(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154707
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】健康管理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20251002BHJP
G16H 20/60 20180101ALI20251002BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20251002BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20251002BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20251002BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20251002BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H20/60
G16H20/10
G16Y10/60
G16Y20/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057855
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】523322999
【氏名又は名称】株式会社ESUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】大迫 麗香
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】 健康管理方法の改良
【解決手段】
工程1で、非採血型血糖値測定機器(1)が血糖曲線データ(50)を生成し被験者端末機器(2)に送信し、
工程2で、被験者端末機器(2)が、工血糖曲線データ(50)を含む被験者情報(6)を管理者コンピュータ(3)に送信し、
工程3で、管理者コンピュータ(3)が、助言情報(5)を生成し、被験者端末機器(2)に送信し、助言情報(5)が血糖値スパイクの有無を判定した結果を含む、
健康管理方法(100)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非採血型血糖値測定機器(1)、被験者端末機器(2)、管理者コンピュータ(3)を用い、以下の工程1,2,3をこの順で実行する、健康管理方法(100)。
工程1:非採血型血糖値測定機器(1)が、被験者(20)の食事後2時間を含む所定時間における被験者(20)の血糖値を計測・記録して上記所定時間における血糖曲線データ(50)を生成し、生成した血糖曲線データ(50)を被験者端末機器(2)に送信する。
工程2:被験者端末機器(2)が、工程1で受信した血糖曲線データ(50)と、身長,体重,遺伝子検査の結果から選ばれる1以上を含む被験者(20)の身体情報(60)と、被験者(20)が摂取した食事情報(70)とを含む被験者情報(6)を、管理者コンピュータ(3)に送信する。
工程3:管理者コンピュータ(3)が、工程2で受信した被験者情報(6)に基づいて被験者(20)に対する助言情報(5)を生成し、助言情報(5)の一部以上を被験者端末機器(2)に送信する。ただし、助言情報(5)が、血糖値スパイクの有無を判定した結果を含む。
【請求項2】
n段階(nは2以上の整数)からなり、各段階で工程1,2,3をこの順で反復実行し、
上記n段階の各段階で、n段階から選ばれた2つの段階で摂取する食品及び/又は食事に関する栄養条件が異なるように食事情報(70)を設定する、
請求項1に記載の健康管理方法(100)。
【請求項3】
非採血型血糖値測定機器(1)が、パッチ式血糖値測定機器あるいは非侵襲式血糖値測定機器である、請求項1に記載の健康管理方法(100)。
【請求項4】
被験者端末機器(2)及び/又は管理者コンピュータ(3)が、スマートフォン,PC,タブレット端末から選ばれる、請求項1に記載の健康管理方法(100)。
【請求項5】
工程3で、あらかじめ設定された血糖閾値条件と被験者情報(6)に含まれる血糖曲線データ(50)とを比較し、上記比較結果に基づいて血糖値スパイクの有無を判定する、請求項1に記載の健康管理方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は健康管理方法に関する。本発明は具体的にはユーザーの通信端末を用いて血糖値観察と食事指導を行う健康管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康に関わる身体データとして血糖値は代表的なものの一つである。一般的な健康診断では、血糖値として空腹時血糖値を測定する。空腹時血糖値が100mg/dLを超える場合には何らかの対策が必要とされる。空腹時血糖値が110mg/dLから125mg/dLの範囲にあれば糖尿病予備軍(境界型)と診断される。空腹時血糖値が126mg/dL以上の場合は糖尿病と診断される。
【0003】
しかしながら、近年、身体機能として食後血糖上昇の抑制機能が注目されている。非特許文献1,2に記載されているように、食事を摂取すると、食欲は、食事開始後30分程度で空腹感から飽満感・満腹感へと劇的に変化し、摂食行動は呈する。食事後は血糖値が上昇し、血中に移行したグルコースは各臓器に取り込まれて代謝される。生体には血糖値を約100mg/dL程度に維持する機能が存在しする。血糖値は食事後約30分で120mg/dLから150mg/dLのピークを迎え、約2時間後には元のレベルに戻る。健常者であれば食後血糖値は概ね150mg/dL以下であって180mg/dLを超えることはない。
【0004】
食事後の血糖上昇は摂取する食事に含まれる糖質によるものである。摂取する糖質の血糖上昇機能の違いを評価する指標として、グリセミック・インデックス(GI)が用いられている。また食事全体の血糖上昇機能の違いを評価する指標として、グリセミック・ロード(GL)(GIと食事の糖質含量の積)が利用されている。非特許文献2には、食後血糖値の変化とGIとの関係が糖質曲線を用いて示されている。
【0005】
ところが、非特許文献3に記載されているように、糖尿病予備軍、運動不足の人、筋肉量が低下した人などでは、食後の血糖値が一時的に150mg/dLを超える高い値に急上昇してから低下するという血糖値スパイク現象が見られる。血糖値スパイクは血管の老化を早め、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めることが知られている。非特許文献3には、市販の尿検査紙による血糖値スパイクのチェック方法や、血糖値スパイクを回避する様々な食生活の改善方法が提案されている。非特許文献3で提案された種々の食生活は共通して低GI食品あるいは低GL食事を優先している。
【0006】
さらに、食後の食後最高血糖値が上昇する現象自体を問題視した見解も発表されている。非特許文献4には、食後に短時間で血糖値が上下するミニ・スパイクが生活習慣病の根源と考えられること、玄米菜食のような精製炭水化物を避ける食事を推奨することが記載されている。ここで注目されるミニ・スパイクは、食後の血糖最高値が150mg/dLに至らないまでも食後に血糖曲線に顕著な山型が出現するような血糖変化の全てを指している。本明細書では、以下、このようなミニ・スパイクも含めて食後の血糖曲線に顕著な山形が出現することを広義の血糖値スパイクと呼ぶ。
【0007】
非特許文献1,2,3の記載から、単に糖尿病の発症を予防するだけでなく老化防止にも血糖値スパイクを避ける食生活が望ましいことは徐々に認知されてきたと言える。しかし、一般の健康診断では空腹時血糖値を測定するため血糖値スパイクは見逃される(非特許文献3)。非特許文献3に記載されたチェック方法では、血糖値が180mg/dL以上になった時間帯の有無を判定することはできるが、食後の血糖ピーク値は測定されず、食後の血糖値の実際の変化(血糖曲線)に相当するデータは取得できない。
【0008】
一方、対象者の血糖値などの身体データをインターネット経由で取得して分析し、適切なアドバイを提供する健康管理システムが提案されている。例えば特許文献1に記載された健康管理システムでは、医療サイトのコンピュータがインターネット経由で被試験自身が測定した血糖値を取得して分析し、上記血糖値が所定日数閾値を超えた場合には被試験者に注意喚起や助言に関するメッセージを自動的に送信する。また例えば特許文献2には、ユーザーの健康状態を直感的に把握できるように表示する健康管理システムが記載されており、ユーザーの血圧、血糖値、体重、身体活動量などを測定データとして送受信することが記載されている。この健康管理システムによって測定や健康増進に対するユーザーのモチベーションを高めることができる。
【0009】
しかしながら、血糖値として、特許文献1には起床直後、食前、食後2時間後の血糖値だけが例示されており、特許文献2には空腹時血糖値と食後2時間経過時血糖値だけが例示されている。特許文献1,2に記載された健康管理システムのいずれでも、食後の短時間における血糖値変化について考慮しておらず、血糖値スパイクを検出することができない。このため、これらの健康管理サービスでは、対象者に血糖値スパイクを考慮した助言や指導を提供することができない。また、これらの健康管理サービスでは、血糖値スパイクを回避するために低GI・低GLの食生活を心がける対象者は、節制の効果を食後血糖値の変化で確認することができない。このため対象者がサービスに対する満足度を得られず食生活の改善を続ける意欲を維持し難い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「実験医学 増刊 栄養・代謝物シグナルと食品機能」羊土社,2022年5月1日発行,ISBN978-4-7581-0402-9,119頁から120頁
【非特許文献2】「管理栄養士講座 人体栄養学の基礎[第2版]」2012年5月15日発行,ISBN978-4-7679-0458-0 C3047,114頁から115頁
【非特許文献3】「安心」2017年4月号,2017年3月2日発売,株式会社マキノ出版,67頁から74頁
【非特許文献4】「主食を抜けば糖尿病は良くなる!2 実践編 新版」江部康二 著,東洋経済新報社,2014年3月27日発行,ISBN978-4-492-04526-8, 第2章
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-198790号公報
【特許文献2】特開2016- 27460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
誰もが食後の短時間における血糖値を簡単に継続して観察・測定する手段は未だ提供されていない。当然に、血糖値スパイクを回避するために、保健所や病院に出向くことなくスピーディに食事や生活習慣の指導を受けられるサービスも現時点では存在しない。既存の健康管理サービスでは、血糖値スパイクを回避しようと努力する人が計測や節制に対する意欲を維持することが難しい。現時点では、疾病予防、老化防止、美容のために血糖値スパイク防止が望まれるという知見が、実生活に十分に活用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、血糖値スパイクを考慮した利便性の高い健康管理サービスを求めた。その結果、本発明者は、インターネット、血糖値センサー、ユーザー端末、指導者端末を利用して、対象者の食後血糖値の変化を観察してスピーディに分析、助言、指導を行う、新たな健康管理方法を構築した。すなわち本発明は以下のものである。
【0014】
(発明1)
非採血型血糖値測定機器(1)、被験者端末機器(2)、管理者コンピュータ(3)を用い、以下の工程1,2,3をこの順で実行する、健康管理方法(100)。
工程1:非採血型血糖値測定機器(1)が、被験者(20)の食事後2時間を含む所定時間における被験者(20)の血糖値を計測・記録して上記所定時間における血糖曲線データ(50)を生成し、生成した血糖曲線データ(50)を被験者端末機器(2)に送信する。
工程2:被験者端末機器(2)が、工程1で受信した血糖曲線データ(50)と、身長,体重,遺伝子検査の結果から選ばれる1以上を含む被験者(20)の身体情報(60)と、被験者(20)が摂取した食事情報(70)とを含む被験者情報(6)を、管理者コンピュータ(3)に送信する。
工程3:管理者コンピュータ(3)が、工程2で受信した被験者情報(6)に基づいて被験者(20)に対する助言情報(5)を生成し、助言情報(5)の一部以上を被験者端末機器(2)に送信する。ただし、助言情報(5)が、血糖値スパイクの有無を判定した結果を含む。
(発明2)
n段階(nは2以上の整数)からなり、各段階で工程1,2,3をこの順で反復実行し、
上記n段階の各段階で、n段階から選ばれた2つの段階で摂取する食品及び/又は食事に関する栄養条件が異なるように食事情報(70)を設定する、
発明1の健康管理方法(100)。
(発明3)
非採血型血糖値測定機器(1)が、パッチ式血糖値測定機器あるいは非侵襲式血糖値測定機器である、発明1の健康管理方法(100)。
(発明4)
被験者端末機器(2)及び/又は管理者コンピュータ(3)が、スマートフォン,PC,タブレット端末から選ばれる、発明1の健康管理方法(100)。
(発明5)
工程3で、あらかじめ設定された血糖閾値条件と被験者情報(6)に含まれる血糖曲線データ(50)とを比較し、上記比較結果に基づいて血糖値スパイクの有無を判定する、発明1の健康管理方法(100)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の健康管理方法を用いることによって多くの人が少ない労力で血糖値スパイクを回避するために適切な助言や指導を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】健康管理方法(100)の例で表示した血糖曲線の1例。
【
図2】健康管理方法(100)の例で表示した血糖曲線の他の例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[健康管理方法(100)]
本発明の健康管理方法(100)は、非採血型血糖値測定機器(1)、被験者端末機器(2)、管理者コンピュータ(3)を用いる健康管理方法である。健康管理方法(100)は、後述の工程1,2,3をこの順で反復実行する。
【0018】
[非採血型血糖値測定機器(1)]
非採血型血糖値測定機器(1)は、痛みを伴う穿刺採血を行わない血糖値測定手段として注目され普及しつつある。非採血型血糖値測定機器(1)は、例えば、パッチ式血糖値測定機器、非侵襲式血糖値測定機器である。
【0019】
パッチ式血糖値測定では、被験者の上腕や腹部の皮膚の下に極細のセンサー針が取り付けられたパッチを貼り付けて皮膚下にセンサー針を挿入し、センサー針に付着した体液から血糖値を測定する。このような測定で被験者は痛みを感じずに入浴中や睡眠中も測定を続けることができる。一般的なパッチ式血糖値測定機器は、パッチ部分(センサー)と、読取機器からなる。上記読取機器は、専用の通信機能を有する機器(リーダー)であって良い。あるいは読取機器は被験者端末機器(2)を兼ねる読取機器であってもよく、この場合、例えば測定機器専用のアプリケーションを実行するスマートフォン(2)を用いることができる。被験者はパッチを皮膚に密着させ、適当な時期にリーダーでパッチをスキャンして血糖値を取得・記録する。リーダーが取得した計測値をクラウド方式で管理でき、使用者のスマートフォンなどにデータをダウンロードできる製品も供給されている。
【0020】
非侵襲式血糖値測定方法では、グルコース分子が特定波長の光を吸収する性質を利用する方法である。この方法では、機器から血管に特定波長の光を照射した時の反射光から、グルコースによる吸光度合いを検出することにより、1デシリットル(dL)あたりのグルコース量を測定する。この方法を利用して、腕時計型(ウェアラブル)血糖測定器やタッチ式血糖測定器が開発されている。時計型(ウェアラブル)血糖測定器として、いわゆるスマートウォッチに血糖値測定機能を付加した製品が普及している。
【0021】
非採血型血糖値測定機器(1)は通信機能を有する。非採血型血糖値測定機器非採血型血糖値測定機器(1)は例えばBluetooth(登録商標)あるいはインターネットを介した通信機能によって、計測・記録した血糖値をスマートフォン,PC,タブレット端末などに送信することができる。
【0022】
[被験者端末機器(2)]
被験者端末機器(2)は、健康管理方法(100)を利用する被験者が直接に利用する端末機器である。被験者端末機器(2)は、非採血型血糖値測定機器(1)及び管理者コンピュータ(3)と通信可能な例えばスマートフォン,PC,タブレット端末などの端末機器である。被験者端末機器(2)は、一般的には、Bluetooth(登録商標)などの短距離通信方式で非採血型血糖値測定機器(1)と通信し、インターネットを介して管理者コンピュータ(3)と通信する。
【0023】
複数の被験者端末機器(2)を用いても良い。この場合、好ましくは、健康管理方法(100)を支援するアプリケーションを全ての被験者端末機器(2)で実行して、いずれの被験者端末機器(2)でも後述の被験者情報(6)を表示可能とする。
【0024】
[管理者コンピュータ(3)]
管理者コンピュータ(3)は、被験者に助言する業者側が直接に利用する端末機器である。被験者に助言する業者は、例えば、健康管理方法(100)を支援するアプリケーションの提供者あるいは管理者、健康管理方法(100)に関与する栄養士や医師などの専門家、これら専門家の意見を使って被験者に助言を提供する業者などである。
【0025】
管理者コンピュータ(3)は、被験者端末機器(2)と通信可能な例えばスマートフォン,PC,タブレット端末などの端末機器である。管理者コンピュータ(3)は、一般的には、インターネットを介して被験者端末機器(2)と通信する。インターネット上に置かれたクラウドサーバーに健康管理方法(100)を支援するアプリケーション及びデータベースを格納し、アプリケーションが被験者端末機器(2)と管理者コンピュータ(3)の送受信を自動的に行っても良い。
【0026】
[工程1]
健康管理方法(100)の工程1で、非採血型血糖値測定機器(1)が、被験者(20)の食事後2時間を含む所定時間における被験者(20)の血糖値を計測・記録して上記所定時間における血糖曲線データ(50)を生成し、生成した血糖曲線データ(50)を被験者端末機器(2)に送信する。
【0027】
被験者(20)が非採血型血糖値測定機器(1)としてパッチ式血糖値測定機器(1)を用いる場合には、所定の時間間隔にて血糖値の計測データを記録する。計測データの格納先は、上述の読取機器のメモリであってもよく、あるいは、インターネット上に置かれたデータベースであってもよい。
【0028】
被験者(20)が非採血型血糖値測定機器(1)としてパッチ式血糖値測定機器(1)を用いる場合には、所定の時間間隔にてリーダーでパッチをスキャンして血糖値の計測データをリーダーに記録する。例えば、スキャンしたデータに基づいてリーダーが血糖曲線データ(50)を生成し、リーダーの表示画面に血糖曲線を表示する。ここで被験者(20)は予定した時間帯における血糖曲線が得られたことを確認した後に、リーダーから血糖曲線データ(50)を被験者端末機器(2)に送信する。
【0029】
また例えば、被験者(20)がスマートウォッチ型血糖値測定機器(1)で定期的な、例えば30分おきの、血糖値測定と測定値送信を設定することもできる。この場合、スマートウォッチ型血糖値測定機器(1)から定期的に血糖曲線データ(50)が被験者(20)のスマートフォン(2)に送信され、スマートフォン(2)が蓄積された血糖曲線データ(50)から血糖曲線を表示することができる。被験者(20)はマートフォン(2)で血糖曲線データ(50)に基づく血糖曲線を確認することができる。
【0030】
血糖値測定機器(1)が取得したデータがクラウド方式でインターネット上サーバのデータベースにアップロードされた場合には、血糖曲線データ(50)が被験者端末機器(2)はクラウド経由で送信される。この場合は被試験者(2)が所定のタイミングで被験者端末機器(2)に血糖曲線データ(50)をダウンロードすることができる。
【0031】
一般的には、血糖曲線データ(50)は、過去24時間に定期的に測定した血糖値群、あるいは、上記血糖値群から生成した血糖曲線を表示するためのデータ、あるいは上記血糖値群から生成した血糖曲線の画像データなどである。一般的には、上記24時間で被試験者(20)は朝,昼,晩の3回食事し、上記24時間には各食事の直前から各食事後2時間までの時間帯が含まれる。
【0032】
非採血型血糖値測定機器(1)では、血糖曲線データ(50)の送信履歴を作成することができる。この場合、被験者(20)は非採血型血糖値測定機器(1)の履歴を参照して送信状況を確認することができる。
【0033】
[工程2]
健康管理方法(100)では工程1の後に工程2を行う。工程2では、被験者端末機器(2)が、工程1で受信した血糖曲線データ(50)と、身長,体重,遺伝子検査の結果から選ばれる1以上を含む被験者(20)の身体情報(60)と、被験者(20)が摂取した食事情報(70)とを含む被験者情報(6)を、管理者コンピュータ(3)に送信する。
【0034】
工程2で、管理者コンピュータ(3)は、過去24時間に定期的に測定した血糖値群、あるいは、上記血糖値群から生成した血糖曲線を表示するためのデータ、あるいは上記血糖値群から生成した血糖曲線の画像データなどの形式で、血糖曲線データ(50)を取得する。
【0035】
身体情報(60)に含まれていてよい遺伝子検査の結果は、例えば、肥満、体型、体格に寄与する遺伝子情報から判定された、各種疾病リスクの程度、体型の傾向、体格の傾向などである。
【0036】
身体情報(60)は、被試験者の性別、年齢、身体活動レベル(低い、普通、高い)、ストレス感の程度(ストレスを大いに感じている、あまり感じない、ほとんど感じない、などの区別)を含無ことができる。さらに、血中成分計測結果などを含む一般的な健康診断の結果や、体組成計で計測した体脂肪率,体水分量、睡眠時間などを含むことができる。身体情報(60)は被試験者(20)があらかじめ登録した個人情報を含むか、身体情報(60)に上記個人情報を追加することができる。上記個人情報は、被試験者(20)の氏名、識別番号(アカウント名)、住所、職業種あるいは身体活動レベル、サービスに対する支払情報などである。工程2では、被試験者(20)が個人情報を変更することもできる。例えば、被試験者(20)は、住所変更に応じて新しい住所情報を含む被験者情報(6)を被験者端末機器(2)から送信することができる。また例えば、被試験者(20)は、転職に応じてこれまでと異なる身体活動レベルを被験者端末機器(2)から送信することができる。
【0037】
なお、被試験者(20)は、あらかじめ登録した個人情報を変更するために、工程1,2と後述の工程3とは別に、任意のタイミングで、被験者端末機器(2)から更新すべき情報を管理者コンピュータ(3)に送信することができる。食事情報(70)は、各食事の内容と時間に関する情報を含む。食事情報(70)は被試験者に応じて選ばれ、被試験者の摂取する食品及び/又は食事に関する栄養条件を反映あるいは規制する事項であれば、制限されない。食事情報(70)は一般的には各食事の開始時間、各食事で摂取する食材の名称と重量、各食事に含まれる三大栄養素:タンパク質、脂肪、糖質の各重量、各食事で摂取するエネルギー量(カロリー)などである。さらに食事情報(70)が、各食事に含まれるビタミンやミネラルの重量、各食事に含まれる食物繊維含有量などを含むことができる。
【0038】
例えば、被験者情報(6)からの入力に従い、血糖値測定機器(1)が取得したデータを管理者コンピュータ(3)がダウンロードする形式で、工程2を実行することができる。この場合、管理者(アドバイザー)は、時々刻々蓄積される様々な被験者情報(6)から、該当の被試験者(20)に紐づけられた被験者情報(6)を抽出して管理者コンピュータ(3)の表示機器に表示させることができる。上記抽出には、各被験者情報(6)に割り当てられた識別コード(番号、アカウント名など)を用いることができる。
【0039】
また例えば、被試験者(20)のスマートフォン(2)から、管理者(アドバイザー)のスマートフォン(3)に直接に被験者情報(6)を送信することもできる。
【0040】
また、非採血型血糖値測定機器(1)からの測定値の読取、記録、更新、表示を管理するアプリケーションを実行して、スマートフォン(2)とスマートフォン(3)との間で送受信を行うことができる。この場合、被験者(20)に関する各種情報を管理・編集するデータセンタをクラウド上に置くことができる。この場合、スマートフォン(2)とスマートフォン(3)のそれぞれで、適当な形式で被験者情報(6)を抽出、ダウンロード、アップロード、表示、送信することができる。
【0041】
[工程3]
健康管理方法(100)では工程2の後に工程3を行う。工程3では、管理者コンピュータ(3)が、工程2で受信した被験者情報(6)に基づいて被験者(20)に対する助言情報(5)を生成し、助言情報(5)の一部以上を被験者端末機器(2)に送信する。ただし、助言情報(5)が、血糖値スパイクの有無を判定した結果を含む。
【0042】
血糖値スパイクの有無の判定においては、健康管理方法(100)を支援するアプリケーションがあらかじめ設定された血糖閾値条件と被験者情報(6)に含まれる血糖曲線データ(50)とを比較して判定することができる。あるいは、健康管理方法(100)に参加する専門家があらかじめ設定された血糖閾値と被験者情報(6)に含まれる血糖曲線データ(50)とを比較して判定することができる。この場合、専門家が管理者コンピュータ(3)に定結果を直接入力してもよく、また専門家が管理者コンピュータ(3)とは別の端末機器から判定結果を管理者コンピュータ(3)に送信してもよい。
【0043】
上記血糖閾値条件としては、特定の血糖値を設定することができる。健康管理方法(100)が糖尿病リスクに注目する場合には、工程3で上記血糖閾値を150mg/dLに設定することができる。例えば工程3で血糖曲線データ(50)に閾値:150mg/dLを超える測定値が抽出された場合には血糖スパイク有と判定して、糖尿病リスクを低減するための助言情報(5)を生成する。工程3で血糖曲線データ(50)に閾値:150mg/dLを超える測定値が抽出されなかった場合には血糖値スパイク無と判定して、現在の食生活が糖尿病リスク低減に貢献していることを被試験者(20)に告げるための助言情報(5)を生成する。
【0044】
また上記血糖閾値条件として、計測期間における食前血糖値と食後最高血糖値との差を設定することもできる。健康管理方法(100)が血管老化や生活習慣病に注目する場合には、工程3で、広義の血糖値スパイクとして提唱されているミニ・スパイクの有無を判定することができる。この場合、上記血糖閾値条件として食前血糖値と食後最高血糖値の差:30mg/dLをあらかじめ設定することができる。
【0045】
この場合、工程3で血糖曲線データ(50)から計測期間における食前血糖値(例:食事情報(70)に含まれる食事時刻の直前の時刻で計測した血糖値)と計測期間における食後最高血糖値(例:食事情報(70)に含まれる食事時刻から45分後に最も近い時刻で計測した血糖値)を抽出し、両者の差と閾値:30mg/dLとを比較する。なお、健常者の一般的な生活では、食後30分から1時間の後に食後血糖値ピークが出現すると言われている。被試験者(2)に対して食事時間が長い場合、被試験者(20)に食事時間の延長や食べる順序などが指導されているため食事開始時刻からさらに長く経過した時点で食後最高血糖値が出現する可能性がある場合には、場合に応じて計測間隔を調整して、工程1において非採血型血糖値測定機器(1)で確実に食後血糖ピーク値を検出できるようにする。食後最高血糖値はある食事と次の食事との間で計測された血糖値のうちで最も高い数値を指す。
【0046】
計測値を(20)に両者の差が30mg/dLを超える場合には、工程3で血糖値スパイク(狭義の)有と判定して、血糖値の変動を緩和するための助言情報(5)を生成する。両者の差が30mg/dL以内にあった場合には、工程3で血糖値スパイク(狭義の)無と判定して、現在の食生活が血管老化リスク低減に貢献していることを被試験者(20)に告げることができる助言情報(5)を生成する。
【0047】
工程3では、血糖値スパイクの有無,被試験者(20)の身体情報(60),被試験者(20)の食事情報(70)を全般的に参照して、被試験者(20)により適切な食生活を提案するメッセージ情報を含むことができる。例えば、健康管理方法(100)を支援するアプリケーションが、身体情報(60)と食事情報(70)を構成する各情報の血糖値スパイク発生に対する寄与度を数値化して積算し、所定のアルゴリズムに従って、より適切な食品及び/または食事のパターンを抽出することができる。また例えば、工程3で血糖値スパイク有と判定した場合に、健康管理方法(100)を支援するアプリケーションが身体情報(60)と食事情報(70)を栄養士や医師などの専門家の端末機器あるいは上記専門家が管理運営あるいは許可するインターネットサイトに送信し、専門家側に被試験者(20)向けの助言メッセージを作成させる。
【0048】
一般的には、工程3で血糖値スパイク有と判定された場合には、助言情報(5)は被試験者(20)にグリセミック・インデックス(GI)及び/又はグリセミック・ロード(GL)が低くなるような食品や食事を推奨するメッセージ情報を含む。一般的には、工程3で血糖値スパイク無と判定された場合には、助言情報(5)は今回接種した食事が被試験者(20)に適していることを知らせるメッセージ情報を含む。
【0049】
助言情報(5)は、例えば以下のようなメッセージを被験者端末機器(2)に表示させるためのデータを含む。
【0050】
「血糖値スパイクが検出されました。昼食前にお酢とアーモンドを摂取してみましょう。」
「血糖値スパイク傾向が緩和されてきました。明日もこの調子で続けましょ
う。」
【0051】
工程2に続き素早く工程3を実行することにより、被試験者は毎日、あるいは毎食後に、被験者端末機器(2)で助言情報(5)を照会することができる。照会の度に、被試験者(20)は現在の食生活で血糖値スパイクが発生するか否か、現在の食生活が血糖値スパイクの回避に貢献しているかどうかを正確に知ることができる。
【0052】
このようなリアルタイムに近い血糖値スパイクチェックは、従来の健康管理システムでは提供されていなかった。被試験者(20)は、血糖値測定を継続するだけで血糖値スパイクをチェックして専門家の助言のもとに食品や食事の改善を行うことができる。工程3で、被試験者(20)が助言情報(5)に対する質問をフィードバックできる仕組みとしてもよい。
【0053】
工程3における血糖値スパイクの有無の判定と助言情報(5)の生成には、プログラムによる判定や、AIを使った自動テキスト・音声・画像生成機能を用いることができる。この場合、被験者情報(6)が機械的・自動的に分析され、被験者情報(6)と判定結果に基づいて被試験者(20)にカスタマイズされた助言情報(5)が生成する。
【0054】
3における血糖値スパイクの有無の判定と助言情報(5)の生成において、健康管理方法(100)に関与するアドバイザー(人間)が判定結果や助言内容をテキスト、音声、画像などの形で管理者コンピュータ(3)に入力することもできる。この場合、管理者コンピュータ(3)が入力されたデータに基づいて助言情報(5)をテキスト、音声、画像などの形で生成する。
【0055】
工程3で、管理者コンピュータ(3)は取得した被験者情報(6)に基づいて、あらかじめ登録された被試験者(20)の個人情報を更新することができる。工程1,2,3とは別に、任意のタイミングで、被験者端末機器(2)から新たな個人情報を受信した場合には、あらかじめ登録された個人情報を新たな個人情報に更新することができる。
【0056】
[n段階で行う健康管理方法(100)]
実際の健康管理方法(100)では、被試験者(20)が血糖値測定を開始してから血糖値スパイク回避に役立つ食生活を実行できるようになるまでには比較的長期間を要する。多くの場合、被試験者(20)は、少なくとも1週間以上、一般的には数週間程度、健康管理方法(100)を実行する必要があるため、モチベーションを低下させやすい。
【0057】
被試験者(20)のモチベーションを維持するために、健康管理方法(100)は、好ましくは、複数の段階で行われる。具体的には、健康管理方法(100)は、好ましくは、n段階(nは2以上の整数)からなり、各段階で工程1,2,3をこの順で反復実行し、上記n段階の各段階で、n段階から選ばれた2つの段階で摂取する食品及び/又は食事に関する栄養条件が異なるように、食事情報(70)を設定する。この場合、ある段階(n)の開始時前に、に上記栄養条件があらかじめ設定され、この栄養条件が食事情報(70)の一部として、当該段階の工程1の開始前に被験者端末機器(2)に送信される。そして、上記栄養条件に従った期間で工程1が実行される。続く工程2では、例えば、あらかじめ設定された上記栄養条件に加えて被試験者(20)が実際に接種した食品・食事の記録などを含む食事情報(70)が、被験者端末機器(2)から管理者コンピュータ(3)に送信される。
【0058】
上記栄養条件の指標は、一般的には、日毎の摂取エネルギー量(kcal)である。また、日毎の摂取エネルギー量(kcal)を2つの段階で同じ値として実際に摂取する食品あるいは食事の規制を変化させてもよい。例えば、(n-1)段階目とn段階目とで1日の摂取エネルギー量を同じ値に設定するが、摂取可能な食品・食事の選択肢が(n-1)段階目とn段階目とで異なる、といった差別化をしても良い。この場合、例えば、(n-1)段階目とn段階目で1日の摂取エネルギー量を同じ値に設定し、(n-1)段階目では被試験者(20)が摂取エネルギー量の範囲内であらかじめ指定された食品群から食品を選び、n段階目では被試験者(20)には摂取エネルギー量の範囲内で所謂スナック、ジャンクフード、ファーストフード(脂質、糖質の含有量が非常に高い食品)や、特に好きな食品、外食などを許容する。その結果、被試験者(20)のストレスを軽減し、被試験者(20)のモチベーションを維持することができる。
【0059】
被試験者(20)は、各段階で、設定された食事情報(70)に従った食品及び/又は食事を摂取して、血糖値を測定する。一般的には、(n-1)段階目で、毎日、設定された食事情報(70)に合致する食材を使った食事を摂る。この場合、例えば、工程1で、パッチ式血糖値測定機器(1)のリーダーが、例えば過去24時間分の被試験者(20)の血糖曲線データ(50)をスマートフォン(2)に送信し、被試験者(20)がスマートフォン(2)に表示された過去24時間の血糖曲線を照会することができる。この場合、次の工程2で、スマートフォン(2)が、血糖曲線データ(50)と、食事情報(70)、身長と体重、体脂肪率などを含む身体情報(60)を管理者コンピュータ(3)に送信することができる。この時、食事情報(70)には実際に被試験者(20)自身が記録した過去24時間の食事記録を追加することができる。そして、工程3で、管理者コンピュータ(3)が血糖値スパイクの有無を判定した結果を含む助言情報(5)を生成し、スマートフォン(2)に送信することができる。被試験者(20)はスマートフォン(2)で助言メッセージを見て読むことができる。(n-1)段階目で、このような工程1,2,3を各段階で定期的に、例えば毎日あるいは3日間隔で、繰り返す。
【0060】
(n-1)段階目に割り当てられた日数を経過すると、通常は、被試験者(20)は次のn段階目に進む。n段階目では、(n-1)段階目とは異なる栄養条件で、上述の工程1,工程2,工程3を毎日繰り返す。
【0061】
また、最初の段階に先立つ血糖値測定を行わない準備段階や、比較的自由に被試験者(20)が食品や食事を選べる中間段階を設けることもできる。
【0062】
このようなn段階(nは2以上の整数)で健康管理方法(100)を実行すると、結果的に被試験者(20)は、バリエーションのある食品や食事を摂取しながら血糖値スパイクのチェック、助言の受け取り、食生活の改善を繰り返すことができる。
【0063】
このようなn段階(nは2以上の整数)からなる健康管理方法(100)を経て、例えば、基本的な食事に含ませて一気に摂取すると高確率で血糖値スパイクが出現するが、順序を工夫して摂取すれば血糖値スパイク傾向が低減する食品とその量が導かれることがある。例えば、夕食に予定していた白米飯のうち20gを早めに(例えば、夕食の5分から15分程度、本格的な食事を始める前に)食べれば本格的な夕食後の血糖値スパイク傾向が緩和されることが発見されることがある。また例えば、外食時に糖質含量が高い料理とそうでない料理を交互に食べる場合にも、食後血糖値スパイク傾向が緩和されることがある。このような、食後血糖値スパイク傾向を緩和するための、足がかり(step)的に・段階(step)的に摂取する食品や、その食品の食べ方を、「ステップ・フード」と呼ぶことがある。n段階(nは2以上の整数)からなる健康管理方法(100)はステップ・フードを見出しやすいという長所がある。
【0064】
[効果]
本発明の健康管理方法(100)では、被試験者(20)に食事毎に得られる血糖曲線を確認することができ、血糖値スパイクに関する評価やアドバイスを素早く受け取ることができる。健康管理方法(100)は、血糖値スパイクを回避したいと願う被試験者(20)が直感的に理解しやすい情報を提供するため、被試験者(20)に満足度の高いサービスを提供することができる。
【実施例0065】
被試験者(20)に対して、5段階からなる健康管理方法(100)を実行した。表1に示すように、各段階の開始前に、あらかじめ、1日あたり摂取エネルギー量(カロリー値),摂取可能な(自由に選べる場合も含めて)食品が食事情報(70)として設定された。被試験者(20)はスマートフォン(2)で、アドバイザーのコンピュータ(3)とデータの送受信を行なった。
【0066】
なお、この例で採用した摂取食品エネルギー量及び各段階の継続期間(日数)は、被試験者(20)として日本人を想定したものである。インスリン応答性等の糖代謝特性が日本人と異なる人種、例えば白人(欧米人)の被試験者に対しては、場合によっては各段階の条件を調整することができる。
【0067】
1段階目は準備段階である。2段階目は、設定した1日あたり摂取エネルギー量を超えない範囲で普段の食事をする。2段階目からパッチ式血糖値測定機器で血糖値計測を開始した。2段階目は、血糖値スパイクが強く予想される段階で、対照用段階(コントロール)として位置付ける。毎日1回、工程1,工程2,工程3をこの順で実行した。2段階目まで蓄積された被験者情報(6)から、ステップ・フードの候補として米飯(白米)20gを選んだ。3段階目では、被試験者(20)は空腹を感じた時(通常の食事の前あるいは間に米飯(白米)20gをステップ・フードとして摂取した。3段階目でも毎日工程1,2,3を反復実行した。
【0068】
4段階目では、再び、ステップ食なしで工程1,2,3を反復実行し、血糖値スパイクの傾向の変化を観察した。4段階目では血糖値スパイク傾向が低下していた。そこで、5段階目では、設定した1日あたり摂取エネルギー量を超えない範囲で被試験者が自由に食事をした。ファーストフードやスナックを含む一般的摂取できるよう食事情報(70)を設定した。5段階目でも毎日工程1,2,3を反復実行した。
【0069】
【0070】
表2に、2段階目1日目に対して、被試験者(20)のスマートフォン(2)から管理者コンピュータ(3)に送信された被験者情報(6)の一部を示す。
【0071】
【0072】
被験者情報(6)は、
図1に示す血糖曲線のデータ(50)を含む。
図1の点線は血糖値レベル:150mg/dLを示す。
図1の矢印は食事開始を示す。
図1の血糖曲線は、2段階目1日目の昼食後に典型的な血糖値スパイクが出現したことを示す。
【0073】
実際には、工程1及び工程2で、スマートフォン(2)には表2に掲載した情報と
図1のグラフの両方が表示される。
2段階目1日目に対して、工程3で、被試験者(20)のスマートフォン(2)は助言メッセージ「昼食後と夕食後に血糖値スパイクが検出されました。明日以降は、野菜を取り入れてください。」を受信した。被試験者は、次の日に、昼食と夕食にほうれん草を取り入れた。
【0074】
その後も、被試験者(20)は、助言情報(50)に基づくメッセージを毎日スマートフォン(2)で確認して食事に気を遣いながら2,3,4,5段階目に進んだ。
【0075】
5段階目2日目には被試験(20)は朝食のエネルギー源の一つとして好物のチーズを選択した。被験者(20)は、晩は焼肉屋で外食した。5段階目2日目に実際に摂取したエネルギー量は、あらかじめ設定された値(1150kcal)を超えなかった。
【0076】
表3に、5段階目2日目に対して、被試験者(20)のスマートフォン(2)から管理者コンピュータ(3)に送信された被験者情報(6)の一部を示す。
図2の矢印は食事開始を示す。被験者情報(6)は、に示す血糖曲線のデータ(50)を含む。実際には、工程1及び工程2で、スマートフォン(2)には表3に掲載した情報と
図2のグラフの両方が表示される。
【0077】
【0078】
図1と
図2との比較から、5段階目で血糖値スパイク傾向が軽減したことが分かる。
図2に示す血糖曲線は、血糖値が150mg/dLを超える時間帯がほとんどなかったことを示す。食後の血糖値曲線は、
図1では急峻な山形を描くのに対して、
図2では比較的緩やかに変化する。この健康管理方法(100)の例では、被試験者(20)が好きな食品や外食を取り入れて血糖値スパイク傾向が低減した食生活を送れるようになったと言える。
【0079】
この例では、各段階の日数はそれほど多くなく、被試験者(20)は一つ一つの段階を確実に完了することができ、次の段階に移る際に達成感を抱くことができる。したがって、この例における被試験者(20)の満足度は高い。
本発明の健康管理方法(100)により、簡単に、血糖値スパイクのチェックと生活習慣の評価と改善を継続することができる。健康管理方法(100)を利用する被験者は、計測や食事節制のモチベーションを失い難い。