(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015517
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】圧延製品の巻取システム及び巻取方法
(51)【国際特許分類】
B21C 47/02 20060101AFI20250123BHJP
B65H 54/28 20060101ALI20250123BHJP
B21C 47/12 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B21C47/02 D
B65H54/28 E
B21C47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024115819
(22)【出願日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】102023000015246
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】520378953
【氏名又は名称】エスエムエス・グループ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】SMS GROUP S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】カウドゥーロ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】デル ネグロ,ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ナルドゥッツィ,ロレンツォ
【テーマコード(参考)】
3F056
4E026
【Fターム(参考)】
3F056CA01
3F056CA04
3F056CB09
4E026BA03
4E026BA10
4E026BA11
4E026BD10
4E026GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイルの正しい巻き取りを保証し続けながら、より簡単で信頼性の高い態様で実施され得る巻取システム及び巻取管理方法を提供する。
【解決手段】ワインダ10は、瞬間的な巻取点でのスプールに対する圧延製品の位置決めを案内する分配器13と、分配器移動手段と、を備える。制御指令ユニットは、所定の巻取プログラムに従って、スプール回転手段12及び分配器移動手段を協調的に制御するように構成されている。所定の巻取プログラムは、所定の基準動作パラメータと、検出手段を備える。前記検出手段は、少なくとも1つのレーザー三角測量式の形状測定装置31を備える。処理計算ユニットは、表面形状測定装置31によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出された実際の動作パラメータと、コイルの所定の理想的な巻き取りに関する理論データに基づいて、分配器の移動速度をフィードバック調整するように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延製品(P)の巻取システム(1)であって、
ワインダ(10)と、制御指令ユニット(20)とを備え、
前記ワインダ(10)は、
巻き取り用のスプール(11)と、
回転軸(Y)の周りで前記スプール(11)を回転させるように構成されたスプール回転手段(12)と、
瞬間的な巻取点において前記スプール(11)に対する前記圧延製品(P)の位置決めを案内するように構成されるとともに、製品供給出口(14)が設けられた分配器(13)と、
前記スプール(11)に対して前記分配器(13)を移動させるように構成された分配器移動手段(15)と、を備え、
前記分配器移動手段(15)による前記分配器(13)の移動において、前記製品供給出口(14)は、前記スプール(11)上で前記圧延製品(P)を分配するように、且つ、前記スプール(11)上及び形成中のコイル上における前記圧延製品(P)の前記瞬間的な巻取点を経時的に変化させるように、前記回転軸(Y)に対して平行に前記スプール(11)に沿った往復並進運動を行うものであり、
前記制御指令ユニット(20)は、所定の巻取プログラムに従って、前記スプール回転手段(12)と前記分配器移動手段(15)とを協調的に制御するように構成され、
前記所定の巻取プログラムは、前記制御指令ユニット(20)によって記憶可能な所定の基準動作パラメータと、前記巻取システム(1)に備えられた検出手段を介して前記制御指令ユニット(20)によって巻き取り中にリアルタイムで取得され得る動作パラメータとの関数であり、
前記検出手段は、少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(31)を備え、
前記表面形状測定装置(31)は、直径方向において前記スプール(11)に対して前記分配器(13)とは略反対側に配置され、且つ、追加される1巻き毎に前記圧延製品(P)のコイルの表面形状を連続的に検出するように構成されており、
前記表面形状測定装置(31)は、前記回転軸(Y)の周りにおいて前記圧延製品(P)の前記瞬間的な巻取点から角度的にずれた位置でコイルの表面を走査するように、前記スプール(11)に対して方向づけられており、
前記巻取システム(1)は、処理計算ユニット(200)を備え、
前記処理計算ユニット(200)は、
前記表面形状測定装置(31)によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出された実際の動作パラメータと、コイルの所定の理想的な巻き取りに関する理論データに基づいて算出された同じ動作パラメータとの差を最小化するように、
追加される1巻き毎に前記表面形状測定装置(31)によって検出された前記圧延製品(P)のコイルの表面形状に基づいて、前記分配器(13)の移動速度をフィードバック調整するように構成されていることを特徴とする、
巻取システム。
【請求項2】
前記実際の動作パラメータは、前記表面形状測定装置(31)によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて、追加される1巻き毎に算出され、
前記実際の動作パラメータは、
1巻き追加されるごとにおける、形成中のコイルの第n層の、前記スプール(11)の軸方向のいずれか一方の端部に対する実際の高さ(Hr)であるか、又は、
1巻き追加されるごとにおける、それぞれの第n層の実際の伸長速度(Vgr)である、
請求項1に記載の巻取システム。
【請求項3】
前記所定の巻取プログラムは、
コイルの巻きが追加される毎における形成中のコイルの第n層の理論的な高さ(Ht)に対して前記実際の高さ(Hr)が実質的に等しくなるように、又は、
コイルの巻きが追加される毎におけるそれぞれの第n層の前記実際の伸長速度(Vgr)に対して前記分配器の移動速度が実質的に等しくなるように、
前記分配器の移動速度をフィードバック調整することを目的としたものであり、
前記理論的な高さ(Ht)は、前記処理計算ユニット(200)に事前に提供された前記圧延製品の直径の値に基づいて、前記スプールの高さの関数として算出されるものである、
請求項2に記載の巻取システム。
【請求項4】
コイル表面を走査するための前記スプールに対する前記表面形状測定装置(31)の角度位置は、前記回転軸(Y)の周りにおいて前記圧延製品の前記瞬間的な巻取点に対して75°以上105°以下の角度だけずれている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(31)は、前記スプールの前記回転軸(Y)からの径方向距離と、前記回転軸(Y)に沿った高さ位置とを1巻き毎に検出するように構成されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(31)は、前記回転軸(Y)に沿って前記スプール(11)の高さよりも小さな高さ(H)を有する走査ウインドウ(F)内を走査するように電子的に作動可能であり、好ましくは、前記走査ウインドウ(F)は、1巻き追加されるごとに形成中のコイルに追従するように前記回転軸(Y)に対して平行に移動可能である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(31)は、10ミリ秒以上50ミリ秒以下の遅延で前記走査ウインドウ(F)の位置を更新するように構成されている、
請求項6に記載の巻取システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(31)は、300Hzの最小走査周波数を有する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項9】
前記検出手段は、前記圧延製品の直径(φP)を計測するためのオンライン式の計測器(32)を更に備え、
前記計測器(32)は、前記圧延製品の直径(φP)を連続的に測定するように構成され、且つ、前記圧延製品の供給ラインにおける前記分配器(13)の上流側に配置されており、
前記処理計算ユニット(200)は、前記計測器(32)によって測定された前記圧延製品の直径の測定値を前記圧延製品の直径の値として使用するように構成されている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項10】
前記処理計算ユニット(200)は、それぞれの前記直径の測定値に、対応する検出時間を相関させるように構成されている、
請求項9に記載の巻取システム。
【請求項11】
前記制御指令ユニット(20)によって記憶可能な前記所定の基準動作パラメータは、
前記圧延製品自体の供給ラインに沿った前記圧延製品の線形速度と、
前記スプールの直径と、
前記スプールの高さと、を含む、
請求項9または請求項10に記載の巻取システム。
【請求項12】
前記処理計算ユニット(200)は、前記圧延製品の直径の値として、前記制御指令ユニット(20)によって記憶可能な既定値を使用するように構成されている、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項13】
前記制御指令ユニット(20)によって記憶可能な前記所定の基準動作パラメータは、
前記圧延製品自体の供給ラインに沿った前記圧延製品の線形速度と、
前記スプールの直径と、
前記スプールの高さと、
前記圧延製品の直径と、を含む、
請求項12に記載の巻取システム。
【請求項14】
前記処理計算ユニット(200)は、形成中のコイルの第n層ごとに、前記分配器の移動速度を理論的な移動速度で初期化するように構成され、
前記理論的な移動速度は、前記第n層における1巻きの形成時間と、前記第n層の巻き数との関数として算出される、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項15】
前記処理計算ユニット(200)は、形成中のコイルの第n層ごとに、前記圧延製品自体の供給ラインに沿った前記圧延製品の線形速度と、前記スプールの直径又は形成中のコイルの第(n-1)層の直径のいずれか一方との関数として、前記スプールの回転速度を調整するように構成されている、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の巻取システム。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の巻取システム(1)によって圧延製品(P)をコイル状に巻き取るための、圧延製品(P)の巻取方法であって、
動作ステップとして、
(a)回転軸(Y)の周りにおいて前記圧延製品(P)の瞬間的な巻取点に対して角度的にずれた位置でコイル表面を走査するようにスプールに対して方向づけられた表面形状測定装置(31)によって、前記圧延製品(P)のコイルの表面形状を、コイルの巻きが追加される毎に連続的に検出するステップと、
(b)前記表面形状測定装置(31)によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出された実際の動作パラメータと、コイルの所定の理想的な巻き取りに関する理論データに基づいて算出された同じ動作パラメータとの差を最小化するように、分配器の移動速度(Vt)を、コイルの巻きが追加される毎にフィードバック調整するステップと、を含む、巻取方法。
【請求項17】
前記実際の動作パラメータは、前記表面形状測定装置(31)によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出され、
前記実際の動作パラメータは、
コイルの巻きが追加される毎におけるコイルの第n層の、スプールの軸方向のいずれか一方の端部に対する実際の高さ(Hr)であるか、又は、
コイルの巻きが追加される毎におけるそれぞれの第n層の実際の伸長速度(Vgr)である、
請求項16に記載の巻取方法。
【請求項18】
前記分配器の移動速度(Vt)は、
コイルの巻きが追加される毎における形成中のコイルの第n層の理論的な高さ(Ht)に対して実際の高さ(Hr)が実質的に等しくなるように、又は、
コイルの巻きが追加される毎におけるそれぞれの第n層の実際の伸長速度(Vgr)に対して前記分配器の移動速度(Vt)が実質的に等しくなるように、
フィードバック調整され、
前記理論的な高さ(Ht)は、前記処理計算ユニット(200)に事前に提供された前記圧延製品の直径の値に基づいて、前記スプールの高さの関数として算出される、
請求項17に記載の巻取方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(31)は、前記スプールの回転軸(Y)からの径方向距離と、前記回転軸(Y)に沿った高さ位置とを1巻き毎に検出するように構成されている、
請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の巻取方法。
【請求項20】
前記圧延製品の直径(φP)の値は、前記圧延製品の供給ラインにおける前記分配器(13)の上流側に配置されたオンライン式の計測器(32)による前記圧延製品に対する連続的な測定から得られ、
それぞれの直径の測定値は、対応する検出時間に関連付けられている、
請求項18に記載の巻取方法。
【請求項21】
前記分配器の移動速度(Vt)の遡及的な調整は、前記制御指令ユニット(20)によって記憶可能な所定の基準動作パラメータを使用するものであり、
前記基準動作パラメータは、前記圧延製品自体の供給ラインに沿った前記圧延製品の線形速度と、前記スプールの直径と、前記スプールの高さとを含む、
請求項20に記載の巻取方法。
【請求項22】
前記圧延製品の直径(φP)の値は、既定の公称値である、
請求項18に記載の巻取方法。
【請求項23】
前記分配器の移動速度(Vt)の遡及的な調整は、前記制御指令ユニット(20)によって記憶可能な所定の基準動作パラメータを使用するものであり、
前記基準動作パラメータは、前記圧延製品自体の供給ラインに沿った前記圧延製品の線形速度と、前記スプールの直径と、前記スプールの高さと、前記圧延製品の直径とを含む、
請求項22に記載の巻取方法。
【請求項24】
前記分配器の移動速度(Vt)は、形成中のコイルの第n層ごとに、理論的な移動速度で初期化され、
前記理論的な移動速度は、前記第n層における1巻き分の巻き取り時間と、前記第n層における巻き数との関数として算出される、
請求項16から請求項23のいずれか1項に記載の巻取方法。
【請求項25】
前記スプールの回転速度は、形成中のコイルの第n層ごとに、前記圧延製品自体の供給ラインに沿った前記圧延製品の線形速度と、前記スプールの直径、又は、形成中のコイルの第(n-1)層の直径のいずれか一方との関数として調整される、
請求項16から請求項24のいずれか1項に記載の巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼業の分野における圧延製品の巻取システム及び巻取方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、例えば、鉄筋コンクリート又は他の種類の構造体を得るための金属構造体の製造に使用され、製鉄所から出荷される半完成金属製品(例えば、線材、ワイヤ、管状要素など)の熱間または冷間の巻き取りを制御、調整、且つ指示することを可能にする。
【背景技術】
【0003】
例えば製鉄所から出荷される高温または低温の半完成金属製品のコイル、すなわち、線材、ワイヤ、管状要素、角形材などの高温または低温の二次加工製品のコイルを製造するのに適した巻取システムが知られている。以下の説明では、さまざまな種類の金属製品を総称してロッドという。
【0004】
いくつかの用途では、ロッドの表面形態が不均一であり、ロッドの断面を変化させるエッジ又は波形の凹凸(コルゲーション)が存在することが知られている。このことは、コイルの巻き取りに影響する。
【0005】
ロッドは、まだ熱いとき、又は非常に熱いときに巻き取られることがよくある。このことは、ロッドが巻き取られる部分、ひいては、コイルの巻き取りに影響する。
【0006】
一般的に、巻取システムは、コイルの巻きが周囲に形成される回転コイラーと、コイルの高さ方向に沿ってロッドの位置を案内するように回転コイラーと協働する可動式の分配器(ディストリビュータ)とを備える。
【0007】
回転コイラーは、通常、複数の保持要素と関連付けられたスピンドルを備える。複数の保持要素は、コイルの幅を規定するものであり、少なくとも1つの保持要素は、コイルを取り出すために取り外し可能となっている。
【0008】
回転コイラーは、その回転軸が鉛直または水平になるように配置され得る。いずれの場合も、分配器は、回転コイラーの側面に配置される。
【0009】
使用中において、分配器は、コイラーの2つの軸方向端部の間をシャトルとして動かされる。このような動きは、コイラーの回転軸に平行な平面で行われる。このような平面は、コイラーの回転軸を通過してもよいし、或いは、形成中のコイルの変化する直径の円筒面に対して接線に維持されてもよい。
【0010】
巻取工程の基本的な目的は、コイルの複数周の巻き間の重なり及び/又は隙間を避けて、回転コイラーが可能な限り均一に充填されるようにロッドを巻き取ることである。
【0011】
前述のように、巻き取りは、ロッドの断面とそのばらつきによって確実に影響を受ける。したがって、充填速度を最適化して、隣接周の巻き間の重なり及び/又は隙間を回避するようにコイル形成を十分に正確に制御するためには、ロッド断面の公称値を知るだけでは不十分である。
【0012】
巻き取り中、従来のタイプの巻取システムでは、ロッドの断面と特性に応じて上記の最適化パラメータに関連して所望の態様でコイルの巻きが配置されるように、回転コイラー又は分配器のいずれかの機能を最適に調整することができない。
【0013】
巻き取り中にコイルの巻きが不適切に配置されると、結果として得られるコイルには、例えば、巻きの一部または全部に生じる隙間及び/又は重なりなど、不完全さが生じる。既知のシステムから得られるコイルは、その不完全さのために、コイルの取付面積全体に対するコイルの有効体積の比率として定義されるコイル密度係数が低くなることがある。
【0014】
このような不完全さは、これにより得られるコイルによって供給される生産プロセスの効率にしばしば反映される。
【0015】
コイルの品質を向上させるために、ロッドの分配速度を含むいくつかのパラメータを測定して、収集された情報を使用して巻き取りを制御且つ管理し得るいくつかの制御デバイス及び調整デバイスが提案されている。しかしながら、これらの既知のデバイスは、間接的に行われるパラメータの測定において信頼性がない。このことは、回転コイラーの回転速度の調整、変位速度の調整、及び/又は、分配器の位置の調整も不正確であることを意味する。さらに、これらの既知のデバイスは、ロッドの断面を検出できないだけでなく、分配器と常に連携される必要があり、ロッドの断面に応じて時々交換且つ/又は調整される必要がある。
【0016】
前述の限界を克服するために、特許文献1(欧州特許第3362390号明細書)に開示されているように、コイル上のロッドのいくつかの巻取パラメータを直接検出することに基づく巻取管理デバイス及び巻取管理方法が提案されている。
【0017】
より詳細には、特許文献1(欧州特許第3362390号明細書)の
図1及び
図2を参照すると、上記の巻取管理デバイスは、高温または低温の半完成金属製品の供給出口Cを有する分配器(ディストリビュータ)Bと、スプールDとを備えた巻取装置と連携するように意図されている。分配器BとスプールDとは、適切な制御された移動手段および回転手段によってそれぞれ動かされる。
【0018】
上記の巻取管理デバイスは、前記半完成金属製品の画像を取得するように構成されたビデオ記録システムEと、前記画像を処理して、前記半完成金属製品の等価直径と、前記供給出口Cの軸と前記半完成金属製品の前記スプールD上の瞬間的な巻取点との間に形成される傾斜角度とを連続的に計算するように構成された処理計算ユニットFと、事前に提供された基準動作パラメータを使用して取得された動作パラメータを制御し、分配器B及びスプールDの移動手段および回転手段を協調的に制御するように構成された制御指令ユニットGと、を備える。
【0019】
上記の巻取管理方法は、巻取の基準動作パラメータ(スプールDのi回転目、且つ、形成中のコイルのi層目における半完成金属製品の所望の傾斜角度および等価直径)を制御指令ユニットGにデータ入力するステップと、巻き取り中にビデオ記録システムによって画像を収集するステップであって、画像の収集は巻取速度と連携されるステップと、処理計算ユニットFによって、画像処理を行い、少なくとも動作パラメータ(前記半完成金属製品の傾斜角度および等価直径)を連続的に計算するステップと、画像収集によって取得された動作パラメータを、前記制御指令ユニットGに入力された前記基準動作パラメータと比較するステップと、基準動作パラメータと前記取得された動作パラメータとの差を、前記分配器(ディストリビュータ)の移動速度および/またはスプールの回転速度における協調的な変化に変換するステップと、を備える。
【0020】
特許文献1(欧州特許第3362390号明細書)に開示されたワインダの管理方法は、スプールの品質を大幅に向上させることができるが、その実施は容易でない。なぜなら、制御パラメータを検出するステップが、スプールDに金属半製品を巻き取る瞬間に半製品に対して実行される必要があるが、この瞬間において、半製品は、スプールに巻き取られているときよりも振動の影響を受けやすいためである。したがって、傾斜角度の検出は、ワインダの回転と半製品の供給動作とによって生じる振動現象の影響を受ける。精度の低下を回避するために、このような検出ステップは、特に正確な態様で実行される必要がある。このため、巻取管理方法が複雑になる。
【0021】
したがって、コイルの正しい巻き取りを保証し続けながら、より簡単で信頼性の高い態様で実施され得る巻取システム及び巻取管理方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【発明の概要】
【0023】
そこで、本発明の目的は、鉄鋼業の分野において、簡単かつ信頼性の高い態様でコイルを正しく巻き取ることができる圧延製品の巻取システム及び巻取方法を提供することにより、従来技術の前述の問題の欠点の全部または一部を排除することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、鉄鋼業の分野において、製造または実施が容易である、圧延製品を巻き取るためのシステムおよび方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
前述の目的に係る本発明の技術的特徴は、添付の特許請求の範囲の内容から明確に理解され得る。本発明の利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明からさらに明らかになる。添付の図面は、非限定的な例として示される1つ又は複数の実施形態を示すものであり、具体的には次の通りである。
【0026】
【
図1】特許文献1(欧州特許第3362390号明細書)に開示された巻取管理デバイスの斜視図を示す。
【
図2】
図1の巻取管理デバイスを示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る巻取システムの平面図である。
【
図5】
図3に示す巻取システムの一部を示す斜視図であり、一部の部品が除かれた状態で他の部品がより分かりやすくなるように1つのワインダが示されている。
【
図6】
図3に示す巻取システムの一部を真上から見た、1つのワインダに関する平面図を示す。
【
図7】
図6のワインダのスプール内でコイルを形成するステップを模式的に示す側方から見た断面図である。
【
図8】
図6のワインダのスプール内でコイルを形成する別のステップを模式的に示す側方から見た断面図である。
【
図9】
図6のワインダのスプール内に形成されたコイルを模式的に示す側方から見た断面図であり、レーザー式の表面形状測定装置の走査ウインドウを参照して視覚的に空間座標が示されている。
【
図10】
図6のワインダのスプール内に形成されたコイルを模式的に示す側方から見た断面図であり、レーザー式の表面形状測定装置の走査ウインドウを参照して視覚的に空間座標が示されている。
【
図11】本発明の巻取システムによって達成可能な、形成中の複数層のコイルの経時的な伸長傾向に関するグラフを示す。
【
図12】理論的な基準条件に関する層の形成におけるある動作状況において、
図6のワインダのスプール内で形成中のコイルを模式的に示す側方から見た断面図である。
【
図13】理論的な基準条件に関する層の形成における別の動作状況において、
図6のワインダのスプール内で形成中のコイルを模式的に示す側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付図面を参照すると、本発明に係る鉄鋼業の分野における圧延製品用の巻取システムは、全体として参照符号1で示されている。
【0028】
説明の簡略化のために、本発明に係る巻取方法は、巻取システムの説明の後に、これを参照しながら説明される。
【0029】
以下の説明および特許請求の範囲では、使用状態にある巻取システム 1 について言及される。下側若しくは上側の位置、又は、水平若しくは垂直の方向についての言及は、この意味(使用状態であること)において理解される必要がある。
【0030】
図3に示すように、巻取システム1は、圧延製品の製造に適した圧延ライン100(供給ライン)に設置される。より詳細には、巻取システム1は、このような圧延ライン100の端部に配置される。
【0031】
図3に示すように、圧延ライン100の端部は、2つ以上の分岐部に分岐されてもよく、各分岐部に、本発明に係る巻取システム1が設けられてもよい。
【0032】
本発明の一般的な実施形態によれば、圧延製品の巻取システム1は、ワインダ(巻取機)10を備える。
【0033】
ワインダ10自体は、当業者に公知であり、ワインダ10が以下の構成要素を備えていることを除いて、ワインダ10の詳細な説明は省略される。ワインダ10は、巻取用のスプール11と、スプールの回転速度Vrで回転軸Yを中心としてスプール11を回転させるのに適したスプール回転手段12とを備える。
【0034】
より詳細には、例えば
図7及び
図8に概略的に示すように、スプール11は、スピンドル110を備える。スピンドル110は、回転軸Yと同軸に延びている。スピンドル110の周囲には、圧延製品Pが徐々に巻き付けられて、複数層(S1,S2,S3,・・・Sn)の巻取コイル(コイル2)が形成される。スプール11の回転軸Yは、鉛直方向に沿って配置されてもよいし、水平方向に沿って配置されてもよい。スピンドル110は、コイル2の内径を規定する直径D1と、コイル2の高さを規定する高さH1とを有する。好ましくは、スプール11には、スピンドル110の軸方向の両端部にそれぞれ位置する2つの軸方向規制要素111,112が設けられている。有利なことに、
図5に示すように、2つの軸方向規制要素111,112のうちの一方(好ましくは、鉛直方向の回転軸を有するスプールの場合における上側の軸方向規制要素112)は、着脱可能であり、可動式の複数のフラップ112’で構成されている。
【0035】
ワインダ10は、分配器(ディストリビュータ)13と、分配器移動手段(ディストリビュータ移動手段)15とを更に備える。
【0036】
分配器13は、瞬間的な巻取点Wにおいてスプール11上での圧延製品Pの位置決めを案内するように構成されている。分配器13には、製品供給出口14が設けられている。
【0037】
分配器移動手段15は、分配器13をスプール11に対して相対的に移動させるように構成されている。分配器移動手段(並進手段)15による分配器13の移動により、製品供給出口14は、スプール上で圧延製品を分配するように、且つ、スプール上及び形成中のコイル上における圧延製品の瞬間的な巻取点Wを経時的に回転軸Yに平行に変化させるように、回転軸Yに平行なスプールに沿った往復並進運動を実行する。
【0038】
図6に示すように、瞬間的な巻取点Wとは、スプール又は形成中のコイルの表面に圧延製品の一部が最初に接触する点(位置)を意味する。換言すると、瞬間的な巻取点Wは、スプール又は形成中のコイルの表面に圧延製品が接する点(位置)である。
【0039】
圧延製品の巻取システム1は、制御指令ユニット20を更に備える。制御指令ユニット20は、所定の巻取プログラムに従ってスプール回転手段12と分配器移動手段15とを協調的に制御するように構成されている。巻取プログラムは、前記制御指令ユニット20によって記憶可能な所定の動作基準パラメータと、巻取システム1に設けられた検出手段31,32を介して制御指令ユニット20によって巻き取り中にリアルタイムで取得され得る動作パラメータとの関数として機能する。
【0040】
本発明によれば、前記検出手段31,32は、少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置(プロフィルメータ)31を含む。表面形状測定装置31は、直径方向においてスプール11に対して分配器13とは略反対側に配置されている。レーザー三角測量式の表面形状測定装置31は、形成中のコイルの高さの伸長(増大)に沿って追加される1巻き(1周分の巻き)毎に、圧延製品のコイルの表面形状を連続的に検出するように構成されている。
【0041】
なお、「直径方向においてスプール11に対して分配器13とは略反対側に配置」という表現は、分配器が配置されている半平面とは反対側の半平面内の任意の位置に配置されることを意味する。これら2つの半平面は、瞬間的な巻取点Wとスプールの回転軸Yとを通る直径方向に沿った平面PDによって識別される。
【0042】
図6に示すように、表面形状測定装置31は、回転軸Yの周りにおいて圧延製品の瞬間的な巻取点Wから角度的にずれた位置でコイルの表面を走査(スキャン)するように、スプール11に対して方向づけられている。
【0043】
本発明によれば、スプール上での巻取角度を検出する代わりに、形成中のコイルの表面形状が所定の直径方向部分(周方向位置)で検出される。
【0044】
さらに、当該検出は、瞬間的な巻取点W(圧延製品Pが振動を受ける領域)で実行される代わりに、瞬間的な巻取点Wよりも下流側におけるコイルの別の部分(圧延製品が既に安定してスプールに巻き取られていることにより振動をほとんど受けない領域)で実行されてもよい。
【0045】
本発明に係るシステム1によれば、より容易かつより確実に巻き取りが実施且つ管理され得る。
【0046】
好ましくは、コイル表面を走査(スキャン)するための前記スプールに対する前記表面形状測定装置31の方向位置(角度位置)は、回転軸Yの周りにおいて圧延製品の前記瞬間的な巻取点Wに対して75°~105°の角度αだけずれていてもよい。より好ましくは、前記角度αは、(
図6に示すように)約90°であってもよい。
【0047】
レーザー三角測量式の表面形状測定装置31及びその動作原理は、当業者には既知であり、以下の点を除いて、表面形状測定装置31についてのより詳細な説明は省略される。表面形状測定装置31は、レーザービームを放射するように構成されたレーザーエミッタ(レーザー放射体)310と、前記レーザービームによって生成された反射光を検出するように構成されたセンサ311とを備える。
【0048】
効果的態様において、レーザーエミッタ310から放射されたレーザービームは、ターゲット(コイルの表面)を照射する。コイルの表面から反射された光は、センサ311によって検出され、これにより、照射された表面の形状が作成される。
【0049】
好ましくは、
図5に示すように、表面形状測定装置31は、全高(高さH1)に亘ってスプールひいては形成中のコイルを照射するレーザービームLBを放射する。有利なことに、単一のレーザービームによってスプールの全高を照射できない場合は、2台以上の表面形状測定装置31が設けられてもよい。この場合、スプールの全高が複数の部分に分割され、それぞれの部分が1台の表面形状測定装置31の照射対象とされる。
【0050】
有利なことに、前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置31は、コイルの1巻き毎に以下の検出を行うように構成されている。すなわち、表面形状測定装置31は、スプールの回転軸Yに直交する平面内におけるコイルの巻き自体から表面形状測定装置31までの距離Xdと、回転軸Yに直交し且つスプールの軸方向のいずれか一方の端部に位置する基準面RPに対する、回転軸Yに沿った高さ方向の位置Ycとを、コイルの1巻き毎に検出する。
【0051】
効果的態様では、コイルの第n層に属する巻き部分についての距離Xdが記録され、(例えば、コイルのスピンドルの直径、既に形成された層の数、及び、圧延製品の直径(公称径または実際径)に基づいて、先に算出された)第(n-1)層の直径が分かっているため、直ちに、スプールの回転軸Yから前記巻き部分までの径方向距離Xcが算出され、第n層の直径Dnが算出される。有利なことに、このような計算は、(後述のように、好ましくは制御指令ユニット20に組み込まれるようにシステム1に設けられた)処理計算ユニット200によって実行されてもよいし、表面形状測定装置31に直接搭載されたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)によって実行されてもよい。
【0052】
したがって、レーザー式の表面形状測定装置31によって、回転軸Yをy軸とし、且つ、基準面RP上において、表面形状測定装置31によって走査(スキャン)されるスプール(コイル)の領域を通るスプールの径方向の軸をx軸とする座標系において、コイルの1巻き毎に空間座標(Xc(径方向距離),Yc(高さ方向の位置))を決定することが可能になる。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、表面形状測定装置31は、コイルの巻き部分の位置の代わりとして、又は、コイルの巻き部分の位置に加えて、(実質的にコイル間の空隙からなる)巻き取りの不完全さを検出する目的で、巻き取られたコイルの表面形状を検出するために使用されてもよい。
【0054】
有利なことに、
図9及び
図10に示すように、前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置31は、回転軸Yに沿ってスプール11の高さH1よりも小さな高さHを有する走査ウインドウ(走査範囲)F内を走査(スキャン)するように電子的に作動されてもよい。
【0055】
効果的態様において、このような走査ウインドウFは、センサのソフトウェアレベルで操作することによって生成され、これにより、センサの読み取りが所定の読み取り高さ(高さH)に制限される。
【0056】
好ましくは、ソフトウェアレベルにおいて、当該方法は、走査ウインドウF内でのセンサ自体の読み取りを、径方向を意図した所定の読み取り深度Dに制限することにより、表面形状測定装置31のセンサ311に対して操作する。
【0057】
より詳細に、このような走査ウインドウFは、ソフトウェアによって、回転軸Yに平行なスプールの高さH1に沿って移動され、これにより、走査ウインドウFは、1巻き追加されるごとに形成中のコイルに追従可能となっており、センサ311は固定されたままである。このようにして、表面形状測定装置31の振動や、表面形状測定装置31の移動における機械的な複雑さが回避される。
【0058】
効果的態様では、このような手法により、形成中のコイルの伸長領域に走査(スキャン)を集中させることが可能になる。これにより、コイルの他の部分から反射された光、又は、コイル自体に存在する欠陥から生じ得る干渉が回避され得る。
【0059】
好ましくは、前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置31は、10~50ミリ秒の遅延で走査ウインドウの位置を更新するように構成される。
【0060】
好ましくは、前記少なくとも1つのレーザー三角測量式の表面形状測定装置31は、300Hzの最小走査周波数を有する。
【0061】
本発明によれば、巻取システム1は、処理計算ユニット200を更に備える。処理計算ユニット200は、(1巻き追加されるごとに、表面形状測定装置31によって検出された圧延製品のコイルの表面形状に基づいて、)分配器13の移動速度Vtをフィードバック調整するように構成されている。これにより、前記表面形状測定装置31によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出される実際の動作パラメータと、コイルの所定の理想的な巻き取りに関連する理論データに基づいて算出される同じ動作パラメータとの差が最小限に抑えられる。
【0062】
これにより、本発明に係る圧延製品の巻取システム1は、コイルの正しい巻き取りを容易かつ確実に達成することを可能にする。
【0063】
さらに、本発明に係る圧延製品の巻取システム1は、製造や実施が容易である。
【0064】
好ましくは、コイルが1巻き追加されるごとに、前記表面形状測定装置31によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出される前記実際の動作パラメータは、更に追加される1巻き毎における形成中のコイルの第n層の、スプールの軸方向のいずれか一方の端部に対する(スプールの軸方向のいずれか一方の端部からの)実際の高さHrであるか、又は、更に追加される1巻き毎に高さ方向に増大するそれぞれの第n層の実際の伸長速度(高さ方向の増大速度)Vgrである。
【0065】
より詳細には、
図7及び
図8に示すように、追加される1巻き毎における形成中のコイルの第n層の実際の高さHrは、直近に追加された巻き部分の高さ方向の位置Ycに対応(一致)する。
【0066】
更に追加されるコイル1巻き毎におけるそれぞれの第n層の実際の伸長速度Vgrは、第n層の高さH1(高さ方向の位置Yc)が回転軸Yに平行に伸長(増大)する線形速度として定義される。
【0067】
図11は、第n層の巻き部分毎の高さ位置の経時的変化を示すグラフである。
図11の例において、傾向は線形であり、当該直線の角度係数mによって伸長速度が定義される。処理計算ユニット200は、巻き部分毎の高さ方向の位置Ycを経時的に関連付けることによって実際の伸長速度Vgrを算出し、この結果、
図11に示すようなグラフを生成する。
【0068】
第n層の実際の伸長速度Vgrは、該層の伸長方向(上向き又は下向き)に応じて、方向を変える。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記所定の巻取プログラムは、更に追加される巻き部分毎における形成中のコイルの第n層の理論的な高さHtに対して実際の高さHrが実質的に等しくなるように、分配器の移動速度Vtをフィードバック調整することを目的としている。
【0070】
理想的に巻き取られたコイルでは、隣接周の巻き部分は互いに接触しており、ひいては、これらの巻き部分間に間隔はない。第n層(概して、コイル)の理論的な高さHtは、巻き取られた複数の巻き部分の材料断面の直径の合計として算出され得る。この演算では、回転軸Yに平行な同一直線に沿った巻き部分の直径が参照される必要がある。効果的態様において、理論的な高さHtは、処理計算ユニット200に事前に提供された圧延製品の直径の値に基づいて、スプールの高さの関数として算出されてもよい。
【0071】
一般的に、圧延材料(圧延製品P)は、上流の圧延工程によって(例えば、摩耗などによって)直径がわずかに変化するため、断面積が変動する。したがって、圧延材料(圧延製品P)の直径は一定ではない。このような変動はコイルの形成に影響する。
【0072】
後述されるように、理論的な高さHtの計算は、圧延材料(圧延製品P)の直径が一定であり且つ公称径に等しいと仮定することで簡素化されてもよい。
【0073】
あるいは、理論的な高さHtの計算の精度を高めるために、巻取システム1に徐々に供給される圧延製品の直径がリアルタイムで測定されてもよい。
【0074】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、前記所定の巻取プログラムは、形成中のコイルの前方および/または後方に分配器13が位置することによってコイルに欠陥が生じることを避けるために、更に追加されるコイルの1巻き毎におけるそれぞれの第n層の実際の伸長速度Vgrに対して分配器13の移動速度Vtが実質的に等しくなるように、分配器の移動速度Vtをフィードバック調整することを目的としている。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記検出手段は、圧延製品の直径を計測するためのオンライン式の計測器32を更に備える。
【0076】
より詳細には、
図3に示すように、計測器32は、圧延製品Pの直径を連続的に測定するように構成されており、圧延製品Pの供給ライン(圧延ライン100)に沿って分配器13の上流側に配置される。処理計算ユニット200は、計測器32によって測定された圧延製品の直径の測定値を圧延製品の直径の値として使用するように構成される。
【0077】
有利なことに、前記処理計算ユニット200は、それぞれの直径の測定値に、対応する検出時間を相関させるように構成されている。したがって、圧延製品の線形供給速度が分かれば、各直径測定値を圧延製品の特定の部分に相関させることが可能である。
【0078】
このような好ましい実施形態によれば、前記制御指令ユニット20によって記憶可能な前述の所定の基準動作パラメータは、圧延製品自体の供給ラインに沿った圧延製品の線形速度VPと、スプールの直径D1と、スプールの高さH1とを含む。
【0079】
効果的態様において、上記3つの所定の動作パラメータを入力データとして有するとともに、リアルタイムで取得された圧延製品の直径値を有することにより、処理計算ユニット200は、以下に詳細に説明されるように、スプール11の回転速度Vrと分配器13の移動速度Vtとを算出し得る。
【0080】
本発明の代替の実施形態によれば、圧延製品の直径を計測するためのオンライン式の計測器32が設けられなくてもよい。この場合、処理計算ユニット200は、圧延製品の直径の値として、前記制御指令ユニット20によって記憶可能な既定値を使用するように構成される。
【0081】
このような代替の実施形態によれば、前記制御指令ユニット20によって記憶可能な前述の所定の基準動作パラメータは、圧延製品自体の供給ラインに沿った圧延製品の線形速度VPと、スプールの直径D1と、スプールの高さH1と、圧延製品の公称径φPとを少なくとも含む。
【0082】
効果的態様において、前述の4つの所定の動作パラメータを入力データとして有することにより、処理計算ユニット200は、スプール11の回転速度Vrと分配器13の移動速度Vtとを以下に詳細に説明されるように算出し得る。
【0083】
好ましくは、処理計算ユニット200は、形成中のコイルの第n層ごとに、分配器13の移動速度Vtを理論的な移動速度Vttで初期化するように構成される。理論的な移動速度Vttは、第n層における1巻き(1周分)の形成時間Tfsと、第n層の巻き数(周数)Nsとの関数として算出される。
【0084】
より詳細に、理論的な移動速度Vttは、次の「式1」に従って、コイルの高さH1を1層分の形成時間Tflで除算することによって算出される。
【数1】
【0085】
1層分の形成時間Tflは、次の「式2」に従って、第n層(n番目の直径)での1巻き(1周分)の形成時間Tfsと、コイル1層分を占め得る巻き数(周数)Nsとを関連付けることによって算出される。
【数2】
【0086】
コイルの高さH1内に存在するあるコイルの巻き数Nsを算出するためには、圧延製品の直径φP(公称径または実際径)とコイルの高さH1とを知る必要がある。この計算は、次の「式3」に従って行われる。
【数3】
【0087】
第n層(n番目の直径)での1巻き(1周分)の形成時間Tfsを算出するためには、圧延製品が巻き取られる円周の長さの値Cn(下記の「式4」参照、Dn:第n層の直径)を知る必要があり、圧延製品の供給ラインの線形速度VPの入力値を使用する必要がある。この計算は、下記の「式5」に従って行われる。
【数4】
【数5】
【0088】
圧延製品の直径φPとして、既定の公称値が使用される場合、第n層の直径Dnは、次の「式6」に従って算出される。ここで、Nlnは、第n層を含めて既に形成された層数(n番目の層数)を示す。
【数6】
【0089】
圧延製品の直径φPとして、実際の値が使用される場合、第n層の直径Dnは、次の「式7」に従って算出される。
【数7】
【0090】
ここで、前記4つの基準パラメータとして、VP=35m/s、D1=900mm、H1=900mm、φP=10mm(公称値)を想定した計算例が示される。当該計算は、形成中のコイルの第n層に関するものである。
【0091】
本実施例の方法は、理論的な移動速度Vttを算出することから始まる(前述および下記の「式1」参照)。
【数8】
【0092】
ここで、上述された下記の「式2」が成立することが想定される。
【数9】
【0093】
この場合、下記に示すような、上述の「式3」と、上述の「式4」、「式5」、及び「式6」とが用いられる。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【0094】
既に形成された層数Nln=2であると仮定すると、下記の「式8」及び「式9」のように、第n層の直径Dnと、圧延製品が巻き取られる円周の長さの値Cnとが算出される。
【数14】
【数15】
【0095】
この結果、下記の「式10」、「式11」、及び「式12」のように、第n層(n番目の直径)での1巻き(1周分)の形成時間Tfsと、コイルの高さH1内に存在するコイルの巻き数Nsと、1層分の形成時間Tflとが算出される。
【数16】
【数17】
【数18】
【0096】
結論として、第n層での分配器13の理論的な移動速度Vttは、下記の「式13」のようになる。
【数19】
【0097】
分配器13の移動速度Vtは、理論的な移動速度Vttの値で初期化された後、2つの選択肢(下記の「第1オプション」及び「第2オプション」)に従ってフィードバック調整される。
【0098】
[第1オプション]
第1オプションでは、コイルの巻きが更に追加される毎において、形成中のコイルの第n層の理論的な高さHtに実際の高さHrが実質的に等しくなるように、分配器13の移動速度Vtが調整される。
図12及び
図13に示すように、調整基準は次の通りである。
(1)実際の高さHrが理論的な高さHtよりも低い場合、移動速度Vtは減少される必要がある。
(2)実際の高さHrが理論的な高さHtよりも高い場合、移動速度Vtは増大される必要がある。
【0099】
効果的態様において、適切なコイル形成を確実にするために、圧延製品は、所定の許容範囲内で、スプールの回転軸Yに対して実質的に直交する向きでスプールに巻き取られる必要がある。このような状態は、分配器13の製品供給出口14が瞬間的な巻取点Wに位置合わせされているときに生じる。このような状態は、実際の高さHrが理論的な高さHtと実質的に一致する場合に検証される。
【0100】
より詳細に、仮に(
図12に示すように)実際の高さHrが理論的な高さHtよりも低い状態では、分配器13は瞬間的な巻取点Wよりも上方に通り過ぎているため、圧延製品が再び分配器の出口と平行になるように分配器13の速度が減少される必要がある(補正係数Kは考慮せず)。
【0101】
仮に(
図13に示すように)実際の高さHrが理論的な高さHtよりも高い状態では、分配器13は瞬間的な巻取点Wから後退されているため、圧延製品が再び分配器の出口と平行になるように分配器13の速度が増大される必要がある(補正係数Kは考慮せず)。
【0102】
[第2オプション]
第2オプションでは、コイルの巻きが更に追加される毎において、それぞれの第n層の伸長速度Vgrと実質的に等しくなるように、分配器13の移動速度Vtが調整される。
【0103】
有利には、補正係数Kを導入することで、いくつかの計算パラメータが変更されてもよく、これにより、コイル巻取特性が特定の要件に合わせて変更され得る。特に、コイルの高さ内に収まる巻き数(コイル1層分を占め得る巻き数Ns)は、補正パラメータ(補正係数K)を用いて変更され得る。
【0104】
有利なことに、分配器13の移動速度Vtは、補正パラメータ(補正係数K)を用いて理論値(理論的な移動速度Vtt)から変更されてもよい。これにより、直近に巻き取られた巻き部分から更に後退した状態に分配器13を維持することによって、特定のコイル巻き取り効果が達成され得る。
【0105】
有利には、形成中のコイルの第n層ごとに、処理計算ユニット200は、圧延製品自体の供給ラインに沿った圧延製品の線形速度VPと、スプールの直径D1又は形成中のコイルの第(n-1)層の直径Dnのいずれか一方との関数としてスプールの回転速度Vrを調整するように構成される。
【0106】
より詳細に、スプールの回転速度Vrは、下記の「式14」によって算出される。ここで、VPaは、所定の第n層の直径における圧延製品の角速度(rad/s)であり、下記の「式15」によって算出される。ここで、VPは、圧延製品の速度(接線速度/線形速度)である。
【数20】
【数21】
【0107】
ここで、圧延製品の速度がVP=35m/sであり、形成中のコイルの第(n-1)層の直径がDn=940mmであると想定した場合(Nln=2と仮定)の計算例として、下記の「式16」が示される。したがって、下記の「式17」のようになる。
【数22】
【数23】
【0108】
次に、本発明に係る巻取システム1による圧延製品の巻取方法が説明される。
【0109】
巻取システム1に関して行われた上記の説明は、以下に説明される巻取方法にも当てはまる。
【0110】
本発明に係る巻取方法は、以下の動作ステップ(a)及び(b)を備える。
(a)回転軸Yの周りにおいて圧延製品の瞬間的な巻取点に対して角度的にずれた位置でコイル表面を走査(スキャン)するようにスプールに対して方向づけられた前記表面形状測定装置31によって、圧延製品のコイルの表面形状を、コイルの巻きが追加される毎に連続的に検出する。
(b)前記表面形状測定装置31によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出された実際の動作パラメータと、コイルの所定の理想的な巻き取りに関する理論データに基づいて算出された同じ動作パラメータとの差を最小化するように、分配器13の移動速度Vtを、コイルの巻きが追加される毎にフィードバック調整する。
【0111】
好ましくは、コイルの巻きが追加される毎に前記表面形状測定装置31によって検出された形成中のコイルの形状に基づいて算出される前記実際の動作パラメータは、コイルの巻きが更に追加される毎におけるコイルの第n層の、スプールの軸方向のいずれか一方の端部に対する実際の高さHrであるか、又は、コイルの巻きが更に追加される毎におけるそれぞれの第n層の実際の伸長速度Vgrである。
【0112】
有利なことに、コイルの巻きが更に追加される毎における形成中のコイルの第n層の理論的な高さHtに対して実際の高さHrが実質的に等しくなるように、分配器13の移動速度Vtがフィードバック調整され得る。理論的な高さHtは、処理計算ユニット200に事前に提供された圧延製品の直径の値に基づいて、スプールの高さの関数として算出される。
【0113】
あるいは、コイルの巻きが更に追加される毎におけるそれぞれの第n層の実際の伸長速度Vgrに対して分配器13の移動速度Vtが実質的に等しくなるように、分配器13の移動速度Vtがフィードバック調整されてもよい。
【0114】
有利なことに、前記レーザー三角測量式の表面形状測定装置31は、スプールの回転軸Yからの径方向距離と、回転軸Yに沿った高さ位置とを1巻き毎に検出するように構成されている。
【0115】
圧延製品の直径φPの値は、圧延製品供給ラインにおける分配器13の上流側に配置されたオンライン式の計測器32による圧延製品Pに対する連続的な測定から得られる。それぞれの直径の測定値は、対応する検出時間に関連付けられている。
【0116】
この場合、好ましくは、分配器13の移動速度Vtの遡及的(事後的)な調整は、制御指令ユニット20によって記憶可能な所定の基準動作パラメータを使用する。この場合、基準動作パラメータは、圧延製品自体の供給ラインに沿った圧延製品の線形速度と、スプールの直径と、スプールの高さとを含む。
【0117】
あるいは、圧延製品の直径の値φPは、既定の公称値である。
【0118】
この場合、好ましくは、分配器の移動速度Vtの遡及的(事後的)な調整は、制御指令ユニット20によって記憶可能な所定の基準動作パラメータを使用する。この場合、基準動作パラメータは、圧延製品自体の供給ラインに沿った圧延製品の線形速度と、スプールの直径と、スプールの高さと、圧延製品の直径とを含む。
【0119】
有利なことに、分配器13の移動速度Vtは、形成中のコイルの第n層ごとに、理論的な移動速度で初期化される。理論的な移動速度は、前記第n層における1巻き分(1周分)の巻き取り時間と、前記第n層における巻き数(周回数)との関数として算出される。
【0120】
有利なことに、スプールの回転速度は、形成中のコイルの第n層ごとに、圧延製品自体の供給ラインに沿った圧延製品の線形速度と、スプールの直径、又は、形成中のコイルの第(n-1)層の直径のいずれか一方との関数として調整される。
【0121】
巻取システム1の説明において前述された本発明によって提供される利点は、巻取方法にも当てはまるため、ここでは説明の簡潔化のために繰り返しの説明が省略される。
【0122】
本発明は、多数の利点を提供するものであり、そのうちのいくつかの利点は既に説明された通りである。
【0123】
したがって、本発明の圧延製品の巻取システム1は、コイルの正しい巻き取りを容易かつ確実に達成することを可能にする。
【0124】
さらに、本発明に係る圧延製品の巻取システム1は、製造や実施が容易である。
【0125】
したがって、上記のように考案された本発明は、定められた目的を達成する。
【0126】
もちろん、実際には、上記で開示されたものとは異なる形状や構成をとることも可能であり、これによって本保護の範囲から逸脱することはない。
【0127】
さらに、あらゆる詳細は、技術的に同等の要素に置き換え可能であり、必要に応じて任意の大きさ、形状、材料が用いられ得る。
【外国語明細書】