(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015473
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】吊上げ運搬装置
(51)【国際特許分類】
B25B 29/02 20060101AFI20250123BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B25B29/02
B23P19/06 T
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113867
(22)【出願日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】10 2023 119 208.6
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
【住所又は居所原語表記】Josef-Menke-Strasse 25, D-59581 Warstein, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
【住所又は居所原語表記】Uhlandstrasse 6a, D-59872 Meschede, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031GG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボルト接続部をプリテンション可能な吊上げ運搬装置を取り扱う際の安全性を向上させる。
【解決手段】荷を吊り上げ運搬するための吊上げ運搬装置であって、荷16を受け入れて吊り上げるためのフレーム2と、荷16を保持するための保持手段3と、荷16が取り付けられた保持手段3を昇降させるための吊上げ手段4とを備え、ボルト締付工具16と機能的に接続された引張りアンカを含み、引張りアンカは、吊上げ運搬装置がフランジ25に取り付けられている状態で、フランジ25、または少なくとも1つのボルト接続部と解放可能に接続され、このボルト接続部のプリテンション中にプリテンション対象のボルト接続部の破損、またはボルト締付工具16とプリテンション対象のボルト接続部との接続の破損が発生した場合にボルト締付工具16の吊上げ経路を吊上げ方向に所定の寸法に制限するように設計されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を吊り上げ、吊上げ方向に対して横方向に運搬するための吊上げ運搬装置であって、ボルト締付工具(16)を、プリテンション対象または解放対象のボルト接続部(15a)と係合する締付位置、またはボルト接続部(15)との係合が解除されて次のボルト接続部(15)に運搬可能な運搬位置にするために、ねじ付きフランジ継手を製造する際に使用され、フランジ(25)が横に延びており、
所定の大きさの荷受スペース(14)の周囲に延びていて、荷を受け入れて吊り上げるためのフレーム(2)と、
前記フレーム(2)と相対的に前記吊上げ方向(9)に移動可能であり、荷を保持するための保持手段(3)と、
前記荷受スペース(14)の傍で前記フレーム(2)に取り付けられていて、荷が取り付けられた前記保持手段(3)を昇降させるように構成された吊上げ手段(4)とを備え、
前記フレーム(2)は、前記吊上げ方向(9)と、運搬方向(10)および前記吊上げ方向(9)に直交する方向との両方に互いに離間した第1および第2支持軸受(5,6)に取り付けられていて、当該第1および第2支持軸受(5,6)の支持方向(5a,6a)は、それぞれ前記運搬方向(10)に直交して互いに所定の角度をなして延びており、
前記第1支持軸受(5)は、前記ボルト接続部(15)とフランジ端縁(26)との間の、前記フランジ(25)の上側部(13)と接するように設計されており、前記第2支持軸受(6)は、前記ボルト接続部(15)の上方で、前記フランジ(25)から延びる構成体壁(30)と接するように設計されており、
前記ボルト締付工具(16)と機能的に接続された引張りアンカ(40)が設けられており、当該引張りアンカ(40)は、当該吊上げ運搬装置(1)が前記フランジ(25)に取り付けられている状態で、前記フランジ(25)、または前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)と隣接する少なくとも1つのボルト接続部(15)と解放可能に接続され、前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)のプリテンション中に前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)の破損、または前記ボルト締付工具(16)と前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)との接続の破損が発生した場合に前記ボルト締付工具(16)の吊上げ経路を前記吊上げ方向に所定の寸法に制限するように設計されていることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吊上げ運搬装置において、
前記引張りアンカ(40)は、フランジ前側部(17)に沿って延びる第1部分(41a,42a)と、当該第1部分(41a,42a)に対して横方向にフランジ下側部(36)に沿って延びる第2部分(41b,42b)とを有するように設計されたL字形ウェブ(41,42)を含み、
前記第2部分(41b,42b)は、少なくとも部分セクション(41c,54;42c,46)で前記フランジ下側部(36)に対して所定の最大クリアランス距離(47)を超えず、
当該L字形ウェブ(41,42)は、曲げ剛性を有する設計で、前記フレーム(2)と曲げ剛性的に接続されていて、前記フランジ下側部(36)と当該L字形ウェブ(41,42)の前記第2部分(41b,42b)の少なくとも前記部分セクション(41c,45;42c,46)との形状嵌めによって、前記フレーム(2)の吊上げ経路を前記吊上げ方向に第2の所定の寸法に制限するように設計されていることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項3】
請求項2に記載の吊上げ運搬装置において、
前記L字形ウェブは、前記運搬方向(10)に互いに離間していて、互いに平行に延びる2つのL字形ウェブ部(41,42)を含むことを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の吊上げ運搬装置において、
前記L字形ウェブ(41,42)の前記第2部分(41b,42b)は、前記ボルト接続部(15)の前方で終端するように設計されていることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項5】
請求項3に記載の吊上げ運搬装置において、
前記2つのL字形ウェブ部(41,42)の前記第2部分(41b,42b)は、それぞれ少なくとも1つの部分セクション(50,51)で、前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)と隣接する前記ボルト接続部(15)の後方と係合するように設計されていて、後方と係合する当該部分セクション(50,51)が、前記フランジ下側部(36)に対して所定の最大クリアランス距離(47)を超えない前記部分セクションであることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1つに記載の吊上げ運搬装置において、
前記L字形ウェブ(41,42)は、さらに、前記フランジ上側部(13)に載る前記第1支持軸受(5)と協働してC字状の曲げ剛性を有する構造を形成するように設計されており、当該C字状の構造は、前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)の破損、または前記ボルト締付工具(16)と前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)との接続の破損が発生した場合に、前記フランジ(25)との形状嵌めによって、前記運搬方向(10)に平行な軸を中心とする前記フレーム(2)の傾き角度をそれぞれ所定の寸法に制限することを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項7】
請求項1に記載の吊上げ運搬装置において、
前記引張りアンカ(40)は、前記フレーム(2)に取り付けられた少なくとも1つの引張り要素部(52)を含み、当該引張り要素部(52)は、前記フランジ上側部(13)上のねじナット(27)から突出したボルト接続部(15)のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部(53)を含むことを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項8】
請求項7に記載の吊上げ運搬装置において、
前記フレーム(2)は、当該吊上げ運搬装置(1)がフランジ(25)に取り付けられている状態で前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)の上方で延びる横ストラット部(19)を含み、前記引張り要素部(52)は、前記フランジ前側部(17)を向く側から前記フランジ前側部(17)に背く側まで前記横ストラット部(19)を渡って横方向に延びていて、前記フレーム(2)の両側方でねじナット(27)から突出したボルト接続部(15)のねじ端部と螺合可能であることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項9】
請求項7に記載の吊上げ運搬装置において、
前記引張りアンカ(40)は、それぞれ前記フレーム部(11,12)の1つに取り付けられた2つの別々の引張り要素部から形成されており、当該2つの別々の引張り要素部は、前記フランジ上側部(13)上のねじナット(27)から突出したボルト接続部(15)のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部(53)を含むことを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1つに記載の吊上げ運搬装置において、
各ねじコネクタ部(53)には、クイックリリース機構またはクランプ機構が設けられており、当該機構によって、ねじナット(27)から突出したねじ端部との接続を素早く形成したり再び解放したりすることができることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の吊上げ運搬装置において、
少なくとも第2支持軸受(6)は、磁気式であることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる吊上げ運搬装置に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願によれば、ボルト接続部のプリテンションは、摩擦およびねじりから解放されたプリテンション(もっぱら引張力がねじボルトにかけられ、その後ねじナットが回転される)と、回転プリテンション(例えばトルク法または回転角法によるもの)との両方であると理解される。
【0003】
これに応じて、本出願によれば、ボルト締付工具は、引張力をかけるボルト締付工具(例えばボルト引張りシリンダ)と、回転ボルト締付工具(例えばトルクレンチまたはナットランナ)との両方であると理解され、ボルト締付工具は、自動ボルト締付工具であっても手動ボルト締付工具であってもよい。
【0004】
さらに、これに応じて、締付位置は、ボルト締付工具がボルト接続部をプリテンション可能な、ボルト締付工具の姿勢または位置であると理解される。
【0005】
本出願によれば、荷受スペースは、吊り上げ対象または運搬対象の荷が占めるスペース、すなわちボルト締付工具が占めるスペースであると理解される。
【0006】
一般的な吊上げ運搬装置は、ドイツ特許出願公開第102012009255号(A1)から知られている。このような装置を、フランジ継手におけるボルト接続部にプリテンションをかけるのに使用することができ、この装置では、ねじボルトが、互いに接続される対象である構成体のフランジ下側部に対してボルト頭部が当たるまで、接続対象の構成体で互いに整列した貫通孔に下から挿入され、ナットが、フランジ上側部に対して当たるまで、フランジ上側部におけるボルトのねじ端部に手で螺合される。ボルト締付工具は、吊上げ運搬装置にフランジ上側部の上方で保持され、プリテンション対象のボルト接続部の上方に配置され、そしてプリテンション対象のボルト接続部の上に下ろされる。ボルト締付工具は、ボルト接続部にプリテンションがかけられた後、吊上げ運搬装置によって再び吊り上げられ、次のボルト接続部に移動される。
【0007】
ドイツ特許第102019200042号(B3)から、フランジ継手におけるボルト接続部をプリテンション可能な吊上げ運搬装置が知られており、この装置では、ねじボルトが、互いに接続される対象であるフランジの貫通孔に上から挿入され、ナットが、フランジ下側部におけるねじボルトに手で螺合される。
【0008】
ドイツ特許第102022105559号(B3)は、ボルト締付工具を、傾斜したフランジのフランジ上側部および/またはフランジ下側部で、ボルト接続部と係合させることが可能な吊上げ運搬装置を開示している。
【0009】
韓国公開特許公報第1020130026039号(A)から、風力タービンのフランジ継手におけるねじを締め付け、検査し、およびマーキングするためのメンテナンスロボットが知られている。このメンテナンスロボットは、フランジ前側部の前方に配置されていて、ねじを保持して締め付けるための上部および下部アームを含む。さらに、このメンテナンスロボットは、フランジの上下と係合して、フランジに沿って移動するときのメンテナンスロボットの動きを安定させるための支持部を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102012009255号
【特許文献2】ドイツ特許第102019200042号
【特許文献3】ドイツ特許第102022105559号
【特許文献4】韓国公開特許公報第1020130026039号
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、同種の吊上げ運搬装置を取り扱う際の安全性を向上させることにある。
【0012】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴によって、前述のような装置で達成される。有利な実施形態は、従属請求項の内容である。
【0013】
本発明の手段によって、吊上げ運搬装置およびこれに固定されたボルト締付工具は、プリテンション作業中に、プリテンション対象のボルト接続部の破損、またはボルト締付工具とプリテンション対象のボルト接続部との接続の破損が発生した場合に、組立作業場から飛び出し得ず、それによって人、特に吊上げ運搬装置およびボルト締付工具を操作する組立作業員を怪我させる可能性を有し得ない。このような破損は、材料の欠陥がある場合に発生することから、排除され得ない。プリテンション作業中、かけられるプリテンション(予張力)は、吊上げ運搬装置、ボルト締付工具およびボルト接続部のいずれにも作用し、この予張力は、前述の破損が発生した際に突然解放され、その結果ボルト締付工具およびこれに接続された吊上げ運搬装置の急激な加速を引き起こす。ボルト締付工具が、吊上げ運搬装置がフランジに取り付けられている状態でフランジまたは少なくとも1つのボルト接続部と解放可能に接続される引張りアンカと機能的に接続されていることにより、一方で、ボルト締付工具とこれに接続された吊上げ運搬装置との両方がフランジからの制御されていない吊り上げに対して固定され、他方で、ボルト接続部にプリテンションをかけた後に吊上げ運搬装置を次のプリテンション対象のボルト接続部に素早く移動させることが可能となる。
【0014】
ここで、“機能的に”という用語は、引張りアンカがボルト締付工具に直接的に取り付けられている必要がなく、間接的にも、例えばフレームによって、ボルト締付工具と接続され得ることを意味する。
【0015】
本発明は、プリテンション中に吊上げ運搬装置およびボルト締付工具が互いにしっかりと接続され、これにより、これらの両方を制御されていない吊り上げに対して固定するために、これらの2つのうち1つのみが引張りアンカと接続されている必要があることを利用するものである。
【0016】
さらに、本発明によれば、引張りアンカは、前述のような破損が発生した場合にボルト締付工具の吊上げ経路を吊上げ方向に所定の寸法に制限するように設計されており、ボルト締付工具が、引張り作業中の通常の操作で引張り方向または吊上げ方向に所定の寸法まで十分な移動の自由度を有する、すなわち、例えばボルト締付工具が、吊上げ運搬装置における最大限の吊上げ経路、またはそれぞれの引張り作業に必要な吊上げ経路を支障なく通ることができることが保証される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、引張りアンカは、フランジ前側部に沿って延びる第1部分と、第1部分に対して横方向にフランジ下側部に沿って延びる第2部分とを有するように設計されたL字形ウェブを含み、第2部分は、少なくとも部分セクションでフランジ下側部に対して所定の最大クリアランス距離を超えず、L字形ウェブは、曲げ剛性を有する設計で、フレームと曲げ剛性的に接続されていて、フランジ下側部とL字形ウェブの第2部分の少なくとも前記部分セクションとの形状嵌めによって、フレームの吊上げ経路を吊上げ方向に第2の所定の寸法に制限するように設計されている。これらの手段によって、引張りアンカは、極めて組立が容易なタイプであり、プリテンションの目的のための、フランジに対する吊上げ運搬装置の通常の押し付けの際や、プリテンション後の次のボルト接続部に対する吊上げ運搬装置の通常の押し付けの際に、引張りアンカも既に操作可能な状態で取り付けられている。ここで、引張りアンカは、フレームに取り付けられており、これにより、ボルト締付工具が移動可能なホルダに対する取り付けによってフレームとしっかりと接続され、それによって制御されていない吊り上げに対して固定されつつも、ボルト締付工具がフレーム内でその吊り上げ経路で自由に動くことができる。
【0018】
有利には、L字形ウェブは、運搬方向に互いに離間していて、互いに平行に延びる2つのL字形ウェブ部を含む。このようにして、運搬方向に直交してフランジに平行に延びる軸を中心とする傾きに対する安定性が確保され、これにより、問題となる破損が発生した場合に、ボルト締付工具を含む吊上げ運搬装置の縦方向の整列が実質的に維持され、したがって、傾倒の際に発生し得る、吊上げ運搬装置およびボルト締付工具の大きな損傷が起こり得ない。
【0019】
本発明の好ましい発展形態では、L字形ウェブの第2部分は、ボルト接続部の前方で終端するように設計されている。これにより、引張りアンカを製造するための労力を比較的低く抑えることができる。
【0020】
本発明の他の有利な実施形態では、2つのL字形ウェブ部の第2部分は、それぞれ少なくとも1つの部分セクションで、プリテンション対象のボルト接続部と隣接するボルト接続部の後方と係合するように設計されていて、後方と係合する部分セクションが、フランジ下側部に対して所定の最大クリアランス距離を超えない前記部分セクションである。これらの手段によって、吊上げ運搬装置は、さらに、ボルト接続部の後方と係合する部分セクションが傾き方向に応じて、後方と係合するボルト接続部に対して当たるか、フランジから下方に延びる構成体壁に対して当たることから、運搬方向に直交してフランジ前側部からの滑り落ちに対して固定され、同時に運搬方向に平行な軸を中心とする傾きに対しても固定される。
【0021】
好ましくは、L字形ウェブは、さらに、フランジ上側部に対して当たる第1支持軸受と協働してC字状の曲げ剛性を有する構造を形成するように設計されており、このC字状の構造は、プリテンション対象のボルト接続部の破損、またはボルト締付工具とプリテンション対象のボルト接続部との接続の破損が発生した場合に、フランジとの形状嵌めによって、運搬方向に平行な軸を中心とするフレームの傾き角度をそれぞれ所定の寸法に制限する。これにより、傾きに対する安定性がさらに向上し、吸収可能な傾きモーメントも向上する。
【0022】
本発明の他の好ましい実施形態では、引張りアンカは、フレームに取り付けられた少なくとも1つの引張り要素部を含み、引張り要素部は、フランジ上側部上のねじナットから突出したボルト接続部のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部を含む。このような引張りアンカも同様に低コストで製造することができ、比較的素早く取り付けることができる。
【0023】
好ましくは、フレームは、吊上げ運搬装置がフランジに取り付けられている状態でプリテンション対象のボルト接続部の上方で延びる横ストラット部を含み、引張り要素部は、フランジ前側部を向く側からフランジ前側部に背く側まで横ストラット部を渡って横方向に延びていて、フレームの両側方でねじナットから突出したボルト接続部のねじ端部と螺合可能である。これらの手段によって、引張りアンカの製造および組立コストがさらに大幅に削減される。
【0024】
本発明の他の有利な実施形態では、引張りアンカは、それぞれフレーム部の1つに取り付けられた2つの別々の引張り要素部から形成されており、2つの別々の引張り要素部は、フランジ上側部上のねじナットから突出したボルト接続部のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部を含む。このような引張りアンカは、一方で製造が簡単で取り付けが容易であり、一方の引張り要素部の破損が発生した場合に他方の引張り要素部が依然としてその機能を果たし得ることから、他方で動作上の信頼性も高い。
【0025】
好ましくは、各ねじコネクタ部には、クイックリリース機構またはクランプ機構が設けられており、この機構によって、ねじナットから突出したねじ端部との接続を素早く形成したり再び解放したりすることができる。これにより、組立時間をさらに短縮することができる。
【0026】
好ましくは、少なくとも第2支持軸受は、磁気式である。このようにして、吊上げ運搬装置を構成体壁とさらに良好に接触させることができ、プリテンション対象のボルト接続部の破損、またはボルト締付工具とプリテンション対象のボルト接続部との接続の破損が発生した場合に、傾きを防止することができる。
【0027】
以下、図を参照しながら実施例によって本発明をより詳細に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第1実施形態の縦側面図である。
【
図2】
図2は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第1実施形態の正面図である。
【
図3】
図3は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第1実施形態の上面図である。
【
図4】
図4は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第1実施形態の斜視図である。
【
図5】
図5は、ボルト締付工具が取り付けられている、
図2の正面図である。
【
図6】
図6は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第2実施形態の縦側面図である。
【
図7】
図7は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第2実施形態の正面図である。
【
図8】
図8は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第2実施形態の上面図である。
【
図9】
図9は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第2実施形態の下面図である。
【
図10】
図10は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第2実施形態の斜視図である。
【
図12】
図12は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第3実施形態の縦側面図である。
【
図13】
図13は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第3実施形態の正面図である。
【
図14】
図14は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第3実施形態の上面図である。
【
図15】
図15は、ボルト締付工具が取り付けられていない、ねじ付きフランジ継手の製造に使用される、本発明による吊上げ運搬装置の第3実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図は、ボルト引張りシリンダとともに使用するための、本発明による吊上げ運搬装置の実施形態を示している。しかしながら、簡単な構造上の変更によって、本発明による吊上げ運搬装置を他の任意の自動または手動のボルト締付工具に使用することができる。
【0030】
本発明による吊上げ運搬装置1の実施形態は、図に示されるように、フレーム2と、保持手段3と、吊上げ手段4と、第1、第2および第3支持軸受5,6,7と、補助支持軸受8とを含む。吊上げ方向は符号9で示されており、運搬方向は符号10で示されている。
【0031】
フレーム2は、2つのフレーム部11,12から形成されており、フレーム部11,12は、フランジ上側部13上で運搬方向10における荷受スペース14の前後に配置されていて、荷受スペース14の傍かつ上方で運搬方向10に直交して延びている。図示された例示的な実施形態では、2つのフレーム部11,12間のクリアランス距離は、ボルト接続部15およびこれに取り付けられたボルト引張りシリンダ16を収容するように設計されている(
図5、
図11および
図16)。
【0032】
フレーム部11,12は、それぞれ第1および第2フレーム部11a,11b;12a,12bから形成されている。第1フレーム部11a,12aは、それぞれL字状である。これらの第1端部は、それぞれフランジ前側部17とボルト接続部15との間の領域に配置されている。そこから、第1フレーム部11a,12aは、まず上方に延び、そしてプリテンション対象のボルト接続部15aと隣接するボルト接続部15を越えて延びている。そこで、これらの第2端部は、それぞれ第2フレーム部11b,12bの第1端部に曲げ剛性的に、例えば螺合によって接続されている。第2フレーム部11b,12bは、収容されるボルト引張りシリンダ16の上側部16aを越えて縦方向に延びている。
【0033】
第1フレーム部11a,12aの自由端部である第1端部は、下部横ストラット部18によって互いに接続されており、第2フレーム部11b,12bの自由端部である第2端部は、上部横ストラット部19によって互いに接続されている。
【0034】
第2フレーム部11b,12bには、それぞれ、これらの長手方向に延びる長孔20が形成されており、長孔20には、保持手段3が移動可能に取り付けられている。保持手段3は、運搬方向に延びるストラット部として構成されており、その両端部が長孔20に縦に移動可能に取り付けられている。保持手段3は、ボルト接続部15aにプリテンションをかける前にボルト引張りシリンダ16を下降させ、プリテンション後にボルト引張りシリンダ16をボルト接続部15aから吊り上げるために、その長手方向の中央部に、ボルト引張りシリンダ16用のアタッチメントを含む。
【0035】
第2フレーム部11b,12bには、吊上げ手段4が取り付けられている。図示された例示的な実施形態では、吊上げ手段4は、第2フレーム部11b,12bの各々にガス圧スプリング21を含み、ガス圧スプリング21の第1端部22は、それぞれ第2フレーム部11b,12bの第1端部の近くに移動不能に取り付けられており、ガス圧スプリング21の第2端部23は、それぞれ第2フレーム部11b,12bにおける荷受スペース14に背く側で保持手段3の端部と接続されている。ボルト締付工具16、すなわち図示の場合ではボルト引張りシリンダは、ガス圧スプリング21によって、ボルト接続部15aにプリテンションをかけ/開放した後に重力に逆らって上方に押し上げられる。ボルト締付工具16は、保持手段3と移動不能に接続されている。例えば、ボルト締付工具16を、保持手段3と螺合させ、または保持手段3によって磁気的にもしくは嵌合的に(例えばロックボルトによって)保持することができる。
【0036】
下部横ストラット部18の両端部には、それぞれ第1支持ローラ24が回転可能に取り付けられており、第1支持ローラ24の回転軸は、運搬方向10に直交して横に延びている。両第1支持ローラ24は、共同で第1支持ローラ対を形成する。第1支持ローラ対は、フランジ25の上側部13と接するように設計されていて、第1支持軸受5を形成する。
【0037】
ここで、“フランジ25”という用語は、上部フランジおよび下部フランジを備えるフランジ継手または組み合わせを意味する。フランジ25は、直線状、または内環もしくは外環の形をなすリング状であり得る。
【0038】
第1支持軸受5の支持方向5aは、運搬方向10に直交して吊上げ方向9に延びている。これらの支持ローラ24は、ボルト接続部15とフランジ端縁26との間の、フランジ25の上側部13に対して当たっており、これにより、隣接するボルト接続部15に転がる際に、ねじナット27とフランジ端縁26との間を転がることができる。
【0039】
2つの第2フレーム部11b,12bの自由端部である第2端部の近くには、それぞれ第2支持ローラ28が上部横ストラット部19に回転軸29を中心として回転可能に取り付けられており、回転軸29は、運搬方向10に直交して縦に延びている。これらは、共同で第2支持ローラ対を形成する。第2支持ローラ対は、フランジ25から垂直に延びる構成体壁30と水平に接触するように設計されていて、第2支持軸受6を形成する。第2支持軸受6の支持方向6aは、運搬方向10に直交して、吊上げ方向9に直交して、すなわち支持方向5aに直交して延びている。支持ローラ28は、ボルト接続部15aの端部の上方で構成体壁30に対して当たり、その結果、構成体壁30上で運搬方向10に支障なく転がることができる。第2支持ローラ28は、構成体壁30との安定的な接触を確保するために、それぞれ運搬方向10に対して横方向に、所定の寸法だけ横に移動可能である。これらをロック装置によって所望の水平位置にロックすることができる。さらに、第2支持ローラ28は、磁気タイプであり得、これにより、吊上げ運搬装置1を構成体壁30とさらに良好に接触させることができ、プリテンション対象のボルト接続部15aの破損またはボルト締付工具16とボルト接続部15aとの接続の破損に伴う傾きを防止することができる。
【0040】
第1および第2支持ローラ対、すなわち第1および第2支持軸受5,6は、互いに吊上げ方向9にフレーム部11,12の長さに実質的に対応する距離を有している。運搬方向10および吊上げ方向9に直交するこれら間の距離は、第1フレーム部11a,12aの水平の広がりに実質的に対応する。
【0041】
さらに、2つの第1フレーム部11a,12aの自由端部である第1端部の近くには、それぞれ第3支持ローラ32がタブ部31に回転可能に取り付けられており、タブ部31は、下部横ストラット部18に曲げ剛性的に取り付けられており、第3支持ローラ32の回転軸33は、運搬方向10に直交して縦に延びている。この第3支持ローラ対は、フランジ前側部17と水平に接触するように設計されていて、第3支持軸受7を形成する。第3支持軸受7の支持方向7aは、第2支持軸受6の支持方向6aに平行に延びている。これらの支持ローラ32は、フランジ前側部17との接触を確保するために、それぞれタブ部31における長孔34内で運搬方向10に対して横方向に水平に移動可能である。これらをさらなるロック装置35によって所望の水平位置にロックすることができる。
【0042】
第1フレーム部11a,12aには、それぞれ補助支持軸受8が取り付けられており、補助支持軸受8は、プリテンション対象のボルト接続部15aと隣接するボルト接続部15の後方と係合するように設計されている。補助支持軸受8は、隣接するボルト接続部15との安定的な接触を確保するために、それぞれ水平位置および垂直位置の両方で調整装置によって調整可能である。これらをさらなるロック装置(図示しない)によって所望の水平位置および垂直位置でロックすることができる。
【0043】
図1~
図5に示されるような、吊上げ運搬装置1の例示的な実施形態は、タブ部31に曲げ剛性的に取り付けられたL字形ウェブとして構成された引張りアンカ40を含む。L字形ウェブ40は、運搬方向に互いに離間していて互いに平行な2つのL字形ウェブ部41,42から形成されており、L字形ウェブ部41,42は、それぞれ、吊上げ運搬装置1が挿入された状態でフランジ前側部17に沿って延びる第1部分41a,42aと、第1部分41a,42aに対して横方向にフランジ下側部36に沿って延びる第2部分41b,42bとを備える。第1部分41a,42aは、運搬方向に変形しにくいフレームを形成するために、上部および下部ストラット部43,44によって両端部で互いに接続され、そこには、第3支持ローラ32も取り付けられたタブ部31が取り付けられている。
【0044】
第2部分41b,42bは、このフレーム41a,42a,43,44に曲げ剛性的に接続されていて、ボルト接続部15の前方で所定の距離までフランジ下側部36に平行に延びている。部分41b,42bは、それぞれフランジ下側部36を向く側で、部分セクション41c,42上に、フランジ下側部36から所定のクリアランス距離でフランジ下側部36に平行なフェイスプレート45,46を含む。
【0045】
第2部分41b,42bおよび下部ストラット部44は、L字形ウェブとして構成された引張りアンカ40を異なる厚さのフランジに容易に適合させることができるように、第1部分41a,42aに高さを調節可能に取り付けられている。
【0046】
ボルト締付工具16は、プリテンション作業中にプリテンション対象のボルト接続部15aの破損、またはボルト締付工具16とプリテンション対象のボルト接続部15aとの接続の破損が発生した場合に、上部横ストラット部19に対して当たるまで吊上げ運搬装置1内で吊上げ方向9に上に移動し、それによって吊上げ運搬装置1に上向きの力を及ぼし、これにより、吊上げ運搬装置1がフランジ上側部13から吊り上げられる。L字形ウェブ部41,42の第2部分41b,42bのフェイスプレート45,46は、フランジ下側部36に対して当たり、この形状嵌めによって、吊上げ運搬装置1の吊上げ経路が制限され、ひいては吊上げ運搬装置1に取り付けられたボルト締付工具16の吊上げ経路も制限される。
【0047】
第2部分41b,42bとフランジ下側部36との間のクリアランス距離47は、吊上げ運搬装置1の吊上げ経路を含めて、ボルト締付工具16の吊上げ経路が全体として所定の寸法を超えないように設計されている。
【0048】
さらに、フランジ上側部13上でプリテンション対象のボルト接続部15aと隣接するボルト接続部15の後方と係合する補助支持軸受8と協働して、L字形ウェブ部41,42の第2部分41b,42bのフェイスプレート45,46とフランジ下側部36との形状嵌めによって、連続した曲げ剛性を有する接続により、第2部分41b,42bから補助支持軸受8までC字状の曲げ剛性を有する構造が得られることから、傾きモーメントを吸収することができる。このようにして、フランジ端縁26を越える吊上げ運搬装置1の傾きが防止される。
【0049】
図6~
図11に示されるような例示的な実施形態では、引張りアンカ40は、実質的に同様にL字状であり、
図1~
図5の例示的な実施形態と比較して以下の変更が加えられている。
【0050】
第1部分41a,42aは、フランジ上側部13を越えて延びている。これらの第1端部には、それぞれ接続ウェブ部48,49の一端部が曲げ剛性的に取り付けられており、接続ウェブ部48,49の他端部は、第1フレーム部11a,12aに曲げ剛性的に取り付けられている。
【0051】
第1部分41a,42aは、第3支持ローラ32を越えて延びていて、吊上げ運搬装置が挿入された状態では、フランジ下側部36を越えて、第2部分41b,42bが構成体壁30の向きにプリテンション対象のボルト接続部15aと隣接するボルト接続部15を越えて延び得る程度まで延びている。これらの自由端部には、それぞれプレート50,51が曲げ剛性的に取り付けられており、プレート50,51は、前記ボルト接続部15と構成体壁30との間でフランジ下側部36の向きに延びるように、すなわち前記ボルト接続部15の後方と係合するように構成されている。
【0052】
この例示的な実施形態では、プレート50,51とフランジ下側部36との間のクリアランス距離47は、同様に、プリテンション作業中にプリテンション対象のボルト接続部15aの破損、またはボルト締付工具16とプリテンション対象のボルト接続部15aとの接続の破損が発生した場合にボルト締付工具16の吊上げ経路(吊上げ運搬装置1の吊上げ経路を含む)が所定の寸法を超えないように設計されている。
【0053】
さらに、フランジ上側部13上でプリテンション対象のボルト接続部15aと隣接するボルト接続部15の後方と係合する補助支持軸受8と協働して、プレート50,51とフランジ下側部36およびプレート50,51との形状嵌めによって、傾きモーメントを同様に吸収することができ、これにより、フランジ端縁26を越える吊上げ運搬装置1の傾きが防止される。
【0054】
図12~
図16に示されるような実施形態では、引張りアンカ40は、可撓性の引張り要素部52を含み、引張り要素部52は、フランジ前側部17を向く側からフランジ前側部17を背く側まで吊上げ運搬装置1の上部横ストラット部19を渡って横方向に延びていて、両端部にそれぞれねじコネクタ部53を含み、ねじコネクタ部53は、フランジ上側部13上のねじナット27から突出したボルト接続部15のねじ端部と螺合可能である。
【0055】
吊上げ運搬装置1が挿入された状態では、フレーム2の両側のこれらのねじコネクタ部53は、そこに直接的に隣接するボルト接続部15のねじ端部と螺合される。
【0056】
他の例示的な実施形態(図示しない)では、引張りアンカ40は、それぞれフレーム部11,12の1つに取り付けられた2つの別々の引張り要素部から形成されており、2つの別々の引張り要素部は、
図12~
図16の例示的な実施形態と同様に、フランジ上側部13上のねじナット27から突出したボルト接続部15のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部53を含む。
【0057】
各ねじコネクタ部53に、クイックリリース機構またはクランプ機構が設けることが考えられ、この機構によって、ねじナット27から突出したねじ端部との接続を素早く形成したり再び解放したりすることができる。
【0058】
図5、
図11および
図16では、
図1~
図4、
図6~
図10および
図12~
図15の吊上げ運搬装置1がねじ付きフランジ継手の製造中に使用されている状態が示されている。ボルト引張りシリンダ16は、フランジ25の上側部13上と、プリテンション対象のボルト接続部15aのねじナット27上とに載り、ねじボルトの端部領域と力係合している。2つのフレーム部11,12は、運搬方向10におけるボルト引張りシリンダ16の両側方に配置されている。第1、第2および第3支持ローラ対5,6,7は、フランジ25の上側部13、構成体壁30およびフランジ前側部17に対して当たる。2つの補助支持軸受8は、プリテンション対象のボルト接続部15aと隣接するボルト接続部15の後方と係合する。保持手段3は、ボルト引張りシリンダ16に取り付けられる。
【0059】
ここで、ねじボルトにプリテンションがかけられる。引張り作業の完了後に、ボルト引張りシリンダ16がボルト端部から解放され、保持手段3およびこれに取り付けられたボルト引張りシリンダ16が、ボルト引張りシリンダ16の下端縁がここでプリテンションされたボルト接続部15aのねじボルト端部の上方に位置する程度まで、ガス圧スプリング21によって上方に移動される。これで、吊上げ運搬装置1およびこれに取り付けられたボルト引張りシリンダ16を次のボルト接続部15まで自由に移動または転がすことができ、ガス圧シリンダ21を再び縮ませることによりボルト引張りシリンダ16をボルト接続部15に取り付けることができる。
【手続補正書】
【提出日】2025-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を吊り上げ、吊上げ方向に対して横方向に運搬するための吊上げ運搬装置であって、ボルト締付工具(16)を、プリテンション対象または解放対象のボルト接続部(15a)と係合する締付位置、またはボルト接続部(15)との係合が解除されて次のボルト接続部(15)に運搬可能な運搬位置にするために、ねじ付きフランジ継手を製造する際に使用され、フランジ(25)が横に延びており、
所定の大きさの荷受スペース(14)の周囲に延びていて、荷を受け入れて吊り上げるためのフレーム(2)と、
前記フレーム(2)と相対的に前記吊上げ方向(9)に移動可能であり、荷を保持するための保持手段(3)と、
前記荷受スペース(14)の傍で前記フレーム(2)に取り付けられていて、荷が取り付けられた前記保持手段(3)を昇降させるように構成された吊上げ手段(4)とを備え、
前記フレーム(2)は、前記吊上げ方向(9)と、運搬方向(10)および前記吊上げ方向(9)に直交する方向との両方に互いに離間した第1および第2支持軸受(5,6)に取り付けられていて、当該第1および第2支持軸受(5,6)の支持方向(5a,6a)は、それぞれ前記運搬方向(10)に直交して互いに所定の角度をなして延びており、
前記第1支持軸受(5)は、前記ボルト接続部(15)とフランジ端縁(26)との間の、前記フランジ(25)の上側部(13)と接するように設計されており、前記第2支持軸受(6)は、前記ボルト接続部(15)の上方で、前記フランジ(25)から延びる構成体壁(30)と接するように設計されており、
前記ボルト締付工具(16)と機能的に接続された引張りアンカ(40)が設けられており、当該引張りアンカ(40)は、当該吊上げ運搬装置(1)が前記フランジ(25)に取り付けられている状態で、前記フランジ(25)の下側部(36)、または前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)と隣接する少なくとも1つのボルト接続部(15)と解放可能に接続され、前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)のプリテンション中に前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)の破損、または前記ボルト締付工具(16)と前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)との接続の破損が発生した場合に前記ボルト締付工具(16)の吊上げ経路を前記吊上げ方向に所定の寸法に制限するように設計されていることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吊上げ運搬装置において、
前記引張りアンカ(40)は、フランジ前側部(17)に沿って延びる第1部分(41a,42a)と、当該第1部分(41a,42a)に対して横方向に前記フランジ下側部(36)に沿って延びる第2部分(41b,42b)とを有するように設計されたL字形ウェブ(41,42)を含み、
前記第2部分(41b,42b)は、少なくとも部分セクション(41c,54;42c,46)で前記フランジ下側部(36)に対して所定の最大クリアランス距離(47)を超えず、
当該L字形ウェブ(41,42)は、曲げ剛性を有する設計で、前記フレーム(2)と曲げ剛性的に接続されていて、前記フランジ下側部(36)と当該L字形ウェブ(41,42)の前記第2部分(41b,42b)の少なくとも前記部分セクション(41c,45;42c,46)との形状嵌めによって、前記フレーム(2)の吊上げ経路を前記吊上げ方向に第2の所定の寸法に制限するように設計されていることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項3】
請求項2に記載の吊上げ運搬装置において、
前記L字形ウェブは、前記運搬方向(10)に互いに離間していて、互いに平行に延びる2つのL字形ウェブ部(41,42)を含むことを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の吊上げ運搬装置において、
前記L字形ウェブ(41,42)の前記第2部分(41b,42b)は、前記ボルト接続部(15)の前方で終端するように設計されていることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項5】
請求項3に記載の吊上げ運搬装置において、
前記2つのL字形ウェブ部(41,42)の前記第2部分(41b,42b)は、それぞれ少なくとも1つの部分セクション(50,51)で、前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)と隣接する前記ボルト接続部(15)の後方と係合するように設計されていて、後方と係合する当該部分セクション(50,51)が、前記フランジ下側部(36)に対して所定の最大クリアランス距離(47)を超えない前記部分セクションであることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項6】
請求項2に記載の吊上げ運搬装置において、
前記L字形ウェブ(41,42)は、さらに、前記フランジ上側部(13)に載る前記第1支持軸受(5)と協働してC字状の曲げ剛性を有する構造を形成するように設計されており、当該C字状の構造は、前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)の破損、または前記ボルト締付工具(16)と前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)との接続の破損が発生した場合に、前記フランジ(25)との形状嵌めによって、前記運搬方向(10)に平行な軸を中心とする前記フレーム(2)の傾き角度をそれぞれ所定の寸法に制限することを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項7】
請求項1に記載の吊上げ運搬装置において、
前記引張りアンカ(40)は、前記フレーム(2)に取り付けられた少なくとも1つの引張り要素部(52)を含み、当該引張り要素部(52)は、前記フランジ上側部(13)上のねじナット(27)から突出したボルト接続部(15)のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部(53)を含むことを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項8】
請求項7に記載の吊上げ運搬装置において、
前記フレーム(2)は、当該吊上げ運搬装置(1)がフランジ(25)に取り付けられている状態で前記プリテンション対象のボルト接続部(15a)の上方で延びる横ストラット部(19)を含み、前記引張り要素部(52)は、前記フランジ前側部(17)を向く側から前記フランジ前側部(17)に背く側まで前記横ストラット部(19)を渡って横方向に延びていて、前記フレーム(2)の両側方でねじナット(27)から突出したボルト接続部(15)のねじ端部と螺合可能であることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項9】
請求項7に記載の吊上げ運搬装置において、
前記引張りアンカ(40)は、それぞれ前記フレーム部(11,12)の1つに取り付けられた2つの別々の引張り要素部から形成されており、当該2つの別々の引張り要素部は、前記フランジ上側部(13)上のねじナット(27)から突出したボルト接続部(15)のねじ端部と螺合可能なねじコネクタ部(53)を含むことを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1つに記載の吊上げ運搬装置において、
各ねじコネクタ部(53)には、クイックリリース機構またはクランプ機構が設けられており、当該機構によって、ねじナット(27)から突出したねじ端部との接続を素早く形成したり再び解放したりすることができることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【請求項11】
請求項1に記載の吊上げ運搬装置において、
少なくとも第2支持軸受(6)は、磁気式であることを特徴とする吊上げ運搬装置。
【外国語明細書】