、400mMマンニトール、注射用水。
【0084】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、注射用水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、製剤を3mlサイズの薬剤カートリッジに充填し、0.5mlの製剤貯蔵安定性を含有した。
【0085】
方法およびアッセイ実験
カートリッジを45℃で1週間貯蔵し、純度について分析し、これを時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0086】
実施例1のインスリン誘導体の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C18、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および90%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)を使用し、かつ洗浄緩衝液として9%アセトニトリルを使用して、約70分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は50℃であり、注入量は1μlであり、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(215nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0087】
結果
製剤16~21について、時間ゼロ、および45℃で1週間貯蔵後の純度(割合として)を表3に示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【表4】
【0088】
実施例4では、グリセロールおよびマンニトールの添加がインスリン製剤の安定性の増加をもたらすことが見出され、実施例3では、メチオニンが安定性を増加させることが見出された。
【0089】
この実施例では、217mMのグリセロールおよび20mMのマンニトールを含む製剤16のpH7.2での純度損失は、45℃で1週間後、10.5割合ポイントであった。20mMのメチオニンの添加は、驚くべきことに安定性の大きな増加をもたらし、同じ条件下で3.4割合ポイントの純度損失であった(製剤19)。表3のデータは、pHの効果も示す。
【0090】
実施例6:メチオニンおよびマンニトールによる安定性への効果
この実施例では、実施例1のインスリン誘導体の製剤に対するメチオニンおよびマンニトールの様々な量の安定化効果を調査した。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表4に示す。
【0091】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。8mM実施例1のインスリン誘導体、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M NaCl、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、100mMメチオニン、500mMマンニトール、注射用水。
【0092】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、時間ゼロ分析のために50μlを含有するように製剤をHPLCバイアルに充填し、貯蔵安定性分析のために0.5mlの製剤を含有するように3mlサイズの薬剤カートリッジに充填した。
【0093】
方法およびアッセイ実験
カートリッジを37℃で4週間貯蔵し、純度について分析し、これを時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0094】
実施例1のインスリン誘導体の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C18、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および90%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)を使用し、かつ洗浄緩衝液として9%アセトニトリルを使用して、約64分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は35℃であり、注入量は1μlであり、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(215nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0095】
結果
製剤22~27について、時間ゼロ、ならびにそれぞれ37℃で2週間および4週間貯蔵後の純度(割合として)を表4に示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【表5】
【0096】
表4のデータは、21mMのメチオニンを有しマンニトールを有さない製剤22の純度損失が、37℃で4週間後、5.9割合ポイントであったことを示す。29mMのマンニトールを有しメチオニンを有さない製剤23の純度損失は、11.0割合ポイントであった。同様の量のメチオニンおよびマンニトールを組み合わせた製剤24および25は、驚くべきことに、メチオニンおよびマンニトールの組み合わせによって安定性が大幅に増加することを示す。
【0097】
実施例7:亜鉛の存在による安定性への効果
この実施例では、実施例1および実施例2のインスリン誘導体に対する亜鉛の存在による影響が示される。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表5に示す。典型的には、インスリン誘導体は、インスリンについて六量体オリゴマー状態を支持することが知られている酢酸亜鉛および塩化ナトリウムの存在下でより安定している。
【0098】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。1mMの実施例1または実施例2のインスリン誘導体、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M NaCl、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、168mMメチオニン、500mMマンニトール、注射用水。
【0099】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、製剤は、50μlを含有するようにHPLCバイアルに充填した。1つの試料は取り置かれ、時間ゼロ分析のために急速凍結され、もう1つの試料は分析前に37℃で1週間の貯蔵安定性のために使用された。
【0100】
方法およびアッセイ実験
バイアルを37℃で1週間貯蔵し、純度について分析し、これを時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0101】
実施例1および実施例2のインスリン誘導体の両方の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C18、2.1×150mm、1.7μm、300Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および80%ACN中の0.08%TFA(緩衝液B)を使用し、かつ洗浄緩衝液として9%アセトニトリルを使用して、約100分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は55℃であり、約8μgがカラムにロードされ、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(215nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0102】
結果
製剤58~61について、時間ゼロ、および37℃で1週間貯蔵後の純度(割合として)を表5に示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【表6】
【0103】
表5のデータは、実施例1のインスリン誘導体では、最も低い純度損失が、酢酸亜鉛および塩化ナトリウムの存在下で観察されるのに対し、実施例2のインスリン誘導体では、驚くべきことに、最も低い純度損失が、酢酸亜鉛および塩化ナトリウムの非存在下で観察されることを示す。
【0104】
実施例8:pHおよびAPI濃度を変化させる場合の、亜鉛の存在による安定性への効果
この実施例では、実施例2のインスリン誘導体の2つの濃度について、亜鉛の存在および変化するpHよる影響が示される。さらに、等張化剤としてグリセロールの代わりにソルビトールを使用することの影響を試験した。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表6aおよび表6bに示す。典型的には、インスリン誘導体は、インスリンについて六量体オリゴマー状態を支持することが知られている酢酸亜鉛および塩化ナトリウムの存在下でより安定している。
【0105】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。5.7mM実施例2のインスリン誘導体、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M NaCl、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、168mMメチオニン、500mMマンニトール、1Mソルビトール、注射用水。
【0106】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、製剤をHPLCガラスバイアルに充填した。50μlサイズの1つの試料を、時間ゼロ分析のために急速凍結し、もう1つの100μlサイズの試料は、分析前に、37℃で4週間、貯蔵安定性のために使用した。
【0107】
方法およびアッセイ実験
バイアルを37℃で1週間貯蔵し、純度について分析し、これを時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0108】
実施例1および実施例2のインスリン誘導体の両方の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C8、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および80%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)、アイソクラチックを使用して、約50分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は47℃であり、0.3μl(実施例2のインスリン誘導体を0.6mMに希釈した試料)がカラムにロードされ、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(214nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0109】
結果
製剤62~69について、時間ゼロ、および37℃で4週間貯蔵後の純度(割合として)を表6aに示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【表7】
【0110】
表6aのデータは、実施例2のインスリン誘導体では、驚くべきことに、最も低い純度損失が、酢酸亜鉛および塩化ナトリウムの非存在下、pH6.6付近で観察されることを示す。
【表8】
【0111】
表6bのデータから、グリセロールをソルビトールで置き換えることが、類似の安定性を有する製剤をもたらすことが分かる。
【0112】
実施例9:様々な賦形剤による安定性への効果
この実施例では、様々な量の実施例2のインスリン誘導体、様々な量のグリセロールおよびマンニトール、様々な量の抗酸化物質メチオニン、ならびに様々なpHを有する製剤を調製し、安定性を試験した。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表7a、表7b、表7cおよび表7dに示す。
【0113】
調製プロセス
各製剤を、以下の貯蔵溶液から調製した。5.7mM実施例1のインスリン誘導体、500mMフェノール、160mMメタクレゾール、1M塩化ナトリウム、2.17Mグリセロール、10mM酢酸亜鉛、167.5mMメチオニン、500mMマンニトール、1000mMソルビトール、注射用水。
【0114】
製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、注射用水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、貯蔵安定性のために0.3mlの製剤を含有するように製剤を平底ガラスUPLCバイアルに充填した。
【0115】
方法およびアッセイ実験
バイアルを37℃で4週間貯蔵し、純度について分析し、これを時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0116】
インスリン誘導体の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C8、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、milliQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および90%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)を使用し、かつ洗浄緩衝液として9%アセトニトリルを使用して、約50分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は47℃であり、注入量は、0.6mMのインスリン誘導体を含有する試料では0.3μlであり、同時に流量は0.3ml/分に設定された。1.2mMのインスリン誘導体を含有する試料を、ロード直前に水を使用して0.6mMに希釈した。クロマトグラフィーはUV検出(214nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0117】
結果
製剤28~38について、時間ゼロ、および37℃で4週間貯蔵後の純度(割合として)を表7a、表7b、表7c、および表7dに示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【0118】
製剤28~30(表7a)を比較することによって、pHがそれぞれ6.2および6.6であるときと比較して、pHが5.8に低下した場合に安定性が低下することが分かる。
【0119】
製剤32、34、35、および36(表7b)から、様々な濃度のメチオニン、マンニトール、およびグリセロールで安定した製剤を達成することができることが分かる。最も安定な製剤は、少なくとも30mMのメチオニン濃度および少なくとも40mMのマンニトール濃度によって達成されると考えられる。
【0120】
製剤32および33(表7c)から、防腐剤フェノールおよびメタクレゾールを単独で、および組み合わせて使用して、安定な製剤を達成することができることが分かる。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0121】
製剤30、31、32、37、および38(表7d)では、インスリン誘導体の濃度は、0.6mM~4.8Mm変動し、安定な製剤がこの濃度範囲全体にわたって達成され得ることが分かる。
【0122】
実施例10:様々な賦形剤による安定性への効果
この実施例では、実施例2のインスリン誘導体を含有する製剤を、様々な量の防腐剤、メチオニン、マンニトール、およびグリセロールを含有するように調製し、安定性を試験した。化学的安定性は、高分子量生成物(HMWP)の形成の観点から測定することができ、HMWPの含有量は、時間ゼロ、および特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表8a、表8b、および表8cに示す。
【0123】
調製プロセス
各製剤を、表8a、表8b、および表8cに示されるように、実施例2のインスリン誘導体の貯蔵溶液および賦形剤から調製した。製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHまたは酢酸のいずれかを使用してpHを調整し、注射用水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、貯蔵安定性のために製剤をHPLCバイアルに充填した。
【0124】
方法およびアッセイ実験
バイアルを37℃で6週間保存し、高分子量タンパク質(HMWP)の存在について分析し、これを時点ゼロ試料の分析の結果と比較した。
【0125】
インスリン誘導体のHMWP(割合として)を、Waters Acquity BEH SEC Insulinカラム、4.6×150mm、1.7μm、125Åを装備したSE-UPLCを使用し、300mM塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、5mMリン酸、15%イソプロパノール、および35%ACNを使用して約10分間の実行時間にわたるアイソクラチック溶出を行い決定した。カラム温度は50℃であり、注入量は、実施例2からの0.24mMのインスリン誘導体を含有するように希釈された試料(10倍)では0.6μlであり、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーをUV検出(214nm)により分析し、HMWPの割合を総ピーク面積(100%)に対するHMWPピークの面積として評価した。
【0126】
結果
製剤39~57の試験された組成物を、表8a、表8b、および表8cに、時間ゼロおよび37℃で6週間貯蔵後のHMWP(割合として)の結果とともに示す。
【表13】
【0127】
表8aから、メチオニンまたはマンニトールのいずれかを含有する製剤では、含有しない製剤39と比較して、6週間貯蔵中のHMWPの形成がより低いことが見出されたことが分かる。メチオニンおよびマンニトールの両方を含む製剤は、HMWP形成がさらに低下した。
【0128】
製剤42、49、50、51、および52(表8b)では、メチオニンの濃度は、15mM~45mMで変動し、マンニトールの濃度は、20mM~80Mmで変動し、安定な製剤は、濃度範囲全体にわたって達成され得ることが分かる。
【表14】
【0129】
製剤42、43、44、45、46、47、および48(表8c)から、防腐剤フェノールおよびメタクレゾールを単独で、および様々な濃度で組み合わせて使用して、安定な製剤を達成することができることが分かる。
【表15】
【0130】
実施例11:実施例2のインスリン誘導体からの製剤の安定性データ
本実施例は、実施例2のインスリン誘導体の製剤についての長期安定性データを説明する。化学的安定性は、純度の観点から測定することができ、インタクトなインスリン誘導体の含有量を、時間ゼロおよび特定の温度で特定の時間貯蔵された時点で決定される。試験した組成物を表9に示す。
【0131】
調製プロセス
製剤を、粗の製薬局方グレードの賦形剤、フェノール、メタクレゾール、マンニトール、メチオニン、グリセロール、および注射用水から調製した。賦形剤製剤を、実施例2のインスリン誘導体が溶解された最終体積の80%で調製した。製剤は、必要に応じてHClおよびNaOHを使用してpHを調整し、注射用水を最終的な所望の体積に達するまで添加した後、0.22μmの滅菌フィルターで濾過して滅菌した。濾過後、時間ゼロ分析のために50μlを含有するように製剤をガラスペンフィルに充填し、貯蔵安定性分析のために1mlの製剤を含有するように3mlサイズの薬剤カートリッジに充填した。
【0132】
方法およびアッセイ実験
ペンフィルを時間ゼロで分析し、一方残りのペンフィルを5℃および25℃で最大6ヶ月間、ならびに30℃および37℃で最大3ヶ月間保存し、その後、純度を分析した。結果を、時点ゼロの試料の分析の結果と比較した。
【0133】
実施例2のインスリン誘導体の純度(割合として)を、WatersカラムBEH C8、2.1×150mm、1.7μm、130Åを装備したUPLCを使用し、ミリQ水中の0.1%TFA(緩衝液A)および90%ACN中の0.09%TFA(緩衝液B)を使用して、約40分間の実行時間にわたって勾配溶出させて、決定した。カラム温度は41℃であり、約8μgがカラムにロードされ、同時に流量は0.3ml/分に設定された。クロマトグラフィーはUV検出(214nm)により分析され、主ピークの面積を全てのピークの面積で割った値×100%として純度を評価した。
【0134】
結果
製剤72について、時間ゼロ、ならびに5℃および25℃で最大6ヶ月間貯蔵後、ならびに30℃および37℃で最大3ヶ月間貯蔵後の純度(割合として)を表9に示す。純度損失はまた、貯蔵後の純度と時間ゼロの純度との間の差(割合ポイント)としても提供される。
【0135】
表9のデータは、それぞれ5℃、25℃、30℃、および37℃での3ヶ月後および6ヶ月後の本発明の製剤の安定性を示す。
【表16】
【0136】
本明細書では本発明の特定の特徴を例示および説明してきたが、多くの修正、置換、変更、および均等物が当業者に思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるそのような全ての修正および変更を網羅することを意図していることが理解されるべきである。