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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155134
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20251006BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20251006BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
B60C9/18 K
B60C9/18 G
B60C9/18 N
B60C9/22 G
B60C11/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058638
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 駿介
(72)【発明者】
【氏名】井藤 佳恵
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA39
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC31
3D131BC34
3D131BC36
3D131CA03
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA44
3D131DA52
3D131DA56
3D131DA57
3D131EA02U
3D131EB08U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB83V
3D131EB91V
3D131EB94V
3D131EB98V
3D131EB99V
3D131HA33
3D131HA37
3D131HA45
3D131KA02
3D131KA03
(57)【要約】
【課題】バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2は補強層20とトレッド4とを備える。トレッド4はショルダー周方向溝を備える。補強層20はベルト52とバンド54とを備える。ベルト52は内側ベルトプライ74及び外側ベルトプライ76を含む。バンドはフルバンド66を備える。フルバンド66は内側ベルトプライ74と外側ベルトプライ76との間に位置する。タイヤ2の赤道面において、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFcは、フルバンド66と外側ベルトプライ76との間の距離SFcよりも長い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70%以上の偏平比の呼びを有する、重荷重用タイヤであって、
一対のビードと、
一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、
前記カーカスの径方向外側に位置する補強層と、
前記補強層を覆い、路面と接するトレッドと
を備え、
前記トレッドが、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、
複数の前記周方向溝が、軸方向最外側に位置するショルダー周方向溝を含み、
前記補強層が、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、らせん状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備え、
前記ベルトが、径方向に並ぶ、内側ベルトプライ及び外側ベルトプライを含み、
前記内側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きが、前記外側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きと逆であり、
前記バンドが、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間に位置する、フルバンドを備え、
前記内側ベルトプライ、前記外側ベルトプライ、及び前記フルバンドの端が、前記ショルダー周方向溝の軸方向外側に位置し、
前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが、前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcよりも長い、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記タイヤの赤道面における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが0.6mm以上である、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記フルバンドの端における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFsが2.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記タイヤの赤道面における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが、前記フルバンドの端における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFsよりも長い、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcの、前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcに対する比(UFc/SFc)が2.0以上である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記フルバンドのコード密度が、22ends/50mm以上である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記フルバンドのコード密度に対する、前記内側ベルトプライのコード密度の比が0.65以上である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
前記フルバンドの前記バンドコードと、前記内側ベルトプライの前記ベルトコードとがなす角度FUが、10度以上25度以下であり、
前記フルバンドの前記バンドコードと、前記外側ベルトプライの前記ベルトコードとがなす角度FSが、10度以上25度以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記内側ベルトプライの前記ベルトコードが前記タイヤの赤道面に対してなす角度UEが、前記外側ベルトプライの前記ベルトコードが前記タイヤの赤道面に対してなす角度SEよりも小さい、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
前記内側ベルトプライのコード密度が、前記外側ベルトプライのコード密度よりも大きい、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項11】
複数の前記周方向溝が、前記トレッドに、軸方向に並ぶ複数の陸部を構成し、
複数の前記陸部のうち、前記タイヤの赤道面上に位置する陸部、又は、前記赤道面に最も近い陸部が、センター陸部であり、
前記センター陸部が、前記センター陸部を横断する横断サイプを有し、
前記横断サイプが、サイプ本体と、前記サイプ本体の径方向内側に位置する管状部とを有し、
前記管状部が前記サイプ本体の溝幅よりも広い溝幅を有する、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
走行状態にあるタイヤでは、変形と復元とが繰り返される。大きな荷重が作用する重荷重用タイヤにおいては、プロファイルや接地形状が変化する。
偏平比が70%以上の高偏平タイヤでは、クラウン部分において接地形状やプロファイルが顕著に変化する。クラウン部分がショルダー部分に比べて摩耗しやすい傾向にある。
【0003】
タイヤを構成する要素の中に、バンドがある。バンドは、実質的に周方向にのびるバンドコードを含む。走行状態にあるタイヤのカーカスは、内圧の作用や遠心力によって外向きに拡がろうとする。バンドは、カーカスの径方向外向きへの寸法変化、つまりカーカスの寸法成長の抑制に貢献できる。
プロファイルや接地形状の変化を抑制し耐偏摩耗性を向上させるために、バンドの採用が検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-47999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る重荷重用タイヤは、70%以上の偏平比の呼びを有する、重荷重用タイヤであって、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの径方向外側に位置する補強層と、前記補強層を覆い、路面と接するトレッドとを備える。前記トレッドは、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有する。複数の前記周方向溝は、軸方向最外側に位置するショルダー周方向溝を含む。前記補強層は、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、らせん状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備える。前記ベルトは、径方向に並ぶ、内側ベルトプライ及び外側ベルトプライを含む。前記内側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きは、前記外側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きと逆である。前記バンドは、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間に位置する、フルバンドを備える。前記内側ベルトプライ、前記外側ベルトプライ、及び前記フルバンドの端は、前記ショルダー周方向溝の軸方向外側に位置する。前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcは前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcよりも長い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤの一部を示す断面図である。
図2図1のタイヤの一部を示す拡大断面図である。
図3】補強層の構成を説明する概略図である。
図4】トレッドの一部を示す展開図である。
図5】赤道面に沿った断面図である。
図6】横断サイプの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0010】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0011】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0012】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0013】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0014】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0015】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0016】
本発明において、「偏平比の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「偏平比の呼び」である。
【0017】
本発明において、並列したコードを含むタイヤの要素、50mm幅あたりに含まれるコードの本数は、コード密度(単位は、ends/50mmである。)として表される。コード密度は、特に言及がない限り、コードの長さ方向に対して垂直な面で切断することにより得られる要素の切断面において得られる。らせん状に巻かれたコードを含む要素も、見かけ上、複数のコードが並列していることから、並列したコードを含むタイヤの要素と同様にしてコード密度が得られる。
【0018】
本発明において、架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られる。架橋ゴムはゴム組成物の架橋物である。ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、原料ゴム成分及び薬品を混合することにより得られる材料である。架橋ゴムでは原料ゴム成分は架橋しているが、ゴム組成物では原料ゴム成分は架橋していない。架橋ゴムは加硫ゴムとも呼ばれ、ゴム組成物は未加硫ゴムとも呼ばれる。
【0019】
原料ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。原料ゴム成分及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される、トレッド、サイドウォール等の要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0020】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の損失正接(tanδ)は、JIS K6394の規定に準拠して粘弾性スペクトロメータを用いて測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=70℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本発明において損失正接は、70℃での損失正接で表される。
【0021】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の200%伸びにおける応力は、JIS K6251の規定(所定伸びにおける引張応力を求めるための測定)に準拠して測定される。200%伸びにおける応力は、200%モジュラスとも称される。
【0022】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも称される。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも称される。
【0023】
[本発明の基礎となった知見]
ベルトは、径方向に並ぶ複数のベルトプライを含む。プロファイルや接地形状の変化を抑制するために、バンド、具体的にはフルバンドをベルトに組み合わせて補強層を構成する場合、フルバンドはベルトプライに積層される。
フルバンドは、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。これに対して、ベルトプライは並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは互いに独立する。カーカスの寸法成長に対する、ベルトプライの抵抗力は、フルバンドのそれに比べて小さい。
ベルトプライの形状は寸法成長に順応して変化する傾向にある。ベルトプライの形状変化はベルトコードの傾斜角度の変化を伴う。バンドコードとベルトコードとの間には歪みが生じやすい状況にある。
前述したように、走行状態にあるタイヤのカーカスは、内圧の作用や遠心力によって外向きに拡がろうとする。ベルトプライにフルバンドを積層した場合、フルバンドとベルトプライとの間の距離、言い換えれば、バンドコードとベルトコードとの間の距離は徐々に縮まることが予想される。特に、径方向に並ぶ2枚のベルトプライでフルバンドを挟んだ場合、フルバンドのバンドコードと、このフルバンドの内側に位置するベルトプライのベルトコードとの間の距離が、バンドコードと、このフルバンドの外側に位置するベルトプライのベルトコードとの間の距離と比べて顕著に縮まることが予想される。
高偏平タイヤでは、タイヤ内圧の作用はクラウン部分において強くショルダー部分において弱い。クラウン部分の寸法成長が促される。高偏平タイヤでは、クラウン部分においてバンドコードとベルトコードとの間の距離が縮まり、バンドコードとベルトコードとの間に生じる歪みが高まることが予想される。
バンドコードとベルトコードとの間の距離が不十分であれば、バンドコードとベルトコードとの接触が生じ、接触の程度によっては、フルバンドとベルトプライとの接着強度が低下したり、バンドコードやベルトコードの強度が低下したりする恐れがある。接着強度の低下や、コードの強度低下は、タイヤの耐久性に影響する。この場合、プロファイルや接地形状の変化を抑制し、耐偏摩耗性を向上させるためにバンドを採用したにもかかわらず、バンドがその機能を十分に発揮できない。
そこで、本発明者は、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制し、耐偏摩耗性を向上させるために、フルバンドとベルトプライとの間の距離に着目して鋭意検討を行い、以下に説明する本発明を完成するに至っている。
【0024】
[本発明の実施形態の概要]
本発明は、70%以上の偏平比の呼びを有する、重荷重用タイヤであって、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの径方向外側に位置する補強層と、前記補強層を覆い、路面と接するトレッドとを備え、前記トレッドが、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、複数の前記周方向溝が、軸方向最外側に位置するショルダー周方向溝を含み、前記補強層が、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、らせん状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備え、前記ベルトが、径方向に並ぶ、内側ベルトプライ及び外側ベルトプライを含み、前記内側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きが、前記外側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きと逆であり、前記バンドが、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間に位置する、フルバンドを備え、前記内側ベルトプライ、前記外側ベルトプライ、及び前記フルバンドの端が前記ショルダー周方向溝の軸方向外側に位置し、前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcよりも長い、重荷重用タイヤである。
【0025】
本発明の重荷重用タイヤは、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる。かかる効果が奏されるメカニズムは明らかにされているわけではないが、次のように推察される。
【0026】
内側ベルトプライと外側ベルトプライとの間に位置するフルバンドが、プロファイルや接地形状の変化を抑制する。フルバンドは、耐偏摩耗性の向上に貢献できる。
タイヤの赤道面において、フルバンドと、このフルバンドの内側に位置する内側ベルトプライとの間の距離が長いので、クラウン部分におけるバンドコードとベルトコードとの接触が抑制される。バンドコードとベルトコードとの接触による、接着強度の低下や、コードの強度低下が抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
このタイヤは、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる。
【0027】
好ましくは、前記タイヤの赤道面における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが0.6mm以上である。この場合、バンドコードとベルトコードとが十分な間隔をあけて配置される。バンドコードとベルトコードとの接触が抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0028】
好ましくは、前記フルバンドの端における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFsが2.5mm以下である。この場合、トレッド部の発熱が抑制される。このタイヤでは転がり抵抗の増加が抑制される。
【0029】
好ましくは、前記タイヤの赤道面における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが、前記フルバンドの端における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFsよりも長い。この場合、バンドコードとベルトコードとの接触が効果的に抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0030】
好ましくは、前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcの、前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcに対する比(UFc/SFc)が2.0以上である。この場合、バンドコードとベルトコードとの接触が効果的に抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0031】
好ましくは、前記フルバンドのコード密度が、22ends/50mm以上である。この場合、フルバンドが内側ベルトプライを効果的に拘束できる。寸法成長によるベルトコードの傾斜角度の変化が抑制される。バンドコードとベルトコードとの間に生じる歪みが低減される。バンドコードとベルトコードとの接触が抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0032】
好ましくは、前記フルバンドのコード密度に対する、前記内側ベルトプライのコード密度の比が0.65以上である。この場合、クラウン部分の寸法成長が効果的に抑制される。バンドコードとベルトコードとの間の間隔が適切に維持される。バンドコードとベルトコードとの接触が効果的に抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0033】
好ましくは、前記フルバンドの前記バンドコードと、前記内側ベルトプライの前記ベルトコードとがなす角度FUが、10度以上25度以下であり、前記フルバンドの前記バンドコードと、前記外側ベルトプライの前記ベルトコードとがなす角度FSが、10度以上25度以下である。この場合、バンドコードと内側ベルトプライのベルトコードとの間に生じる歪み、そしてバンドコードと外側ベルトプライのベルトコードとの間に生じる歪みが効果的に低減される。バンドコードとベルトコードとの接触が効果的に抑制される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0034】
好ましくは、前記内側ベルトプライの前記ベルトコードが前記タイヤの赤道面に対してなす角度UEが、前記外側ベルトプライの前記ベルトコードが前記タイヤの赤道面に対してなす角度SEよりも小さい。この場合、カーカスの寸法成長の影響を受けやすい、内側ベルトプライの、カーカスの寸法成長に対する抵抗力が高められる。バンドコードと内側ベルトプライのベルトコードとの間に生じる歪みが効果的に低減される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0035】
好ましくは、前記内側ベルトプライのコード密度が、前記外側ベルトプライのコード密度よりも大きい。この場合、カーカスの寸法成長の影響を受けやすい、内側ベルトプライの、カーカスの寸法成長に対する抵抗力が高められる。バンドコードと内側ベルトプライのベルトコードとの間に生じる歪みが効果的に低減される。このタイヤは、良好な耐久性を維持できる。
【0036】
好ましくは、複数の前記周方向溝が、前記トレッドに、軸方向に並ぶ複数の陸部を構成し、複数の前記陸部のうち、前記タイヤの赤道面上に位置する陸部、又は、前記赤道面に最も近い陸部が、センター陸部であり、前記センター陸部が、前記センター陸部を横断する横断サイプを有し、前記横断サイプが、サイプ本体と、前記サイプ本体の径方向内側に位置する管状部とを有し、前記管状部が前記サイプ本体の溝幅よりも広い溝幅を有する。この場合、クラウン部分における寸法成長を抑制しながら、タイヤは摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる。このタイヤは、耐久性低下の抑制と、耐偏摩耗性の向上とを達成しながら、良好なウェット性能を維持できる。
【0037】
このように本発明の重荷重用タイヤは、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる。このことが、図1に示した重荷重用タイヤを例にして以下に詳細に説明される。
【0038】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称する。)の一部を示す断面図である。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の偏平比の呼びは70%以上である。言い換えれば、このタイヤ2は、70%以上の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は高偏平タイヤである。
【0039】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1に示されたタイヤ2は、走行履歴のない新品のタイヤである。
図2は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す拡大断面図である。図2は、このタイヤ2のトレッド部Tを示す。
【0040】
両矢印ADで示される方向はタイヤ2の軸方向である。タイヤ2の軸方向とはタイヤ2の回転軸(図示されず)に平行な方向を意味する。両矢印RDで示される方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向はタイヤ2の周方向である。
径方向にのびる一点鎖線ELはタイヤ2の赤道面を表す。
赤道面から後述するトレッド面の端に向かう方向がタイヤ2の軸方向外側であり、トレッド面の端から赤道面に向かう方向がタイヤ2の軸方向内側である。
矢印RD1で示される方向がタイヤ2の径方向外側であり、矢印RD2で示される方向がタイヤ2の径方向内側である。
【0041】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、一対のクッション層14、インナーライナー16、一対のスチールフィラー18、及び補強層20を備える。
【0042】
トレッド4はカーカス12の径方向外側に位置する。トレッド4は補強層20を覆う。
トレッド4は路面と接する。トレッド4の外周面22のうち、路面と接する部分はトレッド面24とも呼ばれる。トレッド4は、路面と接するトレッド面24を有する。
図1において符号Eqはトレッド面24と赤道面との交点である。交点Eqはタイヤ2の径方向外側端であり、赤道とも呼ばれる。後述する溝が、赤道面上に位置する場合は、赤道面上に溝がないと仮定して得られる仮想トレッド面に基づいて赤道は特定される。
【0043】
符号TEで示される位置は、トレッド面24の端である。
本発明において、正規状態のタイヤに正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜とし、タイヤを平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端に対応するタイヤの外面上の位置がトレッド面の端として表される。
このタイヤ2では、トレッド面24の端TEは、外周面22の端22eと一致する。
【0044】
図1において両矢印WTで示される長さはトレッド面24の幅である。トレッド面24の幅WTは、トレッド面24の一方の端TEから他方の端TEまでの軸方向距離である。
【0045】
トレッド4は、ベース部26と、このベース部26の径方向外側に位置するキャップ部28とを備える。ベース部26は、低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部28は、耐摩耗性及びグリップ性能を考慮した架橋ゴムからなる。キャップ部28が、耐摩耗性及びグリップ性能だけでなく、低発熱性も考慮した架橋ゴムで構成されてもよい。
図1に示されるように、ベース部26は補強層20全体を覆う。キャップ部28はベース部26全体を覆う。
【0046】
このタイヤ2のトレッド4には溝30が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。トレッド4に構成されたトレッドパターンは、周方向に連続してのびる複数の周方向溝32を有する。
図1に示されたトレッド4は4本の周方向溝32を有する。これら周方向溝32は軸方向に並ぶ。
【0047】
4本の周方向溝32は、広い溝幅を有し、トレッド4が路面と接して変形しても、周方向溝32が有する一対の溝壁同士が互いに接触することがない溝であり、周方向主溝とも呼ばれる。排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、周方向溝32の溝幅はトレッド面24の幅WTの2%以上10%以下であるのが好ましい。
【0048】
本発明においては、トレッドに刻まれた複数の周方向溝のうち軸方向最外側に位置する周方向溝はショルダー周方向溝である。赤道面上に位置する周方向溝はセンター周方向溝である。赤道面上に周方向溝が設けられない場合は、赤道面に最も近い周方向溝がセンター周方向溝である。センター周方向溝とショルダー周方向溝との間に周方向溝が位置する場合は、このセンター周方向溝とショルダー周方向溝との間に位置する周方向溝はミドル周方向溝と呼ばれる。
【0049】
トレッド4に構成された4本の周方向溝32のうち、軸方向最外側に位置する周方向溝34がショルダー周方向溝である。赤道面に最も近い周方向溝36がセンター周方向溝である。4本の周方向溝32は、一対のセンター周方向溝36と、一対のショルダー周方向溝34とを含む。ショルダー周方向溝34はセンター周方向溝36の軸方向外側に位置する。
【0050】
トレッド4には複数の周方向溝32が刻まれ、軸方向に並ぶ複数の陸部38が構成される。言い換えれば、トレッド4は複数の周方向溝32を有する。複数の周方向溝32はトレッド4に複数の陸部38を構成する。
このタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向溝32が刻まれ、5本の陸部38が構成される。これら陸部38は軸方向に並ぶ。
【0051】
本発明においては、トレッドに構成される複数の陸部のうち軸方向最外側に位置する陸部はショルダー陸部である。赤道面上に位置する陸部はセンター陸部である。赤道面上に陸部が設けられない場合は、赤道面に最も近い陸部がセンター陸部である。センター陸部とショルダー陸部との間に陸部が位置する場合、このセンター陸部とショルダー陸部との間に陸部はミドル陸部と呼ばれる。
【0052】
前述したように、トレッド4には、5本の陸部38が構成される。5本の陸部38のうち、軸方向最外側に位置する陸部40がショルダー陸部である。赤道面上に位置する陸部42がセンター陸部である。センター陸部42とショルダー陸部40との間に位置する陸部44がミドル陸部である。
5本の陸部38は、センター陸部42と、一対のミドル陸部44と、一対のショルダー陸部40とを含む。ミドル陸部44はセンター陸部42の軸方向外側に位置する。ショルダー陸部40はミドル陸部44の軸方向外側に位置する。ショルダー陸部40はトレッド面24の端TEを含む。
【0053】
センター陸部42の軸方向幅はトレッド面24の幅WTの10%以上18%以下である。ミドル陸部44の軸方向幅はトレッド面24の幅WTの10%以上18%以下である。ショルダー陸部40の軸方向幅はトレッド面24の幅WTの15%以上25%以下である。陸部38の軸方向幅は、トレッド面24の一部をなす陸部38の頂面の軸方向幅により表される。
【0054】
図1において符号BTで示される位置はショルダー周方向溝34の溝底である。このタイヤ2のトレッド部Tのうち、ショルダー周方向溝34の溝底BTから軸方向外側部分がショルダー部分であり、左右のショルダー周方向溝34の溝底BTの間の部分がクラウン部分である。
【0055】
本発明において溝の溝底は、溝の断面において最も深い位置である。溝の溝口を構成する左右のエッジを結ぶ線分の法線に沿って、この線分から溝までの距離が計測される。この線分から溝までの距離が最大となる位置が、溝底である。溝底を含む底面が平面で構成される場合、底面を構成する平面の幅中心が溝底として用いられる。溝の溝深さは、左右のエッジを結ぶ線分の法線に沿って計測されるこの線分から溝底までの距離で表される。
【0056】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6はカーカス12の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は架橋ゴムからなる。
【0057】
それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8はチェーファー10の軸方向内側に位置する。ビード8はコア46とエイペックス48とを備える。
【0058】
コア46は周方向に延びる。コア46は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア46は略六角形の断面形状を有する。
【0059】
エイペックス48はコア46の径方向外側に位置する。エイペックス48は内側エイペックス48uと外側エイペックス48sとを備える。内側エイペックス48uはコア46の径方向外側に位置する。外側エイペックス48sは内側エイペックス48uの径方向外側に位置する。内側エイペックス48uは硬質な架橋ゴムからなる。外側エイペックス48sは内側エイペックス48uよりも軟質な架橋ゴムからなる。
【0060】
それぞれのチェーファー10はビード8の軸方向外側に位置する。チェーファー10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。図示されないが、チェーファー10はリムと接触する。チェーファー10は耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0061】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6、及び一対のチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード8の間を架け渡す。
【0062】
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ50を備える。このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ50からなる。カーカスプライ50は、それぞれのビード8で軸方向内側から外側に向かって折り返される。カーカスプライ50は、一対のビード8の間を架け渡すプライ本体50aと、プライ本体50aに連なりそれぞれのビード8で折り返される一対の折り返し部50bとを備える。
【0063】
図示されないが、カーカスプライ50は、並列した多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはカーカストッピングゴムで覆われる。カーカスコードはスチールコードである。カーカスコードは赤道面と交差する。このカーカス12はラジアル構造を有する。
【0064】
それぞれのクッション層14は、補強層20(具体的には、後述するベルト)の端20eにおいて、補強層20とカーカス12との間に位置する。クッション層14の内端14ueは、補強層20の端20eの軸方向内側に位置する。クッション層14の外端14seは、補強層20の端20eの軸方向外側に位置する。クッション層14は軟質な架橋ゴムからなる。
【0065】
インナーライナー16はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー16はインスレーション(図示されず)を介してカーカス12の内面に接合される。インナーライナー16はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー16は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー16はタイヤ2の内圧を保持する。
【0066】
それぞれのスチールフィラー18はビード部Bに位置する。スチールフィラー18は、カーカスプライ50に沿ってビード8の周りで軸方向内側から外側に向かって折り返される。図示されないが、スチールフィラー18は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードはスチールコードである。
【0067】
補強層20はカーカス12の径方向外側に位置する。補強層20はトレッド4の径方向内側に位置する。補強層20はトレッド4とカーカス12との間に位置する。
補強層20はベルト52とバンド54とを備える。
【0068】
図3は補強層20の構成を示す。両矢印CDで示される方向はタイヤ2の周方向である。図3の紙面に対して垂直な方向はタイヤ2の径方向である。紙面の表側が径方向外側であり、裏側が径方向内側である。
【0069】
ベルト52は、径方向に並ぶ、少なくとも2枚のベルトプライ56を備える。各ベルトプライ56は、両端56eが赤道面を挟んで相対するように配置される。各ベルトプライ56は赤道面と交差する。
このタイヤ2のベルト52は、4枚のベルトプライ56を備える。4枚のベルトプライ56は、第一ベルトプライ56A、第二ベルトプライ56B、第三ベルトプライ56C及び第四ベルトプライ56Dである。
このベルト52を構成するベルトプライ56の枚数は2枚であってもよく、3枚であってもよい。
【0070】
第一ベルトプライ56Aは、ベルト52を構成する4枚のベルトプライ56のうち径方向最内側に位置するベルトプライ56である。第二ベルトプライ56Bは第一ベルトプライ56Aの径方向外側に位置する。第三ベルトプライ56Cは第二ベルトプライ56Bの径方向外側に位置する。第四ベルトプライ56Dは第三ベルトプライ56Cの径方向外側に位置する。第四ベルトプライ56Dは、ベルト52を構成する4枚のベルトプライ56のうち径方向最外側に位置するベルトプライ56である。
【0071】
図1に示されるように、このタイヤ2の第一ベルトプライ56Aはカーカス12に積層される。第二ベルトプライ56Bは第一ベルトプライ56Aに積層される。第四ベルトプライ56Dは第三ベルトプライ56Cに積層される。このタイヤ2の第三ベルトプライ56Cの径方向内側には、後述するフルバンドが位置する。第三ベルトプライ56Cはフルバンドに積層される。
【0072】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ56Bが最も広い軸方向幅を有し、第四ベルトプライ56Dが最も狭い軸方向幅を有する。第一ベルトプライ56Aと第三ベルトプライ56Cとは同等の軸方向幅を有するか、第一ベルトプライ56Aの軸方向幅が第三ベルトプライ56Cの軸方向幅よりも僅かに広い。
【0073】
本発明においてベルトの端は、ベルトを構成する複数のベルトプライのうち、最も広い軸方向幅を有するベルトプライの端で表される。
前述したように、このタイヤ2のベルト52では、第二ベルトプライ56Bが最も広い軸方向幅を有する。このタイヤ2のベルト52の端52eは第二ベルトプライ56Bの端56Beで表される。
【0074】
例えば、図2に示されるように、第一ベルトプライ56Aの端56Aeはショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。第二ベルトプライ56Bの端56Beもショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。第三ベルトプライ56Cの端56Ceもショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。第四ベルトプライ56Dの端56Deもショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。図2に示されたトレッド部Tでは、ベルト52を構成する全てのベルトプライ56の端56eがショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。なお、このタイヤ2では、第四ベルトプライ56Dの端56Deがショルダー周方向溝34の軸方向内側に配置されてもよい。
【0075】
図1において両矢印W1で示される長さは第一ベルトプライ56Aの軸方向幅である。両矢印W2で示される長さは、第二ベルトプライ56Bの軸方向幅である。両矢印W3で示される長さは、第三ベルトプライ56Cの軸方向幅である。両矢印W4で示される長さは、第四ベルトプライ56Dの軸方向幅である。各ベルトプライ56の軸方向幅は、ベルトプライ56の一方の端56eから他方の端56eまでの軸方向距離で表される。
【0076】
このタイヤ2では、トレッド部Tの剛性確保の観点から、トレッド面24の幅WTに対する第一ベルトプライ56Aの軸方向幅W1の比(W1/WT)は0.80以上0.90以下であるのが好ましい。トレッド面24の幅WTに対する第二ベルトプライ56Bの軸方向幅W2の比(W2/WT)は0.85以上0.95以下であるのが好ましい。トレッド面24の幅WTに対する第三ベルトプライ56Cの軸方向幅W3の比(W3/WT)は0.80以上0.90以下であるのが好ましい。第四ベルトプライ56Dの軸方向幅W4はタイヤ2の仕様に応じて適宜設定される。
【0077】
図3に示されるように、ベルト52を構成する各ベルトプライ56は並列した多数のベルトコード58を含む。図3では、説明の便宜のため、ベルトコード58は実線で表されるが、ベルトコード58はベルトトッピングゴム60で覆われる。
このタイヤ2のベルトコード58はスチールコードである。各ベルトプライ56のコード密度は、15ends/50mm以上30ends/50mm以下である。
【0078】
それぞれのベルトプライ56においてベルトコード58は、周方向に対して傾斜する。
第一ベルトプライ56Aに含まれるベルトコード58の傾斜の向き(以下、第一ベルトコード58Aの傾斜方向)は、第二ベルトプライ56Bに含まれるベルトコード58の傾斜の向き(以下、第二ベルトコード58Bの傾斜方向)と同じである。
第二ベルトコード58Bの傾斜方向は、第三ベルトプライ56Cに含まれるベルトコード58の傾斜の向き(以下、第三ベルトコード58Cの傾斜方向)と逆である。
第三ベルトコード58Cの傾斜方向は、第四ベルトプライ56Dに含まれるベルトコード58の傾斜の向き(以下、第四ベルトコード58Dの傾斜方向)と同じである。
第一ベルトコード58Aの傾斜方向が第二ベルトコード58Bの傾斜方向と逆であってもよい。第三ベルトコード58Cの傾斜方向が第四ベルトコード58Dの傾斜方向と逆であってもよい。
【0079】
図3において、角度θ1は、第一ベルトプライ56Aのベルトコード58が赤道面に対してなす角度(以下、第一ベルトコード58Aの傾斜角度θ1)である。角度θ2は、第二ベルトプライ56Bのベルトコード58が赤道面に対してなす角度(以下、第二ベルトコード58Bの傾斜角度θ2)である。角度θ3は、第三ベルトプライ56Cのベルトコード58が赤道面に対してなす角度(以下、第三ベルトコード58Cの傾斜角度θ3)である。角度θ4は、第四ベルトプライ56Dのベルトコード58が赤道面に対してなす角度(以下、第四ベルトコード58Dの傾斜角度θ4)である。
【0080】
第一ベルトコード58Aの傾斜角度θ1、第二ベルトコード58Bの傾斜角度θ2、第三ベルトコード58Cの傾斜角度θ3、及び第四ベルトコード58Dの傾斜角度θ4は、10度以上60度以下であるのが好ましい。
トレッド部Tの動きが効果的に拘束され、形状変化の小さい、安定した形状の接地面が得られる観点から、第一ベルトコード58Aの傾斜角度θ1は40度以上60度以下であるのがより好ましい。第二ベルトコード58Bの傾斜角度θ2は15度以上30度以下であるのがより好ましく、15度以上20度以下であるのがさらに好ましい。第三ベルトコード58Cの傾斜角度θ3は15度以上30度以下であるのがより好ましく、15度以上20度以下であるのがさらに好ましい。第四ベルトコード58Dの傾斜角度θ4は、15度以上50度以下であるのがより好ましい。
【0081】
図2に示されるように、第二ベルトプライ56Bの端56Beと、第三ベルトプライ56Cの端56Ceとはそれぞれ、ゴム層62で覆われる。ゴム層62で覆われた第二ベルトプライ56Bの端56Beと第三ベルトプライ56Cの端56Ceとの間には、さらに3枚のゴム層62が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ56Bの端56Beと第三ベルトプライ56Cの端56Ceとの間に、計5枚のゴム層62からなるエッジ部材64が構成される。エッジ部材64は架橋ゴムからなる。エッジ部材64は、第二ベルトプライ56Bの端56Beと第三ベルトプライ56Cの端56Ceとの間隔維持に貢献する。このタイヤ2では、走行による、第二ベルトプライ56Bの端56Beと第三ベルトプライ56Cの端56Ceとの位置関係の変化が抑制される。エッジ部材64は、補強層20の一部である。このタイヤ2の補強層20は、ベルト52及びバンド54に加え、一対のエッジ部材64を備える。
【0082】
バンド54はフルバンド66と一対のエッジバンド68とを備える。このバンド54が、一対のエッジバンド68を設けることなく、フルバンド66のみで構成されてもよい。
【0083】
フルバンド66は、両端66eが赤道面を挟んで相対するように配置される。フルバンド66の端66eはショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。フルバンド66の端66eはベルト52の端52eの軸方向内側に位置する。
図1において両矢印WFで示される長さはフルバンド66の軸方向幅である。フルバンド66の軸方向幅WFは、フルバンド66の一方の端66eから他方の端66eまでの軸方向距離である。
このタイヤ2では、トレッド部Tの剛性確保の観点から、トレッド面24の幅WTに対するフルバンド66の軸方向幅WFの比(WF/WT)は0.70以上0.80以下であるのが好ましい。
【0084】
一対のエッジバンド68は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。それぞれのエッジバンド68は、トレッド4とフルバンド66との間に位置する。エッジバンド68は、ショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。
エッジバンド68は、フルバンド66の端66eの径方向外側に位置する。エッジバンド68の内端68ueはフルバンド66の端66eの軸方向内側に位置する。エッジバンド68の外端68seはフルバンド66の端66eの軸方向外側に位置する。エッジバンド68は径方向においてフルバンド66の端66eと重複する。
エッジバンド68の外端68seは、ベルト52の端52eの軸方向内側に位置する。前述したように、フルバンド66の端66eもベルト52の端52eの軸方向内側に位置する。このタイヤ2のベルト52の端52eは補強層20の端20eでもある。
【0085】
図3に示されるように、バンド54を構成するフルバンド66及びエッジバンド68はそれぞれ、らせん状に巻かれたバンドコード70を含む。図3では、説明の便宜のためバンドコード70は実線で表されるが、バンドコード70はバンドトッピングゴム72で覆われる。
【0086】
このタイヤ2のバンドコード70はスチールコードである。バンドコード70として有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)が用いられてもよい。この場合、有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。フルバンド66のバンドコード70Fと、エッジバンド68のバンドコード70Eとが同じコードであってもよく、異なるコードであってもよい。タイヤ2の仕様に応じて、フルバンド66及びエッジバンド68に用いられるバンドコード70が決められる。
【0087】
前述したように、フルバンド66はらせん状に巻かれたバンドコード70Fを含む。フルバンド66はジョイントレス構造を有する。フルバンド66において、バンドコード70Fが周方向に対してなす角度は、好ましくは5度以下、より好ましくは2度以下である。バンドコード70Fは実質的に周方向にのびる。
【0088】
前述したように、エッジバンド68は螺旋状に巻かれたバンドコード70Eを含む。エッジバンド68はジョイントレス構造を有する。エッジバンド68において、バンドコード70Eが周方向に対してなす角度は、好ましくは5度以下、より好ましくは2度以下である。エッジバンド68のバンドコード70Eは実質的に周方向にのびる。
【0089】
エッジバンド68は、第四ベルトプライ56Dの軸方向外側に位置する。このタイヤ2では、エッジバンド68の内端64ueは第四ベルトプライ56Dの端56Deに付き合わされる。エッジバンド68は第三ベルトプライ56Cの径方向外側に位置する。エッジバンド68と第三ベルトプライ56Cとの間には、後述する幅狭緩衝層が位置する。
【0090】
このタイヤ2のフルバンド66は第二ベルトプライ56Bと第三ベルトプライ56Cとの間に位置する。第二ベルトプライ56Bはフルバンド66の径方向内側に位置し、第三ベルトプライ56Cはフルバンド66の径方向外側に位置する。前述したように、第二ベルトプライ56Bに含まれるベルトコード58の傾斜の向きは、第三ベルトプライ56Cに含まれるベルトコード58の傾斜の向きと逆である。
フルバンド66は、ベルトコード58の傾斜の向きが互いに逆である2枚のベルトプライ56の間に位置する。
【0091】
本発明においては、ベルトコードの傾斜の向きが互いに逆である2枚のベルトプライの間にフルバンドが位置する場合、このフルバンドの径方向内側に位置するベルトプライが内側ベルトプライと呼ばれ、このフルバンドの径方向内側に位置するベルトプライが外側ベルトプライと呼ばれる。
【0092】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ56Bと第三ベルトプライ56Cとの間にフルバンド66が位置し、第二ベルトプライ56Bに含まれるベルトコード58の傾斜の向きは、第三ベルトプライ56Cに含まれるベルトコード58の傾斜の向きと逆である。第二ベルトプライ56Bは内側ベルトプライ74であり、第三ベルトプライ56Cは外側ベルトプライ76である。
なお、第一ベルトプライ56Aと第二ベルトプライ56Bとの間にフルバンド66が位置し、第一ベルトプライ56Aに含まれるベルトコード58の傾斜の向きが、第二ベルトプライ56Bに含まれるベルトコード58の傾斜の向きと逆であれば、第一ベルトプライ56Aが内側ベルトプライであり、第二ベルトプライ56Bが外側ベルトプライである。第三ベルトプライ56Cと第四ベルトプライ56Dとの間にフルバンド66が位置し、第三ベルトプライ56Cに含まれるベルトコード58の傾斜の向きが、第四ベルトプライ56Dに含まれるベルトコード58の傾斜の向きと逆であれば、第三ベルトプライ56Cが内側ベルトプライであり、第四ベルトプライ56Dが外側ベルトプライである。
【0093】
このタイヤ2のベルト52は、径方向に並ぶ、内側ベルトプライ74及び外側ベルトプライ76を含み、内側ベルトプライ74に含まれるベルトコード58の傾斜の向きは、外側ベルトプライ76に含まれるベルトコード58の傾斜の向きと逆である。バンド54はフルバンド66を備える。フルバンド66は、内側ベルトプライ74と外側ベルトプライ76との間に位置する。内側ベルトプライ74の端74e、外側ベルトプライ76の端76e、そしてフルバンド66の端66eは、ショルダー周方向溝34の軸方向外側に位置する。
【0094】
図2に示されるように、内側ベルトプライ74の端74eはフルバンド66の端66eの軸方向外側に位置する。外側ベルトプライ76の端76eもフルバンド66の端66eの軸方向外側に位置する。内側ベルトプライ74及び外側ベルトプライ76は、フルバンド66の軸方向幅WFよりも広い軸方向幅を有する。
【0095】
前述したように、フルバンド66のバンドコード70Fは実質的に周方向にのびる。フルバンド66は、タイヤ内圧や遠心力の作用による寸法成長を抑制する。フルバンド66は、プロファイルや接地形状の変化を抑制する。フルバンド66は、タイヤ2の耐偏摩耗性の向上に貢献できる。
【0096】
径方向においてフルバンド66の両側には、内側ベルトプライ74と外側ベルトプライ76とが位置する。内側ベルトプライ74及び外側ベルトプライ76はフルバンド66に作用する力を抑制する。内側ベルトプライ74に含まれるベルトコード58の傾斜の向きと、外側ベルトプライ76に含まれるベルトコード58の傾斜の向きとが互いに逆であるので、フルバンド66に作用する力が効果的に抑制される。フルバンド66のバンドコード70Fに生じる張力の変動が小さく抑制されるので、フルバンド66はその機能を安定に発揮できる。
【0097】
このタイヤ2のフルバンド66は寸法成長の抑制に効果的に貢献できる。このタイヤ2は、プロファイルや接地形状の変化を抑制することができる。このタイヤ2では耐偏摩耗性が向上する。
【0098】
前述したように、内側ベルトプライ74は、ベルト52を構成するベルトプライ56の中で最も広い軸方向幅を有する第二ベルトプライ56Bである。耐偏摩耗性の向上の観点から、ベルト52が、径方向に並ぶ複数のベルトプライ56で構成される場合は、ベルト52を構成する複数のベルトプライ56のうち、最も広い軸方向幅を有するベルトプライ56が内側ベルトプライ74であるのが好ましい。
【0099】
前述したように、走行状態にあるタイヤのカーカスは、内圧の作用や遠心力によって外向きに拡がろうとする。ベルトプライにフルバンドを積層した場合、フルバンドとベルトプライとの間の距離、言い換えれば、バンドコードとベルトコードとの間の距離は徐々に縮まることが予想される。特に、径方向に並ぶ2枚のベルトプライでフルバンドを挟んだ場合、フルバンドのバンドコードと、このフルバンドの内側に位置するベルトプライのベルトコードとの間の距離が、バンドコードと、このフルバンドの外側に位置するベルトプライのベルトコードとの間の距離と比べて顕著に縮まることが予想される。
高偏平タイヤでは、タイヤ内圧の作用はクラウン部分において強くショルダー部分において弱い。クラウン部分の寸法成長が促される。高偏平タイヤでは、クラウン部分においてバンドコードとベルトコードとの間の距離が縮まり、バンドコードとベルトコードとの間に生じる歪みが高まることが予想される。
バンドコードとベルトコードとの間の距離が不十分であれば、バンドコードとベルトコードとの接触が生じ、接触の程度によっては、フルバンドとベルトプライとの接着強度が低下したり、バンドコードやベルトコードの強度が低下したりする恐れがある。接着強度の低下や、コードの強度低下は、タイヤの耐久性に影響する。
【0100】
図2において、両矢印UFcで示される長さは、赤道面におけるフルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離である。距離UFcは、フルバンド66のバンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58との間の距離で表される。
両矢印SFcで示される長さは、赤道面におけるフルバンド66と外側ベルトプライ76との間の距離である。距離SFcは、フルバンド66のバンドコード70Fと外側ベルトプライ76のベルトコード58との間の距離で表される。
両矢印UFsで示される長さは、フルバンド66の端66eにおけるフルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離である。距離UFsは、フルバンド66の端66eに最も近いバンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58との間の距離で表される。
両矢印SFsで示される長さは、フルバンド66の端66eにおけるフルバンド66と外側ベルトプライ76との間の距離である。距離SFcは、フルバンド66の端66eに最も近いバンドコード70Fと外側ベルトプライ76のベルトコード58との間の距離で表される。
距離UFc、距離SFc、距離UFs、及び距離SFsはいずれも、コード間距離である。これらは、バンドコード70Fとベルトコード58との間に位置するゴム成分の厚さ
に相当する。距離SFsは距離SFcとは同程度の距離である。言い換えれば、距離SFsの距離SFcに対する比(SFs/SFc)は0.95以上1.05以下である。
【0101】
このタイヤ2では、赤道面において、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFcは、フルバンド66と外側ベルトプライ76との間の距離SFcよりも長い。
前述したように、高偏平タイヤのクラウン部分では、寸法成長が促される。そのクラウン部分において、フルバンド66と、このフルバンド66の内側に位置する内側ベルトプライ74との間の距離が長い。そのため、クラウン部分におけるバンドコード70Fとベルトコード58との接触が抑制される。バンドコード70Fとベルトコード58との接触による、フルバンド66と内側ベルトプライ74との接着強度の低下や、バンドコード70F又はベルトコード58の強度低下が抑制される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。
このタイヤ2は、バンド54を設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる。
【0102】
このタイヤ2では、その赤道面における、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFcが0.6mm以上に設定される。これにより、このタイヤ2は、クラウン部分において、バンドコード70Fとベルトコード58とが十分な間隔をあけて配置される。バンドコード70Fとベルトコード58との間に生じる歪みが低減される。このタイヤ2は、バンドコード70Fとベルトコード58との接触を抑制できる。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、距離UFcは0.6mm以上であるのが好ましく、0.8mm以上であるのがより好ましい。バンドコード70Fとベルトコード58との間に位置するゴム成分の量が多いと、繰り返し変形による発熱が促され、結果として、タイヤ2の転がり抵抗が増加するという懸念がある。転がり抵抗の増加を抑制する観点から、距離UFcは3.0mm以下であるのが好ましい。
【0103】
フルバンド66の端66eにおける、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFsは2.5mm以下であるのが好ましい。これにより、このタイヤ2は転がり抵抗の増加を抑制できる。この観点から、距離UFsは2.0mm以下であるのがより好ましい。バンドコード70Fとベルトコード58との接触を抑制するとの観点から、距離UFsは0.5mm以上であるのが好ましく、0.8mm以上であるのがより好ましい。
【0104】
前述したように、このタイヤ2は高偏平タイヤである。このタイヤ2は、フルバンド66のバンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58との間に生じる歪みが、クラウン部分において集中しやすい状況にある。
しかしこのタイヤ2では、タイヤ2の赤道面における、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFcが、フルバンド66の端66eにおける、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFsよりも長くなるように設定される。このタイヤ2は、クラウン部分においてフルバンド66のバンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58との間に生じる歪みの低減を図ることができる。このタイヤ2は、バンドコード70Fとベルトコード58との接触を抑制できる。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、タイヤ2の赤道面における、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFcは、フルバンド66の端66eにおける、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFsよりも長いのが好ましい。具体的には、距離UFcの距離UFsに対する比(UFc/UFs)は、1.05以上であるのが好ましく、1.10以上であるのがより好ましい。バンドコード70Fとベルトコード58との間に位置するゴム成分の発熱を抑制し、低い転がり抵抗を維持する観点から、比(UFc/UFs)は、1.50以下であるのが好ましい。
【0105】
タイヤ2の赤道面において、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離UFcの、フルバンド66と外側ベルトプライ76との間の距離SFcに対する比(UFc/SFc)は2.0以上であるのが好ましい。これにより、バンドコード70Fとベルトコード58との接触が効果的に抑制される。このタイヤ2は良好な耐久性を有する。この観点から、比(UFc/SFc)は2.5以上であるのがより好ましい。バンドコード70Fとベルトコード58との間に位置するゴム成分の発熱を抑制し、低い転がり抵抗を維持する観点から、比(UFc/SFc)は、3.0以下であるのが好ましい。
【0106】
このタイヤ2では、バンドコード70とベルトコード58との間の距離がコントロールされる。バンドトッピング72及びベルトトッピングゴム60の厚さの調整により、バンドコード70とベルトコード58との間の距離がコントロールされるが、このタイヤ2のフルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離のように、相対的に長い距離を設定する場合には、距離を精密にコントロールできる観点から、好ましくは、架橋ゴムからなる緩衝層78を用いて、バンドコード70とベルトコード58との間の距離がコントロールされる。言い換えれば、このタイヤ2の補強層20は、架橋ゴムからなる緩衝層78を備えるのが好ましい。
【0107】
このタイヤ2の緩衝層78は、幅広緩衝層80と、一対の幅狭緩衝層82とを備える。
幅広緩衝層80は、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間に位置する。幅広緩衝層80の端80eは、軸方向においてフルバンド66の端66eと内側ベルトプライ74の端74eとの間に位置する。フルバンド66はその全体が幅広緩衝層80に積層される。幅広緩衝層80は、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間の距離、具体的には、前述のUFc及び距離UFsのコントロールに用いられる。
それぞれの幅狭緩衝層82は、エッジバンド68と外側ベルトプライ76との間に位置する。幅狭緩衝層82の内端82ueは、エッジバンド68の内端68ueの軸方向内側に位置する。幅狭緩衝層82の外端82seは、エッジバンド68の外端68seの軸方向外側に位置する。エッジバンド68はその全体が幅狭緩衝層82に積層される。幅狭緩衝層82は、エッジバンド68と外側ベルトプライ76との間の距離のコントロールに用いられる。
【0108】
前述したように緩衝層78は架橋ゴムからなる。幅広緩衝層80及び幅狭緩衝層82のそれぞれが、バンドコード70とベルトコード58との間に生じる歪みの低減と発熱の抑制とに貢献できる観点から、緩衝層78の200%伸びにおける応力Mと、緩衝層78の70℃での損失正接LTとがコントロールされる。
具体的には、緩衝層78の200%伸びにおける応力Mの、70℃における損失正接LTに対する比(M/LT)は75以上であるのが好ましい。これにより、歪みが発生しにくく、発熱しにくい緩衝層78が構成される。この緩衝層78は、耐久性の低下と、転がり抵抗の増加とを抑制することに貢献できる。この観点から、比(M/LT)は80以上であるのがより好ましく、100以上であるのがさらに好ましい。なお、この比(M/T)は大きいほど好ましいので、好ましい上限は設定されない。なお、比(M/T)は、200%伸びにおける応力Mの単位をMPa(メガパスカル)として算出される。
【0109】
このタイヤ2では、適度な剛性を有する緩衝層78が構成されるとの観点から、緩衝層78の200%伸びにおける応力Mは11MPa以上であるのが好ましい。緩衝層78とその周囲に位置する他のゴム成分との剛性差を適切に維持し、剛性差に起因した接着強度の低下を抑制できる観点から、200%伸びにおける応力Mは15MPa以下であるのが好ましい。
【0110】
フルバンド66のコード密度は22ends/50mm以上であるのが好ましい。これにより、フルバンド66による拘束力が高められる。このタイヤ2のフルバンド66は、内側ベルトプライ74を効果的に拘束できる。クラウン部分における内側ベルトプライ74の動きが抑制される。このクラウン部分におけるバンドコード70Fとベルトコード58との間に生じる歪みが低減される。バンドコード70Fとベルトコード58との接触が抑制される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、フルバンド66のコード密度は24ends/50mm以上であるのがより好ましい。フルバンド66によるトレッド部Tの剛性への影響が効果的に抑制されるとの観点から、フルバンド66のコード密度は35ends/50mm以下であるのが好ましい。なお、エッジバンド68におけるバンドコード70Eの密度は、20エンズ/50mm以上35エンズ/50mm以下であるのが好ましい。
【0111】
本発明において、フルバンド66のコード密度は、タイヤ2の子午線断面に含まれるフルバンド66の断面において、フルバンド66の50mm幅あたりに含まれるバンドコード70Fの断面数により表される。エッジバンド68のコード密度も、フルバンド66のコード密度と同様にして得られる。
【0112】
フルバンド66のコード密度に対する、内側ベルトプライ74のコード密度の比は0.65以上であるのが好ましい。これにより、クラウン部分における寸法成長が効果的に抑制される。バンドコード70Fとベルトコード58との接触が効果的に抑制される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、フルバンド66のコード密度に対する、内側ベルトプライ74のコード密度の比は0.75以上であるのがより好ましい。内側ベルトプライ74によるトレッド部Tの剛性への影響が効果的に抑制されるとの観点から、この比は0.95以下であるのが好ましい。
【0113】
内側ベルトプライ74のコード密度は、外側ベルトプライ76のコード密度よりも大きいのが好ましい。これにより、カーカス12の寸法成長の影響を受けやすい、内側ベルトプライ74の、カーカス12の寸法成長に対する抵抗力が高められる。バンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58との間に生じる歪みが効果的に低減される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、内側ベルトプライ74のコード密度の、外側ベルトプライ76のコード密度に対する比は、1.05以上であるのがより好ましい。内側ベルトプライ74によるトレッド部Tの剛性への影響が効果的に抑制されるとの観点から、この比は1.50以下であるのがより好ましい。
【0114】
図3において、符号FUで示される角度は、フルバンド66のバンドコード70Fと、内側ベルトプライ74のベルトコード58とがなす角度である。符号FSで示される角度は、フルバンド66のバンドコード70Fと、外側ベルトプライ76のベルトコード58とがなす角度である。
【0115】
フルバンド66のバンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58とがなす角度FUは10度以上25度以下であるのが好ましい。これにより、バンドコード70Fとベルトコード58との間に生じる歪みが効果的に低減される。バンドコード70Fとベルトコード58との接触が効果的に抑制される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、角度FUは15度以上20度以下であるのがより好ましい。
【0116】
フルバンド66のバンドコード70Fと外側ベルトプライ76のベルトコード58とがなす角度FSは10度以上25度以下であるのが好ましい。これにより、バンドコード70Fとベルトコード58との間に生じる歪みが効果的に低減される。バンドコード70Fとベルトコード58との接触が効果的に抑制される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、角度FSは15度以上20度以下であるのがより好ましい。
【0117】
良好な耐久性の維持の観点から、角度FUは10度以上25度以下であり、角度FSが10度以上25度以下であるのがより好ましい。
【0118】
図3において符号UEで示される角度は、内側ベルトプライ74のベルトコード58が赤道面に対してなす角度である。前述したように、このタイヤ2の第二ベルトプライ56Bが内側ベルトプライ74である。この角度UEは、第二ベルトプライ56Bのベルトコードの傾斜角度θ2に一致する。
符号SEで示される角度は、外側ベルトプライ76のベルトコード58が赤道面に対してなす角度である。前述したように、このタイヤ2の第三ベルトプライ56Cが外側ベルトプライ76である。この角度SEは、第三ベルトプライ56Cのベルトコードの傾斜角度θ3に一致する。
【0119】
内側ベルトプライ74のベルトコード58が赤道面に対してなす角度UEは、外側ベルトプライ76のベルトコード58が赤道面に対してなす角度SEよりも小さいのが好ましい。これにより、カーカス12の寸法成長の影響を受けやすい、内側ベルトプライ74の、カーカス12の寸法成長に対する抵抗力が高められる。バンドコード70Fと内側ベルトプライ74のベルトコード58との間に生じる歪みが効果的に低減される。このタイヤ2は、良好な耐久性を維持できる。この観点から、角度SEと角度UEとの差(SE-UE)は1度以上15度以下であるのがより好ましい。
【0120】
このタイヤ2では、フルバンド66と内側ベルトプライ74との間が相対的に長い距離で設定される。これは、トレッド部Tのボリュームを増加させる。ボリュームの増加はトレッド部Tの発熱量を増加させる。転がり抵抗の増加を抑制するために、薄いトレッド4が採用されてもよい。この場合、トレッド4に設けられる周方向溝32の溝深さは14mm以下であるのが好ましい。タイヤ2の仕様により、薄いトレッド4を採用できない場合は、70℃での損失正接が0.06以下の架橋ゴムでキャップ部28が構成されるのが好ましい。
【0121】
図4はトレッド4の一部を示す展開図である。図4はトレッド面24の一部、具体的には、センター陸部42の陸面42sの一部を示す。
【0122】
このタイヤ2は、センター陸部42に、このセンター陸部42を横断する横断サイプ84を設けることができる。この横断サイプ84は、センター陸部42以外の陸部38(例えば、ミドル陸部44)にも設けられてもよい。
このタイヤ2の横断サイプ84は軸方向にのびる。この横断サイプ84が軸方向に対して傾斜するようにのびてもよい。
横断サイプ84は、一方のセンター周方向溝36と他方のセンター周方向溝36との間を繋ぐ。言い換えれば、横断サイプ84は2本の周方向溝32の間を繋ぐ。
図示されないが、センター陸部42は複数の横断サイプ84を有する。複数の横断サイプ84は周方向に並ぶ。複数の横断サイプ84は所定の間隔をあけて配置される。
【0123】
図5は横断サイプ84の断面を示す。図5に示される横断サイプ84の断面は、横断サイプ84の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、横断サイプ84の断面である。
【0124】
横断サイプ84は、サイプ本体86と管状部88とを有する。サイプ本体86は、横断サイプ84の溝口84Mを含む。管状部88は、横断サイプ84の溝底84Tを含む。
【0125】
図4に示されるように、サイプ本体86は横断サイプ84の長さ方向にストレートにのびる。図5に示されるように、サイプ本体86は横断サイプ84の深さ方向にストレートにのびる。図5において両矢印Wpで示される長さは、サイプ本体86の溝幅である。サイプ本体86はその深さ方向に一様な溝幅Wpを有する。
管状部88は、サイプ本体86の径方向内側に位置する。管状部88は、横断サイプ84の長さ方向にのびる。
【0126】
図5において実線LFはサイプ本体86と管状部88との境界線である。両矢印WFで示される長さは、この境界線LFに沿って計測される横断サイプ84の溝幅である。境界線LFは、溝幅WFが1.0mmとなる位置に設定される。
境界線LFの外側部分、すなわちサイプ本体86の溝幅Wpは1.0mm未満である。この境界線LFの内側部分、すなわち管状部88の溝幅は1.0mm以上である。管状部88の溝幅はサイプ本体86の溝幅よりも広い。
【0127】
管状部88は、境界線LFの位置から内向きにのびる。図5において両矢印WXで示される長さは、管状部88の最大溝幅である。図5において符号PXで示される位置は、管状部88が最大溝幅WXを示す位置(以下、最大溝幅位置PX)である。管状部74は、最大溝幅WXを示す部分から外向きに先細りである。管状部88は、最大溝幅WXを示す部分から内向きに先細りである。
【0128】
管状部88の断面形状は、円であってもよく、楕円であってもよい。この管状部88が、最大溝幅WXを示す部分が直線で表され、直線部分のサイプ本体86側と溝底84T側とが円弧で表された形状、つまり、トラック様の断面形状を有していてもよい。
【0129】
ウェット性能の向上を図るためにタイヤのトレッドに刻まれる溝として、横溝がある。横溝は、陸部を横断するように陸部に刻まれる溝である。横溝は通常、広い溝幅を有し、タイヤが路面と接地しても一対の壁面が互いに接触することがない。横溝はウェット性能の向上に貢献できるが、陸部の剛性を低下させる。前述したように、高偏平タイヤでは、クラウン部分の寸法成長が促される。ウェット性能の向上のために、例えば、センター陸部42に横溝を設けた場合、寸法成長を抑制するためにフルバンド66を設けているにもかかわらず、タイヤ2が寸法成長を十分に抑制できない恐れがある。
【0130】
しかしセンター陸部42に横断サイプ84を設けた場合、サイプ本体86がエッジ成分として機能できる。サイプ本体88はウェット性能の向上に貢献できる。前述したように、サイプ本体86の溝幅Wpは1.0mm未満である。センター陸部42に荷重が作用し、センター陸部42が変形すると、横断サイプ84の一対の壁面84Wがサイプ本体86において接触し、互いに支え合う。これにより、センター陸部42の変形が抑制される。このことは、耐偏摩耗性の向上に貢献できる。
【0131】
センター陸部42に横溝でなく横断サイプ84を設けることで、タイヤ2は、センター陸部42の剛性低下を抑制しながら、ウェット性能の向上を図ることができる。センター陸部42の剛性低下が抑制されるので、フルバンド66はその機能を十分に発揮できる。
このタイヤ2は、バンド54を設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる。
【0132】
タイヤ2のトレッド4は摩耗する。これにより、トレッド4の変形代が小さくなるので、見かけ上、トレッド4の剛性が高まる。剛性の高まりはウェット性能を低下させる。トレッド4が摩耗することで、タイヤ2のウェット性能が低下するという懸念もある。
【0133】
しかしこのタイヤ2の横断サイプ84はサイプ本体86の径方向内側に管状部88を有する。管状部88は、サイプ本体86が消失すると露出する。管状部88は広い溝幅を有する。サイプ本体86が消失した後、この管状部88がウェット性能の維持に貢献できる。このタイヤ2では、摩耗しタイヤ交換が必要な状態になるまで、良好なウェット性能が維持される。
このタイヤ2は、クラウン部分における寸法成長を抑制しながら、摩耗によるウェット性能の低下を抑制できる。このタイヤ2は、耐久性低下の抑制と、耐偏摩耗性の向上とを達成しながら、良好なウェット性能を維持できる。この観点から、センター陸部42が、このセンター陸部42を横断する横断サイプ84を有し、この横断サイプ84が、サイプ本体86と、サイプ本体86の径方向内側に位置する管状部88とを有し、この管状部88がサイプ本体86の溝幅よりも広い溝幅を有するのが好ましい。
【0134】
管状部88の最大溝幅WXは、サイプ本体86の溝幅Wpの4倍以上であるのが好ましく、5倍以上であるのがより好ましい。これにより、管状部88がウェット性能の維持に貢献できる。この管状部88の最大溝幅WXは、サイプ本体86の溝幅Wpの13倍以下であるのが好ましく、12倍以下であるのがより好ましい。これにより、管状部88の大きさが適切に維持される。センター陸部42の剛性低下が抑制される。
【0135】
前述したように、管状部88は、横断サイプ84の溝底84Tを含む、底面を備える。図5に示された断面において、管状部88の底面の輪郭は、溝底84Tを通る円弧で表される。図5の矢印Rbは、この円弧の半径である。
【0136】
管状部88の底面の輪郭を表す円弧の半径Rbは、1.5mm以上3.5mm以下であるのが好ましい。
半径Rbが1.5mm以上に設定されることにより、溝底84Tにおけるクラックの発生が効果的に抑制される。この観点から、半径Rbは2.0mm以上であるのがより好ましい。
半径Rbが3.5mm以下に設定されることにより、横断サイプ84に管状部88を設けたことによるによるセンター陸部42の剛性低下が抑制される。センター陸部42の剛性が適切に維持される。このタイヤ2は耐偏摩耗性の向上を図ることができる。この観点から、半径Rbは3.0mm以下であるのがより好ましい。
【0137】
図5において両矢印DAで示される長さは、横断サイプ84の溝深さである。両矢印DCで示される長さは、サイプ本体86の溝深さである。
このタイヤ2では、横断サイプ84の溝深さDAはセンター周方向溝36の溝深さと同じある、又は、横断サイプ84はセンター周方向溝36よりも浅い。具体的には、横断サイプ84の溝深さDAは、センター周方向溝36の溝深さの0.80倍以上1.00倍以下である。
【0138】
横断サイプ84のサイプ本体86の溝深さDCの、横断サイプ84の溝深さDAに対する比(DC/DA)は0.35以上0.80以下であるのが好ましい。
比(DC/DA)が0.35以上に設定されることにより、このタイヤ2は管状部88を適切なタイミングで露出させることができる。このタイヤ2はセンター陸部42の剛性を維持しながら、トレッド4の摩耗を進行させることができる。このタイヤ2は、良好な耐偏摩耗性を維持できる。この観点から、比(DC/DA)は0.40以上であるのがより好ましい。
比(DC/DA)が0.80以下に設定されることにより、管状部88がサイプ本体86が消失した後のウェット性能の維持に貢献できる。この観点から、比(DC/DA)は0.75以下であるのがより好ましい。
【0139】
図6は横断サイプ84の変形例を示す。この横断サイプ84では、サイプ本体86の構成が、図5に示された横断サイプ84のそれとは異なる。
この横断サイプ84のサイプ本体86は、深さ方向にジグザグにのびる。図示されないが、このサイプ本体86は長さ方向にもジグザグにのびる。このサイプ本体86は、その長さ方向及び深さ方向にジグザグにのびる。ジグザグの振幅量は、好ましくは、例えば0.5mm以上3.0mmである。このサイプ本体86は三次元サイプである。なお、図5に示されたサイプ本体86は二次元サイプとも呼ばれる。
【0140】
この横断サイプ84においても、走行中のタイヤ2において、壁面84W同士が接触し、互いに支え合う。サイプ本体86が三次元サイプであるので、トレッド4が変形しサイプ本体86の壁面84W同士が密着した場合に、壁面84W同士が互いに拘束し合い、センター陸部42の剛性が効果的に高められる。このタイヤ2は、センター陸部42の剛性低下を抑制しながら、ウェット性能の向上を図ることができる。このタイヤ2は、バンド54を設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる。この観点から、センター陸部42に横断サイプ84を設ける場合、横断サイプ84のサイプ本体86は、その長さ方向及び深さ方向にジグザグにのびるのが好ましい。
【0141】
以上の説明から明らかなように、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明された、バンドを設けたことによる耐久性低下を抑制でき、耐偏摩耗性の向上を達成できる技術は種々のタイヤに適用されうる。
【0143】
[付記]
本発明は以下に示す態様を含む。
【0144】
[1] 70%以上の偏平比の呼びを有する、重荷重用タイヤであって、
一対のビードと、
一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、
前記カーカスの径方向外側に位置する補強層と、
前記補強層を覆い、路面と接するトレッドと
を備え、
前記トレッドが、周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、
複数の前記周方向溝が、軸方向最外側に位置するショルダー周方向溝を含み、
前記補強層が、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、らせん状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備え、
前記ベルトが、径方向に並ぶ、内側ベルトプライ及び外側ベルトプライを含み、
前記内側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きが、前記外側ベルトプライに含まれる前記ベルトコードの傾斜の向きと逆であり、
前記バンドが、前記内側ベルトプライと前記外側ベルトプライとの間に位置する、フルバンドを備え、
前記内側ベルトプライ、前記外側ベルトプライ、及び前記フルバンドの端が、前記ショルダー周方向溝の軸方向外側に位置し、
前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが、前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcよりも長い、重荷重用タイヤ。
[2] 前記タイヤの赤道面における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが0.6mm以上である、前述の[1]に記載の重荷重用タイヤ。
[3] 前記フルバンドの端における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFsが2.5mm以下である、前述の[1]又は[2]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[4] 前記タイヤの赤道面における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcが、前記フルバンドの端における、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFsよりも長い、前述の[1]から[3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[5] 前記タイヤの赤道面において、前記フルバンドと前記内側ベルトプライとの間の距離UFcの、前記フルバンドと前記外側ベルトプライとの間の距離SFcに対する比(UFc/SFc)が2.0以上である、前述の[1]から[4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[6] 前記フルバンドのコード密度が、22ends/50mm以上である、前述の[1]から[5]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[7] 前記フルバンドのコード密度に対する、前記内側ベルトプライのコード密度の比が0.65以上である、前述の[1]から[6]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[8] 前記フルバンドの前記バンドコードと、前記内側ベルトプライの前記ベルトコードとがなす角度FUが、10度以上25度以下であり、
前記フルバンドの前記バンドコードと、前記外側ベルトプライの前記ベルトコードとがなす角度FSが、10度以上25度以下である、前述の[1]から[7]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[9] 前記内側ベルトプライの前記ベルトコードが前記タイヤの赤道面に対してなす角度UEが、前記外側ベルトプライの前記ベルトコードが前記タイヤの赤道面に対してなす角度SEよりも小さい、前述の[1]から[8]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[10] 前記内側ベルトプライのコード密度が、前記外側ベルトプライのコード密度よりも大きい、前述の[1]から[8]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
[11] 複数の前記周方向溝が、前記トレッドに、軸方向に並ぶ複数の陸部を構成し、
複数の前記陸部のうち、前記タイヤの赤道面上に位置する陸部、又は、前記赤道面に最も近い陸部が、センター陸部であり、
前記センター陸部が、前記センター陸部を横断する横断サイプを有し、
前記横断サイプが、サイプ本体と、前記サイプ本体の径方向内側に位置する管状部とを有し、
前記管状部が前記サイプ本体の溝幅よりも広い溝幅を有する、前述の[1]から[10]のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【符号の説明】
【0145】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
8・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・クッション層
20・・・補強層
24・・・トレッド面
26・・・ベース部
28・・・キャップ部
32、34、36・・・周方向溝
38、40、42、44・・・陸部
50・・・カーカスプライ
50a・・・プライ本体
50b・・・折り返し部
52・・・ベルト
54・・・バンド
56、56A、56B、56C、56D、74、76・・・ベルトプライ
58、58A、58B、58C、58D・・・ベルトコード
64・・・エッジ部材
66・・・フルバンド
68・・・エッジバンド
70、70F、70E・・・バンドコード
78・・・緩衝層
80・・・幅広緩衝層
82・・・幅狭緩衝層
84・・・横断サイプ
86・・・サイプ本体
88・・・管状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6